(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
光通信や光センシングといった光信号処理技術を使用する産業分野は、関連分野と共に急速に発展し続けている。この光信号処理技術と同様に、電子回路技術も、急速な発展を続け、また、光信号処理技術と組み合わせて使用されていることが多い。しかし、この電子回路技術と比べると、光信号処理技術にはいくつかの難点がある。これは、小型化と簡便な接続である。
【0003】
小型化について、シリコンを中心とする電子回路技術においては、スケーリング則により微細化が高性能化につながるため、非常に活発に微細化が推し進められてきた。しかしながら、光信号処理技術においては、空間光学系では系のサイズが非常に大きくなってしまう。また、空間光学系より小さな系を実現できる平面光波回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)においても、カットオフ条件から、最も基本的な光学素子である光導波路のサイズですら数μmから数百nmオーダーとなってしまい、電子回路技術と比較して大きなデバイスサイズとなりがちである。
【0004】
次に簡便な接続という点においても、電子回路技術の場合、低周波領域では単に金属等の導体を接続するというだけで非常に簡便に信号を伝達することが可能であり、高周波領域においてもRFコネクタのようなプラガブルな接続技術が成熟している。しかしながら、光信号処理技術の場合、単に光信号を伝送する媒体を接続するだけでは良好な接続を実現することができない。光信号処理技術において良好な接続を得るためには、デバイス間の高精度の位置合わせが不可欠である。例えば、シングルモード光導波路を持つデバイスの場合、材質や設計にもよるが、サブμmオーダーの位置合わせ精度が必要となり、接続が容易ではない。
【0005】
光信号処理技術において小型化と簡便な接続を同時に実現する手法として、特許文献1のような方法が提案されている。特許文献1に開示された構造では、コネクタのように必要な時だけ光導波路チップ(石英系PLC)を接続可能なプラガブルな接続が実現できる。このような光導波路チップの光接続構造を称して、以後PPCP(Pluggable Photonic Circuit Platform)と呼ぶ。
【0006】
ここで、典型的なPPCPについて、
図9A,
図9B,
図9C,
図9Dを用いて説明する。なお、
図9AはPPCPの部品を展開して示す斜視図,
図9BはPPCPの斜視図、
図9CはPPCPを導波方向に垂直な平面で切断した断面を示す断面図、
図9Dは石英系PLCと石英系平板の実装面を示す平面図である。
【0007】
このPPCPは、石英系の光導波路から構成されたPLC701,PLC702と、ベース基板となる平板703とから構成されている。PPCPの一端側から入射した入力光信号704が、PLC701,PLC702,および平板703に形成されている光導波路を通り、PPCPの他端から出力光信号705として出力される。
【0008】
PLC701およびPLC702は、各々の入出射端面同士が向かい合うように、平板703の上で位置合わせして固定されている。この位置合わせには、円柱状のスペーサ706と、向かい合う面に形成されて所定の方向に延在する嵌合用溝707とが用いられる。
【0009】
例えば、PLC701と平板703との各々の向かい合う実装面には、同じ配置とされた複数の嵌合用溝707が、各々向かい合っている。また、この例では、同一平面上で隣り合う嵌合用溝707は、各々の延在方向が異なっており、一方は、x軸方向に延在し、他方はz軸方向に延在している。向かい合う嵌合用溝707の各々にスペーサ706を嵌合することで、互いの位置を合わせて固定している。
【0010】
なお、PLC701および平板703は、
図9Cに示すように、シリコンからなる基板部709と、この上に形成された酸化シリコンからなるクラッド層710とを備え、クラッド層710にコア708が形成されて、光導波路を構成している。また、嵌合用溝707は、クラッド層710に形成されている。PLC702も同様である。
【0011】
以上のような構造で、部材などの機械的精度のみで、PLC701,PLC702を平板703上で、サブμm単位での精度で簡便に位置合わせして実装し、光導波路の集積化を可能とし、小型化も実現している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特に手作業による実装では、スペーサの配置作業が容易ではなく、時間がかかるという問題があった。また、スペーサを機械により自動マウントする場合においても、高精度な実装装置が必要となり、コストの上昇を招いている。このように、嵌合用溝とスペーサとを用いた位置合わせは、溝に対するスペーサの配置が容易ではなく、実装に時間がかかり、また、実装コストの上昇を招き、実装の歩留まりの面に関して悪影響を与えるという問題があった。
【0014】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、溝とスペーサとを用いた位置合わせがより容易に実施できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る光接続構造は、平板と、第1の光導波路が形成されて平板の上に配置される第1の基板と、第2の光導波路が形成されて、第1の光導波路と第2の光導波路との入出射端面同士が向かい合う状態に平板の上に配置される第2の基板と、第1の基板の平板に向かい合う面に形成された溝部と、第2の基板の平板に向かい合う面に形成された溝部と、第1の基板の溝部と向かい合って平板の上に形成された溝部と、第2の基板の溝部と向かい合って平板の上に形成され
た溝部と、互いに向かい合って配置される溝部の各々に嵌合する複数のスペーサとを備え、溝部
の各々は、互いに異なる方向に延在して延在方向に
沿って同一の幅とされている第1の直線溝部および第2の直線溝部と、第1の直線溝部と第2の直線溝部とを連結する平面視で曲線状の曲線溝部とを備える。
【0016】
上記光接続構造において、溝部
の各々は、第1の直線溝部の延在方向および第2の直線溝部の延在方向の少なくとも一方に連続して形成されて第1の直線溝部より幅の広い誘導溝部を更に備えるようにしてもよい。
【0017】
上記光接続構造において、溝部
の各々は、一端が平板、第1の基板、第2の基板の端部に到達しているようにしてもよい。
【0018】
上記光接続構造において、第1の直線溝部と第2の直線溝部とは、互いに90°または45°異なる方向に延在していればよい。
【0019】
上記光接続構造において、第1の直線溝部は、第1の光導波路の延在方向に対して平行に延在している。
【0020】
上記光接続構造において、
複数のスペーサの各々は、複数のスペーサの各々の溝部の延在する方向の断面として、第1の直線溝部および第2の直線溝部の幅以上の直径の円形となる断面を持つとよい。
【0021】
上記光接続構造において、スペーサは、円柱または球とされていればよい。
【0022】
上記光接続構造において、第1の基板および第2の基板の各々は、シリコンからなる基板部と、基板部の上に形成された酸化シリコンからなるクラッド層とを備え、第1の光導波路は、第1の基板のクラッド層に形成され、第2の光導波路は、第2の基板のクラッド層に形成され、溝部は
、基板部に到達する状態に
、クラッド層に形成されているとよい。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、1つの溝部が、互いに異なる方向に延在して延在方向に同一の幅とされている第1の直線溝部および第2の直線溝部を備えるようにしたので、溝とスペーサとを用いた位置合わせがより容易に実施できるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】
図1Aは、本発明の実施の形態1における光接続構造の各部品である平板101、第1の基板102、第2の基板103を展開して示す斜視図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の実施の形態1における光接続構造の構成を示す斜視図である。
【
図1C】
図1Cは、本発明の実施の形態1における光接続構造の平板101、第1の基板102、第2の基板103の実装面の構成を示す平面図である。
【
図1D】
図1Dは、本発明の実施の形態1における光接続構造の溝部104の構成を示す平面図である。
【
図1E】
図1Eは、本発明の実施の形態1における光接続構造の導波方向に垂直な断面を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態2における光接続構造の各部品である平板101、第1の基板102、第2の基板103を展開して示す斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の実施の形態3における光接続構造の各部品である平板101、第1の基板102、第2の基板103を展開して示す斜視図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の実施の形態3における光接続構造の溝部104の構成を示す平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態4における光接続構造の各部品である平板101、第1の基板102、第2の基板103を展開して示す斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の実施の形態5における光接続構造の各部品である平板101、第1の基板102、第2の基板103を展開して示す斜視図である。
【
図5B】
図5Bは、本発明の実施の形態5における光接続構造の平板101、第1の基板102、第2の基板103の実装面の構成を示す平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態6における光接続構造の導波方向に垂直な断面を示す断面図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の実施の形態における光接続構造の溝部104aの構成を示す平面図である。
【
図7B】
図7Bは、本発明の実施の形態における光接続構造の溝部104aの構成を示す平面図である。
【
図7C】
図7Cは、本発明の実施の形態における光接続構造の溝部104aの構成を示す平面図である。
【
図7D】
図7Dは、本発明の実施の形態における光接続構造の溝部104aの構成を示す平面図である。
【
図7E】
図7Eは、本発明の実施の形態における光接続構造の溝部104aの構成を示す平面図である。
【
図7F】
図7Fは、本発明の実施の形態における光接続構造の溝部104aの構成を示す平面図である。
【
図8A】
図8Aは、溝部104aを用いた場合の本発明の実施の形態における光接続構造の平板101、第1の基板102、第2の基板103の実装面の構成を示す平面図である。
【
図8B】
図8Bは、溝部104cを用いた場合の本発明の実施の形態における光接続構造の平板101、第1の基板102、第2の基板103の実装面の構成を示す平面図である。
【
図9A】
図9Aは、従来の光接続構造の各部品を展開して示す斜視図である。
【
図9B】
図9Bは、従来の光接続構造の構成を示す構成図である。
【
図9C】
図9Cは、従来の光接続構造の導波方向に垂直な断面を示す断面図である。
【
図9D】
図9Dは、従来の光接続構造における各部品の実装面の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0026】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1における光接続構造ついて、
図1A、
図1B、
図1C、
図1D、
図1Eを参照して説明する。この光接続構造は、平板101、第1の基板102、第2の基板103、溝部104,スペーサ105を備える。例えば、第1の基板102は、石英系の光導波路から構成された平面光波回路が形成されているPLCである。同様に、第2の基板103も、石英系の光導波路から構成された平面光波回路が形成されているPLCである。
【0027】
なお、
図1Aは、光接続構造の各部品である平板101、第1の基板102、第2の基板103を展開して示す斜視図である。また、
図1Bは、光接続構造の構成を示す斜視図である。また、
図1Cは、平板101、第1の基板102、第2の基板103の実装面を示す平面図、
図1Dは、溝部104の構成を示す平面図、
図1Eは、光接続構造の導波方向に垂直な断面を示す断面図である。
【0028】
第1の基板102は、第1の光導波路が形成されて平板101の上に配置される。第2の基板103は、第2の光導波路が形成されて、第1の光導波路と第2の光導波路との入出射端面同士が向かい合う状態に平板101の上に配置される。第1の光導波路および第2の光導波路は、例えば、石英系の光導波路から構成されている。第1の基板102、第2の基板103と、平板101とは、各々の実装面同士で向かい合って配置される。
【0029】
第1の基板102において、第1の光導波路により平面光波回路が構成されている。同様に、第2の基板103において、第2の光導波路により平面光波回路が構成されている。なお、この例では、平板101にも、平面光波回路を構成する光導波路を備える。例えば、この光接続構造の一端側から入射した入力光信号106が、第1の基板102,第2の基板103、および平板101に形成されている各光導波路を通り、光接続構造の他端から出力光信号107として出力される。
【0030】
なお、平板101および第1の基板102は、
図1Eに示すように、シリコンからなる基板部109と、この上に形成された酸化シリコンからなるクラッド層110とを備え、クラッド層110にコア108が形成されて、上述した各光導波路を構成している。また、溝部104は、クラッド層110に形成されている。第2の基板103も同様である。
【0031】
ここで、溝部104は、第1の基板102の平板101に向かい合う面、および第2の基板103の平板101に向かい合う面の各々に形成されている。この例では、第1の基板102および第2の基板103に、各々2つの溝部104が設けられている。また、平板101の実装面には、第1の基板102の溝部104と向かい合って形成された溝部104を備える。同様に、平板101の実装面には、第2の基板103の溝部104と向かい合って形成された溝部104を備える。
【0032】
ここで、本発明において、溝部104は、
図1Dに示すように、互いに異なる方向に延在して延在方向に同一の幅とされている第1の直線溝部141および第2の直線溝部142と、第1の直線溝部141と第2の直線溝部142とを連結する平面視で曲線状の曲線溝部143とを備える。実施の形態1において、第1の直線溝部141と第2の直線溝部142とは、互いに90°異なる方向に延在している。なお、溝部104は、平面視で、全域にわたって均一な幅に形成されている。また、この例では、溝部104の断面形状は、矩形としている。また、この例では、溝部104は、全域で同じ深さとしている。
【0033】
なお、この例では、第1の直線溝部141は、第1の光導波路の延在方向(z軸方向)に対して平行に延在している。また、第2の直線溝部142は、第1の直線溝部141の延在方向に対して垂直な方向(x軸方向)に延在している。
【0034】
なお、実施の形態1において、スペーサ105は、円柱とされ、溝部104に嵌合可能な形状とされている。例えば、スペーサ105は、弾性変形可能な弾性体であり、変形させることで、互いに向かい合って配置される2つの溝部104の各々に嵌合させる。ここで、
図1Eにも示すように、スペーサ105の延在する方向に垂直な断面は、第1の直線溝部141(第2の直線溝部142)の幅以上の直径の円形とされている。スペーサ105としては、例えば、断面円形の光ファイバを用いることができる。
【0035】
前述したように、第1の基板102と第2の基板103は、第1の基板102の第1の光導波路と、第2の基板103の第2の光導波路との入出射端面同士が向かい合う状態に平板101の上に配置される。これらの位置合わせに、溝部104とスペーサ105とを用いる。互いに向かい合う溝部104の各々にスペーサ105を嵌合することで、互いの位置を合わせて固定している。
【0036】
光接続構造では、平板101に、第1の基板102および第2の基板103を実装するとき、上述したようにスペーサ105を溝部104に嵌合させる必要がある。ここで、実施の形態1によれば、溝部104を第1の直線溝部141および第2の直線溝部142から構成したので、例えば、1つの溝部104で、同一平面内で2つの方向に位置を合わせることができ、溝部104の数を少なくすることができる。溝部とスペーサとを用いた位置合わせにおいて、基板平面方向(xz平面方向)の動きを抑制するために、延在方向が互いに異なる2つ以上の溝が必要となるが、実施の形態1によれば、1つの溝部104で同様の効果が得られる。この結果、実装において、溝部104へのスペーサ105の嵌合数をより少なくすることができ、位置合わせがより容易に実施できるようになる。
【0037】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2における光接続構造ついて、
図2を参照して説明する。この光接続構造は、前述した実施の形態1と同様に、平板101、第1の基板102、第2の基板103、溝部104を備える。実施の形態2では、複数の球から構成したスペーサ105aを用いる。スペーサ105aを構成する球は、例えば、鋼から構成すればよい。ここで、スペーサ105aを構成する球の直径は、溝部104の幅以上とされている。
【0038】
実施の形態2においても、平板101の上における第1の基板102および第2の基板103の位置合わせに、溝部104とスペーサ105aとを用いる。互いに向かい合う溝部104の各々にスペーサ105aの各球を嵌合することで、互いの位置を合わせて固定している。
【0039】
光接続構造では、平板101に、第1の基板102および第2の基板103を実装するとき、上述したようにスペーサ105aの球を溝部104に嵌合させる必要があるが、前述同様に、溝部104の数を減らせるので、位置合わせがより容易となる。
【0040】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3における光接続構造ついて、
図3A,
図3Bを参照して説明する。この光接続構造は、前述した実施の形態1と同様に、平板101、第1の基板102、第2の基板103、溝部104aを備える。
【0041】
実施の形態3では、溝部104aが、第1の直線溝部141の延在方向に連続して形成された誘導溝部144を更に備えるようにした。誘導溝部144は、第1の直線溝部141より平面視で幅の広い部分を備えている。誘導溝部144は、例えば、第1の直線溝部141との接続部分より離れるほど幅が広く形成されている部分を備える。この例で、誘導溝部144は、平面視台形とされている。なお、誘導溝部は、第2の直線溝部142の延在方向に連続して形成されていてもよい。
【0042】
なお、この例では、誘導溝部144においても、断面形状は、矩形としている。また、この例では、溝部104aは、全域で同じ深さとしている。また、誘導溝部144の最も幅の広い部分の幅は、スペーサ105の断面より大きく形成されている。
【0043】
光接続構造では、平板101に、第1の基板102および第2の基板103を実装するとき、上述したようにスペーサ105を溝部104aに嵌合させる必要があるが、実施の形態3によれば、溝部104aが更に誘導溝部144を備えるようにしたので、溝部104aへのスペーサ105の嵌合がより容易となる。
【0044】
実装においては、溝部104aにスペーサ105を嵌合させることで、高い位置合わせ精度を得るため、スペーサ105と、溝部104aとの幅方向には、隙間がないようにしている。このため、スペーサ105を、直接、溝部104aに挿入することは容易ではなく、挿入時に高い位置精度が要求される。
【0045】
これに対し、誘導溝部144は、より幅の広い部分を備えるので、高い位置精度が要求されず、より容易にスペーサ105が挿入できるようになる。例えば、誘導溝部144の最も広い部分の幅が、スペーサ105の断面直径より大きいものとされていれば、誘導溝部144に対してスペーサ105を挿入させることが容易である。このように、実施の形態3によれば、スペーサ105を、より幅の広い誘導溝部144から挿入して溝部104aに嵌合させることができるので、実装の際に要求される精度が減少し、実装の簡易化が実現できるようになる。
【0046】
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4における光接続構造ついて、
図4を参照して説明する。この光接続構造は、前述した実施の形態3と同様に、平板101、第1の基板102、第2の基板103、溝部104a、スペーサ105を備える。実施の形態4では、溝部104aの一端が、平板101、第1の基板102、第2の基板103の端部に到達している。この例では、誘導溝部144の側が、平板101、第1の基板102、第2の基板103の端部に到達している。端部に到達している部分は、端部において、側面が解放されている。
【0047】
実施の形態4においても、前述した実施の形態3と同様に、誘導溝部144が、より幅の広い部分を備えるので、高い位置精度が要求されず、より容易にスペーサ105が挿入できるようになる。また、実施の形態4では、溝部104aの一端を、平板101、第1の基板102、第2の基板103の端部に到達させているので、スペーサ105の把持治具を、溝部104aに近づけることがより容易となる。
【0048】
[実施の形態5]
次に、本発明の実施の形態5における光接続構造ついて、
図5A,
図5Bを参照して説明する。この光接続構造は、前述した実施の形態1と同様に、平板101、第1の基板102、第2の基板103、溝部104bを備える。実施の形態5において、第1の直線溝部141と第2の直線溝部142とが、互いに45°異なる方向に延在している。他の構成は、前述した実施の形態1と同様である。
【0049】
溝部とスペーサとを用いた位置合わせにおいて、基板平面方向(xz平面方向)の動きを抑制するために、延在方向が互いに異なる2つ以上の溝が必要となる。本発明では、溝部104bを、各々異なる方向に延在する第1の直線溝部141と第2の直線溝部142とから構成することで、1つの溝部104bで基板平面方向の動きの抑制を可能としている。ここで、第1の直線溝部141の延在方向と第2の直線溝部142の延在方向とのなす角度を90°とする構成の方が、位置合わせの精度を高めるためには好ましいが、この角度を45°とすることで、スペーサ105をあまり曲げることができない場合においても適用可能とすることができる。
【0050】
例えば、スペーサ105をあまり長くできない場合、溝部104bに合わせるために、スペーサ105をあまり曲げる必要が無いため、より容易に溝部104bにスペーサ105を嵌合させることができるようになる。実施の形態5によれば、より高い弾性を有するスペーサ材料を用いる場合や、より短いスペーサ105を持ちいらざるを得ないほどの、形状の小さな構成の光接続構造における実装の簡易化が実現できるようになる。
【0051】
[実施の形態6]
次に、本発明の実施の形態6における光接続構造ついて、
図6を参照して説明する。この光接続構造は、前述した実施の形態1と同様に、平板101、第1の基板102、第2の基板(不図示)、第1の直線溝部141、スペーサ105を備える。なお、
図6には示していないが、前述した実施の形態1と同様に、第1の直線溝部141は、溝部104の一部である。また、実施の形態1と同様に、平板101および第1の基板102は、シリコンからなる基板部109と、この上に形成された酸化シリコンからなるクラッド層110とを備え、クラッド層110にコア108が形成されて、上述した各光導波路を構成している。また、第1の直線溝部141(溝部104)は、クラッド層110に形成されている。第2の基板も同様である。
【0052】
実施の形態6では、クラッド層110に形成した第1の直線溝部141(溝部104)を、基板部109に到達させている。言い換えると、第1の直線溝部141に、基板部109の表面を露出させている。よく知られているように、例えばフォトリソグラフィー技術により生成したレジストパターンをマスクとし、反応性イオンエッチングなどによりクラッド層110をエッチング加工することで、第1の直線溝部141を形成している。上述した構成では、酸化シリコンをエッチングすることになる。
【0053】
このようなエッチングにおいては、よく知られているように、シリコンに対して酸化シリコンを選択的にエッチングすることが可能であり、シリコンの層をエッチングストップ層として用いることができる。従って、クラッド層110に溝を形成するエッチング加工時に、基板部109をエッチングストップ層とすることができる。また、このようなエッチング加工では、シリコンからなる基板部109はほとんどエッチングされないので、溝の底部となる基板部109の表面は、高い平坦性が維持されている。この結果、実施の形態6によれば、溝の底面は、より平滑な平面となる。この結果、スペーサ105の挿入時に、スペーサ105を容易に滑らせることができ、スペーサ105の挿入がより容易となる。
【0054】
ところで、
図7Aに示すように、溝部104aは、誘導溝部144aを備えるようにしてもよい。誘導溝部144aは、第1の直線溝部141より平面視で幅の広い部分を備え、第1の直線溝部141より離れるほど幅が広く形成されている。この例では、誘導溝部144aの側部が、平面視で曲線で構成されている。
【0055】
また、
図7Bに示すように、溝部104aは、誘導溝部144bを備えるようにしてもよい。誘導溝部144bは、第1の直線溝部141より平面視で幅の広い部分を備え、第1の直線溝部141より離れるほど幅が広く形成されている。この例でも、誘導溝部144bの側部は、平面視で曲線で構成されている。
【0056】
また、
図7Cに示すように、溝部104aは、誘導溝部144cを備えるようにしてもよい。誘導溝部144cは、第1の直線溝部141より平面視で幅の広い部分を備え、第1の直線溝部141より離れるほど幅が広く形成されている部分を備える。この例では、誘導溝部144cが、平面視で、楕円形とされている。この楕円の中心は、平面視で、第1の直線溝部141の延在方向中心軸の上に配置されている。また、この楕円は、長軸の長さが第1の直線溝部141の幅より長くされている。なお、誘導溝部は、平面視で円形とされていてもよい。この場合、やはり円の中心が、平面視で、第1の直線溝部141の延在方向中心軸の上に配置され、円の直径が、第1の直線溝部141の幅より長くされていればよい。
【0057】
また、
図7Dに示すように、溝部104aは、誘導溝部144dを備えるようにしてもよい。誘導溝部144dは、第1の直線溝部141より平面視で幅の広い部分を備え、第1の直線溝部141より離れるほど幅が広く形成されている。この例では、誘導溝部144cが、平面視で、五角形とされている。
【0058】
また、
図7Eに示すように、溝部104aは、2つの誘導溝部144eを備えるようにしてもよい。一方の誘導溝部144eは、第1の直線溝部141の一端に接続し、他方の誘導溝部144eは、第2の直線溝部142の一端に接続している。この場合においても、2つの誘導溝部144eの各々は、第1の直線溝部141および第2の直線溝部142より離れるほど幅が広く形成されている。誘導溝部は、第1の直線溝部の延在方向および第2の直線溝部の延在方向の少なくとも一方に連続して形成されていればよい。
【0059】
また、
図7Fに示すように、溝部104aは、誘導溝部144fを備えるようにしてもよい。誘導溝部144fは、第1の直線溝部141より平面視で幅の広い部分を備える。この例では、誘導溝部144cが、第1の直線溝部141より、ある点までは離れるにつれて、徐々に幅が広くなり、ある点からは徐々に幅が狭くなっている。この例では、誘導溝部144fが、平面視で正方形の一部から構成され、この正方形の対角線の一方が、第1の直線溝部141の延在方向と直交している。
【0060】
ここで、溝部104aは、前述した実施の形態4と同様に、溝部104aの誘導溝部144f側の一端を、平板101、第1の基板102、第2の基板103の端部および角部に到達させて配置してもよい(
図8A参照)。また、2つの溝部104aを一体にした溝部104cを用い、2つの誘導溝部144fを、平板101、第1の基板102、第2の基板103の端部および角部に到達させて配置してもよい(
図8B参照)。
【0061】
以上に説明したように、本発明によれば、1つの溝部が、互いに異なる方向に延在して延在方向に同一の幅とされている第1の直線溝部および第2の直線溝部を備えるようにしたので、溝とスペーサとを用いた位置合わせがより容易に実施できるようになる。
【0062】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、
図7A〜
図7F,
図8Bを用いて説明した全ての溝部は、前述した全ての実施の形態に組み合わせて用いることができる。
【0063】
本発明の光接続構造は、光接続構造に対する入力信号光がどのような形で入力されるか、あるいは出力信号光がどのような形で出力されるかについては特に限定しない。例えば、入力信号光であれば、空間光学系による入力、光ファイバブロック接着を介した光ファイバによる入力、平面光波回路の端面に光信号入力面が存在せず平面光波回路上や内部に配置されたレーザーダイオードなどの発光素子・変調素子からの入力、などの任意の方式を用いて構わない。また、出力信号光であれば、空間光学系による出力、光ファイバブロック接着を介した光ファイバによる出力、平面光波回路の端面に光信号出力面が存在せず平面光波回路上や内部に配置されたフォトダイオードなどの受光素子への出力、などの任意の方式を用いて構わない。
【0064】
また、本発明では、光接続構造を構成する平面光波回路が、どのような光回路を持つかにつては特に限定しない。上述した説明で用いた光回路は、単純な直線光導波路から構成した、あくまで例示であり、これに限定するものではない。光接続構造技術ならびに本発明は、光回路の種類や構成に対して独立したものとなっている。
【0065】
さらに、上述した説明では、スペーサを、光ファイバや鋼球から構成したが、これに限るものではなく、溝部(主溝部)と適切に嵌合するのであれば、他の形状、他の部材を用いてもかまわない。具体的には、スペーサの材料としてはガラス・金属・セラミック・ポリマーなどを任意に採用することがでる。ガラス・金属・セラミックなどからスペーサを構成する場合、予め、溝部の平面形状と同形状に曲げておけばよい。なお、スペーサは、溝部の延在する方向の断面として、第1の直線溝部および第2の直線溝部の幅以上の直径の円形となる断面をもっていればよい。また、基本的なスペーサの形状としては、円柱・球に限らず、円筒・台形・多角柱・ラグビーボール形状などでも任意に採用することができる。
【0066】
また、上述では、平面光波回路の材料をシリコン系としたが、これに限るものではなく、材料系は任意に選択できる。例えば、光導波路は、石英系に限らず、コアをシリコンなどの半導体,化合物半導体から構成してもよい。例えば、TaO
2/SiO
2系やニオブ酸リチウム系といった誘電体材料系の材料による光導波路構造を持つ平面光波回路や、シリコンフォトニクス材料系による平面光波回路などを任意に採用することができる。