特許第6795464号(P6795464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795464
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/46 20060101AFI20201119BHJP
   H04L 12/66 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   H04L12/46 100B
   H04L12/66 Z
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-123407(P2017-123407)
(22)【出願日】2017年6月23日
(65)【公開番号】特開2019-9611(P2019-9611A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2019年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 尊広
(72)【発明者】
【氏名】久野 大介
(72)【発明者】
【氏名】中山 悠
(72)【発明者】
【氏名】清水 達也
【審査官】 野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−116335(JP,A)
【文献】 特開2004−274432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/46
H04L 12/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転送処理後のフレームである処理後フレームを宛先に向けて送信する送信部を有する通信装置であって、
記フレームのフレーム誤りの程度に関する情報であるフレーム誤り率情報を取得し、取得されたフレーム誤り率情報に基づいて、処理負荷の程度の異なる複数の転送方式の中から、受信されたフレームに用いられる転送方式を判定する判定部と、
前記判定部によって判定された転送方式を実行する転送部に、前記受信されたフレームに対する転送処理を実行させる転送方式スイッチと、
を備え
前記判定部は、自装置においてフレーム誤り率情報が導出される転送方式が用いられている場合には、自装置において前記フレーム誤り率を導出し、自装置においてフレーム誤り率情報が導出されない転送方式が用いられている場合には、他の通信装置からフレーム誤り率情報を受信することによって取得する、通信装置。
【請求項2】
前記フレーム誤り率情報は、対象となるリンクを伝送した後におけるフレーム誤り率情報である、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記判定部は、自装置においてフレーム誤り率情報が導出される転送方式が用いられている場合であっても、他の通信装置の方が自装置よりも新しい前記フレーム誤り率情報を導出している場合には、前記他の通信装置からフレーム誤り率情報を受信することによって取得する、請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記判定部は、自装置においてフレーム誤り率情報が導出されない転送方式が用いられている場合であっても、自装置でもフレーム誤り率情報を導出し、自装置の方が他の通信装置よりも新しい前記フレーム誤り率情報を導出している場合には、自装置のフレーム誤り率情報を取得する、請求項1から3のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項5】
転送対象となるフレームを複製するフレーム複製部と、
複製されたフレームについてフレーム誤り率情報を取得する誤り率情報解析部と、をさらに備え、
前記判定部は、自装置においてフレーム誤り率情報が導出されない転送方式が用いられる場合には、前記誤り率情報解析部によって取得されたフレーム誤り率情報に基づいて転送方式を判定する、請求項1からのいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記フレーム複製部は、転送対象となるフレームのヘッダ部分のみを複製する、請求項に記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レイヤー2(以下「L2」という。)のネットワークの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、増加するモバイルトラヒックを効率的に収容するため、C−RAN(Centralized Radio Access Network)構成が検討されている(非特許文献1参照)。C−RANでは、多数のRE(Radio Equipment)が高密度で配置され、集約配置されたRECs(Radio Equipment Controls)に接続される。また、IEEE 802.1CMにおいて、フロントホールのトラヒックをL2ネットワークに収容する検討が進められている(非特許文献2参照)。一方、IoT(Internet of Things)の一部に代表される、遅延を許容するトラヒック(遅延許容トラヒック)をアクセスネットワークに収容する検討も進められている。これらを鑑みて、フロントホール、バックホールに加え、遅延許容トラヒックを同一のL2ネットワークに収容したマルチサービス収容アクセスネットワーク(マルチサービスNW)を検討した報告がなされている(非特許文献3参照)。
【0003】
複数サービスを収容するネットワークでは、高優先フレームの遅延を小さくするための仕組みが必要である。例えば、フレーム誤りを確認しないフレーム転送方式の方が、フレーム誤りを確認するフレーム転送方式に比べて遅延が小さい。そのため、フレーム転送方式に関しては、フレーム誤りに基づく問題が生じない限りは、フレーム誤りを確認しないフレーム転送方式の方が好ましい。ただし、リンクのフレーム誤りは、リンクによって異なる。その一方で、従来のL2ネットワークでは、複数のリンクに対して共通のフレーム転送方式が採用されていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ドコモ5Gホワイトペーパー,https://www.nttdocomo.co.jp/corporate/technology/whitepaper_5g/
【非特許文献2】IEEE802.1CM Draft 0.3, http://www.ieee802.org/1/pages/802.1cm.html
【非特許文献3】久保 他,電子情報通信学会ソサイエティ大会2016,B−8−25,2016.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のL2ネットワークでは、リンクによっては、誤り検出能力が過剰であったり、誤り検出能力が不足であったりという状況が生じていた。例えば、あるリンクでは伝送特性が良好であるために、その後のノードに実装されているフレーム転送方式では誤り検出能力が過剰となっていた。一方、他のリンクでは伝送特性が不良であるために、その後のノードに実装されているフレーム転送方式では誤り検出能力が不足しており、通信に障害が生じてしまう場合があった。このように、伝送品質が低下してしまうことがあった。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、L2ネットワークにおいて、伝送品質の低下を抑えつつ、遅延を小さくすることが可能となる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、転送処理後のフレームである処理後フレームを宛先に向けて送信する送信部を有する通信装置であって、受信したフレームを、前記フレームのフレーム誤りの程度に関する情報であるフレーム誤り率情報を取得し、取得されたフレーム誤り率情報に基づいて、処理負荷の程度の異なる複数の転送方式の中から転送方式を判定する判定部と、前記判定部によって判定された転送方式を実行する転送部に転送処理を実行させる転送方式スイッチと、を備える通信装置である。
【0008】
本発明の一態様は、上記の通信装置であって、前記フレーム誤り率情報は、対象となるリンクを伝送した後におけるフレーム誤り率情報である。
【0009】
本発明の一態様は、上記の通信装置であって、前記判定部は、自装置においてフレーム誤り率情報が導出されない転送方式が用いられる場合には、他の通信装置からフレーム誤り率情報を取得する。
【0010】
本発明の一態様は、上記の通信装置であって、転送対象となるフレームを複製するフレーム複製部と、複製されたフレームについてフレーム誤り率情報を取得する誤り率情報解析部と、をさらに備え、前記判定部は、自装置においてフレーム誤り率情報が導出されない転送方式が用いられる場合には、前記誤り率情報解析部によって取得されたフレーム誤り率情報に基づいて転送方式を判定する。
【0011】
本発明の一態様は、上記の通信装置であって、前記フレーム複製部は、転送対象となるフレームのヘッダ部分のみを複製する。
【0012】
本発明の一態様は、転送処理後のフレームである処理後フレームを宛先に向けて送信する送信部を有する通信装置であって、前記フレームの伝搬遅延を示す情報である伝搬遅延情報を取得し、取得された伝搬遅延情報に基づいて、処理負荷の程度の異なる複数の転送方式の中から転送方式を判定する判定部と、前記判定部によって判定された転送方式を実行する転送部に転送処理を実行させる転送方式スイッチと、を備える通信装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、L2ネットワークにおいて、伝送品質の低下を抑えつつ、遅延を小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明におけるネットワークシステムの一具体例を示す図である。
図2】ノード40の第一実施形態(ノード40a)の構成例を示す図である。
図3】ノード40の第一実施形態(ノード40a)の動作の具体例を示すフローチャートである。
図4】L2ネットワークの具体例を示す図である。
図5】ノード40の第二実施形態(ノード40b)の構成例を示す図である。
図6】ノード40の第三実施形態(ノード40c)の構成例を示す図である。
図7】ノード40の第四実施形態(ノード40d)の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明における通信装置を用いたネットワークシステムについて説明する。
図1は、本発明における通信装置(ノード40)を用いたネットワークシステムの一具体例を示す図である。L2ネットワーク50は、外部の装置(例えばREC10、RE20、IoTノード30)から入力されるフレームを中継し、フレームの宛先に近いエッジから他の外部の装置へ出力する。REC10、RE20及びIoTノード30は、ノード40を介してL2ネットワーク50に接続されている。L2ネットワーク50は、複数のノード40によって構成される。L2ネットワーク50は、マルチサービス収容ネットワークとして構成されている。
【0016】
REC10は、Radio Equipment Controllerである。RE20は、Radio Equipmentである。RE20は、無線通信端末81(例えば、無線通信端末81−1、81−2、81−3)と通信可能である。REC10及びRE20は、L2ネットワーク50を介することによって、相互に通信可能である。REC10及びRE20がL2ネットワーク50によって通信可能に接続されることによって、C−RANが形成されている。
【0017】
IoTノード30は、複数のセンサ82(例えば、センサ82−1、82−2)と通信可能に接続されている。複数のセンサ82がIoTノード30を介してL2ネットワーク50に接続されることによって、IoTが形成されている。IoTノード30に接続されるセンサ82は、どのようなセンサであってもよい。例えば、センサ82は、自動車に搭載され、自動車に関する情報(例えばエンジンの回転数、走行速度、車内の気温、運転者の生体情報など)を取得するセンサであってもよい。例えば、センサ82は、所定の設備(例えばプラント、ビル)に設置され、設備に関する情報(例えばプラント内の機器の動作に関する情報、空調の情報、室内の気温、設備内に位置する人物の情報など)を取得するセンサであってもよい。例えば、センサ82は、所定の自然環境(例えば崖、河川、海底)に設置され、自然環境に関する情報(例えばずれ量、温度、水位など)を取得するセンサであってもよい。IoTノード30は、センサ82によって取得された情報をセンサ82から受信し、L2ネットワーク50を介して情報を他の装置(例えば監視装置、管理サーバー等)へ送信する。
【0018】
ノード40は、REC10、RE20又はIoTノード30のいずれかから受信したデータを中継することによって、データを宛先まで伝送させる。ノード40によって中継されるデータには、複数の種類の優先度が設定されてもよい。例えば、低優先度トラヒック、中優先度トラヒック、高優先度トラヒックのように3つの種類の優先度が設定されてもよい。各優先度が設定されたデータは、その優先度に応じてノード40によって中継される。例えば、高優先度トラヒックのデータは、低優先度トラヒック及び中優先度トラヒックのデータに比べて、より小さい遅延で伝送されてもよい。
なお、図1のようなL2ネットワーク50の利用方法は具体例の一つに過ぎない。L2ネットワーク50は、他のどのような方法で利用されてもよい。
【0019】
次に、L2ネットワーク50を構成するノード40について詳細に説明する。ノード40は、L2スイッチとして構成される。ノード40は、フレームを受信し、受信されたフレームに対して転送処理を実行する。ノード40には複数種類の転送処理が実装される。ノード40は、L2ネットワーク50における通信状況を示す情報(以下「通信状況情報」という。)に基づいて、自装置に実装されている複数の転送処理の中から、実行する転送処理を決定する。以下、ノード40の第一〜第四の各実施形態について説明する。
【0020】
[第一実施形態]
図2は、ノード40の第一実施形態(ノード40a)の構成例を示す図である。ノード40aは、第一通信部41、転送方式スイッチ42、第一転送部43、第二転送部44、第三転送部45、結合部46、第二通信部47a及び判定部48aを備える。
【0021】
第一通信部41は、他のノード40又は外部の装置と通信する。第一通信部41は、他のノード40又は外部の装置から送信されたフレームを受信する。第一通信部41は、受信されたフレームを転送方式スイッチ42に出力する。第一通信部41は、例えばネットワークインタフェースを用いて構成される。なお、図2では、第一通信部41が他のノード40と通信する場合を例に図示している。このことは、後述する図5、6及び7においても同様である。
【0022】
転送方式スイッチ42は、第一通信部41によって受信されたフレームを、判定部48aによって判定されたフレーム転送方式を実行する転送部(第一転送部43〜第三転送部45のいずれか)に対して出力する。
【0023】
第一転送部43は、第一転送方式に基づいてフレームの転送処理を実行する。第二転送部44は、第二転送方式に基づいてフレームの転送処理を実行する。第三転送部45は、第三転送方式に基づいてフレームの転送処理を実行する。第一転送方式、第二転送方式及び第三転送方式はそれぞれ互いに異なるフレーム転送方式である。
【0024】
第一転送方式は、第二転送方式及び第三転送方式よりも、その後のフレーム誤りの発生率を低下させることができる。ただし、第一転送方式は、第二転送方式及び第三転送方式よりも転送処理に多くの時間を要する。第二転送方式は、第三転送方式よりも、その後のフレーム誤りの発生を低下させることができる。ただし、第二転送方式は、第三転送方式よりも転送処理に多くの時間を要する。
【0025】
例えば、第一転送方式はストアアンドフォワード方式、第二転送方式はフラグメントフリー方式、第三転送方式はカットスルー方式である。この場合、第一転送方式及び第二転送方式は、いずれもフレーム誤りの程度に関する情報であるフレーム誤り率情報を取得し、取得されたフレーム誤り率情報に応じてエラー修正するフレーム転送方式である。そのため、第一転送方式及び第二転送方式の実行により、その後のフレーム誤りの発生率を低下させることができる。ただし、第一転送方式及び第二転送方式は、第三転送方式よりも転送処理に時間を要してしまう。特に、第一転送方式は第二転送方式に比べてフレーム誤りの検出のためにより多くのビットを蓄積(ストア)する。そのため、第一転送方式は第二転送方式よりも多くの処理時間を要するものの、より精度よくフレーム誤りを検出できる。これに対し、第三転送方式は、フレーム誤り率を取得しないフレーム転送方式である。そのため、第三転送方式は、その後のフレーム誤りの発生率を低下させることができない。ただし、第三転送方式を採用することによって、第一転送方式及び第二転送方式よりも短い時間で転送処理を実行できる。
【0026】
結合部46は、第一転送部43、第二転送部44及び第三転送部45のいずれか一つから、転送対象のフレームを取得する。結合部46は、取得されたフレームを第二通信部47aに出力する。
【0027】
第二通信部47aは、他のノード40又は外部の装置と通信する。第二通信部47aは、結合部46から出力されたフレームを、フレームの送信先に応じて定まる転送先のノード40に対して送信する。すなわち、第二通信部47aは、転送処理後のフレームを宛先に向けて送信する送信部として機能する。第二通信部47aは、他のノード40から通信状況情報を受信する。第二通信部47aは、例えばネットワークインタフェースを用いて構成される。なお、図2では、第二通信部47aが他のノード40と通信する場合を例に図示している。このことは、後述する図5、6及び7においても同様である。
【0028】
判定部48aは、通信状況情報に基づいて、転送処理において用いるフレーム転送方式を判定する。具体的には、判定部48aは、通信状況情報としてフレーム誤り率情報を使用する。判定部48aは、フレーム誤り率情報をどのような手段で取得してもよい。例えば、第一転送部43及び第二転送部44のいずれかが転送処理を実行する場合には、その処理過程でフレーム誤り率情報が導出される。この場合、判定部48aは、第一転送部43及び第二転送部44のいずれかによって導出されたフレーム誤り率情報を取得してもよい。判定部48aは、他のノード40からフレーム誤り率情報を受信することによって取得してもよい。特に、第三転送部45が転送処理を実行する場合には、その処理過程でフレーム誤り率情報は導出されない。そのため、例えば第三転送部45が転送処理を実行する場合に判定部48aは他のノード40からフレーム誤り率情報を受信してもよい。このとき、判定部48aは、自装置の第三転送部45が転送したフレームが他のノード40(例えば隣接する他のノード40)において転送される際に導出されたフレーム誤り率情報を受信するように構成されてもよい。判定部48aが取得するフレーム誤り率情報は、例えば処理対象となるリンクを伝送した後のノードにおけるフレーム誤り率情報であってもよい。リンクとは、任意のノード40間を結ぶ通信路である。例えば、自ノード40と、前段のノード40との間のリンクにおけるフレーム誤り率情報が用いられてもよい。
【0029】
判定部48aは、フレーム誤り率情報に基づいた所定の基準にしたがってフレーム転送方式を判定する。例えば、A>Bという関係の二つの閾値を用いて所定の基準が以下のように設定されていてもよい。
フレーム誤り率情報の値が、A以上の値である場合には、第一転送方式。
フレーム誤り率情報の値が、A未満且つB以上である場合には、第二転送方式。
フレーム誤り率情報の値が、B未満である場合には、第三転送方式。
なお、フレーム誤り率情報の値が高いほど、フレーム誤りが多く発生していることを示す。
【0030】
図3は、ノード40の第一実施形態(ノード40a)の動作の具体例を示すフローチャートである。判定部48aは、所定のタイミングでフレーム誤り率情報を取得する(ステップS101)。取得されたフレーム誤り率情報の値が閾値A以上である場合(ステップS102−YES)、判定部48aは、第一転送方式を選択する(ステップS103)。すなわち、判定部48aは、使用されるべきフレーム転送方式が第一転送方式であると判定する。取得されたフレーム誤り率情報の値が閾値A未満且つ閾値B以上である場合(ステップS102−NO、S104−YES)、判定部48aは、第二転送方式を選択する(ステップS105)。すなわち、判定部48aは、使用されるべきフレーム転送方式が第二転送方式であると判定する。取得されたフレーム誤り率情報の値が閾値B未満である場合(ステップS102−NO、S104−NO)、判定部48aは、第三転送方式を選択する(ステップS106)。すなわち、判定部48aは、使用されるべきフレーム転送方式が第三転送方式であると判定する。判定部48aは、判定結果(選択されたフレーム転送方式)を転送方式スイッチ42に通知する。転送方式スイッチ42は、第一通信部41によって受信されたフレームを、選択されたフレーム転送方式を実行する転送部に出力するようにスイッチの状態を更新する(ステップS107)。このようなステップS101〜S107の処理は、所定のタイミングで繰り返し実行される。例えば、ノード40aにおいてフレームが受信される度に実行されてもよいし、10フレームが受信される度に実行されてもよいし、他のタイミングであってもよい。
【0031】
このように構成された第一実施形態(ノード40a)では、通信状況情報が取得され、取得された通信状況情報に基づいて複数のフレーム転送方式の中から一つのフレーム転送方式が選択される。通信状況が悪いほど、転送処理に時間を要するもののより正確にデータを転送できるフレーム転送方式が選択される。通信状況が良いほど、データ転送の正確性が低くとも転送処理をより速く実行できるフレーム転送方式が選択される。特に、第一実施形態のノード40aでは、通信状況情報としてフレーム誤り率情報が用いられる。このような構成により、L2ネットワークにおいて、フレーム誤りの発生に起因する伝送品質の低下を抑えつつ、遅延を小さくすることが可能となる。
【0032】
このような効果についてより詳細に説明する。図4は、L2ネットワークの具体例を示す図である。図4(A)は、従来技術で構成されたノード90を用いて構成されたL2ネットワークの具体例を示す図である。図4(B)は、本発明のノード40を用いて構成されたL2ネットワークの具体例を示す図である。
【0033】
図4(A)において、L2フレームの誤り検出に起因して生じる総遅延量T_totalは以下の式1のように表される。
【数1】
式1において、T_j_1は、ノード90−jにおいて実行されるフレーム転送方式(第一転送方式)に起因して生じる処理遅延量である。
【0034】
図4(B)において、T_i_1、T_i_2は、それぞれノード40−iにおいて実行される第一転送方式、第二転送方式に起因して生じる処理遅延量である。受信されたL2フレームから得られたリンク70−1のフレーム誤り率情報の値E2が閾値Aを下回っている場合、ノード40−2のフレーム転送方式は第一転送方式からT_i_1>T_i_2を満たす第二転送方式に切り替えられる。その場合、総遅延量はT_total>T_total’を満たすT_total’となる。T_total’は以下の式2のように表される。
【数2】
このように、本発明ではフレーム転送方式が適応的に変更される。言い換えれば、取得された通信状況情報(第一実施形態ではフレーム誤り率情報)に応じてL2ネットワーク50がより好ましい状態に変更(制御)される。その結果、従来のようにフレーム転送方式が固定であった場合に比べて、遅延量を低減することが可能となる。
【0035】
また、第一実施形態のノード40aでは、フレーム誤り率情報が導出されないフレーム転送方式(第三転送方式)が用いられる場合には、他のノード40からフレーム誤り率情報が取得される。そのため、たとえ自装置における転送処理の過程でフレーム誤り率情報が取得されなかったとしても、他のノード40からフレーム誤り率情報を取得することによってフレーム転送方式の判定を的確に行うことが可能となる。
【0036】
(変形例)
ノード40に実装されるフレーム転送方式の種類は3種類に限定されない。2種類のフレーム転送方式が実装されてもよいし、4種類以上のフレーム転送方式が実装されてもよい。ノード40に実装されるフレーム転送方式は、上述したストアアンドフォワード方式、フラグメントフリー方式及びカットスルー方式に限定される必要は無い。これらの方式とは異なるフレーム転送方式がノード40に実装されてもよい。
【0037】
[第二実施形態]
図5は、ノード40の第二実施形態(ノード40b)の構成例を示す図である。ノード40bは、第二通信部47aに代えて第二通信部47bを備える点、判定部48aに代えて判定部48bを備える点、フレーム複製部401及び誤り率情報解析部402をさらに備える点、において第一実施形態(ノード40a)と異なる。他の構成については、第一実施形態(ノード40a)と第二実施形態(ノード40b)とは同じである。
【0038】
フレーム複製部401は、判定部48bにおいて第三転送方式が選択されている場合に、転送対象のフレームの全体を複製する。フレーム複製部401は、フレームを第三転送部45及び誤り率情報解析部402に出力する。例えば、複製元のフレームが第三転送部45に出力され、複製されたフレームが誤り率情報解析部402に出力されてもよい。
【0039】
誤り率情報解析部402は、フレーム複製部401から出力されたフレーム(すなわち、第三転送部45によって転送処理が実行されるフレーム)について、フレーム誤り率情報を導出する。誤り率情報解析部402は、例えば第一転送方式又は第二転送方式のいずれかと同じ導出方法によってフレーム誤り率情報を導出してもよい。誤り率情報解析部402は、第一転送方式及び第二転送方式とは異なる導出方法によってフレーム誤り率情報を導出してもよい。誤り率情報解析部402は、導出されたフレーム誤り率情報を判定部48bに出力する。
【0040】
第二通信部47bは、他のノード40からフレーム誤り率情報を受信する必要が無い点で、第一実施形態における第二通信部47aと異なる。
【0041】
判定部48bは、フレーム誤り率情報の取得方法について、第一実施形態における判定部48aと異なる。具体的には、判定部48bは、他のノード40からフレーム誤り率情報を受信するのではなく、誤り率情報解析部402によって導出されたフレーム誤り率情報を取得する。すなわち、判定部48bは、以下の3つの手段によってフレーム誤り率情報を取得する。第一転送部43からフレーム誤り率情報を取得する。第二転送部44からフレーム誤り率情報を取得する。誤り率情報解析部402からフレーム誤り率情報を取得する。判定部48bの他の構成は、第一実施形態における判定部48aと同じである。
第二実施形態のノード40(ノード40b)の動作の具体例は、図3に示される第一実施形態のノード40(ノード40a)と同様である。そのため、説明を省略する。
【0042】
このように構成された第二実施形態(ノード40b)では、第一実施形態(ノード40a)と同様の効果が得られる。
【0043】
(変形例)
第二実施形態のノード40bは、第一実施形態のノード40aと同様に変形して構成されてもよい。
【0044】
フレーム複製部401は、フレーム全体を複製するのではなく、フレームのヘッダのみを複製するように構成されてもよい。フレーム複製部401は、フレーム全体のうち、誤り率情報解析部402によってフレーム誤り率情報の導出に使用される部分のみを複製するように構成されてもよい。この場合、複製元のフレームは第三転送部45に出力され、複製されたフレームは誤り率情報解析部402に出力される。
【0045】
フレーム複製部401は、第三転送部45によって転送されるフレームの全てを複製するように構成されてもよいし、第三転送部45によって転送されるフレームの一部(例えば10フレームのうち1フレーム)のみを複製するように構成されてもよい。
【0046】
誤り率情報解析部402は、第三転送部45において転送処理が実行されているフレームと同じフレームについてフレーム誤り率情報を導出してもよい。言い換えると、誤り率情報解析部402は、第三転送部45における転送処理と同期してフレーム誤り率情報を導出してもよい。このように構成されることによって、リアルタイムに最新のフレーム誤り率情報を判定部48bに出力することが可能となる。一方、誤り率情報解析部402は、第三転送部45において既に転送処理が実行されたフレームについてフレーム誤り率情報を導出してもよい。言い換えると、誤り率情報解析部402は、第三転送部45における転送処理と同期せずにフレーム誤り率情報を導出してもよい。
【0047】
[第三実施形態]
図6は、ノード40の第三実施形態(ノード40c)の構成例を示す図である。ノード40cは、第二通信部47bに代えて第二通信部47cを備える点、判定部48bに代えて判定部48cを備える点、において第二実施形態(ノード40b)と異なる。他の構成については、第二実施形態(ノード40b)と第三実施形態(ノード40c)とは同じである。
【0048】
第二通信部47cは、他のノード40からフレーム誤り率情報を受信する点で、第二実施形態における第二通信部47bと異なる。実質的に、第二通信部47cは、第一実施形態における第二通信部47aと同様の構成である。
【0049】
判定部48cは、フレーム誤り率情報の取得方法について、第二実施形態における判定部48bと異なる。具体的には、判定部48cは、他のノード40からフレーム誤り率情報を受信する方法と、誤り率情報解析部402によって導出されたフレーム誤り率情報を取得する方法と、いずれの方法も実施可能に構成される。判定部48cは、フレーム誤り率情報が導出されないフレーム転送方式が実行される場合、所定の条件に応じて、上述した二つの方法のうちいずれかを選択して実行する。
【0050】
例えば、他のノード40の方が自装置の誤り率情報解析部402よりも新しいフレーム誤り率情報を取得している場合、判定部48cは他のノード40からフレーム誤り率情報を受信する。一方、自装置の誤り率情報解析部402の方が他のノード40よりも新しいフレーム誤り率情報を取得している場合、判定部48cは自装置の誤り率情報解析部402からフレーム誤り率情報を取得する。
【0051】
例えば、他のノード40の方が自装置の誤り率情報解析部402よりも高い頻度でフレーム誤り率情報を取得している場合、判定部48cは他のノード40からフレーム誤り率情報を受信する。一方、自装置の誤り率情報解析部402の方が他のノード40よりも高い頻度でフレーム誤り率情報を取得している場合、判定部48cは自装置の誤り率情報解析部402からフレーム誤り率情報を取得する。
判定部48cの他の構成は、第二実施形態における判定部48bと同じである。
【0052】
第三実施形態のノード40(ノード40c)の動作の具体例は、図3に示される第一実施形態のノード40(ノード40a)と同様である。そのため、説明を省略する。
このように構成された第三実施形態(ノード40c)では、第一実施形態(ノード40a)と同様の効果が得られる。
【0053】
さらに、第三実施形態のノード40cでは、第三転送部45によって転送処理が実行される場合に、所定の条件に基づいて自装置の誤り率情報解析部402又は他のノード40のいずれかから取得されたフレーム誤り率情報が用いられる。そのため、より精度よく判定部48cにおける判定処理を実行することが可能となる。
【0054】
(変形例)
第三実施形態のノード40cは、第一実施形態のノード40aと同様に変形して構成されてもよい。
【0055】
[第四実施形態]
図7は、ノード40の第四実施形態(ノード40d)の構成例を示す図である。ノード40dは、第二通信部47aに代えて第二通信部47dを備える点、判定部48aに代えて判定部48dを備える点、伝搬遅延情報取得部411をさらに備える点、において第一実施形態(ノード40a)と異なる。他の構成については、第一実施形態(ノード40a)と第四実施形態(ノード40d)とは同じである。
【0056】
伝搬遅延情報取得部411は、自装置と他のノード40との間の伝搬路における伝搬遅延を示す情報(伝搬遅延情報)を取得する。伝搬遅延情報は、例えば1ホップのリンク間の伝搬遅延を示す情報であってもよい。伝搬遅延情報は、例えばL2ネットワーク50のエッジノードから自装置までに蓄積された伝搬遅延を示す情報であってもよい。エッジノードは、例えば図1に示されるノード40のうち、REC10、RE20又はIoTノード30のようにL2ネットワーク50の外部の装置から送信されたデータを最初に受信するノード40である。
【0057】
判定部48dは、取得する通信状況情報が第一実施形態における判定部48aと異なる。判定部48dは、フレーム誤り率情報に代えて伝搬遅延情報を通信状況情報として取得する。そして、判定部48dは、取得された伝搬遅延情報に基づいてフレーム転送方式を判定する。以下、判定部48dについて詳細に説明する。
【0058】
判定部48dは、伝搬遅延情報に基づいた所定の基準にしたがってフレーム転送方式を判定する。例えば、C>Dという関係の二つの閾値を用いて所定の基準が以下のように設定されていてもよい。
伝搬遅延情報の値が、C以上の値である場合には、第三転送方式。
伝搬遅延情報の値が、C未満且つD以上である場合には、第二転送方式。
伝搬遅延情報の値が、D未満である場合には、第一転送方式。
なお、伝搬遅延情報の値が高いほど、大きな伝搬遅延が発生していることを示す。
【0059】
第二通信部47dは、他のノード40からフレーム誤り率情報を受信する必要が無い点で、第一実施形態における第二通信部47aと異なる。
【0060】
第四実施形態のノード40(ノード40d)の動作の具体例は、図3に示される第一実施形態のノード40(ノード40a)と殆ど同じである。すなわち、図3ではフレーム誤り率情報が取得され、フレーム誤り率情報に基づいてフレーム転送方式が選択されているが、第四実施形態のノード40dでは、フレーム誤り率情報に代えて伝搬遅延情報が取得されフレーム転送方式が選択される。そのため、詳細な説明を省略する。
このように構成された第四実施形態(ノード40d)では、第一実施形態(ノード40a)と同様の効果が得られる。
【0061】
(変形例)
第四実施形態のノード40dは、第一実施形態のノード40aと同様に変形して構成されてもよい。
【0062】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0063】
10…REC, 20…RE, 30…IoTノード, 40…ノード, 50…L2ネットワーク, 81…無線通信端末, 82…センサ, 41…第一通信部, 42…転送方式スイッチ, 43…第一転送部, 44…第二転送部, 45…第三転送部, 46…結合部, 47a,47b,47c,47d…第二通信部, 48a,48b,48c,48d…判定部, 401…フレーム複製部, 402…誤り率情報解析部, 411…伝搬遅延情報取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7