【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28−29年度 国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)「超高感度無線無電極MEMS水晶振動子センサーの開発」に係る委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の凹部の底面から突出した第1の支持部材に振動子が耐熱接着剤によって接着された第1の基板を、第2の凹部の底面から突出した第2の支持部材を有する第2の基板の前記第2の支持部材に前記振動子が対向するように前記第2の基板と接合する第1の工程と、
前記第1の工程の後、前記耐熱接着剤を除去する第2の工程とを備える振動検出素子の製造方法。
前記サブ工程Dにおいて、前記第1および第2の凹部によって形成される空間内において前記振動子の露出した表面が前記第2の支持部材に対向するように前記第1の基板を前記第2の基板と接合する、請求項3に記載の振動検出素子の製造方法。
前記サブ工程Bは、前記サブ工程B−2の後、前記耐熱接着剤のうち、前記第1の支持部材に対向する部分のみを残すように前記耐熱接着剤をパターンニングするサブ工程B−5を更に含み、
前記サブ工程B−3は、前記サブ工程B−5の後に実行される、請求項6に記載の振動検出素子の製造方法。
前記耐熱接着剤は、有機材料単体、または数十nm〜数百nmの粒径を有する粒子を含む有機材料からなる、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の振動検出素子の製造方法。
前記第2の工程において、前記耐熱接着剤は、塩基性の溶液、酸性の溶液および有機系の溶液のいずれかによって除去される、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の振動検出素子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0023】
図1は、この発明の実施の形態による振動検出素子の斜視図である。
図2は、
図1に示す線II−II間における振動検出素子の断面図である。なお、
図1においては、アンテナが省略されている。
【0024】
図1および
図2を参照して、この発明の実施の形態による振動検出素子10は、基板1〜3と、振動子4と、アンテナ5,6とを備える。
【0025】
基板2は、凹部21と、支持部材22とを有する。基板3は、凹部31と、支持部材32と、送廃液口33とを有する。支持部材22は、凹部21の底面21Aから凹部32の底面31Aへ向かって突出している。支持部材32は、凹部31の底面31Aから凹部21の底面21Aへ向かって突出している。基板3の凹部31は、基板2の凹部21に対向している。支持部材22,32の各々は、例えば、円柱形状からなる。送廃液口33は、基板3の外表面から凹部31の底面31Aに至るまで基板3を厚み方向に貫通する。
【0026】
基板1は、陽極接合によって基板2の一方の面に接合される。基板3は、凹部31が凹部21に対向するように陽極接合によって基板2の他方の面に接合される。その結果、凹部21,31によって空間部SPが形成される。
【0027】
振動子4は、例えば、四角形の平面形状を有し、例えば、水晶からなる。そして、振動子4は、空間部SP内において、支持部材22(または支持部材32)に接して配置される。
図2においては、2個の支持部材22が図示されているが、実際には、
図1に示すように、2個よりも多くの支持部材22が凹部21内に形成されている。支持部材32についても同様である。そして、N1個の支持部材22およびN2個の支持部材32が設けられる。N1個およびN2個の各々は、振動子4が撓みによって凹部21の底面21Aまたは凹部31の底面31Aに接触するのを防止することができる個数である。N1個の具体的な数値は、振動子4が撓みによって凹部21の底面21Aに接触するのを防止することができるように支持部材22間の距離を考慮して決定され、N2個の具体的な数値は、振動子4が撓みによって凹部31の底面31Aに接触するのを防止することができるように支持部材32間の距離を考慮して決定される。なお、N1およびN2は、相互に同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0028】
領域REGに形成される支持部材22は、検査対象の溶液を流路7から空間部SPの全域に流すように機能する。つまり、領域REGに形成される支持部材22は、検査対象の溶液が空間部SPの中心付近を通過して流路8へ流れるのではなく、検査対象の溶液が振動子4の面内方向にも広がって空間部SPを通過し、流路8へ流れるように機能する。この場合、領域REGにおいて、支持部材22は、流路7から空間部SPへ向かうに従って個数が増加するように配置される。
【0029】
基板2,3が相互に接合されることによって、流路7,8が形成されるとともに、導入口9および排出口11が形成される。
【0030】
流路7は、一方端が導入口9に連通し、他方端が空間部SPに連通する。流路8は、一方端が排出口11に連通し、他方端が空間部SPに連通する。導入口9は、流路7の一方端に連通する。排出口11は、流路8の一方端に連通する。
【0031】
基板1,3の各々は、例えば、ガラスからなる。基板2は、例えば、シリコン(Si)からなる。振動子4の厚みは、一般的には、10μmよりも薄く、例えば、3μmである。
【0032】
アンテナ5,6の各々は、例えば、0.2mmφ〜1mmφの直径を有する銅線からなる。アンテナ5は、基板3に接して基板3上に配置される。アンテナ6は、基板1に接して基板1の下側に配置される。このように、アンテナ6は、振動子4に対してアンテナ5と反対側に配置される。
【0033】
振動子4は、アンテナ5によって電磁場が印加されると、振動する。アンテナ5は、電磁場を振動子4に印加する。アンテナ6は、電磁場が印加されたことによって振動子4が振動したときの振動信号からなる受信信号を受信する。
【0034】
このように、振動検出素子10は、接地電位に接続されたアンテナを用いずに振動子4を振動させるとともに振動子4の振動を非接触で検出する。
【0035】
なお、アンテナ5,6は、相互に対向するように配置される必要はなく、振動子4に対向するように配置されていればよい。例えば、アンテナ5が、
図2の紙面上、振動子4の幅方向の中心よりも左側に配置され、アンテナ6が、
図2の紙面上、振動子4の幅方向の中心よりも右側に配置されていてもよく、また、その逆であってもよい。
【0036】
また、
図2の紙面の左右方向において、支持部材22の配置位置は、支持部材32の配置位置と同じになるように図示されているが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、
図2の紙面の左右方向において、支持部材22の配置位置は、支持部材32の配置位置と異なっていてもよい。
【0037】
図3は、
図2に示す空間部SPおよびその周辺の拡大図である。
図3を参照して、基板1の厚みD1は、例えば、250μmであり、基板2の厚みD2は、例えば、60μmであり、基板3の厚みD3は、例えば、250μmである。
【0038】
空間部SP(
図3における斜線部)の幅Wは、例えば、2mmであり、空間部SPの高さH1は、例えば、85μmである。
図3の紙面に垂直な方向における空間部SPの長さは、例えば、2.9mmである。支持部材22,32の高さH2は、例えば、30μmであり、支持部材22,32の直径は、例えば、30μmである。振動子4と支持部材32との間隔GPは、例えば、20μmである。
【0039】
なお、支持部材22の高さは、支持部材32の高さと異なっていてもよく、支持部材22の直径は、支持部材32の直径と異なっていてもよい。また、支持部材22,32の各々は、円柱形状に限らず、長さ方向に垂直な方向における断面形状が多角形である柱状形状であってもよい。そして、支持部材22の形状は、支持部材32の形状と異なっていてもよい。更に、支持部材22は、長さ方向の断面形状の先端部が支持部材32に向かう方向に突出している断面形状であってもよく、支持部材32は、長さ方向の断面形状の先端部が支持部材22に向かう方向に突出している断面形状であってもよい。支持部材22,32の先端部を突出させることによって、振動子4と支持部材22,32との接触を点接触に近づけることができ、振動子4の振動を促進できる。その結果、検出対象物を検出するときの検出感度を向上できる。
【0040】
振動子4は、
図3の紙面の左右方向において、例えば、1.7mmの長さを有し、
図3の紙面に垂直な方向において、例えば、2.5mmの長さを有する。
【0041】
なお、
図3は、ガラス基板1がガラス基板3よりも下側に配置されているので、振動子4は、シリコン基板2の支持部材22に接しているが、
図3に示すガラス基板1とガラス基板3とを逆転した場合には、振動子4は、ガラス基板3の支持部材32に接し、振動子4と支持部材22との間隔は、例えば、20μmである。
【0042】
上述したように、振動子4は、空間部SP内において、凹部21の底面21Aまたは凹部31の底面31Aに接触せず、支持部材22または支持部材32に接触した状態で保持されるので、安定に振動することができる。
【0043】
図4は、
図1および
図2に示す振動検出素子10の製造方法を示す工程図である。
図4を参照して、振動検出素子10の製造が開始されると、ガラス基板に流路を作製する(工程S1)。
【0044】
そして、水晶板を研磨およびパターンニングして振動子を作成する(工程S2)。引き続いて、シリコン基板に流路を作製する(工程S3)。その後、振動子をパッケージして振動検出素子10を作製する(工程S4)。これによって、振動検出素子10が完成する。
【0045】
図5は、
図4に示す工程S1の詳細な工程を示す工程図である。なお、
図5は、
図1に示す線II−II間における断面図によって工程S1の詳細な工程を示す。
【0046】
図5を参照して、工程S1の詳細な工程が開始されると、ガラス基板100を準備する(工程A−1)。そして、ガラス基板100の一方の表面にレジストを塗布し、その塗布したレジストをフォトリソグラフィによってパターンニングしてレジストパターン101を作製する(工程A−2)。
【0047】
引き続いて、レジストパターン101をマスクとして、バッファードフッ酸を用いてガラス基板100をウェットエッチングし、凹部31およびピラー(支持部材32を構成する)を作製する(工程A−3)。
【0048】
なお、工程A−2,A−3によって、
図1に示す流路7,8を構成する部分、導入口9を構成する部分、および排出口11を構成する部分も作製される。
【0049】
その後、機械加工またはブラスト加工によって送廃液口33を形成する(工程A−4)。これによって、ガラス基板3が作製され、工程S1の詳細な工程が終了する。
【0050】
図6および
図7は、それぞれ、
図4に示す工程S2の詳細な工程を示す第1および第2の工程図である。なお、
図6および
図7は、
図1に示す線II−II間における断面図によって工程S2の詳細な工程を示す。
【0051】
図6を参照して、工程S2の詳細な工程が開始されると、シリコン基板110を準備する(工程B1−1)。
【0052】
そして、シリコン基板110の一方の面に接着剤111を塗布する(工程B1−2)。塗布された接着剤111は、「接着層」を構成する。接着剤111は、例えば、エポキシ系樹脂からなる。このエポキシ系樹脂は、金属粒子等の他の材料が含まれていない純粋な樹脂である。より具体的には、有機材料のエポキシ系樹脂、または無機材料である金属薄膜を用いることができる。そして、塗布された接着剤111の厚みは、例えば、数百nmである。また、接着剤を介さずに、基板同士を直接接合する表面活性化接合を利用してもよい。
【0053】
引き続いて、接着剤111によってATカット水晶基板112をシリコン基板110に張り合わせる(工程B1−3)。
【0054】
その後、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)によってATカット水晶基板112を所望の厚み(例えば3μm)に研磨する(工程B1−4)。
【0055】
そして、研磨された水晶板113の表面に耐熱接着剤114を塗布する(工程B1−5)。耐熱接着剤114としては、例えば、東レ株式会社の製品名TP−424の耐熱接着剤が用いられる。この耐熱接着剤は、ポリイミド樹脂と、シリカと、ジプロピレングリコールメチルエーテルと、N−メチル−2−ピロリドンとを含む。ポリイミド樹脂の含有量は、例えば、30〜70%であり、シリカの含有量は、例えば、1〜10%であり、ジプロピレングリコールメチルエーテルの含有量は、例えば、30〜70%であり、N−メチル−2−ピロリドンの含有量は、例えば、5〜30%である。また、シリカの粒径は、数十nm〜数百nmである。このように、耐熱接着剤114は、数十nm〜数百nmの粒径を有する粒子を含む。そして、耐熱接着剤114は、400℃における体積変化が常温比で数%以下である。なお、耐熱接着剤は、シリカを含まない有機材料単体からなっていてもよい。
【0056】
耐熱接着剤114は、例えば、スピンコートによって水晶板113の表面に塗布され、厚みは、例えば、20μmである。なお、耐熱接着剤114は、ディスペンサーによって液滴状に水晶板113の表面に塗布されてもよい。
【0057】
耐熱接着剤114を塗布した後、例えば、350℃以上の温度で耐熱接着剤114を熱処理して耐熱接着剤114を硬化させる。この場合、耐熱接着剤114を350℃以上の温度で熱処理することによって、ポリイミド系の接着剤である耐熱接着剤114のイミド化が促進されるとともに溶媒が気化し、初期状態の泥状から硬質状になる。
【0058】
耐熱接着剤114を硬化させると、耐熱接着剤114の温度を常温に戻した後、真空中または窒素雰囲気における加熱プレスを用いて、水晶板113が接着されたシリコン基板110を、耐熱接着剤114によって、工程S1によって作製されたガラス基板3に張り合わせる(工程B1−6)。真空中で加熱プレスする場合、雰囲気の圧力は、例えば、10kPa以下であり、加熱プレス時の加熱温度は、例えば、150℃〜220℃であり、加熱プレス時の圧力は、例えば、55.5kPa〜155kPaである。窒素雰囲気中で加熱プレスする場合、窒素雰囲気中の酸素濃度は、10ppm以下であり、加熱プレスするときの加熱温度および圧力は、上記と同じである。なお、工程B1−6における加熱プレスによって、耐熱接着剤114の厚みは、20μmよりも若干薄くなる。
【0059】
なお、工程B1−5および工程B1−6は、耐熱接着剤114を薄膜上に塗布し、熱処理により硬化させ、一旦、常温に戻した後、再び、加熱および加圧することで、ガラス基板3とシリコン基板110とを張り合わせる工程を構成する。
【0060】
図7を参照して、工程(B1−6)の後、XeF
2ガス、またはSF
6ガスとO
2ガスとの混合ガスを用いたプラズマエッチングによってシリコン基板110をエッチングする(工程B1−7)。この場合、エッチング時の圧力は、10Paであり、パワーは、1kWであり、ステージ温度は、20℃である。また、XeF
2ガスを用いたプラズマエッチング装置としては、VPE−4F(サムコ株式会社製)、SF
6ガスとO
2ガスの混合ガスを用いたプラズマエッチング装置としては、RIE−10NR(サムコ株式会社製)を用いることができる。
【0061】
そして、O
2ガスを用いたプラズマによって、接着剤111の表面に高エネルギー状態の酸素(酸素ラジカル)を照射し、接着剤111を構成する炭素と結合させ、CO
2として気化、分解させ、アッシングによって接着剤111を除去する(工程B1−8)。この場合、アッシングの圧力は、10Paであり、パワーは、1kWであり、ステージ温度は、20℃である。これによって、水晶板113の表面を露出させる。
【0062】
その後、水晶板113の表面にレジストを塗布し、その塗布したレジストをフォトリソグラフィによってパターンニングしてレジストパターン115を形成する(工程B1−9)。
【0063】
引き続いて、レジストパターン115をマスクとして、CHF
3ガスを用いたプラズマエッチングによって水晶板113をエッチングし、振動子4を作製する(工程B1−10)。この場合、エッチング時の圧力は、20Paであり、パワーは、100Wであり、ステージ温度は、20℃である。また、プラズマエッチング装置としては、RIE-800iPC(サムコ株式会社製)を用いることができる。
【0064】
そして、東レ株式会社の製品名TOS−02の除去剤を用いて、振動子4と支持部材32との間の耐熱接着剤114以外の耐熱接着剤114を除去する(工程B1−11)。この場合、耐熱接着剤114は、製品名TOS−02の除去剤の溶液を用いて除去される。製品名TOS−02の除去剤は、塩基性の除去剤であり、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)と、モノエタノールアミン(MEA)と、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)と、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)と、水とを含む。
【0065】
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)の含有量は、例えば、10〜50重量%であり、モノエタノールアミン(MEA)の含有量は、例えば、10〜50重量%であり、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の含有量は、例えば、10〜50重量%であり、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の含有量は、例えば、0.1〜10重量%であり、水の含有量は、例えば、0.5〜30重量%である。
【0066】
なお、耐熱接着剤は、塩基性の溶液に限らず、酸性の溶液または有機系の溶液によって除去されてもよい。
【0067】
工程(B1−11)を実行することによって、振動子4が耐熱接着剤114によってガラス基板3の支持部材32にのみ接着した構造が形成される。これによって、工程S2の詳細な工程が終了する。
【0068】
図8および
図9は、それぞれ、
図4に示す工程S2の別の詳細な工程を示す第1および第2の工程図である。なお、
図8および
図9は、
図1に示す線II−II間における断面図によって工程S2の詳細な工程を示す。
【0069】
図8を参照して、工程S2の詳細な工程が開始されると、
図6に示す工程B1−1〜工程B1−4と同じ工程が順次実行される(工程B2−1〜工程B2−4)。
【0070】
そして、工程B2−4の後、水晶板113の表面にレジストを塗布し、その塗布したレジストをフォトリソグラフィによってパターンニングしてレジストパターン116を形成する(工程B2−5)。
【0071】
その後、レジストパターン116をマスクとして、CHF
3ガスを用いたプラズマエッチングによって水晶板113をエッチングし、振動子4を作製する(工程B2−6)。この場合、プラズマエッチング時の圧力等の条件は、上述したとおりである。
【0072】
図9を参照して、工程B2−6の後、上述したO
2ガスを用いたアッシングによって、接着剤111のうち、振動子4に接していない部分を除去する(工程B2−7)。
【0073】
そして、
図6の工程B1−5と同じ方法によって振動子4の表面に耐熱接着剤117を塗布し、その塗布した耐熱接着剤117を硬化させる(工程B2−8)。耐熱接着剤117の代表的な具体例、塗布方法および厚みは、上述した耐熱接着剤114の具体例、塗布方法および厚みと同じである。
【0074】
そうすると、真空中または窒素雰囲気における加熱プレスを用いて、振動子4が接着されたシリコン基板110を、耐熱接着剤117によって、工程S1によって作製されたガラス基板3に張り合わせる(工程B2−9)。この場合、真空中で加熱プレスするときの雰囲気の圧力、加熱プレス時の加熱温度、および加熱プレス時の圧力の代表的な条件は、上述したとおりである。また、窒素雰囲気中で加熱プレスするときの加熱温度および圧力の代表的な条件についても、上記と同じである。
【0075】
なお、工程B2−8および工程B2−9は、耐熱接着剤117を薄膜上に塗布し、熱処理により硬化させ、一旦、常温に戻した後、再び、加熱および加圧することで、ガラス基板3とシリコン基板110とを張り合わせる工程を構成する。
【0076】
工程B2−9の後、XeF
2ガス、またはSF
6ガスとO
2ガスとの混合ガスを用いたプラズマエッチングによってシリコン基板110をエッチングする(工程B2−10)。この場合、エッチング時の圧力等の条件は、上述したとおりである。
【0077】
そして、上述したO
2ガスを用いたアッシングによって接着剤111を除去し、振動子4の表面を露出させる(工程B2−11)。これによって、工程S2の詳細な工程が終了する。
【0078】
なお、
図8および
図9に示す工程S2の詳細な工程においては、工程B2−8において、耐熱接着剤117を振動子4の表面に塗布した後、その塗布した耐熱接着剤117をガラス基板3の支持部材32に対向する部分だけが残るようにフォトリソグラフィによってパターンニングし、その後、工程B2−9を実行するようにしてもよい。これによって、振動子4は、支持部材32に対向する部分だけが耐熱接着剤117によって支持部材32に接着され、後述する
図15の工程D2−2において、耐熱接着剤117を容易に除去できる。その結果、振動子4の破損を更に防止できる。
【0079】
図10および
図11は、それぞれ、
図4に示す工程S2の更に別の詳細な工程を示す第1および第2の工程図である。なお、
図10および
図11は、
図1に示す線II−II間における断面図によって工程S2の詳細な工程を示す。
【0080】
図10を参照して、工程S2の詳細な工程が開始されると、
図6に示す工程B1−1〜工程B1−4と同じ工程が順次実行される(工程B3−1〜工程B3−4)。
【0081】
そして、水晶板113が接着剤111によって接着されたシリコン基板110をチップサイズにダイシングする。この場合、水晶板113は、水晶板113の表面側から見た平面視において、例えば、碁盤目状に切断されるようにダイシングされる。これによって、振動子4が接着剤111によって接着されたシリコン基板110を1つのチップとした複数のチップが作製される(工程B3−5)。
【0082】
図11を参照して、工程B3−5の後、
図6の工程B1−5と同じ方法によって複数のチップの複数の振動子4の表面に耐熱接着剤118を塗布し、その塗布した耐熱接着剤118を硬化させる(工程B3−6)。耐熱接着剤118の具体例、塗布方法および厚みは、上述した耐熱接着剤114の具体例、塗布方法および厚みと同じである。
【0083】
そうすると、真空中または窒素雰囲気における加熱プレスを用いて、振動子4が接着されたシリコン基板110を、耐熱接着剤118によって、工程S1によって作製されたガラス基板3に張り合わせる(工程B3−7)。この場合、真空中で加熱プレスするときの雰囲気の圧力、加熱プレス時の加熱温度、および加熱プレス時の圧力は、上述したとおりである。また、窒素雰囲気中で加熱プレスするときの加熱温度および圧力は、上記と同じである。
【0084】
なお、工程B3−6およびB3−7は、耐熱接着剤118を薄膜上に塗布し、熱処理により硬化させ、一旦、常温に戻した後、再び、加熱および加圧することで、ガラス基板3とシリコン基板110とを張り合わせる工程を構成する。
【0085】
工程B3−7の後、XeF
2ガス、またはSF
6ガスとO
2ガスを用いたプラズマエッチングによってシリコン基板110をエッチングする(工程B3−8)。この場合、エッチング時の圧力等の条件は、上述したとおりである。
【0086】
そして、上述したO
2ガスを用いたアッシングによって接着剤111を除去し、振動子4の表面を露出させる(工程B3−9)。これによって、工程S2の詳細な工程が終了する。
【0087】
図6および
図7に示す工程S2の詳細な工程においては、水晶板113のうち、レジストパターン115に接していない部分が除去され(工程B1−9,B1−10参照)、
図8および
図9に示す工程S2の詳細な工程においては、水晶板113のうち、レジストパターン116に接していない部分が除去される(工程B2−5,B2−6参照)。
【0088】
一方、
図10および
図11に示す工程S2の詳細な工程においては、水晶板113の一部は、ダイシングによってのみ除去されるだけである(工程B3−5参照)。
【0089】
従って、
図10および
図11に示す工程S2の詳細な工程によれば、水晶板113を除去する量が最小になり、水晶板113を最も有効に活用できる。
【0090】
また、水晶板113から振動子4を作製する際にレジストを用いないので、フォトリソグラフィを用いる必要がなく、工程数を少なくできる。
【0091】
図12および
図13は、それぞれ、
図4に示す工程S3の詳細な工程を示す第1および第2の工程図である。なお、
図12および
図13は、
図1に示す線II−II間における断面図によって工程S3の詳細な工程を示す。
【0092】
図12を参照して、工程S3の詳細な工程が開始されると、ガラス基板1とシリコン基板130とを準備し、ガラス基板1とシリコン基板130を陽極接合によって接合する(工程C−1)。この場合、陽極接合は、例えば、350℃の温度で600Vの電圧を印加して行われる。
【0093】
そして、CMPによってシリコン基板130を所望の厚み(例えば、60μm)に研磨し、シリコン基板140を作製する(工程C−2)。
【0094】
その後、TEOS(テトラエチルオルソシリケート:Si(OC
2H
5)
4)を原料ガスとして、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)および熱CVD等によってシリコン酸化膜141をシリコン基板140の表面に形成する(工程C−3)。なお、TEOSを用いてシリコン酸化膜を形成するときの基板温度および圧力等は、公知であるので、省略する。また、
図12,13においては、TEOSを原料ガスとして形成されたシリコン酸化膜を「TEOS膜」と表記する。
【0095】
工程C−3の後、シリコン酸化膜141の表面にレジストを塗布し、その塗布したレジストをフォトリソグラフィによってパターンニングしてレジストパターン142をシリコン酸化膜141の表面に形成する(工程C−4)。
【0096】
そして、CHF
3ガスを用いたプラズマエッチングによって、レジストパターン142をマスクとしてシリコン酸化膜141をエッチングし、シリコン基板140の表面にシリコン酸化膜143を形成する(工程(C−5)。この場合、エッチング時の圧力は、20Paであり、パワーは、100Wであり、ステージ温度は、20℃である。
【0097】
その後、レジストをシリコン基板140およびシリコン酸化膜143の表面に塗布し、その塗布したレジストをフォトリソグラフィによってパターンニングしてレジストパターン144をシリコン基板140およびシリコン酸化膜143の表面に形成する(工程C−6)。
【0098】
引き続いて、レジストパターン144をマスクとして、SF
6ガスを用いたプラズマエッチングによってシリコン基板140をエッチングするエッチング工程と、C
4H
8ガスを用いたプラズマCVDによって、エッチングされたシリコン基板140の側壁をコーティングするコーティング工程とを繰り返し行い、シリコン基板140をエッチングする(工程C−7)。
【0099】
この場合、エッチング工程における圧力は、10Paであり、パワーは、2kWであり、ステージ温度は、20℃である。また、コーティング工程における圧力は、10Paであり、パワーは、3kWであり、ステージ温度は、20℃である。
【0100】
図13を参照して、工程C−7の後、上述したO
2ガスを用いたアッシングによってレジストパターン144を除去する。これによって、シリコン基板140の一部に凸部145が形成される(工程C−8)。
【0101】
そして、シリコン酸化膜143をマスクとして、上述したエッチング工程と、上述したコーティング工程とを繰り返し行い、シリコン基板140を更にエッチングする(工程C−9)。この場合、エッチングされたシリコン基板140の側壁は、コーティングされているので、シリコン酸化膜143によって被覆されていないシリコン基板140の一部分は、シリコン基板140の厚み方向にのみエッチングされる。これによって、シリコン基板2の厚み方向に深い凹部21と、凹部21内に形成された支持部材22とを有するシリコン基板2が作製される。なお、工程C−9において形成された凹部21の深さは、例えば、40μmである。
【0102】
その後、バッファードフッ酸によってシリコン酸化膜143を除去する(工程C−10)。これによって、工程S3の詳細な工程が終了する。
【0103】
工程C−9は、シリコン基板140を厚み方向にのみエッチングする工程であるので、工程C−8において形成された凸部145の高さは、工程C−9において形成された支持部材22の高さに等しい。従って、工程C−8は、最終的に形成される支持部材22の高さを設定する工程である。
【0104】
なお、工程C−3〜C−10によって、
図1に示す流路7,8を構成する部分、導入口9を構成する部分、および排出口11を構成する部分も作製される。
【0105】
図14は、
図4に示す工程S4の詳細な工程を示す図である。なお、
図14は、
図1に示す線II−II間における断面図によって工程S4の詳細な工程を示す。
【0106】
図14を参照して、工程S4の詳細な工程が開始されると、
図7の工程B1−11に示す、耐熱接着剤114によってガラス基板3の支持部材32に接着された振動子4が凹部21内の支持部材22に接するようにガラス基板3をガラス基板1およびシリコン基板2上に配置し、シリコン基板2とガラス基板3とを陽極接合によって接合する(工程D1−1)。この場合も、陽極接合は、例えば、350℃の温度で600Vの電圧を印加して行われる。これによって、空間部SPが形成される。
【0107】
そして、上述した除去剤を送廃液口33から空間部SPに充填し、耐熱接着剤114を除去する(工程D1−2)。この場合、耐熱接着剤114が除去されれば、除去剤は、送廃液口33から外部へ排出される。これによって、工程S4の詳細な工程が終了する。
【0108】
工程D1−2が実行されると、振動子4は、空間部SP内において、支持部材22,32のいずれにも固定されずに支持部材22,32のいずれか一方に接触した状態となる。従って、振動子4は、空間部SP内において振動可能である。
【0109】
工程D1−1に示すように、耐熱接着剤114は、支持部材32にのみ塗布されているので、工程D1−2において、耐熱接着剤114を除去する際、除去すべき耐熱接着剤の量を最小にでき、振動子4に与える損傷を抑制して耐熱接着剤114を容易に除去できる。
【0110】
図15は、
図4に示す工程S4の別の詳細な工程を示す図である。なお、
図15は、
図1に示す線II−II間における断面図によって工程S4の詳細な工程を示す。
【0111】
図15を参照して、工程S4の詳細な工程が開始されると、
図9の工程B2−11に示す、耐熱接着剤117によってガラス基板3の支持部材32に接着された振動子4が凹部21内の支持部材22に接するようにガラス基板3をガラス基板1およびシリコン基板2上に配置し、シリコン基板2とガラス基板3とを陽極接合によって接合する(工程D2−1)。この場合も、陽極接合は、例えば、350℃の温度で600Vの電圧を印加して行われる。これによって、空間部SPが形成される。
【0112】
そして、上述した除去剤を送廃液口33から空間部SPに充填し、耐熱接着剤117を除去する(工程D2−2)。この場合、耐熱接着剤117が除去されれば、除去剤は、送廃液口33から外部へ排出される。これによって、工程S4の詳細な工程が終了する。
【0113】
工程D2−2が実行されると、振動子4は、空間部SP内において、支持部材22,32のいずれにも固定されずに支持部材22,32のいずれか一方に接触した状態となる。従って、振動子4は、空間部SP内において振動可能である。
【0114】
なお、
図11の工程B3−9に示す、耐熱接着剤118によってガラス基板3の支持部材32に接着された振動子4を用いて振動検出素子10を作製する場合も、工程S4の詳細な工程は、
図15に示す工程D2−1,D2−2に従って実行される。この場合、工程D2−2においては、耐熱接着剤118が、上述した除去剤によって除去される。
【0115】
上述した振動検出素子10の製造工程を用いれば、基本共振周波数が1GHz以上(振動子4の厚みが1.7μm以下)の振動検出素子10を実現できる。従って、バイオセンサーとして使用した場合、理論的な感度として、既存品であるBiolin Scientific社の水晶振動子バイオセンサーの8万倍程度の感度を実現できる。
【0116】
上述した振動検出素子10の製造工程においては、振動子4は、シリコン基板110に固定された水晶板112を研磨およびパターンニング(またはダイシング)して作製される(
図6の工程B1−3,B1−4、
図7の工程B1−8,B1−9、
図8の工程B2−3〜B2−6、
図10の工程B3−3〜B3−5を参照)。
【0117】
また、振動子4は、ガラス基板3に固定された状態でシリコン基板2の支持部材22に接するように配置され、その後、シリコン基板2がガラス基板3と陽極接合され、耐熱接着剤114,117,118が除去される(
図14の工程D1−1,D1−2および
図15の工程D2−1,D2−2参照)。
【0118】
従って、破損させずに、厚みが10μmよりも薄い振動子4を作製できる。また、振動検出素子10の製造工程においては、振動子4のみをピンセット等で操作することはないので、振動子4の厚みが10μmよりも薄くなっても、振動子4の破損を防止して振動検出素子10を製造できる。
【0119】
このように、この発明の実施の形態による振動検出素子10の製造方法は、耐熱接着剤114,117,118をスペーサーとして使用するとともに耐熱接着剤114,117,118を除去する点に特徴がある。
【0120】
耐熱接着剤は、封止剤として使用されるものであり、従来においては、一度、形成されると、その後、除去されることは無かった。つまり、耐熱接着剤は、永久膜であった。
【0121】
しかし、この発明の実施の形態においては、水晶板を所望の形状にパターンニング(またはダイシング)した後、最終的に水晶板を振動子4として空間部SPに封止した後に耐熱接着剤114,117,118を除去する。
【0122】
従って、耐熱接着剤を除去する点は、従来の使用状況では、到底、想定できないことである。
【0123】
各種の材料について検討したが、耐熱接着剤以外の材料を用いた場合、熱処理した段階で炭化してしまい、うまく除去できなかった。
【0124】
耐熱接着剤の除去に関しては、耐熱接着剤と除去剤との組み合わせが重要である。この発明の実施の形態においては、空間部SPに振動子4を閉じ込めた状態で耐熱接着剤114,117,118を除去し、振動子4を支持部材22(または支持部材32)によって支持する。
【0125】
つまり、振動子4は、耐熱接着剤114,117,118を除去するまでは固定されており、耐熱接着剤114,117,118を除去することにより、支持部材22(または支持部材32)と接触し、振動可能な状態になる。
【0126】
耐熱接着剤114,117,118は、除去剤の溶液に溶け、除去剤の溶液は、送廃液口33から排出されるので、振動子4が配置された空間部SPに残らない。従って、振動子4の厚みが10μm未満になっても、振動子4だけを空間部SPに閉じ込めることができる。
【0127】
図8および
図9に示す工程は、
図6および
図7に示す工程よりも好ましい。その理由は、次のとおりである。
【0128】
図6および
図7に示す工程では、耐熱接着剤114を水晶板113の全面に塗布している(工程B1−5参照)。
【0129】
一方、
図8および
図9に示す工程では、耐熱接着剤117をパターンニング後の振動子4のみに塗布し、振動子4以外の部分には、塗布していない(工程B2−8参照)。即ち、必要な部分のみに耐熱接着剤117を塗布している。
【0130】
また、上述したように、フォトリソグラフィによって耐熱接着剤117を支持部材32と接触する振動子4の一部分にのみ形成するようにしてもよい。
【0131】
従って、
図8および
図9に示す工程を用いることによって、耐熱接着剤117を塗布する領域を必要最小限にできる。
【0132】
その結果、
図8および
図9に示す工程では、耐熱接着剤117を除去し易くなり、振動子4の破損を更に防止できる。
【0133】
なお、
図10および
図11に示す工程においては、耐熱接着剤118は、ダイシングした後の振動子4のみに塗布されるので(工程B3−6参照)、
図10および
図11に示す工程も、
図8および
図9に示す工程と同じ効果を享受できる。
【0134】
工程C−7では、SF
6ガスを用いたプラズマエッチングと、C
4H
8ガスを用いたコーティングとを繰り返し実行することにより、急峻な凹部を形成できる。
【0135】
耐熱接着剤114は、工程D1−2において除去され、耐熱接着剤117,118は、工程D2−2において除去される。その結果、振動子4と支持部材32との間隔を耐熱接着剤114,117,118の厚みによって調節できる。
【0136】
この発明の実施の形態においては、
図14に示す工程D1−1,D1−2が実行される場合、耐熱接着剤114の厚みと振動子4の厚みとの和d
tがシリコン基板2の表面から支持部材22の先端部までの距離L以下であればよい。和d
tが距離Lと同じであるとき、
図14の工程D1−1において、振動子4が支持部材22に接する。また、和d
tが距離Lよりも小さいとき、
図14の工程D1−1において、振動子4と支持部材22との間に隙間が存在する。振動子4と支持部材22との間に隙間が存在しても、
図14の工程D1−2において耐熱接着剤114を除去したとき、振動子4が支持部材22に接するので、空間部SP内において振動子4が支持部材22によって支持される。従って、和d
tが距離L以下であれば、振動子4は、支持部材22によって支持される。
【0137】
また、
図15に示す工程D2−1,D2−2が実行される場合、同様にして、耐熱接着剤117の厚みと振動子4の厚みとの和が距離L以下であればよく、耐熱接着剤118の厚みと振動子4の厚みとの和が距離L以下であればよい。
【0138】
図16は、入力電圧Vinおよび受信信号Rのタイミングチャートである。
図17は、共振周波数のタイミングチャートである。
【0139】
図16および
図17を参照して、振動検出素子10における検出対象物の検出方法について説明する。検出対象物を検出する場合、印加回路(図示せず)は、タイミングt1からタイミングt2までの間、振動波形からなる入力電圧Vinをアンテナ5に印加する。そして、印加回路は、タイミングt2以降、入力電圧Vinのアンテナ5への印加を停止する。
【0140】
そうすると、アンテナ5は、タイミングt1からタイミングt2までの間、入力電圧Vinに基づいて生成される振動電場Eを振動子4に印加する。
【0141】
振動子4は、振動電場Eが印加されると、逆圧電効果によって共振し、表面に電位分布が発生する。
【0142】
そうすると、アンテナ6は、振動子4の表面に発生した電位分布を振動波形からなる受信信号Rとして受信する。この場合、アンテナ6は、検出対象物が振動子4に付着していなければ、振動波形からなる受信信号R0を受信し、検出対象物が振動子4に付着していれば、振動波形からなる受信信号R1を受信する。そして、アンテナ6は、その受信した受信信号R0,R1を検出回路(図示せず)へ出力する。
【0143】
検出回路は、アンテナ6から受信信号R0を受信すると、その受信した受信信号R0の共振周波数f0を検出する。また、検出回路は、アンテナ6から受信信号R1を受信すると、その受信した受信信号R1の共振周波数f1(<f0)を検出する。そして、検出回路は、共振周波数の変化量Δf=f0−f1を検出し、検出対象物が振動子4に付着したことを検知する。
【0144】
なお、
図16に示した発振・検出方法は一例にすぎない。例えば、ネットワークアナライザーを用いて、その透過応答(S12やS21)、反射応答(S11やS22)を計測することによっても、同様に、共振周波数を測定することができる。
【0145】
検出対象物が振動子4に付着すると、振動子4の質量が大きくなるので、振動子4の共振周波数f1は、検出対象物が振動子4に付着しない場合に比べ、低下する。
【0146】
従って、検出回路は、入力電圧Vinがアンテナ5へ印加された後、受信信号Rをアンテナ6から受信し、検出対象物が振動子4に付着していないとき、受信信号Rから共振周波数f0を検出し、検出対象物が振動子4に付着すると、共振周波数f1まで徐々に変化する共振周波数fを検出する(
図17参照)。そして、検出回路は、共振周波数fの変化量Δf=f0−f1を検出し、検出対象物が振動子4に付着したことを検知する。
【0147】
振動子4の共振周波数をfとし、振動子4の質量をmとし、振動子4の質量の変化量(=検出対象物の質量)をΔmとした場合、振動子4の共振周波数の変化量Δfは、次式によって表される。
【0148】
Δf=f・Δm/m・・・(1)
このように、共振周波数の変化量Δfは、振動子4の質量の変化量Δm、すなわち、検出対象物の質量に比例し、振動子4の質量mに反比例する。したがって、検出対象物の質量が大きくなる程、または振動子4の質量(=厚み)が小さくなる程、共振周波数fの変化量Δfが大きくなり、検出対象物の振動子4への付着を検知し易くなる。
【0149】
振動検出素子10においては、導入口9および流路7を介して検査対象の液体を空間部SPに導入し流路8および排出口11を介して空間部SPから検査対象の液体を排出しながら、即ち、検査対象の液体を循環させながら、上述した方法によって検出対象物の検出が行なわれる。
【0150】
この場合、振動子4は、上述したように、支持部材22または支持部材32に接触するのみであるので、アンテナ5によって電磁場が印加されると、自由に振動する。従って、振動子4の安定な振動を確保して検出対象物を検出できる。
【0151】
上記においては、振動検出素子10は、ガラスからなる基板1,3とシリコンからなる基板2とを備えると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、振動検出素子10は、同じ種類の基板を備えていてもよい。
【0152】
また、上記においては、水晶板を研磨およびパターンニングして振動子4を作製すると説明したが、この発明の実施の形態によれば、これに限らず、一般的には、圧電体板を所望の厚みおよび所望の形状に研磨およびパターンニングして振動子4を作製してもよい。
【0153】
上述した実施の形態によれば、この発明の実施の形態による振動検出素子の製造方法は、第1の凹部の底面から突出した第1の支持部材に振動子が耐熱接着剤によって接着された第1の基板を、第2の凹部の底面から突出した第2の支持部材を有する第2の基板の第2の支持部材に振動子が対向するように第2の基板と接合する第1の工程と、第1の工程の後、前記耐熱接着剤を除去する第2の工程とを備えていればよい。
【0154】
第1の工程および第2の工程を備えていれば、振動子は、耐熱接着剤によって第1の支持部材に接着された状態で第1および第2の凹部からなる空間部内に配置され、耐熱接着剤を除去することによって第1の支持部材または第2の支持部材によって支持される。その結果、振動子が空間内に閉じ込められるまで、ピンセット等で振動子を移動等させる必要がなく、振動子の破損を防止できるからである。
【0155】
また、この発明の実施の形態によれば、振動検出素子の製造方法は、好ましくは、
第1の凹部と第1の凹部の底面から突出した第1の支持部材とを第1の基板に形成する第1の工程と、
振動子が接着された第2の基板を振動子の表面に塗布された耐熱接着剤によって第1の基板の表面に貼り合わせて振動子を耐熱接着剤によって第1の支持部材に接着させた後、第2の基板を除去し、振動子の耐熱接着剤が塗布された表面と反対側の表面を露出させる第2の工程と、
第1の凹部に対向する第2の凹部と、第2の凹部の底面から突出した第2の支持部材とを第3の基板に形成する第3の工程と、
第1および第2の凹部によって形成される空間内に振動子が配置されるように、振動子が耐熱接着剤によって第1の支持部材に接着された第1の基板を第3の基板と接合する第4の工程と、
第4の工程の後、耐熱接着剤を除去する第5の工程とを備えていればよい。
【0156】
第1の工程から第5の工程を備えていれば、振動子は、第2の基板に固定された状態で第1の基板の第1の支持部材に接着され、第1の基板の第1の支持部材に接着された状態で空間内に配置され、第1の基板と第3の基板とが接合された後に耐熱接着剤が除去されることにより、第1の支持部材または第2の支持部材に接触する状態となる。その結果、振動子が空間内に閉じ込められるまで、ピンセット等で振動子を移動等させる必要がなく、振動子の破損を防止できるからである。
【0157】
更に、この発明の実施の形態による振動検出素子は、第1の面と第1の面に対向する第2の面とを有する空間部を含む基材と、空間部の第1の面から第2の面の方向へ突出した第1の支持部材と、空間部の第2の面から第1の面の方向へ突出した第2の支持部材と、空間部内において振動可能に第1の支持部材または第2の支持部材に接して配置され、10μm未満の厚みを有する振動子とを備え、第1および第2の支持部材の各々は、振動子が第1の面または第2の面に接触するのを防止する複数の支持部を含んでいればよい。
【0158】
振動子が第1の面または第2の面に接触するのを防止できれば、振動子は、自由に振動できるからである。
【0159】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。