特許第6797063号(P6797063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797063
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】ピン制御方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20201130BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   H01L21/68 A
   H01L21/302 101G
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-80697(P2017-80697)
(22)【出願日】2017年4月14日
(65)【公開番号】特開2018-182102(P2018-182102A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 伸
(72)【発明者】
【氏名】堀口 将人
【審査官】 三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/084229(WO,A1)
【文献】 特開2007−273685(JP,A)
【文献】 特開2017−050534(JP,A)
【文献】 特開2003−203965(JP,A)
【文献】 特開2009−004545(JP,A)
【文献】 特開2011−204784(JP,A)
【文献】 特開2012−238758(JP,A)
【文献】 特開2014−187314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持して複数の駆動部によってそれぞれ上下に駆動される複数のピンの高さ位置をそれぞれ測定し、
測定された前記複数のピンの高さ位置を用いて、前記複数のピンから、速度制御の基準となる基準ピンを選択し、
選択された前記基準ピンに関して、前記複数のピンの高さ位置が測定されてから所定時間が経過した後における高さ位置である基準高さ位置を推定し、
推定された前記基準高さ位置に前記基準ピン以外の他のピンの高さ位置を一致させるための調整速度を算出し、前記他のピンを駆動する駆動部を制御して、前記他のピンの駆動速度を前記調整速度に調整する
ことを特徴とするピン制御方法。
【請求項2】
前記選択する処理は、測定された前記複数のピンの高さ位置が一致しない場合に、前記複数のピンのうち、高さ位置が最も低いピン又は最も高いピンを前記基準ピンとして選択することを特徴とする請求項1に記載のピン制御方法。
【請求項3】
前記推定する処理は、前記複数の駆動部による前記複数のピンの駆動が開始されてから前記複数のピンの高さ位置が測定される測定タイミングまでの経過時間と、前記測定タイミングにおいて測定された前記基準ピンの高さ位置とに基づいて、前記測定タイミングにおける前記基準ピンの駆動速度を算出し、算出した前記基準ピンの駆動速度と、前記所定時間と、前記測定タイミングにおいて測定された前記基準ピンの高さ位置とに基づいて、前記基準高さ位置を推定することを特徴とする請求項1又は2に記載のピン制御方法。
【請求項4】
前記測定する処理は、前記複数のピンの高さ位置が前回測定されてから前記所定時間が経過する度に、前記複数のピンの高さ位置をそれぞれ新たに測定し、
前記選択する処理、前記推定する処理及び前記調整する処理は、新たに測定される前記複数のピンの高さ位置が一致するまで、繰り返し実行されることを特徴とする請求項1に記載のピン制御方法。
【請求項5】
前記調整する処理は、前記複数のピンの高さ位置が一致する場合に、前記他のピンを駆動する駆動部を制御して、前記他のピンの駆動速度を前記基準ピンの駆動速度に調整することを特徴とする請求項4に記載のピン制御方法。
【請求項6】
前記複数のピンの高さ位置は、前記基板の載置台の載置面又は当該載置面から所定の距離だけ下方の基準面を基準とした前記複数のピンの先端の位置であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のピン制御方法。
【請求項7】
処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、基板が載置される載置台と、
前記載置台の載置面から突没自在に前記載置台に設けられて前記基板の受け渡しを行う複数のピンと、
前記複数のピンをそれぞれ上下に駆動する複数の駆動部と、
前記複数のピンの高さ位置をそれぞれ測定する複数の測定器と、
前記基板を支持して前記複数の駆動部によってそれぞれ上下に駆動される前記複数のピンの高さ位置をそれぞれ測定し、測定された前記複数のピンの高さ位置を用いて、前記複数のピンから、速度制御の基準となる基準ピンを選択し、選択された前記基準ピンに関して、前記複数のピンの高さ位置が測定されてから所定時間が経過した後における高さ位置である基準高さ位置を推定し、推定された前記基準高さ位置に前記基準ピン以外の他のピンの高さ位置を一致させるための調整速度を算出し、前記他のピンを駆動する駆動部を制御して、前記他のピンの駆動速度を前記調整速度に調整する制御部と
を有することを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の種々の側面及び実施形態は、ピン制御方法及び基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばエッチングや成膜などの基板処理を行う基板処理装置では、半導体ウエハなどの基板を載置する載置台の載置面から突没するように複数のピンが載置台に設けられる。そして、これらの複数のピンが上昇又は下降されることによって、基板の受け渡しが行われる。複数のピンの制御手法として、例えば、複数のピンが取り付けられたベース部材を1つの駆動部によって上下に駆動することにより、ベース部材を介して複数のピンを一括で上昇又は下降させる手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−54933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術では、ベース部材の傾きに伴って複数のピンの高さ位置に差が生じ、結果として、複数のピンによって支持される基板の位置が予め定められた位置からずれてしまうという問題がある。
【0005】
これに対して、以下のようなベース部材を用いない手法が考えられる。例えば、複数のピンに独立に複数の駆動部を設け、複数の駆動部によって複数のピンをそれぞれ駆動する手法が考えられる。しかしながら、この手法では、各ピンの駆動速度のばらつきに伴って複数のピンの高さ位置に差が生じ、結果として、基板の位置ずれが生じる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示するピン制御方法は、1つの実施態様において、基板を支持して複数の駆動部によってそれぞれ上下に駆動される複数のピンの高さ位置をそれぞれ測定し、測定された前記複数のピンの高さ位置を用いて、前記複数のピンから、速度制御の基準となる基準ピンを選択し、選択された前記基準ピンに関して、前記複数のピンの高さ位置が測定されてから所定時間が経過した後における高さ位置である基準高さ位置を推定し、推定された前記基準高さ位置に前記基準ピン以外の他のピンの高さ位置を一致させるための調整速度を算出し、前記他のピンを駆動する駆動部を制御して、前記他のピンの駆動速度を前記調整速度に調整する。
【発明の効果】
【0007】
開示するピン制御方法の1つの態様によれば、基板の位置ずれを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る基板処理装置を概略的に示す図である。
図2図2は、図1に示す基板処理装置のステージSTを拡大して示す断面図である。
図3図3は、一実施形態に係るピン制御方法の流れの一例を示すフローチャートである。
図4図4は、一実施形態に係るピン制御方法の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本願の開示するピン制御方法及び基板処理装置の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付すこととする。
【0010】
図1は、一実施形態に係る基板処理装置を概略的に示す図である。図1では、一実施形態に係る基板処理装置の断面が示されている。
【0011】
図1に示すように、一実施形態の基板処理装置10は、平行平板型のプラズマ処理装置である。基板処理装置10は、処理容器12を備えている。処理容器12は、略円筒形状を有しており、その内部空間として処理空間Sを画成している。基板処理装置10は、処理容器12内に、ステージSTを備える。ステージSTは、被処理基板である半導体ウエハ(以下、「ウエハ」と記載)Wが載置される載置台である。一実施形態においては、ステージSTは、台14及び静電チャック50を有する。台14は、略円板形状を有しており、処理空間Sの下方に設けられている。台14は、例えばアルミニウム製であり、下部電極を構成している。
【0012】
一実施形態においては、基板処理装置10は、筒状保持部16及び筒状支持部17を更に備えている。筒状保持部16は、台14の側面及び底面の縁部に接して、台14を保持している。筒状支持部17は、処理容器12の底部から垂直方向に延在し、筒状保持部16を介して台14を支持している。
【0013】
基板処理装置10は、フォーカスリング18を更に備えている。フォーカスリング18は、台14の周縁部分の上面に載置される。フォーカスリング18は、ウエハWの処理精度の面内均一性を改善するための部材である。フォーカスリング18は、略環形状を有する板状部材であり、例えば、シリコン、石英、又はシリコンカーバイドから構成される。
【0014】
一実施形態においては、処理容器12の側壁と筒状支持部17との間には、排気路20が形成されている。排気路20の入口又はその途中には、バッフル板22が取り付けられている。また、排気路20の底部には、排気口24が設けられている。排気口24は、処理容器12の底部に嵌め込まれた排気管28によって画成されている。この排気管28には、排気装置26が接続されている。排気装置26は、真空ポンプを有しており、処理容器12内の処理空間Sを所定の真空度まで減圧することができる。処理容器12の側壁には、ウエハWの搬入出口を開閉するゲートバルブ30が取り付けられている。
【0015】
台14には、プラズマ生成用の高周波電源32が整合器34を介して電気的に接続されている。高周波電源32は、所定の高周波数(例えば13MHz)の高周波電力を下部電極、即ち、台14に印加する。
【0016】
基板処理装置10は、更に、処理容器12内にシャワーヘッド38を備えている。シャワーヘッド38は、処理空間Sの上方に設けられている。シャワーヘッド38は、電極板40及び電極支持体42を含んでいる。
【0017】
電極板40は、略円板形状を有する導電性の板であり、上部電極を構成している。電極板40には、プラズマ生成用の高周波電源35が整合器36を介して電気的に接続されている。高周波電源35は、所定の高周波数(例えば60MHz)の高周波電力を電極板40に印加する。高周波電源32及び高周波電源35によって台14及び電極板40に高周波電力がそれぞれ与えられると、台14と電極板40との間の空間、即ち、処理空間Sには高周波電界が形成される。
【0018】
電極板40には、複数のガス通気孔40hが形成されている。電極板40は、電極支持体42によって着脱可能に支持されている。電極支持体42の内部には、バッファ室42aが設けられている。基板処理装置10は、ガス供給部44を更に備えており、バッファ室42aのガス導入口25にはガス供給導管46を介してガス供給部44が接続されている。ガス供給部44は、処理空間Sに処理ガスを供給する。この処理ガスは、例えば、エッチング用の処理ガスであってもよく、又は、成膜用の処理ガスであってもよい。電極支持体42には、複数のガス通気孔40hにそれぞれ連続する複数の孔が形成されており、当該複数の孔はバッファ室42aに連通している。ガス供給部44から供給されるガスは、バッファ室42a、ガス通気孔40hを経由して、処理空間Sに供給される。
【0019】
一実施形態においては、処理容器12の天井部に、環状又は同心状に延在する磁場形成機構48が設けられている。この磁場形成機構48は、処理空間Sにおける高周波放電の開始(プラズマ着火)を容易にして放電を安定に維持するよう機能する。
【0020】
基板処理装置10では、台14の上面に静電チャック50が設けられている。静電チャック50は、一対の絶縁膜54a及び54bと、一対の絶縁膜54a及び54bにより挟まれた電極52とを含んでいる。電極52には、スイッチSWを介して直流電源56が接続されている。直流電源56から電極52に直流電圧が与えられると、クーロン力が発生し、当該クーロン力によってウエハWが静電チャック50上に吸着保持される。
【0021】
一実施形態においては、基板処理装置10は、ガス供給ライン58、及び、伝熱ガス供給部62を更に備えている。伝熱ガス供給部62は、ガス供給ライン58に接続されている。このガス供給ライン58は、静電チャック50の上面まで延びて、当該上面において環状に延在している。伝熱ガス供給部62は、例えばHeガスといった伝熱ガスを、静電チャック50の上面とウエハWとの間に供給する。
【0022】
(ステージSTの構成)
図2は、図1に示す基板処理装置のステージSTを拡大して示す断面図である。図2に示すようにステージSTは、載置面PFを有している。この載置面PFは、第1の領域R1及び第2の領域R2を含んでいる。第1の領域R1は、ウエハWを載置するための領域である。一実施形態においては、第1の領域R1は、静電チャック50の上面によって画成されており、略円形の領域である。第1の領域R1は、ステージSTの載置面の一例である。第2の領域R2は、フォーカスリング18を載置するための領域であり、第1の領域R1を囲むよう環状に設けられている。一実施形態においては、第2の領域R2は、台14の周縁部分の上面によって画成されている。
【0023】
ステージSTには、複数のピン70がステージSTの載置面(つまり、第1の領域R1)から突没するように設けられる。複数のピン70は、例えばステージSTに周方向に等間隔で設けられた複数の孔にOリングなどのシール部材を介して設けられる。一実施形態では、3つの孔が周方向に等間隔で設けられ、3つのピン70が3つの孔に設けられる。
【0024】
複数のピン70は、複数の駆動部72(図1参照)に独立に接続されて、複数の駆動部72によってそれぞれ上下に駆動される。例えば、各駆動部72は、モータ及びボールネジを含み、モータの回転運動をボールネジによって直線運動に変換することによって、各ピン70を上昇又は下降させる。そして、複数のピン70が上昇されることによって、複数のピン70と、ゲートバルブ30を介して処理容器12内にウエハWを搬送する搬送アームとの間でウエハWの受け渡しが行われる。そして、ウエハWが受け渡された複数のピン70が下降されることによって、ウエハWが、ステージSTの載置面(つまり、第2の領域R1の上面)に載置される。
【0025】
また、複数の駆動部72には、エンコーダなどの図示しない複数の測定器が設けられ、複数の測定器は、複数のピン70の高さ位置をそれぞれ測定する。ここで、複数のピン70の高さ位置とは、ステージSTの載置面又は当該載置面から所定の距離だけ下方の基準面を基準とした複数のピン70の先端の位置である。
【0026】
図1の説明に戻る。一実施形態においては、基板処理装置10は、制御部66を更に備えている。この制御部66は、排気装置26、スイッチSW、高周波電源32、整合器34、高周波電源35、整合器36、ガス供給部44、及び、伝熱ガス供給部62に接続されている。制御部66は、排気装置26、スイッチSW、高周波電源32、整合器34、高周波電源35、整合器36、ガス供給部44、及び、伝熱ガス供給部62のそれぞれに制御信号を送出する。制御部66からの制御信号により、排気装置26による排気、スイッチSWの開閉、高周波電源32からの電力供給、整合器34のインピーダンス調整、高周波電源35からの電力供給、整合器36のインピーダンス調整、ガス供給部44による処理ガスの供給、伝熱ガス供給部62による伝熱ガスの供給が制御される。
【0027】
基板処理装置10では、ガス供給部44から処理空間Sに処理ガスが供給される。また、電極板40と台14との間、即ち処理空間Sにおいて高周波電界が形成される。これにより、処理空間Sにおいてプラズマが発生し、処理ガスに含まれる元素のラジカル等により、ウエハWの処理が行われる。なお、ウエハWの処理は、任意の処理であり得るものであり、例えば、ウエハWのエッチング、又は、ウエハW上への成膜であってもよいが、限定されるものではない。
【0028】
また、制御部66は、後述するピン制御方法を行うように複数の駆動部72を制御する。詳細な一例を挙げると、制御部66は、ウエハWを支持して複数の駆動部72によってそれぞれ上下に駆動される複数のピン70の高さ位置をそれぞれ測定する。そして、制御部66は、測定された複数のピン70の高さ位置を用いて、複数のピン70から、速度制御の基準となる基準ピンを選択する。そして、制御部66は、選択された基準ピンに関して、複数のピン70の高さ位置が測定されてから所定時間が経過した後における高さ位置である基準高さ位置を推定する。そして、制御部66は、推定された基準高さ位置に基準ピン以外の他のピンの高さ位置を一致させるための調整速度を算出し、他のピンを駆動する駆動部72を制御して、他のピンの駆動速度を調整速度に調整する。ここで、複数のピン70の高さ位置とは、ステージSTの載置面又は当該載置面から所定の距離だけ下方の基準面を基準とした複数のピン70の先端の位置である。また、複数のピン70の高さ位置は、複数の駆動部72にそれぞれ設けられたエンコーダなどの図示しない複数の測定器を用いて、それぞれ測定されるものとする。
【0029】
次に、一実施形態に係るピン制御方法について説明する。図3は、一実施形態に係るピン制御方法の流れの一例を示すフローチャートである。なお、ここでは、複数のピン70が上昇されることによって、複数のピン70と、ゲートバルブ30を介して処理容器12内にウエハWを搬送する搬送アームとの間でウエハWの受け渡しが行われる場合の処理の流れを説明するものとする。
【0030】
図3に示すように、基板処理装置10の制御部66は、搬送アームによって処理容器12内にウエハWが搬送されると、複数のピン70の駆動を開始する(ステップS101)。このとき、複数のピン70の駆動速度は、同一の速度に設定される。
【0031】
制御部66は、複数のピン70の高さ位置を測定するための所定のタイミング(以下「測定タイミング」と呼ぶ)が到来するまで待機する(ステップS102No)。そして、制御部66は、測定タイミングが到来した場合(ステップS102Yes)、複数のピン70の高さ位置をそれぞれ測定する(ステップS103)。
【0032】
制御部66は、測定された複数のピン70の高さ位置を用いて、全てのピン70の高さ位置が所定の位置に到達したか否かを判定する(ステップS104)。所定の位置は、例えば、搬送アームから複数のピン70に受け渡されたウエハWが搬送アームに干渉しないように決定された位置である。制御部66は、全てのピン70の高さ位置が所定の位置に到達した場合に(ステップS104Yes)、処理を終了する。
【0033】
一方、制御部66は、全てのピン70の高さ位置が所定の位置に到達していない場合に(ステップS104No)、測定された複数のピン70の高さ位置が一致しているか否かを判定する(ステップS105)。ここで、複数のピン70の駆動の開始時に複数のピン70の駆動速度は同一の速度に設定されるので、複数のピン70の高さ位置は、原則として一致するはずである。しかしながら、複数のピン70が例えばステージSTに設けられた複数の孔にOリングなどのシール部材を介して設けられるので、各ピン70とシール部材との摩擦の状態にばらつきが生じることがある。各ピン70とシール部材との摩擦の状態にばらつきが生じると、複数のピン70の駆動速度にばらつきが生じ、結果として、複数のピン70の高さ位置に差を生じさせることがある。
【0034】
制御部66は、測定された複数のピン70の高さ位置が一致しない場合(ステップS105No)、複数のピン70の高さ位置を用いて、複数のピン70から、速度制御の基準となる基準ピンを選択する(ステップS106)。例えば、制御部66は、複数のピン70のうち、高さ位置が最も低いピン70又は最も高いピン70を基準ピンとして選択する。
【0035】
続いて、制御部66は、選択された基準ピンに関して、複数のピン70の高さ位置が測定されてから「所定時間」が経過した後における基準ピンの高さ位置である基準高さ位置を推定する(ステップS107)。具体的には、制御部66は、複数のピン70の駆動が開始されてから測定タイミングまでの経過時間と、測定タイミングにおいて測定された基準ピンの高さ位置とに基づいて、測定タイミングにおける基準ピンの駆動速度を算出する。そして、制御部66は、算出した基準ピンの駆動速度と、上記の「所定時間」と、測定タイミングにおいて測定された基準ピンの高さ位置とに基づいて、基準高さ位置を推定する。
【0036】
続いて、制御部66は、推定された基準高さ位置に基準ピン以外の他のピンの高さ位置を一致させるための調整速度を算出する(ステップS108)。具体的には、制御部66は、基準高さ位置と、測定タイミングにおける他のピンの高さ位置と、上記の「所定時間」とに基づいて、調整速度を算出する。
【0037】
続いて、制御部66は、他のピンを駆動する駆動部72を制御して、他のピンの駆動速度を調整速度に調整する(ステップS109)。このように、他のピンの駆動速度が、基準高さ位置に他のピンの高さ位置を一致させるための調整速度に調整されるため、上記の「所定時間」が経過した時点において、基準ピンの高さ位置と、基準ピン以外の他のピンの高さ位置との差が抑制される。結果として、ウエハWを支持する複数のピン70の高さ位置の差に起因したウエハWの位置ずれを抑制することができる。
【0038】
続いて、制御部66は、上記の「所定時間」が経過するまで待機する(ステップS110No)。そして、制御部66は、上記の「所定時間」が経過すると(ステップS110Yes)、複数のピン70の高さ位置をそれぞれ新たに測定するため、処理をステップS103に戻す。これにより、複数のピン70の高さが前回測定されてから上記の「所定時間」が経過する度に、複数のピン70の高さ位置がそれぞれ新たに測定される。そして、基準ピンの選択、基準高さ位置の推定及び他のピンの駆動速度の調整が、新たに測定される複数のピン70の高さ位置が一致するまで、繰り返し実行される(ステップS103、S104No、S105No、S106〜S110)。これにより、複数のピン70の高さ位置を継続的に一致させることができるので、ウエハWの位置ずれをより一層抑制することができる。
【0039】
一方、制御部66は、測定された複数のピン70の高さ位置が一致する場合(ステップS105Yes)、各ピン70の駆動速度が一致するか否かを判定する(ステップS111)。制御部66は、各ピン70の駆動速度が一致する場合には(ステップS111Yes)、駆動速度の調整を行う必要がないので、処理をステップS103に戻す。
【0040】
一方、制御部66は、各ピン70の駆動速度が一致しない場合には(ステップS111No)、他のピンの駆動速度が一時的に調整速度に調整されているので、以下の処理を行う。すなわち、制御部66は、他のピン70を駆動する駆動部72を制御して、他のピンの駆動速度を基準ピンの駆動速度に調整し(ステップS112)、処理をステップS103に戻す。他のピンの駆動速度が基準ピンの駆動速度に調整されることにより、各ピン70の駆動速度が一致する。
【0041】
次に、図3に示したピン制御方法の具体例について、図4を参照しながら説明する。図4は、一実施形態に係るピン制御方法の具体例を示す図である。図4において、横軸は、時間を示し、縦軸は、複数のピン70の高さ位置を示す。ここでは、複数のピン70として3つのピン70(ピン#1〜#3)が設けられるものとする。
【0042】
まず、ある時刻0において、ピン#1〜#3の駆動が開始される。このとき、ピン#1〜#3の駆動速度は、同一の速度に設定される。
【0043】
ピン#1〜#3の駆動が開始された後、測定タイミングである時刻t1において、ピン#1〜#3の高さ位置がそれぞれ測定される。図4の例では、ピン#2の高さ位置h2とピン#3の高さ位置h3とは一致しており、ピン#1の高さ位置h1がピン#2の高さ位置h2及びピン#3の高さ位置h3よりも低い。すなわち、ピン#1と、対応するシール部材との摩擦によって、時刻t1において、ピン#1の駆動速度が初期に設定された速度よりも遅くなっている。
【0044】
そして、測定された高さ位置h1〜h3を用いて、ピン#1〜#3から、速度制御の基準となる基準ピンが選択される。図4の例では、ピン#1〜#3のうち、高さ位置が最も低いピン#1が基準ピンとして選択される。
【0045】
基準ピンとしてピン#1が選択されると、ピン#1に関して、時刻t1から所定時間αが経過した時刻t2における高さ位置である基準高さ位置h1´が推定される。具体的には、時刻0から時刻t1までの経過時間t1と、時刻t1において測定された基準ピン(つまり、ピン#1)の高さ位置h1とに基づいて、時刻t1におけるピン#1の駆動速度v1が算出される。ピン#1の駆動速度v1は、以下の式(1)により表される。
1=h1/t1 ・・・ (1)
【0046】
そして、算出されたピン#1の駆動速度v1と、所定時間αと、時刻t1において測定されたピン#1の高さ位置h1とに基づいて、基準高さ位置h1´が推定される。基準高さ位置h1´は、以下の式(2)により表される。
1´=h1+α・v1 ・・・ (2)
【0047】
基準高さ位置h1´が推定されると、基準高さ位置h1´に基準ピン(つまり、ピン#1)以外の他のピンの高さ位置を一致させるための調整速度v2が算出される。ピン#2の高さ位置h2とピン#3の高さ位置h3とは一致しているので、ここでは、基準ピン以外の他のピンがピン#2であるものとして説明を行う。具体的には、基準高さ位置h1´と、時刻t1における他のピン(つまり、ピン#2)の高さ位置h2と、所定時間αとに基づいて、基準高さ位置h1´にピン#2の高さ位置を一致させるための調整速度v2が算出される。調整速度v2は、以下の式(3)により表される。
2=(h1´‐h2)/α ・・・ (3)
【0048】
なお、ピン#2の高さ位置h2とピン#3の高さ位置h3とは一致しているので、基準高さ位置h1´にピン#3を一致させるための調整速度v3は、以下の式(4)により表される。
3=(h1´‐h3)/α=(h1´‐h2)/α=v2 ・・・ (4)
【0049】
続いて、他のピン(つまり、ピン#2、#3)を駆動する駆動部72が制御されて、ピン#2、#3の駆動速度が調整速度v2に調整される。これにより、時刻t1から所定時間αが経過した時刻2において、基準ピンであるピン#1の高さ位置と、基準ピン以外の他のピンであるピン#2、#3の高さ位置との差が抑制される。図4の例では、時刻t2において、ピン#1〜#3の高さ位置の間の差が0となっている。
【0050】
以上のように、一実施形態によれば、ウエハWを支持して複数の駆動部72によってそれぞれ上下に駆動される複数のピン70の高さ位置をそれぞれ測定し、測定された複数のピン70の高さ位置を用いて、複数のピン70から、速度制御の基準となる基準ピンを選択し、選択された基準ピンに関して、複数のピン70の高さ位置が測定されてから所定時間が経過した後における高さ位置である基準高さ位置を推定し、推定された基準高さ位置に基準ピン以外の他のピンの高さ位置を一致させるための調整速度を算出し、他のピンを駆動する駆動部72を制御して、他のピンの駆動速度を調整速度に調整する。このため、複数のピン70の高さ位置の差が抑制される。結果として、ウエハWを支持する複数のピン70の高さ位置の差に起因したウエハWの位置ずれを抑制することができる。
【0051】
(他の実施形態)
以上、一実施形態に係るピン制御方法及び基板処理装置について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。以下では、他の実施形態について説明する。
【0052】
上記の実施形態では、複数のピン70を上昇させる場合のピン制御方法を例に説明したが、複数のピン70を下降させる場合に、開示のピン制御方法が適用されてもよい。すなわち、搬送アームからウエハWが受け渡された複数のピン70をステージSTに向けて下降させる場合に、開示のピン制御方法が適用されてもよい。この場合、図3に示したフローチャートにおいて、全てのピン70の高さ位置が所定の位置に到達したか否かを判定する場合(ステップS104)、「所定の位置」として、例えば、ステージSTの載置面又は当該載置面から所定の距離だけ下方の基準面が採用され得る。
【符号の説明】
【0053】
10 基板処理装置
12 処理容器
14 台
16 筒状保持部
17 筒状支持部
18 フォーカスリング
20 排気路
22 バッフル板
24 排気口
25 ガス導入口
26 排気装置
28 排気管
30 ゲートバルブ
32 高周波電源
34 整合器
35 高周波電源
36 整合器
38 シャワーヘッド
40 電極板
40h ガス通気孔
42 電極支持体
42a バッファ室
44 ガス供給部
46 ガス供給導管
48 磁場形成機構
50 静電チャック
52 電極
56 直流電源
58 ガス供給ライン
62 伝熱ガス供給部
66 制御部
70 ピン
72 駆動部
ST ステージ
SW スイッチ
W ウエハ
図1
図2
図3
図4