特許第6796819号(P6796819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6796819
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】フッ素含有ブロック共重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 297/00 20060101AFI20201130BHJP
【FI】
   C08F297/00
【請求項の数】14
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2016-94040(P2016-94040)
(22)【出願日】2016年5月9日
(65)【公開番号】特開2017-203059(P2017-203059A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2019年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 祥太
(72)【発明者】
【氏名】足達 健二
(72)【発明者】
【氏名】青島 貞人
【審査官】 横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−140536(JP,A)
【文献】 特開平10−130348(JP,A)
【文献】 特開平04−227916(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/115380(WO,A1)
【文献】 特開2016−145304(JP,A)
【文献】 特開2017−008128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 293/00−297/08
C08F 283/00−283/14
C08F 290/00−290/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
[式中、
は、各出現において、それぞれ独立して、フルオロポリエーテル基を含有する構成単位
【化2】
を表す。
b1は、各出現において、それぞれ独立して、結合手、又はリンカーであり、及び
PFPEは、各出現において、それぞれ独立して、フルオロポリエーテル基である。PFPEの分子量は、800〜2000の範囲内である。
nfは、2〜50の範囲内の繰り返し数を表す。
は、結合手、又はリンカーを表す。
Qは、各出現において、それぞれ独立して、官能基Aを含有するフッ素非含有構成単位、又は官能基Aを含有しないフッ素非含有構成単位を表す。
n1は、1以上の繰り返し数を表す。
官能基Aは、ハロゲン原子、ビニル基、アリル基、ケイヒ酸基、ソルビン酸基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、(メタ)アクリロイル基、シランカップリング基、水酸基、エポキシ基、チオール基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アジド基、リン酸含有基、カルボキシル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、及びテトラゾリル基、又はこれらの前駆体基からなる群より選択される官能基である。E、及びEは、独立して、末端基を表す。]
で表されるフッ素含有ブロック共重合体。
【請求項2】
は、
【化3】
であり
は、各出現において、それぞれ独立して、−O−、−Ph−、−N(−R)−、又はカルバゾリレンであり、
は、各出現において、それぞれ独立して、有機基であり、
b1は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基であり、
b2は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、又は官能基Aを含有していてもよい有機基であり、及び
b3は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基である、
請求項1に記載のフッ素含有ブロック共重合体。
【請求項3】
b1は、式:−(OC2pna
[当該式中、
pは、各出現において、それぞれ独立して、0〜6の整数である。
naは、1〜1000である繰り返し数を表す。]
で表されるリンカーである、請求項2に記載のフッ素含有ブロック共重合体。
【請求項4】
b1は、−O−、−O−CH−、又は−O−CH−CH−O−CH−である、請求項3に記載のフッ素含有ブロック共重合体。
【請求項5】
PFPEは、式:−CFCF−(OCFCFCF−F[当該式中、nは繰り返し数を表す。)、−(OCF−(OCFCFF(当該式中、n、及びmは、それぞれ独立して、繰り返し数を表し、n、及びmの和は2以上である。]で表されるペルフルオロポリエーテル基である、請求項2〜4のいずれか1項に記載のフッ素含有ブロック共重体。
【請求項6】
は、−O−である、請求項2〜5のいずれか1項に記載のフッ素含有ブロック共重合体。
【請求項7】
b2は、
[1]アルキル基、又は
[2](メタ)アクリル基を含有する基である、請求項2〜6のいずれか1項に記載のフッ素含有ブロック共重合体。
【請求項8】
n1は、1〜1000の範囲内の繰り返し数である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のフッ素含有ブロック共重合体
【請求項9】
は、結合手である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のフッ素含有ブロック共重合体。
【請求項10】
2分子以上の請求項1〜9のいずれか1項に記載のフッ素含有ブロック共重合体を含有する超分子。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のフッ素含有ブロック共重合体の会合体である、請求項10に記載の超分子。
【請求項12】
2分子以上の請求項1〜9のいずれか1項に記載のフッ素含有ブロック共重合体が、−(Qnf−の側で会合している請求項11に記載の超分子。
【請求項13】
溶離液がクロロホルムであるGPCにて測定した分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.0〜1.2の範囲内である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の超分子。
【請求項14】
球状の形状を有する、請求項10〜13のいずれか1項に記載の超分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素含有ブロック共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タッチパネル等のように、ディスプレイ装置の表面に指で触れて操作する機器が用いられている。このようなディスプレイ装置の表面は、通常、ガラス又は非晶質の合成樹脂(例、アクリル樹脂)等の材料で構成されている。しかし、このような材料は撥油性を有さないので、ディスプレイ装置の表面に指の油脂が付着して、ディスプレイの視認性が低下するという問題がある。
このため、油脂付着防止の目的で、撥油性に優れる含フッ素化合物、特にペルフルオロポリエーテル基を含有する含フッ素化合物が、ディスプレイ表面の撥油性コーティング剤として、用いられている(特許文献1〜3)。
このような含フッ素化合物は、汎用溶剤(フッ素非含有有機溶媒)への溶解性が低いので、ディスプレイ表面に塗工する場合には、高価なフッ素含有有機溶媒に溶解させる必要がある。
しかし、近年、タブレット又はスレートコンピューターの普及により、指で触れて操作するディスプレイ表面の面積が大きくなり、そのコーティングに必要な含フッ素化合物及び高価な含フッ素溶剤の使用量も増加している。
このため、フッ素を含有せず、安価な汎用溶剤への溶解性が高い含フッ素化合物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−157582号公報
【特許文献2】特開平9−157388号公報
【特許文献3】国際公開第2003/002628号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、従来の、撥油性に優れる含フッ素化合物は、汎用溶剤(フッ素非含有有機溶媒)への溶解性が低く、一方、従来の、汎用溶剤への溶解性が高い含フッ素化合物は、撥油性が低いという問題があった。
【0005】
従って、本発明は、優れた撥油性及び/又は撥水性と、汎用溶剤(フッ素非含有有機溶媒)への高い溶解性とを兼ね備えるフッ素含有ブロック共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、式(1):
【化1】
[式中、
は、各出現において、それぞれ独立して、フルオロポリエーテル基を含有する構成単位を表す。
nfは、1以上の繰り返し数を表す。
は、結合手、又はリンカーを表す。
Qは、各出現において、それぞれ独立して、官能基Aを含有するフッ素非含有構成単位、又は官能基Aを含有しないフッ素非含有構成単位を表す。
n1は、1以上の繰り返し数を表す。
官能基Aは、ハロゲン原子、ビニル基、アリル基、ケイヒ酸基、ソルビン酸基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、(メタ)アクリロイル基、シランカップリング基、水酸基、エポキシ基、チオール基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アジド基、リン酸含有基、カルボキシル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、及びテトラゾリル基、又はこれらの前駆体基からなる群より選択される官能基である。E、及びEは、独立して、末端基を表す。]
で表されるフッ素含有ブロック共重合体が、優れた撥油及び撥水性と、汎用溶剤(フッ素非含有有機溶媒)への高い溶解性とを兼ね備えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、次の態様を含む。
【0008】
項1.
式(1):
【化2】
[式中、
は、各出現において、それぞれ独立して、フルオロポリエーテル基を含有する構成単位を表す。
nfは、1以上の繰り返し数を表す。
は、結合手、又はリンカーを表す。
Qは、各出現において、それぞれ独立して、官能基Aを含有するフッ素非含有構成単位、又は官能基Aを含有しないフッ素非含有構成単位を表す。
n1は、1以上の繰り返し数を表す。
官能基Aは、ハロゲン原子、ビニル基、アリル基、ケイヒ酸基、ソルビン酸基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、(メタ)アクリロイル基、シランカップリング基、水酸基、エポキシ基、チオール基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アジド基、リン酸含有基、カルボキシル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、及びテトラゾリル基、又はこれらの前駆体基からなる群より選択される官能基である。E、及びEは、独立して、末端基を表す。]
で表されるフッ素含有ブロック共重合体。
項2.
は、
【化3】
であり、及び
Qは、
【化4】
であり、
b1は、各出現において、それぞれ独立して、結合手、又はリンカーであり、
PFPEは、各出現において、それぞれ独立して、フルオロポリエーテル基であり、
は、各出現において、それぞれ独立して、−O−、−Ph−、−N(−R)−、又はカルバゾリレンであり、
は、各出現において、それぞれ独立して、有機基であり、
b1は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基であり、
b2は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、又は官能基Aを含有していてもよい有機基であり、及び
b3は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基である、
項1に記載のフッ素含有ブロック共重合体。
項3.
b1は、式:−(OC2pna
[当該式中、
pは、各出現において、それぞれ独立して、0〜6の整数である。
naは、1〜1000である繰り返し数を表す。]
で表されるリンカーである、項2に記載のフッ素含有ブロック共重合体。
項4.
b1は、−O−、−O−CH−、又は−O−CH−CH−O−CH−である、項3に記載のフッ素含有ブロック共重合体。
項5.
PFPEは、式:−CFCF−(OCFCFCF−F[当該式中、nは繰り返し数を表す。)、−(OCF−(OCFCFF(当該式中、n、及びmは、それぞれ独立して、繰り返し数を表す。]で表されるペルフルオロポリエーテル基である、項2〜4のいずれか1項に記載のフッ素含有ブロック共重体。
項6.
は、−O−である、項2〜5のいずれか1項に記載のフッ素含有ブロック共重合体。
項7.
b2は、
[1]アルキル基、又は
[2](メタ)アクリル基を含有する基である、項2〜6のいずれか1項に記載のフッ素含有ブロック共重合体。
項8.
n1は、1〜1000の範囲内の繰り返し数である、項1〜7のいずれか1項に記載のフッ素含有ブロック共重合体。
合体。
項8.
nfは、2〜50の範囲内の繰り返し数である、項1〜7のいずれか1項に記載のフッ素含有ブロック共重合体。
項9.
は、結合手である、項1〜8のいずれか1項に記載のフッ素含有ブロック共重合体。
項10.
2分子以上の項1〜9のいずれか1項に記載のフッ素含有ブロック共重合体を含有する超分子。
項11.
項1〜9のいずれか1項に記載のフッ素含有ブロック共重合体の会合体である、項10に記載の超分子。
項12.
2分子以上の項1〜9のいずれか1項に記載のフッ素含有ブロック共重合体が、−(Qnf−の側で会合している項11に記載の超分子。
項13.
溶離液がクロロホルムであるGPCにて測定した分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.0〜1.2の範囲内である、項10〜12のいずれか1項に記載の超分子。
項14.
球状の形状を有する、項10〜13のいずれか1項に記載の超分子。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフッ素含有ブロック共重合体は、優れた撥油性及び/又は撥水性と、汎用溶剤(フッ素非含有有機溶媒)への高い溶解性とを兼ね備え、撥油性及び/又は撥水性コーティング剤として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.用語
【0011】
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本発明が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
【0012】
本明細書中、特に記載が無い限り、数値範囲を表す記号「〜」は、その両端の数値が前記数値範囲に含まれることを意図して用いられる。
【0013】
念のために説明するに過ぎないが、本明細書中、「繰り返し数」は、1であってもよい。すなわち、繰り返し数を付加された構成単位は、必ずしも繰り返して出現しなくても良い。
【0014】
本明細書中、「結合すること」は、共有結合すること、イオン結合すること、静電結合すること、及び吸着することを包含する。
本明細書中、用語「反応性」(reactivity)は、「吸着性」(adsorptivity)を包含することを意図して用いられ得る。
本明細書中、用語「反応性(の)」(reactive)は、「吸着性(の)」(adsorptive)を包含することを意図して用いられ得る。
【0015】
本明細書中、接尾語「フルオロ」は、通常理解される通り、炭素原子に結合している1個以上の水素原子がフッ素原子に置換されていることを意味することができる。
本明細書中、接尾語「ペルフルオロ」は、通常理解される通り、炭素原子に結合している全ての水素原子がフッ素原子に置換されていることを意味することができる。すなわち、「フルオロ」は、「ペルフルオロ」を包含する。本明細書中、特に記載の無い場合、「フルオロ」の好適な例は、「ペルフルオロ」を包含する。
【0016】
本明細書中、特に記載が無い限り、「ペルフルオロポリエーテル基」とは、1個以上の炭素−炭素結合にエーテル性酸素原子が挿入されたペルフルオロアルキル基を意味する。本明細書中、ペルフルオロポリエーテル基を、略号:PFPEで表す場合がある。
【0017】
本明細書中、特に記載が無い限り、「ペルフルオロアルキル基」としては、例えば、炭素数1〜12(好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3のペルフルオロアルキル基が挙げられる。
当該「ペルフルオロアルキル基」は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよいが、好ましくは、直鎖状である。
また、当該「ペルフルオロアルキル基」は、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基であってもよく、アルキル基の末端の1個の水素原子以外の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基であってもよいが、特に記載の無い限り、好ましくは、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基である。
【0018】
本明細書中、「ペルフルオロアルキレン鎖」は、アルキレン鎖の全ての水素原子がフッ素原子で置換された基である。特に記載が無い限り、「ペルフルオロアルキレン鎖」としては、例えば、炭素数1〜12(好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3のペルフルオロアルキレン鎖が挙げられる。
当該「ペルフルオロアルキレン鎖」は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよいが、好ましくは、直鎖状である。
【0019】
本明細書中、ペルフルオロポリエーテル基の例は、鎖((α1−3β1−3)を有する基[ここで、当該鎖((α1−3β1−3)は、2個以上の構成単位(α1−3β1−3)が連結している鎖であり、及び当該構成単位(α1−3β1−3)は、炭素数1〜2のオキシペルフルオロアルキレン基の少なくとも1種からなる基(α)の1〜3個と、炭素数3〜6のオキシペルフルオロアルキレン基の少なくとも1種からなる基(β)の1〜3個とを有する構成単位である。]を包含する。
【0020】
前記構成単位(α1−3β1−3)中の基(α)及び基(β)の順は特に限定されない。例えば、基(α)が2個存在する場合、2個の基(α)は、直接結合していてもよく、少なくとも1個の基(β)を介して連結していてもよい。
【0021】
前記構成単位(α1−3β1−3)の一方の端部が基(α)であり、他方の端部が基(β)である場合、前記鎖((α1−3β1−3)においては、2個以上の構成単位(α1−3β1−3)が、当該構成単位間で基(α)と基(β)とが交互に配置されるように連結していること、言い換えると、隣接する2個以上の構成単位(α1−3β1−3)が頭−尾構造(ヘッド ツー テイル構造)を構成するように結合していることが好ましい。
【0022】
このペルフルオロポリエーテル基の好ましい態様は、具体的には、下式(A)で表される。
【0023】
Rf−O−[(RfO)x1(RfO)x2(RfO)x3(RfO)x4(RfO)x5(RfO)x6−β ・・・(A)
【0024】
ここで、式(A)中の記号は以下の通りである。
nは、2以上の整数である。
x1、及びx2は、それぞれ独立して0〜3の整数であり;且つx1及びx2の合計は1〜3の整数である。
x3、x4、x5、及びx6は、それぞれ独立して0〜3の整数であり:且つx3、x4、x5、及びx6の合計は、1〜3の整数である。
Rfは、炭素数1のペルフルオロアルキレン基である。
Rfは、炭素数2のペルフルオロアルキレン基である。
Rfは、炭素数3のペルフルオロアルキレン基である。
Rfは、炭素数4のペルフルオロアルキレン基である。
Rfは、炭素数5のペルフルオロアルキレン基である。
Rfは、炭素数6のペルフルオロアルキレン基である。
【0025】
Rfは、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基、又はエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜6のペルフルオロアルキル基である。
【0026】
nは、1以上の整数である。nの上限は45が好ましい。nは、4〜40が好ましく、5〜35が特に好ましい。
【0027】
構成単位(αβ)において、基(α)及び基(β)の結合順序は限定されない。すなわち、基(α)及び基(β)がランダムに配置されてもよく、基(α)及び基(β)が交互に配置されてもよく、複数の同じ基からなるブロックの2以上が連結してもよい。
【0028】
単位(αβ)としては、下記:
(CFCFO−CFCFCFO)、
(CFCFO−CFCFCFCFO)、
(CFCFO−CFCFCFOCFCFCFO)、
(CFCFO−CFCF(CF)OCFCFCFO)、及び
(CFCFO−CFCFCFCFOCF(CF)CFO)
が例示される。
【0029】
「ペルフルオロポリエーテル基」は、好ましくは、
式:−(C2pO)na
[式中、
pは、各出現において、それぞれ独立して、1〜6の整数である。
naは、繰り返し数を表す。]
で表される部分を有する。
【0030】
式:C2pOで表される部分は、na回の繰り返しにおいて、それぞれ独立、言い換えると、同一又は異なっていてもよい。
【0031】
naで表される繰り返し数は、1〜1000である。なお、naで表される繰り返し数は、フッ素含有ブロック共重合体における数平均値であり得る。
【0032】
「ペルフルオロポリエーテル基を含有する基」は、好ましくは、次の式(a1)で表される基である。
【0033】
式:Xra−(C2pO)na−Yra−L− (a1)
[式中、
raは、フッ素、又はRf−O−(Rfは、炭素数1〜8のペルフルオロアルキル基を表す。)を表す。
pは、各出現において、それぞれ独立して、1〜6の整数を表す。
naは、1〜1000である繰り返し数を表す。
raは、炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン鎖を表す。
は、リンカーを表す。]
【0034】
以下に、前記式(a1)中の記号を説明する。
【0035】
raは、好ましくは、フッ素、又はCF−O−である。
【0036】
pは、各出現において、それぞれ独立して、好ましくは、2〜3の整数である。
【0037】
式:(C2pO)naで表される部分は、好ましくは、−CF−CF−CF−O−、−CF(−CF)−CF−O−、−CF−O−、−CF−CF−O−、及び−CF(−CF)−O−からなる群より選択される1種以上の構成単位からなる。
【0038】
naは、好ましくは1〜500、より好ましくは5〜150である。
【0039】
raは、好ましくは、式:
−(CFfa−CF(−Z)−(CFga
[式中、
fa、及びgaは、それぞれ独立して、0以上の整数である繰り返し数を表す。かつ、fa、及びgaの合計は0〜5の整数である。
は、フッ素、又は−CFを表す。]
で表される基であり、より好ましくは、−CF−、−CF−CF−、又は−CF(−CF)−である。
【0040】
式:−(C2pO)na−で表される部分において好ましくは、
(1)式:(C2pO)naで表される部分は、−CF−CF−CF−O−からなり、かつ
naは、1〜1000、好ましくは5〜100の繰り返し数であるか;
(2)式:(C2pO)naで表される部分は、−CF−O−、及び−CF−CF−O−からなり、かつ
naは、2〜1000、好ましくは5〜150の繰り返し数であるか;
(3)式:(C2pO)naで表される部分は、−CF(−CF)−CF−O−からなり、かつ
naは、1〜1000、好ましくは5〜100の繰り返し数であるか;又は
(4)式:(C2pO)naで表される部分は、−CF(−CF)−CF−O−及び−CF−O−からなり、かつ
naは、2〜1000、好ましくは5〜150の繰り返し数である。
【0041】
式:Xra−(C2pO)na−Yra−で表される部分は、好ましくは、
(1)Xraは、フッ素、又はRf−O−(Rfは、炭素数1〜8のペルフルオロアルキル基)、好ましくは、フッ素であり、
式:(C2pO)naで表される部分は、−CF−CF−CF−O−からなり、
naは、1〜1000、好ましくは5〜100の繰り返し数であり、かつ
raは、−CF−CF−であるか;
(2)Xraは、フッ素、又はRf−O−(Rfは、炭素数1〜8のペルフルオロアルキル基)、好ましくは、CF−O−であり、
式:(C2pO)naで表される部分は、−CF−O−、及び−CF−CF−O−からなり、
naは、2〜1000、好ましくは5〜150の繰り返し数であり、かつ
raは、−CF−であるか;
(3)Xraは、フッ素、又はRf−O−(Rfは、炭素数1〜8のペルフルオロアルキル基)、好ましくは、CF−O−であり、
式:(C2pO)naで表される部分は、−CF(−CF)−CF−O−からなり、
naは、1〜1000、好ましくは5〜100の繰り返し数であり、かつ
raは、−CF(−CF)−であるか;又は
(4)Xraは、フッ素、又はRf−O−(Rfは、炭素数1〜8のペルフルオロアルキル基)、好ましくは、CF−O−であり、
式:(C2pO)naで表される部分は、−CF(−CF)−CF−O−、及び−CF−O−からなり、
naは、2〜1000、好ましくは5〜150の繰り返し数であり、かつ
raは、−CF−である。
【0042】
は、好ましくは、単結合、又は主鎖の原子数が1〜6(より好ましくは1〜5、2〜5、1〜4、又は2〜4)であるリンカーである。
このようなリンカーとしては、例えば、単結合、−CH−、−CH−O−、−CH−O−CH−、−O−CH−CH−、−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−CH−O−C(=O)−、及び−CH−(O−CH−CHnk1−(nk1は1〜10である。)が挙げられる。
なかでも、好ましくは、−CH−O−CH−CH−、又は−CH−である。ここで、好ましくは、これらの部分構造の記載の左端の原子がペルフルオロポリエーテル基に結合する。
【0043】
前記「ペルフルオロポリエーテル基を含有する基」は、特に好ましくは、
(1)式(a1)において、
raは、フッ素であり、
式:(C2pO)naで表される部分は、−CF−CF−CF−O−からなり、
naは、1〜1000、好ましくは5〜100の繰り返し数であり、
raは、−CF−CF−であり、かつ
は、−CH−O−CH−CH−である基;
(2)式(a1)において、
raは、CF−O−であり、
式:(C2pO)naで表される部分は、−CF−O−、及び−CF−CF−O−からなり、
naは、1〜1000、好ましくは5〜150の繰り返し数であり、
raは、−CF−であり、かつ
は、−CH−O−CH−CH−である基;
(3)式(a1)において、
raは、CF−O−であり、
式:(C2pO)naで表される部分は、−CF(−CF)−CF−O−からなり、
naは、1〜1000、好ましくは5〜100の繰り返し数であり、
raは、−CF(−CF)−であり、かつ
は、−CH−O−CH−CH−である基;
(4)式(a1)において、
raは、CF−O−であり、
式:(C2pO)naで表される部分は、−CF(−CF)−CF−O−及び−CF−O−からなり、
naは、1〜1000、好ましくは5〜150の繰り返し数であり、
raは、−CF−であり、かつ
は、−CH−O−CH−CH−である基;
(5)式(a1)において、
raは、フッ素であり、
式:(C2pO)naで表される部分は、−CF−CF−CF−O−からなり、
naは、1〜1000、好ましくは5〜100の繰り返し数であり、
raは、−CF−CF−であり、かつ
は、−CH−である基;
(6)式(a1)において、
raは、CF−O−であり、
式:(C2pO)naで表される部分は、−CF−O−、及び−CF−CF−O−からなり、
naは、1〜1000、好ましくは5〜150の繰り返し数であり、
raは、−CF−であり、かつ
は、−CH−である基;
(7)式(a1)において、
raは、CF−O−であり、
式:(C2pO)naで表される部分は、−CF(−CF)−CF−O−からなり、
naは、1〜1000、好ましくは5〜100の繰り返し数であり、
raは、−CF(−CF)−であり、かつ
は、−CH−である基;又は
(8)式(a1)において、
raは、CF−O−であり、
式:(C2pO)naで表される部分は、−CF(−CF)−CF−O−及び−CF−O−からなり、
naは、1〜1000、好ましくは5〜150の繰り返し数であり、
raは、−CF−であり、かつ
は、−CH−である基
である。
【0044】
本明細書中、特に記載が無い限り、「アルキル基」としては、例えば、炭素数1〜12(好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3、更に好ましくは1)のアルキル基(例、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基)が挙げられる。当該「アルキル基」は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよいが、好ましくは、直鎖状である。
【0045】
本明細書中、特に記載が無い限り、「アルキレン鎖」としては、例えば、炭素数1〜12(好ましくは1〜6;より好ましくは1、2、又は3)の、直鎖状、又は分枝鎖状のアルキレン鎖が挙げられる。
【0046】
本明細書中、特に記載が無い限り、「アルカノイル基」としては、例えば、炭素数2〜13(好ましくは2〜7、より好ましくは2〜4、更に好ましくは2)のアルカノイル基が挙げられる。
「アルカノイル基」は、一般式:RCO−(Rは、アルキル基を表す。)で表される基である。
当該「アルカノイル基」は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよいが、好ましくは、直鎖状である。
【0047】
本明細書中、特に記載が無い限り、「シランカップリング基」としては、例えば、
(a)式:Si(−R(−OR3−m
[式中、
は、アルキル基を表す。及び
mは、0〜2の整数を表す。]
で表されるアルコキシシラン基(シリルエーテル基);
(b)式:Si(−R(−OCOR3−m
[式中、
は、アルキル基を表す。及び
mは、0〜2の整数を表す。]
で表されるアルキルカルボキシルシラン基;
(c)式:Si(−R(−X)3−m
[式中、
Xは、ハロゲン原子を表す。
は、アルキル基を表す。及び
mは、0〜2の整数を表す。]
で表されるハロゲン化シラン基;及び
(d)式:Si(−R(−R3−m
[式中、
は、−NR又は−NHRを表す
は、アルキル基を表す。及び
mは、0〜2の整数を表す。]
で表されるシラザン基が挙げられる。本明細書中、かかるシランカップリング基を、単にZ−で表す場合がある。
【0048】
本明細書中、「有機基」は炭素を含有する基を意味する。
【0049】
2.フッ素含有ブロック共重合体
【0050】
本発明のフッ素含有ブロック共重合体は、
式(1):
【化5】
[式中、
は、各出現において、それぞれ独立して、フルオロポリエーテル基を含有する構成単位を表す。
nfは、1以上の繰り返し数を表す。
は、結合手、又はリンカーを表す。
Qは、各出現において、それぞれ独立して、官能基Aを含有するフッ素非含有構成単位、又は官能基Aを含有しないフッ素非含有構成単位を表す。
n1は、1以上の繰り返し数を表す。
官能基Aは、ハロゲン原子、ビニル基、アリル基、ケイヒ酸基、ソルビン酸基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、(メタ)アクリロイル基、シランカップリング基、水酸基、エポキシ基、チオール基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アジド基、リン酸含有基、カルボキシル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、及びテトラゾリル基、又はこれらの前駆体基からなる群より選択される官能基である。E、及びEは、独立して、末端基を表す。]
で表される化合物である。
【0051】
以下に、式(1)中の記号を説明する。
【0052】
好ましくは、Qは、
【化6】
である。
b1は、各出現において、それぞれ独立して、結合手、又はリンカーであり、及び
PFPEは、各出現において、それぞれ独立して、フルオロポリエーテル基である。
【0053】
b1は、好ましくは、式:−(OC2pna
[当該式中、
pは、各出現において、それぞれ独立して0〜6の整数である。
naは、繰り返し数(例、1〜1000、1〜100、1〜10、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、3、2、又は1である繰り返し数)を表す。]
で表されるリンカーである。
【0054】
b1は、より好ましくは−O−、−O−CH−、又は−O−CH−CH−O−CH−である。
【0055】
PFPEで表される「フルオロポリエーテル基」は、好ましくはペルフルオロポリエーテル基である。
PFPEで表される「フルオロポリエーテル基」は、例えば、
式:−(OC2p
[当該式中、pは、各出現において、それぞれ独立して、1〜6の整数である。
naは、繰り返し数(例、1〜1000、1〜100、1〜10、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、3、2、又は1である繰り返し数)を表す。]
で表されるペルフルオロポリエーテル基である。
PFPEで表される「フルオロポリエーテル基」は、好ましくは、例えば、式:−CFCF−(OCFCFCF−F[当該式中、nは繰り返し数(例、1〜1000、1〜100、1〜10、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、3、2、又は1である繰り返し数)を表す。)、−(OCF−(OCFCFF[当該式中、n、及びmは、それぞれ独立して、繰り返し数(例、1〜1000、1〜100、1〜10、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、3、2、又は1である繰り返し数)を表す。]で表されるペルフルオロポリエーテル基である
PFPEで表される「フルオロポリエーテル基」の数平均分子量の下限は、高い撥油性及び撥水性を得る観点からは、好ましくは約300、より好ましくは約500、約800、又は約1000である。
【0056】
当該「フルオロポリエーテル基」の数平均分子量の上限は、汎用溶剤(フッ素非含有有機溶媒)への高い溶解性を得る観点からは、好ましくは約100,000、より好ましくは約50,000、更に好ましくは、約10,000、約4000、約3000、約2500、約2000、又は約1500である。
【0057】
PFPEは、好ましくは式:−CFCF−(OCFCFCF−F[当該式中、nは繰り返し数を表す。)、−(OCF−(OCFCFF(当該式中、n、及びmは、それぞれ独立して、繰り返し数を表す。]で表されるペルフルオロポリエーテル基である。
【0058】
nfは、好ましくは2〜50、3〜30、5〜20、又は5〜15である。
【0059】
好ましくは、Qは、
【化7】
である。
は、各出現において、それぞれ独立して、−O−、−Ph−、−N(−R)−、又はカルバゾリレンであり、
は、各出現において、それぞれ独立して、有機基であり、
b1は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基であり、
b2は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、又は官能基Aを含有していてもよい有機基であり、及び
b3は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基である。
【0060】
は、好ましくは−O−である。
【0061】
b2は、好ましくは
[1]アルキル基、又は
[2](メタ)アクリル基を含有する基であり、及び
より好ましくはアルキル基である。
【0062】
n1は、好ましくは1〜1000の範囲内の繰り返し数である。
合体。
【0063】
nfは、好ましくは2〜50の範囲内の繰り返し数である。
【0064】
Qは、各出現において、それぞれ独立して、官能基Aを含有する構成単位(以下、構成単位Qと称する場合がある。)、又は官能基Aを含有しない構成単位(以下、構成単位Qと称する場合がある。)を表す。
【0065】
n1は、Qで表される構成単位の繰り返し数であり、1以上の整数である。
n1は、好ましくは1以上、2以上、3以上、4以上、又は5以上である。
n1は、好ましくは1000以下、500以下、300以下、又は200以下である。
n1は、好ましくは1〜1000、2〜500、3〜300、又は5〜200である。
【0066】
構成単位Qの繰り返し数は、好ましくは0、1以上、2以上、3以上、又は4以上である。
構成単位Qの繰り返し数は、好ましくは1000以下、500以下、300以下、200以下、150以下、又は100以下である。
構成単位Qの繰り返し数は、好ましくは1〜1000、2〜500、3〜300、2〜200、3〜150、又は4〜100である。
【0067】
構成単位Qの繰り返し数は、好ましくは2以上、3以上、又は4以上である。
構成単位Qの繰り返し数は、好ましくは1000以下、500以下、300以下、200以下、150以下、又は100以下である。
構成単位Qの繰り返し数は、好ましくは1〜1000、2〜500、3〜300、2〜200、3〜150、又は4〜100である。
【0068】
式(1)中の式:
【化8】
で表される部分は、構成単位Qのみから構成されていてもよく、構成単位Qのみから構成されていてもよく、又は構成単位Qと構成単位Qとから構成されていてもよい。
【0069】
構成単位Qと構成単位Qとは、それぞれがブロックを形成していてもよく、ランダムに結合していてもよい。
【0070】
Qは、好ましくは、式:
【化9】
で表される構成単位である。
【0071】
b1は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表す。
b1は、好ましくは水素原子である。
【0072】
b2は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、又は官能基Aを含有していてもよい有機基を表す。
【0073】
すなわち、Rb2は、n1回の出現において、それぞれ独立して、水素原子、官能基Aを含有する有機基、又は官能基Aを含有しない有機基である。
【0074】
以下、Rb2が官能基Aを含有する有機基である、式:
【化10】
で表される構成単位を構成単位Bと略称する場合がある。
【0075】
一方、以下、Rb2が水素原子、又は官能基Aを含有しない有機基である、式:
【化11】
で表される構成単位を、構成単位Mと略称する場合がある。
【0076】
b2で表される「官能基Aを含有する有機基」は、好ましくは、官能基Aがリンカーを介して、又は直接Xに結合する基である。
【0077】
b2で表される「官能基Aを含有する有機基」における官能基Aは、ハロゲン原子、ビニル基、アリル基、ケイヒ酸基、ソルビン酸基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、(メタ)アクリロイル基、シランカップリング基、水酸基、エポキシ基、チオール基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アジド基、リン酸含有基、カルボキシル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、及びテトラゾリル基、又はこれらの前駆体基からなる群より選択される官能基である。
【0078】
官能基Aの好適な具体例は、本発明のフッ素含有ブロック共重合体が結合する対象である物質によって異なる。本明細書中、この「物質」を物質Bと称する場合がある。当業者が容易に理解する通り、物質Bは、物質B以外の物質と共存していてもよい。
物質Bの例は、化合物、及び金属を包含する。
本明細書中、本発明のフッ素含有ブロック共重合体が結合する対象である化合物を化合物Bと称する場合がある。
本発明のフッ素含有ブロック共重合体が結合する対象である金属を金属Bと称する場合がある。
化合物B、及び金属Bは、物質Bの一部、又は全部であることができる。
【0079】
物質Bは、好ましくは、例えば、官能基Aに反応的な官能基を有する化合物、或いは当該化合物を含有する物質である。
官能基Aと物質Bとの組み合わせの好適な例は、以下の組み合わせを包含する。
【0080】
組み合わせ1
官能基Aが、水酸基であり;且つ
物質Bが、
(1)水酸基、フェノキシ基、イソシアネート基、エポキシ基、アクリル基、カルボキシル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、アジリジニル基、オキセタニル基、カーボネート基、環状エステル基、環状アミド基、トシル基、メシル基、トリフラート基、及びリン酸含有基からなる群より選択される1種、若しくは2種以上の官能基を有する化合物、
(1)スルホン酸フッ化物、
(1)酸無水物
(1)酸ハライド、及び
(1)金属(例、銅、アルミニウム、鉄、マグネシウム、ニッケル)、若しくはこれに対応する金属酸化物
からなる群より選択される1種、又は2種以上の化合物、或いは
これを含有する物質である
組み合わせ
【0081】
組み合わせ2
官能基Aが、エポキシ基であり;且つ
物質Bが、
(1)水酸基、フェノキシ基、チオ基、アミノ基、カルボシリル基、カルボボリル基、イソシアネート基、エポキシ基、アクリル基、カルボキシル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、アジリジニル基、オキセタニル基、カーボネート基、環状エステル基、環状アミド基、トシル基、メシル基、トリフラート基、及びリン酸含有基からなる群より選択される1種、若しくは2種以上の官能基を有する化合物、
(1)スルホン酸フッ化物、
(1)酸無水物、
(1)酸ハライド、又は
(1)メルドラム酸、若しくはその誘導体からなる群より選択される1種、又は2種以上の化合物、或いは
これを含有する物質である
組み合わせ
【0082】
組み合わせ3
官能基Aが、アミノ基であり;且つ
物質Bが、
(1)イソシアネート基、エポキシ基、アクリル基、カルボキシル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、アジリジニル基、オキセタニル基、カーボネート基、環状エステル基、環状アミド基、トシル基、メシル基、トリフラート基、リン酸含有基、及びアミド基からなる群より選択される1種、若しくは2種以上の官能基を有する化合物、
(1)スルホン酸フッ化物、
(1)酸無水物、
(1)酸ハライド、及び
(1)金属(例、銅、アルミニウム、鉄、マグネシウム、ニッケル)、若しくはこれに対応する金属酸化物
からなる群より選択される1種、又は2種以上の化合物、或いは
これを含有する物質である
組み合わせ
【0083】
組み合わせ4
官能基Aが、水酸基、チオール基、アミノ基、リン酸含有基、カルボキシル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、及びテトラゾリル基、並びにこれらの誘導基(例、ベンゾトリアゾリル基)からなる群より選択される官能基であり;且つ
物質Bが、金属(例、銅、アルミニウム、鉄、マグネシウム、ニッケル)、若しくはこれに対応する金属酸化物、或いは
これを含有する物質である
組み合わせ
【0084】
組み合わせ5
官能基Aが、アリル基、ケイヒ酸基、ソルビン酸基、又はCH=CR−C(=O)−(Rは、水素、メチル基、塩素、又はフッ素を表す。)(例、(メタ)アクリロイル基)であり、より好ましくは、(メタ)アクリロイル基であり;及び物質Bが当該材料が非晶質の合成樹脂(例、アクリル樹脂)である組み合わせ
【0085】
組み合わせ6
官能基Aが、シランカップリング基(より好ましくはシラザン基)であり;及び物質Bがガラスである組み合わせ
【0086】
本明細書中、「リン酸含有基」の例は、
リン酸エステル基[−O−P(=O)(−OR)、−P(=O)(−OR)]、
リン酸基[−O−P(=O)(−OH)、−P(=O)(−OH)]、及び
リン酸クロリド基[−O−P(=O)(−Cl)、−P(=O)(−Cl)
(これらの式中、Rは、有機基を表す。)
を包含する。
【0087】
前記「リンカー」は、好ましくは、主鎖の原子数が1〜16(より好ましくは2〜12、更に好ましくは4〜10)であるリンカーである。
【0088】
例えば、当該「官能基A」がアリル基、ケイヒ酸基、ソルビン酸基又は(メタ)アクリロイル基である場合、当該「リンカー」は、好ましくは、
(a) −(CH−CH−O)−(nは、2〜10の整数を表す。)、
(b) −(CHR−O−、若しくは−(CHR−O−(CHR−O−(nは、各出現において、それぞれ独立して、1〜40の整数である繰り返し数を表す。Rは、それぞれ独立して、水素、又はメチル基を表す。)、
(c) −(CH−CH−O)−CO−NH−CH−CH−O−(nは、2〜10の整数を表す。)、
(d) −CH−CH−O−CH−CH
(e) −(CH−(nは1〜6の整数を表す。)、又は
(f) −(CHnk1−O−CONH−(CHnk2−(nk1は1〜8の整数、好ましくは、2、又は4を表す。nk2は1〜6の整数、好ましくは3を表す。)、又は
(g) −O−(但し、Xは−O−ではない)
であり、より好ましくは、−CH−CH−O−CH−CH−O−、又は−CH−CH−O−である。
【0089】
また、例えば、当該「官能基A」がシランカップリング基である場合、当該「リンカー」は、好ましくは、
−(CH−(nは1〜6の整数である)、又は
−(CHnk1−O−CONH−(CHnk2−(nk1は1〜8の整数を表す。nk2は1〜6の整数を表す。)であり、より好ましくは、−(CH−、又は−(CH−である。
【0090】
b2で表される「官能基Aを含有しない有機基」は、例えば、後記の基Rがリンカーを介して、又は直接Xに結合する基である。
当該リンカーは、好ましくは、
(a) −(CH−CH−O)−(nは、2〜10の整数を表す。)、
(b) −(CHR−O−、若しくは−(CHR−O−(CHR−O−(nは、各出現において、それぞれ独立して、1〜40の整数である繰り返し数を表す。Rは、各出現において、それぞれ独立して、水素、又はメチル基を表す。)、
(c) −(CH−CH−O)−CO−NH−CH−CH−O−(nは、2〜10の整数を表す。)、
(d) −CH−CH−O−CH−CH−、
(e) −(CH−(nは1〜6の整数を表す。)、又は
(f) −(CHnk1−O−CONH−(CHnk2−(nk1は1〜8の整数、好ましくは、2、又は4を表す。nk2は1〜6の整数、好ましくは3を表す。)、又は
(g) −O−(但し、Xは−O−ではない)
である。
【0091】
は、好ましくは以下の基である。
【0092】
(i)アルキル基
例:メチル、エチル
【0093】
(ii)フッ素で置換されたアルキル基を含有する鎖状基
例:
【化12】
【化13】
【0094】
(iii)単環式炭素環、二環式炭素環、三環式炭素環、及び四環式炭素環からなる群より選択される1個以上の環状部を含有する基
例:
【化14】
【0095】
(iv)1個以上(好ましくは1又は2個)のカルボキシ基で置換された炭化水素基を含有する基
例:
【化15】
【0096】
(v)1個以上(好ましくは1個)のアミノ基を含有する基
【0097】
(vi)水素
(vii)イミダゾリウム塩を含有する基
例:
【化16】
【0098】
は、より好ましくは、水素原子、又はフッ素化されていてもよく、かつエチレン鎖を介して結合してもよいアルキル基であり、より好ましくは、水素原子、メトキシエチル基、イソブチル基、又はR−CF−(CFnk1−(CHnk2−O−(CH−(Rはフッ素原子又は水素原子であり、nk1は0〜6の整数であり、及びnk2は1〜6の整数である)であり、更に好ましくは、3−(ペルフルオロエチル)プロポキシエチル基[示性式:CF−(CF)−(CH−O−(CH−]である。
【0099】
b3は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表す。
b3は、好ましくはメチル基又は水素原子であり、より好ましくは水素原子である
【0100】
は、−O−、−Ph−、−N(−R)−、又はカルバゾリレンを表す。ここでRは有機基を表す。
但し、Rb2が水素原子である場合、Xは−Ph−である。
は、好ましくは−O−、−Ph−、又はカルバゾリレンであり、より好ましくは−O−、又は−Ph−であり、更に好ましくは−O−である。
【0101】
の例としては、更に、以下の構成単位が挙げられる。
【0102】
(a)式:
【化17】
[式中、
nは、1〜6の整数である繰り返し数を表す。
は、水素、又はメチル基を表す。]
で表される、(メタ)アクリロイル基を有する構成単位
【0103】
例:
【化18】
【0104】
(b)式:
【化19】
[式中、
nは、1〜6の整数である繰り返し数を表す。
は、水素、又はメチル基を表す。]
で表される、(メタ)アクリロイル基を有する構成単位
【0105】
例:
【化20】
【0106】
(c)シランカップリング基を有する構成単位
例:
【化21】
(式中、Zは、シランカップリング基を表す。)
【0107】
の例としては、更に、以下の構成単位が挙げられる。
(a)環状部を有する構成単位
例:
【化22】
【0108】
の好ましい例としては、以下の構成単位が挙げられる。
(a1)
【化23】
[式中、nは1〜6の整数を表す。
b2は(メタ)クリロイル基を表す。]
(a2)
【化24】
[式中、nは、各出現において、それぞれ独立して、1〜6の整数を表す。
b2は(メタ)クリロイル基を表す。]
(例、−O−CHCH−O−CHCH−O−COC(CH)=CH
(b)
【化25】
[式中、nは1〜6の整数を表す。
b2はシランカップリング基を表す。]
【0109】
の好ましい例としては、以下の構成単位が挙げられる。
【化26】
[式中、nは1〜6の整数を表す。
b2はアルキル基を表す。]
【0110】
の具体例としては、更に、以下の環状部を有する構成単位が挙げられる。
【化27】
【0111】
は、例えば、式:
a1−X−C(−Ra2)(−Ra3)−
[式中、
a1は、官能基Aを含有していてもよい有機基(好ましくは、アルキル基)を表す。
は、−O−、−Ph−、−N(−R)−(Rは、有機基を表す。)を表す。
a2は、アルキル基を表す。
a3は、水素原子、又はアルキル基を表す。]
で表される基であることができる。
当該官能基Aは、Rb2についての説明から理解される
【0112】
は、例えば、式:
−X−R
[当該式中、
は、−O−、−S−、−NH−、又は単結合を表す。
は、官能基Aを含有していてもよいフッ素非含有有機基、又は水素原子を表す。]
で表される基であることができる。
当該官能基Aは、Rb2についての説明から理解される。
【0113】
は、例えば、後記で説明するフッ素含有ブロック共重合体の製造方法におけるフルオロポリエーテル基含有カチオン重合開始剤等の開始剤に由来することができる。
は、例えば、後記で説明するフッ素含有共重合体の製造方法におけるフルオロポリエーテル基含有カチオン重合開始剤等の反応停止剤に由来することができる。
【0114】
a1は、好適に炭素数1〜6のアルキル基であることができる。
は、好適に−O−であることができる。
a2は、好適に炭素数1〜6(好ましくは1〜3)のアルキル基であることができる。
a3は、好適に水素原子であることができる。
【0115】
は、好適に結合手であることができる。
は、好適に水素原子であることができる。
【0116】
で表されるリンカーは、例えば、1〜5原子の鎖長を有するリンカーであることができる。
【0117】
は、好ましくは結合手である。
【0118】
本発明のフッ素含有ブロック共重合体は、好ましくは、
式(1)において、
は、各出現において、それぞれ独立して、フルオロポリエーテル基含有するビニルエーテル構成単位であり、
nfは、2〜50であり、
は、結合手であり、及び
Qは、官能基Aを含有するビニルエーテル構成単位、又は官能基Aを含有しないビニルエーテル構成単位である
フッ素含有ブロック共重合体である。
【0119】
本発明のフッ素含有ブロック共重合体は、より好ましくは、
式(1)において、
は、各出現において、それぞれ独立して、式:−CFCF−(OCFCFCF−F[当該式中、nは繰り返し数(例、1〜1000、1〜100、1〜10、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、3、2、又は1である繰り返し数)を表す。)、−(OCF−(OCFCFF[当該式中、n、及びmは、それぞれ独立して、繰り返し数(例、1〜1000、1〜100、1〜10、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、3、2、又は1である繰り返し数)を表す。]で表されるペルフルオロポリエーテル基を含有するビニルエーテル構成単位であり、
nfは、5〜20であり、
は、結合手であり、及び
Qは、(メタ)アクリル基を含有する基を含有するビニルエーテル構成単位、又は(メタ)アクリル基を含有する基を含有しないビニルエーテル構成単位である
フッ素含有ブロック共重合体である。
【0120】
3.フッ素含有ブロック共重合体の製造方法
【0121】
本発明のフッ素含有ブロック共重合体は、次の工程:
(1A)カチオン重合性フッ素非含有単量体を、カチオン重合開始剤、及びルイス酸の存在下で、カチオン重合させる工程(工程1A)、
(1B)工程1Aに続いて、カチオン重合性フッ素含有単量体をカチオン重合させる工程(工程1B)
及び
(2)カチオン重合反応停止剤を用いて、カチオン重合反応を停止させる工程(工程2)を有する方法で製造することができる。
【0122】
3.1.工程1A
【0123】
3.1.1.カチオン重合開始剤
【0124】
工程1で用いられる「カチオン重合開始剤」(開始種)としては、例えば、
(a)式:
a1−X−C(−Ra2)(−Ra3)−O−CO−Ra4
[式中、
a1は、官能基Aを含有していてもよい有機基(好ましくは、アルキル基)を表す。
は、−O−、−Ph−、−N(−R)−(Rは、有機基を表す。)を表す。
a2は、アルキル基を表す。
a3は、水素原子、又はアルキル基を表す。]
で表される化合物、又は
(b)式:
a1−X−C(−Ra2)(−Ra3)−X
[式中、
a1は、官能基Aを含有していてもよい有機基(好ましくは、アルキル基)を表す。
は、−O−、−Ph−、−N(−R)−(Rは、有機基を表す。)を表す。
a2は、アルキル基を表す。
a3は、水素原子、又はアルキル基を表す。]
で表される化合物が挙げられる。
【0125】
当該カチオン重合開始剤は、公知の製造方法、又はこれに準じた製造方法により製造できる。
【0126】
工程1の反応系におけるフルオロポリエーテル基含有カチオン重合開始剤の濃度は、0.1〜1000mMが好ましく、1〜100mMがより好ましい。
【0127】
3.1.2.カチオン重合性フッ素非含有単量体
工程1Bで用いられるカチオン重合性単量体は、構成単位Qに対応する単量体である。
【0128】
例えば、当該製造方法で製造するフッ素含有ブロック共重合体の中の、式:
【化28】
で表される部分(以下、当該部分を部分(b)と称する場合がある。)が、前記構成単位Bのみから構成されているフッ素含有ブロック共重合体を合成する場合は、カチオン重合性単量体として、式:
【化29】
[式中、Rb2は官能基Aを含有する有機基であり、その他の式中の記号は、前記と同意義を表す。]
で表される化合物(以下、カチオン重合性単量体Bと称する場合がある。)を用いる。
【0129】
構成単位Qに対応する単量体の好ましい例としては、官能基Aが保護されている、以下の化合物が挙げられる。
【0130】
(i)イミド化又はアミド化によって保護された1個以上(好ましくは1個)のアミノ基を含有するビニルエーテル化合物。
【0131】
当該ビニルエーテル化合物の具体例:
【化30】
【0132】
当該ビニルエーテル化合物を用いた場合、重合反応後に、所望により、保護されたアミノ基を脱保護することによって、本発明のフッ素含有ブロック共重合体にアミノ基を導入することができる。
【0133】
(ii)保護された1個以上(好ましくは1個)の水酸基を含有するビニルエーテル化合物。
当該ビニルエーテル化合物の例(1):
式:
【化31】
[当該式中、Alkは、炭素数1〜6のアルキレン鎖を表し、nは、1〜6の数である繰り返し数を表し、及びRは保護基を表す。]
で表される化合物。
当該保護基としては、例えば、アセチル基等が挙げられる。
【0134】
当該ビニルエーテル化合物の例(1)の具体例:
【化32】
【0135】
当該ビニルエーテル化合物を用いた場合、重合反応後に、所望により、保護された水酸基を脱保護することによって、本発明のフッ素含有ブロック共重合体に水酸基を導入することができる。
【0136】
例えば、前記部分(b)が、前記構成単位Mのみから構成されているフッ素含有ブロック共重合体を合成する場合は、カチオン重合性単量体として、式:
【化33】
[式中、Rb2は水素原子、又は官能基Aを含有しない有機基であり、その他の記号は、前記と同意義を表す。]
で表される化合物(以下、カチオン重合性単量体Mと称する場合がある。)を用いる。
【0137】
前記部分(b)が、前記構成単位B、及び前記構成単位Mから構成されているフッ素含有ブロック共重合体を合成する場合は、カチオン重合性単量体B、及びカチオン重合性単量体Mを用いればよい。
【0138】
構成単位Qに対応する単量体の好ましい例としては、官能基Aを含有しない、以下の化合物が挙げられる。
【0139】
(a)式:
CH=CH−O−R
[式中、
Rは、1価の有機基を表す。但し、当該1価の有機基は、官能基Aを含有しない。]
で表される化合物。
【0140】
当該化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
【0141】
(i)式:
【化34】
[式中、
nは、1〜10の整数を表す。
は、アルキル基を表す。]
で表されるビニルエーテル化合物。
【0142】
当該ビニルエーテル化合物の具体例:
【化35】
【0143】
(ii)式:
【化36】
[式中、
nは、1〜10の整数を表す。
は、1個以上のフッ素で置換されたアルキル基を表す。]
で表されるビニルエーテル化合物。
【0144】
当該ビニルエーテル化合物の具体例:
【化37】
【0145】
【化38】
【0146】
(iii)単環式炭素環、二環式炭素環、三環式炭素環、及び四環式炭素環からなる群より選択される1個以上の環状部を含有するビニルエーテル化合物。
【0147】
当該ビニルエーテル化合物の具体例:
【化39】
【化40】
【0148】
(iv)式:
【化41】
[式中、
nは、1〜10の整数を表す。
は、1個以上(好ましくは1又は2個)のアルコキシカルボニル基で置換された炭化水素基を表す。]
で表されるビニルエーテル化合物。
当該「炭化水素基」としては、例えば、
【0149】
当該ビニルエーテル化合物の具体例:
【化42】
当該ビニルエーテル化合物を用いた場合、重合反応後に、所望により、アルコキシカルボニル基を加水分解することによって、本発明のフッ素含有ブロック共重合体にカルボキシ基を導入することができる。
【0150】
(v)イミダゾリウム塩を含有するビニルエーテル化合物。
【0151】
当該ビニルエーテル化合物の具体例:
【化43】
【0152】
(viii)式:
【化44】
[式中、
Xは、水素、又はメチル基を表す。
環Aはベンゼン、又はナフタレンを表す。
Rは、水素、ハロゲン、又は1価の有機基を表す。但し、当該1価の有機基は、−OH基、−COOH基、及び−NH基のいずれも含有しない。]
で表されるアリールビニル誘導体。
【0153】
当該アリールビニル誘導体の具体例:
【化45】
(ix)その他の化合物
【化46】
【0154】
例えば、前記部分(b)が、構成単位B及びMから構成されているフッ素含有ブロック共重合体を合成する場合は、カチオン重合性単量体として、カチオン重合性単量体B及びカチオン重合性単量体Mを用いる。
【0155】
ここで、前記部分(b)において、構成単位B及びMが、それぞれ、ブロックを形成しているフッ素含有ブロック共重合体を合成する場合は、カチオン重合性単量体B及びMを逐次的にカチオン重合させる。
具体的には、第1のカチオン重合性単量体(カチオン重合性単量体B又はM)のみを反応系に添加して重合反応を開始させ、その重合反応の完了後の反応液へ、第2のカチオン重合性単量体(カチオン重合性単量体M又はB)を添加すると、リビングカチオン重合の進行において、カチオンは、常に重合体の末端に存在するので、第2のカチオン重合性単量体の重合反応が進行する。
【0156】
一方、本発明のフッ素含有ブロック共重合体として、当該部分(b)において、構成単位B及びMが、ランダムに結合しているフッ素含有ブロック共重合体を合成する場合は、カチオン重合性単量体B及びMの両方を反応系に添加して重合反応を開始させる。
【0157】
このようなカチオン重合性単量体B及びMは、市販品によって、又は公知の方法で製造することによって入手できる。
【0158】
前記カチオン重合性単量体の使用量は、目的とするフッ素含有ブロック共重合体の構造によって適宜決定される。
当該製造方法では、リビングカチオン重合を採用することにより、前記カチオン重合性単量体に由来する構成単位の繰り返し数を高度に正確に制御できる。
【0159】
3.1.3.ルイス酸
【0160】
工程1で用いられるルイス酸としては、例えば、後記の式(A1)で表される化合物、及び後記の式(A2)で表される化合物が挙げられる。
【0161】
AlY (A1)
(式中、Y、Y、及びYは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表す。)
で表されるアルミニウム化合物。
【0162】
、Y、及びYで表される「ハロゲン原子」としては、例えば、塩素、臭素、及びヨウ素等が挙げられる。
、Y、及びYで表される「アルキル基」としては、例えば、炭素原子数1〜10のアルキル基が挙げられる。
、Y、及びYで表される「アリール基」としては、例えば、炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。
、Y、及びYで表される「アルコキシ基」としては、例えば、炭素原子数1〜10のアルコキシ基が挙げられる。
、Y、及びYで表される「アリールオキシ基」としては、例えば、炭素数6〜10のアリールオキシ基が挙げられる。
【0163】
式(A1)で表されるアルミニウム化合物として具体的には、例えば、
ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムフルオライド、ジエチルアルミニウムアイオダイド、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、ジイソプロピルアルミニウムブロマイド、ジイソプロピルアルミニウムフルオライド、ジイソプロピルアルミニウムアイオダイド、ジメチルアルミニウムセスキクロライド、メチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジフルオライド、エチルアルミニウムジアイオダイド、イソブチルアルミニウムジクロライド、オクチルアルミニウムジクロライド、エトキシアルミニウムジクロライド、ビニルアルミニウムジクロライド、フェニルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、アルミニウムトリクロライド、アルミニウムトリブロマイド、エチルアルミニウムエトキシクロライド、ブチルアルミニウムブトキシクロライド、エチルアルミニウムエトキシブロマイド等の有機ハロゲン化アルミニウム化合物、及び
ジエトキシエチルアルミニウム等のジアルコキシアルキルアルミニウム、ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)メチルアルミニウム、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェノキシ)メチルアルミニウム等のビス(アルキル置換アリロキシ)アルキルアルミニウム等が挙げられる。これらのアルミニウム化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0164】
MZ (A2)
(式中、Mは4価のTi又はSnを表す。Z、Z、Z、及びZは、それぞれハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を示す。)
でそれぞれ表される。四価チタニウム又は四価スズ化合物。
【0165】
、Z、Z、及びZでそれぞれ表される、「ハロゲン原子」、「アルキル基」、「アリール基」、「アルコキシ基」、及び「アリールオキシ基」としては、それぞれY、Y、及びYについて例示したものと同様のものが挙げられる。
【0166】
式(A2)で表される四価チタニウム化合物として具体的には、例えば、
四塩化チタン、四臭化チタン、及び四ヨウ化チタン等のハロゲン化チタン;
チタントリエトキシクロライド、及びチタントリn−ブトキシドクロライド等のハロゲン化チタンアルコキシド;並びに
チタンテトラエトキシド、及びチタンn−ブトキシド等のチタンアルコキシド等が挙げられる。
式(A2)で表される四価スズ化合物として具体的には、例えば、
四塩化スズ、四臭化スズ、四ヨウ化スズ等のハロゲン化スズ等を挙げることができる。
【0167】
これらの四価チタン化合物及び四価スズ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0168】
さらに、前記ルイス酸としては、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ビスマス(Bi)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、又はアンチモン(Sb)のハロゲン化物;オニウム塩(例、アンモニウム塩、ホスホニウム塩);金属酸化物(例、Fe、Fe、In、Ga、ZnO、及びCo等)も挙げられる。
【0169】
前記ルイス酸の使用量は、カチオン重合性単量体/ルイス酸(モル比)が2〜1000となる量が好ましく、10〜1000となる量がより好ましい。
【0170】
3.1.4.生長種安定化剤
また、工程1においては、リビングカチオン重合における生長種を安定化させる目的で、含酸素又は含窒素化合物を用いてもよい。
【0171】
ここで、生長種とは、伸長中の重合体の末端に存在する活性種(カチオン)を意味する。
【0172】
当該含酸素又は含窒素化合物としては、例えば、エステル、エーテル、ケトン、イミド、リン酸化合物、ピリジン誘導体、及びアミンが挙げられる。具体的には、エステルとしては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸フェニル、クロロ酢酸メチル、ジクロロ酢酸メチル、酪酸エチル、ステアリン酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸ジエチル、及びイソフタル酸ジエチルが挙げられる。
【0173】
当該エーテルとしては、例えば、ジエチルエーテル、及びエチレングリコール等の鎖状エーテル;並びにジオキサン、及びテトラヒドロフラン等の環状エーテルが挙げられる。 前記ケトンとしては、例えば、アセトン、及びメチルエチルケトンが挙げられる。
前記イミドとしては、例えば、エチルフタルイミドが挙げられる。
前記リン酸化合物としては、例えば、トリエチルホスフェートが挙げられる。
前記ピリジン誘導体としては、例えば、2,6−ジメチルピリジンが挙げられる。
前記アミンとしては、例えば、トリブチルアミンが挙げられる。
【0174】
これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0175】
前記含酸素又は含窒素化合物の使用量は、ルイス酸1モルに対して、0.1〜2000モルが好ましく、1〜2000モルがより好ましい。
【0176】
当該反応は、バルクで行ってもよいが、好ましくは、溶媒を使用する。
【0177】
溶媒としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、及びシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素;四塩化炭素、塩化メチレン、及びジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル等のエーテルが挙げられる。特に無極性溶媒が好ましい。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0178】
溶媒の使用量は、通常、溶媒:ビニル化合物(容量比)=1:1〜100:1であり、好ましくは5:1〜30:1である。
【0179】
反応温度は、通常−80℃〜150℃、好ましくは−78〜80℃である。
【0180】
反応時間は、通常1分〜1ヶ月間、好ましくは1分〜100時間である。
【0181】
3.2.カチオン重合性フッ素含有単量体
工程1Bで用いられるカチオン重合性フッ素含有単量体は、構成単位Qに対応する単量体である。
当該カチオン重合性単量体として、例えば、式:
【化47】
[式中の記号は前記と同意義を表す。]
で表される化合物を用いることができる。
【0182】
工程1Aの説明から理解されるように、工程1Bの反応は、工程1Aの反応の完了後の反応液へ、カチオン重合性フッ素含有単量体を添加することにより、実施できる。
工程1Bの反応の条件としては、工程1Aの反応の条件と同様の条件を採用すればよい。
【0183】
3.3.工程2
【0184】
3.3.1.カチオン重合反応停止剤
工程2で用いられる「カチオン重合反応停止剤」は、式:R−X−H(式中の記号は前記と同意義を表す。)
で表される化合物であることができる。
【0185】
が水素原子である場合、カチオン重合反応停止剤の好適な一例は、水である。
が水素原子である場合、カチオン重合反応停止剤の別の好適な一例は、LiBHである。
【0186】
カチオン重合反応停止剤の使用量は、反応溶液内で、当該停止剤と重合体の反応末端が充分に接触することが可能となればよく、使用する量は厳密に規定されるものでは無い。
通常、反応溶媒量の0.01〜10倍容量であり、好ましくは0.1〜1倍容量である。
【0187】
3.4.その他の工程
【0188】
このようにして得られた、本発明のフッ素含有ブロック共重合体は、必要に応じて、慣用の方法により精製することができる。
【0189】
このような製造方法により製造された本発明のフッ素含有ブロック共重合体は、分子量の均一性が高く、例えば、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、約2.5〜1.0の範囲内である。
【0190】
1.超分子
【0191】
本発明の超分子は、2分子以上の、本発明のフッ素含有ブロック共重合体を含有する。
【0192】
本発明の超分子は、好ましくは、本発明のフッ素含有ブロック共重合体の会合体である。
当該会合体は、ベシクル、又はミセル等であることができる。
【0193】
本発明の超分子は、2分子以上、好ましくは4分子以上、より好ましくは7分子以上、及び更に好ましくは10分子以上の本発明のフッ素含有ブロック共重合体が、会合している超分子である。
【0194】
本発明の超分子が含有する本発明のフッ素含有ブロック共重合体の数は、例えば、1000以下、500以下、200以下、100以下、50以下、又は30以下であることができる。
【0195】
本発明の超分子において、本発明のフッ素含有ブロック共重合体は、−(Qnf−の側で会合していてもよく、−(Q)n1−の側で会合していてもよいが、好ましくは、−(Qnf−の側で会合している。
【0196】
本発明の超分子は、溶媒を含有していてもよい。
本発明の超分子が、溶媒を含有している場合、その含有量は、本発明のフッ素含有ブロック共重合体の1重量部に対して、0.1〜1000000の範囲内であり、より好ましくは1〜100000の範囲内であり、及び更に好ましくは2〜50000である。
【0197】
本発明の超分子は、溶離液がクロロホルムであるGPCにて測定した分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、好ましくは1.0〜1.6の範囲内であり、より好ましくは1.0〜1.4の範囲内であり、更に好ましくは1.0〜1.2の範囲内であり、及びより更に好ましくは1.0〜1.1の範囲内である。
【0198】
本発明の超分子は、好ましくは、略球状(例、球状、回転楕円体、扁球体、葉巻型形状、星状、及びウニ状)の形状を有する。
【0199】
本発明の超分子は、好ましくは、略球状の中心部分において、前記2分子以上の本発明のフッ素含有ブロック共重合体が、会合している。
【0200】
本発明の超分子は、そのサイズ(直径、又は長径)が、好ましくは10〜1000nmの範囲内であり、より好ましくは20〜500nmの範囲内であり、及び更に好ましくは30〜300nmの範囲内である。
【0201】
1.超分子の製造方法
本発明の超分子は、例えば、本発明のフッ素含有ブロック共重合体を、適当な溶媒中に溶解、又は懸濁する工程を含む方法によって、当該フッ素含有ブロック共重合体が自己組織化して、製造される。
【0202】
本発明のフッ素含有ブロック共重合体を、適当な溶媒中に溶解、又は懸濁することは、例えば、当該溶媒中に本発明のフッ素含有ブロック共重合体を投入し、及び撹拌することにより実施すればよい。
【0203】
当該適当な溶媒の例は、
ブタノール、プロパノール、エタノール、メタノール等のアルコール系溶媒;
ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、n−デカン、イソドデカン、トリデカン等の非芳香族炭化水素溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、ベラトロール、ジエチルベンゼン、メチルナフタレン、ニトロベンゼン、o−ニトロトルエン、メシチレン、インデン、ジフェニルスルフィド等の芳香族炭化水素溶媒;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ジイソブチルケトン、イソホロン等のケトン;
ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、メチル t−ブチルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、フェネトール、1,1−ジメトキシシクロヘキサン、ジイソアミルエーテル等のエーテル溶媒;
酢酸エチル、酢酸イソプロピル、マロン酸ジエチル、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチル、α−アセチル−γ−ブチロラクトン等のエステル溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;
ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド系溶媒;
及びN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド溶媒;
トリエチルアミン、アニリン等のアミン系溶媒;
二硫化炭素;及び

を包含する。
当該溶媒は、1種単独で、又は2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0204】
前記溶媒の使用量は、本発明のフッ素含有ブロック共重合体の1重量部に対して、好ましくは0.1〜1000000の範囲内であり、より好ましくは1〜100000の範囲内であり、及び更に好ましくは2〜50000の範囲内である。
【0205】
4.撥油性及び/又は撥水性コーティング剤
【0206】
本発明の撥油性及び/又は撥水性コーティング剤は、好ましくは、本発明のフッ素含有ブロック共重合体及び溶媒を含有する。
当該溶媒の好適な例は、
ブタノール、プロパノール、エタノール、メタノール等のアルコール系溶媒;
ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、n−デカン、イソドデカン、トリデカン等の非芳香族炭化水素溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、ベラトロール、ジエチルベンゼン、メチルナフタレン、ニトロベンゼン、o−ニトロトルエン、メシチレン、インデン、ジフェニルスルフィド等の芳香族炭化水素溶媒;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ジイソブチルケトン、イソホロン等のケトン;
ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、メチル t−ブチルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、フェネトール、1,1−ジメトキシシクロヘキサン、ジイソアミルエーテル等のエーテル溶媒;
酢酸エチル、酢酸イソプロピル、マロン酸ジエチル、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチル、α−アセチル−γ−ブチロラクトン等のエステル溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;
ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド系溶媒;
及びN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド溶媒;
トリエチルアミン、アニリン等のアミン系溶媒;
二硫化炭素;及び
水を包含する。
【0207】
本発明の撥油性及び/又は撥水性コーティング剤が溶媒を含有する場合、その量は、好ましくは、本発明のフッ素含有ブロック共重合体の1重量部に対して、0.1〜1000000の範囲内であり、より好ましくは1〜100000の範囲内であり、及び更に好ましくは2〜50000〜重量部である。
【0208】
本発明の撥油性及び/又は撥水性コーティング剤は、本発明のフッ素含有ブロック共重合体を主成分又は有効成分として含んでいればよい。ここで、「主成分」とは、撥油性及び/又は撥水性コーティング剤中の含量が50重量%を超える成分を意味する。「有効成分」とは、表面処理する基材上に残留して皮膜(表面処理層)を形成し、本発明の効果(撥水性、撥油性、防汚性、表面滑り性、摩擦耐久性など)を発現させ得る成分を意味する。
本発明のフッ素含有ブロック共重合体は、対象物の表面に塗布されて、皮膜を形成することにより、当該表面に撥油性を付与することができる。また、本発明のフッ素含有ブロック共重合体は、対象物の表面に塗布されて、皮膜を形成することにより、当該表面に撥水性を付与することができる。従って、本発明の撥油性及び/又は撥水性コーティング剤は、撥水、撥油、防汚、及び/又は指紋付着防止の目的で、対象物の表面のコーティングに用いられる。
本発明の撥油性及び/又は撥水性コーティング剤(又は表面処理組成物)の組成は、所望される機能に応じて適宜決定できる。
【0209】
また、本発明の撥油性及び/又は撥水性コーティング剤は、本発明のフッ素含有ブロック共重合体に加えて、含フッ素オイルとして理解され得るフルオロポリエーテル化合物、好ましくはペルフルオロポリエーテル化合物を含んでいてもよい(以下、本発明のフッ素含有ブロック共重合体と区別する趣旨で、「含フッ素オイル」と称する場合がある)。含フッ素オイルは、基材と反応性の部位(例えば、シリル基)を有さない。含フッ素オイルは、得られる皮膜の表面滑り性の向上に寄与する。
【0210】
撥油性及び/又は撥水性コーティング剤中、ペルフルオロポリエーテル基含有シラン化合物100質量部(2種以上の場合にはこれらの合計、以下も同様)に対して、含フッ素オイルは、例えば0〜300質量部、好ましくは50〜200質量部で含まれ得る。
【0211】
かかる含フッ素オイルとしては、以下の式(2)で表される化合物(ペルフルオロポリエーテル化合物)が挙げられる。
21−(OC2rnd−O−R22・・・(2)
式中、R21及びR22は、それぞれ独立して炭素数1〜16のペルフルオロアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜3のペルフルオロアルキル基である。
rは、各出現において、それぞれ独立して1〜3の整数である。
式:−(OC2rnd−で表される部分は、OC、OC、及びOCFからなる群より選択される1種以上の構成単位からなる。すなわち、式:−(C2rO)nd−で表される部分は、式:−(OCa’−(OCb’−(OCFc’−で表される。
ここで、a’、b’及びc’は、ポリマーの主骨格を構成するペルフルオロポリエーテルのそれぞれ繰り返し数を表わし、互いに独立して0以上300以下の整数であって、a’、b’及びc’の和、すなわちndは少なくとも1、好ましくは1〜100である。
なお、本明細書中、繰り返し数を表す添字が付された隣接する複数の丸括弧内の繰り返し単位の存在順序は任意である。すなわち、これらの繰り返し単位の結合様式は、ランダムであっても、ブロックであってもよい。これら繰り返し単位のうち、−(OC)−は、−(OCFCFCF)−、−(OCF(CF)CF)−、及び−(OCFCF(CF))−のいずれであってもよく、好ましくは−(OCFCFCF)−である。−(OC)−は、−(OCFCF)−及び−(OCF(CF))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCF)−である。
【0212】
前記式(2)で表されるペルフルオロポリエーテル化合物の例として、以下の式(2a)、(2b)及び(2c)のいずれかで示される化合物が挙げられる。
21−(OCFCFCF)a’’−O−R22・・・(2a)
21−(OCFCFb’’−(OCFc’’−O−R22・・・(2b)
21−(OCF(CF)CFd’’−O−R22・・・(2c)
これら式中、R21及びR22は前記の通りであり、a’’は1以上100以下の整数であり、b’’及びc’’はそれぞれ独立して1以上300以下の整数であり、d’’は1以上100以下の整数である。
【0213】
式(2a)で示される化合物及び式(2b)で示される化合物は、それぞれ単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。これらを組み合わせて用いる場合、式(2a)で表される化合物と、式(2b)で表される化合物とを、質量比1:1〜1:30で使用することが好ましい。かかる質量比によれば、表面滑り性と摩擦耐久性のバランスに優れた皮膜を得ることができる。
【0214】
含フッ素オイルは、1000〜30000の数平均分子量を有していてよい。これにより、本発明の撥油性及び/又は撥水性コーティング剤から形成される皮膜(本発明の撥油性及び/又は撥水性コーティング剤でコーティングされた物品の表面処理層)は高い表面滑り性を有することができる。代表的には、式(2a)で表される化合物の場合には、2000〜6000の数平均分子量を有することが好ましく、式(2b)で表される化合物の場合には、8000〜30000の数平均分子量を有することが好ましい。これら数平均分子量の範囲では、高い表面滑り性を有する皮膜を得ることができる。
【0215】
また、本発明の撥油性及び/又は撥水性コーティング剤は、本発明のフッ素含有ブロック共重合体に加えて、シリコーンオイルとして理解され得るシリコーン化合物(以下、「シリコーンオイル」と称する。)を含んでいてもよい。シリコーンオイルは、前記表面滑り性の向上に寄与する。
【0216】
撥油性及び/又は撥水性コーティング剤中、ペルフルオロポリエーテル基含有シラン化合物100質量部に対して、シリコーンオイルは、例えば0〜300質量部、好ましくは50〜200質量部で含まれ得る。
【0217】
かかるシリコーンオイルとしては、例えばシロキサン結合が2000以下の直鎖状又は環状のシリコーンオイルを用い得る。直鎖状のシリコーンオイルは、いわゆるストレートシリコーンオイル及び変性シリコーンオイルであってよい。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルを、アルキル、アラルキル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル、フルオロアルキル、アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコールなどにより変性したものが挙げられる。環状のシリコーンオイルは、例えば環状ジメチルシロキサンオイルなどが挙げられる。
【0218】
本発明の撥油性及び/又は撥水性コーティング剤による皮膜の形成は、撥油性及び/又は撥水性コーティング剤を溶媒に溶解させて得られた溶液を、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、フローコート法、バーコート法、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、又はディップコート法、蒸着法等の慣用の方法で、対象物の表面に塗布し、乾燥させ、及び必要に応じてUV照射することによって実施できる。
【0219】
皮膜の硬度が必要な場合や、硬化速度を向上させる場合、下地との密着性向上等の目的で単官能及び多官能(メタ)アクリレート単量体を適宜、加えてもよい。本発明のフッ素含有ブロック共重合体は単官能及び多官能(メタ)アクリレート単量体と高い相溶性を示すため、外観を損なうことなく、加えた単量体は架橋剤として機能し、硬化膜に適度な硬度と、基材密着性、硬化速度の向上をもたらす。
【0220】
本発明のフッ素含有ブロック共重合体は、フッ素含有有機溶媒のみならず、汎用溶剤であるフッ素非含有有機溶媒に対しても高い溶解性を示すので、フッ素含有有機溶媒又はフッ素非含有有機溶媒に溶解させて、コーティングの対象の表面に塗布することができる。
このようなフッ素含有有機溶媒としては、例えば、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロジメチルシクロヘキサン、ペルフルオロデカリン、ペルフルオロアルキルエタノール、ペルフルオロベンゼン、ペルフルオロトルエン、ペルフルオロアルキルアミン(フロリナート(商品名)等)、ペルフルオロアルキルエーテル、ペルフルオロブチルテトラヒドロフラン、ハイドロフルオロエーテル(ノベック(商品名)、HFE−7100等)、ペルフルオロアルキルブロミド、ペルフルオロアルキルヨージド、ペルフルオロポリエーテル(クライトックス(商品名)、デムナム(商品名)、フォンブリン(商品名)等)メタクリル酸2−(ペルフルオロアルキル)エチル、アクリル酸2−(ペルフルオロアルキル)エチル、ペルフルオロアルキルエチレン、フロン134a、及びヘキサフルオロプロペンオリゴマーが挙げられる。
また、このようなフッ素非含有有機溶媒としては、例えば、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、二硫化炭素、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ダイグライム、トリグライム、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、2−ブタノン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ブタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エタノール、メタノール、トリエチルアミン、及びアニリンが挙げられる。
なかでも、本発明のフッ素含有ブロック共重合体を溶解させる溶媒は、好ましくは、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ヘキサデカン、酢酸ブチル、アセトン、酢酸エチル、又は2−プロパノールである。
これらの溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明のフッ素含有ブロック共重合体は、汎用溶剤であるフッ素非含有有機溶媒に対しても高い溶解性を示す
【0221】
コーティング対象物の材料(基材)としては、例えば、ガラス等の無機材料;ポリエチレン、及びポリスチレン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリアリレート、及びポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、並びにフェノール樹脂等の合成樹脂;鉄、アルミ、及び銅等の金属が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なかでも、ガラス、又は非晶質の合成樹脂(例、アクリル樹脂)や耐熱性の高い環状ポリオレフィン樹脂(COP)やポリエステル樹脂(例、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂)、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
また、市販のハードコート剤に本発明のフッ素含有ブロック共重合体を添加して使用することもできる。
本発明のフッ素含有ブロック共重合体は高い相溶性を示すため、市販のハードコート剤の物性を損なうことなく、表面に高い撥水性、防汚性を付与することが可能である。
【0222】
本発明の撥油性及び/又は撥水性コーティング剤から形成される皮膜は、撥水性、撥油性、防汚性、指紋付着防止性、及び耐久性に優れ、コーティング対象物に強固に結合することができ、かつ透明であるので、本発明の撥油性及び/又は撥水性コーティング剤は、種々の物品(製品、デバイス、又は部品)のコーティングに好適に用いることができる。
本発明の撥油性及び/又は撥水性コーティング剤から形成された皮膜を含有する物品も又は本発明の範囲内である。
【0223】
以下に、このような撥油性及び/又は撥水性コーティング剤から形成された皮膜を有する物品についてより詳細に説明する。
本発明の物品は、基材と、該基材の表面において本発明のフッ素含有ブロック共重合体又は撥油性及び/又は撥水性コーティング剤(以下、これらを代表して単に「撥油性及び/又は撥水性コーティング剤」と言う)から形成された層(表面処理層)とを含有する。
このような物品は、例えば以下のようにして製造できる。
【0224】
例えば、製造すべき物品が光学部材である場合、その基材は、光学部材用材料、例えばガラス又は透明プラスチックなどであってよい。また、撥油性及び/又は撥水性コーティング剤から表面処理層を形成させる表面領域には、ハードコート層及び/又は反射防止層などの層が形成されていてよい。当該反射防止層には、単層反射防止層及び多層反射防止層のいずれを使用してもよい。反射防止層に使用可能な無機物の例としては、SiO、SiO、ZrO、TiO、TiO、Ti、Ti、Al、Ta、CeO、MgO、Y、SnO、MgF、WOなどが挙げられる。これらの無機物は、単独で、又はこれらの2種以上を組み合わせて(例えば混合物として)使用してよい。多層反射防止層の場合は、その最外層にはSiO及び/又はSiOを用いることが好ましい。製造すべき物品が、タッチパネル用の光学ガラス部品である場合、透明電極、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛などを用いた薄膜を、基材(ガラス)の表面の一部に有していてもよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I−CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、相位差フィルム、及び液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
【0225】
基材の形状は特に限定されない。また、表面処理層を形成すべき基材の表面領域は、基材表面の少なくとも一部であればよく、製造すべき物品の用途及び具体的仕様等に応じて適宜決定され得る。
【0226】
かかる基材としては、その表面部分に、水酸基を元々有するものであってよい。かかる材料としては、ガラスが挙げられ、また、表面に自然酸化膜又は熱酸化膜が形成される金属(特に卑金属)、セラミックス、半導体等が挙げられる。あるいは、樹脂等のように、水酸基を有していても十分でない場合や、水酸基を元々有していない場合には、基材に適当な前処理を施すことにより、基材の表面に水酸基を導入したり、増加させたりすることができる。かかる前処理の例としては、プラズマ処理(例えばコロナ放電)や、イオンビーム照射が挙げられる。プラズマ処理は、基材表面に水酸基を導入又は増加させ得ると共に、基材表面を清浄化する(異物等を除去する)ためにも好適に利用され得る。また、かかる前処理の別の例としては、炭素−炭素不飽和結合基を有する界面吸着剤をLB法(ラングミュア−ブロジェット法)や化学吸着法等によって、基材表面に予め単分子膜の形態で形成し、その後、酸素や窒素等を含む雰囲気下にて不飽和結合を開裂する方法が挙げられる。
【0227】
またあるいは、かかる基材としては、その表面部分に、別の反応性基(例、Si−H基、)を有するものであってもよい。その例としては、例えばSi−H基を1つ以上有するシリコーン化合物や、アルコキシシランを含む材料から形成された基材が挙げられる。
【0228】
次に、かかる基材の表面に、前記の撥油性及び/又は撥水性コーティング剤の皮膜を形成し、この皮膜を必要に応じて後処理して、表面処理層を形成する。
【0229】
撥油性及び/又は撥水性コーティング剤の皮膜形成は、前記の撥油性及び/又は撥水性コーティング剤を基材の表面に対して、該表面を被覆するように適用することによって実施できる。被覆方法は、特に限定されない。例えば、湿潤被覆法及び乾燥被覆法を使用できる。
【0230】
湿潤被覆法の例としては、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング及びこれらの類似方法が挙げられる。
【0231】
乾燥被覆法の例としては、真空蒸着、スパッタリング、CVD及びこれらの類似方法が挙げられる。真空蒸着法の具体例としては、抵抗加熱、電子ビーム、高周波加熱、イオンビーム及び類似の方法が挙げられる。CVD方法の具体例としては、プラズマ−CVD、光学CVD、熱CVD及び類似の方法が挙げられる。
【0232】
更に、常圧プラズマ法による被覆も可能である。
【0233】
湿潤被覆法を使用する場合、撥油性及び/又は撥水性コーティング剤は、溶媒で希釈されてから基材表面に適用され得る。撥油性及び/又は撥水性コーティング剤の安定性及び溶媒の揮発性の観点から、次の溶媒が好ましく使用される:炭素数5〜12のペルフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン及びペルフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン);ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素;ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、ペルフルオロプロピルメチルエーテル(COCH)、ペルフルオロブチルメチルエーテル(COCH)、ペルフルオロブチルエチルエーテル(COC)、ペルフルオロヘキシルメチルエーテル(CCF(OCH)C)などのアルキルペルフルオロアルキルエーテル(ペルフルオロアルキル基及びアルキル基は直鎖又は分枝状であってよい))など。これらの溶媒は、単独で、又は、2種以上の混合物として用いることができる。なかでも、ヒドロフルオロエーテルが好ましく、ペルフルオロブチルメチルエーテル(COCH)及び/又はペルフルオロブチルエチルエーテル(COC)が特に好ましい。
【0234】
以下に、本発明の撥油性及び/又は撥水性コーティング剤に用いられる本発明のフッ素含有ブロック共重合体がシランカップリング基を有する場合について、より詳細に述べる。
膜形成は、膜中で撥油性及び/又は撥水性コーティング剤が、加水分解及び脱水縮合のための触媒と共に存在するように実施することが好ましい。簡便には、湿潤被覆法による場合、撥油性及び/又は撥水性コーティング剤を溶媒で希釈した後、基材表面に適用する直前に、撥油性及び/又は撥水性コーティング剤の希釈液に触媒を添加してよい。乾燥被覆法による場合には、触媒添加した撥油性及び/又は撥水性コーティング剤をそのまま真空蒸着処理するか、あるいは鉄や銅などの金属多孔体に、触媒添加した撥油性及び/又は撥水性コーティング剤を含浸させたペレット状物質を用いて真空蒸着処理をしてもよい。
【0235】
触媒には、任意の適切な酸又は塩基を使用できる。酸触媒としては、例えば、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸などを使用できる。また、塩基触媒としては、例えばアンモニア、有機アミン類などを使用できる。
【0236】
次に、必要に応じて、膜を後処理する。この後処理は、特に限定されないが、例えば、水分供給及び乾燥加熱を逐次的に実施するものであってよく、より詳細には、以下のようにして実施してよい。
【0237】
前記のようにして基材表面に撥油性及び/又は撥水性コーティング剤を膜形成した後、この膜(以下、「前駆体膜」とも言う)に水分を供給する。水分の供給方法は、特に限定されず、例えば、前駆体膜(及び基材)と周囲雰囲気との温度差による結露や、水蒸気(スチーム)の吹付けなどの方法を使用してよい。
【0238】
前駆体膜に水分が供給されると、本発明のフッ素含有ブロック共重合体中のシランカップリング基に水が作用し、これを加水分解できると考えられる。
【0239】
水分の供給は、例えば0〜500℃、好ましくは100℃以上で、300℃以下の雰囲気下にて実施し得る。このような温度範囲において水分を供給することにより、加水分解を進行させることが可能である。このときの圧力は特に限定されないが、簡便には常圧とし得る。
【0240】
次に、該前駆体膜を該基材の表面で、60℃を超える乾燥雰囲気下にて加熱する。乾燥加熱方法は、特に限定されず、前駆体膜を基材と共に、60℃を超え、好ましくは100℃を超える温度であって、例えば500℃以下、好ましくは300℃以下の温度で、かつ不飽和水蒸気圧の雰囲気下に配置すればよい。このときの圧力は特に限定されないが、簡便には常圧とし得る。
【0241】
このような雰囲気下では、本発明のフッ素含有ブロック共重合体間では、前記加水分解後のシランカップリング基同士が速やかに脱水縮合する。また、かかる化合物と基材との間では、当該化合物の加水分解後のシランカップリング基と、基材表面に存在する反応性基との間で速やかに反応し、基材表面に存在する反応性基が水酸基である場合には脱水縮合する。(なお、このように結合した化合物間に、存在する場合には、含フッ素オイル及び/又はシリコーンオイルが混在することとなる。)この結果、本発明のフッ素含有ブロック共重合体間で結合が形成され、かつ本発明のフッ素含有ブロック共重合体と基材との間でも結合が形成される。
【0242】
前記の水分供給及び乾燥加熱は、過熱水蒸気を用いることにより連続的に実施してもよい。
【0243】
過熱水蒸気は、飽和水蒸気を沸点より高い温度に加熱して得られるガスであって、常圧下では、100℃を超え、一般的には500℃以下、例えば300℃以下の温度で、かつ、沸点を超える温度への加熱により不飽和水蒸気圧となったガスである。前駆体膜を形成した基材を過熱水蒸気に曝すと、まず、過熱水蒸気と、比較的低温の前駆体膜との間の温度差により、前駆体膜表面にて結露が生じ、これによって前駆体膜に水分が供給される。やがて、過熱水蒸気と前駆体膜との間の温度差が小さくなるにつれて、前駆体膜表面の水分は過熱水蒸気による乾燥雰囲気中で気化し、前駆体膜表面の水分量が次第に低下する。前駆体膜表面の水分量が低下している間、即ち、前駆体膜が乾燥雰囲気下にある間、基材の表面の前駆体膜は過熱水蒸気と接触することによって、この過熱水蒸気の温度(常圧下では100℃を超える温度)に加熱されることとなる。従って、過熱水蒸気を用いれば、前駆体膜を形成した基材を過熱水蒸気に曝すだけで、水分供給と乾燥加熱とを連続的に実施することができる。
【0244】
以上のようにして後処理が実施され得る。かかる後処理は、摩擦耐久性を一層向上させるために実施され得るが、本発明の物品を製造するのに必須でないことに留意されたい。例えば、撥油性及び/又は撥水性コーティング剤を基材表面に適用した後、そのまま静置しておくだけでもよい。
【0245】
前記のようにして、基材の表面に、撥油性及び/又は撥水性コーティング剤の膜に由来する表面処理層が形成され、本発明の物品が製造される。これにより得られる表面処理層は、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)、表面滑り性(又は潤滑性、例えば指紋等の汚れの拭き取り性や、指に対する優れた触感)、摩擦耐久性などを有し得、機能性薄膜として好適に利用され得る。
【0246】
すなわち本発明はさらに、前記硬化物を最外層に有する光学材料にも関する。
【0247】
光学材料としては、後記に例示するようなディスプレイ等に関する光学材料のほか、多種多様な光学材料が好ましく挙げられる。
例:陰極線管(CRT;例、TV、パソコンモニター)、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、電界放出ディスプレイ(FED;Field Emission Display)などのディスプレイ又はそれらのディスプレイの保護板、又はそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの
【0248】
これによって得られる表面処理層を有する物品は、特に限定されるものではないが、光学部材であり得る。光学部材の例には、次のものが挙げられる:眼鏡などのレンズ;PDP、LCDなどのディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板;携帯電話、携帯情報端末などの機器のタッチパネルシート;ブルーレイ(Blu−ray)ディスク、DVDディスク、CD−R、MOなどの光ディスクのディスク面;光ファイバーなど。
【0249】
表面処理層の厚さは、特に限定されない。光学部材の場合、表面処理層の厚さは、1〜30nm、好ましくは1〜15nmの範囲であることが、光学性能、表面滑り性、摩擦耐久性及び防汚性の点から好ましい。
【0250】
以上、本発明の撥油性及び/又は撥水性コーティング剤を使用して得られる物品について詳述した。なお、本発明の撥油性及び/又は撥水性コーティング剤の用途、使用方法ないし物品の製造方法などは、前記で例示したものに限定されない。
【実施例】
【0251】
合成例1
<PFPE−VEの合成>
ペルフルオロポリエーテル基を含有するアルコール[C3F7(CF2CF2CF2O)xCF2CF2CH2OH(xは繰り返し数を表す。数平均分子量1200)]を用い、国際公開第2013/115380号パンフレットに記載の方法に準拠して、2−[3−ポリ(ペルフルオロプロピルオキシ)−2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ]エトキシビニルエーテル(これを、PFPE-VEと称する場合がある。)を合成した。
【0252】
実施例1(合成例2)
<ポリ(イソブチルビニルエーテル)-b-ポリ(PFPE-VE)[ポリマー1]の合成>
ナスフラスコに、HCFC-225を13.6 ml、イソブチルビニルエーテル(IBVE)を2.0 ml、1,4-ジオキサンを1.7 ml、及び(1−イソブトキシ)エチルアセテート(IBEA)を0.4 ml入れて、溶液1を調製した。
容器に、触媒としてのEt1.5AlCl1.5を0.6 ml、及びHCFC-225を2.4 ml入れて、溶液2を調製した。
反応器に、2.7 mlの前記溶液1を入れて、0℃に恒温化した後、前記溶液2を0.3 ml添加して、重合を開始させた。
IBVEの80%以上が消費されたことを確認した後、0.18 mlのPFPE-VEを添加した。PFPE-VEの添加から6時間後、メタノールを添加し、重合を停止させた。水洗後、溶媒を留去してポリマー1を得た。
1H-NMRにより、得られたポリマー1の構造が(IBVE)106-b-(PFPE-VE)10であることを確認した。
フッ素溶媒を溶離液としてGPC測定した結果、ポリマー1の数平均分子量測定値は18270、分子量分布は1.13であった。
【0253】
実施例2
<ポリマー1のクロロホルムを溶離液としたGPC測定>
ポリマー1をクロロホルムに溶解し、クロロホルムを溶離液として用いたGPCで分子量を測定した結果、分子量225000、且つ分散度1.03のピークが確認された。一方、フッ素溶媒を溶離液として用いたGPC測定では、このような高分子量域にピークを確認できなかったことから、ポリマー1はクロロホルム中で約12分子の会合体を形成することが、確認できた。
【0254】
実施例3
<ポリマー1のクロロホルム中での動的光散乱法(DLS)による粒径測定>
ポリマー1をクロロホルムに溶解して、0.01 wt%溶液を調製し、40℃でDLSにより粒径を測定したところ、57nmの粒径をもつ会合体が形成されていることが分かった。
【0255】
実施例4(合成例3)
<ポリ{メタクリル酸−2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル}-b-ポリ(PFPE-VE)[ポリマー2]の合成>
容器にHCFC-225を7.8 ml、メタクリル酸−2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEM)を0.16 ml、1,4-ジオキサンを0.86 ml、及び開始剤としてのIBEAを0.2 ml入れて、溶液3調製した。別の容器に触媒としてのEt1.5AlCl1.5の0.6 ml、及びHCFC-225を2.4 ml入れて、溶液4を調製した。前記容器中の前記溶液3を0℃に恒温化した後、これに前記溶液4を1.0 ml添加して重合を開始させた。VEEMが80%以上消費されたことを確認した後、0.42 mlのPFPE-VEを添加した。
PFPE-VEの添加から6時間後、メタノールを添加し、重合を停止させた。水洗後、溶媒を留去してポリマー2を得た。
1H-NMRにより、得られたポリマー2の構造が(VEEM)15-b-(PFPE-VE)8であることを確認した。ポリマー2の分子量の計算値は、11900であった。
【0256】
合成例4
<PFPE4000VEEM20[ポリマー3]の合成>
【化48】
(m=20)
特許文献(国際公開第2013/115380号パンフレット)に記載の方法に準拠してPFPE4000-VEEM20を合成した。
【0257】
試験例1
市販のハードコート剤 ビームセット575CB(製品名、荒川化学工業社)をメチルエチルケトン(MEK)に溶解し、その溶液にポリマー2及びポリマー3を表に示すように添加し、メンブレンフィルターを通過させてハードコート剤を得た。
市販のポリカーボネート基板(日本テストパネル社)に前記のハードコート剤をバーコーター(#10)で塗布し、70℃で5分間乾燥後、ベルトコンベア式紫外線照射装置を用い(紫外線照射量600mJ/cm)、硬化被膜を得た。
得られた硬化膜に対して対水接触角、対n−ヘキサデカン接触角を測定した。結果を表に示す。
油性インキのふき取り性(油性インキふき取りの容易さ)は次のように試験した。まず、油性インキペンマッキー(ゼブラ社)にて硬化被膜表面に油性インキを塗り、1分間放置して乾燥後、キムワイプ(日本製紙クレシア社)でふき取り外観を観察し、以下の評価基準で評価した。結果を表に示す。
[評価]
A(優):インキを非常に軽くふき取ることができ、全く残らなかった。
B(良):インキをふき取ることができ、全く残らなかった。
C(可):インキをふき取ることができず、わずかに表面に残った。
D(不良):インキをふき取ることができず、表面に残った。

【産業上の利用可能性】
【0258】
本発明のフッ素含有ブロック共重合体は、優れた撥油及び撥水性と汎用溶剤(フッ素非含有有機溶媒)への高い溶解性とを兼ね備え、撥油性及び/又は撥水性コーティング剤として好適に使用することができる。