(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、及び、電子線(EB)等を意味する。また、本発明において光とは、活性光線又は放射線を意味する。
また、本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及び、EUV光等による露光のみならず、電子線、及び、イオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0010】
また、本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルを表す。
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー製HLC−8120GPC)によるGPC測定(溶媒:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μl、カラム:東ソー社製TSK gel Multipore HXL−M(×4本)、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率(RI)検出器)によるポリスチレン換算値として定義される。
【0011】
〔感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物〕
上記したように、本発明の感活性光線性又は感放射性樹脂組成物は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂(C)を含有する。
【0013】
上記一般式(1)中、Zは、ハロゲン原子、R
11OCH
2−で表される基、又は、R
12OC(=O)CH
2−で表される基を表す。R
11及びR
12は、それぞれ独立して、1価の置換基を表す。Xは、酸素原子、又は、硫黄原子を表す。Lは、(n+1)価の連結基を表す。Rは、アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する基を有する基を表す。nは正の整数を表す。nが2以上である場合、複数のRは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0014】
本発明は上記構成をとるため、露光の高速スキャンに対して、高い液浸液の追従性を有しながら、スカム(液浸欠陥)、及び、現像欠陥を共に低減できるものである。
その理由は明らかではないが、以下の通りと推測される。
【0015】
先ず、液浸露光工程においては、露光装置(具体的には露光ヘッド)が高速でウエハ上をスキャンし露光パターンを形成していく動きに追随して、液浸液がウエハ上を動く必要がある。このため、動的な状態における感活性光線性又は感放射線性膜に対する液浸液の接触角が重要になり、液滴が残存することなく、露光ヘッドの高速なスキャンに追随する性能が感活性光線性又は感放射線性膜には求められるものと考えられる。
【0016】
樹脂(C)は、樹脂の主鎖に結合するZとして、ハロゲン原子、R
11OCH
2−で表される基、又は、R
12OC(=O)CH
2−で表される基を有している。
ここで、Zが、ハロゲン原子であって、特にフッ素原子である場合は、樹脂(C)自体の疎水性が高くなり、本発明の組成物により感活性光線性又は感放射線性膜を形成した際に、上記感活性光線性又は感放射線性膜上における水の後退接触角が非常に高くなったものと考えられる。
また、Zが、フッ素以外のハロゲン原子である場合も、本発明者らの検討の結果、理由は定かではないが、感活性光線性又は感放射線性膜上における水の後退接触角を非常に高くすることができることを見出した。
更に、Zが、R
11OCH
2−で表される基、又は、R
12OC(=O)CH
2−で表される基である場合には、これらの基が樹脂の主鎖に結合していることにより、樹脂の主鎖近傍は、側鎖による立体障害が大きくなっているものと考えられる。これにより、樹脂の主鎖骨格の剛直性が高くなるため、一般式(1)において、主鎖に連結基Lを介して結合することによって主鎖から離れた位置に存在するとともに、典型的には疎水性の高い基Rが、樹脂のランダムコイルにおいて、外向きに存在する傾向となる。その結果、樹脂(C)自体の疎水性が高くなり、本発明の組成物により感活性光線性又は感放射線性膜を形成した際に、上記感活性光線性又は感放射線性膜上における水の後退接触角が非常に高くなったものと考えられる。
以上のように、本発明においては、先ず、組成物により感活性光線性又は感放射線性膜を形成した際に、上記感活性光線性又は感放射線性膜上における水の後退接触角が非常に高くなるため、露光のスキャン速度を超高速(例えば、700mm/秒以上)としても、露光装置に対する液浸液の追従性が充分に得られ、スカム(液浸欠陥)を低減できたものと考えられる。
また、樹脂(C)は、一般式(1)で表される繰り返し単位中に、アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する基を有する基としての基Rを有している。これにより、樹脂(C)を含有する組成物から得られた感活性光線性又は感放射線性膜は、上記したように、露光前においては、水の後退接触角が高い状態でありながら、露光現像後においては、アルカリ現像液に対する溶解度が極めて高い状態となるため、現像欠陥を充分に低減できたものと考えられる。
【0017】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、レジスト組成物であることが好ましく、ポジ型のレジスト組成物であっても、ネガ型のレジスト組成物であってもよいが、ポジ型のレジスト組成物であることが好ましい。
また、本発明のレジスト組成物は、アルカリ現像用のレジスト組成物であっても、有機溶剤現像用のレジスト組成物であってもよいが、アルカリ現像用のレジスト組成物であることが好ましい。
本発明のレジスト組成物は、典型的には、化学増幅型のレジスト組成物である。
以下、本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(「本発明の組成物」ともいう。)に含まれる成分について詳述する。
【0018】
<樹脂(A)>
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、酸の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する樹脂(以下、「酸分解性樹脂」又は「樹脂(A)」ともいう。)を含有し得る。
酸分解性樹脂は、樹脂の主鎖又は側鎖、あるいは、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する。
樹脂(A)は、好ましくはアルカリ現像液に不溶又は難溶性である。
酸分解性基は、アルカリ可溶性基を酸の作用により分解し脱離する基で保護された構造を有することが好ましい。
アルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボキシル基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
好ましいアルカリ可溶性基としては、カルボキシル基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、スルホン酸基が挙げられる。
酸分解性基として好ましい基は、これらのアルカリ可溶性基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
酸で脱離する基としては、例えば、−C(R
36)(R
37)(R
38)、−C(R
36)(R
37)(OR
39)、−C(R
01)(R
02)(OR
39)等を挙げることができる。
式中、R
36〜R
39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R
36とR
37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
R
01及びR
02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
酸分解性基としては好ましくは、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級のアルキルエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基である。
樹脂(A)が含有し得る、酸分解性基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0020】
一般式(AI)に於いて、
Xa
1は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Rx
1〜Rx
3は、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖若しくは分岐)又はシクロアルキル基(単環若しくは多環)を表す。
Rx
1〜Rx
3の2つが結合して、シクロアルキル基(単環若しくは多環)を形成してもよい。
【0021】
Xa
1により表される、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基又は−CH
2−R
11で表される基が挙げられる。R
11は、ハロゲン原子(フッ素原子など)ヒドロキシル基又は1価の有機基を表し、例えば、炭素数5以下のアルキル基、炭素数5以下のアシル基が挙げられ、好ましくは炭素数3以下のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基である。Xa
1は、一態様において、好ましくは水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基等である。
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、−COO−Rt−基、−O−Rt−基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は−COO−Rt−基が好ましい。Rtは、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、−CH
2−基、−(CH
2)
2−基、−(CH
2)
3−基がより好ましい。
【0022】
Rx
1〜Rx
3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが好ましい。
Rx
1〜Rx
3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx
1〜Rx
3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。炭素数5〜6の単環のシクロアルキル基が特に好ましい。
Rx
1〜Rx
3の2つが結合して形成される上記シクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
一般式(AI)で表される繰り返し単位は、例えば、Rx
1がメチル基又はエチル基であり、Rx
2とRx
3とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0023】
上記各基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1〜4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)などが挙げられ、炭素数8以下が好ましい。
酸分解性基を有する繰り返し単位の合計としての含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、20〜80mol%であることが好ましく、25〜75mol%であることがより好ましく、30〜70mol%であることが更に好ましい。
具体的には、US2012/0135348 A1 <0265>に開示されている具体例を利用できるが、本発明は、これに限定されるものではない。
樹脂(A)は、一般式(AI)で表される繰り返し単位として、例えば、一般式(3)で表される繰り返し単位を含有することが好ましい。
【0025】
一般式(3)中、
R
31は、水素原子又はアルキル基を表す。
R
32は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基又はsec−ブチル基を表す。
R
33は、R
32が結合している炭素原子とともに単環の脂環炭化水素構造を形成するのに必要な原子団を表す。上記脂環炭化水素構造は、環を構成する炭素原子の一部が、ヘテロ原子、又は、ヘテロ原子を有する基で置換されていてもよい。
R
31のアルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としてはフッ素原子、水酸基などが挙げられる。
R
31は、好ましくは水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
R
32は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、又は、イソプロピル基であることが好ましく、メチル基、又は、エチル基であることがより好ましい。
R
33が炭素原子とともに形成する単環の脂環炭化水素構造は、3〜8員環であることが好ましく、5又は6員環であることがより好ましい。
R
33が炭素原子とともに形成する単環の脂環炭化水素構造において、環を構成し得るヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子等が挙げられ、ヘテロ原子を有する基としては、カルボニル基等が挙げられる。ただし、ヘテロ原子を有する基は、エステル基(エステル結合)ではないことが好ましい。
R
33が炭素原子とともに形成する単環の脂環炭化水素構造は、炭素原子と水素原子とのみから形成されることが好ましい。
【0026】
一般式(3)で表される繰り返し単位は、下記一般式(3’)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0028】
一般式(3’)中、R
31及びR
32は、上記一般式(3)における各々と同義である。
一般式(3)で表される構造を有する繰り返し単位の具体例としては、下記の繰り返し単位を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0030】
一般式(3)で表される構造を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して20〜80モル%であることが好ましく、25〜75モル%であることがより好ましく、30〜70モル%であることが更に好ましい。
樹脂(A)は、一般式(AI)で表される繰り返し単位として、例えば、一般式(I)で表される繰り返し単位及び一般式(II)で表される繰り返し単位の少なくともいずれかを有する樹脂であることがより好ましい。
【0032】
式(I)及び(II)中、
R
1及びR
3は、各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基又は−CH
2−R
11で表される基を表す。R
11は1価の有機基を表す。
R
2、R
4、R
5及びR
6は、各々独立して、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rは、R
2が結合する炭素原子とともに脂環構造を形成するのに必要な原子団を表す。
【0033】
R
1及びR
3は、好ましくは水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。R
11における1価の有機基の具体例及び好ましい例は、一般式(AI)のR
11で記載したものと同様である。
R
2におけるアルキル基は、直鎖型でも分岐型でもよく、置換基を有していてもよい。
R
2におけるシクロアルキル基は、単環でも多環でもよく、置換基を有していてもよい。
R
2は好ましくはアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜5のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基などが挙げられる。
Rは、炭素原子とともに脂環構造を形成するのに必要な原子団を表す。Rが炭素原子とともに形成する脂環構造としては、好ましくは、単環の脂環構造であり、その炭素数は好ましくは3〜7、より好ましくは5又は6である。
R
3は好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくはメチル基である。
R
4、R
5、R
6におけるアルキル基は、直鎖型でも分岐型でもよく、置換基を有していてもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが好ましい。
R
4、R
5、R
6におけるシクロアルキル基は、単環でも多環でもよく、置換基を有していてもよい。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
【0034】
上記各基が有し得る置換基としては、上記一般式(AI)における各基が有し得る置換基として前述したものと同様の基が挙げられる。
酸分解性樹脂は、一般式(AI)により表される繰り返し単位として、一般式(I)により表される繰り返し単位及び一般式(II)により表される繰り返し単位を含んだ樹脂であることがより好ましい。
【0035】
また、他の形態において、一般式(AI)により表される繰り返し単位として、一般式(I)により表される繰り返し単位の少なくとも2種を含んだ樹脂であることがより好ましい。一般式(I)の繰り返し単位を2種以上含む場合は、Rが炭素原子とともに形成する脂環構造が単環の脂環構造である繰り返し単位と、Rが炭素原子とともに形成する脂環構造が多環の脂環構造である繰り返し単位とを両方含むことが好ましい。単環の脂環構造としては、炭素数5〜8が好ましく、炭素数5若しくは6がより好ましく、炭素数5が特に好ましい。多環の脂環構造としては、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基が好ましい。
【0036】
樹脂(A)が含有する酸分解性基を有する繰り返し単位は、1種であってもよいし2種以上を併用していてもよい。併用する場合はUS2012/0135348 A1 <0287>に開示されている具体例を利用できるが、これに限定されるものではない。
樹脂(A)は、一態様において、環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位を含有することが好ましい。この環状炭酸エステル構造は、環を構成する原子群として−O−C(=O)−O−で表される結合を含む環を有する構造である。環を構成する原子群として−O−C(=O)−O−で表される結合を含む環は、5〜7員環であることが好ましく、5員環であることが最も好ましい。このような環は、他の環と縮合し、縮合環を形成していてもよい。
樹脂(A)は、ラクトン構造又はスルトン(環状スルホン酸エステル)構造を有する繰り返し単位を含有することが好ましい。
ラクトン基又はスルトン基としては、ラクトン構造又はスルトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環のラクトン構造又はスルトン構造であり、5〜7員環のラクトン構造又はスルトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。US2012/0135348 A1 <0318>に開示された一般式(LC1−1)〜(LC1−17)、及び下記一般式(SL1−1)及び(SL1−2)のいずれかで表されるラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造又はスルトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造又はスルトン構造としては(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−8)であり、(LC1−4)であることがより好ましい。特定のラクトン構造又はスルトン構造を用いることでLWR、現像欠陥が良好になる。
【0038】
上記一般式(SL1−1)及び(SL1−2)中、Rb
2は、置換基を表す。n
2は、0〜4の整数を表す。好ましい置換基(Rb
2)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシ基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、及び酸分解性基等が挙げられる。n
2が2以上のとき、複数存在する置換基(Rb
2)は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在する置換基(Rb
2)同士が結合して環を形成してもよい。
【0039】
樹脂(A)は、下記一般式(III)で表されるラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位を含有することが好ましい。
【0041】
式(III)中、
Aは、エステル結合(−COO−で表される基)又はアミド結合(−CONH−で表される基)を表す。
R
0は、複数個ある場合にはそれぞれ独立にアルキレン基、シクロアルキレン基、又はその組み合わせを表す。
Zは、複数個ある場合にはそれぞれ独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合
【0045】
を表す。ここで、Rは、各々独立して水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
R
8は、ラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基を表す。
nは、−R
0−Z−で表される構造の繰り返し数であり、0〜2の整数を表す。
R
7は、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
【0046】
R
0のアルキレン基、シクロアルキレン基は置換基を有してよい。
Zは好ましくは、エーテル結合、エステル結合であり、特に好ましくはエステル結合である。
R
7のアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。R
0のアルキレン基、シクロアルキレン基、R
7におけるアルキル基は、各々、置換されていてもよく、置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子やメルカプト基、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ベンジルオキシ基等のアルコキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等のアセトキシ基が挙げられる。R
7は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基が好ましい。
R
0における好ましい鎖状アルキレン基としては炭素数が1〜10の鎖状のアルキレンが好ましく、より好ましくは炭素数1〜5であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。好ましいシクロアルキレン基としては、炭素数3〜20のシクロアルキレン基であり、例えば、シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基、ノルボルニレン基、アダマンチレン基等が挙げられる。本発明の効果を発現するためには鎖状アルキレン基がより好ましく、メチレン基が特に好ましい。
R
8で表されるラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基は、ラクトン構造又はスルトン構造を有していれば限定されるものではなく、具体例として上述した一般式(LC1−1)〜(LC1−17)、(SL1−1)及び(SL1−2)で表されるラクトン構造又はスルトン構造が挙げられ、これらのうち(LC1−4)で表される構造が特に好ましい。また、(LC1−1)〜(LC1−17)、(SL1−1)及び(SL1−2)におけるn
2は2以下のものがより好ましい。
また、R
8は無置換のラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基、或いはメチル基、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を置換基として有するラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基が好ましく、シアノ基を置換基として有するラクトン構造(シアノラクトン)又はスルトン構造(シアノスルトン)を有する1価の有機基がより好ましい。
【0047】
一般式(III)において、nが1又は2であることが好ましい。
一般式(III)で表されるラクトン構造又はスルトン構造を有する基を有する繰り返し単位の具体例としては、US2012/0135348 A1 <0305>に開示された繰り返し単位を挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(III−1)又は(III−1’)で表される繰り返し単位がより好ましい。
【0050】
一般式(III−1)及び(III−1’)に於いて、
R
7、A、R
0、Z、及びnは、上記一般式(III)と同義である。
R
7’、A’、R
0’、Z’及びn’は、上記一般式(III)におけるR
7、A、R
0、Z及びnとそれぞれ同義である。
R
9は、複数個ある場合にはそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、水酸基又はアルコキシ基を表し、複数個ある場合には2つのR
9が結合し、環を形成していてもよい。
R
9’は、複数個ある場合にはそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、水酸基又はアルコキシ基を表し、複数個ある場合には2つのR
9’が結合し、環を形成していてもよい。
X及びX’は、それぞれ独立にアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。
m及びm’は、置換基数であって、それぞれ独立に0〜5の整数を表す。m及びm’はそれぞれ独立に0又は1であることが好ましい。
【0051】
R
9及びR
9’のアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、がより好ましく、メチル基が最も好ましい。シクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基を挙げることができる。アルコキシカルボニル基としてはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等を挙げることができる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等を挙げることができる。これらの基は置換基を有していてもよく、置換基としてはヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、シアノ基、フッ素原子などのハロゲン原子を挙げることができる。R
9及びR
9’はメチル基、シアノ基又はアルコキシカルボニル基であることがより好ましく、シアノ基であることが更に好ましい。
X及びX’のアルキレン基としてはメチレン基、エチレン基等が挙げられる。X及びX’は酸素原子又はメチレン基であることが好ましく、メチレン基であることが更に好ましい。
m及びm’が1以上である場合、少なくとも1つのR
9及びR
9’はラクトンのカルボニル基のα位又はβ位に置換することが好ましく、特にα位に置換することが好ましい。
一般式(III−1)又は(III−1’)で表されるラクトン構造を有する基、又はスルトン構造を有する繰り返し単位の具体例としては、US2012/0135348 A1 <0315>に開示された繰り返し単位を挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
一般式(III)で表される繰り返し単位の含有量は、複数種類含有する場合は合計して樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、15〜60mol%が好ましく、より好ましくは20〜60mol%、更に好ましくは30〜50mol%である。
樹脂(A)は、また、一般式(III)で表される単位以外にも、上述したラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位を含有していてもよい。
ラクトン基又はスルトン基を有する繰り返し単位の具体例として、上記に挙げた具体例に加え、US2012/0135348 A1 <0325>〜<0328>に開示された繰り返し単位を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0053】
上述した具体例の中で特に好ましい繰り返し単位としては、下記の繰り返し単位が挙げられる。最適なラクトン基又はスルトン基を選択することにより、パターンプロファイル、疎密依存性が良好となる。
【0055】
ラクトン基又はスルトン基を有する繰り返し単位は、通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体を混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90%以上のものが好ましく、より好ましくは95%以上である。
一般式(III)で表される繰り返し単位以外のラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位の含有量は、複数種類含有する場合は合計して樹脂中の全繰り返し単位に対し、15〜60mol%が好ましく、より好ましくは20〜50mol%、更に好ましくは30〜50mol%である。
本発明の効果を高めるために、一般式(III)から選ばれる2種以上のラクトン又はスルトン繰り返し単位を併用することも可能である。併用する場合には一般式(III)の内、nが1であるラクトン又はスルトン繰り返し単位から2種以上を選択し併用することが好ましい。
【0056】
樹脂(A)は、一般式(AI)及び(III)以外の水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位は、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが好ましく、酸分解性基を有さないことが好ましい。水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造に於ける、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。好ましい水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造としては、下記一般式で表される構造が好ましい。
【0058】
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、5〜40mol%が好ましく、より好ましくは5〜30mol%、更に好ましくは10〜25mol%である。
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の具体例としては、米国公開特許2012/0135348号公報の段落0340に開示された繰り返し単位を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0059】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に用いられる樹脂(A)は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有してもよい。アルカリ可溶性基としてはカルボキシル基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビススルホニルイミド基、α位が電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えばヘキサフルオロイソプロパノール基)が挙げられ、カルボキシル基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を含有することによりコンタクトホール用途での解像性が増す。アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、更にはアルカリ可溶性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入、のいずれも好ましく、連結基は単環又は多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位である。
【0060】
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、0〜20mol%が好ましく、より好ましくは3〜15mol%、更に好ましくは5〜10mol%である。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の具体例としては、米国公開特許2012/0135348号公報の段落0344に開示された繰り返し単位を挙げることができるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0061】
本発明の樹脂(A)は、更に極性基(例えば、上記アルカリ可溶性基、水酸基、シアノ基等)を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を有することができる。このような繰り返し単位としては、一般式(IV)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0063】
上記一般式(IV)中、R
5は少なくとも一つの環状構造を有し、極性基を有さない炭化水素基を表す。
Raは水素原子、アルキル基又は−CH
2−O−Ra
2基を表す。式中、Ra
2は、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Raは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
R
5が有する環状構造には、単環式炭化水素基及び多環式炭化水素基が含まれる。単環式炭化水素基としては、たとえば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基などの炭素数3〜12のシクロアルキル基、シクロへキセニル基など炭素数3〜12のシクロアルケニル基が挙げられる。好ましい単環式炭化水素基としては、炭素数3〜7の単環式炭化水素基であり、より好ましくは、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0064】
多環式炭化水素基には環集合炭化水素基、架橋環式炭化水素基が含まれ、環集合炭化水素基の例としては、ビシクロヘキシル基、パーヒドロナフタレニル基などが含まれる。架橋環式炭化水素環として、例えば、ピナン、ボルナン、ノルピナン、ノルボルナン、ビシクロオクタン環(ビシクロ[2.2.2]オクタン環、ビシクロ[3.2.1]オクタン環等)などの2環式炭化水素環及び、ホモブレダン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン、トリシクロ[4.3.1.1
2,5]ウンデカン環などの3環式炭化水素環、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカン、パーヒドロ−1,4−メタノ−5,8−メタノナフタレン環などの4環式炭化水素環などが挙げられる。また、架橋環式炭化水素環には、縮合環式炭化水素環、例えば、パーヒドロナフタレン(デカリン)、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロアセナフテン、パーヒドロフルオレン、パーヒドロインデン、パーヒドロフェナレン環などの5〜8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環も含まれる。
【0065】
好ましい架橋環式炭化水素環として、ノルボルニル基、アダマンチル基、ビシクロオクタニル基、トリシクロ[5、2、1、0
2,6]デカニル基、などが挙げられる。より好ましい架橋環式炭化水素環としてノルボルニル基、アダマンチル基が挙げられる。
これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していても良く、好ましい置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、水素原子が置換されたヒドロキシル基、水素原子が置換されたアミノ基などが挙げられる。好ましいハロゲン原子としては臭素、塩素、フッ素原子、好ましいアルキル基としてはメチル、エチル、ブチル、t−ブチル基が挙げられる。上記のアルキル基は更に置換基を有していても良く、更に有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、水素原子が置換されたヒドロキシル基、水素原子が置換されたアミノ基を挙げることができる。
上記水素原子が置換された基としては、たとえばアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、置換メチル基、置換エチル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基が挙げられる。好ましいアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基、好ましい置換メチル基としてはメトキシメチル、メトキシチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル基、好ましい置換エチル基としては、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、好ましいアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6の脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基としては炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。
【0066】
樹脂(A)は、極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を含有していても含有していなくてもよいが、含有する場合、この繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、1〜40モル%が好ましく、より好ましくは2〜20モル%である。
極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位の具体例としては、米国公開特許2012/0135348号公報の段落0354に開示された繰り返し単位を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0067】
本発明の組成物に用いられる樹脂(A)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更にレジストの一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有することができる。
このような繰り返し構造単位としては、下記の単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
これにより、本発明の組成物に用いられる樹脂に要求される性能、特に、(1)塗布溶剤に対する溶解性、(2)製膜性(ガラス転移点)、(3)アルカリ現像性、(4)膜べり(親疎水性、アルカリ可溶性基選択)、(5)未露光部の基板への密着性、(6)ドライエッチング耐性、等の微調整が可能となる。
このような単量体として、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
【0068】
本発明の組成物に用いられる樹脂(A)において、各繰り返し構造単位の含有モル比はレジストのドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更にはレジストの一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
本発明の組成物が、ArF露光用であるとき、ArF光への透明性の点から本発明の組成物に用いられる樹脂(A)は実質的には芳香族基を有さないことが好ましい。より具体的には、樹脂(A)の全繰り返し中、芳香族基を有する繰り返し単位が全体の5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、理想的には0モル%、すなわち芳香族基を有する繰り返し単位を有さないことが更に好ましい。また、樹脂(A)は単環又は多環の脂環炭化水素構造を有することが好ましい。
なお、樹脂(A)は、後述する樹脂(C)との相溶性の観点から、フッ素原子及び珪素原子を含有しないことが好ましい。
【0069】
本発明の組成物に用いられる樹脂(A)として好ましくは、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されたものである。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがアクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位とアクリレート系繰り返し単位とによるもののいずれのものでも用いることができるが、アクリレート系繰り返し単位が全繰り返し単位の50mol%以下であることが好ましい。また、酸分解性基を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位20〜50モル%、ラクトン基を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位20〜50モル%、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位5〜30モル%、更にその他の(メタ)アクリレート系繰り返し単位を0〜20モル%含む共重合ポリマーも好ましい。
【0070】
本発明の組成物にKrFエキシマレーザー光、電子線、X線、波長50nm以下の高エネルギー光線(EUVなど)を照射する場合には、樹脂(A)は、更に、ヒドロキシスチレン系繰り返し単位を有することが好ましい。更に好ましくはヒドロキシスチレン系繰り返し単位と、酸分解性基で保護されたヒドロキシスチレン系繰り返し単位、(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル等の酸分解性繰り返し単位を有するが好ましい。
ヒドロキシスチレン系の好ましい酸分解性基を有する繰り返し単位としては、例えば、t−ブトキシカルボニルオキシスチレン、1−アルコキシエトキシスチレン、(メタ)アクリル酸3級アルキルエステルによる繰り返し単位等を挙げることができ、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート及びジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレートによる繰り返し単位がより好ましい。
【0071】
また、本発明の組成物が、KrF露光用、EB露光用又はEUV露光用であるとき、樹脂(A)は芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0072】
〔芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位(a)〕
芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位(a)としては、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(a1)を好適に挙げることができる。
【0073】
〔フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(a1)〕
本明細書において、フェノール性水酸基とは、芳香族炭化水素基の水素原子をヒドロキシ基で置換してなる基である。該芳香族炭化水素基の芳香環は単環又は多環の芳香環であり、ベンゼン環やナフタレン環等が挙げられる。
【0074】
フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(a1)としては、例えば、下記一般式(I)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0076】
式中、
R
41、R
42及びR
43は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R
42はAr
4と結合して環を形成していてもよく、その場合のR
42は単結合又はアルキレン基を表す。
X
4は、単結合、−COO−、又は−CONR
64−を表し、R
64は、水素原子又はアルキル基を表す。
L
4は、それぞれ独立して単結合又は2価の連結基を表す。
Ar
4は、(n+1)価の芳香族炭化水素基を表し、R
42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香族炭化水素基を表す。
nは、1〜5の整数を表す。
一般式(I)の繰り返し単位を高極性化する目的では、nが2以上の整数、またはX
4が−COO−、又は−CONR
64−であることも好ましい。
【0077】
一般式(I)におけるR
41、R
42、R
43のアルキル基としては、好ましくは置換基を有していてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基など炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基、特に好ましくは炭素数3以下のアルキル基が挙げられる。
【0078】
一般式(I)におけるR
41、R
42、R
43のシクロアルキル基としては、単環型でも、多環型でもよい。好ましくは置換基を有していてもよいシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの炭素数3〜8個で単環型のシクロアルキル基が挙げられる。
一般式(I)におけるR
41、R
42、R
43のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が特に好ましい。
一般式(I)におけるR
41、R
42、R
43のアルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R
41、R
42、R
43におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
【0079】
上記各基における好ましい置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ウレタン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオエーテル基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等を挙げることができ、置換基の炭素数は8以下が好ましい。
【0080】
Ar
4は、(n+1)価の芳香族炭化水素基を表す。nが1である場合における2価の芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基などの炭素数6〜18のアリーレン基、あるいは、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等のヘテロ環を含む芳香族炭化水素基を好ましい例として挙げることができる。
【0081】
nが2以上の整数である場合における(n+1)価の芳香族炭化水素基の具体例としては、2価の芳香族炭化水素基の上記した具体例から、(n−1)個の任意の水素原子を除してなる基を好適に挙げることができる。
(n+1)価の芳香族炭化水素基は、更に置換基を有していてもよい。
【0082】
上述したアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基及び(n+1)価の芳香族炭化水素基が有し得る置換基としては、例えば、一般式(I)におけるR
41、R
42、R
43で挙げたアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェニル基などのアリール基;等が挙げられる。
X
4により表わされる−CONR
64−(R
64は、水素原子、アルキル基を表す)におけるR
64のアルキル基としては、好ましくは置換基を有していてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基など炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基が挙げられる。
X
4としては、単結合、−COO−、−CONH−が好ましく、単結合、−COO−がより好ましい。
【0083】
L
4としての2価の連結基としては、アルキレン基であることが好ましく、アルキレン基としては、好ましくは置換基を有していてもよいメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8個のものが挙げられる。
Ar
4としては、置換基を有していてもよい炭素数6〜18の芳香族炭化水素基がより好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基、ビフェニレン環基が特に好ましい。
一般式(I)で表される繰り返し単位は、ヒドロキシスチレン構造を備えていることが好ましい。即ち、Ar
4は、ベンゼン環基であることが好ましい。
【0084】
以下、樹脂(A)が有するフェノール性水酸基を有する繰り返し単位(a1)の具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。式中、aは1又は2を表す。
【0086】
樹脂(A)は、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(a1)を1種だけ有していても、2種以上有していてもよい。
【0087】
フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(a1)の含有量は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、10〜95モル%であることが好ましく、20〜90モル%であることがより好ましく、30〜85モル%であることが更に好ましい。
【0088】
芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位(a)としては、フェノール性水酸基が酸の作用により分解し脱離する脱離基で保護された構造(酸分解性基)を有する繰り返し単位(a2)を好適に挙げることができる。
【0089】
〔フェノール性水酸基が酸の作用により分解し脱離する脱離基で保護された構造(酸分解性基)を有する繰り返し単位(a2)〕
【0090】
酸の作用により分解し脱離する脱離基としては、例えば、式(Y1)〜(Y4)で表される基を挙げることができる。
式(Y1):−C(Rx
1)(Rx
2)(Rx
3)
式(Y2):−C(=O)OC(Rx
1)(Rx
2)(Rx
3)
式(Y3):−C(R
36)(R
37)(OR
38)
式(Y4):−C(Rn)(H)(Ar)
【0091】
式(Y1)、(Y2)中、Rx
1〜Rx
3は、各々独立に、アルキル基(直鎖若しくは分岐)又はシクロアルキル基(単環若しくは多環)を表す。ただし、Rx
1〜Rx
3の全てがアルキル基(直鎖若しくは分岐)である場合、Rx
1〜Rx
3のうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
より好ましくは、Rx
1〜Rx
3が各々独立に、直鎖又は分岐のアルキル基を表す繰り返し単位であり、さらに好ましくは、Rx
1〜Rx
3が各々独立に、直鎖のアルキル基を表す繰り返し単位である。
Rx
1〜Rx
3の2つが結合して、単環若しくは多環を形成してもよい。
Rx
1〜Rx
3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが好ましい。
Rx
1〜Rx
3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx
1〜Rx
3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。炭素数5〜6の単環のシクロアルキル基が特に好ましい。
Rx
1〜Rx
3の2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
一般式(Y1)、(Y2)で表される繰り返し単位は、例えば、Rx
1がメチル基又はエチル基であり、Rx
2とRx
3とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
式(Y3)中、R
36〜R
38は、各々独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。R
37とR
38とは、互いに結合して環を形成してもよい。1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基等が挙げられる。R
36は水素原子であることも好ましい。
【0092】
式(Y4)中、Arは、芳香族炭化水素基を表す。Rnは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。RnとArとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。Arはより好ましくはアリール基である。
【0093】
繰り返し単位(a2)としては、フェノール性水酸基における水素原子が式(Y1)〜(Y4)で表される基によって保護された構造を有するものが好ましい。
【0094】
繰り返し単位(a2)としては、下記一般式(AII)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0096】
一般式(AII)中、
R
61、R
62及びR
63は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R
62はAr
6と結合して環を形成していてもよく、その場合のR
62は単結合又はアルキレン基を表す。
X
6は、単結合、−COO−、又は−CONR
64−を表す。R
64は、水素原子又はアルキル基を表す。
L
6は、単結合又はアルキレン基を表す。
Ar
6は、(n+1)価の芳香族炭化水素基を表し、R
62と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香族炭化水素基を表す。
Y
2は、n≧2の場合には各々独立に、水素原子又は酸の作用により脱離する基を表す。但し、Y
2の少なくとも1つは、酸の作用により脱離する基を表す。Y
2としての酸の作用により脱離する基は、式(Y1)〜(Y4)のいずれかで表される基であることが好ましい。
nは、1〜4の整数を表す。
【0097】
上記各基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1〜4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)などが挙げられ、炭素数8以下が好ましい。
【0100】
樹脂(A)における繰り返し単位(a2)は、1種類であってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0101】
樹脂(A)における繰り返し単位(a2)の含有量(複数種類含有する場合はその合計)は、上記樹脂(A)中の全繰り返し単位に対して5モル%以上80モル%以下であることが好ましく、5モル%以上75モル%以下であることがより好ましく、10モル%以上65モル%以下であることが更に好ましい。
【0102】
なお、本明細書において、酸分解性基と芳香族炭化水素基とを有する繰り返し単位は、酸分解性基を有する繰り返し単位にも、芳香族炭化水素基を有する繰り返し単位にも、該当するものとする。
【0103】
本発明における樹脂(A)は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。具体的には、US2012/0164573 A1 <0126>〜[0128」に開示されている合成法を利用できる。
【0104】
本発明の樹脂(A)の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜200,000であり、より好ましくは2,000〜20,000、更により好ましくは3,000〜15,000、特に好ましくは3,000〜11,000である。重量平均分子量を、1,000〜200,000とすることにより、耐熱性やドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。
【0105】
分散度(分子量分布)は、通常1.0〜3.0であり、好ましくは1.0〜2.6、更に好ましくは1.0〜2.0、特に好ましくは1.4〜2.0の範囲のものが使用される。分子量分布が小さいほど、解像度、レジスト形状が優れ、且つレジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0106】
本発明において樹脂(A)の含有量は、組成物の全固形分中30〜99質量%が好ましく、より好ましくは55〜95質量%である。
また、本発明の樹脂は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0107】
<光酸発生剤>
本発明の組成物は、典型的には、光酸発生剤を含有する。
光酸発生剤は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物に相当する。
光酸発生剤としては、特に限定されないが、活性光線又は放射線の照射により有機酸を発生する化合物であることが好ましい。
【0108】
酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができ、例えば、特開2010−61043号公報の段落<0039>〜<0103>に記載されている化合物、特開2013−4820号公報の段落<0284>〜<0389>に記載されている化合物などが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。
たとえば、ジアゾニウム塩化合物、ホスホニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
【0109】
本発明の組成物が含有する酸発生剤としては、例えば、下記一般式(3)で表される活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を好適に挙げることができる。
【0111】
(アニオン)
一般式(3)中、
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
R
4及びR
5は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、複数存在する場合のR
4、R
5は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Lは、2価の連結基を表し、複数存在する場合のLは同一でも異なっていてもよい。
Wは、環状構造を含む有機基を表す。
oは、1〜3の整数を表す。pは、0〜10の整数を表す。qは、0〜10の整数を表す。
【0112】
Xfは、フッ素原子、又は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。このアルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
Xfは、好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。Xfは、フッ素原子又はCF
3であることがより好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが好ましい。
【0113】
R
4及びR
5は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、複数存在する場合のR
4、R
5は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
R
4及びR
5としてのアルキル基は、置換基を有していてもよく、炭素数1〜4のものが好ましい。R
4及びR
5は、好ましくは水素原子である。
少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基の具体例および好適な態様は一般式(3)中のXfの具体例および好適な態様と同じである。
【0114】
Lは、2価の連結基を表し、複数存在する場合のLは同一でも異なっていてもよい。
2価の連結基としては、例えば、−COO−(−C(=O)−O−)、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3〜10)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2〜6)又はこれらの複数を組み合わせた2価の連結基などが挙げられる。これらの中でも、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CO−、−O−、−SO
2−、−COO−アルキレン基−、−OCO−アルキレン基−、−CONH−アルキレン基−又は−NHCO−アルキレン基−が好ましく、−COO−、−OCO−、−CONH−、−SO
2−、−COO−アルキレン基−又は−OCO−アルキレン基−がより好ましい。
【0115】
Wは、環状構造を含む有機基を表す。なかでも環状の有機基であることが好ましい。
環状の有機基としては、例えば、脂環基、アリール基、及び複素環基が挙げられる。
脂環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの炭素数7以上のかさ高い構造を有する脂環基が、PEB(露光後加熱)工程での膜中拡散性の抑制及びMEEF(Mask Error Enhancement Factor)の向上の観点から好ましい。
【0116】
アリール基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基及びアントリル基が挙げられる。中でも、193nmにおける光吸光度が比較的低いナフチル基が好ましい。
複素環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよいが、多環式の方がより酸の拡散を抑制可能である。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、及びピリジン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、スルトン環及びデカヒドロイソキノリン環が挙げられる。複素環基における複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、又はデカヒドロイソキノリン環が特に好ましい。また、ラクトン環及びスルトン環の例としては、前述の樹脂において例示したラクトン構造及びスルトン構造が挙げられる。
【0117】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐のいずれであってもよく、炭素数1〜12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、スピロ環のいずれであってもよく、炭素数3〜20が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、水酸基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及びスルホン酸エステル基が挙げられる。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であってもよい。
【0118】
oは、1〜3の整数を表す。pは、0〜10の整数を表す。qは、0〜10の整数を表す。
一態様において、一般式(3)中のoが1〜3の整数であり、pが1〜10の整数であり、qが0であることが好ましい。Xfは、フッ素原子であることが好ましく、R
4及びR
5は共に水素原子であることが好ましく、Wは多環式の炭化水素基であることが好ましい。oは1又は2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。pが1〜3の整数であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましく、1が特に好ましい。Wは多環のシクロアルキル基であることがより好ましく、アダマンチル基又はジアマンチル基であることが更に好ましい。
【0119】
(カチオン)
一般式(3)中、X
+は、カチオンを表す。
X
+は、カチオンであれば特に制限されないが、好適な態様としては、例えば、後述する一般式(ZI)、(ZII)又は(ZIII)中のカチオン(Z
-以外の部分)が挙げられる。
【0120】
また、酸発生剤の好適な態様としては、例えば、下記一般式(ZI)、(ZII)又は(ZIII)で表される化合物が挙げられる。
【0122】
上記一般式(ZI)において、
R
201、R
202及びR
203は、各々独立に、有機基を表す。
R
201、R
202及びR
203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R
201〜R
203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R
201〜R
203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
Z
-は、アニオンを表し、好ましくは、一般式(3)中のアニオン、すなわち、好ましくは、下記のアニオンを表す。
【0124】
Xf、R
4、R
5、L、W、o、p及びqは、それぞれ、上記一般式(3)におけるXf、R
4、R
5、L、W、o、p及びqと同義である。
複数のXf、複数存在する場合のR
4、複数存在する場合のR
5、複数存在する場合のLは、それぞれ、互いに同一でも異なっていてもよい。
一般式(3)中のアニオンにおいて、W以外の部分構造の組み合わせとして、SO
3−−CF
2−CH
2−OCO−、SO
3−−CF
2−CHF−CH
2−OCO−、SO
3−−CF
2−COO−、SO
3−−CF
2−CF
2−CH
2−、SO
3−−CF
2−CH(CF
3)−OCO−が好ましいものとして挙げられる。
【0125】
R
201、R
202及びR
203により表される有機基としては、例えば、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、(ZI−3)及び(ZI−4)における対応する基を挙げることができる。
なお、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR
201〜R
203の少なくとも1つが、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR
201〜R
203の少なくとも一つと、単結合又は連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0126】
更に好ましい(ZI)成分として、以下に説明する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、(ZI−3)及び(ZI−4)を挙げることができる。
【0127】
先ず、化合物(ZI−1)について説明する。
化合物(ZI−1)は、上記一般式(ZI)のR
201〜R
203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R
201〜R
203の全てがアリール基でもよいし、R
201〜R
203の一部がアリール基で、残りがアルキル基又はシクロアルキル基でもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物を挙げることができる。
【0128】
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。アリール基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、ベンゾチオフェン残基等が挙げられる。アリールスルホニウム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1〜15の直鎖又は分岐アルキル基及び炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0129】
R
201〜R
203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。
【0130】
次に、化合物(ZI−2)について説明する。
化合物(ZI−2)は、式(ZI)におけるR
201〜R
203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
R
201〜R
203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
R
201〜R
203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、更に好ましくは直鎖又は分岐の2−オキソアルキル基、2−オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖又は分岐2−オキソアルキル基である。
【0131】
R
201〜R
203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基)を挙げることができる。
R
201〜R
203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0132】
次に、化合物(ZI−3)について説明する。
化合物(ZI−3)とは、以下の一般式(ZI−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0134】
一般式(ZI−3)中、
R
1c〜R
5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表す。
R
6c及びR
7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。
R
x及びR
yは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2−オキソアルキル基、2−オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基又はビニル基を表す。
【0135】
R
1c〜R
5c中のいずれか2つ以上、R
5cとR
6c、R
6cとR
7c、R
5cとR
x、及びR
xとR
yは、各々結合して環構造を形成してもよく、この環構造は、酸素原子、硫黄原子、ケトン基、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。
上記環構造としては、芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、芳香族若しくは非芳香族の複素環、又は、これらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環を挙げることができる。環構造としては、3〜10員環を挙げることができ、4〜8員環であることが好ましく、5又は6員環であることがより好ましい。
【0136】
R
1c〜R
5c中のいずれか2つ以上、R
6cとR
7c、及びR
xとR
yが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。
R
5cとR
6c、及び、R
5cとR
xが結合して形成する基としては、単結合又はアルキレン基であることが好ましく、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基等を挙げることができる。
Zc
−は、アニオンを表し、好ましくは一般式(3)中のアニオンを表し、具体的には、上述のとおりである。
【0137】
R
1c〜R
5cとしてのアルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基の具体例は、上記R
1c〜R
5cとしてのアルコキシ基の具体例と同様である。
R
1c〜R
5cとしてのアルキルカルボニルオキシ基及びアルキルチオ基におけるアルキル基の具体例は、上記R
1c〜R
5cとしてのアルキル基の具体例と同様である。
R
1c〜R
5cとしてのシクロアルキルカルボニルオキシ基におけるシクロアルキル基の具体例は、上記R
1c〜R
5cとしてのシクロアルキル基の具体例と同様である。
R
1c〜R
5cとしてのアリールオキシ基及びアリールチオ基におけるアリール基の具体例は、上記R
1c〜R
5cとしてのアリール基の具体例と同様である。
【0138】
本発明における化合物(ZI−2)又は(ZI−3)におけるカチオンとしては、米国特許出願公開第2012/0076996号明細書の段落<0036>以降に記載のカチオンを挙げることができる。
【0139】
次に、化合物(ZI−4)について説明する。
化合物(ZI−4)は、下記一般式(ZI−4)で表される。
【0141】
一般式(ZI−4)中、
R
13は水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
R
14は、複数存在する場合は各々独立して、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
R
15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はナフチル基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。2個のR
15が互いに結合して環を形成してもよい。2個のR
15が互いに結合して環を形成するとき、環骨格内に、酸素原子、窒素原子などのヘテロ原子を含んでもよい。一態様において、2個のR
15がアルキレン基であり、互いに結合して環構造を形成することが好ましい。
lは0〜2の整数を表す。
rは0〜8の整数を表す。
Z
−は、アニオンを表し、好ましくは一般式(3)中のアニオンを表し、具体的には、上述のとおりである。
【0142】
一般式(ZI−4)において、R
13、R
14及びR
15のアルキル基としては、直鎖状若しくは分岐状であり、炭素原子数1〜10のものが好ましく、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基等が好ましい。
本発明における一般式(ZI−4)で表される化合物のカチオンとしては、特開2010−256842号公報の段落<0121>、<0123>、<0124>、及び、特開2011−76056号公報の段落<0127>、<0129>、<0130>等に記載のカチオンを挙げることができる。
【0143】
次に、一般式(ZII)、(ZIII)について説明する。
一般式(ZII)、(ZIII)中、R
204〜R
207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
R
204〜R
207のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。R
204〜R
207のアリール基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造を有するアリール基の骨格としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン等を挙げることができる。
R
204〜R
207におけるアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基)を挙げることができる。
【0144】
R
204〜R
207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。R
204〜R
207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
Z
−は、アニオンを表し、好ましくは一般式(3)中のアニオンを表し、具体的には、上述のとおりである。
【0145】
酸発生剤は、低分子化合物の形態であってもよく、重合体の一部に組み込まれた形態であってもよい。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用してもよい。
本発明において、光酸発生剤は、低分子化合物の形態であることが好ましい。
酸発生剤が、低分子化合物の形態である場合、分子量は3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1000以下が更に好ましい。
酸発生剤が、重合体の一部に組み込まれた形態である場合、前述した樹脂(A)の一部に組み込まれてもよく、樹脂(A)とは異なる樹脂に組み込まれてもよい。
酸発生剤は、公知の方法で合成することができ、例えば、特開2007−161707号公報に記載の方法に準じて合成することができる。
酸発生剤は、1種類単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
酸発生剤の組成物中の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として、0.1〜30質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜25質量%、更に好ましくは3〜20質量%、特に好ましくは3〜15質量%である。
酸発生剤として、上記一般式(ZI−3)又は(ZI−4)により表される化合物を含む場合、組成物中に含まれる酸発生剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として、5〜35質量%が好ましく、7〜30質量%がより好ましい。
【0146】
<樹脂(C)>
上記したように、本発明の組成物は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂(C)を含有する。
【0148】
上記一般式(1)中、Zは、ハロゲン原子、R
11OCH
2−で表される基、又は、R
12OC(=O)CH
2−で表される基を表す。R
11及びR
12は、それぞれ独立して、1価の置換基を表す。Xは、酸素原子、又は、硫黄原子を表す。Lは、(n+1)価の連結基を表す。Rは、アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する基を有する基を表す。nは正の整数を表す。nが2以上である場合、複数のRは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0149】
Zのハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子であることが好ましい。
R
11及びR
12としての1価の置換基は、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数6〜10)、及び、アリール基(好ましくは炭素数6〜10)等を挙げることができる。また、R
11及びR
12としての1価の置換基は、更に置換基を有していてもよく、このような更なる置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4)、及び、カルボキシ基などを挙げることができる。
Lとしての連結基は、2価又は3価の連結基であることが好ましく(換言すれば、nが1又は2であることが好ましく)、2価の連結基であることがより好ましい(換言すれば、nが1であることが好ましい)。Lとしての連結基は、脂肪族基、芳香族基及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる連結基であることが好ましい。
例えば、nが1であり、Lとしての連結基が2価の連結基である場合、2価の脂肪族基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、又はポリアルキレンオキシ基などを挙げることができる。なかでもアルキレン基、及びアルケニレン基が好ましく、アルキレン基が更に好ましい。2価の脂肪族基は、環状構造よりも鎖状構造の方が好ましく、さらに分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造の方が好ましい。2価の脂肪族基は、置換基を有していてもよく、置換基の例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、Iなど)、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基及びジアリールアミノ基等が挙げられる。2価の芳香族基としては、アリール基などを挙げることができる。中でも、フェニレン基、及び、ナフチレン基が好ましい。2価の芳香族基は、置換基を有していてもよく、上記2価の脂肪族基における置換基の例に加えて、アルキル基が挙げられる。
nが2以上である場合、(n+1)価の連結基の具体例としては、上記した2価の連結基の具体例から、任意の(n−1)個の水素原子を除してなる基を挙げることができる。
【0150】
Lの具体例として、例えば、以下の連結基が挙げられるが、この限りでは無い。
【0152】
なお、これらの連結基は、上記したように、置換基を更に有していてもよい。
【0153】
Rは、下記一般式(A)で表される基であることが好ましい。
【0155】
上記一般式(A)中、Yは、アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する基を表す。EWGは、電子求引性基を表す。
【0156】
Yとしては、カルボン酸エステル基:−COO−又はOCO−、酸無水物基:−C(O)OC(O)−、酸イミド基:−NHCONH−、カルボン酸チオエステル基:−COS−、炭酸エステル基:−OC(O)O−、硫酸エステル基:−OSO
2O−、スルホン酸エステル基:−SO
2O−を挙げることができ、カルボン酸エステル基であることが好ましい。
【0157】
本発明において、電子求引性基は、下記式(EW)で示す部分構造である。式(EW)における*は一般式(A)中の基Yに直結している結合手を表す。
【0159】
式(EW)中、
n
ewは−C(R
ew1)(R
ew2)−で表される連結基の繰り返し数であり、0又は1の整数を表す。n
ewが0の場合は単結合を表し、直接Y
ew1が結合していることを示す。
Y
ew1は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、後述の−C(R
f1)(R
f2)−R
f3で表されるハロ(シクロ)アルキル基、ハロアリール基、オキシ基、カルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。(但し、Y
ew1がハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基である場合、n
ewは1である。)
R
ew1、R
ew2は、各々独立して任意の置換基を表し、例えば水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜10)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜10)を表す。
R
ew1、R
ew2及びY
ew1の少なくとも2つが互いに連結して環を形成していてもよい。
なお、「ハロ(シクロ)アルキル基」とは、少なくとも一部がハロゲン化したアルキル基及びシクロアルキル基を表し、「ハロアリール基」とは、少なくとも一部がハロゲン化したアリール基を表す。
【0160】
Y
ew1は、好ましくはハロゲン原子、−C(R
f1)(R
f2)−R
f3で表されるハロ(シクロ)アルキル基、又はハロアリール基である。
【0161】
ここでR
f1はハロゲン原子、パーハロアルキル基、パーハロシクロアルキル基、又はパーハロアリール基を表し、より好ましくはフッ素原子、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基、更に好ましくはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を表す。
R
f2、R
f3は各々独立して水素原子、ハロゲン原子又は有機基を表し、R
f2とR
f3とが連結して環を形成してもよい。有機基としては例えばアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基等を表し、これらはハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)で置換されていても良く、より好ましくはR
f2、R
f3は(ハロ)アルキル基又は(ハロ)シクロアルキル基である。R
f2はR
f1と同様の基を表すか、又はR
f3と連結して環を形成していることがより好ましい。
R
f2とR
f3とが連結して形成する環としては、(ハロ)シクロアルキル環等が挙げられる。
【0162】
R
f1〜R
f3における(ハロ)アルキル基としては、直鎖、分岐のいずれでもよく、直鎖(ハロ)アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜30、更に好ましくは1〜20であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基等、及び、これらがハロゲン化した基が挙げられる。分岐(ハロ)アルキル基としては、好ましくは炭素数3〜30、更に好ましくは3〜20であり、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、i−ペンチル基、t−ペンチル基、i−ヘキシル基、t−ヘキシル基、i−ヘプチル基、t−ヘプチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、i−ノニル基、t−デカノイル基等、及び、これらがハロゲン化した基が挙げられる。メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のもの、及び、これらがハロゲン化した基が好ましい。
【0163】
R
f1〜R
f3における、又は、R
f2とR
f3とが連結して形成する環における(ハロ)シクロアルキル基としては、単環型でもよく、多環型でもよい。多環型の場合、(ハロ)シクロアルキル基は有橋式であってもよい。即ち、この場合、(ハロ)シクロアルキル基は橋かけ構造を有していてもよい。
単環型としては、炭素数3〜8の(ハロ)シクロアルキル基が好ましく、例えば、(ハロ)シクロプロピル基、(ハロ)シクロペンチル基、(ハロ)シクロヘキシル基、(ハロ)シクロブチル基、(ハロ)シクロオクチル基等を挙げることができる。
多環型としては、炭素数5以上のビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができ、炭素数6〜20の(ハロ)シクロアルキル基が好ましく、例えば、(ハロ)アダマンチル基、(ハロ)ノルボルニル基、(ハロ)イソボルニル基、(ハロ)カンファニル基、(ハロ)ジシクロペンチル基、(ハロ)α−ピネル基、(ハロ)トリシクロデカニル基、(ハロ)テトシクロドデシル基、(ハロ)アンドロスタニル基を挙げることができる。
これら(ハロ)シクロアルキル基としては、例えば、下式により表されるもの、及び、これらがハロゲン化した基が挙げられる。なお、シクロアルキル基中の炭素原子の一部が、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0165】
上記脂環部分の好ましいものとしては、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基を挙げることができる。より好ましくは、アダマンチル基、デカリン基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基、トリシクロデカニル基である。
これらの脂環部分の置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が挙げられる。アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等の低級アルキル基が好ましく、更に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基を表す。アルコキシ基としては、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4個のものを挙げることができる。アルキル基及びアルコキシ基が有してもよい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4)等を挙げることができる。
【0166】
R
f2及びR
f3における、又は、R
f2とR
f3とが連結して形成する環における(ハロ)シクロアルキル基は、より好ましくは−C
(n)F
(2n−2)Hで表されるフルオロシクロアルキル基が挙げられる。ここで炭素数nは特に限定されないが、5〜13のものが好ましく、6がより好ましい。
【0167】
Y
ew1における、又は、R
f1における(パー)ハロアリール基としては、−C
(n)F
(n−1)で表されるパーフルオロアリール基が挙げられる。ここで炭素数nは特に限定されないが、5〜13のものが好ましく、6がより好ましい。
【0168】
R
ew1、R
ew2及びY
ew1の少なくとも2つが互いに連結して形成してもよい環としては、好ましくはシクロアルキル基又はヘテロ環基が挙げられる。
【0169】
以上に説明した上記式(EW)で示す部分構造を構成する各基及び各環は、更に置換基を有していてもよく、更なる置換基としては、水酸基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基及びt−ブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ベンジル基、フェネチル基、クミル基等のアラルキル基、アラルキルオキシ基、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、ベンゾイル基、シアナミル基、バレリル基等のアシル基、ブチリルオキシ基等のアシロキシ基、ビニル基、プロペニル基、アリル等のアルケニル基、ビニルオキシ基、プロペニルオキシ基、アリルオキシ基、ブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、フエノキシ基等のアリールオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアリールオキシカルボニル基等を挙げることができる。ただし、イオン性基は上記更なる置換基に含まれない。
【0170】
上記一般式(1)中、EWGは、ハロゲン原子、シアノ基及びニトロ基からなる群から選択される1個以上で置換されたアルキル基であることが好ましく、ハロゲン原子で置換されたアルキル基(ハロアルキル基)であることがより好ましく、フルオロアルキル基であることがさらに好ましい。ハロゲン原子、シアノ基及びニトロ基からなる群から選択される1個以上で置換されたアルキル基は炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
より具体的には、EWGは、−C(R’
1)(R’
f1)(R’
f2)または−C(R’
1)(R’
2)(R’
f1)で表される原子団であることが好ましい。ここで、R’
1、R’
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、電子求引性基で置換されていない(好ましくは無置換の)アルキル基を表す。R’
f1、R’
f2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は、パーフルオロアルキル基を表す。
R’
1及びR’
2としてのアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、好ましくは炭素数1〜6である。
R’
f1及びR’
f2してのパーフルオロアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよく、好ましくは炭素数1〜6である。
EWGの好ましい具体例としては、−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7、−C
4F
9、−CF(CF
3)
2、−CF(CF
3)C
2F
5、−CF
2CF(CF
3)
2、−C(CF
3)
3、−C
5F
11、−C
6F
13、−C
7F
15、−C
8F
17、−CH
2CF
3、−CH
2C
2F
5、−CH
2C
3F
7、−CH(CF
3)
2、−CH(CF
3)C
2F
5、−CH
2CF(CF
3)
2、−CH
2CN等を挙げることができ、中でも−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7、−C
4F
9、−CH
2CF
3、−CH
2C
2F
5、−CH
2C
3F
7、−CH(CF
3)
2、−CH
2CNが好ましく、−CH
2CF
3、−CH
2C
2F
5、−CH
2C
3F
7、−CH(CF
3)
2、−CH
2CNがより好ましく、−CH
2C
2F
5、−CH(CF
3)
2、−CH
2CNがさらに好ましく、−CH
2C
2F
5、−CH(CF
3)
2が特に好ましい。
【0171】
一般式(1)で表される繰り返し単位は、下記一般式(2)又は(3)で表される繰り返し単位であることが好ましく、露光装置に対する液浸液の高い追従性や現像欠陥抑制の観点から、一般式(2)で表される構造であることがより好ましい。
【0173】
上記一般式(2)中、R
2は、電子求引性基を表す。L
2は、2価の連結基を表す。X
2は、酸素原子又は硫黄原子を表す。Z
2はハロゲン原子を表す。
上記一般式(3)中、R
3は、電子求引性基を表す。L
3は、2価の連結基を表す。X
3は、酸素原子又は硫黄原子を表す。Z
3はハロゲン原子を表す。
【0174】
L
2及びL
3としての2価の連結基の具体例及び好ましい例は、上記一般式(1)の2価の連結基としてのLにおいて説明したものと同様である。
R
2及びR
3としての電子求引性基は、上記一般式(EW)で示す部分構造であり、具体例及び好ましい例も前述の通りであるが、ハロ(シクロ)アルキル基であることが特に好ましい。
【0175】
なお、上記一般式(2)においては、L
2とR
2とが互いに結合して環を形成することはなく、上記一般式(3)においては、L
3とR
3とが互いに結合して環を形成することはない。
【0176】
X
2及びX
3は、酸素原子であることが好ましい。
Z
2及びZ
3は、フッ素原子又は塩素原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。
【0177】
また、一般式(1)で表される繰り返し単位は、下記一般式(4)で表される繰り返し単位であることも好ましい。
【0179】
上記一般式(4)中、R
4は電子求引性基を表す。R
5は、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表す。L
4は、2価の連結基を表す。X
4は、酸素原子又は硫黄原子を表す。mは、0又は1を表す。
【0180】
L
4としての2価の連結基の具体例及び好ましい例は、上記一般式(1)の2価の連結基としてのLにおいて説明したものと同様である。
R
4としての電子求引性基は、上記一般式(EW)で示す部分構造であり、具体例及び好ましい例も前述の通りであるが、ハロ(シクロ)アルキル基であることが特に好ましい。
【0181】
なお、上記一般式(4)においては、L
4とR
4とが互いに結合して環を形成することはない。
【0182】
X
4は、酸素原子であることが好ましい。
【0183】
R
5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、オクチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、イソペンチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、及び、シクロペンチル基等が挙げられる。
R
5のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、及び、2−ナフチル基等が挙げられる。
R
5のアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基及びジアリールアミノ基等が挙げられる。
R
5は、アルカリ現像液の作用により分解する基ではないことが好ましい。
【0184】
また、一般式(1)で表される繰り返し単位は、下記一般式(5)で表される繰り返し単位であることも好ましい。
【0186】
上記一般式(5)中、Zは、ハロゲン原子、R
11OCH
2−で表される基、又は、R
12OC(=O)CH
2−で表される基を表す。R
11及びR
12は、それぞれ独立して、1価の置換基を表す。R
6は電子求引性基を表す。
【0187】
R
6としての電子求引性基は、上記一般式(EW)で示す部分構造であり、具体例及び好ましい例も前述の通りであるが、ハロ(シクロ)アルキル基であることが特に好ましい。
【0188】
Zとしての、ハロゲン原子、R
11OCH
2−で表される基、及び、R
12OC(=O)CH
2−で表される基の具体例及び好ましい例は、上記一般式(1)において説明したものと同様である。
【0189】
一般式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、樹脂(C)中の全繰り返し単位に対し、10〜100mol%が好ましく、20〜100mol%がより好ましく、30〜100mol%が更に好ましく、40〜100mol%が最も好ましい。
以下に、一般式(1)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。式中、Xはハロゲン原子を表し、Phはフェニル基を表す。
【0195】
樹脂(C)は、疎水性樹脂であることが好ましく、樹脂(C)は、上述した樹脂(好ましくは樹脂(A))とは異なることが好ましい。
樹脂(C)は、界面に偏在するように設計されることが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性/非極性物質を均一に混合することに寄与しなくてもよい。
【0196】
樹脂(C)は、膜表層への偏在化の観点から、“フッ素原子”、“珪素原子”、及び、“樹脂の側鎖部分に含有されたCH
3部分構造”のいずれか1種以上を有することが好ましく、2種以上を有することが更に好ましい。
樹脂(C)が、フッ素原子及び/又は珪素原子を含む場合、樹脂(C)に於ける上記フッ素原子及び/又は珪素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
【0197】
樹脂(C)がフッ素原子を含んでいる場合、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であることが好ましい。
フッ素原子を有するアルキル基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜4)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖又は分岐アルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するシクロアルキル基及びフッ素原子を有するアリール基は、それぞれ、1つの水素原子がフッ素原子で置換されたシクロアルキル基及びフッ素原子を有するアリール基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
【0198】
フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、及びフッ素原子を有するアリール基として、好ましくは、下記一般式(F2)〜(F4)で表される基を挙げることができるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0200】
一般式(F2)〜(F4)中、
R
57〜R
68は、各々独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基(直鎖若しくは分岐)を表す。但し、R
57〜R
61の少なくとも1つ、R
62〜R
64の少なくとも1つ、及びR
65〜R
68の少なくとも1つは、各々独立に、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を表す。
R
57〜R
61及びR
65〜R
67は、全てがフッ素原子であることが好ましい。R
62、R
63及びR
68は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)が好ましく、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であることがより好ましい。R
62とR
63は、互いに連結して環を形成してもよい。
【0201】
樹脂(C)は、珪素原子を含有してもよい。珪素原子を有する部分構造として、アルキルシリル構造(好ましくはトリアルキルシリル基)、又は環状シロキサン構造を有する樹脂であることが好ましい。
フッ素原子又は珪素原子を有する繰り返し単位の例としては、US2012/0251948A1〔0519〕に例示されたものを挙げることが出来る。
【0202】
また、上記したように、樹脂(C)は、側鎖部分にCH
3部分構造を含むことも好ましい。
ここで、樹脂(C)中の側鎖部分が有するCH
3部分構造(以下、単に「側鎖CH
3部分構造」ともいう)には、エチル基又はプロピル基等が有するCH
3部分構造を包含するものである。
一方、樹脂(C)の主鎖に直接結合しているメチル基(例えば、メタクリル酸構造を有する繰り返し単位のα−メチル基)は、主鎖の影響により樹脂(C)の表面偏在化への寄与が小さいため、本発明におけるCH
3部分構造に包含されないものとする。
【0203】
より具体的には、樹脂(C)が、例えば、下記一般式(M)で表される繰り返し単位等の、炭素−炭素二重結合を有する重合性部位を有するモノマーに由来する繰り返し単位を含む場合であって、R
11〜R
14がCH
3「そのもの」である場合、そのCH
3は、本発明における側鎖部分が有するCH
3部分構造には包含されない。
一方、C−C主鎖から何らかの原子を介して存在するCH
3部分構造は、本発明におけるCH
3部分構造に該当するものとする。例えば、R
11がエチル基(CH
2CH
3)である場合、本発明におけるCH
3部分構造を「1つ」有するものとする。
【0205】
上記一般式(M)中、
R
11〜R
14は、各々独立に、側鎖部分を表す。
側鎖部分のR
11〜R
14としては、水素原子、又は1価の有機基等が挙げられる。
R
11〜R
14についての1価の有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基、及び、アリールアミノカルボニル基等が挙げられ、これらの基は、更に置換基を有していてもよい。
【0206】
樹脂(C)は、側鎖部分にCH
3部分構造を有する繰り返し単位を有する樹脂であることが好ましく、このような繰り返し単位として、下記一般式(II)で表される繰り返し単位、及び、下記一般式(III)で表される繰り返し単位のうち少なくとも一種の繰り返し単位(x)を有していることがより好ましい。
【0207】
以下、一般式(II)で表される繰り返し単位について詳細に説明する。
【0209】
上記一般式(II)中、X
b1は水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、R
2は1つ以上のCH
3部分構造を有する、酸に対して安定な有機基を表す。ここで、酸に対して安定な有機基は、より具体的には、酸分解性基(酸の作用により分解してカルボキシ基等の極性基を生じる基)を有さない有機基であることが好ましい。
【0210】
X
b1のアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基、及び、トリフルオロメチル基等が挙げられるが、メチル基であることがより好ましい。
X
b1は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
R
2としては、1つ以上のCH
3部分構造を有する、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、及び、アラルキル基が挙げられる。上記のシクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、及び、アラルキル基は、更に、置換基としてアルキル基を有していてもよい。
R
2は、1つ以上のCH
3部分構造を有する、アルキル基又はアルキル置換シクロアルキル基が好ましい。
R
2としての1つ以上のCH
3部分構造を有する酸に安定な有機基は、CH
3部分構造を2個以上10個以下有することが好ましく、2個以上8個以下有することがより好ましい。
一般式(II)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を以下に挙げる。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0213】
一般式(II)で表される繰り返し単位は、酸に安定な(非酸分解性の)繰り返し単位であることが好ましく、具体的には、酸の作用により分解して極性基を生じる基を有さない繰り返し単位であることが好ましい。
【0214】
以下、一般式(III)で表される繰り返し単位について詳細に説明する。
【0216】
上記一般式(III)中、X
b2は水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表し、R
3は1つ以上のCH
3部分構造を有する、酸に対して安定な有機基を表し、nは1から5の整数を表す。
X
b2のアルキル基は、炭素数1〜4のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基等が挙げられるが、水素原子であることがより好ましい。
X
b2は、水素原子であることが好ましい。
R
3は、酸に対して安定な有機基であるため、より具体的には、酸分解性基を有さない有機基であることが好ましい。
【0217】
R
3としては、1つ以上のCH
3部分構造を有する、アルキル基が挙げられる。
R
3としての1つ以上のCH
3部分構造を有する酸に安定な有機基は、CH
3部分構造を1個以上10個以下有することが好ましく、1個以上8個以下有することがより好ましく、1個以上4個以下有することが更に好ましい。
nは1から5の整数を表し、1〜3の整数を表すことがより好ましく、1又は2を表すことが更に好ましい。
【0218】
一般式(III)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を以下に挙げる。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0220】
一般式(III)で表される繰り返し単位は、酸に安定な(非酸分解性の)繰り返し単位であることが好ましく、具体的には、酸の作用により分解して、極性基を生じる基を有さない繰り返し単位であることが好ましい。
【0221】
樹脂(C)が、側鎖部分にCH
3部分構造を含む場合であり、更に、特にフッ素原子及び珪素原子を有さない場合、一般式(II)で表される繰り返し単位、及び、一般式(III)で表される繰り返し単位のうち少なくとも一種の繰り返し単位(x)の含有量は、樹脂(C)の全繰り返し単位に対して、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましい。含有量は、樹脂(C)の全繰り返し単位に対して、通常、100モル%以下である。
【0222】
樹脂(C)が、一般式(II)で表される繰り返し単位、及び、一般式(III)で表される繰り返し単位のうち少なくとも一種の繰り返し単位(x)を、樹脂(C)の全繰り返し単位に対し、90モル%以上で含有することにより、樹脂(C)の表面自由エネルギーが増加する。その結果として、樹脂(C)が感活性光線性又は感放射線性膜の表面に偏在しにくくなり、水に対する感活性光線性又は感放射線性膜の静的/動的接触角を確実に向上させて、液浸液追随性を向上させることができる。
【0223】
樹脂(C)は、(i)フッ素原子及び/又は珪素原子を含む場合においても、(ii)側鎖部分にCH
3部分構造を含む場合においても、下記(x)、(z)の群から選ばれる基を少なくとも1つを有していてもよい。
(x)アルカリ可溶性基、
(z)酸の作用により分解する基
【0224】
(x)アルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
好ましいアルカリ可溶性基としては、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホンイミド基、ビス(カルボニル)メチレン基が挙げられる。
【0225】
アルカリ可溶性基(x)を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位などが挙げられ、さらにはアルカリ可溶性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入することもでき、いずれの場合も好ましい。
アルカリ可溶性基(x)を有する繰り返し単位の含有率は、樹脂(C)中の全繰り返し単位に対し、1〜50mol%が好ましく、より好ましくは3〜35mol%、更に好ましくは5〜30mol%である。
【0226】
アルカリ可溶性基(x)を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。具体例中、RxはH,CH
3,CH
2OH,又はCF
3を表す。
【0228】
樹脂(C)に於ける、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位は、前述の樹脂(A)で挙げた酸分解性基を有する繰り返し単位と同様のものが挙げられる。酸分解性基として、好ましくは、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級のアルキルエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基である。
酸分解性基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(CAI)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0230】
一般式(CAI)に於いて、
Xa
1は、水素原子、メチル基又は−CH
2−R
9で表される基を表す。R
9は、水酸基又は1価の有機基を表し、例えば、炭素数5以下のアルキル基、アシル基が挙げられ、好ましくは炭素数3以下のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。Xa
1は好ましくは水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Rx
1〜Rx
3は、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖若しくは分岐)又はシクロアルキル基(単環若しくは多環)を表す。
Rx
1〜Rx
3の内の2つが結合して、シクロアルキル基(単環若しくは多環)を形成してもよい。
【0231】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、−COO−Rt−基、−O−Rt−基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は−COO−Rt−基が好ましい。Rtは、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、−CH
2−基、−(CH
2)
3−基がより好ましい。
Rx
1〜Rx
3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが好ましい。
Rx
1〜Rx
3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx
1〜Rx
3の内の2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5〜6の単環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx
1がメチル基又はエチル基であり、Rx
2とRx
3とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している様態が好ましい。
上記各基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1〜4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)などが挙げられ、炭素数8以下が好ましい。
樹脂(C)に於ける、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位の含有率は、樹脂(C)中の全繰り返し単位に対し、1〜80mol%が好ましく、より好ましくは10〜80mol%、更に好ましくは20〜60mol%である。(z)酸の作用により分解する基を有することで、LWRを向上させることができる。
【0232】
樹脂(C)は、その他の繰り返し単位を有していてもよい。その他の繰り返し単位の好ましい態様としては以下が挙げられる。
(cy1)フッ素原子及び/又は珪素原子を有し、且つ酸に対して安定であり、且つアルカリ現像液に対して難溶もしくは不溶である繰り返し単位。
(cy2)フッ素原子、珪素原子を有さず、且つ酸に対して安定であり、且つアルカリ現像液に対して難溶もしくは不溶である繰り返し単位。
(cy3)フッ素原子及び/又は珪素原子を有し、且つ、前掲の(x)、(z)以外の極性基を有する繰り返し単位。
(cy4)フッ素原子、珪素原子を有さず、且つ、前掲の(x)、(z)以外の極性基を有する繰り返し単位。
【0233】
(cy1)、(cy2)の繰り返し単位における、アルカリ現像液に難溶もしくは不溶とは、(cy1)、(cy2)がアルカリ可溶性基や、酸やアルカリ現像液の作用によりアルカリ可溶性基を生じる基(例えば酸分解性基や極性変換基)を含まないことを示す。
繰り返し単位(cy1)、(cy2)は極性基を持たない脂環炭化水素構造を有することが好ましい。
【0234】
以下に繰り返し単位(cy1)〜(cy4)の好ましい態様を示す。
繰り返し単位(cy1)、(cy2)としては、下記一般式(CIII)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0236】
一般式(CIII)に於いて、
R
c31は、水素原子、フッ素原子で置換されていても良いアルキル基、シアノ基又は−CH
2−O−Rac
2基を表す。式中、Rac
2は、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。R
c31は、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
R
c32は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基又はアリール基を有する基を表す。これら基はフッ素原子、珪素原子を含む基等で置換されていても良い。
L
c3は、単結合又は2価の連結基を表す。
【0237】
一般式(CIII)に於ける、R
c32のアルキル基は、炭素数3〜20の直鎖若しくは分岐状アルキル基が好ましい。
シクロアルキル基は、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましい。
アルケニル基は、炭素数3〜20のアルケニル基が好ましい。
シクロアルケニル基は、炭素数3〜20のシクロアルケニル基が好ましい。
アリール基は、炭素数6〜20のフェニル基、ナフチル基が好ましく、これらは置換基を有していてもよい。
R
c32は無置換のアルキル基又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。L
c3の2価の連結基は、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜5)、オキシ基、フェニレン基、エステル結合(−COO−で表される基)が好ましい。
繰り返し単位(cy1)、(cy2)としては、下記一般式(C4)又は(C5)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0239】
一般式(C4),(C5)中、
R
c5は少なくとも一つの環状構造を有し、水酸基及びシアノ基のいずれも有さない炭化水素基を表す。
Racは水素原子、フッ素原子で置換されていても良いアルキル基、シアノ基又は−CH
2−O−Rac
2基を表す。式中、Rac
2は、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Racは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0240】
R
c5が有する環状構造には、単環式炭化水素基及び多環式炭化水素基が含まれる。単環式炭化水素基としては、たとえば、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基が挙げられる。好ましい単環式炭化水素基としては、炭素数3から7の単環式炭化水素基である。
【0241】
多環式炭化水素基には環集合炭化水素基、架橋環式炭化水素基が含まれる。架橋環式炭化水素環として、2環式炭化水素環、3環式炭化水素環、4環式炭化水素環などが挙げられる。また、架橋環式炭化水素環には、縮合環式炭化水素環(例えば、5〜8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環)も含まれる。好ましい架橋環式炭化水素環としてノルボルニル基、アダマンチル基が挙げられる。
【0242】
これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していても良く、好ましい置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されたヒドロキシル基、保護基で保護されたアミノ基などが挙げられる。好ましいハロゲン原子としては臭素、塩素、フッ素原子、好ましいアルキル基としてはメチル、エチル、ブチル、t−ブチル基が挙げられる。上記のアルキル基はさらに置換基を有していても良く、更に有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、保護基で保護されたヒドロキシル基、保護基で保護されたアミノ基を挙げることができる。
【0243】
保護基としては、たとえばアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、置換メチル基、置換エチル基、アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基が挙げられる。好ましいアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基、好ましい置換メチル基としてはメトキシメチル、メトキシチオメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル基、好ましい置換エチル基としては、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、好ましいアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6の脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基としては炭素数2〜4のアルコキシカルボニル基などが挙げられる。
【0244】
R
c6はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルコキシカルボニル基、又は、アルキルカルボニルオキシ基を表す。これら基はフッ素原子、珪素原子で置換されていても良い。
R
c6のアルキル基は、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐状アルキル基が好ましい。シクロアルキル基は、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましい。
アルケニル基は、炭素数3〜20のアルケニル基が好ましい。
シクロアルケニル基は、炭素数3〜20のシクロアルケニル基が好ましい。
アルコキシカルボニル基は、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基が好ましい。
アルキルカルボニルオキシ基は、炭素数2〜20のアルキルカルボニルオキシ基が好ましい。
nは0〜5の整数を表す。nが2以上の場合、複数のR
c6は同一でも異なっていても良い。
R
c6は無置換のアルキル基又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基、t−ブチル基が特に好ましい。
【0245】
(cy1)、(cy2)としては、下記一般式(CII−AB)で表される繰り返し単位であることも好ましい。
【0247】
式(CII−AB)中、
R
c11’及びR
c12’は、各々独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
Zc’は、結合した2つの炭素原子(C−C)を含み、脂環式構造を形成するための原子団を表す。
【0248】
また、上記一般式(CII−AB)は、下記一般式(CII−AB1)又は一般式(CII−AB2)であることが更に好ましい。
【0250】
式(CII−AB1)及び(CII−AB2)中、
Rc
13’〜Rc
16’は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基あるいはシクロアルキル基を表す。
また、Rc
l3’〜Rc
16’のうち少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。
nは0又は1を表す。
【0251】
以下に(cy1)、(cy2)の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。式中、Raは、H、CH
3、CH
2OH、CF
3又はCNを表す。
【0254】
(cy3)、(cy4)としては、極性基として水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位であることが好ましい。これにより現像液親和性が向上する。水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位は、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが好ましい。水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造に於ける、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルニル基が好ましい。好ましい水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造としては、モノヒドロキシアダマンチル基、ジヒドロキシアダマンチル基、モノヒドロキシジアマンチル基、ジヒドロキシアダマンチル基、シアノ基で置換されたノルボルニル基等が挙げられる。
上記原子団を有する繰り返し単位としては、下記一般式(CAIIa)〜(CAIId)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0256】
一般式(CAIIa)〜(CAIId)に於いて、
R
1cは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
R
2c〜R
4cは、各々独立に、水素原子、水酸基又はシアノ基を表す。ただし、R
2c〜R
4cの内の少なくとも1つは、水酸基又はシアノ基を表す。好ましくは、R
2c〜R
4cの内の1つ又は2つが、水酸基で、残りが水素原子である。一般式(CAIIa)に於いて、更に好ましくは、R
2c〜R
4cの内の2つが、水酸基で、残りが水素原子である。
【0257】
(cy3)、(cy4)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0259】
(cy1)〜(cy4)で表される繰り返し単位の含有率は、樹脂(C)中の全繰り返し単位に対し、5〜40mol%が好ましく、より好ましくは5〜30mol%、更に好ましくは10〜25mol%である。
樹脂(C)は(cy1)〜(cy4)で表される繰り返し単位を複数有していてもよい。
【0260】
フッ素原子を含む繰り返し単位は、樹脂(C)に含まれる全繰り返し単位中10〜100モル%が好ましく、30〜100モル%がより好ましい。また、珪素原子を含む繰り返し単位は、樹脂(C)に含まれる全繰り返し単位中、10〜100モル%が好ましく、20〜100モル%がより好ましい。
【0261】
一方、特に樹脂(C)が側鎖部分にCH
3部分構造を含む場合においては、樹脂(C)が、フッ素原子及び珪素原子を実質的に含有しない形態も好ましい。また、樹脂(C)は、炭素原子、酸素原子、水素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる原子のみによって構成された繰り返し単位のみで実質的に構成されることが好ましい。
【0262】
樹脂(C)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000で、より好ましくは1,000〜50,000、更により好ましくは2,000〜25,000である。
【0263】
感活性光線又は感放射線樹脂組成物中の樹脂(C)の含有量は、感活性光線又は感放射線樹脂組成物の全固形分を基準として、0.01〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは0.1〜9質量%であり、特に好ましくは0.5〜8質量%である。
なお、樹脂(C)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の樹脂(C)を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0264】
感活性光線性又は感放射線性膜を形成した際に、感活性光線性又は感放射線性膜上における水の後退接触角(温度:23℃、相対湿度:45%)が、75°以上であることが好ましく、80°以上であることがより好ましく、85°以上であることが更に好ましい。例えば、露光時のスキャン速度を800mm/sとする場合であっても、後退接触角を85°以上とすることによって液浸欠陥が十分に低減される。
このような水の後退接触角は、例えば、樹脂(C)の含有量を上記範囲内で設定することにより、好適に達成できる。
【0265】
樹脂(C)は、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、残留単量体やオリゴマー成分が0〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜5質量%、0〜1質量%が更により好ましい。それにより、液中異物や感度等の経時変化のないレジストが得られる。また、解像度、レジスト形状、レジストパターンの側壁、ラフネスなどの点から、分子量分布(Mw/Mn、分散度ともいう)は、1〜3の範囲が好ましく、より好ましくは1〜2の範囲である。
【0266】
樹脂(C)を含有する組成物から得られた感活性光線性又は感放射線性膜の最表面に存在する樹脂(C)の割合(表面被覆率)が高いほど、液浸露光後に液滴が残存した場合であっても、液滴の感活性光線性又は感放射線性膜への浸透が抑制される。その結果として、液浸欠陥を低減させることができるため、表面被覆率がより高いことが好ましい。
【0267】
感活性光線性又は感放射線性膜の樹脂(C)の表面被覆率としては、50%以上が好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましく、100%であることが最も好ましい。
【0268】
樹脂(C)を含有する組成物から得られた感活性光線性又は感放射線性膜の表面被覆率の算出方法としては次の方法が上げられる。
(表面被覆率)=(cosθR−cosθo)/(cosθA−cosθo)
【0269】
ここで、θRは樹脂(C)を含有する組成物から得られた感活性光線性又は感放射線性膜の水の静止接触角、θAは樹脂(C)のみから得られる膜の水の静止接触角、θoは樹脂(C)を含有せず、樹脂(C)以外の成分は上記樹脂(C)を含有する組成物と同様の組成物から得られた感活性光線性又は感放射線性膜の水の静止接触角である。
【0270】
また、樹脂(C)を含有する組成物から得られた感活性光線性又は感放射線性膜は、露光前においては、樹脂(C)の表面被覆率が高く、且つ、水の後退接触角が高い状態でありながら、露光現像後は水の静止接触角が低いことが、現像欠陥を低減させるために好ましい。
【0271】
感活性光線性又は感放射線性膜の露光現像後の水の静止接触角(測定条件 温度:23℃、相対湿度:45%)は、70°以下であることが好ましく、65°以下であることがより好ましく、60°以下であることが更に好ましい。
【0272】
表1〜表3に樹脂(C)の具体例を示す。下表において、繰り返し単位の組成比は、モル比を示す。また、下記表中に記載の組成における繰り返し単位については後述する(TMSは、トリメチルシリル基を表す)。表中、Pdは樹脂の分散度(Mw/Mn)を表す。
【0284】
以上、樹脂(C)について詳述したが、本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の調製に好適に用いられる化合物、及び、樹脂として、下記一般式(1M)で表される化合物、及び、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する樹脂(C)にも関する。
【0286】
上記一般式(1M)中、Zは、ハロゲン原子、R
11OCH
2−で表される基、又は、R
12OC(=O)CH
2−で表される基を表す。R
11及びR
12は、それぞれ独立して、1価の置換基を表す。Xは、酸素原子、又は、硫黄原子を表す。Lは、(n+1)価の連結基を表す。Rは、アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する基を有する基を表す。nは正の整数を表す。nが2以上である場合、複数のRは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0287】
一般式(1M)におけるZ、X、L、R及びnの具体例及び好ましい例は、上記一般式(1)におけるZ、X、L、R及びnの具体例及び好ましい例として記載したものと同様である。
【0288】
一般式(1M)で表される化合物は、例えば、下記化合物同士を付加することにより合成可能である。なお、原料における、Z、L、R及びnの定義は、それぞれ、一般式(1M)で表される化合物におけるZ、L、R及びnと同義である。
【0290】
樹脂(C)は、例えば上記のようにして得られた一般式(1M)で表される化合物をモノマーとして、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することにより、得ることができる。
例えば、一般的合成方法としては、モノマー種及び開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。
反応溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド溶剤;後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンなどのレジスト組成物を溶解する溶媒;等が挙げられる。より好ましくはレジスト組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
【0291】
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加し、反応終了後、溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応物の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜45質量%である。
反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃である。
精製は、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液液抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈殿法や、濾別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。
【0292】
<疎水性樹脂(C’)>
本発明の組成物は、樹脂(C)とは異なる疎水性樹脂(C’)を含有してもよい。疎水性樹脂(C’)は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有さなければ、樹脂(C)が有していても良いものとして挙げた上述の繰り返し単位を有することができ、これらの繰り返し単位の疎水性樹脂(C’)の全繰り返し単位を基準とした含有量の好ましい範囲は、樹脂(C)における上述した範囲と同様である。
また、樹脂(C’)の重量平均分子量、分散度、及び、本発明の組成物の全固形分を基準とした含有量の好ましい範囲も、樹脂(C)における上述した範囲と同様である。
【0293】
<フェノール性水酸基を有する樹脂(E)>
本発明の組成物は、樹脂(C)とは異なる、フェノール性水酸基を有する樹脂(E)を含有しても良い。
【0294】
本発明におけるフェノール性水酸基とは、芳香環基の水素原子をヒドロキシ基で置換してなる基である。芳香環基の芳香環は単環又は多環の芳香環であり、ベンゼン環やナフタレン環等が挙げられる。なお、「芳香環」には、「芳香族ヘテロ環」も含まれるものとする。
【0295】
樹脂(E)は、下記一般式(30)で表される繰り返し単位を有する樹脂であることが好ましい。
一般式(30)
【0297】
上記一般式(30)中、
R
31、R
32及びR
33は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。R
33はAr
3と結合して環を形成していてもよく、その場合のR
33はアルキレン基を表す。
X
3は、単結合又は2価の連結基を表す。
Ar
3は、(n3+1)価の芳香環基を表し、R
33と結合して環を形成する場合には(n3+2)価の芳香環基を表す。
n3は、1〜4の整数を表す。
【0298】
Ar
3は、(n3+1)価の芳香環基を表す。n3が1である場合における2価の芳香環基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基などの炭素数6〜18のアリーレン基、あるいは、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等のヘテロ環を含む芳香環基を好ましい例として挙げることができる。
【0299】
n3が2以上の整数である場合における(n3+1)価の芳香環基の具体例としては、2価の芳香環基の上記した具体例から、(n3−1)個の任意の水素原子を除してなる基を好適に挙げることができる。
(n3+1)価の芳香環基は、更に置換基を有していても良い。
【0300】
上述したアルキレン基及び(n3+1)価の芳香環基が有し得る置換基としては、アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0301】
X
3の2価の連結基としては、−COO−又は−CONR
64−が挙げられる(R
64は水素原子又はアルキル基を表す)。
X
3としては、単結合、−COO−、−CONH−が好ましく、単結合、−COO−がより好ましい。
【0302】
Ar
3としては、置換基を有していても良い炭素数6〜18の芳香環基がより好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基、ビフェニレン環基が特に好ましい。
一般式(30)で表される繰り返し単位は、ヒドロキシスチレン構造を備えていることが好ましい。即ち、Ar
3は、ベンゼン環基であることが好ましい。
【0303】
n3は1〜4の整数を表し、1又は2を表すことが好ましく、1を表すことがより好ましい。
【0304】
<酸拡散制御剤>
本発明の組成物は、酸拡散制御剤を含有することが好ましい。酸拡散制御剤は、露光時に酸発生剤等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における酸分解性樹脂の反応を抑制するクエンチャーとして作用するものである。酸拡散制御剤としては、塩基性化合物、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物、又は、酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩を使用することができる。
【0305】
塩基性化合物としては、好ましくは、下記式(A)〜(E)で示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0307】
一般式(A)及び(E)中、
R
200、R
201及びR
202は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(炭素数6〜20)を表し、ここで、R
201とR
202は、互いに結合して環を形成してもよい。
R
203、R
204、R
205及びR
206は、同一でも異なってもよく、炭素数1〜20個のアルキル基を表す。
【0308】
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1〜20のシアノアルキル基が好ましい。
これら一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0309】
好ましい化合物として、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン等を挙げることができ、更に好ましい化合物として、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
好ましい化合物の具体例としては、US2012/0219913A1 <0379>に例示された化合物を挙げることができる。
好ましい塩基性化合物として、更に、フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物及びスルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物を挙げることができる。
これらの塩基性化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0310】
本発明の組成物は、塩基性化合物を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、塩基性化合物の含有率は、組成物の固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
酸発生剤と塩基性化合物の組成物中の使用割合は、酸発生剤/塩基性化合物(モル比)=2.5〜300が好ましく、より好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。
【0311】
窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(以下、「化合物(D)」ともいう。)は、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体であることが好ましい。
酸の作用により脱離する基として、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、ヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、ヘミアミナールエーテル基であることが特に好ましい。
化合物(D)の分子量は、100〜1000が好ましく、100〜700がより好ましく、100〜500が特に好ましい。
化合物(D)は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有してもよい。カルバメート基を構成する保護基としては、下記一般式(d−1)で表すことができる。
【0313】
一般式(d−1)において、
Rbは、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30)、アリール基(好ましくは炭素数3〜30)、アラルキル基(好ましくは炭素数1〜10)、又はアルコキシアルキル基(好ましくは炭素数1〜10)を表す。Rbは相互に連結して環を形成していてもよい。
Rbが示すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基は、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Rbが示すアルコキシアルキル基についても同様である。
【0314】
Rbとして好ましくは、直鎖状、又は分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基である。より好ましくは、直鎖状、又は分岐状のアルキル基、シクロアルキル基である。
2つのRbが相互に連結して形成する環としては、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環式炭化水素基若しくはその誘導体等が挙げられる。
一般式(d−1)で表される基の具体的な構造としては、US2012/0135348 A1 <0466>に開示された構造を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0315】
化合物(D)は、下記一般式(6)で表される構造を有するものであることが特に好ましい。
【0317】
一般式(6)において、Raは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。lが2のとき、2つのRaは同じでも異なっていてもよく、2つのRaは相互に連結して式中の窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。複素環には式中の窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。
Rbは、上記一般式(d−1)におけるRbと同義であり、好ましい例も同様である。
lは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数を表し、l+m=3を満たす。
一般式(6)において、Raとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基は、Rbとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基が置換されていてもよい基として前述した基と同様な基で置換されていてもよい。
【0318】
上記Raのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、上記基で置換されていてもよい)の具体例としては、Rbについて前述した具体例と同様な基が挙げられる。
本発明における特に好ましい化合物(D)の具体例としては、US2012/0135348 A1 <0475>に開示された化合物を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0319】
一般式(6)で表される化合物は、特開2007−298569号公報、特開2009−199021号公報などに基づき合成することができる。
本発明において、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有する低分子化合物(D)は、一種単独でも又は2種以上を混合しても使用することができる。
本発明の組成物における化合物(D)の含有量は、組成物の全固形分を基準として、0.001〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.001〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%である。
【0320】
以下、本発明における化合物(D)の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0323】
活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(以下、「化合物(PA)」ともいう。)は、プロトンアクセプター性官能基を有し、且つ、活性光線又は放射線の照射により分解して、プロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化する化合物である。
【0324】
プロトンアクセプター性官能基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基或いは電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基や、π共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基を意味する。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0326】
プロトンアクセプター性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル、アザクラウンエーテル、1〜3級アミン、ピリジン、イミダゾール、ピラジン構造などを挙げることができる。
【0327】
化合物(PA)は、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する。ここでプロトンアクセプター性の低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性への変化とは、プロトンアクセプター性官能基にプロトンが付加することに起因するプロトンアクセプター性の変化であり、具体的には、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(PA)とプロトンからプロトン付加体が生成する時、その化学平衡に於ける平衡定数が減少することを意味する。
プロトンアクセプター性は、pH測定を行うことによって確認することができる。
【0328】
本発明においては、活性光線又は放射線の照射により化合物(PA)が分解して発生する化合物の酸解離定数pKaが、pKa<−1を満たすことが好ましく、より好ましくは−13<pKa<−1であり、更に好ましくは−13<pKa<−3である。
【0329】
本発明に於いて、酸解離定数pKaとは、水溶液中での酸解離定数pKaのことを表し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に記載のものであり、この値が低いほど酸強度が大きいことを示している。水溶液中での酸解離定数pKaは、具体的には、無限希釈水溶液を用い、25℃での酸解離定数を測定することにより実測することができ、また、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求めることもできる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示している。
【0330】
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994−2007 ACD/Labs)。
【0331】
化合物(PA)は、活性光線又は放射線の照射により分解して発生する上記プロトン付加体として、例えば、下記一般式(PA−1)で表される化合物を発生する。一般式(PA−1)で表される化合物は、プロトンアクセプター性官能基とともに酸性基を有することにより、化合物(PA)に比べてプロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物である。
【0333】
一般式(PA−1)中、
Qは、−SO
3H、−CO
2H、又は−W
1NHW
2R
fを表す。ここで、R
fは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜30)を表し、W
1及びW
2は、各々独立に、−SO
2−又は−CO−を表す。
Aは、単結合又は2価の連結基を表す。
Xは、−SO
2−又は−CO−を表す。
nは、0又は1を表す。
Bは、単結合、酸素原子、又は−N(R
x)R
y−を表す。ここで、R
xは水素原子又は1価の有機基を表し、R
yは単結合又は2価の有機基を表す。R
xは、R
yと結合して環を形成していてもよく、Rと結合して環を形成していてもよい。
Rは、プロトンアクセプター性官能基を有する1価の有機基を表す。
【0334】
一般式(PA−1)について更に詳細に説明する。
Aにおける2価の連結基としては、好ましくは少なくとも1つのフッ素原子を有するアルキレン基であり、パーフルオロエチレン基、パーフルオロプロピレン基、パーフルオロブチレン基などのパーフルオロアルキレン基がより好ましい。
【0335】
Rxにおける1価の有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などが挙げられ、これら基は更に置換基を有していてもよい。
Rxにおけるアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜20の直鎖及び分岐アルキル基であり、アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有していてもよい。
Rxにおけるシクロアルキル基としては、好ましくは炭素数3〜20の単環又は多環シクロアルキル基であり、環内に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有していてもよい。
Rxにおけるアリール基としては、好ましくは炭素数6〜14のものが挙げられ、例えば、フェニル基及びナフチル基等が挙げられる。
Rxにおけるアラルキル基としては、好ましくは炭素数7〜20のものが挙げられ、例えば、ベンジル基及びフェネチル基等が挙げられる。
Rxにおけるアルケニル基は、炭素数が3〜20が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基及びスチリル基等が挙げられる。
【0336】
Ryにおける2価の有機基としては、好ましくはアルキレン基を挙げることができる。
RxとRyが互いに結合して形成してもよい環構造としては、窒素原子を含む5〜10員の環が挙げられる。
【0337】
Rにおけるプロトンアクセプター性官能基とは、上記の通りである。
このような構造を有する有機基として、好ましい炭素数は4〜30の有機基であり、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などを挙げることができる。
【0338】
Rにおけるプロトンアクセプター性官能基又はアンモニウム基を含むアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基に於けるアルキル基等は、上記Rxとして挙げたアルキル基等と同様のものである。
【0339】
Bが−N(Rx)Ry−の時、RとRxが互いに結合して環を形成していることが好ましい。環を形成する炭素数は4〜20が好ましく、単環式でも多環式でもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含んでいてもよい。
単環式構造としては、窒素原子を含む4〜8員環等を挙げることができる。多環式構造としては、2又は3以上の単環式構造の組み合わせから成る構造を挙げることができる。
【0340】
Qにより表される−W
1NHW
2R
fにおけるR
fとして、好ましくは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基である。また、W
1及びW
2としては、少なくとも一方が−SO
2−であることが好ましい。
【0341】
化合物(PA)は、イオン性化合物であることが好ましい。プロトンアクセプター性官能基はアニオン部、カチオン部のいずれに含まれていてもよいが、アニオン部位に含まれていることが好ましい。
化合物(PA)として、好ましくは下記一般式(4)〜(6)で表される化合物が挙げられる。
【0343】
一般式(4)〜(6)において、A、X、n、B、R、R
f、W
1及びW
2は、一般式(PA−1)における各々と同義である。
C
+はカウンターカチオンを示す。
カウンターカチオンとしては、オニウムカチオンが好ましい。より詳しくは、酸発生剤における一般式(ZI)におけるS
+(R
201)(R
202)(R
203)として説明されているスルホニウムカチオン、一般式(ZII)におけるI
+(R
204)(R
205)として説明されているヨードニウムカチオンが好ましい例として挙げられる。
化合物(PA)の具体例としては、US2011/0269072A1 <0280>に例示された化合物を挙げることが出来る。
【0344】
また、本発明においては、一般式(PA−1)で表される化合物を発生する化合物以外の化合物(PA)も適宜選択可能である。例えば、イオン性化合物であって、カチオン部にプロトンアクセプター部位を有する化合物を用いてもよい。より具体的には、下記一般式(7)で表される化合物などが挙げられる。
【0346】
式中、Aは硫黄原子又はヨウ素原子を表す。
mは1又は2を表し、nは1又は2を表す。但し、Aが硫黄原子の時、m+n=3、Aがヨウ素原子の時、m+n=2である。
Rは、アリール基を表す。
R
Nは、プロトンアクセプター性官能基で置換されたアリール基を表す。X
−は、対アニオンを表す。
X
−の具体例としては、前述した酸発生剤のアニオンと同様のものを挙げることができる。
R及びR
Nのアリール基の具体例としては、フェニル基が好ましく挙げられる。
【0347】
R
Nが有するプロトンアクセプター性官能基の具体例としては、前述の式(PA−1)で説明したプロトンアクセプター性官能基と同様である。
以下に、カチオン部にプロトンアクセプター部位を有するイオン性化合物の具体例としては、US2011/0269072A1<0291>に例示された化合物を挙げることが出来る。
なお、このような化合物は、例えば、特開2007―230913号公報及び特開2009―122623号公報などに記載の方法を参考にして合成できる。
【0348】
化合物(PA)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
化合物(PA)の含有量は、組成物の全固形分を基準として、0.1〜10質量%が好ましく、1〜8質量%がより好ましい。
【0349】
本発明の組成物では、酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩を酸拡散制御剤として使用することができる。
酸発生剤と、酸発生剤から生じた酸に対して相対的に弱酸である酸を発生するオニウム塩を混合して用いた場合、活性光線性又は放射線の照射により酸発生剤から生じた酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
【0350】
酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩としては、下記一般式(d1−1)〜(d1−3)で表される化合物であることが好ましい。
【0352】
式中、R
51は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Z
2cは置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基(ただし、Sに隣接する炭素にはフッ素原子は置換されていないものとする)であり、R
52は有機基であり、Y
3は直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基又はアリーレン基であり、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基であり、M
+は各々独立に、スルホニウム又はヨードニウムカチオンである。
【0353】
M
+として表されるスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンの好ましい例としては、一般式(ZI)で例示したスルホニウムカチオン及び一般式(ZII)で例示したヨードニウムカチオンを挙げることができる。
【0354】
一般式(d1−1)で表される化合物のアニオン部の好ましい例としては、特開2012−242799号公報の段落〔0198〕に例示された構造を挙げることが出来る。
一般式(d1−2)で表される化合物のアニオン部の好ましい例としては、特開2012−242799号公報の段落〔0201〕に例示された構造を挙げることが出来る。
一般式(d1−3)で表される化合物のアニオン部の好ましい例としては、特開2012−242799号公報の段落〔0209〕及び〔0210〕に例示された構造を挙げることが出来る。
【0355】
酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩は、(C)カチオン部位とアニオン部位を同一分子内に有し、かつ、カチオン部位とアニオン部位が共有結合により連結している化合物(以下、「化合物(CA)」ともいう。)であってもよい。
化合物(CA)としては、下記一般式(C−1)〜(C−3)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0357】
一般式(C−1)〜(C−3)中、
R
1、R
2、R
3は、炭素数1以上の置換基を表す。
L
1は、カチオン部位とアニオン部位を連結する2価の連結基又は単結合を表す。
−X
−は、−COO
−、−SO
3−、−SO
2−、−N
−−R
4から選択されるアニオン部位を表す。R
4は、隣接するN原子との連結部位に、カルボニル基:−C(=O)−、スルホニル基:−S(=O)
2−、スルフィニル基:−S(=O)−を有する1価の置換基を表す。
R
1、R
2、R
3、R
4、L
1は互いに結合して環構造を形成してもよい。また、(C−3)において、R
1〜R
3のうち2つを合わせて、N原子と2重結合を形成してもよい。
【0358】
R
1〜R
3における炭素数1以上の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基などが挙げられる。好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基である。
【0359】
2価の連結基としてのL
1は、直鎖若しくは分岐鎖状アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、及びこれらの2種以上を組み合わせてなる基等が挙げられる。L
1は、より好ましくは、アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、エステル結合、及びこれらの2種以上を組み合わせてなる基である。
一般式(C−1)で表される化合物の好ましい例としては、特開2013−6827号公報の段落〔0037〕〜〔0039〕及び特開2013−8020号公報の段落〔0027〕〜〔0029〕に例示された化合物を挙げることが出来る。
一般式(C−2)で表される化合物の好ましい例としては、特開2012−189977号公報の段落〔0012〕〜〔0013〕に例示された化合物を挙げることが出来る。
一般式(C−3)で表される化合物の好ましい例としては、特開2012−252124号公報の段落〔0029〕〜〔0031〕に例示された化合物を挙げることが出来る。
【0360】
酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩の含有量は、組成物の固形分基準で、0.5〜10.0質量%であることが好ましく、0.5〜8.0質量%であることがより好ましく、1.0〜8.0質量%であることがさらに好ましい。
本発明の組成物は、上述した酸拡散制御剤から1種又は複数種を選択して含有することができる。
【0361】
<酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が低下する化合物(F)>
本発明の組成物は、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解速度が低下する化合物(F)を含有しても良い。
化合物(F)は高分子化合物であってもよいし、低分子化合物であってもよい。
反応性、現像性の観点から、化合物(F)はフェノール誘導体であることが好ましい。
【0362】
低分子化合物としては、上記フェノール性水酸基を有する樹脂(E)を架橋する化合物
(以下、「架橋剤」とも称する)を好適に挙げることができる。ここでは公知の架橋剤を有効に使用することができる。
架橋剤は、例えば、フェノール性水酸基を有する樹脂(E)を架橋しうる架橋性基を有している化合物であり、好ましくは架橋性基として、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、アシルオキシメチル基、又はアルコキシメチルエーテル基を2個以上有する化合物、又はエポキシ化合物である。
更に好ましくは、アルコキシメチル化、アシルオキシメチル化メラミン化合物、アルコキシメチル化、アシルオキシメチル化ウレア化合物、ヒドロキシメチル化又はアルコキシメチル化フェノール化合物、及びアルコキシメチルエーテル化フェノール化合物等が挙げられる。
【0363】
また、化合物としては特開2013−64998号公報段落<0196>〜<0200>(対応する米国特許公報2014/0178634号明細書の<0271>〜<0277>)のエポキシ化合物や、特開2013−258332号公報段落<0065>に記載のオキセタン化合物も援用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0364】
架橋剤は、下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。
【0366】
一般式(1)中、R
1〜R
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1から50の有機基、又は、一般式(3)中のLにより表される連結基又は単結合との結合部位を表す。但し、R
2〜R
6の少なくとも1つは一般式(2)で表される構造である。
一般式(2)中、R
7は水素原子、または炭素数1〜30の有機基を表し、*はR
2〜R
6のいずれかにおける結合部位を表す。
一般式(3)中、Lは連結基又は単結合を表し、*はR
1〜R
6のいずれかにおける結合部位を表し、kは2〜5の整数を表す。
【0367】
架橋剤が一般式(1)で表される化合物である場合、R
1〜R
6は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1から50の有機基を表す。炭素数1から50の有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基、あるいは、これらの基が、アルキレン基、アリーレン基、カルボン酸エステル結合、炭酸エステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、スルホ基、スルホン基、ウレタン結合、ウレア結合又はこれらの組み合わせからなる基で連結された基が挙げられる。
また、R
2〜R
6の少なくとも1つは一般式(2)で表される構造である。一般式(2)中のR
7により表される炭素数1〜30の有機基としては、上述したR
1〜R
6により表される有機基と同様の具体例が挙げられる。1分子中に一般式(2)で表される構造を2個以上有することが好ましい。
【0368】
<溶剤>
本発明の組成物は、通常、溶剤を含有する。
組成物を調製する際に使用することができる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4〜10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及びピルビン酸アルキル等の有機溶剤が挙げられる。
これらの溶剤の具体例としては、米国特許出願公開2008/0187860号明細書<0441>〜<0455>に記載のものが挙げられる。
【0369】
本発明においては、有機溶剤として構造中に水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を含有する溶剤、及び水酸基を含有しない溶剤としては前述の例示化合物が適宜選択可能であるが、水酸基を含有する溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、又は乳酸アルキル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、別名1−メトキシ−2−プロパノール)、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、又は乳酸エチルがより好ましい。また、水酸基を含有しない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を含有してもよいモノケトン化合物、環状ラクトン、又は酢酸アルキル等が好ましく、これらの内でもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、又は酢酸ブチルがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、エチルエトキシプロピオネート、又は2−ヘプタノンが更に好ましい。
水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量比)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。水酸基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含むことが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独溶剤、又は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤であることが好ましい。
【0370】
<その他の添加剤>
(界面活性剤)
本発明の組成物は、更に界面活性剤を含有してもしなくてもよく、含有する場合、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、又はフッ素原子とケイ素原子との両方を有する界面活性剤)が好ましい。
【0371】
本発明の組成物が界面活性剤を含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤として、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落<0276>に記載の界面活性剤が挙げることができる。
また、本発明では、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落<0280>に記載の、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。
【0372】
これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また、いくつかの組み合わせで使用してもよい。
本発明の組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の使用量は、組成物の全固形分に対して、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.0005〜1質量%である。
一方、界面活性剤の添加量を、組成物の全量(溶剤を除く)に対して、10ppm以下とすることで、疎水性樹脂の表面偏在性があがり、それにより、感活性光線性又は感放射線性膜の表面をより疎水的にすることができ、液浸露光時の水追随性を向上させることができる。
【0373】
(カルボン酸オニウム塩)
本発明の組成物は、カルボン酸オニウム塩を含有してもしなくてもよい。このようなカルボン酸オニウム塩は、米国特許出願公開2008/0187860号明細書<0605>〜<0606>に記載のものを挙げることができる。
これらのカルボン酸オニウム塩は、スルホニウムヒドロキシド、ヨードニウムヒドロキシド、アンモニウムヒドロキシドとカルボン酸を適当な溶剤中酸化銀と反応させることによって合成できる。
【0374】
本発明の組成物がカルボン酸オニウム塩を含有する場合、その含有量は、組成物の全固形分に対し、一般的には0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0375】
(その他の添加剤)
本発明の組成物は、必要に応じて更に、酸増殖剤、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止剤、又は、現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、カルボキシ基を有する脂環族、又は脂肪族化合物)等を含有してもよい。
【0376】
このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号公報、特開平2−28531号公報、米国特許第4,916,210号明細書、又は欧州特許第219294号明細書等に記載の方法を参考にして、当業者において容易に合成することができる。
カルボキシ基を有する脂環族、又は脂肪族化合物の具体例としては、コール酸、デオキシコール酸、若しくはリトコール酸等のステロイド構造を有するカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、又はシクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
【0377】
<調製方法>
本発明の組成物は、解像力向上の観点から、膜厚90nm以下、好ましくは85nm以下の感活性光線性又は感放射線性膜とすることが好ましい。組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性又は製膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
本発明における組成物の固形分濃度は、通常1.0〜10質量%であり、好ましくは、2.0〜5.7質量%、更に好ましくは2.0〜5.3質量%である。固形分濃度を上記範囲とすることで、レジスト溶液を基板上に均一に塗布することができ、更にはLWRにより優れたレジストパターンを形成することが可能になる。その理由は明らかではないが、恐らく、固形分濃度を10質量%以下、好ましくは5.7質量%以下とすることで、レジスト溶液中での素材、特には光酸発生剤の凝集が抑制され、その結果として、均一な感活性光線性又は感放射線性膜が形成できるものと考えられる。
固形分濃度とは、組成物の総質量に対する、溶剤を除く他のレジスト成分の質量の質量百分率である。
【0378】
本発明の組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは上記混合溶剤に溶解し、フィルター濾過した後、所定の支持体(基板)上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下のポリテトラフルオロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製のものが好ましい。フィルター濾過においては、例えば特開2002−62667号公報のように、循環的な濾過を行ったり、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ったりしてもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理等を行ってもよい。
【0379】
<用途>
本発明の組成物は、活性光線又は放射線に照射により反応して性質が変化する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、IC等の半導体製造工程、液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造、インプリント用モールド構造体の作製、更にその他のフォトファブリケーション工程、平版印刷版、又は、酸硬化性組成物に使用される感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。
【0380】
〔パターン形成方法〕
本発明は上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたパターン形成方法にも関する。以下、本発明のパターン形成方法について説明する。また、パターン形成方法の説明と併せて、本発明の感活性光線性又は感放射線性膜(典型的には、レジスト膜)についても説明する。
【0381】
本発明のパターン形成方法は、
(i)上述した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によって感活性光線性又は感放射線性膜を形成する工程、
(ii)上記感活性光線性又は感放射線性膜に活性光線又は放射線を照射する工程(露光工程)、及び、
(iii)上記活性光線又は放射線が照射された感活性光線性又は感放射線性膜を、現像液を用いて現像する工程、を有する。
【0382】
本発明のパターン形成方法は、上記(i)〜(iii)の工程を含んでいれば特に限定されず、更に下記の工程を有していてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程における露光方法が、液浸露光であることが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程の前に、(iv)前加熱工程を含むことが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程の後に、(v)露光後加熱工程を含むことが好ましい。
本発明のパターン形成方法は、(ii)露光工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(iv)前加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法は、(v)露光後加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
【0383】
本発明における感活性光線性又は感放射線性膜は、上述した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物から形成される膜であり、より具体的には、基板上に上記組成物を塗布することにより形成される膜であることが好ましい。
本発明のパターン形成方法において、上述した(i)感活性光線性又は感放射線性膜形成工程、(ii)露光工程、及び(iii)現像工程は、一般的に知られている方法により行うことができる。
また、必要に応じて、感活性光線性又は感放射線性膜と基板との間に反射防止膜を形成させてもよい。反射防止膜としては、公知の有機系又は無機系の反射防止膜を適宜用いることができる。
【0384】
基板は、特に限定されるものではなく、IC等の半導体の製造工程、又は、液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造工程のほか、その他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程等で一般的に用いられる基板を用いることができ、その具体例としては、シリコン、SiO
2、若しくはSiN等の無機基板、又はSOG(Spin On Glass)等の塗布系無機基板等が挙げられる。
【0385】
上述のとおり、本発明のパターン形成方法は、(i)感活性光線性又は感放射線性膜形成工程後、(ii)露光工程の前に、(iv)前加熱工程(PB;Prebake)を含むことも好ましい。
また、(ii)露光工程の後、且つ(iii)現像工程の前に、(v)露光後加熱工程(PEB;PostExposureBake)を含むことも好ましい。
上記のようなベークにより露光部の反応が促進され、感度及び/又はパターンプロファイルが改善する。
【0386】
加熱温度は、PB及びPEBのいずれにおいても、70〜130℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。
加熱時間は、PB及びPEBのいずれにおいても、30〜300秒が好ましく、30〜180秒がより好ましく、30〜90秒が更に好ましい。
加熱は、通常の露光機及び現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
【0387】
露光装置に用いられる光源波長に制限は無いが、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光、X線、又は電子線等を挙げることができ、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下、更に好ましくは1〜200nmの波長の遠紫外光、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F
2エキシマレーザー(157nm)、X線、EUV(13nm)、又は電子線等であり、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV又は電子線が好ましく、ArFエキシマレーザーがより好ましい。
【0388】
本発明のパターン形成方法において、(ii)露光工程には、液浸露光方法を適用することができる。液浸露光方法は、位相シフト法又は変形照明法等の超解像技術と組み合わせることが可能である。液浸露光は、例えば、特開2013−242397号公報の段落<0594>〜<0601>に記載された方法に従って行うことができる。
【0389】
(iii)現像工程においては、アルカリ現像液であっても、有機溶剤を含有する現像液(以下、有機系現像液とも言う)であっても良いが、アルカリ現像液を用いることが好ましい。
【0390】
アルカリ現像液としては、通常、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに代表される4級アンモニウム塩が用いられるが、これ以外にも無機アルカリ、1〜3級アミン、アルコールアミン、環状アミン等のアルカリ水溶液も使用可能である。
具体的には、アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水などの無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミンなどの第一アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミンなどの第二アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミンなどの第三アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの第四級アンモニウム塩;ピロール、ピペリジンなどの環状アミン類;等のアルカリ性水溶液を使用することができる。これらの中でもテトラエチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液を用いることが好ましい。
さらに、上記アルカリ現像液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加してもよい。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
アルカリ現像液を用いて現像を行う時間は、通常10〜300秒である。
アルカリ現像液のアルカリ濃度(及びpH)及び現像時間は、形成するパターンに応じて、適宜調整することができる。
【0391】
有機系現像液としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、若しくはエーテル系溶剤等の極性溶剤、又は炭化水素系溶剤を用いることができる。
【0392】
ケトン系溶剤としては、例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、2−ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、又はプロピレンカーボネート等を挙げることができる。
【0393】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルー3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、ブタン酸ブチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、酢酸イソアミル、イソ酪酸イソブチル、又はプロピオン酸ブチル等を挙げることができる。
【0394】
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、若しくはn−デカノール等のアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤;又は、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、若しくはメトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤;等を挙げることができる。
【0395】
エーテル系溶剤としては、例えば、上記グリコールエーテル系溶剤の他、ジオキサン、又はテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0396】
アミド系溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、又は1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用できる。
【0397】
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、若しくはキシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;又は、ペンタン、ヘキサン、オクタン、若しくはデカン等の脂肪族炭化水素系溶剤;等が挙げられる。
なお、炭化水素系溶剤である脂肪族炭化水素系溶剤においては、同じ炭素数で異なる構造の化合物の混合物であってもよい。例えば、脂肪族炭化水素系溶媒としてデカンを使用した場合、同じ炭素数で異なる構造の化合物である2−メチルノナン、2,2−ジメチルオクタン、4−エチルオクタン、イソオクタンなどが脂肪族炭化水素系溶媒に含まれていてもよい。
また、上記同じ炭素数で異なる構造の化合物は、1種のみが含まれていてもよいし、上記のように複数種含まれていてもよい。
【0398】
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤又は水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が10質量%未満であることが好ましく、実質的に水分を含有しないことがより好ましい。
すなわち、有機系現像液に対する有機溶剤の含有量は、現像液の全量に対して、90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、95質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
【0399】
特に、有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、及びアミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有する現像液であるのが好ましい。
【0400】
有機系現像液の蒸気圧は、20℃において、5kPa以下が好ましく、3kPa以下がより好ましく、2kPa以下が更に好ましい。有機系現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウエハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウエハ面内の寸法均一性が良化する。
【0401】
有機系現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性又は非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、又は同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることが更に好ましい。
【0402】
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0403】
有機系現像液は、塩基性化合物を含んでいてもよい。塩基性化合物としては、例えばアミン化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物、又は含窒素複素環化合物等が挙げられる。また、塩基性化合物としては、酸拡散制御剤として前述した、組成物が含みうる塩基性化合物で説明したものも挙げられる。
【0404】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、又は、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等を適用することができる。なお、吐出される現像液の吐出圧の好適範囲、及び、現像液の吐出圧を調整する方法等については、特に限定されないが、例えば、特開2013−242397号公報の段落<0631>〜<0636>に記載された範囲及び方法を用いることができる。
【0405】
本発明のパターン形成方法においては、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程(有機溶剤現像工程)、及び、アルカリ水溶液を用いて現像を行う工程(アルカリ現像工程)を組み合わせて使用してもよい。これにより、より微細なパターンを形成することができる。
本発明において、有機溶剤現像工程によって露光強度の弱い部分が除去されるが、更にアルカリ現像工程を行うことによって露光強度の強い部分も除去される。このように現像を複数回行う多重現像プロセスにより、中間的な露光強度の領域のみを溶解させずにパターン形成が行えるので、通常より微細なパターンを形成できる(特開2008−292975号公報<0077>と同様のメカニズム)。
【0406】
(iii)現像工程の後((V)露光後加熱工程がある場合には、(V)露光後加熱工程の後)には、リンス液を用いて洗浄する工程(リンス工程)を含むことが好ましい。
【0407】
アルカリ現像液を用いて現像する工程の後のリンス工程に用いるリンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。この場合、現像処理または、リンス処理の後に、パターン上に付着している現像液またはリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。更に、リンス処理または超臨界流体による処理の後、パターン中に残存する水分を除去するために加熱処理を行うことができる。
【0408】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後のリンス工程に用いるリンス液としては、レジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用することができる。リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることがより好ましい。
炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及びエーテル系溶剤の具体例としては、有機溶剤を含む現像液において説明したものと同様のものが挙げられる。
【0409】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に、より好ましくは、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及び、炭化水素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行い、更に好ましくは、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行い、特に好ましくは、1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行い、最も好ましくは、炭素数5以上の1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。
【0410】
ここで、リンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、又は環状の1価アルコールが挙げられる。具体的には、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、tert―ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−ヘキサノール、シクロペンタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3−ヘプタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、又はメチルイソブチルカルビノールが挙げられる。炭素数5以上の1価アルコールとしては、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、又はメチルイソブチルカルビノール等が挙げられる。
【0411】
炭化水素系溶剤を含有するリンス液としては、炭素数6〜30の炭化水素化合物が好ましく、炭素数8〜30の炭化水素化合物がより好ましく、炭素数8〜30の炭化水素化合物が更に好ましく、炭素数10〜30の炭化水素化合物が特に好ましい。中でも、デカン及び/又はウンデカンを含むリンス液を用いることにより、パターン倒れを抑制することができる。
リンス液としてエステル系溶剤を用いる場合には、エステル系溶剤(1種又は2種以上)に加えて、グリコールエーテル系溶剤を用いてもよい。この場合の具体例としては、エステル系溶剤(好ましくは、酢酸ブチル)を主成分として、グリコールエーテル系溶剤(好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME))を副成分として用いることが挙げられる。これにより、残渣欠陥を抑制することができる。
【0412】
各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。含水率を10質量%以下とすることで、良好な現像特性を得ることができる。
【0413】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に用いるリンス液の蒸気圧は、20℃に於いて0.05kPa以上、5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下がより好ましく、0.12kPa以上、3kPa以下が更に好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上、5kPa以下にすることにより、ウエハ面内の温度均一性が向上し、更にはリンス液の浸透に起因した膨潤が抑制され、ウエハ面内の寸法均一性が良化する。
【0414】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
リンス工程においては、有機溶剤を含む現像液を用いる現像を行ったウエハを上記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、又は、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等を適用することができる。なかでも、回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm〜4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むことも好ましい。ベークによりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程は、通常40〜160℃、好ましくは70〜95℃で、通常10秒〜3分、好ましくは30秒から90秒間行う。
【0415】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、及び、本発明のパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、レジスト溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、又はトップコート形成用組成物等)は、金属等の不純物を含まないことが好ましい。これら材料に含まれる不純物の含有量としては、1ppm以下が好ましく、100ppt以下がより好ましく、10ppt以下が更に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が特に好ましい。
上記各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過を挙げることができる。フィルター孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルターの材質としては、ポリテトラフルオロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製のフィルターが好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルター濾過工程では、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であってもよい。
また、上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う、又は、装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法が挙げられる。各種材料を構成する原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
フィルター濾過のほか、吸着材による不純物の除去を行ってもよく、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル若しくはゼオライト等の無機系吸着材、又は活性炭等の有機系吸着材を使用することができる。
【0416】
本発明のパターン形成方法により形成されるパターンに対して、パターンの表面荒れを改善する方法を適用してもよい。パターンの表面荒れを改善する方法としては、例えば、国際公開第2014/002808号に開示された水素を含有するガスのプラズマによってレジストパターンを処理する方法が挙げられる。その他にも、特開2004−235468号公報、米国特許出願公開第2010/0020297号明細書、特開2009−19969号公報、Proc. of SPIE Vol.8328 83280N−1“EUV Resist Curing Technique for LWR Reduction and Etch Selectivity Enhancement”に記載されているような公知の方法を適用してもよい。
本発明のパターン形成方法は、DSA(Directed Self−Assembly)におけるガイドパターン形成(例えば、ACS Nano Vol.4 No.8 Page4815−4823参照)にも用いることができる。
また、上記の方法によって形成されたレジストパターンは、例えば特開平3−270227号公報及び特開2013−164509号公報に開示されたスペーサープロセスの芯材(コア)として使用できる。
【0417】
〔電子デバイスの製造方法〕
また、本発明は、上記した本発明のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法にも関する。本発明の電子デバイスの製造方法により製造された電子デバイスは、電気電子機器(例えば、家電、OA(Office Automation)関連機器、メディア関連機器、光学用機器、及び、通信機器等)に、好適に搭載されるものである。
【実施例】
【0418】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0419】
<合成例1:化合物M1−1の合成>
(化合物(i)の合成)
13.9gのトリフルオロエタノール(1)を250gの脱水塩化メチレンに溶解させ、0℃に冷却した。0℃にてジイソプロピルエチルアミン13.3gを加え、次いで、25.0gのブロモ酢酸ブロミド(2)を滴下した。滴下後の溶液を、窒素雰囲気下、25℃で2時間攪拌した。水100gを加えて反応を停止した後、有機層を100gの水で5回洗浄した。得られた有機層の濃縮液を減圧蒸留に供することにより、6.55gの化合物(i)を得た。
【0420】
(化合物M1−1の合成)
5.85gのα−クロロアクリル酸(3)を80.0gのアセトニトリルに溶解させ、さらにジイソプロピルエチルアミン5.33gを加えた。さらにそこへ、1.00gの化合物(i)を加えた後、溶液を60℃で1時間攪拌した。水50.0gを加えて反応を停止した後、有機層を100gの水で3回洗浄した。濃縮液をカラムクロマトグラフィーにより精製し、2.21gの化合物(M1−1)を得た。(
1H−NMR(CDCl
3):δppm 5.88−5.76(1H,m)、5.50−5.46(1H,m)、4.95(2H,s)、4.85−4.70(2H,s))
【0421】
【化84】
【0422】
<合成例2:化合物M1−2の合成>
(化合物(ii)の合成)
12.8gのヘキサフルオロイソプロパノール(4)を200gの脱水塩化メチレンに溶解させ、0℃に冷却した。0℃にてピリジン6.93gを加え、次いで、20.0gのブロモ酢酸ブロミド(2)を滴下した。滴下後の溶液を、窒素雰囲気下、25℃で1時間攪拌した。水100gを加えて反応を停止した後、有機層を100gの水で5回洗浄した。洗浄後の有機層を濃縮することにより15.6gの化合物(ii)の粗体を得た。
【0423】
(化合物M1−2の合成)
8.00gのα−フルオロアクリル酸ナトリウム(5)を71.4gのアセトニトリルに溶解させ、さらにそこへ、3.45gのテトラブチルアンモニウムブロミドを加えた。次いで、19.6gの化合物(ii)を加えた後、65℃で1時間攪拌した。水50.0gを加えて反応を停止した後、有機層を100gの水で3回洗浄した。得られた有機層の濃縮液を減圧蒸留することにより、13.1gの化合物(M1−2)を得た。(
1H−NMR(CDCl
3):δppm 5.88−5.76(2H,m)、5.50−5.46(1H,m)、4.95(2H,s))
【0424】
【化85】
【0425】
<合成例3:樹脂P−59の合成>
1.47gの化合物(M1−1)と、0.03gの重合開始剤V−601(和光純薬工業(株)製)とを、2.33gのシクロヘキサノンに溶解させた。反応容器中に0.44gのシクロヘキサノンを入れ、窒素雰囲気下、85℃の溶液中に4時間かけて滴下した。反応溶液を2時間に亘って加熱撹拌した後、これを室温まで放冷した。
放冷後の溶液を、30gのメタノール/水=9/1(質量比)中に滴下し、ポリマーを沈殿させ、ろ過した。6gのメタノール/水=9/1(質量比)を用いて、ろ過した固体のかけ洗いを行った。その後、洗浄後の固体を減圧乾燥に供して、0.89gの樹脂(P−59)を得た。
【0426】
【化86】
【0427】
樹脂(P−59)の合成と同様にして、上掲した樹脂(P−1)〜(P−158)を合成した。
【0428】
同様にして、以下に示す樹脂(P’−1)〜(P’−6)を合成した。
【0429】
樹脂(P−1)〜(P−158)の構造、組成比(モル比)、重量平均分子量、及び、分散度は、上記の通りである。
【0430】
樹脂(P’−1)〜(P’−6)の構造、組成比(モル比)、重量平均分子量、及び、分散度は、下記の通りである。
【0431】
【化87】
【0432】
<合成例4:樹脂(1)の合成>
窒素気流下、シクロヘキサノン8.6gを3つ口フラスコに入れ、これを80℃に加熱した。これに2−アダマンチルイソプロピルメタクリレート9.8g、ジヒドロキシアダマンチルメタクリレート4.4g、および、ノルボルナンラクトンメタクリレート8.9gと、モノマーに対し8mol%の重合開始剤V−601(和光純薬工業(株)製)とをシクロヘキサノン79gに溶解させた溶液を、6時間かけて滴下した。滴下終了後、更に80℃で2時間反応させた。反応液を放冷後、ヘキサン800m/酢酸エチル200mlの混合液に20分間かけて滴下し、析出した粉体をろ取した。次いで、粉体を乾燥させて、樹脂(1)を19g得た。得られた樹脂(1)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算で8800、分散度(Mw/Mn)は1.9であった。
樹脂(1)の合成と同様にして、以下に示す他の樹脂(A)を合成した。
【0433】
下記表4に、各樹脂における繰り返し単位のモル比率(構造式における左から順)、重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を示す。
【0434】
【化88】
【0435】
【化89】
【0436】
【化90】
【0437】
【表4】
【0438】
【表5】
【0439】
〔実施例1−A〜75−A、比較例1−A’〜4−A’(ArF液浸露光)〕
(1)レジスト組成物の調製及び塗布
シリコンウエハ上に有機反射防止膜形成用組成物ARC29SR(Brewer社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークすることにより膜厚98nmの反射防止膜を形成した。反射防止膜上に、下記表6〜8に示すレジスト組成物を塗布し、100℃(ただし、実施例60−A〜75−Aについては、下表9に記載の温度)で60秒間に亘ってベークすることにより膜厚90nmのレジスト膜を形成した。レジスト組成物は、固形分濃度4質量%の溶液を調製し、これを0.05μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターで濾過して得た。樹脂(C)及び樹脂(C’)は、下記表6〜8に記載の含有量(組成物の全固形分を基準とした質量%で表示)で使用した。
【0440】
(2)ArF露光及び現像
ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA1.20、C−Quad、アウターシグマ0.730、インナーシグマ0.630、XY偏向)を用い、線幅75nmの1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを通して露光した。液浸液としては超純水を使用した。その後120℃(ただし、実施例60−A〜75−Aについては、下表9に記載の温度)で、60秒間加熱した後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像し、純水でリンスした後、スピン乾燥してレジストパターンを得た。
【0441】
(3)レジストパターンの評価
走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて、得られたレジストパターンのスカム、現像欠陥および後退接触角(RCA)について評価した。結果を下表6〜8に示す。
【0442】
〔スカム(液浸欠陥)〕
線幅75nmのレジストパターンにおける現像残渣(スカム)を走査型電子顕微鏡(日立製S−9220)を用いて観察した。スカムの評価は、露光のスキャン速度を550mm/sとした場合と、700mm/sとした場合とにおいて、下記評価基準に基づいて行った。
A:スカムは全く見られない。
B:限界解像力付近の線幅においてスカムが見られた。
C:限界解像度よりも広い線幅においてスカムが見られた。
D:ほぼ全域にわたってスカムが見られた。
【0443】
〔現像欠陥〕
シリコンウエハ(12インチ口径)上に、上記のようにして形成したパターン(露光のスキャン速度は、700mm/sとした)について、欠陥検査装置KLA2360(ケー・エル・エー・テンコール社製)を用いて現像欠陥数を測定した。測定は、欠陥検査装置のピクセルサイズを0.16μmに設定し、また閾値を20に設定して、ランダムモードで行った。比較イメージとピクセル単位の重ね合わせによって生じる差異から抽出される現像欠陥を検出して、単位面積あたりの現像欠陥数(個/cm
2)を算出した。なお、1インチは、0.0254mである。現像欠陥数が0.5未満のものをA、0.5以上0.7未満のものをB、0.7以上1.0未満のものをC、1.0以上のものをDとした。現像欠陥数が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0444】
〔後退接触角(RCA)〕
シリコンウエハ(8インチ口径)上に、調製したレジスト組成物を塗布し、120℃で60秒間ベークすることにより、膜厚120nmのレジスト膜を形成した。接触角測定装置(協和界面科学社製)の拡張縮小法により、レジスト膜上における水滴の後退接触角を測定した。初期液滴サイズ35μLを6μL/秒の速度にて5秒間吸引し、吸引中の動的接触角が安定した値を後退接触角とした。測定環境は、23℃、相対湿度45%である。この後退接触角の数値が大きいほど、高速なスキャンスピードに対する水の追随性が高いことを示す。
【0445】
【表6】
【0446】
【表7】
【0447】
【表8】
【0448】
【表9】
【0449】
表6〜8における光酸発生剤、酸拡散制御剤(塩基性化合物等)、界面活性剤、及び溶剤は下記の通りである。
【0450】
〔光酸発生剤〕
【0451】
【化91】
【0452】
【化92】
【0453】
〔酸拡散制御剤(塩基性化合物等)〕
【0454】
【化93】
【0455】
【化94】
【0456】
【化95】
【0457】
〔界面活性剤〕
W−1:メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製、フッ素系)
W−2:メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製、フッ素及びシリコン系)
W−3:ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製、シリコン系)
W−4:トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)
W−5:PF656(OMNOVA社製、フッ素系)
W−6:PF6320(OMNOVA社製、フッ素系)
【0458】
〔溶剤〕
SL−1: シクロヘキサノン
SL−2: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA:1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)
SL−3: 乳酸エチル
SL−4: プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME:1−メトキシ−2−プロパノール)
SL−5: γ−ブチロラクトン
SL−6: プロピレンカーボネート
【0459】
表6〜8の結果から、樹脂(C)を含有する組成物を用いた実施例は、樹脂(C)を含有しない組成物を用いた比較例と比較して、露光装置に対する液浸液の高い追従性を有しながら、スカム(液浸欠陥)、及び、現像欠陥の性能評価に優れていた
。樹脂(C)を含有する組成物を用いた実施例における、液浸液の追随性は、露光のスキャン速度が高速(550mm/s)である場合だけでなく、超高速(700mm/s)である場合にも良好であった。
なお、実施例9−A、28−Aはそれぞれ、参考例9−A、28−Aに読み替えるものとする。
【0460】
〔実施例1−B〜6−B、比較例1−B’〜2−B’(EB露光)〕
(1)レジスト組成物の調製及び塗布
支持体として、酸化Crを蒸着した6インチシリコンウェハー(通常のフォトマスクブランクスに使用する遮蔽膜処理を施したもの)を準備した。表10に示す成分を溶剤に溶解させ、これを0.04μmの孔径を有するポリテトラフルオロエチレンフィルターで濾過してレジスト溶液を調製した。上記6インチウェハー上に、東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いてレジスト溶液を塗布し、110℃、90秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚50nmのレジスト膜を得た。すなわち、レジスト塗布マスクブランクスを得た。
1インチは25.4mmである。
【0461】
(2)EB露光及び現像
このレジスト膜に電子線描画装置((株)エリオニクス社製;ELS−7500、加速電圧50keV)を用いて、パターン照射を行った。照射後のレジスト膜を、110℃、90秒間ホットプレート上で加熱し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液に60秒間浸漬した。次いで、レジスト膜を30秒間、水でリンスし、乾燥することにより、レジストパターンを得た。
【0462】
(3)レジストパターンの評価
走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて、得られたレジストパターンのスカムについて評価した。結果を下表10に示す。
【0463】
〔スカム〕
線幅50nmの1:1ラインアンドスペースのレジストパターンを解像するときの露光量を感度とし、上記感度における孤立スペース(ライン:スペース=100:1)の解像力評価において、スカムを以下のように評価した。
A:スカムは全く見られない。
B:限界解像力付近の線幅においてスカムが見られた。
C:限界解像度よりも広い線幅においてスカムが見られた。
【0464】
【表10】
【0465】
表10における樹脂(E)、化合物(F)、酸拡散制御剤(塩基性化合物等)は下記の通りである。以下の樹脂の各繰り返し単位の組成比はモル比で示した。
【0466】
〔樹脂(E)〕
【0467】
【化96】
【0468】
〔化合物(F)〕
【0469】
【化97】
【0470】
〔酸拡散制御剤(塩基性化合物等)〕
【0471】
【化98】
【0472】
表10より、樹脂(C)を含有する組成物を用いた実施例は、樹脂(C)を含有しない組成物を用いた比較例と比較して、スカムを低減できた。
【0473】
〔実施例1−C〜5−C、比較例1−C’〜2−C’(EUV露光)〕
(1)レジスト組成物の調製及び塗布
HMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理を行ったシリコンウエハ上に、得られた各レジスト組成物を塗布し、120℃で60秒間ベークすることにより、膜厚50nmのレジスト膜を得た。
(2)EUV露光及び現像
このレジスト膜にEUV露光装置(ASML社製;NXE3300、レンズ開口数NA0.33、Dipole照明、σ=0.902/0.671)を用いて、パターン照射を行った。照射後のレジスト膜を、100℃、60秒間ホットプレート上で加熱し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液に60秒間浸漬した。次いで、レジスト膜を30秒間、水でリンスし、乾燥することにより、線幅20nmのレジストパターンを得た。
【0474】
(3)レジストパターンの評価
走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製CG−4100)を用いて、得られたレジストパターンのスカムについて評価した。結果を下表11に示す。
【0475】
〔スカム〕
線幅20nmの1:1ラインアンドスペースのレジストパターンを解像するときの露光量を感度とし、上記感度におけるライン(ライン:スペース=1:1)の解像力評価において、スカムを以下のように評価した。
A:スカムは全く見られない。
B:限界解像力付近の線幅においてスカムが見られた。
C:限界解像度よりも広い線幅においてスカムが見られた。
【0476】
【表11】
【0477】
表11における樹脂(E)、塩基性化合物は下記の通りである。以下の樹脂の各繰り返し単位の組成比はモル比で示した。
【0478】
〔樹脂(E)〕
【0479】
【化99】
【0480】
〔塩基性化合物〕
【0481】
【化100】
【0482】
表11より、樹脂(C)を含有する組成物を用いた実施例は、樹脂(C)を含有しない組成物を用いた比較例と比較して、スカムを低減できた。