(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
パッシベーション膜を有する太陽電池の製造方法であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面被覆膜の形成方法により前記パッシベーション膜を製造することを含む、太陽電池の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を説明するが、これらに本発明が限定されるものではない。
【0017】
〔1〕表面被覆膜形成用組成物
本発明の形成方法に用いられる表面被覆膜形成用組成物は、表面被覆膜形成用化合物成分として、Si、Ti、及びZrから選択される元素を含み有機溶剤成分に可溶な化合物(以下、4価化合物とも記す。)と、原子価3を有する金属元素から選択される元素を含み有機溶剤成分に可溶な化合物(以下、3価化合物とも記す。)と、を含む。3価化合物及び4価化合物は、いずれも加熱されることにより酸化物に変化する。
【0018】
また、表面被覆膜形成用組成物は有機溶剤成分を含む。前述の4価化合物及び3価化合物は有機溶剤成分に可溶であるため、表面被覆膜形成用組成物は均一な溶液として調製される。このため、4価化合物と、3価化合物と、有機溶剤成分とを含む表面被覆膜形成用組成物を用いることで、被覆対象母材の表面に均一な塗布膜を容易に形成することができる。
【0019】
以下、4価化合物、3価化合物、及び有機溶剤成分について順に説明する。
【0020】
<4価化合物>
4価化合物は、Si、Ti、及びZrから選択される元素を含み有機溶剤成分に可溶な化合物である。Si、Ti、及びZrから選択される元素を含有する4価化合物の例としては、Ti又はZrの硝酸塩、Si、Ti、又はZrのハロゲン化物、Si、Ti、又はZrにアルコキシ基のような加水分解性基が結合した化合物、Ti又はZrに有機配位子が配位した有機金属錯体が挙げられる。有機金属錯体中のTi又はZrには、アルコキシ基のような加水分解性基が結合していてもよい。4価化合物が加水分解性基を有する場合、このような4価化合物の部分加水分解縮合物も、4価化合物として使用することができる。4価化合物について、Siを含むケイ素化合物、Tiを含むチタン化合物、及びZrを含むジルコニウム化合物からなる群より選択される2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
4価化合物の部分加水分解縮合物は、加水分解により水酸基を生成し得る基を有する、ケイ素化合物、チタン化合物、又はジルコニウム化合物を、水及び酸触媒の存在下で加水分解することにより得ることができる。酸触媒は有機酸、無機酸のいずれも使用できる。
【0022】
無機酸としては、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等が使用でき、中でも、塩酸、硝酸が好適である。
【0023】
有機酸としては、ギ酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、氷酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、n−酪酸等のカルボン酸及び硫黄含有酸残基をもつ有機酸が用いられる。上記硫黄含有酸残基をもつ有機酸としては、有機スルホン酸が挙げられ、それらのエステル化物としては有機硫酸エステル、有機亜硫酸エステル等が挙げられる。
【0024】
水の添加量は、加水分解させるケイ素化合物、チタン化合物、又はジルコニウム化合物の合計1モル当たり、0.2〜4.0モルの範囲が好ましい。酸触媒は水を添加した後に加えてもよいし、あるいは、酸触媒と水とを予め混合してなる酸水溶液として加えてもよい。
【0025】
この加水分解は、適宜必要量の有機溶剤を混合して行われる。この有機溶剤としては、エチルアルコール等のアルコール類を用いることができる。
【0026】
以下、4価化合物について、Siを含むケイ素化合物と、Tiを含むチタン化合物と、Zrを含むジルコニウム化合物とについて説明する。
【0027】
(ケイ素化合物)
ケイ素化合物としては、4価ケイ素原子を含み、有機溶剤成分に可溶な化合物であれば特に限定されない。ケイ素化合物は、例えば、テトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物のように、2以上のケイ素原子を含んでいてもよい。ケイ素化合物は、2種以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。ケイ素化合物としては、下記式(1)で表される化合物が特に好ましい。
R
14−mSiX
1m・・・(1)
(式(1)中、R
1は有機基であり、X
1はアルコキシ基であり、mは2〜4の整数である。)
【0028】
R
1の有機基としては、特に限定なく広い範囲のものが使用可能である。有機基は、N、O、S、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。有機基の好適な例としては、直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基又は親水性基を有するものが挙げられる。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基としては、後述のR
11と同様のものが挙げられる。また親水性基を有する有機基としては、例えば、以下の一般式(5)で表されるものが例示できる。
R
11−ES−R
12−・・・(5)
【0029】
ここで、R
11は直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、ESはエステル結合を表し、R
12はアルキレン基を表す。上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基の炭素原子数は、1〜10が好ましく、2〜6がより好ましい。また。上記アルキレン基の炭素原子数は、1〜10が好ましく、2〜6がより好ましい。
【0030】
親水性基としては例えば、水酸基、カルボニル基、エーテル基、特にカルボニル基の中でもエステル基(エステル結合)が挙げられる。また、R
1の炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい。
【0031】
式(1)で表されるケイ素化合物中に、有機基R
1が2つ存在する場合には、各有機基は同一であっても異なっていてもよい。
【0032】
X
1はアルコキシ基であり、特に炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。炭素数1〜5のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基を挙げることができる。式中にX
1が2つ以上存在する場合、複数は同一でも異なっていてもよい。
【0033】
式(1)で表されるケイ素化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、アリルアミノトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、ジイソプロポキシジ−n−ブトキシシラン、ジ−tert−ブトキシジイソプロポキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトライソオクチルオキシシラン、テトラステアリルオキシシラン等が挙げられる。
【0034】
(チタン化合物)
チタン化合物としては、4価チタン原子を含み、有機溶剤成分に可溶な化合物であれば特に限定されない。チタン化合物は、例えば、テトラアルコキシチタンの部分加水分解縮合物のように、2以上のチタン原子を含んでいてもよい。チタン化合物は、2種以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。チタン化合物としては、下記式(4)で表される化合物が特に好ましい。
R
44−qTiX
4q・・・(4)
(式(4)中、R
4は有機基又は一価の有機配位子であり、X
4はアルコキシ基であり、qは2〜4の整数である。)
【0035】
R
4は、有機基又は1価の有機配位子である。配位子が1価であるとは、金属元素に対して、金属元素の価数と同数の配位子が配位可能であることを意味する。
【0036】
R
4が有機基である場合、当該有機基は、式(1)で表されるケイ素化合物が有するR
1について説明したものと同様である。
【0037】
R
4が一価の有機配位子である場合、一価の有機配位子としては、アルカノールアミン類、カルボン酸類、ヒドロキシカルボン酸(塩)類、β−ジケトン、β−ケトエステル、ジオール類、及びアミノ酸類等が挙げられる。
【0038】
アルカノールアミン類の具体例としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンが挙げられる。カルボン酸類の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸(塩)類の具体例としては、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、及びサリチル酸、並びにこれらの塩が挙げられる。β−ジケトンの具体例としては、アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、及び2,4−ヘプタンジオンが挙げられる。β−ケトエステルの具体例としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、及びアセト酢酸−n−ブチルが挙げられる。ジオール類の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、及びオクチレングリコール等が挙げられる。
【0039】
X
4はアルコキシ基であり、当該アルコキシ基は、式(1)で表されるケイ素化合物が有するX
1について説明したものと同様である。
【0040】
式(4)で表されるチタン化合物としては、例えば、アリルトリメトキシチタン、アリルトリエトキシチタン、ジアリルジメトキシチタン、ジアリルジエトキシチタン、アリルアミノトリメトキシチタン、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、ジイソプロポキシジ−n−ブトキシチタン、ジ−t−ブトキシジイソプロポキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトライソオクチルオキシチタン、及びテトラステアリルオキシチタン等のテトラアルコキシチタン又はオルガノアルコキシチタン;ジイソプロポキシチタンビス(ジエタノールアミネート)、トリイソプロポキシチタンモノ(ジエタノールアミネート)、ジ−n−ブトキシチタンビス(ジエタノールアミネート)、ジメトキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジエトキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、トリイソプロポキシチタンモノ(トリエタノールアミネート)、及びジ−n−ブトキシチタンビス(トリエタノールアミネート)等のアルカノールアミン−アルコキシチタンキレート化合物;ジルコニウムテトラキス(ジエタノールアミネート)、イソプロポキシジルコニウムトリス(ジエタノールアミネート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(ジエタノールアミネート)、トリイソプロポキシジルコニウムモノ(ジエタノールアミネート)、ジブトキシジルコニウムビス(ジエタノールアミネート)、ジルコニウムテトラキス(トリエタノールアミネート)、ジメトキシジルコニウムビス(トリエタノールアミネート)、ジエトキシジルコニウムビス(トリエタノールアミネート)、イソプロポキシジルコニウムトリス(トリエタノールアミネート)、ジイソプロポキシジルコニウムビス(トリエタノールアミネート)、トリイソプロポキシジルコニウムモノ(トリエタノールアミネート)、ジ−n−ブトキシジルコニウムビス(トリエタノールアミネート)等のアルカノールアミン−アルコキシジルコニウムキレート化合物;ジメトキシチタンビス(アセチルアセトナート)、ジエトキシチタンビス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、ジ−n−プロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、及びジ−n−ブトキシチタンビス(アセチルアセトナート)等のβ−ジケトンキレート−アルコキシチタン化合物;ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)等のβ−ケトエステル−アルコキシチタンキレート化合物;ジオクチロキシチタンビス(オクチレングリコレート)等のアルコキシチタン−ジオールキレート化合物が挙げられる。
【0041】
(ジルコニウム化合物)
ジルコニウム化合物としては、4価ジルコニウム原子を含み、有機溶剤成分に可溶な化合物であれば特に限定されない。ジルコニウム化合物は、例えば、テトラアルコキシジルコニウムの部分加水分解縮合物のように、2以上のジルコニウム原子を含んでいてもよい。ジルコニウム化合物は、2種以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。ジルコニウム化合物としては、下記式(3)で表される化合物が特に好ましい。
R
34−pZrX
3p・・・(3)
(式(3)中、R
3は有機基又は一価の有機配位子であり、X
3はアルコキシ基であり、pは2〜4の整数である。)
【0042】
R
3が有機基である場合、当該有機基は、式(1)で表されるケイ素化合物が有するR
1について説明したものと同様である。
【0043】
R
3が一価の有機配位子である場合、当該有機配位子は、式(4)で表されるチタン化合物が有するR
4について説明したものと同様である。
【0044】
X
3はアルコキシ基であり、当該アルコキシ基は、式(1)で表されるケイ素化合物が有するX
1について説明したものと同様である。
【0045】
式(3)で表されるジルコニウム化合物としては、例えば、アリルトリメトキシジルコニウム、アリルトリエトキシジルコニウム、ジアリルジメトキシジルコニウム、ジアリルジエトキシジルコニウム、アリルアミノトリメトキシジルコニウム、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトライソブトキシジルコニウム、ジイソプロポキシジ−n−ブトキシジルコニウム、ジ−t−ブトキシジイソプロポキシジルコニウム、テトラ−t−ブトキシジルコニウム、テトライソオクチルオキシジルコニウム、及びテトラステアリルオキシジルコニウム等のテトラアルコキシジルコニウム又はオルガノアルコキシジルコニウム;トリ−n−ブトキシジルコニウムモノ(アセチルアセトナート)、及びジ−n−ブトキシジルコニウムビス(アセチルアセトナート)等のβ−ジケトン−アルコキシジルコニウムキレート化合物;ジブトキシジルコニウムビス(エチルアセトアセテート)等のβ−ケトエステル−アルコキシジルコニウムキレート化合物が挙げられる。
【0046】
4価化合物について、Tiを含むチタン化合物又はZrを含むジルコニウム化合物を用いることが好ましい。4価化合物としてチタン化合物又はジルコニウム化合物を含む表面被覆膜形成用組成物を用いることで、長期のライフタイムと、高屈折率であることによる反射防止膜としての高い性能とが両立された表面被覆膜を形成することができる。
【0047】
<3価化合物>
3価化合物は、原子価3を有する金属元素から選択される元素を含み有機溶剤成分に可溶な化合物である。ここで、原子価が3であるとは、3価化合物中での金属元素の原子価が3であることを意味する。3価化合物に含まれる好適な金属元素としてはAlが挙げられる。
【0048】
アルミニウムを含有する3価化合物の例としては、アルミニウムの硝酸塩、ハロゲン化物、アルコキシ基のような加水分解性基を有する有機アルミニウム化合物、及びアルミニウムに有機配位子が配位したアルミニウム錯体が挙げられる。アルミニウム錯体中のアルミニウム原子には、アルコキシ基のような加水分解性基が結合していてもよい。アルミニウムを含有する3価化合物が加水分解性基を有する場合、このような3価化合物の部分加水分解縮合物も、3価化合物として使用することができる。3価化合物として使用されるアルミニウム化合物は、2種以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。3価化合物として使用されるアルミニウム化合物としては、下記式(2)で表される化合物が特に好ましい。
R
23−nAlX
2n・・・(2)
(式(2)中、R
2は一価の有機配位子であり、X
2はアルコキシ基であり、nは0〜3の整数である。)
【0049】
R
2は一価の有機配位子であり、当該有機配位子は、式(4)で表されるチタン化合物が有するR
4について説明したものと同様である。
【0050】
X
2はアルコキシ基であり、当該アルコキシ基は、式(1)で表されるケイ素化合物が有するX
1について説明したものと同様である。
【0051】
式(2)で表されるアルミニウム化合物としては、例えば、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、及びトリ−n−ブトキシアルミニウム等のトリアルコキシアルミニウム;ジメトキシアルミニウムモノ(アセチルアセトナート)、ジエトキシアルミニウムモノ(アセチルアセトナート)、ジ−n−プロポキシアルミニウムモノ(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシアルミニウムモノ(アセチルアセトナート)、ジ−n−ブトキシアルミニウムモノ(アセチルアセトナート)、モノメトキシアルミニウムビス(アセチルアセトナート)、モノエトキシアルミニウムビス(アセチルアセトナート)、モノ−n−プロポキシアルミニウムビス(アセチルアセトナート)、モノイソプロポキシアルミニウムビス(アセチルアセトナート)、及びモノ−n−ブトキシアルミニウムビス(アセチルアセトナート)等のβ−ジケトン−アルコキシアルミニウムキレート化合物;ジメトキシアルミニウムモノ(エチルアセトアセテート)、ジエトキシアルミニウムモノ(エチルアセトアセテート)、ジ−n−プロポキシアルミニウムモノ(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシアルミニウムモノ(エチルアセトアセテート)、ジ−n−ブトキシアルミニウムモノ(エチルアセトアセテート)、モノメトキシアルミニウムビス(エチルアセトアセテート)、モノエトキシアルミニウムビス(エチルアセトアセテート)、モノ−n−プロポキシアルミニウムビス(エチルアセトアセテート)、モノイソプロポキシアルミニウムビス(エチルアセトアセテート)、及びモノ−n−ブトキシアルミニウムビス(エチルアセトアセテート)等のβ−ケトエステル−アルコキシアルミニウムキレート化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、及びアルミニウムトリス(メチルアセトアセテート)等のアルミニウム錯体が挙げられる。
【0052】
式(2)で表されるアルミニウム化合物は、式(1)で表されるケイ素化合物、式(4)で表されるジルコニウム化合物、又は式(3)で表されるジルコニウム化合物と組み合わせて表面被覆膜形成用組成物に配合されるのが好ましい。
【0053】
表面被覆膜形成用組成物がケイ素化合物とアルミニウム化合物とを含む場合、表面被覆膜形成用組成物中のケイ素化合物及びアルミニウム化合物の量は、表面被覆膜形成用組成物を用いて形成される表面被覆膜中のケイ素及びアルミニウムの量が、SiO
2:Al
2O
3(質量比)として、1:99〜99:1、好ましくは、5:95〜95:5、より好ましくは10:90〜90:10となる量であるのがよい。
【0054】
表面被覆膜形成用組成物がチタン化合物とアルミニウム化合物とを含む場合、表面被覆膜形成用組成物中のチタン化合物及びアルミニウム化合物の量は、表面被覆膜形成用組成物を用いて形成される表面被覆膜中のチタン及びアルミニウムの量が、TiO
2:Al
2O
3(質量比)として、1:99〜99:1、好ましくは、5:95〜95:5、より好ましくは10:90〜90:10、特に好ましくは50:50〜80:20となる量であるのがよい。
【0055】
表面被覆膜形成用組成物がジルコニウム化合物とアルミニウム化合物とを含む場合、表面被覆膜形成用組成物中のジルコニウム化合物及びアルミニウム化合物の量は、表面被覆膜形成用組成物を用いて形成される表面被覆膜中のジルコニウム及びアルミニウムの量が、ZrO
2:Al
2O
3(質量比)として、1:99〜99:1、好ましくは、5:95〜95:5、より好ましくは10:90〜90:10、特に好ましくは20:80〜60:40、最も好ましくは40:60〜60:40となる量であるのがよい。
【0056】
表面被覆膜形成用組成物中の4価化合物の含有量と3価化合物の含有量との合計は、表面被覆膜形成用組成物中の粘度、表面被覆膜形成用組成物を用いて形成される表面被覆膜の膜厚、及び4価化合物及び3価化合物の有機溶剤成分に対する溶解度を勘案して適宜定められる。表面被覆膜形成用組成物中の4価化合物の含有量と3価化合物の含有量との合計は、典型的には、1〜20質量%であるのが好ましく、2〜15質量%であるのが好ましい。
【0057】
<有機溶剤成分>
表面被覆膜形成用組成物中の固形分濃度は有機溶剤成分を含む。このため、表面被覆膜形成用組成物を、被覆対象母材の表面に容易に塗布することができる。有機溶剤成分は、表面被覆膜形成用組成物を用いて形成される塗布膜を加熱又は焼成することにより、塗布膜中から除去可能なものであれば特に限定されない。有機溶剤成分の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールのような一価アルコール類や、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトンのようなケトン類が好適に挙げられる。これらの有機溶剤成分は単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
〔2〕表面被覆膜形成方法
本発明の表面被覆膜形成用組成物を用いて表面被覆膜を形成するには、被覆対象母材上に本発明の表面被覆膜形成用組成物を塗布し、焼成すればよい。この表面被覆膜形成方法は、高価な真空装置を必要とせず、作業も簡易に行うことができるため、最終製品のコストを低減できる。
【0059】
具体的には、例えば、本発明の表面被覆膜形成用組成物を所定の膜厚となるように、被覆対象母材上に、スピンコート法、スプレー法、インクジェット法、スクリーン印刷法、転写印刷法等の塗布又は印刷方法を用いる。その際、塗布膜の膜厚は、適用するデバイスにより焼成後に必要な膜厚を考慮して適宜選択される。
【0060】
次いで、塗布された表面被覆膜形成用組成物を、ホットプレート、加熱乾燥炉等で加熱して溶剤を揮発させた後、さらに焼成炉中で焼成して、塗布膜中の4価化合物や3価化合物からハロゲン、窒素酸化物、有機基等を脱離させながら、所定の3価元素と4価元素とを含む複合酸化物を生成させる。この際の焼成温度は、例えば、200℃以上、好ましくは、250〜1000℃程度で行う。通常、焼成に要する時間は、1秒〜180分の広い範囲で選ぶことが可能であるが、太陽電池等の量産性が要求されるプロセスでは、3秒〜30分の範囲が望ましい。
【0061】
また、焼成の際、上記塗布膜を真空又はガス雰囲気下で加熱することが好ましい。用いるガスとしては、酸素、窒素、水素、アルゴン及びこれらの混合雰囲気等、特に限定されることなく、目的に応じ使用できる。窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いると、表面被覆膜に欠陥が生じにくいため好ましい。特に、表面被覆膜を半導体のパッシベーション膜として設ける場合には、不活性ガス中で焼成を行うことは膜の特性が向上するために好ましい。また、混合雰囲気の場合は、上記不活性ガスと水素ガス又は酸素ガス等の活性ガスを混合することが好ましく、活性ガスを全体の1〜10%の範囲で混合させることが好ましい。
【0062】
〔3〕被覆対象母材
被覆対象母材とは、表面被覆膜を形成する対象となる材料である。被覆対象母材としては、樹脂、ガラス、半導体等、様々なものが特に制限なく使用でき、適用される最終製品も様々である。表面被覆膜の使用目的としては、絶縁膜、反射防止膜、半導体のパッシベーション膜としての使用が考えられるが、特に太陽電池の反射防止膜やパッシベーション膜として適用すると有効である。
【0063】
上記太陽電池は、シリコン基板と、シリコン基板の受光面(太陽光が入射する側の表面)上、あるいは、反対面に形成された前述の4価化合物と3価化合物とを含む表面被覆膜形成用組成物を用いて形成されたパッシベーション膜とを含む。
【0064】
このような構成をとることにより、シリコン基板表面に存在する界面準位を介して、キャリアが再結合をして失われることを防止し、太陽電池の最大電力を向上させることができる。また、その高い屈折率から、シリコン基板の受光面に複合膜が設けられた場合には、反射防止膜としても機能することができるので、太陽光の反射を防止し、結果として、太陽電池の最大電力をさらに向上させることができる。また、表面の保護や反射防止能を向上するために、本発明の作成方法を用いて設けた表面被覆膜の外側に、他の膜をさらに設けてもよい。
【実施例】
【0065】
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0066】
〔調製例1〕
テトラエトキシシラン208gと、エチルアルコール700gと、氷酢酸228gとを室温で攪拌しながら混合した。次いで、得られた混合液を攪拌しながら、純水17gと、濃塩酸1.7gとを混合液に加えた。その後、純水と塩酸とを含む混合液を3時間攪拌し続けた。攪拌停止後、混合液を室温下で1日静置した。静置後の混合液を、エチルアルコール490gを用いて希釈して、ケイ素化合物溶液Aを得た。得られたケイ素化合物溶液Aを500℃、1時間加熱して固形分濃度を測定したところ、固形分濃度は4質量%であった。
【0067】
〔調製例2〕
テトラ−n−ブトキシジルコニウム384gと、n−ブチルアルコール100gと、エチルアルコール553gと、酢酸90gとを、室温で攪拌しながら混合した。混合直後に、反応の進行による若干の発熱が生じた。混合後、5時間攪拌を続けた。5時間の攪拌に次いで、混合液にアセチルアセトン100gを加えた後、混合液をさらに3時間攪拌し続けた。混合液にエチルアルコール1795gを加えた後、混合液を室温で2時間攪拌した。このようにしてジルコニウム化合物溶液を得た。得られたジルコニウム化合物溶液を500℃、1時間加熱して固形分濃度を測定したところ、固形分濃度は4質量%であった。
【0068】
〔調製例3〕
ジイソプロポキシアルミニウムモノ(エチルアセトアセテート)274gと、イソプロピルアルコール100gと、エチルアルコール806gとを、室温で2時間攪拌しながら混合した。得られた混合液に酢酸60gを加えた後、さらに混合液を3時間攪拌した。混合液をエチルアルコール1795gで希釈した後、希釈された混合液を室温で2時間攪拌して、アルミニウム化合物溶液Aを得た。得られたアルミニウム化合物溶液Aを500℃、1時間加熱して固形分濃度を測定したところ、固形分濃度は4質量%であった。
【0069】
〔調製例4〕
テトライソプロポキシチタン284gと、氷酢酸90gと、エチルアルコール1795gとを、室温で攪拌しながら混合した。混合直後に、反応の進行による若干の発熱が生じた。得られた混合液を3時間攪拌した後、混合液にアセチルアセトン480gを加えた。引き続き混合液を3時間攪拌してチタン化合物溶液を得た。得られたチタン化合物溶液を500℃、1時間加熱して固形分濃度を測定したところ、固形分濃度は3質量%であった。
【0070】
〔調製例5〕
テトラエトキシシラン208gと、エチルアルコール700gと、氷酢酸228gとを室温で攪拌しながら混合した。次いで、得られた混合液を攪拌しながら、純水17gと、濃塩酸1.7gとを混合液に加えた。その後、純水と塩酸とを含む混合液を3時間攪拌し続けた。攪拌停止後、混合液を室温下で1日静置した。静置後の混合液を、エチルアルコール1039gを用いて希釈して、ケイ素化合物溶液Bを得た。得られたケイ素化合物溶液Bを500℃、1時間加熱して固形分濃度を測定したところ、固形分濃度は3質量%であった。
【0071】
〔調製例6〕
上記アルミニウム化合物溶液Aの希釈液量を調製して固形分濃度3質量%のアルミニウム化合物溶液Bを得た。
【0072】
以下の実施例、比較例における少数キャリアのライフタイムの評価条件を記載する。
(ライフタイム)
ライフタイムは擬定常状態光導電法(QSSPC法)により測定した。測定器にはSinton社製の測定器を用いた。なお、実施例、比較例におけるライフタイムは、過剰キャリア密度が10
15cm
−3での値である。
【0073】
〔実施例1〜5、比較例1、及び比較例2〕
実施例1〜5について、ケイ素化合物溶液Aと、アルミニウム化合物溶液Aとを、表1に記載の量で混合して、ケイ素化合物及びアルミニウム化合物を、表1に記載のSiO
2:Al
2O
3換算比(質量比)で含有する表面被覆膜形成用組成物を得た。
比較例1については、ケイ素化合物溶液Aを表面被覆膜形成用組成物として用いた。比較例2については、アルミニウム化合物溶液Aを表面被覆膜形成用組成物として用いた。
スピンコーターを用いて3000rpmの条件で、得られた表面被覆膜形成用組成物を、p型シリコンウェハーの両面に塗布した。形成された塗布膜を、ホットプレート上で200℃、1分間ホットプレート上で乾燥させた後、加熱炉にて窒素雰囲気下、650℃で15分間焼成を行って表面被覆膜を形成した。形成された表面被覆膜の膜厚を表1に記す。
また、各実施例及び比較例で形成された表面被覆膜の屈折率を測定し、各実施例及び比較例で得られた表面被覆膜形成用組成物を用いて形成された表面被覆膜を備えるp型シリコンウェハーについて、上記の方法に従いライフタイムを測定した。屈折率の測定結果と、ライフタイムの測定結果を表1に記す。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例1〜5と、比較例1及び2との比較によれば、ケイ素化合物とアルミニウム化合物とを含む表面被覆膜形成用組成物を用いて形成されたSiO
2とAl
2O
3とを含む表面被覆膜のライフタイムが、ケイ素化合物のみ、又はアルミニウム化合物のみを含む表面被覆膜形成用組成物を用いて形成された、SiO
2のみ、またAl
2O
3のみからなる表面被覆のライフタイムよりも顕著に長いことが分かる。
【0076】
〔実施例6〜10、及び比較例3〕
実施例6〜10について、ジルコニウム化合物溶液と、アルミニウム化合物溶液Aとを、表2に記載の量で混合して、ジルコニウム化合物及びアルミニウム化合物を、表2に記載のZrO
2:Al
2O
3換算比(質量比)で含有する表面被覆膜形成用組成物を得た。
比較例3については、ジルコニウム化合物溶液を表面被覆膜形成用組成物として用いた。
スピンコーターを用いて3000rpmの条件で、得られた表面被覆膜形成用組成物を、p型シリコンウェハーの両面に塗布した。形成された塗布膜を、ホットプレート上で200℃、1分間ホットプレート上で乾燥させた後、加熱炉にて窒素雰囲気下、650℃で15分間焼成を行って表面被覆膜を形成した。形成された表面被覆膜の膜厚を表2に記す。
また、各実施例及び比較例で形成された表面被覆膜の屈折率を測定し、各実施例及び比較例で得られた表面被覆膜形成用組成物を用いて形成された表面被覆膜を備えるp型シリコンウェハーについて、上記の方法に従いライフタイムを測定した。屈折率の測定結果と、ライフタイムの測定結果を表2に記す。
参考のために、比較例2の結果も表2に記す。
【0077】
【表2】
【0078】
実施例6〜10と、比較例2及び3との比較によれば、ジルコニウム化合物とアルミニウム化合物とを含む表面被覆膜形成用組成物を用いて形成されたZrO
2とAl
2O
3とを含む表面被覆膜のライフタイムが、ジルコニウム化合物のみ、又はアルミニウム化合物のみを含む表面被覆膜形成用組成物を用いて形成された、ZrO
2のみ、またAl
2O
3のみからなる表面被覆のライフタイムよりも顕著に長いことが分かる。中でも、ZrO
2:Al
2O
3換算比(質量比)が60:40〜20:80の範囲でライフタイムが向上することが確認できた。
【0079】
〔実施例11〜15、及び比較例4〕
実施例11〜15について、チタン化合物溶液と、アルミニウム化合物溶液Bとを、表3に記載の量で混合して、チタン化合物及びアルミニウム化合物を、表3に記載のTiO
2:Al
2O
3換算比(質量比)で含有する表面被覆膜形成用組成物を得た。
比較例4については、チタン化合物溶液を表面被覆膜形成用組成物として用いた。
スピンコーターを用いて3000rpmの条件で、得られた表面被覆膜形成用組成物を、p型シリコンウェハーの両面に塗布した。形成された塗布膜を、ホットプレート上で200℃、1分間ホットプレート上で乾燥させた後、加熱炉にて窒素雰囲気下、650℃で15分間焼成を行って表面被覆膜を形成した。形成された表面被覆膜の膜厚を表3に記す。
また、各実施例及び比較例で形成された表面被覆膜の屈折率を測定し、各実施例及び比較例で得られた表面被覆膜形成用組成物を用いて形成された表面被覆膜を備えるp型シリコンウェハーについて、上記の方法に従いライフタイムを測定した。屈折率の測定結果と、ライフタイムの測定結果を表3に記す。
参考のために、比較例2の結果も表3に記す。
【0080】
【表3】
【0081】
実施例11〜15と、比較例2及び4との比較によれば、チタン化合物とアルミニウム化合物とを含む表面被覆膜形成用組成物を用いて形成されたTiO
2とAl
2O
3とを含む表面被覆膜のライフタイムが、チタン化合物のみ、又はアルミニウム化合物のみを含む表面被覆膜形成用組成物を用いて形成された、TiO
2のみ、またAl
2O
3のみからなる表面被覆のライフタイムよりも顕著に長いことが分かる。中でも、TiO
2:Al
2O
3換算比(質量比)が80:20〜50:50の範囲でライフタイムが向上することが確認できた。
【0082】
〔比較例6〜8〕
比較例6ではケイ素化合物溶液B500gとチタン化合物溶液500gとを混合して、表面被覆膜形成用組成物を得た。比較例7ではケイ素化合物溶液B200gとチタン化合物溶液800gとを混合して、表面被覆膜形成用組成物を得た。
比較例6及び比較例7の表面被覆膜形成用組成物を用いて、実施例1と同様にして、p型シリコンウェハー上に表面被覆膜を形成した。
比較例6及び比較例7で得られた表面被覆膜形成用組成物を用いて形成された表面被覆膜について屈折率を測定した。また、比較例6及び比較例7で得られた表面被覆膜形成用組成物を用いて形成された表面被覆膜を備えるp型シリコンウェハーについて、上記の方法に従いライフタイムを測定した。屈折率の測定結果と、ライフタイムの測定結果を表3に記す。
参考のため、実施例3、5、8、10、及び13の結果を表3にあわせて記す。
【0083】
【表4】
【0084】
表4によれば、SiO
2:TiO
2(質量比)と、SiO
2:Al
2O
3(質量比)、ZrO
2:Al
2O
3(質量比)、又はTiO
2:Al
2O
3(質量比)とが同一である場合、SiO
2とAl
2O
3とを含む表面被覆膜、ZrO
2とAl
2O
3とを含む表面被覆膜、及びTiO
2とAl
2O
3とを含む表面被覆膜のライフタイムが、SiO
2とTiO
2とを含む従来知られる表面被覆膜と比較して、(特に換算比(質量比)が50:50の場合)顕著に長いことが分かる。