(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アノードの厚さ方向における前記本体部の幅は、前記アノードの厚さより小さく、前記本体部の前記厚さ方向の中心は、前記アノードの前記厚さ方向の中心より前記アノードの裏面側に配置されることを特徴とする、請求項1または2記載の給電体。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体回路の配線やバンプ形成方法において、めっき処理を行って半導体ウエハ等の基板上に金属膜や有機質膜を形成する方法が用いられるようになってきている。例えば、半導体回路やそれらを接続する微細配線が形成された半導体ウエハの表面の所定個所に、金、銀、銅、はんだ、ニッケル、あるいはこれらを多層に積層した配線やバンプ(突起状接続電極)を形成する。このバンプを介してパッケージ基板の電極やTAB(Tape Automated Bonding)電極に半導体回路等を接続する。この配線やバンプの形成方法としては、電気めっき法、無電解めっき法、蒸着法、印刷法といった種々の方法がある。半導体チップのI/O数の増加、狭ピッチ化に伴い、微細化に対応可能で膜付け速度の速い電気めっき法(例えば特許文献1)が多く用いられるようになってきている。現在最も多用されている電気めっきによって得られる金属膜は、高純度で、膜形成速度が速く、膜厚制御方法が簡単であるという特長がある。
【0003】
配線の微細化の要求がますます高まり、基板上に形成される配線の微細化に伴って、アノードへの通電の安定性のレベルが従来よりも高く求められるようになった。
【0004】
図18は、基板とアノードを垂直に配置したいわゆる縦型浸漬式のめっき装置の従来例を示す概略図である。このめっき装置は、内部にめっき液Q1を保有するめっき槽34内に、アノードホルダ156に保持したアノード5と、基板ホルダ18に保持した基板WFとを両者の面が平行になるように対向して設置する。めっき電源105によってアノード5と基板WF間に通電することで基板ホルダ18から露出している基板WFの被めっき面W1に電気めっきを行う。なお、めっき槽34には、めっき液供給口111からめっき槽34内に供給しためっき液Q1をめっき液排出口112から排出して循環させるめっき液循環手段106が設けられている。
【0005】
アノード5への給電には、アノード5の外周に給電バンドを接触させて行う方式がある。すなわち、アノードホルダ156に、アノード5を取り付ける場合に、アノード5の外周にバンドを接触させてバンドを装着する。バンドを装着したアノード5を有するアノードホルダ156を、めっき液中で基板と対向させる。めっき時は、アノード5にバンドを介して給電する(特許4942580号)。
【0006】
アノード5には、めっき電流により溶解する溶解性アノードとめっき電流により溶解しない不溶解性アノードがある。めっきプロセスにおいては、めっき液中の金属イオンが被めっき対象物に析出するとともに、めっき液中の金属イオン濃度が低下する。継続的にめっきを行うには、この濃度が低下した金属イオンをめっき液に継続的に補充していかなくてはならない。よって、一般に、不溶解性アノードを用いためっき装置は、めっき金属イオンをめっき液へ補充することをアノード溶解以外の方法で継続的に実施しなくてはならないため、溶解性アノードを用いためっき装置よりもコストがかかる。そのため、溶解性アノードを用いためっき装置が多く使用されてきた。特許4942580号に開示するアノードホルダ156に溶解性アノードを装着して、電解めっきを行う場合、以下の問題があることがわかった。すなわち、めっきの進行と共に溶解性アノードの厚さが減少するが、アノード5の外周部分も溶解する。そのためアノード5の直径が小さくなり、バンドとアノード5の接触状態が悪化する。バンドとアノード5の接触状態が悪化すると、
図19
に示すように通電が安定しない状態が生じることが分かってきた。
【0007】
図19は、アノード5に供給する電圧を示し、縦軸は電圧、横軸は時間である。曲線62は、めっき開始時の電圧を示し、曲線64は、めっきがある程度進行した時の電圧を示す。めっき電源105は定電流電源である。バンドとアノード5の接触状態が悪化すると、バンドとアノード5との間の接触抵抗が大きくなる。そのため、めっき開始時の電圧よりも、めっきがある程度進行した時の電圧の方が、電圧値が大きくなる。また、接触状態が悪化するため、曲線64は、ノイズを多く含む。
【0008】
アノード5の外周部分は、例えば以下の溶解量を示す。含りん銅(Cu−P)溶解性アノードの場合、めっき開始時に厚さ15mmのアノードが、めっきが進行して5mmにまで厚みが減った場合、アノード5の直径は、0.5mm程度、溶解することがある。このとき、アノード5の外周の長さは、めっき開始時よりも約1.57mm減少した。アノード5が溶解する前にアノード5に接触していたバンドは、アノード5の外周が、1.57mm分、減った場合、バンドの緩みが生じる。結果としてバンドとアノード5の接触状態が悪化し、上述のように給電が不安定になってしまう。
【0009】
溶解性アノードを用いて、電解めっきを行う場合、別の問題があることもわかった。バンドの継目部分(バンドの端部部分)は、アノード5の外周部がバンドにより被覆されていない。被覆されていないため、アノード5の外周部がめっき液に露出している。露出部分のアノード5の溶解速度は、バンドが接触してアノードが被覆されているアノード5の他の外周部に比べて大きくなる。含りん銅アノードの場合、例えば、めっき開始時に厚さ15mmのアノードが、めっきが進行して5mmにまで厚みが減った場合、2.5mmの凹みが露出部分のアノード5に生じることが新たにわかってきた。凹みもバンドの緩みの原因となり、アノード5への給電が不安定になる。
【0010】
溶解性アノードを装着して、電解めっきを行う場合、さらに、以下の問題があることがわかった。めっき開始時は、アノード5の厚みと、バンドの厚み方向の幅は、ほぼ一致する。従って、めっき開始時は、アノード5の厚み方向の中心と、バンドの厚み方向の中心は一致している。しかし、めっきが進行すると、アノード5の表面側は溶解して消滅するが、アノード5の裏面側は溶解しない。従って、バンドは、アノード5の表面側ではアノード5に接触せず、アノード5の裏面側ではアノード5に接触する。めっきが進行すると、アノード5の厚み方向の中心は、アノード5の裏面側に移動するが、バンドの厚み方向の中心は変化しない。これは、溶解したアノードの厚み方向の中心と、バンドの厚み方向の中心がずれることを意味する。中心がずれると、アノード5とバンドの接触状態が不安定になってしまうということもわかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような問題点を解消すべくなされたもので、その目的は、アノードの溶解が進行した時に、給電体とアノードとの接触状態の悪化を従来技術よりも低減できる給電体を提供することである。
【0013】
また、他の目的として、給電体の端部部分におけるアノードの溶解速度を従来技術よりも低減できる給電体を提供することである。
【0014】
また、他の目的として、アノードの溶解が進行した時に、アノードの厚み方向の中心と、給電体の厚み方向の中心のずれを、従来技術よりも低減できる給電体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、第1の形態では、基板をめっきする際に用いられるアノードに給電可能な給電体であって、前記アノードの外周に配置可能な本体部と、前記本体部に配置されて、前記本体部から、前記本体部が囲む領域に向かう方向に前記本体部に第1の力を加えることが可能な力付加部材とを有する給電体という構成を採っている。
【0016】
本実施形態では、本体部が囲む領域に向かう方向に本体部に力を加える力付加部材を有するため、アノードの溶解が進行した時に、給電体とアノードとの接触状態を良好に維持できる。すなわち、給電体とアノードとの接触状態の悪化を従来技術よりも低減できる。
【0017】
第2の形態では、前記力付加部材は、前記領域の外周方向における前記本体部の2つの端部のうちの少なくとも1つに配置される端部部材を有し、前記端部部材は、前記2つの端部を互いに接近させるように前記2つの端部に第2の力を加えることが可能であり、前記2つの端部に前記第2の力を加えることにより、前記本体部に前記第1の力を加えることが可能である給電体という構成を採っている。
【0018】
第3の形態では、前記力付加部材は、前記本体部の少なくとも2つの部分を連結する連結部材を有し、前記連結部材は、前記領域の外部に前記領域を横断する方向に配置され、かつ、前記少なくとも2つの部分を互いに接近させるように前記少なくとも2つの部分に前記第1の力を加えることが可能であることが可能である給電体という構成を採っている。
【0019】
第4の形態では、前記アノードの外周に配置可能な導電体を有し、前記本体部は、前記導電体の外周に配置可能である給電体という構成を採っている。
【0020】
第5の形態では、前記アノードの厚さ方向における前記本体部の幅は、前記アノードの厚さより小さい給電体という構成を採っている。
【0021】
第6の形態では、基板をめっきする際に用いられるアノードに給電可能な給電体であって、前記アノードの外周に配置可能な本体部と、前記本体部に配置されて、前記本体部から、前記本体部が囲む領域に向かう方向に前記本体部に第1の力を加えることが可能な力付加部材とを有し、前記力付加部材は、前記本体部の少なくとも2つの部分を連結する連結部材を有し、前記連結部材は、前記領域の外部に前記領域を横断する方向に配置され、かつ、前記少なくとも2つの部分を互いに接近させるように前記少なくとも2つの部分に前記第1の力を加えることが可能である給電体という構成を採っている。
【0022】
第7の形態では、基板をめっきする際に用いられるアノードに給電可能な給電体であって、前記アノードの外周に配置可能な導電体と、前記導電体の外周に配置可能な本体部とを有する給電体という構成を採っている。
【0023】
本実施形態では、アノードの外周に導電体があり、導電体の外周に本体部がある。従って、アノードと本体部との間に導電体があり、本体部の端部部分においてアノードは、導電体により被覆されている。アノードは、本体部の端部部分においてめっき液に露出していないため、アノードには露出部分が存在しない。このためアノードの溶解速度は、本体部の端部部分と、その他の部分において同じである。すなわち、本体部の端部部分におけるアノードの溶解速度を従来技術よりも低減できる。
【0024】
導電体の材料としては、イオン化傾向がアノード材料より小さい材料、もしくは不動態膜を形成してめっき液中で溶解しない材料が好ましい。イオン化傾向がアノード材料より小さい材料のうち、不動態膜を形成しない材料は、アノードとの間に局部電池を形成して、アノードを溶解させる可能性がある。従って、イオン化傾向がアノード材料より小さい材料のうち、不動態膜を形成しない材料よりも、不動態膜を形成する材料が好ましい。従って、導電体の材料としては、不動態膜を形成してめっき液中で溶解しない材料が、好ましい。
【0025】
第8の形態では、基板をめっきする際に用いられるアノードに給電可能な給電体であって、前記アノードの外周に配置可能な本体部を有し、前記アノードの厚さ方向における前記本体部の幅は、前記アノードの厚さより小さい給電体という構成を採っている。
【0026】
本実施形態では、めっき開始時は、アノードの厚さ方向における本体部の幅は、アノードの厚さより小さい。めっき開始時に、本体部をアノードの裏面側にできるだけ近づけて装着すると、本体部の厚み方向の中心を、アノードの厚み方向の中心よりもアノードの裏面側に近く配置することができる。めっきが進行すると、アノードの表面側は溶解して消滅するが、アノードの裏面側はアノード表面側の溶解に比較すると溶解は極めて小さい。アノードの厚さ方向における本体部の幅は、めっき開始時においてアノードの厚さより小さいため、めっき開始後においても本体部は、アノードに接触している幅の割合が従来よりも増える。めっきが進行すると、アノードの表面側が溶解し、アノードの厚み方向の中心は、アノードの裏面側に移動し、本体部の厚み方向の中心に接近してくる。アノードの厚み方向の中心が接近してくるため、アノードの厚み方向の中心と、本体部の厚み方向の中心のずれを、従来技術よりも低減できる。アノードと本体部の接触状態が不安定になることが従来技術よりも低減する。
【0027】
第9の形態では、第7及び第8の形態において前記本体部から、前記本体部が囲む領域に向かう方向に前記本体部に力を加えることが可能な力付加部材を有する給電体という構成を採っている。
【0028】
第10の形態では、前記アノードは、溶解アノードである、という構成を採っている。
【0029】
第11の形態では、めっき液を収容可能なめっき槽と、前記アノードが配置可能な、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の給電体と、前記基板を保持可能な基板ホルダと、前記給電体及び前記基板との間で通電可能なめっき電源と、を備え、前記基板ホルダを前記めっき液に浸漬させて、前記基板をめっき可能なめっき装置という構成を採っている。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同一または相当する部材には同一符号を付して重複した説明を省略する。
【0032】
図1は、本発明の実施形態の給電バンド(給電体)を備えためっき装置の全体配置図を示す。本実施形態において、基板にめっきを行うめっき装置は、例えば半導体基板の表面に形成されたバンプを形成するバンプめっき装置である。めっき装置は、基板の内部に設けた、直径10〜20μm、深さ70〜150μm程度の、アスペクト比が高く、深さの深いビアホールへのめっきを行うめっき装置等でもよい。本実施形態のめっき装置は、基板ホルダ18に基板をロードし、又は基板ホルダ18から基板をアンロードするロード/アンロード部170Aと、基板を処理する処理部170Bとに大きく分けられる。
【0033】
図1に示すように、ロード/アンロード部170Aには、カセットテーブル56と、アライナ14と、スピンドライヤ58が備えられている。2台のカセットテーブル56は、半導体ウェハ等の基板WFを収納したカセット54を搭載する。アライナ14は、基板WFのオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。スピンドライヤ58は、めっき処理後の基板WFを高速回転させて乾燥させる。アライナ14とスピンドライヤ58の近くには、基板ホルダ18を載置して基板WFの基板ホルダ18との着脱を行う基板着脱部20が設けられる。カセットテーブル56と、アライナ14と、スピンドライヤ58と、基板着脱部20の中央には、これらの間で基板WFを搬送する搬送用ロボットからなる基板搬送装置22が配置されている。
【0034】
そして、処理部170Bには、基板着脱部20側から順に、基板ホルダ18の保管及び一時仮置きを行うストッカ(ワゴン)24、基板WFを純水に浸漬させるプリウェット槽26、基板WFの表面に形成したシード層等の表面の酸化膜をエッチング除去するプリソーク槽28、基板WFの表面を純水で水洗する第1の水洗槽30a、洗浄後の基板WFの水切りを行うブロー槽32、第2の水洗槽30b及びめっき槽34が順に配置されている。このめっき槽34は、オーバーフロー槽36の内部に複数のめっきユニット38を収納して構成される。各めっきユニット38は、内部に1個の基板ホルダ18を収納して、銅めっき等のめっきを施すようになっている。
【0035】
更に、これらの各機器の側方に位置して、これらの各機器の間で基板ホルダ18を基板WFとともに搬送する、例えばリニアモータ方式を採用した基板ホルダ搬送部40が備えられている。この基板ホルダ搬送部40は、第1のトランスポータ42と、第2のトランスポータ44を有している。第1のトランスポータ42は、基板着脱部20とストッカ24との間で基板WFを搬送する。第2のトランスポータ44は、ストッカ24、プリウェット槽26、プリソーク槽28、水洗槽30a,30b、ブロー槽32及びめっき槽34との間で基板WFを搬送する。
【0036】
また、この基板ホルダ搬送部40のオーバーフロー槽36を挟んだ反対側には、駆動するパドル駆動装置46が配置されている。パドル駆動装置46は、各めっきユニット38の内部に位置してめっき液を攪拌する掻き混ぜ棒としてのパドル(図示せず)を駆動する。
【0037】
基板着脱部20は、レール50に沿ってスライド自在な平板状の2個の載置プレート52を備えている。この載置プレート52の各々に1個、合計2個の基板ホルダ18を水平状態で並列に載置する。2個の基板ホルダ18のうちの一方の基板ホルダ18と基板搬送装置22との間で基板WFの受渡しを行う。その後、この載置プレート52を横方向にスライドさせて、他方の基板ホルダ18と基板搬送装置22との間で基板WFの受渡しを行う。
【0038】
載置プレート52は、回転軸(図示せず)を中心に垂直位置、水平位置へ90°可動する。載置プレート52を垂直方向に回転させた後、基板ホルダ搬送部40へ基板ホルダ18を渡す。
【0039】
基板ホルダ18は、基板のめっき処理の際に、基板の端部及び裏面をめっき液からシールし被めっき面を露出させて保持する。また、基板ホルダ18は、基板の被めっき面の周縁部と接触し、外部電源(めっき電源)から給電するための接点を備えても良い。基板ホルダ18は、めっき処理前にストッカ24に収納され、めっき処理時には基板ホルダ搬送部40により、基板搬送装置22、めっき処理部の間を移動し、めっき処理後にワゴンへと再び収納される。めっき装置においては、基板ホルダ18に保持された基板をめっき槽34のめっき液に鉛直方向に浸漬し、めっき液をめっき槽34の下から注入しオーバーフローさせつつめっきが行われる。めっき槽34は、既述のように複数のめっきユニット38を有することが好ましい。各々のめっきユニット38では、1枚の基板を保持した1つの基板ホルダ18がめっき液に垂直に浸漬され、めっきされる。各々のめっきユニット38には基板ホルダ18の挿入部、基板ホルダ18への通電部、アノード、パドル攪拌装置、遮蔽板を備えていることが好ましい。アノードはアノードホルダに取り付けて使用し、基板と対向するアノードの露出面は基板と同心円状となっている。基板ホルダ18に保持された基板は、めっき処理部の各処理槽内の処理流体で処理が行われる。
【0040】
めっき処理部の各処理槽の配置は、例えば、めっき液を2液使用するタイプのめっき装置とする場合には、工程順に、前水洗槽、前処理槽、リンス槽、第1めっき槽、リンス槽、第2めっき槽、リンス槽、ブロー槽、といった配置としてもよいし、別の構成としてもよい。各処理槽の配置は工程順に配置することが、余分な搬送経路をなくす上で好ましい。めっき装置内部の、槽の種類、槽の数、槽の配置は、基板の処理目的により自由に選択可能である。
【0041】
基板ホルダ搬送部40の第1のトランスポータ42、第2のトランスポータ44は基板ホルダを懸架するアームを有し、アームは基板ホルダ18を垂直姿勢で保持するためのリフターを有する。基板ホルダ搬送部は、走行軸に沿って、基板着脱部20、めっき処理部の間をリニアモータなどの搬送機構(図示せず)により移動可能である。基板ホルダ搬送
部40は、基板ホルダ18を垂直姿勢で保持し搬送する。基板ホルダを収納するストッカは、複数の基板ホルダ18を垂直状態で収納することができる。
【0042】
ここで、めっき液の種類は、特に限られることはなく、用途に応じて様々なめっき液が用いられる。例えば、TSV(Through-Silicon Via、Si貫通電極)用めっきプロセスの場合のめっき液を用いることができる。
【0043】
また、めっき液としては、Cu配線を有する基板の表面に金属膜を形成するためのCoWB(コバルト・タングステン・ホウ素)やCoWP(コバルト・タングステン・リン)などを含むめっき液が用いられてもよい。また、絶縁膜中にCuが拡散することを防止するため、Cu配線が形成される前に基板の表面や基板の凹部の表面に設けられるバリア膜を形成するためのめっき液、例えばCoWBやTa(タンタル)を含むめっき液が用いられてもよい。
【0044】
以上のように構成されるめっき処理装置は、上述した各部を制御するように構成されたコントローラ(図示せず)を有する。コントローラは、所定のプログラムを格納したメモリ(図示せず)と、メモリのプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)(図示せず)と、CPUがプログラムを実行することで実現される制御部(図示せず)とを有する。制御部は、例えば、基板搬送装置22の搬送制御、基板ホルダ搬送部40の搬送制御、めっき槽34におけるめっき電流及びめっき時間の制御等を行うことができる。また、コントローラは、めっき装置及びその他の関連装置を統括制御する図示しない上位コントローラと通信可能に構成され、上位コントローラが有するデータベースとデータのやり取りをすることができる。ここで、メモリを構成する記憶媒体は、各種の設定データや後述するめっき処理プログラム等の各種のプログラムを格納している。記憶媒体としては、コンピューターで読み取り可能なROMやRAMなどのメモリや、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROMやフレキシブルディスクなどのディスク状記憶媒体などの公知のものが使用され得る。
【0045】
次に、給電バンド(給電体)の詳細について説明する。本発明の実施形態に係わる給電バンドを説明する前に、比較例としての給電バンドを説明する。比較例の給電バンドは、給電バンドの本体部が囲む領域に向かう方向に本体部に力を加えることが可能な力付加部材を有しない。
図2〜
図9は、比較例の給電バンドを示す図である。
図2はアノードを保持した給電バンドの正面図であり、
図3は給電バンドの側面図である。
【0046】
図2および
図3に示すように、本体部1は、チタン等の導電性の材料からなる帯状の薄板を円形にしたものである。円板状のアノード5が本体部1の内側に嵌められる。本体部の両端部1a,1bをボルト6およびナット7によって締め付けてアノード5を固定する。本体部1は、一例として、1mm〜3mmの厚さを有し、1cm〜2cmの幅を有する。なお、めっき対象物の基板WFが円板状なので、アノード5は基板と同じ形状の円板状になっている。また、アノード5は、外径150mm〜300mm、厚さ1cm〜2cmの円板状である。なお、本発明の実施形態では、基板WFの形状は円板状に限られず、三角形等の多角形も可能である。
【0047】
図4は、締結部の詳細を示す図であり、
図2のA部拡大図である。
図4に示すように、本体部1の両端部1a,1bにボルト6が挿通され、ボルト6にダブルナット7が螺合されることにより、アノード5は本体部1により締め付け固定される。これにより、円板状のアノード5の周縁部の全周又は略全周は本体部1の内周面に緊密に接触することになる。
【0048】
図2および
図4に示すように、本体部1の一方の端部1aには、ボルト8およびダブル
ナット9により導電性ブラケット2が固定されており、導電性ブラケット2の先端部に接点部3が設けられている。そして、接点部3がめっき槽に取り付けられている接点部(図示せず)と接触することにより、接点部に給電されるようになっている。
【0049】
図5は本体部1を示す斜視図である。
図5に示すように、本体部1は、細い帯状の薄板を湾曲させて円形にし、その両端部1a,1bを90°程度に折曲して形成されている。そして、本体部1の両端部1a,1bには、前記ボルト6を挿通するためのボルト挿通孔1cが形成されている。また本体部の一方の端部1aは他方の端部1bより長くなっていて、長い方の端部1aに前記ボルト8を挿通するための切り欠き1dが形成されている。
【0050】
次に、
図2〜
図5に示すアノード5および本体部1を保持するアノードホルダ156について
図6〜
図8を参照して説明する。
図6はアノードホルダの全体構成を示す部分断面正面図であり、
図7は
図6のVI−VI線断面図であり、
図8はアノードホルダの分解斜視図である。
【0051】
図6および
図7に示すように、アノードホルダ156は、アノードホルダベース11と、裏面カバー12と、アノードマスク13とから構成されている。アノードホルダベース11は、本体部1に保持されたアノード5を取り付けるためのものである。裏面カバー12は、アノードホルダベース11の背面側に取り付けられアノード5の裏面側を押さえる。アノードマスク13は、アノードホルダベース11の前面側に取り付けられアノード5の前面側の一部を覆う。
【0052】
図8に示すように、アノードホルダベース11は略矩形状の薄板から構成され、その中央部に本体部1に保持されたアノード5を収容するための円形状の収容孔11aを有している。またアノードホルダベース11の上端には、消耗したアノードを交換する際にロボットで搬送可能とするための略T字状の一対のハンド11b,11bが形成されている。
図6に示すように、本体部1に接続された導電性ブラケット2の先端部の接点部3は、ハンド11bの下部により保持されている。さらに、アノードホルダベース11の下部には、
図7に示すように、アノード交換時、めっき槽より持ち上げたときにめっき液の液切れがよいようにめっき液抜き用の穴11hが形成されている。
【0053】
また、
図8に示すように、裏面カバー12は、略矩形状の薄板から構成され、その中央部に円形状の押さえ部12aが形成されている。
図7に示すように、円形状の押さえ部12aは、その周辺部よりわずかに厚く形成されていて、収容孔11a内に入り込むようになっており、押さえ部12aがアノード5の裏面を押さえるようになっている。
【0054】
一方、アノードホルダベース11に取り付けられるアノードマスク13は、中央部に開口13aを有する円環状の板状部品からなっている。アノードマスク13の前記開口13aの内径はアノード5の外径より小さく、アノードマスク13はアノード5の外周部を覆う(マスクする)ようになっている。このアノードマスク13の開口径によってアノード5の表面の電場を制御することができるようになっている。アノードマスク13は、例えば、塩化ビニール、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)材料から形成されている。
【0055】
図9は、アノードホルダ156をめっき液に浸漬した状態を示す図である。
図9に示すように、アノードホルダ156は、略T字状の一対のハンド11b,11bがめっき液上面Lよりやや上方に位置するように配置される。アノードホルダ156の一方のハンド11bにより保持された接点部3は、めっき槽に設けられたホルダ15に固定された接点板16と接触することにより、給電される。なお、接点板16は給電用配線17を介してめっき電源(図示せず)に接続されている。
【0056】
また、水洗槽30とめっき槽34との間には、アノードホルダ156の交換及び一時仮置きを行う仮置き場(図示せず)が配置されている。
【0057】
一方、アノードホルダ156の上部には、上述したように、アノードホルダ156を搬送したり、吊下げ支持する際の支持部となる一対の略T字状のハンド11bが設けられている(
図6、
図9参照)。そして、仮置き場内においては、仮置き場の周壁上面にハンド11bを引っかけることで、アノードホルダ156を垂直に吊下げ保持できる。また吊下げ保持したアノードホルダ156のハンド11bを基板ホルダ搬送部40で把持してアノードホルダ156を搬送するようになっている。なお、プリウェット槽26、プリソーク槽28、水洗槽30、ブロー槽32及び34内においても、アノードホルダ156は、ハンド11bを介してそれら機器の周壁に吊下げ保持される。
【0058】
ここで、比較例の給電バンドが有する問題点について、
図10により説明する。
図10(a)は、アノード5を保持した本体部1の平面図である。
図10(b)は、
図10(a)のAA拡大断面図である。
図10(b)において、点線で示すアノード5は、めっき開始時のアノード5を示し、厚さ66を有する。実線で示すアノード5aは、めっきがある程度進行した時のアノード5を示し、厚さ66の半分程度の厚さ68を有する。アノードの溶解の状態によっては、アノード5の表面側に位置する本体部1の部分70は、アノード5とほとんど接触しておらず、本体部1とアノード5の接触状態が悪化している(問題点A)。
【0059】
本体部1の端部1a,1b周辺では、アノード5の外周部が本体部1により被覆されていない。被覆されていないため、アノード5の外周部がめっき液に露出している。露出部分のアノード5の溶解速度は、本体部1が接触してアノードが被覆されているアノード5の他の外周部75に比べて大きくなる。そのため、凹み72が生じている。凹み72において、本体部1とアノード5の接触状態が、特に悪化している(問題点B)。
【0060】
ところで、めっき開始時は、アノード5の厚み方向の中心76と、本体部1の厚み方向の中心76は一致している。めっきが進行すると、アノード5aの厚み方向の中心78は、中心76に対してアノード5の裏面側に移動している。しかし、本体部1の厚み方向の中心76は変化しない。溶解したアノード5aの厚み方向の中心78と、本体部1の厚み方向の中心76がずれる。中心がずれると、本体部1によるアノード5の締め付けが不安定になり、アノード5と本体部1の接触状態が不安定になる(問題点C)。
【0061】
問題点Aを改善できる本発明の一実施形態について、
図11により説明する。本実施形態では、給電バンド158は、本体部1と力付加部材とを有する。力付加部材は給電バンド158の本体部1に配置される。力付加部材は、本体部1から、本体部1が囲む領域80に向かう方向86に本体部1に第1の力100を加えることが可能なバネ(端部部材)82である。
図11(a)は、バネ82を用いた給電体を示し、
図11(b)は、端部1a、1bの拡大図を示す。
【0062】
領域80の外周方向84における本体部1の2つの端部1a,1bのうちの端部1bにバネ82は、ワッシャ88を介して配置される。バネ82は、2つの端部1a、1bを互いに接近させるように2つの端部1a,1bに力(第2の力)96を加える。2つの端部に第2の力96を加えることにより、本体部1に第1の力100を加えることが可能である。この結果、バネ82は、本体部1から、本体部1が囲む領域80に向かう方向86に、本体部1に第1の力100を加えることが可能である。力96の大きさは、40N以上、かつ80N以下が好ましい。例えば、2つの端部1a,1bに、それぞれ49Nの力96を加える。
【0063】
バネ82は、本実施形態では、端部1bに設けられているが、端部1aに設けてもよい。また、2つの端部1a,1bのそれぞれに1個ずつ、合計2個設けてもよい。使用されるバネのタイプとしては、圧縮コイルばね、板バネ等が可能である。バネの材料としては、チタン合金、ステンレス、ピアノ線、ハステロイ、インコネル等がある。
【0064】
本実施形態によるアノード5に供給する電圧の、めっきの進行に伴う変化を
図12に示す。
図12は、アノード5に供給する電流を一定としたときの電圧を示し、縦軸は電圧、横軸は時間である。曲線150は、アノード5が10%消費された(すなわちアノード5の厚みが10%減少した)時の電圧を示し、曲線152は、アノード5が50%消費された時の電圧を示し、曲線154は、アノード5が85%消費された時の電圧を示す。従来技術に係わる
図19と比較すると、
図19の曲線62と曲線64では、電圧は、約0.5V変化している。しかし、
図12の曲線150と曲線154では、電圧は、約0.2V変化したのみであった。本実施形態の接触状態が良好であることは、曲線154を曲線64と比較すると、ノイズが少ないことからもわかる。曲線154から、85%以上、アノード5が厚み方向に溶解した後も、良好な接触状態が維持されている。
【0065】
次に、問題点Aを改善できる本発明の別の一実施形態について、
図13、14により説明する。本実施形態では、力付加部材は、本体部1の8つの部分92a〜92hを互いに連結する連結部材90である。なお、本発明は、8つの部分92a〜92hを互いに連結する連結部材90に限られない。2つ以上の部分を互いに連結する連結部材90であればよい。
図13は、連結部材90が、アノード5の裏面側に装着される前の状態を示す。
図13(a)は平面図であり、
図13(b)は、
図13(a)のAA断面図である。
図14は、連結部材90が、アノード5の裏面側に装着された後の状態を示す。
図14(a)は平面図であり、
図14(b)は、
図14(a)のAA断面図である。
【0066】
連結部材90は、本体部1が囲む領域80の外部に、領域80を横断する方向94に配置される。連結部材90は、8つの部分92a〜92hを互いに接近させるように第1の力100a〜100hを加えることが可能である。
【0067】
これについて説明する。連結部材90は、中央部120と、中央部120から分岐する8つの枝部122a〜122hとを有する。枝部122a〜122hのそれぞれの2つの端部のうち、一方は、中央部120に接続し、他方は8つの部分92a〜92hに溶接されている。
図13では、図示の簡明化のために、枝部122gにのみ参照符号を付してある。中央部120には、4カ所のくり貫き箇所124a,124c、124e,124gがあり、くり貫きにより板バネ126a,126c、126e,126gを生成している。枝部122a〜122hのそれぞれには、1カ所のくり貫き箇所128a〜128hがあり、くり貫きにより板バネ130a〜130hを生成している。
【0068】
板バネ126a〜126g及び板バネ130a〜130hが、くり貫きにより、どのように製作されるかについて
図20により、さらに説明する。
図20は、
図13と同一の図である。ただし、
図13における塗りつぶしを、
図20では削除している。
図20(a)は平面図であり、
図20(b)は、
図20(a)のAA断面図である。中央部120の4カ所のくり貫き箇所124a,124c、124e,124gは、同様に構成されているため、くり貫き箇所124eについて説明する。枝部122a〜122hの8カ所のくり貫き箇所128a〜128h、同様に構成されているため、くり貫き箇所128hについて説明する。
【0069】
中央部120のくり貫き箇所124eは、四角形を構成する4辺164a,164b,164c,164dのうち、3辺164a,164c,164dにおいて、切断されている。辺164bは、切断されておらず、中央部120に接続している。切断された板バネ
126eは、アノード5の方へ曲げられている。枝部122hのくり貫き箇所128hは、四角形を構成する4辺162a,162b,162c,162dのうち、3辺162a,162c,162dにおいて、切断されている。辺162bは、切断されておらず、枝部122hに接続している。切断された板バネ130hは、アノード5の方へ曲げられている。
【0070】
枝部122a〜122hと中央部120は、その断面が
図13(b)に示すように波型をしている。そのため、バネとして作用可能であり、弾性力を生成可能である。
図13(a)に示すように、アノード5に装着される前の状態では、本体部1の内径は、アノード5の外径より小さくなるように製作されている。本体部1の内径を広げながら、アノード5を本体部1に入れて、ボルト6とナット7で本体部1をアノード5に固定する。アノード5を装着すると、枝部122a〜122hと中央部120は、広げられるため、元に戻ろうとするばね力(第1の力)100a〜100hを生成する。
【0071】
なお、本実施例では、板バネ130a〜130h及び板バネ126a,126c、126e,126gも第1の力100a、100eを生成することに寄与する。これについて説明する。板バネ126及び板バネ130の自由端(先端)132は、
図13(b)に示すように、連結部材90がアノード5に装着された時に、アノード5により、撓まされる位置にある。
【0072】
アノード5の装着後、板バネ126及び板バネ130の自由端132は、
図14に示すように、アノード5の裏面によって曲げられる。その結果、曲げられたことによって生じる反力(バネ力)は、枝部122a〜122hと中央部120を、アノード5の裏面から離す方向に作用する。枝部122a〜122hと中央部120がアノード5の裏面から離れる方向の力を受けることにより、枝部122a〜122hと中央部120は、ばね力(第1の力)100a〜100hを生成する。
【0073】
枝部122a〜122h、中央部120および板バネ130a〜130h及び板バネ126a,126c、126e,126gによって、第1の力100a〜100hが生成される。めっきが進行して、アノード5の外径が小さくなっても、本体部1の各部が常に、より小さい内径になるように、領域80内に向かう方向に引かれている。本体部1が領域80内に引かれているため、アノード5の外径が小さくなっても、本体部1との間で良好な接触を保てる。
【0074】
第1の力100a〜100hの大きさは、それぞれ、20N以上が好ましい。例えば、30Nである。なお、締め付け力をあまりに大きな値(例えば、1000N)とすると、めっき処理を継続して溶解アノードが消耗してしまった場合に、めっき処理の最中で溶解アノードそのものが破壊されてしまうおそれもありうるため好ましくない。
【0075】
次に、
図15により、既述の問題点Bを改善できる別の実施形態について説明する。本実施形態では、給電体160は、アノードの外周全体に配置可能な薄い導電体142と、導電体142の外周に配置可能な本体部1とを有する。
図15(a)は、導電体142が無い場合の比較例の給電体を示し、
図15(b)は、導電体142がある場合の本発明の実施形態に係わる給電体を示す。本体部1とアノード5の間に、チタンなどの導体の薄い導電体142を全周にわたって巻くことにより、アノード5の側面が直接めっき液に露出することが防止できる。特に本体部1の端部1a,1bにおけるアノード5の側面144の露出を防ぐことができる。
【0076】
なお、
図11に示す実施形態に、アノードの外周に配置可能な薄い導電体142を追加してもよい。追加した例を
図16に示す。
【0077】
次に、
図17により、既述の問題点Cを改善できる別の実施形態について説明する。本実施形態では、給電バンドは、アノードの外周に配置可能な本体部1を有する。アノード5の厚さ方向146における本体部1の幅148は、アノード5の厚さ66より小さい。本実施形態では、アノード5の厚さ方向146における本体部1の幅148は、アノード5の厚さ66の半分である。
【0078】
めっき開始前に、本体部1をアノード5の裏面側にできるだけ近づけて装着する。本体部1の厚み方向の中心を、アノード5の厚み方向の中心よりもアノード5の裏面側に近く配置する。本実施形態では、本体部1は、アノード5の側面のうち、アノード5の裏面側の半分にのみ配置されている。本体部1をアノード5の外周に巻きつけるときの締結部分にはバネ82を取付ける。アノード5の直径が溶解により小さくなった場合に、本体部1の直径を小さくなるように、バネ力を使用している。
【0079】
めっきが進行すると、アノード5の表面側は溶解して消滅するが、アノード5の裏面側は溶解しない。めっき開始時において、アノード5の厚さ方向146における本体部1の幅148は、アノード5の厚さ66より小さいため、本体部1は、アノード5に接触している幅の割合が、めっき開始後においても、従来よりも増える。めっきが進行すると、アノード5の表面側が溶解し、アノード5の厚み方向146の中心は、アノード5の裏面側に移動し、本体部1の厚み方向の中心に接近してくる。アノード5の厚み方向の中心が接近してくるため、アノード5の厚み方向の中心と、本体部1の厚み方向の中心のずれを、従来技術よりも低減できる。アノード5と本体部1の接触状態が不安定になることが従来技術よりも低減する。
【0080】
以上、本発明の実施形態の例について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。例えば、いわゆるカップ式の電解めっき装置に本発明を適用することも可能である。
以上説明したように、本発明は以下の形態を有する。
[形態1]
基板をめっきする際に用いられるアノードに給電可能な給電体であって、
前記アノードの外周に配置可能な本体部と、
前記本体部に配置されて、前記本体部から、前記本体部が囲む領域に向かう方向に前記本体部に第1の力を加えることが可能な力付加部材とを有することを特徴とする給電体。[形態2]
前記力付加部材は、前記領域の外周方向における前記本体部の2つの端部のうちの少なくとも1つに配置される端部部材を有し、前記端部部材は、前記2つの端部を互いに接近させるように前記2つの端部に第2の力を加えることが可能であり、前記2つの端部に前記第2の力を加えることにより、前記本体部に前記第1の力を加えることが可能であることを特徴とする形態1記載の給電体。
[形態3]
前記力付加部材は、前記本体部の少なくとも2つの部分を連結する連結部材を有し、前記連結部材は、前記領域の外部に前記領域を横断する方向に配置され、かつ、前記少なく
とも2つの部分を互いに接近させるように前記少なくとも2つの部分に前記第1の力を加えることが可能であることを特徴とする形態1または2記載の給電体。
[形態4]
前記アノードの外周に配置可能な導電体を有し、
前記本体部は、前記導電体の外周に配置可能であることを特徴とする、形態1ないし3のいずれか1項に記載の給電体。
[形態5]
前記アノードの厚さ方向における前記本体部の幅は、前記アノードの厚さより小さいことを特徴とする、形態1ないし4のいずれか1項に記載の給電体。
[形態6]
基板をめっきする際に用いられるアノードに給電可能な給電体であって、
前記アノードの外周に配置可能な本体部と、
前記本体部に配置されて、前記本体部から、前記本体部が囲む領域に向かう方向に前記本体部に第1の力を加えることが可能な力付加部材とを有し、
前記力付加部材は、前記本体部の少なくとも2つの部分を連結する連結部材を有し、前記連結部材は、前記領域の外部に前記領域を横断する方向に配置され、かつ、前記少なくとも2つの部分を互いに接近させるように前記少なくとも2つの部分に前記第1の力を加えることが可能であることを特徴とする給電体。
[形態7]
基板をめっきする際に用いられるアノードに給電可能な給電体であって、
前記アノードの外周に配置可能な導電体と、
前記導電体の外周に配置可能な本体部とを有することを特徴とする給電体。
[形態8]
基板をめっきする際に用いられるアノードに給電可能な給電体であって、
前記アノードの外周に配置可能な本体部を有し、
前記アノードの厚さ方向における前記本体部の幅は、前記アノードの厚さより小さいことを特徴とする給電体。
[形態9]
前記本体部から、前記本体部が囲む領域に向かう方向に前記本体部に力を加えることが可能な力付加部材を有することを特徴とする形態7または8に記載の給電体。
[形態10]
前記アノードは、溶解アノードであることを特徴とする、形態1ないし9のいずれか1項に記載の給電体。
[形態11]
めっき液を収容可能なめっき槽と、
前記アノードが配置可能な、形態1ないし10のいずれか1項に記載の給電体と、
前記基板を保持可能な基板ホルダと、
前記給電体及び前記基板との間で通電可能なめっき電源と、を備え、前記基板ホルダを前記めっき液に浸漬させて、前記基板をめっき可能なめっき装置。