(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本願の開示するプラズマ処理装置、プラズマ制御方法、及びプラズマ制御プログラムの実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付すこととする。また、本実施形態により開示する発明が限定されるものではない。各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0009】
[プラズマ処理装置の構成]
最初に、実施形態に係るプラズマ処理装置10の概略的な構成を説明する。
図1は、プラズマ処理装置の概略的な構成を示す概略断面図である。プラズマ処理装置10は、気密に構成され、電気的に接地電位とされた処理容器1を有している。この処理容器1は、円筒状とされ、例えば表面に陽極酸化被膜が形成されたアルミニウム等から構成されている。処理容器1は、プラズマが生成される処理空間を画成する。処理容器1内には、被処理体(work-piece)である半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)Wを水平に支持する第1の載置台2が収容されている。
【0010】
第1の載置台2は、上下方向に底面を向けた略円柱状を呈しており、上側の底面がウエハWの載置される載置面6dとされている。第1の載置台2の載置面6dは、ウエハWと同程度のサイズとされている。第1の載置台2は、基台3と、静電チャック6とを含んでいる。
【0011】
基台3は、導電性の金属、例えばアルミニウム等で構成されている。基台3は、下部電極として機能する。基台3は、絶縁体の支持台4に支持されている。支持台4は、処理容器1の底部に設置されている。
【0012】
静電チャック6は、上面が平坦な円盤状とされ、当該上面がウエハWの載置される載置面6dとされている。静電チャック6は、平面視において第1の載置台2の中央に設けられている。静電チャック6は、電極6a及び絶縁体6bを有している。電極6aは、絶縁体6bの内部に設けられており、電極6aには直流電源12が接続されている。静電チャック6は、電極6aに直流電源12から直流電圧が印加されることにより、クーロン力によってウエハWを吸着するように構成されている。また、静電チャック6は、絶縁体6bの内部にヒータ6cが設けられている。ヒータ6cは、不図示の給電機構を介して電力が供給され、ウエハWの温度を制御する。
【0013】
第1の載置台2は、外周面に沿って周囲に第2の載置台7が設けられている。第2の載置台7は、内径が第1の載置台2の外径よりも所定サイズ大きい円筒状に形成され、第1の載置台2と軸を同じとして配置されている。第2の載置台7は、上側の面が環状のフォーカスリング5の載置される載置面7aとされている。フォーカスリング5は、例えば単結晶シリコンで形成されており、第2の載置台7に載置される。
【0014】
第2の載置台7は、基台8を含んでいる。基台8は、例えば表面に陽極酸化被膜が形成されたアルミニウム等で構成されている。基台8は、支持台4に支持されている。基台8は、コイル9を含んでいる。コイル9の詳細な構成は、後述する。
【0015】
基台3には、給電棒50が接続されている。給電棒50には、第1の整合器11aを介して第1のRF電源10aが接続され、また、第2の整合器11bを介して第2のRF電源10bが接続されている。第1のRF電源10aは、プラズマ発生用の電源であり、この第1のRF電源10aからは所定の周波数の高周波電力が第1の載置台2の基台3に供給されるように構成されている。また、第2のRF電源10bは、イオン引き込み用(バイアス用)の電源であり、この第2のRF電源10bからは第1のRF電源10aより低い所定周波数の高周波電力が第1の載置台2の基台3に供給されるように構成されている。
【0016】
基台3の内部には、冷媒流路2dが形成されている。冷媒流路2dは、一方の端部に冷媒入口配管2bが接続され、他方の端部に冷媒出口配管2cが接続されている。冷媒流路2dは、ウエハWの下方に位置してウエハWの熱を吸熱するように機能する。プラズマ処理装置10は、不図示のチラーユニットから冷媒入口配管2b及び冷媒出口配管2cを介して冷媒流路2dの中に冷媒、例えば冷却水等を循環させることによって、第1の載置台2の温度を制御可能な構成とされている。なお、プラズマ処理装置10は、ウエハWやフォーカスリング5の裏面側に冷熱伝達用ガスを供給して温度を個別に制御可能な構成としてもよい。例えば、第1の載置台2等を貫通するように、ウエハWの裏面にヘリウムガス等の冷熱伝達用ガス(バックサイドガス)を供給するためのガス供給管が設けられてもよい。ガス供給管は、ガス供給源に接続されている。これらの構成によって、第1の載置台2の上面に静電チャック6によって吸着保持されたウエハWを、所定の温度に制御する。
【0017】
一方、第1の載置台2の上方には、第1の載置台2に平行に対面するように、上部電極としての機能を有するシャワーヘッド16が設けられている。シャワーヘッド16と第1の載置台2は、一対の電極(上部電極と下部電極)として機能する。
【0018】
シャワーヘッド16は、処理容器1の天壁部分に設けられている。シャワーヘッド16は、本体部16aと電極板をなす上部天板16bとを備えており、絶縁性部材95を介して処理容器1の上部に支持される。本体部16aは、導電性材料、例えば表面に陽極酸化被膜が形成されたアルミニウム等からなり、その下部に上部天板16bを着脱自在に支持できるように構成されている。
【0019】
本体部16aの内部には、ガス拡散室16cが設けられ、このガス拡散室16cの下部に位置するように、本体部16aの底部には、多数のガス通流孔16dが形成されている。また、上部天板16bには、当該上部天板16bを厚さ方向に貫通するようにガス導入孔16eが、上記したガス通流孔16dと重なるように設けられている。このような構成により、ガス拡散室16cに供給された処理ガスは、ガス通流孔16d及びガス導入孔16eを介して処理容器1内にシャワー状に分散されて供給される。
【0020】
本体部16aには、ガス拡散室16cへ処理ガスを導入するためのガス導入口16gが形成されている。このガス導入口16gには、ガス供給配管15aの一端が接続されている。このガス供給配管15aの他端には、処理ガスを供給する処理ガス供給源15が接続される。ガス供給配管15aには、上流側から順にマスフローコントローラ(MFC)15b、及び開閉弁V2が設けられている。そして、処理ガス供給源15からプラズマエッチングのための処理ガスが、ガス供給配管15aを介してガス拡散室16cに供給され、このガス拡散室16cから、ガス通流孔16d及びガス導入孔16eを介して処理容器1内にシャワー状に分散されて供給される。
【0021】
上記した上部電極としてのシャワーヘッド16には、ローパスフィルタ(LPF)71を介して可変直流電源72が電気的に接続されている。この可変直流電源72は、オン・オフスイッチ73により給電のオン・オフが可能に構成されている。可変直流電源72の電流・電圧ならびにオン・オフスイッチ73のオン・オフは、後述する制御部100によって制御される。例えば、シャワーヘッド16は、第1のRF電源10a、第2のRF電源10bから高周波が第1の載置台2に印加されて処理空間にプラズマが発生する際に、オン・オフスイッチ73が必要に応じてオンとされて、所定の直流電圧が印加される。
【0022】
また、処理容器1の側壁からシャワーヘッド16の高さ位置よりも上方に延びるように円筒状の接地導体1aが設けられている。この円筒状の接地導体1aは、その上部に天壁を有している。
【0023】
処理容器1の底部には、排気口81が形成されており、この排気口81には、排気管82を介して第1排気装置83が接続されている。第1排気装置83は、真空ポンプを有しており、この真空ポンプを作動させることにより処理容器1内を所定の真空度まで減圧することができるように構成されている。一方、処理容器1内の側壁には、ウエハWの搬入出口84が設けられており、この搬入出口84には、当該搬入出口84を開閉するゲートバルブ85が設けられている。
【0024】
処理容器1の側部内側には、内壁面に沿ってデポシールド86が設けられている。デポシールド86は、処理容器1にエッチング副生成物(デポ)が付着することを防止する。このデポシールド86のウエハWと略同じ高さ位置には、グランドに対する電位が制御可能に接続された導電性部材(GNDブロック)89が設けられており、これにより異常放電が防止される。また、デポシールド86の下端部には、第1の載置台2に沿って延在するデポシールド87が設けられている。デポシールド86,87は、着脱自在に構成されている。
【0025】
上記構成のプラズマ処理装置10は、制御部100によって、その動作が統括的に制御される。この制御部100は、例えば、コンピュータであり、プラズマ処理装置10の各部を制御する。プラズマ処理装置10は、制御部100によって、その動作が統括的に制御される。
【0026】
[第1の載置台2及び第2の載置台の構成]
次に、
図2を参照して、第1の載置台2及び第2の載置台7の要部構成について説明する。
図2は、第1の載置台及び第2の載置台の要部構成を示す概略断面図である。
【0027】
第1の載置台2は、基台3と、静電チャック6とを含んでいる。静電チャック6は、絶縁層30を介して基台3に接着されている。静電チャック6は、円板状を呈し、基台3と同軸となるように設けられている。
【0028】
第2の載置台7は、基台8を含んでいる。第2の載置台7の上面は、フォーカスリング5の載置される載置面7aとされている。
【0029】
フォーカスリング5は、円環状の部材であって、第2の載置台7と同軸となるように載置面7aに載置される。
【0030】
基台8は、載置面7aに沿って内部にコイル9が設けられている。基台8は、少なくともコイル9の周囲が誘電体で形成されている。なお、基台8は、全部が誘電体で形成されてもよい。コイル9は、基台8の内部を基台8の周方向に沿って複数回、巻かれている。
図3は、コイルの要部構成を示す図である。例えば、
図3に示すように、コイル9は、基台8の内部を3回、巻かれている。
【0031】
図2に示すように、コイル9を構成する配線9aは、断面矩形状とされ、内部が中空形状とされている。そして、配線9aは、中空内が熱媒体の流路とされている。例えば、配線9aは、中空な矩形状の配管とされおり、外周の周面に導電性の導電膜が形成されている。コイル9は、配線9aの内部に、不図示のチラーユニットから冷媒、例えば冷却水等を循環させることが可能とされている。
【0032】
コイル9は、ターンごとに、配線9aの週方向の径が徐々に大きくなるように配置されており、各ターンの配線9aが載置面7aに沿うように配置されている。また、コイル9は、各ターンの配線9aの平坦面がそれぞれ載置面7aと平行となるように配置されている。
【0033】
図3に示すように、コイル9の一端は、第3の整合器11cを介して第3のRF電源10cが接続されている。コイル9の他端は、バリアブルコンデンサ13に接続されている。バリアブルコンデンサ13は、静電容量を変更可能とされている。例えば、バリアブルコンデンサ13は、回転軸にモータ13aが設けられており、制御部100からの制御に基づき、モータ13aによって回転軸を回すことで静電容量を変更可能とされている。第3のRF電源10cは、フォーカスリング5の消耗に応じたプラズマ制御用の電源であり、この第3のRF電源10cからは所定の周波数の高周波電力がコイル9に供給されるように構成されている。また、第3のRF電源10cは、制御部100からの制御に基づき、供給する高周波電力のパワーも変更可能とされている。第3のRF電源10cが供給する高周波電力の周波数は、第1のRF電源10a及び第2のRF電源10bから供給される高周波電力との共振し難い周波数とされている。コイル9は、第3のRF電源10cから高周波電力が供給されることにより、ICP(Inductively Coupled Plasma)コイルとして機能する。
【0034】
コイル9は、第3のRF電源10cからの高周波電力により発熱するが、中空内に冷媒を循環させることによって抜熱される。また、コイル9は、フォーカスリング5の下方に位置することから基台8を介して、フォーカスリング5の熱を吸熱するように機能する。プラズマ処理装置10は、冷媒流路2dの中に冷媒を循環させることによって、第2の載置台7の温度を制御可能な構成とされている。
【0035】
コイル9は、配線9a間の基台8を構成する誘電体部分が絶縁層8aとして機能する。コイル9は、配線9a間の距離を小さくして、配線9a上面平坦部の面積を広くするほうがプラズマ均一性改善効果を期待できるが、配線9a間の絶縁層8aの厚みとのトレードオフになる。コイル9は、絶縁層8aが薄すぎると絶縁破壊し異常放電の原因になる恐れがある。本実施形態では、例えば、絶縁層8aの厚さを1mm程度として、コイル9を上面側から見た場合に、配線9a上面平坦部の面積の占める割合が大きくなるように構成している。
【0036】
[制御部の構成]
次に、制御部100について詳細に説明する。
図4は、プラズマ処理装置を制御する制御部の概略的な構成を示したブロック図である。制御部100は、プロセスコントローラ101と、ユーザインターフェース102と、記憶部103とが設けられている。
【0037】
プロセスコントローラ101は、CPU(Central Processing Unit)を備えプラズマ処理装置10の各部を制御する。
【0038】
ユーザインターフェース102は、工程管理者がプラズマ処理装置10を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボードや、プラズマ処理装置10の稼動状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成されている。
【0039】
記憶部103には、プラズマ処理装置10で実行される各種処理をプロセスコントローラ101の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や、処理条件データ等が記憶されたレシピが格納されている。また、記憶部103には、フォーカスリング5の消耗による処理特性の変動に対応するための各種の情報が格納されている。例えば、記憶部103には、フォーカスリング5の消耗度合を示す消耗情報103aと、コイル9へ供給する高周波電力の電力量を示す電力量情報103bが記憶されている。なお、制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータで読み取り可能なコンピュータ記録媒体(例えば、ハードディスク、DVDなどの光ディスク、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された状態のものを利用したり、或いは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0040】
プロセスコントローラ101は、プログラムやデータを格納するための内部メモリを有し、記憶部103に記憶された制御プログラムを読み出し、読み出した制御プログラムの処理を実行する。プロセスコントローラ101は、制御プログラムが動作することにより各種の処理部として機能する。例えば、プロセスコントローラ101は、計測部101aと、電源制御部101bの機能を有する。なお、本実施形態に係るプラズマ処理装置10では、プロセスコントローラ101が、計測部101aと、電源制御部101bの機能を有する場合を例に説明するが、計測部101aと、電源制御部101bの機能を複数のコントローラで分散して実現してもよい。
【0041】
ところで、プラズマ処理装置10では、プラズマエッチングなどのプラズマ処理を行うと、フォーカスリング5が消耗する。そして、プラズマ処理装置10では、フォーカスリング5が消耗すると、フォーカスリング5付近のプラズマシースの厚さが減ってウエハWに対するプラズマシースの高さが変わり、エッチングレートなどの処理特性が変動する。
【0042】
プラズマ処理装置10は、フォーカスリング5が新品の状態で、ウエハWに対するエッチングレートやエッチングの形状が均一となるように、各種の初期条件が調整されている。例えば、
図2には、フォーカスリング5が新品の状態のプラズマシース(PLASMA sheath)の状態が示されている。プラズマ処理装置10では、フォーカスリング5が新品の状態で、
図2に示すように、ウエハWに対するプラズマシースの高さが均一となり、ウエハWに対するエッチングレートやエッチングの形状が均一となるように、フォーカスリング5の高さや、第3のRF電源10cからコイル9に供給する高周波電力のパワーが調整されている。
【0043】
しかし、プラズマ処理装置10では、プラズマ処理が繰返されるに従い、フォーカスリング5の表面がエッチングされてフォーカスリング5が消耗する。フォーカスリング5は、プラズマ処理の回数や、プラズマ処理の処理時間が長くなるほど、消耗度合も大きくなる。フォーカスリング5は、消耗度合が大きくとなると、新品に交換される。
【0044】
図5は、フォーカスリングが消耗した状態の一例を示す図である。
図5の例では、フォーカスリング5の表面がエッチングされてフォーカスリング5の厚さが減り、ウエハWに対するフォーカスリング5の表面の高さが低下している。このようにウエハWに対するフォーカスリング5の表面の高さが低下した場合、フォーカスリング5付近のプラズマシースの厚さが減ってフォーカスリング5の上部付近のプラズマシースの高さが破線に示すように低下する。このようにフォーカスリング5の上部付近のプラズマシースの高さが低下すると、プラズマ処理装置10では、ウエハWの中央部と比較してウエハWの外周部のエッチングレートやエッチングの形状などの処理特性の変動してしまう。
【0045】
そこで、計測部101aは、フォーカスリング5の消耗を計測する。例えば、計測部101aは、新規のフォーカスリングに交換されてからのプラズマ処理の回数、または、プラズマ処理の累計処理時間を計測する。計測部101aは、計測したプラズマ処理の回数、または、プラズマ処理の累計処理時間を、フォーカスリング5の消耗度合を示す情報として、消耗情報103aに記憶させる。
【0046】
電源制御部101bは、フォーカスリング5の消耗度合いに応じて、コイル9に印加される高周波電圧のパワーが増加されるよう第3のRF電源10cを制御する。例えば、電源制御部101bは、計測部101aにより計測されるプラズマ処理の回数が多いほど、または、プラズマ処理の累計処理時間が長いほど、コイル9に印加される高周波電圧のパワーが増加されるよう第3のRF電源10cを制御する。
【0047】
プラズマ処理装置10では、このように第3のRF電源10cからコイル9に供給する高周波電圧のパワーが増加させることにより、フォーカスリング5の電位が上がり、フォーカスリング5の上部付近のプラズマシースの高さを上昇させることができる。例えば、プラズマ処理装置10では、コイル9に供給する高周波電圧のパワーを適切に増加させることにより、フォーカスリング5の上部付近のプラズマシースを増加させ、プラズマシースを実線に示す高さに上昇させる補正を行うことができる。これにより、プラズマ処理装置10では、処理特性の変動を抑制できる。
【0048】
例えば、プラズマ処理の回数、または、プラズマ処理の累計処理時間ごとに、処理特性の変動が抑制された状態となるコイル9への高周波電圧の電力量を事前に求め、電力量情報103bに記憶させる。これにより、電力量情報103bには、プラズマ処理の回数が多いほど、または、プラズマ処理の累計処理時間が長いほど高周波電圧のパワーが高くなるように、プラズマ処理の回数、または、プラズマ処理の累計処理時間ごとに、高周波電圧の電力量が記憶される。
【0049】
電源制御部101bは、ウエハWごとに、プラズマ処理の所定のタイミング(例えば、開始のタイミング)で、計測部101aにより計測されたプラズマ処理の回数、または、プラズマ処理の累計処理時間に対応する高周波電圧の電力量を電力量情報103bから読み出し、読み出した電力量の高周波電圧を供給するように第3のRF電源10cを制御する。
【0050】
これにより、プラズマ処理装置10では、フォーカスリング5の上部付近のプラズマシースの高さを上昇させることができ、処理特性の変動を抑制できる。
【0051】
[制御の流れ]
次に、本実施形態に係るプラズマ処理装置10を用いたプラズマ制御処理について説明する。
図6は、プラズマ制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。このプラズマ制御処理は、例えば、ウエハWごとに、プラズマ処理を開始する所定のタイミングで実行される。
【0052】
電源制御部101bは、消耗情報103aに記憶されたプラズマ処理の回数、または、プラズマ処理の累計処理時間を読み出す(ステップS10)。電源制御部101bは、読み出したプラズマ処理の回数、または、プラズマ処理の累計処理時間に対応する高周波電圧の電力量を電力量情報103bから読み出す(ステップS11)。電源制御部101bは、読み出した電力量の高周波電圧を供給するように第3のRF電源10cを制御する(ステップS12)。
【0053】
計測部101aは、今回のプラズマ処理によるプラズマ処理の回数、または、プラズマ処理の累計処理時間を計測し、計測結果を消耗情報103aに保存して(ステップS13)、処理を終了する。
【0054】
[効果]
本実施形態に係るプラズマ処理装置10は、第2の載置台7と、第3のRF電源10cと、電源制御部101bとを有する。第2の載置台7は、フォーカスリング5が載置される載置面7aに沿って内部にコイル9が設けられている。第3のRF電源10cは、コイル9に高周波電圧を印加する。電源制御部101bは、フォーカスリング5の消耗度合いに応じて、コイル9に印加される高周波電圧のパワーが増加されるよう第3のRF電源10cを制御する。これにより、プラズマ処理装置10は、フォーカスリング5の消耗による処理特性の変動を抑制できる。
【0055】
また、本実施形態に係るプラズマ処理装置10は、第2の載置台7が、コイル9の周囲が誘電体で形成されている。これにより、プラズマ処理装置10は、コイル9に印加された高周波電圧による高周波が第2の載置台7を透過できるため、プラズマシースを効率よく増やすことができる。
【0056】
また、本実施形態に係るプラズマ処理装置10は、コイル9のフォーカスリング5側に平坦面が形成されている。プラズマ処理装置10は、コイル9のフォーカスリング5側を平坦化することで、容量結合プラズマの生成効率が向上するため、少ない高周波の電力でプラズマシースの均一性を改善できる。
【0057】
また、本実施形態に係るプラズマ処理装置10は、コイル9を構成する配線9aが中空形状とされ、配線9aの中空内が熱媒体の流路とされている。これにより、プラズマ処理装置10は、高周波電圧の印加によりコイル9が発熱する場合でも、配線9aの中空内が熱媒体を流すことで、温度を制御できる。また、プラズマ処理装置10は、配線9aの中空内が熱媒体を流すことで、第2の載置台7の温度も制御できる。
【0058】
また、本実施形態に係るプラズマ処理装置10は、計測部101aをさらに有する。計測部101aは、新規のフォーカスリング5に交換されてからのプラズマ処理の回数、または、プラズマ処理の累計処理時間を計測する。電源制御部101bは、計測されるプラズマ処理の回数が多いほど、または、プラズマ処理の累計処理時間が長いほど、コイル9に印加される高周波電圧のパワーが増加されるよう第3のRF電源10cを制御する。これにより、プラズマ処理装置10は、フォーカスリング5の消耗による処理特性の変動を抑制できる。
【0059】
以上、種々の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、上述したプラズマ処理装置10は、容量結合型のプラズマ処理装置10であったが、第1の載置台2は任意のプラズマ処理装置10に採用され得る。例えば、プラズマ処理装置10は、誘導結合型のプラズマ処理装置10、マイクロ波といった表面波によってガスを励起させるプラズマ処理装置10のように、任意のタイプのプラズマ処理装置10であってもよい。
【0060】
また、本実施形態では、プラズマ処理の回数、または、プラズマ処理の累計処理時間ごとに、高周波電圧の電力量を電力量情報103bに記憶させ、電源制御部101bが、電力量情報103bに基づいて、コイル9に印加される高周波電圧のパワーが増加されるよう第3のRF電源10cを制御する場合を例に説明した。しかし、これに限定されるものではない。例えば、プラズマ処理の回数、または、プラズマ処理の累計処理時間ごとに、処理特性の変動が抑制された状態となるコイル9への高周波電圧の電力量を演算で求める演算式を事前に求め、電源制御部101bが、演算式に基づいて、コイル9に対して供給する高周波電圧の電力量を増加させるよう第3のRF電源10cを制御してもよい。この演算式は、電力量情報103bに記憶させてもよい。
【0061】
また、プラズマ処理装置10は、コイル9について、各ターンの配線9aの位置や基台8の周方向に対する配線9aの間隔を変えて配置してもよい。
図7Aは、コイルを構成する配線の配置の一例を示す図である。
図7Aの例では、各ターンの配線9aを同じ高さで基台8の周方向に均等に配置した例を示している。
図7Bは、コイルを構成する配線の配置の一例を示す図である。
図7Bの例では、各ターンの配線9aを基台8の周方向内側ほど高く配置した例を示している。
図7Cは、コイルを構成する配線の配置の一例を示す図である。
図7Cの例では、各ターンの配線9aを基台8の周方向内側ほど間隔を狭くして、密度が高くなるように配置した例を示している。プラズマ処理装置10は、周方向の内側ほどフォーカスリング5の消耗が大きく、プラズマシースが薄くなり易い。そこで、
図7B及び
図7Cに示すようにコイル9の配線9aを配置することにより、薄くなり易い周方向の内側のプラズマシースを多く増加させることができる。
【0062】
また、本実施形態では、コイル9の一端を第3の整合器11cを介して第3のRF電源10cが接続し、コイル9の他端をバリアブルコンデンサ13に接続する場合を説明した。
図8は、コイルの接続状態の一例を示す図である。
図8の(A)には、コイルの接続状態が示されている。
図8の(B)には、第2の載置台の要部構成が示されている。
図8の(A)、(B)の例では、コイル9の配線9aの一端9bが第3の整合器11cを介して第3のRF電源10cに接続され、コイル9の他端9cがバリアブルコンデンサ13に接続されている。しかし、これに限定されるものではない。例えば、コイル9の一端を第3の整合器11cを介して第3のRF電源10cが接続し、コイル9の途中の高周波の振幅の節となる位置を接地させもよい。
図9は、コイルの接続状態の他の一例を示す図である。
図9の(A)には、コイルの接続状態が示されている。
図9の(B)には、第2の載置台の要部構成が示されている。
図9の(A)、(B)の例では、コイル9の配線9aの一端9bが第3の整合器11cを介して第3のRF電源10cに接続され、コイル9の途中の高周波の振幅の節となる位置9dが設置されている。また、例えば、コイル9の一端を第3の整合器11cを介して第3のRF電源10cが接続し、コイル9の他端を解放端としてもよい。
図10は、コイルの接続状態の他の一例を示す図である。
図10の(A)には、コイルの接続状態が示されている。
図10の(B)には、第2の載置台の要部構成が示されている。
図10の(A)、(B)の例では、コイル9の配線9aの一端9bが第3の整合器11cを介して第3のRF電源10cに接続され、コイル9の他端9cが解放端とされている。
【0063】
また、コイル9の配線9aは、外周の周面全体に導電性の導電膜が形成されていなくてもよい。例えば、コイル9の配線9aは、載置面7a側となる平坦面のみに導電性の導電膜が形成されていてもよい。
【0064】
また、コイル9の発熱が少なく、冷却の必要がない場合、配線9aは、内部を中空形状としなくてもよい。
図11Aは、コイルを構成する配線の配置の一例を示す図である。
図11Aの例では、コイル9を構成する配線9aを中空形状とせずに、配線9a全体を導電性部材で形成した例を示している。このコイル9についても、各ターンの配線9aの位置や基台8の周方向に対する配線9aの間隔を変えて配置してもよい。
図11Aの例では、各ターンの配線9aを同じ高さで基台8の周方向に均等に配置した例を示している。
図11Bは、コイルを構成する配線の配置の一例を示す図である。
図11Bの例では、各ターンの配線9aを基台8の周方向内側ほど高く配置した例を示している。
図11Cは、コイルを構成する配線の配置の一例を示す図である。
図11Cの例では、各ターンの配線9aを基台8の周方向内側ほど間隔を狭くして、密度が高くなるように配置した例を示している。
【0065】
また、プラズマ処理装置10は、フォーカスリング5の厚さを計測する計測部により、フォーカスリングの厚さを計測することで、フォーカスリング5の消耗度合いを計測してもよい。例えば、プラズマ処理装置10は、フォーカスリング5の上方、または、第2の載置台7の内部に、レーザ光の干渉により距離を計測する光干渉計などを設けて、フォーカスリング5の厚さを計測してよい。そして、プラズマ処理装置10は、電源制御部101bが、計測されるフォーカスリング5が薄くなるほど、コイル9に印加される高周波電圧のパワーが増加されるよう第3のRF電源10cを制御してもよい。これにより、プラズマ処理装置10は、フォーカスリング5の消耗による処理特性の変動を抑制できる。
【0066】
また、プラズマ処理装置10は、フォーカスリング5の電圧(Vdc)を計測する計測部により、フォーカスリングの電圧を計測することで、フォーカスリング5の消耗度合いを計測してもよい。プラズマ処理装置10では、フォーカスリング5が消耗すると、シース厚が薄くなるとともにフォーカスリング5の電圧の値も小さくなる。そこで、プラズマ処理装置10は、フォーカスリングの電圧を計測し、計測された電圧が低いほど、コイル9に印加される高周波電圧のパワーが増加されるよう第3のRF電源10cを制御してもよい。例えば、プラズマ処理装置10は、フォーカスリングの電圧が消耗前の元の値に戻るようコイル9に印加される高周波電圧のパワーが増加させて、シース厚に戻す。これにより、プラズマ処理装置10は、フォーカスリング5の消耗による処理特性の変動を抑制できる。
【0067】
また、プラズマ処理装置10は、第2の載置台7に、コイル9に加えて、フォーカスリング5の温度調整用のヒータが内部に設けられていてもよい。
図12は、温度調整用のヒータを設けた場合の配置の一例を示す図である。第2の載置台7には、コイル9に加えて、ヒータとして、誘導加熱用のコイル90を設けた場合を示している。
図12(A)には、コイル9と、コイル90の配置を示した上面図が示されている。
図12(B)には、第2の載置台7の断面図が示されている。
図12の例では、コイル9の配線9aとコイル90の配線90aが交互に載置面7aと平行に配置されている。すなわち、コイル9の配線の間に、コイル90の配線が配置されている。コイル90は、配線91を介して誘導加熱用のRF電源92が接続されており、RF電源92から例えば、数MHz〜数百MHzの比較的高周波の電力が供給される。コイル9は、第3のRF電源10cから例えば、数百kHz〜数MHzの比較的低周波の電力が供給される。これにより、プラズマ処理装置10は、フォーカスリング5の温度調整と、プラズマシースの高さの調整とを同時に行うことができる。
【0068】
なお、コイル9とコイル90は、目的に応じて、第2の載置台7の内部に分けて配置してもよい。
図13は、温度調整用のヒータを設けた場合の配置の一例を示す図である。
図13の下部には、第2の載置台7の断面図が示されている。
図13の上部には、コイル9と、コイル90の配置を示した上面図が示されている。
図13の例では、消耗の早いフォーカスリング5の内側のプラズマシースのコントロールを優先するため、コイル9を載置面7aの内側に載置面7aと平行に配置し、コイル90を載置面7aの外側に載置面7aと平行に配置している。これにより、プラズマ処理装置10は、フォーカスリング5の内側のプラズマシースを調整できる。