(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
光ファイバの損失分布測定や光ファイバセンシングに用いられる光反射測定法の1つに光周波数領域反射測定法(OFDR)がある(例えば非特許文献1参照)。OFDRは、周波数掃引した連続光を2分岐し、そのうち一方を試験光として被測定ファイバに入射し、被測定ファイバからの反射光もしくは後方散乱光と分岐した他方の連続光とを合波して得られるビート信号の周波数領域から反射(散乱)地点を解析する方法である。OFDRにおける試験光をE(t)、ビート信号をI(t)とするとそれぞれ以下のように表される。
【0003】
【数1】
【0004】
【数2】
【0005】
ここでE
0、ν
0、γはそれぞれ試験光の光振幅、初期光周波数、周波数掃引速度、r
FUTとτ
FUTは、被測定ファイバの反射(散乱)地点の反射率と光往復伝搬時間、θ
FUT(t)は被測定ファイバに加わる振動等の外乱による位相雑音である。なお、ここでは簡単のため光源由来の位相雑音は無視している。また、τ
FUTが十分小さいことからτ
FUTの2乗項は無視している。
【0006】
式(2)からわかるように、位相雑音θ
FUT(t)を無視するとI(t)は周波数γτ
FUTの正弦波であるため、I(t)のフーリエ変換により反射(散乱)光の反射位置と振幅が解析される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述では振動等の外乱による位相雑音θ
FUT(t)を無視できることとしているが、実際の測定場面では外乱によりビート信号のスペクトルが広がるため、OFDRの空間分解能が劣化するという課題がある。
【0009】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、被測定ファイバに振動等の外乱が加わる環境下において、外乱を解析する、または補償して高空間分解能を実現する光反射測定装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、光反射測定装置であって、周波数掃引した連続光を出射する光源と、前記連続光を第1の光経路と第2の光経路とに分波して前記第1の光経路伝搬後の連続光と前記第2の光経路伝搬後の連続光とを合波してビート信号を出力する干渉計であって、前記第1の光経路は遅延時間τ
Loopを与える周回光路を含み、前記第1の光経路伝搬後の連続光は前記周回光路伝搬前の連続光および前記周回光路伝搬後の連続光を被測定光ファイバに入射して前記被測定光ファイバで生じた反射光又は散乱光である、前記干渉計と、前記ビート信号を電気信号に変換する光検出手段と、前記電気信号を用いて反射光又は散乱光の光振幅分布波形を算出する演算処理手段と、を備え、前記演算処理手段は、前記ビート信号を時間領域でτ
Loop単位に分割してフーリエ変換し、前記τ
Loop単位毎の複素スペクトルを複数算出し、複数の前記複素スペクトルのそれぞれの最も高周波側に現れる反射光又は散乱光振幅分布波形の任意地点の位相成分を抽出して前記反射光又は散乱光の位相の時間変化を算出し、前記位相の時間変化に基づき算出した時間列で前記ビート信号をリサンプリングし、前記リサンプリングされたビート信号をフーリエ変換し、前記被測定光ファイバの位相揺らぎが補償された反射光又は散乱光の光振幅分布波形を算出することを特徴とする光反射測定装置。
【0011】
請求項2に記載の発明は、光反射測定装置であって、周波数掃引した連続光を出射する光源と、前記連続光を第1の光経路と第2の光経路とに分波して前記第1の光経路伝搬後の連続光と前記第2の光経路伝搬後の連続光とを合波してビート信号を出力する干渉計であって、前記第1の光経路は遅延時間τ
Loopを与える周回光路を含み、前記第1の光経路伝搬後の連続光は
前記周回光路伝搬前の連続光および前記周回光路伝搬後の連続光を被測定光ファイバに入射し
て前記被測定光ファイバで生じた反射光又は散乱光である、前記干渉計と、前記ビート信号を電気信号に変換する光検出手段と、前記電気信号を用いて反射光又は散乱光の光振幅分布波形を算出する演算処理手段と
、を備え、前記演算処理手段は、前記ビート信号を時間領域でτ
Loop単位に分割してフーリエ変換し、前記τ
Loop単位毎の複素スペクトルを複数算出し、複数の前記複素スペクトルのそれぞれの最も高周波側に現れる反射光又は散乱光振幅分布波形の任意地点の位相成分を抽出して前記反射光又は散乱光の位相の時間変化を算出し、前記位相の時間変化から前記被測定光ファイバに生じた振動の周波数を解析することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光反射測定装置であって、前記第1の光経路は、前記周回光路と前記被測定光ファイバと間に位相参照用ダミー光ファイバを含み、前記演算処理手段は、前記位相の時間変化として、前記被測定光ファイバの反射光又は散乱光と前記位相参照用ダミー光ファイバの反射光又は散乱光との位相差の時間変化を用いることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、光反射測定方法であって、光源から周波数掃引した連続光を出射する
第1ステップと、前記連続光を第1の光経路と第2の光経路とに分波して前記第1の光経路伝搬後の連続光と前記第2の光経路伝搬後の連続光とを合波してビート信号を出力する
第2ステップであって、前記第1の光経路は遅延時間τ
Loopを与える周回光路を含み、前記第1の光経路伝搬後の連続光は前記周回光路伝搬前の連続光および前記周回光路伝搬後の連続光を被測定光ファイバに入射して前記被測定光ファイバで生じた反射光又は散乱光である、前記ビート信号を出力する
前記第2ステップと、前記ビート信号を電気信号に変換する
第3ステップと、前記電気信号を用いて反射光又は散乱光の光振幅分布波形を算出する
第4ステップと、
を有し、前記第4ステップは、前記ビート信号を時間領域でτ
Loop単位に分割してフーリエ変換し、前記τ
Loop単位毎の複素スペクトルを複数算出する
第41ステップと、複数の前記複素スペクトルのそれぞれの最も高周波側に現れる反射光又は散乱光振幅分布波形の任意地点の位相成分を抽出して前記反射光又は散乱光の位相の時間変化を算出する
第42ステップと、前記位相の時間変化に基づき算出した時間列で前記ビート信号をリサンプリングする
第43ステップと、前記リサンプリングされたビート信号をフーリエ変換し、前記被測定光ファイバの位相揺らぎが補償された反射光又は散乱光の光振幅分布波形を算出する
第44ステップと、を有することを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、光反射測定方法であって、光源から周波数掃引した連続光を出射する
第1ステップと、前記連続光を第1の光経路と第2の光経路とに分波して前記第1の光経路伝搬後の連続光と前記第2の光経路伝搬後の連続光とを合波してビート信号を出力する
第2ステップであって、前記第1の光経路は遅延時間τ
Loopを与える周回光路を含み、前記第1の光経路伝搬後の連続光は前記周回光路伝搬前の連続光および前記周回光路伝搬後の連続光を被測定光ファイバに入射して前記被測定光ファイバで生じた反射光又は散乱光である、前記ビート信号を出力する
前記第2ステップと、前記ビート信号を電気信号に変換する
第3ステップと、前記電気信号を用いて反射光又は散乱光の光振幅分布波形を算出する
第4ステップと、
を有し、前記第4ステップは、前記ビート信号を時間領域でτ
Loop単位に分割してフーリエ変換し、前記τ
Loop単位毎の複素スペクトルを複数算出する
第41ステップと、複数の前記複素スペクトルのそれぞれの最も高周波側に現れる反射光又は散乱光振幅分布波形の任意地点の位相成分を抽出して前記反射光又は散乱光の位相の時間変化を算出する
第42ステップと
、前記位相の時間変化から前記被測定光ファイバに生じた振動の周波数を解析する
第45ステップと、を有することを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5記載の光反射測定方法において、前記第1の光経路は、前記周回光路と前記被測定光ファイバと間に位相参照用ダミー光ファイバを含み、前記
第42ステップ
では、前記位相の時間変化として、前記被測定光ファイバの反射光又は散乱光と前記位相参照用ダミー光ファイバの反射光又は散乱光との位相差の時間変化を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、振動等の外乱が加わる環境下でも高分解能で損失分布測定や光ファイバセンシング等のOFDRを用いた応用を実現できる。さらに、本発明で得られる反射(散乱)光の位相変化をフーリエ変換して周波数解析することで、被測定ファイバに生じた振動の周波数を解析できるため、光ファイバ振動センシングとしての応用も可能である。OFDRを用いた従来の振動センシング手法(例えば非特許文献2)では事前に無振動状態で取得した参照データを必要とするが、本発明による手法では参照データが不要であるため、従来法に比べて容易に振動センシングを実施できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明ではOFDR測定系に周回光路を設け、試験光に用いられる周波数掃引連続光を周回光路に通すことで周回時間ごとに複数の試験光を被測定ファイバに入射し、これら複数の試験光による反射(散乱)光の位相を個別解析することで周回時間ごとの位相変化を測定し、得られた位相変化情報に基づいて位相雑音の影響を補償することで、上記課題を解決する。
【0019】
抑々OFDRにおいて外乱由来の位相雑音の影響を補償するためには、ビート信号取得時間内における反射(散乱)光の位相の時間変化情報を得ることが必要となるが、従来のOFDR測定の試験光は1回のOFDR測定につき1つの周波数掃引連続光であるため、1回の測定中に発生する位相変化情報を得ることが不可能であった。
【0020】
一方、本発明では周回光路を通すことにより複数の周波数掃引連続光を作り出すことができ、またそれらは被測定ファイバ到達時刻がそれぞれ異なるため、各周波数掃引連続光による反射(散乱)光信号を個別解析することで反射(散乱)光の位相変化情報を得ることができる。
【0021】
さらに周回光路伝搬中も光源で周波数掃引を続ける(掃引を繰り返すのではなく、1回の掃引を長く続ける)ことで、周回光路伝搬光による信号と同時に従来のOFDRビート信号(非周回光による信号)を同時に得ることができ、周回光路伝搬光から得られた位相変化情報を用いて非周回光による信号に雑音補償を施すことができる。本発明における周回光路伝搬後の試験光E’(t)は次式で表される。
【0025】
ここでnは周回光路における周回数、τ
LoopとΔφは1周回あたりの伝搬遅延時間と位相変化である。なお、τ
Loopが十分小さいことからτ
Loopの2乗項は無視している。このとき、光源の周波数掃引に係る時間幅TはT>2τ
Loopを満たし、N(t)は1以上かつT/τ
Loop以下の整数とする。E’(t)を試験光に用いると、得られるビート信号I’(t)は次式のようになる。
【0027】
なお、ここでは遅延時間τ
FUT、τ
Loopの2乗項は無視している。
【0028】
図1に、ビート信号I’(t)を用いた反射(散乱)光の位相解析の概念図を示す。反射(散乱)光の位相変化情報は、ビート信号I’(t)をiτ
Loop<t<(i+1)τ
Loop(iは0以上の整数)の範囲で短時間フーリエ変換して得られる複素スペクトルS
i(f)を周回光路における周回数毎に計算し、算出した各複素スペクトルS
i(f)の位相成分から得る。正の周波数成分(f>0)のみを考慮すると、I’(t)の短時間フーリエ変換は次式のようになる。
【0030】
なお、ここでは周回光路の1周回あたりの伝搬遅延時間τ
Loopが被測定ファイバ200の位相雑音θ
FUT(t)の変動周期よりも十分短く、iτ
Loop<t<(i+1)τ
Loopの時間間隔ではθ
FUT(t)はほぼ一定であり、θ
FUT(iτ
Loop)とみなせることとした。
【0031】
式(6)に示されるように、S
0(f)では1個の反射(散乱)光振幅分布波形がビート周波数領域で現れ、S
i(f)(iが1〜N−1の整数)ではN個の反射(散乱)光振幅分布波形がビート周波数領域で現れる(
図1(b))。すなわちiが1〜N−1の整数の場合にはS
i(f)は周回光路の周回数の異なる光とのビート信号に対応する複数の反射(散乱)光振幅分布波形を含む。S
i(f)のf=γ(τ
FUT+iτ
Loop)(iは0〜N−1の整数)での値は被測定ファイバ200の伝搬遅延時間τ
FUTに対応する地点におけるiτ
Loop<t<(i+1)τ
Loop時点の反射(散乱)光の電界複素振幅を示す。
【0032】
S
i(f)を異なるiについて計算すると、各S
i(f)において最も高周波側の反射(散乱)光振幅分布波形(f=γ(τ
FUT+iτ
Loop))、すなわち周回光路の周回数が最も多い光とのビート信号に対応する反射(散乱)光振幅分布波形は、それぞれ異なる時刻に発生した同一光周波数の反射(散乱)光振幅分布波形を示す。したがって、S
i(γ(τ
FUT+iτ
Loop))の位相成分を各iの値について求めることで、
図1(c)に示すように反射(散乱)光の位相の時間変化を解析することができる。S
i(γ(τ
FUT+iτ
Loop))の位相成分は次式のようになる。
【0034】
なお、ここではS
i(f)において現れる複数の反射(散乱)光振幅分布波形のビート周波数差(γτ
FUT)がスペクトル分解能(〜1/τ
Loop)よりも十分大きいことから、下記のように近似した。
【0036】
iτ
Loop=t’と置き換えると、式(7)は次式のように書き換えられる。
【0038】
したがって、位相雑音θ
FUT(t’)は次式により求められる。
【0040】
次に、
図2に示すように位相雑音θ
FUT(t)が重畳されたOFDRビート信号の位相の時間変化を算出し、単位位相変化に対応する時間列を算出し、各時間列におけるI’(t)を時間軸上で等間隔に並べる(リサンプリングする)ことにより、I’(t)における位相雑音の影響を補償する。すなわち、次式を満たす時間列t
m(mは自然数)でI’(t)をリサンプリングする。
【0042】
ここでωは任意の角周波数、δは任意の位相定数である。
【0044】
と置き換えると、リサンプリング後のビート信号
【0049】
のフーリエ変換の一例を
図3に示す。ビート周波数領域において、低周波側から順にn=0,1,2,・・・の反射(散乱)光振幅分布波形が現れる。最も低周波側(n=0)の波形において、遅延τ
FUT=ω/2πγに対応する地点で位相雑音θ
FUT(t)項が0となり、位相雑音が補償される。他の地点についても、上記の位相解析からリサンプリングまでの一連の処理を異なるτ
FUTについて実施することで位相雑音補償が可能である。
【0050】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の実施形態は本発明の構成の一例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0051】
(第1の実施形態)
以下に説明する第1の実施形態は、被測定ファイバに振動等の外乱が加わる環境下において、外乱による位相雑音を補償し、高空間分解能光反射測定を行う目的で実施される。
【0052】
図4に、本発明の第1の実施形態に係る光反射測定装置100の構成を示す。光源には周波数掃引手段を有する周波数掃引光源101を用い、時間に対して線形に周波数掃引された連続光が出射される。出射された連続光を光分波器111で2分岐し、一方は光合分波器112から周回光路102に入射し、もう一方は反射(散乱)光をコヒーレント検波する際のローカル光とする。
【0053】
周回光路102に入射した連続光は、被測定ファイバ長の2倍以上の長さを有する遅延ファイバ104を伝搬後、光増幅器103において遅延ファイバ伝搬による光損失が補償される。なお、周回光路102伝搬による光損失が生じても反射(散乱)光の位相解析に十分な信号強度が得られる場合は、ここでの光増幅器103は必ずしも用いなくてもよい。
【0054】
周回光路102伝搬後の連続光は、光合分波器112、光サーキュレータ108および光位相参照用ダミーファイバ109を介して被測定ファイバ200に入射され、位相参照用ダミーファイバ109及び被測定ファイバ200中で反射、レイリー散乱される。なお、ここでの位相参照用ダミーファイバ109は振動等の外乱が加わらない環境に設置する。
【0055】
位相参照用ダミーファイバ109及び被測定ファイバ200からの反射(散乱)光は、光サーキュレータ108を介して光合波器113に入射されてローカル光と合波され、光合波器113からビート信号が出力される。このように光反射測定装置100において、光分波器111、光合波器113、およびそれらの間の光経路により光干渉計を構成する。
【0056】
光合波器113から出力されるビート信号を受光器105で電気信号に変換し、A/D変換器106でデジタル信号に変換する。A/D変換器106では時間幅Nτ
Loop(Nは自然数、τ
Loopは周回光路102の1周伝搬に係る遅延時間)のビート信号を収録する。
【0057】
次に演算処理装置107において、被測定ファイバ200中で生じた外乱による位相雑音を補償する信号処理を施し、被測定ファイバ200長手方向の反射(散乱)光振幅分布を得る。
【0058】
図5に、本発明の第1の実施形態に係る光反射測定装置100の演算処理装置107で行われる演算処理の流れを示すフローチャートを示す。
【0059】
初めにステップS501において、
図1に示されるようにビート信号をiτ
Loop<t<(i+1)τ
Loop(i=0〜N−1)の範囲で短時間フーリエ変換し、各分割信号をフーリエ変換してN個の複素スペクトルS
i(f)を得る。
【0060】
次にステップS502において、S
i(γ(τ
Ref+iτ
Loop))の位相成分を各iについて求めることにより、位相参照用ダミーファイバ109の任意地点における散乱光の位相変化Θ
Ref(iτ
Loop)を解析する。ここでのτ
Refは、位相参照用ダミーファイバ109のファイバ長をL
Refとして2L
Ref/v(vはファイバ中の光速)以下の任意の値を用いる。このとき、Θ
Ref(iτ
Loop)は次式で与えられる。
【0062】
なお、ここでは位相参照用ダミーファイバ109が外乱の加わらない環境に設置されていることから、位相参照用ダミーファイバ109を伝搬中の位相雑音は無視できることする。
【0063】
次にステップS503において、S
i(γ(τ
FUT+iτ
Loop))の位相成分を各iについて求めることにより、被測定ファイバ200の任意地点における散乱光の位相変化Θ
FUT(iτ
Loop)を解析する。ここでのτ
FUTは、被測定ファイバ長をL
FUTとして2L
Ref/v<τ
FUT<2L
FUT/vを満たす任意の値とする。Θ
FUT(iτ
Loop)は次式で与えられる。
【0065】
なお、ステップS502とステップS503は実施する順序が逆でもよい。
【0066】
次にステップS504において、Θ
FUT(iτ
Loop)とΘ
Ref(iτ
Loop)の位相差から位相雑音を算出する。Θ
FUT(iτ
Loop)とΘ
Ref(iτ
Loop)の位相差ΔΘ(iτ
Loop)は次式のようになる。
【0068】
iτ
Loop=t’と置き換えると、式(15)は次式のように書き換えられる。
【0070】
次にステップS505において、ステップS506で実施されるリサンプリング処理に用いる時間列を算出する。時間列t
mは次式により算出する。
【0072】
次にステップS506において、時間列t
mに基づいてビート信号をリサンプリングする。リサンプリングの結果、ビート信号は式(12)に示される形になる。
【0073】
最後にステップS507において、ステップS506でリサンプリングしたビート信号をフーリエ変換することにより、反射(散乱)光振幅分布波形を得る。フーリエ変換後に複数現れる振幅分布波形のうち、最も低周波側が位相雑音補償後の波形を示す。
【0074】
上記演算処理により、遅延τ
FUTに対応する地点の反射(散乱)光の位相雑音が補償される。異なる地点について位相雑音補償する場合、異なるτ
FUTについて上記ステップS503からステップS507までを実施する。異なるτ
FUTについて得た反射(散乱)光振幅分布波形の各τ
FUTを中心とする任意区間の波形データを切り出し、それらをつなぎ合わせることにより、複数地点で位相雑音補償された反射(散乱)光振幅分布波形を得ることができる。
【0075】
(第2の実施形態)
以下に説明する第2の実施形態は、被測定ファイバ200に加わった振動の周波数を解析する目的で実施される。
【0076】
本実施形態で用いられる装置構成は第1の実施形態と同様であり、
図4における演算処理装置107で行われる演算処理が第1の実施形態と異なる。
【0077】
初めに
図4に示される装置を用いて被測定ファイバ200の反射光とローカル光との合波によるビート信号を取得する。ビート信号は第1の実施形態と同様の方法で取得する。
【0078】
次に演算処理装置107において、上記ビート信号を用いて被測定ファイバ200に加わった振動の周波数を解析する。
【0079】
図6に、本発明の第2の実施形態に係る光反射測定装置100の演算処理装置107で行われる演算処理の流れを示すフローチャートを示す。
【0080】
初めにステップS601からステップS604の処理により、被測定ファイバの反射(散乱)光の位相の時間変化ΔΘ(t’)を解析する。ステップS601からステップS604までは第1の実施形態と同じ処理のため、ここでは説明を省略する。
【0081】
次にステップS605において、ΔΘ(t’)を用いて被測定ファイバに加わった振動の周波数を解析する。被測定ファイバ200に振動が加わると、反射(散乱)光は振動周波数で位相変調される。すなわち、ΔΘ(t’)は次式のように記述される。
【0083】
ここでθ
vは振動による位相変調振幅、f
vは振動周波数である。式(18)から明らかなように、ΔΘ(t’)をフーリエ変換して周波数解析することにより、被測定ファイバ200に加わった振動の周波数を解析することができる。
【0084】
尚、第1および第2の実施形態における演算処理装置107は、汎用のコンピュータと上記光反射測定方法を実行させるためのプログラムとによっても実現でき、そのプログラムを記録媒体に記録することも、通信ネットワークを通して提供することも可能である。