特許第6796546号(P6796546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6796546レジスト上層膜形成用組成物、並びに、それを用いたパターン形成方法及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796546
(24)【登録日】2020年11月18日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】レジスト上層膜形成用組成物、並びに、それを用いたパターン形成方法及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20201130BHJP
   G03F 7/32 20060101ALI20201130BHJP
   G03F 7/38 20060101ALI20201130BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20201130BHJP
   C08F 6/06 20060101ALI20201130BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20201130BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20201130BHJP
   G03F 7/039 20060101ALN20201130BHJP
   G03F 7/038 20060101ALN20201130BHJP
【FI】
   G03F7/11 501
   G03F7/32
   G03F7/38 501
   C08F20/10
   C08F6/06
   H01L21/30 573
   G03F7/20 521
   !G03F7/039 601
   !G03F7/038 601
【請求項の数】8
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2017-90307(P2017-90307)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2018-189731(P2018-189731A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2019年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 暁
(72)【発明者】
【氏名】西尾 亮
(72)【発明者】
【氏名】後藤 研由
(72)【発明者】
【氏名】丹呉 直紘
(72)【発明者】
【氏名】丸茂 和博
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−030603(JP,A)
【文献】 特開2016−206500(JP,A)
【文献】 特開昭63−126502(JP,A)
【文献】 特開2008−163244(JP,A)
【文献】 特開2008−163243(JP,A)
【文献】 特開2008−163245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00−7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(i)又は(ii)で表される繰り返し単位を有する重合体(P)を含有し、金属の合計含有量が25ppb以下であるレジスト上層膜形成用組成物。
【化1】

上記一般式(i)中、Rは、単結合又は二価の連結基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、フッ素原子を有する一価の有機基を表す。Rは、水素原子、又は、塩基解離性基を表す。Rは一価の有機基を表す。
上記一般式(ii)中、Raは、一価の有機基を表す。Rfは、フッ素原子を有する炭化水素基を表す。
【請求項2】
前記レジスト上層膜形成用組成物の固形分濃度が0.1〜15質量%である、請求項1に記載のレジスト上層膜形成用組成物。
【請求項3】
下記一般式(i)又は(ii)で表される繰り返し単位を有する重合体(P)に対して、有機溶剤と、酸性化合物を含有する水とを加えて撹拌し、分離後、上層を回収する工程を含む液液抽出による精製を行う、重合体の製造方法。
【化2】

上記一般式(i)中、Rは、単結合又は二価の連結基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、フッ素原子を有する一価の有機基を表す。Rは、水素原子、又は、塩基解離性基を表す。Rは一価の有機基を表す。
上記一般式(ii)中、Raは、一価の有機基を表す。Rfは、フッ素原子を有する炭化水素基を表す。
【請求項4】
レジスト膜の上に、請求項1又は2に記載のレジスト上層膜形成用組成物によりレジスト上層膜を形成する工程、
前記レジスト膜を露光する工程、及び、
前記露光されたレジスト膜を現像液により現像する工程を有するパターン形成方法。
【請求項5】
前記露光が液浸露光である、請求項に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記現像液が、有機溶剤を含む現像液である、請求項又はに記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記現像液が、アルカリ現像液である、請求項又はに記載のパターン形成方法。
【請求項8】
請求項のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に液浸露光用として好適に用いられるレジスト上層膜形成用組成物、並びに、それを用いたパターン形成方法及び電子デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、IC等の半導体デバイスの製造プロセスにおいては、種々のレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。方法としては、酸解離性基を有する重合体を含む樹脂組成物によって基板上にレジスト被膜を形成し、エキシマレーザー等の短波長の放射線を照射して露光させ、現像液で処理することにより微細なレジストパターンを形成する。この際、放射線照射により酸を発生する感放射線性酸発生剤を含有させ、その酸の作用により感度を向上させた化学増幅型レジストが利用されている。
昨今では、例えば、線幅90nm程度のレジストパターンを形成する方法として、液浸露光法の利用が拡大している。この方法は、レンズの開口数(NA)を増大させた場合でも、焦点深度が低下し難く、しかも高い解像性が得られるという利点がある。
【0003】
一方、化学増幅レジストを液浸露光に適用すると、露光時にレジスト層が浸漬液と接触することになるため、レジスト層が変質することや、レジスト層から浸漬液に悪影響を及ぼす成分が滲出することが知られている。
【0004】
このような問題を回避する解決策として、レジストとレンズの間にレジスト上層膜を設けて、レジストと水が直接触れ合わないようにするという方法が知られている(例えば特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−56194号公報
【特許文献2】国際公開第2013/069750号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年では、パターンの微細化のニーズがより一層に高まっており、これを受けて、レジスト膜より、特に微細のレジストパターン(例えば、線幅が75nm程度ラインパターン)を形成し、このレジストパターンを加工マスクとして下層をエッチングしようとする場合において、より優れた性能を有する下層パターンを得ることが求められている。
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、微細のレジストパターン(例えば、線幅が75nm程度のラインパターン)を加工マスクとして下層をエッチングした場合において、欠陥が少なく、かつ、ラフネス性能に優れた下層パターンを形成可能なレジスト上層膜形成用組成物、並びに、それを用いたパターン形成方法及び電子デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の構成であり、これにより本発明の上記目的が達成される。
<1>
下記一般式(i)又は(ii)で表される繰り返し単位を有する重合体(P)を含有し、金属の合計含有量が25ppb以下であるレジスト上層膜形成用組成物。
【化101】

上記一般式(i)中、Rは、単結合又は二価の連結基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、フッ素原子を有する一価の有機基を表す。Rは、水素原子、又は、塩基解離性基を表す。Rは一価の有機基を表す。
上記一般式(ii)中、Raは、一価の有機基を表す。Rfは、フッ素原子を有する炭化水素基を表す。
<2>
上記レジスト上層膜形成用組成物の固形分濃度が0.1〜15質量%である、<1>に記載のレジスト上層膜形成用組成物。
<3>
下記一般式(i)又は(ii)で表される繰り返し単位を有する重合体(P)に対して、有機溶剤と、酸性化合物を含有する水とを加えて撹拌し、分離後、上層を回収する工程を含む液液抽出による精製を行う、重合体の製造方法。
【化102】

上記一般式(i)中、Rは、単結合又は二価の連結基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、フッ素原子を有する一価の有機基を表す。Rは、水素原子、又は、塩基解離性基を表す。Rは一価の有機基を表す。
上記一般式(ii)中、Raは、一価の有機基を表す。Rfは、フッ素原子を有する炭化水素基を表す。
<4>
レジスト膜の上に、<1>又は<2>に記載のレジスト上層膜形成用組成物によりレジスト上層膜を形成する工程、
上記レジスト膜を露光する工程、及び、
上記露光されたレジスト膜を現像液により現像する工程を有するパターン形成方法。
<5>
上記露光が液浸露光である、<4>に記載のパターン形成方法。
<6>
上記現像液が、有機溶剤を含む現像液である、<4>又は<5>に記載のパターン形成方法。
<7>
上記現像液が、アルカリ現像液である、<4>又は<5>に記載のパターン形成方法。
<8>
<4>〜<7>のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
本発明は上記<1>〜<8>に関するものであるが、本明細書には参考のためその他の事項についても記載した。
【0008】
〔1〕
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体(P)を含有し、金属の合計含有量が25ppb以下であるレジスト上層膜形成用組成物。
【化1】

上記一般式(1)中、Lは、単結合、−COO−、又は、−CONR−を表す。R、R、及び、Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は、一価の有機基を表す。
〔2〕
上記重合体(P)が、下記一般式(i)又は(ii)で表される繰り返し単位を有する重合体である、〔1〕に記載のレジスト上層膜形成用組成物。
【化2】

上記一般式(i)中、Rは、単結合又は二価の連結基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、フッ素原子を有する一価の有機基を表す。Rは、水素原子、又は、塩基解離性基を表す。Rは一価の有機基を表す。
上記一般式(ii)中、Raは、一価の有機基を表す。Rfは、フッ素原子を有する炭化水素基を表す。
〔3〕
上記レジスト上層膜形成用組成物の固形分濃度が0.1〜15質量%である、〔1〕又は〔2〕に記載のレジスト上層膜形成用組成物。
〔4〕
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体(P)に対して、有機溶剤と、酸性化合物を含有する水とを用いた液液抽出による精製を行う、重合体の製造方法。
【化3】

上記一般式(1)中、Lは、単結合、−COO−、又は、−CONR−を表す。R、R、及び、Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は、一価の有機基を表す。
〔5〕
更に、前記重合体(P)に対して下記分液精製(1)〜(4)のいずれかを行う、〔4〕に記載の重合体の製造方法。
(1)互いに分離可能な複数種の有機溶剤を用いた液液抽出による精製
(2)有機溶剤と水とを用いた液液抽出による精製
(3)重合装置内で重合体(P)を析出させた後に、前記重合装置内で前記重合体(P)を有機溶剤に溶解させ、粉体として重合体(P)を得ることなく、有機溶剤に溶解した状態で重合体(P)を得る方法
(4)重合装置内で重合体(P)を析出させた後に、前記重合装置内で前記重合体(P)を有機溶剤に溶解させ、更に、有機溶剤に溶解させた重合体(P)を液液抽出により精製し、粉体として重合体(P)を得ることなく、有機溶剤に溶解した状態で重合体(P)を得る方法
〔6〕
レジスト膜の上に、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のレジスト上層膜形成用組成物によりレジスト上層膜を形成する工程、
上記レジスト膜を露光する工程、及び、
上記露光されたレジスト膜を現像液により現像する工程を有するパターン形成方法。
〔7〕
上記露光が液浸露光である、〔6〕に記載のパターン形成方法。
〔8〕
上記現像液が、有機溶剤を含む現像液である、〔6〕又は〔7〕に記載のパターン形成方法。
〔9〕
上記現像液が、アルカリ現像液である、〔6〕又は〔7〕に記載のパターン形成方法。
〔10〕
〔6〕〜〔9〕のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、微細のレジストパターン(例えば、線幅が75nm程度のラインパターン)を加工マスクとして下層をエッチングした場合において、欠陥が少なく、かつ、ラフネス性能に優れた下層パターンを形成可能なレジスト上層膜形成用組成物、並びに、それを用いたパターン形成方法及び電子デバイスの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
尚、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等を意味する。また、本発明において光とは、活性光線又は放射線を意味する。また、本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、EUV光などによる露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
本明細書において、レジスト上層膜形成用組成物における重合体、及び、レジスト組成物における樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー製HLC−8120GPC)によるGPC測定(溶媒:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μl、カラム:東ソー社製TSK gel Multipore HXL−M(×4本)、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率(RI)検出器)によるポリスチレン換算値として定義される。
【0011】
本発明に係るレジスト上層膜形成用組成物は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体(P)を含有し、金属の合計含有量が25ppb以下である。
【0012】
【化4】
【0013】
上記一般式(1)中、Lは、単結合、−COO−、又は、−CONR−を表す。R、R、及び、Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は、一価の有機基を表す。
【0014】
レジスト上層膜形成用組成物により形成されるレジスト上層膜は、通常、露光されたレジスト膜の現像工程において、除去されるものであるが、レジストパターンを加工マスクとして下層をエッチングした場合においても、欠陥が少なく、かつ、ラフネス性能に優れた下層パターンを形成するべく、本発明者らは、今般、レジスト上層膜形成用組成物の特性について着目した。その結果、特に微細のレジストパターン(線幅が75nm程度のラインパターン)を加工マスクとして下層をエッチングする場合においては、驚くべきことに、レジスト上層膜形成用組成物における金属の合計含有量すらも無視できず、得られる下層パターンの性能に影響を与え得ることを見出した。そして、本発明者らは、この知見に基づき、レジスト上層膜形成用組成物における金属の合計含有量を25ppb以下とすることによって、超微細のレジストパターンを加工マスクとして下層をエッチングした場合において、欠陥が少なく、かつ、ラフネス性能に優れた下層パターンを形成できることを見出したものである。
【0015】
以下、重合体(P)が含有し得る各成分について説明する。
【0016】
<重合体(P)>
本発明に係るレジスト上層膜形成用組成物は、上記したように、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体(P)を含有する。
【0017】
【化5】
【0018】
上記一般式(1)中、Lは、単結合、−COO−、又は、−CONR−を表す。R、R、及び、Rは、それぞれ独立して、水素原子、又は、一価の有機基を表す。
【0019】
、R、及び、Rとしての一価の有機基としては、好ましくは炭素数1〜30であり、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などを挙げることができる。これらの基は更に置換基を有していてもよい。更なる置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1〜4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)などが挙げられる。
、R、及び、Rの少なくとも一つは、フッ素原子又はシリコン原子を有する有機基であることが好ましい。
【0020】
重合体(P)は、下記一般式(i)又は(ii)で表される繰り返し単位を有する重合体であることが好ましい。
【0021】
【化6】
【0022】
上記一般式(i)中、Rは、単結合又は二価の連結基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、フッ素原子を有する一価の有機基を表す。Rは、水素原子、又は、塩基解離性基を表す。Rは一価の有機基を表す。
上記一般式(ii)中、Raは、一価の有機基を表す。Rfは、フッ素原子を有する炭化水素基を表す。
【0023】
としての二価の連結基は、例えば、2価の鎖状炭化水素基(炭素数1〜20であることが好ましい)、2価の脂環式炭化水素基(炭素数3〜20であることが好ましい)、上記鎖状炭化水素基及び脂環式炭化水素基のうちの1種又は2種以上と、−O−とを組み合わせた基等が挙げられる。Rは、単結合、メタンジイル基、炭素数2〜4のアルカンジイルオキシ基、又は、炭素数7〜10のシクロアルカンジイルオキシ基であることが好ましく、単結合、メタンジイル基、1,2−エタンジイルオキシ基、1,2−プロパンジイルオキシ基、又は、2,6−ノルボルナンジイルオキシ基であることがより好ましく、1,2−エタンジイルオキシ基であることが更に好ましい。
【0024】
及びRとしてのフッ素原子を有する一価の有機基は、トリフルオロメチル基であることがより好ましい。
【0025】
及びRaとしての一価の有機基は、アルキル基であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1又は2のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0026】
としての塩基解離性基は、例えばヒドロキシ基の水素原子を置換する基であって、アルカリの存在下(例えば2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液中)で解離する基をいう。1価の塩基解離性基としては、カルボニル基、スルホニル基を有すること好ましい。この塩基解離性基により、特に現像液としてアルカリ現像液を用いた場合に、現像液に対する上層膜組成物の溶解性を向上させることができ、ブリッジ欠陥やブロッブ欠陥等の欠陥がさらに抑制されることが期待できる。
は、水素原子であることがより好ましい。
【0027】
Rfとしてのフッ素原子を有する炭化水素基は、炭素数1〜15の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1〜10の炭化水素基であることがより好ましい。
【0028】
以下に、一般式(1)で表される繰り返し単位に対応するモノマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、TMSは、トリメチルシリル基を表す。
【0029】
【化7】
【0030】
重合体(P)は、一般式(1)で表される繰り返し単位を1種で有していても良く、2種以上有していてもよい。
一般式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、重合体(P)の全繰り返し単位に対して、60〜100モル%であることが好ましく、70〜100モル%であることがより好ましく、80〜100モル%であることが更に好ましい。
【0031】
重合体(P)は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成できる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種および重合開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と重合開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。
反応溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤;後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンなどの本発明のレジスト組成物を溶解する溶媒;等が挙げられる。より好ましくは後述するレジスト上層膜形成用組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。
【0032】
重合反応は、窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。所望により開始剤を追加、又は分割で添加する。反応溶液中の固形分濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜45質量%である。
反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃である。
【0033】
本発明のレジスト上層膜形成用組成物は、上記したように、金属含有量の合計が25ppb以下であれば特に限定されないが、レジスト上層膜形成用組成物により形成されるレジスト膜は、その大部分が重合体(P)により占められ得るため、重合体(P)に含有される金属を精製により低減することにより、上記金属含有量の合計を好適に25ppb以下にすることができる。そのための重合体(P)の精製方法としては、重合体(P)に対して、有機溶剤と、酸性化合物を含有する水とを用いた液液抽出による精製を行うことが好ましい。
【0034】
よって、本発明は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体(P)に対して、有機溶剤と、酸性化合物を含有する水とを用いた液液抽出による精製を行う、重合体の製造方法にも関する。
【0035】
これは、重合体(P)が溶解した有機溶剤と、酸性化合物を含有する水との液液抽出を実施することにより、合成された重合体(P)に含まれる金属であって、微細のレジストパターン(線幅が75nm程度のラインパターン)を加工マスクとして下層をエッチングする場合において下層パターンの性能に影響を与え得る金属が、驚くべきことに、酸性化合物を含有する水によって高度に除去されるという本発明者らの知見に基づくものである。
【0036】
上記精製における有機溶剤は、非極性溶剤であることが好ましく、非極性溶媒としては、例えば、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤及びエーテル系溶剤が挙げられ、好ましくは、ヘキサン、ヘプタン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル(酢酸n−ブチル)、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル(プロピオン酸n−ブチル)、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、ブタン酸ブチル、トルエン、ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、クロロホルム、塩化メチレン等を挙げることができる。非極性溶媒としては、重合体(P)が溶解する溶媒が好ましい。
また、酸性化合物としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等を挙げることができる。酸性化合物を含有する水における酸性化合物の濃度は、0.001〜3Nであることが好ましく、0.01〜1Nであることがより好ましい。
【0037】
本発明の重合体の製造方法においては、更に、上記重合体(P)に対して下記分液精製(1)〜(4)のいずれかを行っても良い。下記方法は、合成された重合体(P)の外気との接触や移送時の金属不純物のコンタミネーションを防止する観点で、重合体(P)の重合反応を行った反応釜(重合装置)中でそのまま行うことが好ましい。
【0038】
(1)互いに分離可能な複数種の有機溶剤を用いた液液抽出による精製
(2)有機溶剤と水とを用いた液液抽出による精製
(3)重合装置内で重合体(P)を析出させた後に、上記重合装置内で前記重合体(P)を有機溶剤に溶解させ、粉体として重合体(P)を得ることなく、有機溶剤に溶解した状態で重合体(P)を得る方法
(4)重合装置内で重合体(P)を析出させた後に、上記重合装置内で前記重合体(P)を有機溶剤に溶解させ、更に、有機溶剤に溶解させた重合体(P)を液液抽出により精製し、粉体として重合体(P)を得ることなく、有機溶剤に溶解した状態で重合体(P)を得る方法
【0039】
上記(1)は、互いに分離可能な複数種の有機溶剤を用いて、液液抽出により重合体(P)の精製を行う方法である。複数種の有機溶剤の各々は、単一溶媒であっても、混合溶媒であってもよい。複数種の有機溶剤からなる組み合わせは、互いに分離可能な組み合わせであれば特に限定されないが、例えば、ヘキサン−メタノールの組み合わせであることが好ましい。上記(1)の方法によれば、低分子成分やオリゴマー等の不純物を低減する効果も大きい。
上記(2)は、有機溶剤と水とを用いて、液液抽出により重合体(P)の精製を行う方法である。有機溶剤は、非極性溶媒であることが好ましく、非極性溶媒としては、前掲したものがそのまま挙げられる。なお、この精製に用いる水は、上記酸性化合物を含有しない。
上記(3)は、粉体として重合体(P)を得ることなく、重合体(P)を液体として(有機溶剤に溶解した状態で)得る方法であり、重合体(P)と外気との接触によるコンタミネーションの懸念が少ない。
上記(4)は、上記(3)に加えて、更に、液液抽出により重合体(P)の精製を行う方法である。低分子成分、オリゴマー成分、及び、金属不純物のいずれに対しても低減の効果が大きい。
上記(4)における「液液抽出」としては、上記(1)及び(2)の液液抽出による精製が挙げられる。
【0040】
上記(1)〜(4)は、「有機溶剤と、酸性化合物を含有する水とを用いた液液抽出による精製」の前に実施しても、後に実施してもよい。
【0041】
重合体(P)の精製は、レジスト上層膜形成用組成物における金属の合計含有量が上記範囲を満たす限りにおいては、上記(1)〜(4)以外のものとして、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈殿法や、濾別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等を、適宜、実施してもよい。
【0042】
「有機溶剤と、酸性化合物を含有する水との液液抽出」、及び、追加的に実施してもよい上記(1)〜(4)のいずれか等を経て得られる、有機溶剤に溶解した状態の重合体(P)は、この有機溶剤と、レジスト上層膜形成用組成物に用いる溶剤とが同じ溶剤である場合には、有機溶剤に溶解した状態の重合体(P)を、そのままレジスト上層膜形成用組成物を調製するための溶液として使用することができる。一方、上記重合体(P)を溶解する有機溶剤と、レジスト上層膜形成用組成物に用いる溶剤とが異なる溶剤である場合には、外気との接触によるコンタミネーションの懸念を抑制するために、乾燥状態の重合体(P)を得ることなく、上記重合体(P)を溶解する有機溶剤をレジスト上層膜形成用組成物に用いる溶剤に置換し、これを、レジスト上層膜形成用組成物を調製するための溶液として使用することが好ましい。
【0043】
重合体(P)の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜200,000であり、更に好ましくは3,000〜20,000、最も好ましくは5,000〜15,000である。重量平均分子量を、1,000〜200,000とすることにより、耐熱性やドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって製膜性が劣化したりすることを防ぐことができる。
重合体(P)の重量平均分子量の特に好ましい別の形態は、GPC法によるポリスチレン換算値で3,000〜9,500である。
分散度(分子量分布)は、通常1〜5であり、好ましくは1〜3、更に好ましくは1.2〜3.0、特に好ましくは1.2〜2.0の範囲のものが使用される。
【0044】
また、レジスト上層膜形成用組成物において、重合体(P)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0045】
重合体(P)の含有量は、レジスト上層膜形成用組成物の全固形分に対して、50〜99.9質量%が好ましく、60〜99.0質量%がより好ましい。
【0046】
レジスト上層膜形成用組成物は、さらに、(A1)塩基性化合物又は塩基発生剤、又は、(A2)エーテル結合、チオエーテル結合、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル結合及びエステル結合からなる群より選択される結合又は基を含有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。
上記化合物の具体例及び好ましい例、並びに、レジスト上層膜形成用組成物の全固形分に対する含有量の好ましい範囲等は、国際公開2016/136596号の段落〔0141〕〜〔0256〕に記載の内容を援用できる。
【0047】
<界面活性剤>
本発明のレジスト上層膜形成用組成物は、更に界面活性剤を含有していてもよい。
界面活性剤としては特に制限はなく、レジスト上層膜形成用組成物を均一に成膜することができ、かつ、レジスト上層膜形成用組成物の溶剤に溶解することができれば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれも用いることができる。
界面活性剤の添加量は、好ましくは0.001〜20質量%であり、更に好ましくは、0.01〜10質量%である。
界面活性剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
上記界面活性剤としては、例えば、アルキルカチオン系界面活性剤、アミド型4級カチオン系界面活性剤、エステル型4級カチオン系界面活性剤、アミンオキサイド系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、アルコキシレート系界面活性剤、脂肪酸エステル系界面活性剤、アミド系界面活性剤、アルコール系界面活性剤、エチレンジアミン系界面活性剤、並びに、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を有する界面活性剤)から選択されるものを好適に用いることができる。
界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレートなどのソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテ−ト、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレートなどの界面活性剤;下記に挙げる市販の界面活性剤;等が挙げられる。
使用できる市販の界面活性剤としては、例えば、エフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431、4430(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)、GF−300、GF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製)、エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、352、EF801、EF802、EF601((株)ジェムコ製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520(OMNOVA社製)、FTX−204D、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218、222D((株)ネオス製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0049】
<溶剤>
本発明におけるレジスト上層膜形成用組成物は、通常、溶剤を含有する。
レジスト膜を溶解せずに良好なパターンを形成するために、本発明におけるレジスト上層膜形成用組成物は、レジスト膜を溶解しない溶剤を含有することが好ましく、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)を用いて現像を行う場合には、有機系現像液とは異なる成分の溶剤を用いることがより好ましい。
また、液浸液への溶出防止の観点からは、液浸液への溶解性が低い方が好ましく、水への溶解性が低い方がさらに好ましい。本明細書においては、「液浸液への溶解性が低い」とは液浸液不溶性であることを示す。同様に、「水への溶解性が低い」とは水不溶性であることを示す。また、揮発性及び塗布性の観点から、溶剤の沸点は90℃〜200℃が好ましい。
液浸液への溶解性が低いとは、水への溶解性を例にとると、レジスト上層膜形成用組成物をシリコンウエハ上に塗布、乾燥し、膜を形成させた後に、純水に23℃で10分間浸漬し、乾燥した後の膜厚の減少率が、初期膜厚(典型的には50nm)の3%以内であることをいう。
本発明では、レジスト上層膜を均一に塗布する観点から、レジスト上層膜形成用組成物の固形分濃度が好ましくは0.01〜20質量%、更に好ましくは0.1〜15質量%、最も好ましくは、1〜10質量%となるように溶剤を使用する。このような固形分濃度範囲を満たすレジスト上層膜形成用組成物において、上記したように金属の合計含有量が25ppb以下であることにより、本発明の効果が確実に得られるものである。
【0050】
使用しうる溶剤としては、重合体(A)を溶解し、上記したように、レジスト膜を溶解しない溶剤であることが好ましく、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、フッ素系溶剤、炭化水素系溶剤などが好適に挙げられ、非フッ素系のアルコール系溶剤を用いることが更に好ましい。これにより、レジスト膜に対する非溶解性がさらに向上し、レジスト上層膜形成用組成物をレジスト膜上に塗布した際に、レジスト膜を溶解することなく、より均一に、トップコートを形成できる。溶剤の粘度としては、5cP(センチポアズ)以下が好ましく、3cP以下がより好ましく、2cP以下が更に好ましく、1cP以下が特に好ましい。なお、センチポアズからパスカル秒へは、次式で換算できる 1000cP=1Pa・s。
【0051】
アルコール系溶剤としては、塗布性の観点から、1価のアルコールが好ましく、更に好ましくは、炭素数4〜8の1価アルコールである。炭素数4〜8の1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状のアルコールを用いることができるが、直鎖状又は分岐状のアルコールが好ましい。このようなアルコール系溶剤としては、例えば、国際公開2016/136596号の段落〔0052〕に記載のものが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、上記グリコールエーテル系溶剤の他、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、イソアミルエーテル等が挙げられる。エーテル系溶剤のなかでも、分岐構造を有するエーテル系溶剤が好ましい。
エステル系溶剤としては、例えば、国際公開2016/136596号の段落〔0052〕に記載のものが挙げられる。エステル系溶剤のなかでも、分岐構造を有するエステル系溶剤が好ましい。
【0052】
フッ素系溶剤としては、例えば、国際公開2016/136596号の段落〔0053〕に記載のものが挙げられる。この中でも、フッ化アルコール又はフッ化炭化水素系溶剤を好適に用いることができる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、国際公開2016/136596号の段落〔0053〕に記載のものが挙げられる。
【0053】
これらの溶剤は一種単独で又は複数を混合して用いてもよい。
上記以外の溶剤を混合する場合、その混合比は、レジスト上層膜形成用組成物の全溶剤量に対して、通常0〜30質量%、好ましくは0〜20質量%、更に好ましくは0〜10質量%である。上記以外の溶剤を混合することで、レジスト膜に対する溶解性、レジスト上層膜形成用組成物中の重合体の溶解性、レジスト膜からの溶出特性、などを適宜調整することができる。
【0054】
本発明のレジスト上層膜形成用組成物は、上述した各成分を溶剤に溶解し、フィルター濾過することが好ましい。フィルターとしては、ポアサイズ0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。なお、フィルターは、複数種類を直列又は並列に接続して用いてもよい。また、組成物を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であっても良い。さらに、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理などを行ってもよい。
【0055】
本発明の重合体(P)を含有するレジスト上層膜形成用組成物は、上記したように、金属含有量の合計が25ppb以下であり、15ppb以下であることが好ましく、10ppb以下であることがより好ましく、5ppb以下であることが更に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が更に好ましい。
上記金属含有量の合計は、典型的には、0.1ppb以上である。
【0056】
金属含有量は、誘導結合プラズマ質量分析法(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry:ICP−MS)により測定されるものであり、具体的には、Perkin Elmer社製の誘導結合プラズマ(ICP)質量分析計「NexION 2000」を用いて測定できる。
【0057】
上記金属含有量は、典型的には、Na原子、K原子、Mg原子、Al原子、Ca原子、Cr原子、Mn原子、Fe原子、Ni原子、Cu原子、Zn原子、Pb原子、Sn原子、Co原子、Li原子、Ti原子、Ag原子、W原子、V原子、Ba原子、Au原子、As原子、Cd原子、Mo原子、及び、Zr原子の各々における含有量の総和である。
ここで、Na原子、K原子、Mg原子、Al原子、Ca原子、Cr原子、Mn原子、Fe原子、Ni原子、Cu原子、Zn原子、Pb原子、Sn原子、Co原子、Li原子、Ti原子、Ag原子、W原子、V原子、Ba原子、Au原子、As原子、Cd原子、Mo原子、及び、Zr原子の含有量は、各々、1ppb以下であることが好ましい。
【0058】
<パターン形成方法>
本発明のパターン形成方法は、レジスト膜の上に、上記した本発明に係る上層膜形成用組成物により上層膜を形成する工程、レジスト膜を露光する工程、及び、露光されたレジスト膜を現像する工程を有するパターン形成方法である。
本発明のパターン形成方法は、ネガ型パターン形成方法であっても、ポジ型パターン形成方法であってもよい。
【0059】
レジスト膜は、レジスト組成物を、基板上に塗布して、レジスト膜を形成する工程aにより好適に形成される。
レジスト膜の上に、本発明に係る上層膜形成用組成物により上層膜を形成する工程は、レジスト膜上に本発明に係る上層膜形成用組成物を塗布することにより、レジスト膜上に上層膜を形成する工程bであることが好ましい。
レジスト膜を露光する工程は、上層膜が形成されたレジスト膜を露光する工程cとして後に説明する。
露光されたレジスト膜を現像する工程は、露光されたレジスト膜を、現像液を用いて現像してパターンを形成する工程dであることが好ましい。
【0060】
<工程a>
工程aでは、レジスト組成物を基板上に塗布してレジスト膜を形成する。塗布方法としては、特に限定されず、従来公知のスピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、浸漬法などを用いることができ、好ましくはスピンコート法である。
レジスト組成物を塗布後、必要に応じて基板を加熱(プリベーク)してもよい。これにより、不溶な残留溶剤の除去された膜を均一に形成することができる。プリベークの温度は特に限定されないが、50℃〜160℃が好ましく、より好ましくは、60℃〜140℃である。
レジスト膜の膜厚は、20〜200nmであることが好ましく、30〜100nmであることがより好ましい。
【0061】
レジスト膜を形成する基板は特に限定されるものではなく、シリコン、SiN、SiO2やSiN等の無機基板、SOG等の塗布系無機基板等、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造工程、さらにはその他のフォトアプリケーションのリソグラフィー工程で一般的に用いられる基板を用いることができる。
【0062】
レジスト膜を形成する前に、基板上に予め反射防止膜を塗設してもよい。
反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5、日産化学社製のARC29AなどのARCシリーズ等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0063】
<工程b>
工程bでは、工程aで形成したレジスト膜上に、上層膜形成用組成物(トップコート組成物)を塗布し、その後、必要に応じて加熱(プリベーク(PB;Prebake))することにより、レジスト膜上に上層膜(以下、「トップコート」ともいう)を形成する。これにより、上述したように、現像後のレジストパターンにおいては、超微細の幅又は孔径(例えば、60nm以下)を有するトレンチパターン又はホールパターンを、高いDOF性能にて形成することができる。
本発明の効果がより優れるという理由から、工程bにおけるプリベークの温度(以下、「PB温度」ともいう)は、100℃以上が好ましく、105℃以上がより好ましく、110℃以上が更に好ましく、120℃以上が特に好ましく、120℃超が最も好ましい。
PB温度の上限値は、特に限定されないが、例えば、200℃以下が挙げられ、170℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、150℃以下が更に好ましい。
【0064】
後述する工程cの露光を液浸露光とする場合、トップコートは、レジスト膜と液浸液との間に配置され、レジスト膜を直接、液浸液に接触させない層として機能する。この場合、トップコート(トップコート組成物)が有することが好ましい特性としては、レジスト膜への塗布適正、放射線、特に193nmに対する透明性、液浸液(好ましくは水)に対する難溶性である。また、トップコートは、レジスト膜と混合せず、さらにレジスト膜の表面に均一に塗布できることが好ましい。
なお、トップコート組成物を、レジスト膜の表面に、レジスト膜を溶解せずに均一に塗布するために、トップコート組成物は、レジスト膜を溶解しない溶剤を含有することが好ましい。レジスト膜を溶解しない溶剤としては、後述する有機系現像液とは異なる成分の溶剤を用いることがさらに好ましい。トップコート組成物の塗布方法は、特に限定されず、従来公知のスピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、浸漬法などを用いることができる。
トップコート組成物の詳細は、上述の通りである。
【0065】
トップコートの膜厚は特に制限されないが、露光光源に対する透明性の観点から、通常5nm〜300nm、好ましくは10nm〜300nm、より好ましくは20nm〜200nm、更に好ましくは30nm〜100nmの厚みで形成される。
トップコートを形成後、必要に応じて基板を加熱する。
トップコートの屈折率は、解像性の観点から、レジスト膜の屈折率に近いことが好ましい。
トップコートは液浸液に不溶であることが好ましく、水に不溶であることがより好ましい。
トップコートの後退接触角は、液浸液追随性の観点から、トップコートに対する液浸液の後退接触角(23℃)が50〜100度であることが好ましく、80〜100度であることがより好ましい。
液浸露光においては、露光ヘッドが高速でウエハ上をスキャンし露光パターンを形成していく動きに追随して、液浸液がウエハ上を動く必要があることから、動的な状態におけるレジスト膜に対する液浸液の接触角が重要になり、より良好なレジスト性能を得るためには、上記範囲の後退接触角を有することが好ましい。
【0066】
トップコートを剥離する際は、後述する有機系現像液を使用してもよいし、別途剥離剤を使用してもよい。剥離剤としては、レジスト膜への浸透が小さい溶剤が好ましい。トップコートの剥離がレジスト膜の現像と同時にできるという点では、トップコートは、有機系現像液により剥離できることが好ましい。剥離に用いる有機系現像液としては、レジスト膜の低露光部を溶解除去できるものであれば特に制限されず、後述するケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を含む現像液の中から選択でき、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤を含む現像液が好ましく、エステル系溶剤を含む現像液がより好ましく、酢酸ブチルを含む現像液が更に好ましい。
【0067】
有機系現像液で剥離するという観点からは、トップコートは有機系現像液に対する溶解速度が1〜300nm/secが好ましく、10〜100nm/secがより好ましい。
ここで、トップコートの有機系現像液に対する溶解速度とは、トップコートを成膜した後に現像液に暴露した際の膜厚減少速度であり、本発明においては23℃の酢酸ブチル溶液に浸漬させた際の速度とする。
トップコートの有機系現像液に対する溶解速度を1nm/sec秒以上、好ましくは10nm/sec以上とすることによって、レジスト膜を現像した後の現像欠陥発生が低減する効果がある。また、300nm/sec以下、好ましくは100nm/sec以下とすることによって、おそらくは、液浸露光時の露光ムラが低減した影響で、レジスト膜を現像した後のパターンのラインエッジラフネスがより良好になるという効果がある。
トップコートはその他の公知の現像液、例えば、アルカリ水溶液などを用いて除去してもよい。使用できるアルカリ水溶液として具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液が挙げられる。
【0068】
<工程c>
工程cにおける露光は、一般的に知られている方法により行うことができ、例えば、トップコートが形成されたレジスト膜に対して、所定のマスクを通して、活性光線又は放射線を照射する。このとき、好ましくは、活性光線又は放射線を、液浸液を介して照射するが、これに限定されるものではない。露光量は適宜設定できるが、通常1〜100mJ/cmである。
本発明における露光装置に用いられる光源の波長は、特に限定されないが、250nm以下の波長の光を用いることが好ましく、その例としては、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、Fエキシマレーザー光(157nm)、EUV光(13.5nm)、電子線等が挙げられる。この中でも、ArFエキシマレーザー光(193nm)を用いることが好ましい。
【0069】
液浸露光を行う場合、露光の前に、及び/又は、露光の後、後述する加熱を行う前に、膜の表面を、水系の薬液で洗浄してもよい。
液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう、屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー光(波長:193nm)である場合には、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。
水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤(液体)を僅かな割合で添加してもよい。この添加剤は基板上のレジスト膜を溶解させず、且つレンズ素子の下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。使用する水としては、蒸留水が好ましい。更にイオン交換フィルター等を通して濾過を行った純水を用いてもよい。これにより、不純物の混入による、レジスト膜上に投影される光学像の歪みを抑制することができる。
また、さらに屈折率が向上できるという点で屈折率1.5以上の媒体を用いることもできる。この媒体は、水溶液でもよく有機溶剤でもよい。
【0070】
本発明のパターン形成方法は、工程c(露光工程)を複数回有していてもよい。その場合の、複数回の露光は同じ光源を用いても、異なる光源を用いてもよいが、1回目の露光には、ArFエキシマレーザー光(波長;193nm)を用いることが好ましい。
【0071】
露光の後、好ましくは、加熱(ベーク、PEBともいう)を行い、現像(好ましくはさらにリンス)をする。これにより良好なパターンを得ることができる。PEBの温度は、良好なレジストパターンが得られる限り特に限定されるものではなく、通常40℃〜16
0℃である。PEBは、1回でも複数回であってもよい。
【0072】
<工程d>
工程dにおいて使用される現像液は、アルカリ現像液であってもよく、有機溶剤を含む現像液であってもよい。アルカリ現像液による現像工程と有機溶剤を含む現像液による現像工程を組み合わせてもよい。
アルカリ現像液としては、通常、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに代表される4級アンモニウム塩が用いられるが、これ以外にも無機アルカリ、1〜3級アミン、アルコールアミン、環状アミン等のアルカリ水溶液も使用可能である。
具体的には、アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水などの無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミンなどの第一アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミンなどの第二アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミンなどの第三アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの第四級アンモニウム塩;ピロール、ピペリジンなどの環状アミン類;等のアルカリ性水溶液を使用することができる。これらの中でもテトラエチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液を用いることが好ましい。
さらに、上記アルカリ現像液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加してもよい。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
アルカリ現像液を用いて現像を行う時間は、通常10〜300秒である。
アルカリ現像液のアルカリ濃度(及びpH)及び現像時間は、形成するパターンに応じて、適宜調整することができる。
アルカリ現像液を用いた現像の後にリンス液を用いて洗浄してもよく、そのリンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
また、現像処理または、リンス処理の後に、パターン上に付着している現像液またはリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
更に、リンス処理または超臨界流体による処理の後、パターン中に残存する水分を除去するために加熱処理を行うことができる。
【0073】
有機溶剤を含有する現像液(以下、有機系現像液ともいう)としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を含有する現像液が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、国際公開2016/136596号の段落〔0276〕に記載のものが挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、国際公開2016/136596号の段落〔0276〕に記載のものが挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、国際公開2016/136596号の段落〔0276〕に記載のものが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、国際公開2016/136596号の段落〔0276〕に記載のグリコールエーテル系溶剤の他、例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用できる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素系溶剤;等が挙げられる。
なお、炭化水素系溶剤である脂肪族炭化水素系溶剤においては、同じ炭素数で異なる構造の化合物の混合物であってもよい。例えば、脂肪族炭化水素系溶媒としてデカンを使用した場合、同じ炭素数で異なる構造の化合物である2−メチルノナン、2,2−ジメチルオクタン、4−エチルオクタン、イソオクタンなどが脂肪族炭化水素系溶媒に含まれていてもよい。また、上記同じ炭素数で異なる構造の化合物は、1種のみが含まれていてもよいし、上記のように複数種含まれていてもよい。
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。ただし、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が10質量%未満であることが好ましく、実質的に水分を含有しないことがより好ましい。
すなわち、有機系現像液に対する有機溶剤の使用量は、現像液の全量に対して、90質量%以上100質量%以下が好ましく、95質量%以上100質量%以下がより好ましい。
【0074】
これらのうち、有機系現像液としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有する現像液が好ましく、ケトン系溶剤、又は、エステル系溶剤を含む現像液がより好ましく、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、又は、2−ヘプタノンを含む現像液が更に好ましい。
【0075】
有機系現像液の蒸気圧は、20℃において、5kPa以下が好ましく、3kPa以下がより好ましく、2kPa以下が更に好ましい。有機系現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウエハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウエハ面内の寸法均一性が良化する。
5kPa以下(2kPa以下)の蒸気圧を有する具体的な例としては、特開2014−71304号公報の段落[0165]に記載された溶剤が挙げられる。
【0076】
有機系現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることが更に好ましい。
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
有機系現像液は、塩基性化合物を含んでいてもよい。本発明で用いられる有機系現像液が含みうる塩基性化合物の具体例及び好ましい例としては、レジスト組成物が含みうる塩基性化合物として後述するものと同様である。
【0077】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0078】
また、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を有していてもよい。
【0079】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後には、リンス液を用いて洗浄する工程を含んでいてもよい。
リンス液としては、レジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用することができる。上記リンス液としては、例えば、有機系現像液に含まれる有機溶剤として前掲した、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。より好ましくは、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。更に好ましくは、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。特に好ましくは、1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。
【0080】
ここで、リンス工程で用いられる1価アルコールとしては、例えば、直鎖状、分岐状、環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、tert―ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、4−メチル−2−ヘキサノール、5−メチル−2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、4−メチル−2−ヘプタノール、5−メチル−2−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、4−メチル−2−オクタノール、5−メチル−2−オクタノール、6−メチル−2−オクタノール、2−ノナノール、4−メチル−2−ノナノール、5−メチル−2−ノナノール、6−メチル−2−ノナノール、7−メチル−2-ノナノール、2−デカノールなどを用いることができ、好ましくは、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、4−メチル−2−ヘプタノールである。
【0081】
また、リンス工程で用いられる炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン(n−デカン)、ウンデカンなどの脂肪族炭化水素系溶剤;等が挙げられる。
リンス液としてエステル系溶剤を用いる場合には、エステル系溶剤(1種または2種以上)に加えて、グリコールエーテル系溶剤を用いてもよい。この場合の具体例としては、エステル系溶剤(好ましくは、酢酸ブチル)を主成分として、グリコールエーテル系溶剤(好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME))を副成分として用いることが挙げられる。これにより、残渣欠陥が抑制される。
【0082】
上記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、良好な現像特性を得ることができる。
リンス液の蒸気圧は、20℃において0.05〜5kPaが好ましく、0.1〜5kPaがより好ましく、0.12〜3kPaがさらに好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05〜5kPaにすることにより、ウエハ面内の温度均一性が向上し、更にはリンス液の浸透に起因した膨潤が抑制され、ウエハ面内の寸法均一性が良化する。
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0083】
リンス工程においては、有機溶剤を含む現像液を用いる現像を行ったウエハを上記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出し続ける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm〜4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(PostBake)を含むことも好ましい。ベークによりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程は、通常40〜160℃、好ましくは70〜95℃で、通常10秒〜3分、好ましくは30秒から90秒間行う。
【0084】
また、本発明のパターン形成方法は、有機系現像液を用いた現像工程と、アルカリ現像液を用いた現像工程とを有していてもよい。有機系現像液を用いた現像によって露光強度の弱い部分が除去され、アルカリ現像液を用いた現像を行うことによって露光強度の強い部分も除去される。このように現像を複数回行う多重現像プロセスにより、中間的な露光強度の領域のみを溶解させずにパターン形成が行えるので、通常より微細なパターンを形成できる(特開2008−292975号公報の段落[0077]と同様のメカニズム)。
【0085】
レジスト組成物、及び、本発明のパターン形成方法において使用される、レジスト上層膜形成用組成物以外の各種材料(例えば、レジスト溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物など)は、金属等の不純物を含まないことが好ましい。これら材料に含まれる不純物の含有量としては、1ppm以下が好ましく、100ppt以下がより好ましく、10ppt以下が更に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が特に好ましい。
上記各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過を挙げることができる。フィルター孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルターの材質としては、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のフィルターが好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルター濾過工程では、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用しても良い。また、各種材料を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であっても良い。
また、上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う、装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。各種材料を構成する原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
フィルター濾過の他、吸着材による不純物の除去を行っても良く、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用しても良い。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材を使用することができる。
【0086】
なお、本発明のレジスト組成物を用いてインプリント用モールドを作製してもよく、その詳細については、例えば、特許第4109085号公報、特開2008−162101号公報を参照されたい。
本発明のパターン形成方法は、DSA(Directed Self-Assembly)におけるガイドパターン形成(例えば、ACSNanoVol.4 No.8 Page4815-4823参照)にも用いることができる。
また、上記の方法によって形成されたレジストパターンは、例えば特開平3−270227号公報及び特開2013−164509号公報に開示されたスペーサープロセスの芯材(コア)として使用できる。
本発明の方法により形成されるパターンに対して、パターンの表面荒れを改善する方法を適用しても良い。パターンの表面荒れを改善する方法としては、例えば、WO2014/002808A1に開示された水素を含有するガスのプラズマによってレジストパターンを処理する方法が挙げられる。その他にも、特開2004−235468、US2010/0020297A、特開2009−19969、Proc. of SPIE Vol.8328 83280N−1”EUV Resist Curing Technique for LWR Reduction and Etch Selectivity Enhancement”に記載されているような公知の方法を適用してもよい。
【0087】
〔4〕レジスト組成物
次に、本発明のパターン形成方法に用いるレジスト組成物について説明する。
【0088】
(A)樹脂
本発明におけるレジスト組成物は、ネガ型レジスト組成物であっても、ポジ型レジスト組成物であってもよく、典型的には、酸の作用により極性が増大して有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂を含有する。
酸の作用により極性が増大して有機溶剤を含む現像液に対する溶解度が減少する樹脂(以下、「樹脂(A)」ともいう)は、樹脂の主鎖若しくは側鎖、又は、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し、極性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する樹脂(以下、「酸分解性樹脂」又は「酸分解性樹脂(A)」ともいう)であることが好ましい。
さらに、樹脂(A)は、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有する樹脂(以下、「脂環炭化水素系酸分解性樹脂」ともいう)であることがより好ましい。単環又は多環の脂環炭化水素構造を有する樹脂は、高い疎水性を有し、有機系現像液によりレジスト膜の光照射強度の弱い領域を現像する場合の現像性が向上すると考えられる。
【0089】
樹脂(A)を含有する本発明のレジスト組成物は、ArFエキシマレーザー光を照射する場合に好適に使用できる。
【0090】
酸分解性基における極性基としては、代表的には酸基が挙げられ、具体的には、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基を有する基等が挙げられる。
好ましい極性基としては、カルボン酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホン酸基等が挙げられる。
酸で分解し得る基(酸分解性基)として好ましい基は、これらの極性基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
酸で脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01〜R02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
酸分解性基としては好ましくは、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級のアルキルエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基である。
【0091】
樹脂(A)は、下記一般式(pI)〜一般式(pV)で示される部分構造を有する繰り返し単位及び下記一般式(II-AB)で示される繰り返し単位の群から選択される少なくとも1種を含有する樹脂であることが好ましい。
【0092】
【化8】
【0093】
一般式(pI)〜(pV)中、
11は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基又はsec−ブチル基を表し、Zは、炭素原子とともにシクロアルキル基を形成するのに必要な原子団を表す。
12〜R16は、各々独立に、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。但し、R12〜R14のうち少なくとも1つ、もしくはR15、R16のいずれかはシクロアルキル基を表す。
17〜R21は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。但し、R17〜R21のうち少なくとも1つはシクロアルキル基を表す。また、R19、R21のいずれかは炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。
22〜R25は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。但し、R22〜R25のうち少なくとも1つはシクロアルキル基を表す。また、R23とR24は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0094】
【化9】
【0095】
一般式(II−AB)中、
11´及びR12´は、各々独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
Z´は、結合した2つの炭素原子(C−C)を含み、脂環式構造を形成するための原子団を表す。
【0096】
また、上記一般式(II−AB)は、下記一般式(II−AB1)又は一般式(II−AB2)であることが更に好ましい。
【0097】
【化10】
【0098】
式(II−AB1)及び(II−AB2)中、
13´〜R16´は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、−COOH、−COOR、酸の作用により分解する基、−C(=O)−X−A´−R17´、アルキル基あるいはシクロアルキル基を表す。Rl3´〜R16´のうち少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。
ここで、Rは、アルキル基、シクロアルキル基又はラクトン構造を有する基を表す。
Xは、酸素原子、硫黄原子、−NH−、−NHSO−又は−NHSONH−を表す。
A´は、単結合又は2価の連結基を表す。
17´は、−COOH、−COOR、−CN、水酸基、アルコキシ基、−CO−NH−R、−CO−NH−SO−R又はラクトン構造を有する基を表す。
は、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
nは、0又は1を表す。
【0099】
一般式(pI)〜(pV)において、R12〜R25におけるアルキル基としては、1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。
【0100】
11〜R25におけるシクロアルキル基或いはZと炭素原子が形成するシクロアルキル基は、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は6〜30個が好ましく、特に炭素数7〜25個が好ましい。これらのシクロアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0101】
好ましいシクロアルキル基としては、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基を挙げることができる。より好ましくは、アダマンチル基、ノルボルニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、テトラシクロドデカニル基、トリシクロデカニル基を挙げることができる。
【0102】
これらのアルキル基、シクロアルキル基の更なる置換基としては、アルキル基(炭素数1〜4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)が挙げられる。上記のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等が、更に有していてもよい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基を挙げることができる。
【0103】
上記樹脂における一般式(pI)〜(pV)で示される構造は、極性基の保護に使用することができる。極性基としては、この技術分野において公知の種々の基が挙げられる。
【0104】
具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、フェノール基、チオール基の水素原子が一般式(pI)〜(pV)で表される構造で置換された構造などが挙げられ、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基の水素原子が一般式(pI)〜(pV)で表される構造で置換された構造である。
【0105】
一般式(pI)〜(pV)で示される構造で保護された極性基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(pA)で示される繰り返し単位が好ましい。
【0106】
【化11】
【0107】
ここで、Rは、水素原子、ハロゲン原子又は1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。複数のRは、各々同じでも異なっていてもよい。
Aは、単結合、アルキレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、スルホンアミド基、ウレタン基、又はウレア基よりなる群から選択される単独あるいは2つ以上の基の組み合わせを表す。好ましくは単結合である。
Rp1は、上記式(pI)〜(pV)のいずれかの基を表す。
【0108】
一般式(pA)で表される繰り返し単位は、特に好ましくは、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、ジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレートによる繰り返し単位である。
【0109】
一般式(pA)で示される繰り返し単位の具体例としては、国際公開2016/136596号の段落〔0313〕及び〔0314〕に記載のものが挙げられる。
【0110】
上記一般式(II−AB)、R11´、R12´におけるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、沃素原子等を挙げることができる。
【0111】
上記R11´、R12´におけるアルキル基としては、炭素数1〜10個の直鎖状あるいは分岐状アルキル基が挙げられる。
【0112】
上記Z'の脂環式構造を形成するための原子団は、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素の繰り返し単位を樹脂に形成する原子団であり、中でも有橋式の脂環式炭化水素の繰り返し単位を形成する有橋式脂環式構造を形成するための原子団が好ましい。
【0113】
形成される脂環式炭化水素の骨格としては、一般式(pI)〜(pV)におけるR12〜R25の脂環式炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0114】
上記脂環式炭化水素の骨格には置換基を有していてもよい。そのような置換基としては、上記一般式(II−AB1)あるいは(II−AB2)中のR13´〜R16´を挙げることができる。
【0115】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を有する樹脂であることが好ましく、酸分解性基は、例えば、上記一般式(pI)〜一般式(pV)で示される部分構造を有する繰り返し単位、一般式(II−AB)で表される繰り返し単位、及び後記共重合成分の繰り返し単位のうち少なくとも1種の繰り返し単位に含まれる。酸分解性基は、一般式(pI)〜一般式(pV)で示される部分構造を有する繰り返し単位に含まれることが好ましい。
【0116】
樹脂(A)が含有する酸分解性基を有する繰り返し単位は、1種であってもよいし2種以上を併用していてもよい。
【0117】
樹脂(A)は、ラクトン構造又はスルトン(環状スルホン酸エステル)構造を有する繰り返し単位を含有することが好ましい。
ラクトン基又はスルトン基としては、ラクトン構造又はスルトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環のラクトン構造又はスルトン構造であり、5〜7員環のラクトン構造又はスルトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−17)、(SL1−1)及び(SL1−2)のいずれかで表されるラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造又はスルトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造又はスルトン構造としては(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−8)であり、(LC1−4)であることがより好ましい。特定のラクトン構造又はスルトン構造を用いることでLWR、現像欠陥が良好になる。
【0118】
【化12】
【0119】
【化13】
【0120】
ラクトン構造部分又はスルトン構造部分は、置換基(Rb)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、酸分解性基である。nは、0〜4の整数を表す。nが2以上の時、複数存在する置換基(Rb)は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在する置換基(Rb)同士が結合して環を形成してもよい。
【0121】
樹脂(A)は、極性基を有する有機基を含有する繰り返し単位、特に、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位を有していることが好ましい。これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。極性基で置換された脂環炭化水素構造の脂環炭化水素構造としてはアダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。極性基としては水酸基、シアノ基が好ましい。
極性基で置換された脂環炭化水素構造としては、下記一般式(VIIa)〜(VIId)で表される部分構造が好ましい。
【0122】
【化14】
【0123】
一般式(VIIa)〜(VIIc)中、
2c〜R4cは、各々独立に、水素原子又は水酸基、シアノ基を表す。ただし、R2c〜R4cのうち少なくとも1つは水酸基、シアノ基を表す。好ましくはR2c〜R4cのうち1つまたは2つが水酸基で残りが水素原子である。
一般式(VIIa)において、更に好ましくはR2c〜R4cのうち2つが水酸基で残りが水素原子である。
【0124】
一般式(VIIa)〜(VIId)で表される基を有する繰り返し単位としては、上記一般式(II−AB1)又は(II−AB2)中のR13´〜R16´のうち少なくとも1つが上記一般式(VII)で表される基を有するもの(例えば、−COORにおけるRが一般式(VIIa)〜(VIId)で表される基を表す)、又は下記一般式(AIIa)〜(AIId)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
【0125】
【化15】
【0126】
一般式(AIIa)〜(AIId)中、
1cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基、ヒドロキメチル基を表す。
2c〜R4cは、一般式(VIIa)〜(VIIc)におけるR2c〜R4cと同義である。
【0127】
一般式(AIIa)〜(AIId)で表される構造を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0128】
【化16】
【0129】
樹脂(A)の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜200,000であり、より好ましくは1,000〜20,000、さらに好ましくは1,000〜15,000である。重量平均分子量を、1,000〜200,000とすることにより、耐熱性やドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって成膜性が劣化したりすることを防ぐことができる。
分散度(分子量分布)は、通常1〜5であり、好ましくは1〜3、更に好ましくは1.2〜3.0、特に好ましくは1.2〜2.0の範囲のものが使用される。分散度の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、且つレジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0130】
樹脂(A)の含有量は、レジスト組成物の全固形分中50〜99.9質量%が好ましく、より好ましくは60〜99.0質量%である。
また、本発明において、樹脂(A)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0131】
樹脂(A)、好ましくは本発明のレジスト組成物は、トップコート組成物との相溶性の観点から、フッ素原子および珪素原子を含有しないことが好ましい。
【0132】
(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
本発明におけるレジスト組成物は、典型的には、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(「光酸発生剤」又は「化合物(B)」ともいう)を含有する。
化合物(B)は、低分子化合物の形態であっても良く、重合体の一部に組み込まれた形態であっても良い。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用しても良い。
化合物(B)が、低分子化合物の形態である場合、分子量が3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることが更に好ましい。
化合物(B)が、重合体の一部に組み込まれた形態である場合、前述した酸分解性樹脂の一部に組み込まれても良く、酸分解性樹脂とは異なる樹脂に組み込まれても良い。
本発明において、化合物(B)は、低分子化合物の形態であることが好ましい。
化合物(B)としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0133】
たとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
【0134】
また、これらの活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。
【0135】
さらに米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0136】
化合物(B)としては、活性光線又は放射線の照射により環状構造を有する酸を発生する化合物であることが好ましい。環状構造としては、単環式又は多環式の脂環基が好ましく、多環式の脂環基がより好ましい。脂環基の環骨格を構成する炭素原子としては、カルボニル炭素を含まないことが好ましい。
化合物(B)としては、例えば、下記一般式(3)で表される活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(特定酸発生剤)を好適に挙げることができる。
【0137】
【化17】
【0138】
(アニオン)
一般式(3)中、
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、複数存在する場合のR、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Lは、2価の連結基を表し、複数存在する場合のLは同一でも異なっていてもよい。
Wは、環状構造を含む有機基を表す。
oは、1〜3の整数を表す。pは、0〜10の整数を表す。qは、0〜10の整数を表す。
【0139】
Xfは、フッ素原子、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。このアルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
Xfは、好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。Xfは、フッ素原子又はCFであることがより好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが好ましい。
【0140】
及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、複数存在する場合のR、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
及びRとしてのアルキル基は、置換基を有していてもよく、炭素数1〜4のものが好ましい。R及びRは、好ましくは水素原子である。
少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基の具体例および好適な態様は一般式(3)中のXfの具体例および好適な態様と同じである。
【0141】
Lは、2価の連結基を表し、複数存在する場合のLは同一でも異なっていてもよい。
2価の連結基としては、例えば、−COO−(−C(=O)−O−)、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3〜10)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2〜6)又はこれらの複数を組み合わせた2価の連結基などが挙げられる。これらの中でも、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CO−、−O−、−SO−、−COO−アルキレン基−、−OCO−アルキレン基−、−CONH−アルキレン基−又は−NHCO−アルキレン基−が好ましく、−COO−、−OCO−、−CONH−、−SO−、−COO−アルキレン基−又は−OCO−アルキレン基−がより好ましい。
【0142】
Wは、環状構造を含む有機基を表す。なかでも環状の有機基であることが好ましい。
環状の有機基としては、例えば、脂環基、アリール基、及び複素環基が挙げられる。
脂環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ジアマンチル基及びアダマンチル基などの炭素数7以上のかさ高い構造を有する脂環基が、PEB(露光後加熱)工程での膜中拡散性の抑制及びMEEF(Mask Error Enhancement Factor)の向上の観点から好ましい。
【0143】
アリール基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基及びアントリル基が挙げられる。中でも、193nmにおける光吸光度が比較的低いナフチル基が好ましい。
複素環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよいが、多環式の方がより酸の拡散を抑制可能である。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、及びピリジン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、スルトン環及びデカヒドロイソキノリン環が挙げられる。複素環基における複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、又はデカヒドロイソキノリン環が特に好ましい。また、ラクトン環及びスルトン環の例としては、前述の樹脂において例示したラクトン構造及びスルトン構造が挙げられる。
【0144】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐のいずれであってもよく、炭素数1〜12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、スピロ環のいずれであってもよく、炭素数3〜20が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、水酸基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及びスルホン酸エステル基が挙げられる。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であってもよい。
【0145】
oは、1〜3の整数を表す。pは、0〜10の整数を表す。qは、0〜10の整数を表す。
一態様において、一般式(3)中のoが1〜3の整数であり、pが1〜10の整数であり、qが0であることが好ましい。Xfは、フッ素原子であることが好ましく、R4及びRは共に水素原子であることが好ましく、Wは多環式の炭化水素基であることが好ましい。oは1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。pが1〜3の整数であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましく、1が特に好ましい。Wは多環のシクロアルキル基であることがより好ましく、アダマンチル基又はジアマンチル基であることが更に好ましい。
【0146】
(カチオン)
一般式(3)中、Xは、カチオンを表す。
は、カチオンであれば特に制限されないが、好適な態様としては、例えば、後述する一般式(ZI)中のカチオン(Z以外の部分)が挙げられる。
【0147】
(好適な態様)
特定酸発生剤の好適な態様としては、例えば、下記一般式(ZI)で表される化合物が挙げられる。
【0148】
【化18】
【0149】
上記一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
-は、一般式(3)中のアニオンを表し、具体的には、下記のアニオンを表す。
【0150】
【化19】
【0151】
なお、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201〜R203の少なくとも1つが、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201〜R203の少なくとも一つと、単結合又は連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
化合物(B)は、1種類単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
化合物(B)の組成物中の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として、0.1〜30質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜25質量%、更に好ましくは3〜20質量%、特に好ましくは3〜15質量%である。
【0152】
(C)溶剤
レジスト組成物は、通常、溶剤(C)を含有する。
溶剤(C)としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4〜10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及びピルビン酸アルキル等の有機溶剤が挙げられる。
これらの溶剤の具体例としては、米国特許出願公開2008/0187860号明細書[0441]〜[0455]に記載のものが挙げられる。
【0153】
本発明においては、有機溶剤として構造中に水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を含有する溶剤、及び水酸基を含有しない溶剤としては前述の例示化合物が適宜選択可能であるが、水酸基を含有する溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、又は乳酸アルキル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、別名1−メトキシ−2−プロパノール)、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、又は乳酸エチルがより好ましい。また、水酸基を含有しない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を含有してもよいモノケトン化合物、環状ラクトン、又は酢酸アルキル等が好ましく、これらの内でもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、又は酢酸ブチルがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、エチルエトキシプロピオネート、又は2−ヘプタノンが更に好ましい。
水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量比)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。水酸基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含むことが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独溶剤、又は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤であることが好ましい。
【0154】
(D)疎水性樹脂
本発明におけるレジスト組成物は、(D)疎水性樹脂を含有してもよい。疎水性樹脂としては、レジスト上層膜形成用組成物において説明した前述の重合体(P)を好適に使用できる。疎水性樹脂は、常温(25℃)において、固体であることが好ましい。さらに、ガラス転移温度(Tg)は50〜250℃が好ましく、70〜250℃がより好ましく、80〜250℃が更に好ましく、90〜250℃が特に好ましく、100〜250℃が最も好ましい。疎水性樹脂は、単環式又は多環式のシクロアルキル基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。単環式又は多環式のシクロアルキル基は、繰り返し単位の主鎖及び側鎖のいずれに含まれていてもよい。
【0155】
疎水性樹脂(D)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000で、より好ましくは1,000〜50,000、更により好ましくは2,000〜15,000である。
疎水性樹脂(D)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
疎水性樹脂(D)の組成物中の含有量は、本発明のレジスト組成物中の全固形分に対し、一般的には0.01〜30質量%であり、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜8質量%がより好ましく、0.1〜7質量%が更に好ましい。
【0156】
(E)塩基性化合物
本発明におけるレジスト組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減するために、(E)塩基性化合物を含有することが好ましい。
塩基性化合物としては、好ましくは、下記式(A)〜(E)で示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0157】
【化20】
【0158】
一般式(A)〜(E)中、
200、R201及びR202は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(炭素数6〜20)を表し、ここで、R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0159】
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、または炭素数1〜20のシアノアルキル基が好ましい。
203、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、炭素数1〜20個のアルキル基を表す。
これら一般式(A)〜(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0160】
好ましい化合物として、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン等を挙げることができ、更に好ましい化合物として、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
【0161】
イミダゾール構造を有する化合物としてはイミダゾール、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等が挙げられる。ジアザビシクロ構造を有する化合物としては1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン等が挙げられる。オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としてはトリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2−オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシド等が挙げられる。オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としてはオニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えばアセテート、アダマンタン−1−カルボキシレート、パーフロロアルキルカルボキシレート等が挙げられる。トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等を挙げることができる。アニリン化合物としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
【0162】
また、塩基性化合物としては、前述した上層膜形成用組成物(トップコート組成物)が含有してもよい塩基性化合物として記載するものも好適に用いることができる。
【0163】
これらの塩基性化合物は、単独であるいは2種以上一緒に用いられる。
塩基性化合物の使用量は、本発明のレジスト組成物の固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0164】
レジスト組成物中の光酸発生剤と塩基性化合物との使用割合は、光酸発生剤/塩基性化合物(モル比)=2.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上であることが好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。光酸発生剤/塩基性化合物(モル比)は、より好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。
【0165】
(F)界面活性剤
本発明におけるレジスト組成物は、更に(F)界面活性剤を含有することが好ましく、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することがより好ましい。
【0166】
本発明のレジスト組成物が上記(F)界面活性剤を含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、特開2002−277862号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。
【0167】
これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また、いくつかの組み合わせで使用してもよい。
【0168】
(F)界面活性剤の使用量は、レジスト組成物全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0169】
(G)カルボン酸オニウム塩
本発明におけるレジスト組成物は、(G)カルボン酸オニウム塩を含有してもよい。カルボン酸オニウム塩としては、カルボン酸スルホニウム塩、カルボン酸ヨードニウム塩、カルボン酸アンモニウム塩などを挙げることができる。特に、(G)カルボン酸オニウム塩としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が好ましい。更に、(G)カルボン酸オニウム塩のカルボキシレート残基が芳香族基、炭素−炭素2重結合を含有しないことが好ましい。特に好ましいアニオン部としては、炭素数1〜30の直鎖、分岐、単環または多環環状アルキルカルボン酸アニオンが好ましい。さらに好ましくはこれらのアルキル基の一部または全てがフッ素置換されたカルボン酸のアニオンが好ましい。アルキル鎖中に酸素原子を含んでいてもよい。これにより220nm以下の光に対する透明性が確保され、感度、解像力が向上し、疎密依存性、露光マージンが改良される。
【0170】
フッ素置換されたカルボン酸のアニオンとしては、フロロ酢酸、ジフロロ酢酸、トリフロロ酢酸、ペンタフロロプロピオン酸、ヘプタフロロ酪酸、ノナフロロペンタン酸、パーフロロドデカン酸、パーフロロトリデカン酸、パーフロロシクロヘキサンカルボン酸、2,2−ビストリフロロメチルプロピオン酸のアニオン等が挙げられる。
【0171】
これらの(G)カルボン酸オニウム塩は、スルホニウムヒドロキシド、ヨードニウムヒドロキシド、アンモニウムヒドロキシドとカルボン酸を適当な溶剤中酸化銀と反応させることによって合成できる。
【0172】
(G)カルボン酸オニウム塩の組成物中の含量は、レジスト組成物の全固形分に対し、一般的には0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0173】
(H)その他の添加剤
本発明におけるレジスト組成物には、必要に応じてさらに染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止剤及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物)等を含有させることができる。
【0174】
このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号公報、特開平2−28531号公報、米国特許第4,916,210、欧州特許第219294等に記載の方法を参考にして、当業者において容易に合成することができる。
カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物の具体例としてはコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸などのステロイド構造を有するカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0175】
レジスト組成物の固形分濃度は、通常1.0〜10質量%であり、好ましくは2.0〜5.7質量%、更に好ましくは2.0〜5.3質量%である。固形分濃度を上記範囲とすることで、レジスト溶液を基板上に均一に塗布することができ、更にはラインウィズスラフネスに優れたレジストパターンを形成することが可能になる。その理由は明らかではないが、恐らく、固形分濃度を10質量%以下、好ましくは5.7質量%以下とすることで、レジスト溶液中での素材、特には光酸発生剤の凝集が抑制され、その結果として、均一なレジスト膜が形成できたものと考えられる。
固形分濃度とは、レジスト組成物の総重量に対する、溶剤を除く他のレジスト成分の重量の重量百分率である。
【0176】
本発明におけるレジスト組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは上記混合溶剤に溶解し、フィルター濾過した後、所定の支持体(基板)上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。フィルター濾過においては、例えば特開2002−62667号公報のように、循環的な濾過を行ったり、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ったりしてもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理などを行ってもよい。
【0177】
本発明は、上述した本発明のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法、及び、この製造方法により製造された電子デバイスにも関する。
本発明の電子デバイスは、電気電子機器(家電、OA・メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)に、好適に、搭載される。
【実施例】
【0178】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
【0179】
<合成例1:重合体(P−5)の合成>
シクロヘキサノン 53.4gを窒素気流下、80℃に加熱した。この液を攪拌しながら、下記構造式(M−1)で表されるモノマー 47.1g、下記構造式(M−2)で表されるモノマー 43.3g、シクロヘキサノン 97.3g、及び、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル〔V−601、和光純薬工業(株)製〕2.7gの混合溶液を6時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で更に2時間攪拌した。これを下記(1)及び(2)のいずれかの精製方法にて処理し、重合体(P−5)10質量%の4−メチル−2−ペンタノール溶液を調製した。
【0180】
(1)重合反応液から減圧留去により反応溶媒を除去し、酢酸エチル200g、酸性化合物を含有する水としての0.1Nの希塩酸200gを加えた。撹拌、分離後、上層を回収し、0.1Nの希塩酸200gを加えた。さらに撹拌、分離後、上層を回収し、水200gを加えた。再び撹拌、分離後、上層を回収し、重合体溶液における溶媒を4−メチル−2−ペンタノールに置換した。
(2)重合反応液に多量のメタノールを接触させることで重合体を再沈殿させた後、反応釜(重合装置)から溶媒を除去し(留去ではない)、さらに酢酸エチル200g、酸性化合物を含有する水としての0.1Nの希塩酸200gを加えた。撹拌、分離後、上層を回収し、0.1Nの希塩酸200gを加えた。さらに撹拌、分離後、上層を回収し、水200gを加えた。再び撹拌、分離後、上層を回収し、重合体溶液における溶媒を4−メチル−2−ペンタノールに置換した。
【0181】
【化21】
【0182】
重合体(P−5)と同様に、重合体(P−1)〜(P−4)、及び(P−6)〜(P−8)を、上記(1)及び(2)のそれぞれの精製方法を経由して合成した。
【0183】
以下、各重合体における繰り返し単位の構造、及び、繰り返し単位のモル比率について示す。また、重量平均分子量(Mw)、及び、分散度(Mw/Mn)については、上記(1)及び(2)のどちらを採用したかにより異なるため、それぞれの場合について示す。
【0184】
【化22】
【0185】
<合成例2:重合体(P’−1)の合成>
2−ブタノン 268g、下記構造式M−1で表されるモノマー 160g、下記構造式M−2で表されるモノマー 95.3gを窒素気流下、75℃に加熱した。この液を攪拌しながら、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)12.1gを2−ブタノン18.3gに溶解させた溶液を5分間かけて滴下し、6時間熟成した。
次いで、得られた重合反応液に2−ブタノンを加えて222gに希釈した後、分液漏斗に移した。この分液漏斗にメタノール222g及びn−ヘキサン1,111gを投入し、分液精製を実施した。分離後、下層液を168g回収した。回収した下層液にメタノール168g及びn−ヘキサン842gを投入し、分液精製を実施した。分離後、下層液を219g回収した。回収した下層液に2−ブタノン109g及びn−ヘキサン656gを投入し、分液精製を実施した。分離後、上層液を806g回収した。回収した上層液を4−メチル−2−ペンタノールに置換し、フッ素原子含有重合体を含む溶液を400g得た。次いで、得られた溶液を分液漏斗に移し、この分液漏斗に水400gを投入し、分液精製を実施した後、上層液を440g回収した。回収した上層液を4−メチル−2−ペンタノールに置換し、フッ素原子含有重合体(P’−1)を含む溶液を得た。この精製方法を後の表では「(3)」と記す。
【0186】
【化23】
【0187】
<合成例3:重合体(P’−2)の合成>
シクロヘキサノン 268gを窒素気流下、80℃に加熱した。この液を攪拌しながら、下記構造式M−1で表されるモノマー 160g、下記構造式M−2で表されるモノマー 95.3g、シクロヘキサノン 498g、及び、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル〔V−601、和光純薬工業(株)製〕5.54g)の混合溶液を6時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で更に2時間攪拌した。反応液を放冷後、多量メタノールで再沈殿、ろ過し、得られたウェット個体を4−メチル−2−プロパノールに再溶解し、減圧下で加熱しながら残存しているメタノールとシクロヘキサノンを追い出した後に、重合体溶液を0.05μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターでろ過して、重合体(P’−1)10質量%の4−メチル−2−ペンタノール溶液 2210gを調製した。この精製方法を後の表では「(4)」と記す。
【0188】
【化24】
【0189】
<レジスト上層膜形成用組成物の調製>
下記表に示す成分を下記に示す溶剤に溶解させ、固形分濃度2.7質量%の溶液を調製し、これを0.03μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターでろ過して、上層膜形成用組成物(1)〜(10)を調製した。下表1の表中、添加剤(AD)の含有量(質量%)は、上層膜形成用組成物の全固形分を基準とするものである。
【0190】
【表1】
【0191】
表中の各略号は、以下の通りである。
【0192】
<溶剤(S)>
S−1:4−メチル−2−ペンタノール
S−2:3−ペンテン−2−オン
S−3:2−ノナノン
S−4:デカン
S−5:2−ノナノン
S−6:イソアミルエーテル
S−7:イソ酪酸イソブチル
【0193】
<添加剤(AD)>
【0194】
【化25】
【0195】
〔実施例1−A〜24−A、比較例1−A’(ArF液浸露光、アルカリ現像液によるポジ型現像)〕
【0196】
<レジスト組成物の調製>
表2に記載の各成分を溶剤に溶解させ、固形分濃度4質量%の溶液を調製し、これを0.05μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターで濾過することで、レジスト組成物を調製した。
【0197】
【表2】
【0198】
表2における樹脂(A)、光酸発生剤、塩基性化合物、界面活性剤、及び溶剤は下記の通りである。
【0199】
〔樹脂(A)〕
以下、樹脂(A)の構造を以下に示す。また、下記表3に、各樹脂における繰り返し単位のモル比率(構造式における左から順)、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を示す。
【0200】
【化26】
【0201】
【化27】
【0202】
【表3】
【0203】
〔光酸発生剤〕
【0204】
【化28】
【0205】
〔塩基性化合物〕
【0206】
【化29】
【0207】
【化30】
【0208】
〔界面活性剤〕
W−1:メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製、フッ素系)
W−2:メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製、フッ素及びシリコン系)
W−3:ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製、シリコン系)
W−4:トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)
W−5:PF656(OMNOVA社製、フッ素系)
W−6:PF6320(OMNOVA社製、フッ素系)
【0209】
〔溶剤〕
SL−1’: シクロヘキサノン
SL−2’: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA:1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)
SL−3’: 乳酸エチル
SL−4’: プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME:1−メトキシ−2−プロパノール)
SL−5’: γ−ブチロラクトン
SL−6’: プロピレンカーボネート
【0210】
<パターン形成>
シリコンウエハ上に有機反射防止膜形成用組成物ARC29SR(Brewer Science社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークして、膜厚98nmの反射防止膜を形成した。その上に、表2に示すレジスト組成物を塗布し、100℃で60秒間ベークして、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。次いで、レジスト膜の上層に、表1に記載の上層膜形成用組成物を塗布し、90℃で60秒間ベークして、膜厚100nmのレジスト上層膜を形成した。
レジスト膜に対して、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA1.20、C−Quad、アウターシグマ0.730、インナーシグマ0.630、XY偏向)を用いて、線幅75nmの1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを介して露光した。液浸液は、超純水を使用した。
露光後のレジスト膜を120℃で60秒間ベークした後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像し、次いで純水で30秒間リンスした。その後、これをスピン乾燥してポジ型のレジストパターンを得た。
【0211】
<レジストパターンの評価>
走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて、得られたレジストパターンを下記の方法で、金属含有量、エッチング後欠陥、エッチング後ラインウィズスラフネス(Line Width Roughness;LWR)について、下記の方法に基づき、評価した。結果を下表4に示す。
【0212】
〔金属含有量〕
各上層膜形成用組成物を全固形分濃度が0.27質量%となるようにN−メチルピロリドン(N−methylpyrrolidone;NMP)にて希釈し、ICP−質量分析計(PerkinElmer社製の「NexION 2000」)を用いて、各組成物に含まれる金属(Na原子、K原子、Mg原子、Al原子、Ca原子、Cr原子、Mn原子、Fe原子、Ni原子、Cu原子、Zn原子、Pb原子、Sn原子、Co原子、Li原子、Ti原子、Ag原子、W原子、V原子、Ba原子、Au原子、As原子、Cd原子、Mo原子、Zr原子)について含有量を測定した。その各含有量の測定値から金属の合計含有量を算出した。
【0213】
〔エッチング後欠陥〕
上記のようにして形成したパターンを加工マスクとして、HITACHI U−621でAr/C/Oガス(体積比率100/4/2の混合ガス)を用い、シリコンウエハを60秒間ドライエッチング処理した。ドライエッチング処理を行った後に、得られたパターンに対して、ケー・エル・エー・テンコール社製の欠陥検査装置KLA2360(商品名)を用い、欠陥検査装置のピクセルサイズを0.16μmに、また閾値を20に設定して、ランダムモードで測定し、比較イメージとピクセル単位の重ね合わせによって生じる差異から抽出される欠陥を検出して、単位面積あたりの欠陥数(個/cm)を算出した。値が0.3未満のものをA、0.3以上0.8未満のものをB、0.8以上のものをCとした。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0214】
〔エッチング後LWR〕
上記のようにして形成したパターンを加工マスクとして、HITACHI U−621でAr/C/Oガス(体積比率100/4/2の混合ガス)を用い、シリコンウエハを60秒間ドライエッチング処理した。ドライエッチング処理を行った後に、得られたパターンに対して、測長走査型電子顕微鏡(SEM((株)日立製作所S−9380II))を使用してパターン上部から観察する際、線幅を任意のポイントで観測し、ラフネスが殆ど見られないものをA、ラフネスがやや見られるものをB、ラフネスが大きいものをCで分類した。
【0215】
【表4】
【0216】
金属含有量が本発明に規定の範囲を満たすレジスト上層膜形成用組成物を用いた実施例は、これを満たさない比較例と比較して、エッチング後LWRとエッチング後欠陥とに優れることが分かった。すなわち、微細のレジストパターンを加工マスクとして下層(上記実施例においてはシリコンウエハ)をエッチングした場合において、欠陥が少なく、かつ、ラフネス性能に優れた下層パターン(上記実施例においてはシリコンウエハのパターン)を形成できることが分かった。
【0217】
〔実施例1−B〜24−B、比較例1−B’(ArF液浸露光、有機溶剤現像によるネガ型現像)〕
【0218】
<レジスト組成物の調製>
下記表5に示す成分を下記表5に示す溶剤に溶解させ、固形分濃度3.5質量%の溶液を調製し、これを0.03μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターでろ過して、レジスト組成物Re−1〜Re−12を調製した。
【0219】
【表5】
【0220】
表5における略号は次の通りである。
【0221】
<樹脂>
以下、樹脂(1)’〜(12)’における各繰り返し単位の組成比(モル比;左から順に対応)、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を、表6にまとめて示す。
【0222】
【表6】
【0223】
【化31】
【0224】
<光酸発生剤>
【0225】
【化32】
【0226】
<疎水性樹脂>
疎水性樹脂としては、表7に示す樹脂(B−1)〜(B−8)を使用した。
【0227】
【表7】
【0228】
【化33】
【0229】
<塩基性化合物>
【0230】
【化34】
【0231】
<溶剤>
SL−1”: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
SL−2”: シクロヘキサノン
SL−3”: プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
SL−4”: γ−ブチロラクトン
【0232】
シリコンウエハ上に有機反射防止膜形成用組成物ARC29SR(Brewer Science社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークして、膜厚98nmの反射防止膜を形成した。その上に、上記表5に示すレジスト組成物を塗布し、100℃で60秒間ベークして、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。レジスト膜の上層に、表1に記載の上層膜形成用組成物を塗布し、90℃で60秒間ベークして、膜厚100nmのレジスト上層膜を形成した。
レジスト膜に対して、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA1.20、C−Quad、アウターシグマ0.730、インナーシグマ0.630、XY偏向)を用いて、線幅75nmの1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを介して露光した。液浸液は、超純水を使用した。
露光後のレジスト膜を120℃で60秒間ベークした後、表8に記載の有機系現像液で30秒間現像し、次いで表8に記載のリンス液で30秒間リンスした。その後、これをスピン乾燥してネガ型のレジストパターンを得た。
【0233】
<レジストパターンの評価>
走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて、得られたレジストパターンを下記の方法で、金属含有量、エッチング後欠陥、エッチング後LWRについて、上述の方法に基づき、評価した。結果を下表8に示す。
【0234】
【表8】
【0235】
金属含有量が本発明に規定の範囲を満たすレジスト上層膜形成用組成物を用いた実施例は、これを満たさない比較例と比較して、エッチング後LWRとエッチング後欠陥とに優れることが分かった。すなわち、微細のレジストパターンを加工マスクとして下層(上記実施例においてはシリコンウエハ)をエッチングした場合において、欠陥が少なく、かつ、ラフネス性能に優れた下層パターン(上記実施例においてはシリコンウエハのパターン)を形成できることが分かった。