特許第6797265号(P6797265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6797265遮光膜用黒色樹脂組成物、当該組成物を硬化させた遮光膜を有する遮光膜付基板、並びに当該遮光膜付基板を有するカラーフィルター及びタッチパネル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797265
(24)【登録日】2020年11月19日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】遮光膜用黒色樹脂組成物、当該組成物を硬化させた遮光膜を有する遮光膜付基板、並びに当該遮光膜付基板を有するカラーフィルター及びタッチパネル
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20201130BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20201130BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20201130BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20201130BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20201130BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   G02B5/20 101
   G03F7/004 505
   G03F7/004 501
   G03F7/038
   B41M5/00 120
   B41M5/00 100
   G02F1/1335 500
   G02F1/1335 505
   G06F3/041 490
   G06F3/041 495
   G06F3/041 450
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-191834(P2019-191834)
(22)【出願日】2019年10月21日
(62)【分割の表示】特願2015-43999(P2015-43999)の分割
【原出願日】2015年3月5日
(65)【公開番号】特開2020-76983(P2020-76983A)
(43)【公開日】2020年5月21日
【審査請求日】2019年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 亨
(72)【発明者】
【氏名】藤城 光一
【審査官】 酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−304583(JP,A)
【文献】 特開2011−095477(JP,A)
【文献】 特開2012−237952(JP,A)
【文献】 特開2006−163233(JP,A)
【文献】 特開2014−145821(JP,A)
【文献】 特開平8−005816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00 −5/136
G02B 5/20 −5/28
G02F 1/1335
G03F 7/004−7/06
G03F 7/075−7/115
G03F 7/16 −7/18
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)光若しくは熱による硬化性樹脂、及び/又は光若しくは熱による硬化性単量体、(B)分散媒中に黒色遮光性粒子が分散されてなる黒色遮光性粒子含有分散液、並びに(C)透明粒子を分散媒中に分散されてなる透明粒子含有分散液を必須成分とし、(B)成分中の黒色遮光性粒子の平均二次粒子径Dが60〜150nmであり、このDと、(C)成分中の透明粒子の平均二次粒子径Dとの比D/Dが0.2〜1.0の範囲であり、且つ(C)成分中の透明粒子の質量mと、(B)成分の黒色遮光性粒子の質量mとの質量比m/mが0.015〜0.20の範囲であり、また、前記透明粒子の屈折率が、前記(A)成分の硬化物の屈折率以下であることを特徴とする遮光膜用黒色樹脂組成物。
【請求項2】
(C)成分中の透明粒子の平均二次粒子径Dが30〜100nmであることを特徴とする請求項1に記載の遮光膜用黒色樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)成分中の透明粒子の屈折率が、1.55以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の遮光膜用黒色樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)成分中の黒色遮光性粒子がカーボンブラックであり、また、前記(C)成分中の透明粒子が、分子内に反応性(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤により表面処理されたシリカであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の遮光膜用黒色樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)成分における前記分散媒が(メタ)アクリロイル基を有する硬化性単量体であると共に、前記透明粒子が分子内に(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤により表面処理されたシリカであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の遮光膜用黒色樹脂組成物。
【請求項6】
光又は熱により硬化して得られた遮光膜の遮光率ODが2.8/μm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の遮光膜用樹脂組成物。
【請求項7】
前記遮光膜用黒色樹脂組成物は、前記(B)成分及び(C)成分中の分散媒として、及び/又は追加成分としての(D)溶剤を含み、尚且つ当該(D)溶剤が沸点180℃以上の溶剤を主成分として含むことにより、インクジェット印刷用の遮光膜用黒色樹脂組成物として使用されるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の遮光膜用黒色樹脂組成物。
【請求項8】
前記遮光膜用黒色樹脂組成物は、前記(A)成分として光硬化性アルカリ可溶性樹脂及び/又は(E)アルカリ可溶性樹脂を含有することにより、フォトリソグラフィー法用の遮光膜用黒色樹脂組成物として使用されるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の遮光膜用黒色樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の遮光膜用黒色樹脂組成物を透明基板上の片面に塗布又は印刷し、更に硬化させて得られる遮光膜付基板であり、硬化後の遮光膜の膜厚が1〜3μmであることを特徴とする遮光膜付基板。
【請求項10】
請求項9に記載の遮光膜付基板を有するカラーフィルター。
【請求項11】
請求項9に記載の遮光膜付基板を有するタッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光膜用黒色樹脂組成物、当該組成物を硬化させた遮光膜をガラス等の透明基板上に有した遮光膜付基板、並びに当該遮光膜付基板を構成要素とするLCD等のディスプレイ用カラーフィルター及び表示装置用タッチパネルに関する。詳しくは、透明基板上に微細な遮光膜を形成するのに適した光又は熱により硬化する黒色樹脂組成物、及び当該黒色樹脂組成物を硬化させて得られた遮光膜を選択的な位置に形成した遮光膜付基板に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル外枠には背面の液晶パネル周辺部の光漏れを遮光するために遮光膜(ベゼル)が設けられ、また液晶パネルにはカラーフィルター内にTFT素子を遮光するブラックマトリックスが設けられている。最近のモバイル端末の発達により、屋外や車載にて使用するタッチパネル及び液晶パネル等の表示装置が増加しており、パネル外部からの入射光に対してガラス基板やプラスチックフィルム基板上に設置された遮光膜からの反射光が、非点灯時の液晶表示装置等の見映えに影響するため、周囲の着色膜等からの反射光と同等の反射率にすることや、色相(反射色度)を制御することが新たな技術課題となっている。
【0003】
このような遮光膜は、硬化性樹脂と遮光材とを主体とした組成物を透明基板上に印刷して形成される(特許文献1,2)。遮光材としてカーボンブラックや黒色酸化チタンなど可視光を吸収する黒色顔料が多く用いられている。これら黒色顔料でもって遮光膜の遮光性を上げるため(遮光膜の光透過性を下げるため)に遮光膜中の黒色顔料濃度を高くしていくと、透明基板や硬化性樹脂に比較して黒色顔料の屈折率が高く、透明基板の遮光膜が形成された面とは反対の面側から見たときの反射率が高くなる。即ち、透明基板上に形成した遮光膜と透明基板の界面における反射が増加し、透明基板上の着色層と透明基板の界面での反射や着色べゼルと空気の界面での反射に比較して大きくなるような場合は遮光膜上の映り込みや、カラーフィルター着色部との反射率の差異でブラックマトリックス境界が目立つという課題が生じる。このため、高遮光にしようとするほど、遮光膜以外の着色層や着色ベゼルと同等の反射率にするという要求特性を両立させることが困難になる。
【0004】
異種材料間の界面で生じる反射を低減させる手段として、例えば基板表面に外光反射を低減させる低屈折率フィルムを設置する方式(例えば1/4波長円偏光板)、基板表面を粗くするアンチグレア方式などがあり、また基板と遮光膜との中間の屈折率をもつ薄膜を形成する手段など、付加的手段を講じることが提案されている。その中間の屈折率を持つ薄膜の膜厚は、可視光波長の4分の1波長分に相当する100〜300μmの透明膜もしくはこれらの多層膜で形成される(非特許文献1)。
【0005】
液晶パネルにおけるカラーフィルター上のブラックマトリックスやタッチパネル額縁用遮光膜では、必要な部位にのみ遮光膜をパターン形成する必要性があり、前述のような付加的手段を講じる場合は低反射化を目的とした薄膜(低反射膜)を透明基板と遮光膜との間にあらかじめ形成する、即ち、例えばフォトリソグラフィー法で低反射膜と遮光膜のパターン形成を個々に行い、低反射膜と遮光膜の二層構造を形成する必要がある。又は、透明薄膜を形成した上に遮光膜を形成し、遮光膜をフォトグラフィー法でパターン露光/現像し、これをフォトマスクとして使用して透明薄膜のパターン形成をする方法が考えられる。この方法では、あらかじめ形成した透明薄膜に対して遮光膜用黒色樹脂組成物が侵食しないことが必要である。
【0006】
従来の遮光膜用黒色樹脂組成物は、硬化性樹脂成分と遮光材成分とを主体とするものであり、屈折率がより高い遮光材濃度を下げながら、所望の遮光度(OD値)4以上に見合う膜厚にて透明基板上に遮光膜を形成し、形成した遮光膜と透明基板の界面における反射率を下げることが可能とされている。しかしながら、フォトリソグラフィー法で1.5μmを超える膜厚にてパターン遮光膜を形成しようとすると、露光/現像後の熱焼成過程において、露光された部分での膜厚方向に対する架橋密度の差があるため、塗膜表面と透明基板付近での熱硬化収縮に差が生じて塗膜表面粗度が増大し表面平滑性が悪化し、表面に皺が発生する課題が生じる。一方、特許文献3では、遮光膜組成物中に所定の平均一次粒径範囲を有するシリカ粒子を共存させることで、1.5μmを超える厚膜の場合でも、パターンのエッジ形状のシャープ性が良好なパターンを形成することができ、また、その後の熱焼成工程においても塗膜表面が平滑で熱硬化収縮による表面粗度の悪化が生じないという技術が開示されているが、その効果を得るためには遮光材に対してシリカを一定量以上添加する必要性があった。また、特許文献4ではアクリル樹脂微粒子とカーボンブラックとを含む樹脂組成物の技術が開示されているが、この場合も厚膜でのパターン形状を安定化させるために、遮光材に対してアクリル粒子を一定以上添加する必要性があった。
【0007】
近年インクジェット法によって透明基板上に直接硬化性樹脂組成物を印刷する方法が提案されている(特許文献5)。インクジェット印刷法では直接印刷パターンを形成するので、フォトリソグラフィー法のようなパターン形成のための露光・現像工程を基本的には必要とせず、信頼性を考慮した硬化物組成の検討のみをすればよい。熱硬化のみの場合、光硬化を併用する場合に比較してより厚膜時のしわ発生の懸念は少ないが、一方で硬化遮光膜の信頼性(透明電極や配線等のパターンエッチング時の耐薬品性)を担保するために熱硬化反応の硬化剤及び/又は硬化促進剤を共存させる必要があり、表面活性なシリカ粒子などの共存は熱硬化性樹脂組成物の保存安定性を低下させる懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−177202号公報
【特許文献2】特開平8−278629号公報
【特許文献3】特開2008−304583号公報
【特許文献4】特開2010−256589号公報
【特許文献5】WO2011/155446号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】光学薄膜ユーザーズハンドブック、James D.Rancourt著、小倉繁太郎訳、pp.10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる技術の諸欠点に鑑み、創案されたものであり、その目的とするところは、遮光性が高い黒色の遮光膜であり、かつ反射光をカラーフィルターの彩色(着色)部分並みに低減させることができる遮光膜を形成できる遮光膜用の黒色樹脂組成物及び当該遮光膜を提供することにある。さらに、当該遮光膜形成用の黒色樹脂組成物は、粘度安定性に優れ、また形成されたパターン遮光膜の表面平滑性に優れる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究を行った結果、遮光膜用黒色樹脂組成物中の黒色遮光性粒子ならびに光もしくは熱により硬化される樹脂に比較して屈折率の低い透明粒子を加えることにより、本目的を達成可能なことを見出した。
【0012】
即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) (A)光若しくは熱による硬化性樹脂、及び/又は光若しくは熱による硬化性単量体、(B)分散媒中に黒色遮光性粒子が分散されてなる黒色遮光性粒子含有分散液、並びに(C)透明粒子を分散媒中に分散されてなる透明粒子含有分散液を必須成分とし、(B)成分中の黒色遮光性粒子の平均二次粒子径Dが60〜150nmであり、このDと、(C)成分中の透明粒子の平均二次粒子径Dとの比D/Dが0.2〜1.0の範囲であり、且つ(C)成分中の透明粒子の質量mと、(B)成分の黒色遮光性粒子の質量mとの質量比m/mが0.015〜0.20の範囲であり、また、前記透明粒子の屈折率が、前記(A)成分の硬化物の屈折率以下であることを特徴とする遮光膜用黒色樹脂組成物である。
【0013】
(2)本発明はまた、前記(C)成分中の透明粒子の平均二次粒子径Dが30〜100nmであることを特徴とする(1)に記載の遮光膜用黒色樹脂組成物である。
(3)本発明はまた、前記(C)成分中の透明粒子の屈折率が1.55以下であることを特徴とする(1)又は(2)の遮光膜用黒色樹脂組成物である。
(4)本発明はまた、前記(B)成分中の黒色遮光性粒子がカーボンブラックであり、また、前記(C)成分中の透明粒子が分子内に反応性(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤により表面処理されたシリカであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの遮光膜用黒色樹脂組成物である。
(5)本発明はまた、前記(C)成分における前記分散媒が(メタ)アクリロイル基を有する硬化性単量体であると共に、前記透明粒子が分子内に(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤により表面処理されたシリカであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかの遮光膜用黒色樹脂組成物である。
【0014】
(6)本発明はまた、光又は熱により硬化して得られた遮光膜の遮光率ODが2.8/μm以上であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかの遮光膜用黒色樹脂組成物である。
(7)本発明はまた、前記遮光膜用黒色樹脂組成物は、前記(B)成分及び(C)成分中の分散媒として、及び/又は追加成分としての(D)溶剤を含み、尚且つ当該(D)溶剤が沸点180℃以上の溶剤を主成分として含むことにより、インクジェット印刷用の遮光膜用黒色樹脂組成物として使用されるものであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかの遮光膜用黒色樹脂組成物である。
(8)本発明はまた、前記遮光膜用黒色樹脂組成物は、前記(A)成分として光硬化性アルカリ可溶性樹脂及び/又は(E)アルカリ可溶性樹脂を含有することにより、フォトリソグラフィー法用の遮光膜用黒色樹脂組成物として使用されるものであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかの遮光膜用黒色樹脂組成物である。
【0015】
(9)本発明はまた、(1)〜(8)のいずれかの遮光膜用黒色樹脂組成物を透明基板上の片面に塗布又は印刷し、更に硬化させて得られる遮光膜付基板であり、硬化後の遮光膜の膜厚が1〜3μmであることを特徴とする遮光膜付基板である。
(10)本発明はまた、(9)の遮光膜付基板を有するカラーフィルターである。
(11)本発明はまた、(9)の遮光膜付基板を有するタッチパネルである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の遮光膜用黒色樹脂組成物によれば、黒色遮光性粒子の分散媒中での平均二次粒子径に対して、一定レベルの平均二次粒子径の透明粒子を、黒色遮光性粒子に対して比較的少量添加することにより、透明粒子を添加しない場合と比較して遮光膜の反射率を低減させることができる。ここで、透明粒子としては、屈折率が黒色遮光性粒子よりも小さい粒子を用いることが有効であり、特にシリカのような無機粒子を使用する場合は、特定の表面処理を行うことにより、有機溶剤中や、光又は熱により硬化する硬化性単量体中で所望の平均二次粒子径を有するように分散させることが有効である。このような遮光膜用黒色樹脂組成物を用いることにより、カラーフィルターやタッチパネル用の遮光膜として、高遮光率で意匠性にも優れた遮光膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の遮光膜用黒色樹脂組成物における(A)成分である光若しくは熱による硬化性樹脂及び/又は光若しくは熱による硬化性単量体としては、光若しくは熱により硬化反応を生じる官能基、即ち(メタ)アクリロイル基、ビニル基などのエチレン性不飽和二重結合、又はエポキシ基、オキセタン基などの環状反応性基を分子内に少なくとも1個以上有する樹脂又は単量体が好ましく用いられる。
【0018】
前記の光若しくは熱による硬化性樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレートなどのアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレート(以下、これらをまとめて「アルキル(メタ)アクリレート」などのように記載する場合がある。)、環状のシクロヘキシルアクリレート又はメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート又はメタクリレート、スチレンなどの内から3〜5種類程度のモノマーを用いて合成した、分子量5000〜100000程度のポリマー(アクリル系樹脂)の側鎖及び/又は末端に、前述の熱又は光により硬化反応を生じる官能基を1個以上有するものが好ましい。例えば、アクリル系樹脂の一部に不飽和二重結合を付加させた樹脂として、上記のアクリル系樹脂においてカルボキシル基を有するモノマーを共重合させた樹脂に、イソシアネート基と少なくとも1個以上のエチレン性不飽和二重結合とを有するイソシアネートエチルアクリレート、メタクリロイルイソシアネートなどの化合物を反応させて得られる、酸価50〜150の感光性共重合体が、耐熱性、現像性等の点から好ましく使用できる。
【0019】
更に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸化合物のポリグリシジルエステル、ポリオール化合物のポリグリシジルエーテル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の通常の光重合可能な樹脂、さらにはエポキシ(メタ)アクリレートと酸無水物とを反応させることでフォトリソグラフィー法で現像パターン形成可能な樹脂組成物としても好適に使用可能である。
【0020】
また、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性の単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類や、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類を挙げることができる。
【0021】
エポキシ基、オキセタン基などの環状反応性基を分子内に少なくとも1個以上有する化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル、多価カルボン酸のグリシジルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルをユニットとして含む重合体、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸(3’,4’−エポキシシクロヘキシル)メチルに代表される脂環式エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン骨格を有する多官能エポキシ化合物(例えばDIC社製HP7200シリーズ)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えばダイセル社製「EHPE3150」)、エポキシ化ポリブタジエン(例えば日本曹達社製「NISSO−PB・JP−100」)、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物等を挙げることができる。
これら光又は熱により硬化する樹脂や単量体は、単独で用いてもよく、また複数を混合することで信頼性などの特性を付与することが可能となる。
【0022】
更に、通常これらと光又は熱により反応する化合物、例えばカルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシ基、チオール基を有する化合物、及び紫外線や熱によりラジカル、カチオン、アニオンなどを発生する光重合開始剤、熱重合開始剤などを共存させて使用することが好ましい
【0023】
例示された(A)成分については、その硬化物の屈折率が1.48〜1.6の範囲となるものが選定されることが好ましい。例えば、アクリル樹脂系硬化物の場合、屈折率は1.48〜1.55であり、化学構造に芳香族基を含有させる、例えばスチレンモノマーとの共重合により屈折率が調整される。エポキシ樹脂系では1.50〜1.60であり、ビスフェノール系エポキシ樹脂や芳香族酸無水物硬化剤を用いると屈折率は高くなり、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂や脂環式酸無水物硬化剤を用いると比較的屈折率が低くなる。
【0024】
(B)成分中の黒色遮光性粒子としては、その屈折率が1.6を超えるもので、可視光を吸収する黒色顔料が、目的とする薄膜における遮光率及び遮光膜用組成物の保存安定性の観点で主体的に用いられる。本発明に用いられる黒色顔料としては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ランプブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等のいずれのものを用いても良い。その他黒色染料などの遮光性を調整する目的で1種もしくは複数種混合して用いてもよいが、黒色遮光性粒子は全遮光材中の60質量%以上が好ましい。例えば、有機顔料系/染料系の遮光材を多く用いると、遮光率が低下する。
【0025】
これら遮光材を、例えば、高分子分散剤や溶剤などの分散媒と共にビーズミル中で分散し、黒色遮光性粒子を含有する分散液とし、前記(A)成分及び後述の(C)成分と混合することにより本目的の遮光膜用黒色樹脂組成物を調製する。分散液中の黒色遮光性粒子の平均二次粒径Dは、60nm〜150nmに調製することが好ましく、より好ましくは80nm〜120nmに調製する。本発明において、「平均二次粒子径」とは、分散溶媒又は相当の溶媒にて希釈し、動的光散乱法で測定され、キュムラント法により求められる平均粒子径値を言う。例えば、カーボンブラックではPGMEA溶媒中0.1質量%粒子濃度で測定した値である。平均二次粒子径Dが60nm未満であると、高遮光率を達成するために黒色遮光性粒子の濃度を高くするのに必要な高分子分散剤の添加が増えるか、また保存時に粘度増加が生じやすい。平均二次粒子径Dが150nmを超えると、形成された遮光膜の表面平滑性の好ましくなく、またフォトリソグラフィー法で形成した際のパターンエッジの直線性が損なわれる。
【0026】
因みに、タッチパネル用遮光膜及びカラーフィルター用ブラックマトリックスにおける遮光度(OD=‐log[透過度])はOD4以上が要求され、一方で膜厚は3μm以下、好ましくは2μm以下の薄膜化が要求されている。理由はタッチパネルでは、遮光膜上の金属配線とタッチパネル上導電膜との接続に際する断線防止であり、カラーフィルターではブラックマトリックス上にRGB画素を形成した後の平坦性を確保するためである。このような薄い遮光膜でも高い遮光度を得る目的で、例えばカーボンブラックを組成物中の全固形分に対して35質量%以上70質量%以下とする。
【0027】
一方で、組成物の全固形分(硬化後に基板上に残存する全成分)中の黒色遮光性粒子の濃度を高くしていくと、透明基板上に形成した遮光膜と透明基板間における反射が増加し、遮光膜上の映り込みや、カラーフィルター着色部との反射率の差異で境界が目立つという課題があった。即ち、後述の(C)成分を含まない、硬化樹脂成分(A)と遮光材成分(B)だけの場合、硬化・形成された遮光膜における遮光膜と透明基板間における反射率は、専ら(A)成分と(B)成分中の黒色遮光性粒子との質量比に専ら依存し、質量比率が一定であれば遮光膜の膜厚を厚くしても反射率の低下は顕著ではなかった。
【0028】
以上のような事実に鑑み、本発明者らは(A)成分の硬化物中に、(A)成分の硬化物の屈折率以下の屈折率を有する透明粒子を共存させることで、組成物の全固形分中の黒色遮光性粒子の濃度を同一にしながら(遮光度を維持しながら)反射率を低減可能なことを見出した。即ち、本発明では、(A)成分の硬化物の屈折率以下の屈折率を有する透明粒子を必須成分〔(C)成分として分散媒に分散した状態で使用〕とし、透明粒子としては、公知のシリカ等の金属酸化物等の無機系透明微粒子、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂又はメラミン樹脂等の樹脂系透明微粒子を例示できる。樹脂製の透明微粒子は、本発明の組成物中において有機溶剤に分散された分散溶液として供されることがあることから、有機溶剤に不溶な架橋樹脂で構成されることが好ましい。
【0029】
(A)成分として含まれ、(B)成分中の黒色遮光性粒子や(C)成分中の透明粒子のマトリックスとなる、光若しくは熱により硬化樹脂及び/又は硬化性単量体を硬化させた(A)成分の硬化物は、その屈折率が化学構造に依存するものであり1.48〜1.6の範囲にあるものが好ましい。したがって、(C)成分の透明粒子を構成する成分の屈折率は、(A)成分の硬化物の屈折率以下であり、1.40〜1.60の範囲が好ましく、1.42〜1.55であることがより好ましい。なお、本発明において、「(A)成分の硬化物の屈折率」とは、本発明の遮光膜用黒色樹脂組成物から(B)成分中の黒色遮光性粒子及び(C)成分中の透明粒子や硬化の過程で除かれる溶剤等を除いた、遮光膜の塗膜形成成分を硬化させた硬化物の屈折率であり、光又は熱で(A)成分を硬化させるために硬化剤や重合開始剤等を共存させる場合には、それらを含めた硬化物の屈折率である。(C)成分中の透明粒子の屈折率が前記「(A)成分の硬化物の屈折率」を超えると、反射率の低減効果はなくなる。公知の透明粒子として用いられる成分の屈折率は、シリカでは1.44〜1.50、アクリル樹脂系やエポキシ樹脂系では1.47〜1.60、シリコーン樹脂系では1.40〜1.45である。これらを単独でも2種類以上用いてもよい。なお、透明粒子の透明性は全光線透過率で10%以上であり、透明性の光波長依存性は遮光膜の無彩色化に寄与するのであれば着色していても使用可能である。
【0030】
更に、(C)成分中の透明粒子は、その平均二次粒子径Dが、(B)成分中の黒色遮光性粒子の平均二次粒子径Dとの比D/Dが0.2〜1.0の範囲であり、また、前記組成物中における(C)成分中の透明粒子の質量mと、(B)成分中の黒色遮光性粒子の質量mとの比m/mが0.015〜0.20、好ましくは0.03〜0.10、より好ましくは0.03〜0.09の範囲で用いられる。平均二次粒子径Dは、分散溶媒又は相当の溶媒にて希釈し動的光散乱法で測定され、キュムラント法により求められる平均粒子径の値である。例えば、シリカ粒子ではメタノール中1〜10質量%粒子濃度での測定値である。平均二次粒子径比D/Dが1.0を超えると、形成した遮光膜表面の平滑性に好ましくなく、また遮光率(OD/μm)が低下する。また、D/Dが0.2を下回ると形成した遮光膜の反射率低減効果が弱まる。組成物中における質量比m/mが0.015を下回ると形成した遮光膜の反射率の低減効果は見られず、また、0.20を超えると遮光膜の遮光率(OD/μm)が低下する。なお、特に、遮光率(OD/μm)を大きくするために(B)成分を多く用いる場合には、(A)の光若しくは熱により硬化する成分の構成比率が減少することになり、マトリックスの硬化物性が所望のレベルに達しないとか、フォトリソグラフィー法でのパターン形成が十分にできないといった問題が生じやすくなるので、本発明においては、(C)成分中の透明粒子の添加量が少なくても反射率を低減でき非常に有用である。
【0031】
本組成物を硬化した遮光膜として構成される遮光膜付基板において反射低減効果を発現するするメカニズムとして以下が推測される。すなわち、遮光膜は溶剤を含む遮光性樹脂組成物を透明基板上片面に塗布し、乾燥後、硬化させて遮光膜を作成する。乾燥後の塗膜において、ムラがなく、また表面が平滑である場合、塗膜内部では低粘性体である(A)成分がマトリックスとなって、弾性体である(B)成分中の黒色遮光性粒子がそれに分散した形態となる。乾燥過程においては、塗膜内では溶剤が揮発するに従い、膜厚方向に体積収縮していくが、分散している粒子間の溶剤が排除されて粒子間距離が縮んでいく。透明基板と塗布された組成物との界面においても同様である。この時の硬化性樹脂及びモノマー成分は弾性体である黒色遮光性粒子に比較すると粘性が高い粘性体であるために分散している粒子間で変形・収縮し、最終的に硬化によって黒色遮光性粒子の位置が固定化される。このような遮光膜付基板において透明基板側から入射した光の一部は、専ら透明基板界面とその近傍の遮光膜内では黒色遮光性粒子〔カーボンブラックの屈折率は約2で(A)成分の硬化物の屈折率より十分に高い〕により反射及び散乱されて透明基板側に出てくる。したがって、組成物中の黒色遮光性粒子濃度を高めていくと、この黒色遮光性粒子による反射/散乱が増加していくことになる。一方、透明粒子を共存させると、黒色遮光性粒子と同様な弾性をもった透明粒子は(A)成分に比較して変形することなく黒色遮光性粒子間及び透明基板と黒色遮光性粒子間とに存在すると考える。したがって、黒色遮光性粒子よりも屈折率の低い透明粒子による反射/散乱は少なくなり、また透明基板界面に存在する透明粒子に入射した光はさらに周辺の黒色遮光性粒子により吸収されていくことになり、この吸収はある程度の膜厚が厚いほうが有効と想定される。
【0032】
以上の反射率低減のメカニズムを有効に発揮させるには、黒色遮光性粒子と共に透明粒子を組成物中及び透明基板上に塗布された膜中においても自己凝集することなく安定的に分散させる必要があると想定される。したがって、黒色遮光性粒子及び透明粒子の分散安定性を向上させる手段が有効であり、組成物の粘度安定性はその指標となると考えられる。本発明に用いられる(C)成分における透明粒子においては、粒子表面処理をすることでその再凝集を抑制することが有効である。
【0033】
例えば、本発明の(C)成分中の透明粒子として使用されるシリカは、分子内に反応性(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤で表面処理されたシリカであることが好ましく、コロイダルシリカを表面処理したシリカは特開昭57−131214号公報、特開2000−289172号公報等に記載の周知の手段で調製される。これら表面処理されたシリカは、モノアルキルエーテル、モノアルキルエーテルアセテートなどの溶剤中にて高分子分散剤の共存で比較的安定に分散させることが可能であり、分散液〔(C)成分〕として本遮光膜用黒色樹脂組成物に好適に供される。更に、前述のエチレン性不飽和基を有する(メタ)アクリレートなどの硬化性単量体中においても同様に表面処理されたシリカの分散を比較的容易に行うことができるので、溶剤に限らず光又は熱により硬化する硬化性単量体中に透明粒子を分散した形態で(C)成分とすることもできる。また、溶剤と硬化性単量体の混合物中、さらに硬化性樹脂を溶解した溶液中に分散させて用いることもできる。この表面処理されたシリカに用いるシリカ粒子は、一般的な気相反応又は液相反応といった製造法で製造され、形状(球状、非球状)に制限されることはないが、その電子顕微鏡観察による一次粒子径は20〜40nmである。これらシリカ粒子を公知の方法で表面処理し、さらに表面処理されたシリカを有機溶剤中でビーズミルにて分散させた分散液をメタノール中1〜10wt%に希釈したサンプルを用い、動的光散乱法で測定してキュムラント法により求められる平均二次粒子径が30〜100nm、好ましくは30〜60nmであるものが比較的容易に製造でき、本発明の(C)成分中の透明粒子として処方することができる。
【0034】
一方、黒色遮光性粒子であるカーボンブラックの平均二次粒子径Dは、遮光性を有効に発揮させ分散安定性を確保するには、前述の通り60nm〜150nm、好ましくは80〜120nmである。したがって、表面処理シリカの平均二次粒子径は、カーボンブラックの平均二次粒子径以下に比較的容易に処方可能である。
【0035】
更に(C)成分中の透明粒子として、アクリル樹脂粒子も好適であり、アクリル樹脂粒子としては、製造法や形状(球状、非球状、単核構造、コアシェル構造など)に制限されることはないが、凝集性が少なく分散性に優れたものとして、日本ペイント製架橋アクリル微粒子ファインスフェアシリーズ、特開2010−256589号公報記載のアクリル微粒子などを利用できる。
【0036】
本発明の必須成分の溶解又は分散を目的に1種又は複数種類の溶剤を含有させることができ、特に限定されるものではない。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類等が挙げられ、これらを数種類用いて溶解、混合させることにより、黒色遮光性粒子や透明粒子等を安定的に分散させた均一な組成物とすることが出来る。
【0037】
また、本発明の遮光膜用黒色樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤、熱重合禁止剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、カップリング剤、界面活性剤等の添加剤を配合することができる。熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジン等を挙げることができ、酸化防止剤としてはヒンダートフェノール系化合物等を挙げることができ、可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等を挙げることができ、消泡剤やレベリング剤としては、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物を挙げることができる。また、界面活性剤としてはフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を挙げることができる。
【0038】
遮光膜用黒色樹脂組成物を透明基板上に塗布する方法として、公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、インクジェット機、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコーター機やスピナー機を用いる方法等の何れかの方法を採用することができる。良好な塗布膜を得るための適正粘度に溶剤により調整し、これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、加熱もしくは減圧下で溶剤を除去する(プリベーク)ことにより、乾燥塗膜が形成される。引き続き光及び/又は熱により硬化することで目的とする遮光膜付基板を作製する。
【0039】
前述の遮光膜用黒色樹脂組成物を光又は熱により硬化して得られた本発明における遮光膜は、その遮光率ODが2.8/μm以上となることが好ましく、そのような特性を有するような遮光膜用樹脂組成物が好ましく用いられる。タッチパネル用遮光膜ならびにカラーフィルター用ブラックマトリックスにおける遮光度(OD=‐log[透過度])はOD4以上が要求され、一方で膜厚は3μm以下が好ましく、2μm以下の薄膜がより好ましい。理由は、タッチパネルでは、タッチパネル遮光膜上の金属配線とタッチパネル上導電膜との接続に際する断線防止、カラーフィルターでは、ブラックマトリックス上にRGB画素を形成した後の平坦性確保のためである。このような薄い遮光膜でも高い遮光度を得る目的で、例えばカーボンブラックを組成物中の全固形分に対して35質量%以上とすることで、遮光度2.8/μm以上の遮光膜を調製できる。一方、OD/μmが2.8未満の遮光膜では、透明基板と遮光膜間で反射L*は5.5以下となって実質的に問題とならない。
【0040】
透明基板上に遮光膜パターンを形成する方法として、本発明の遮光膜用黒色樹脂組成物を透明基板上に塗布、乾燥した塗膜にフォトマスクを介して紫外線を照射し、未露光部分を現像液により除去し、更に加熱処理を行うという、フォトリソグラフィー法がある。また、スクリーン印刷法、凹版印刷、グラビア印刷法など転写版を使用して印刷する方法などがあり、更に近年ではインクジェット印刷法は、マスクや印刷版必要としないデジタル印刷方法として着目されている。本発明の遮光膜用黒色樹脂組成物はいずれの遮光膜パターン形成方法にも適用可能であり、各々の方法に適合した粘度、表面張力を有する樹脂組成物とするために、硬化性樹脂樹/硬化性モノマー(単量体)、ならびに溶剤や界面活性剤脂組成物を選定する。また、遮光膜パターンの精度や解像度等によって形成方法、印刷機等が選定される。特に本発明の遮光膜用黒色樹脂組成物では黒色遮光性粒子や透明粒子が安定的に分散されており、分散粒子の凝集による粗大粒子の発生がなく、また保存時の粘度安定性に優れているので、特にインクジェット印刷法やフォトリソグラフィー法に対して好ましく用いることができる。
【0041】
例えば、本発明の遮光膜用黒色樹脂組成物を用いてインクジェット印刷法で遮光膜を形成する場合、黒色遮光性粒子及び透明粒子が再凝集することが少ないために間欠吐出時のインクジェットノズルの閉塞が少なく、また保存時における粘度が安定しているために連続印刷時のパターン膜厚の安定性に寄与する。インクジェット装置については、組成物の吐出液量が調整可能なものであれば特に制限はないが、一般的によく用いられる圧電素子のインクジェットヘッドにおいて、安定的に液滴が形成されるインキ組成物の物性は、ヘッドの構成によっても異なるが、ヘッド内部における温度において、粘度が3mPa・sec〜150mPa・secであるのが良く、好ましくは4mPa・sec〜30mPa・secであるのが良い。粘度の値がこれよりも大きくなると液滴を吐出ができなくなり、反対に、粘度の値がこれよりも小さくなると液滴の吐出量が安定しない。また、ヘッド内部の温度は、用いるインキ組成物の安定性によっても異なるが、室温20℃〜45℃で用いるのが望ましい。なかでも、インキ組成物中の固形分を多くして膜厚を向上させるためには、安定吐出可能な粘度にするために35〜40℃程度の温度が一般に採用される。
【0042】
以上のようなインクジェット印刷法のための遮光膜用黒色樹脂組成物の特性は、これを構成する溶剤や界面活性剤により主に調整され、さらに連続印刷時におけるノズル部分における当該組成物の乾燥を抑制するために、溶剤は沸点180℃以上のものを主体とし、それを全溶剤成分中60%以上、好ましくは80%以上で、単独もしくは複数種を用いることができる。沸点180℃以上の溶媒としてはエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル等の他のエーテル類、γ−ブチロラクトン等の高沸点溶剤類等を用いることができる。
【0043】
一方、フォトリソグラフィー法では、本発明の遮光膜用黒色樹脂組成物は、黒色遮光性粒子及び透明粒子の再凝集による粗大粒子発生が少ないため、現像後のパターンエッジ直線性を良好にすることができる。この粗大粒子の発生抑制は、他のパターン形成法、例えば印刷版上に載せた印刷インキを透明基板上に転写する場合や、印刷パターンの表面異物やクレーター等の欠陥を低減するにも好適である。
【0044】
フォトリソグラフィー法で用いる本発明の遮光膜用黒色樹脂組成物においては、(A)成分は、光硬化性樹脂及び/又は光硬化性モノマーであり、さらにアルカリ現像液に溶解させるためのアルカリ可溶性樹脂を混合する。アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレートなどのアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレート、環状の官能基有するシクロヘキシルアクリレート又はシクロヘキシルメタクリレート、水酸基を有するヒドロキシエチルアクリレート又はヒドロキシエチルメタクリレート、スチレン等のモノマーの中から選ばれる2〜5種類のモノマーと、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体(モノマー)とを用いて合成した、分子量5000〜100000の共重合体であって、光硬化性の官能基は有さない(E)アルカリ可溶性樹脂を挙げることができる。
【0045】
更に、アルカリ可溶性樹脂の好適な例としては、重合性不飽和基とカルボキシル基等の酸性基を分子内に有する重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を挙げることができ、(A)成分の一種である光硬化性樹脂それ自体が当該重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂である場合も好ましく使用される。この際、前記の光硬化性の官能基を有しない(E)アルカリ可溶性樹脂を併用して使用することも可能である。重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステル化合物をラジカル共重合して得られた樹脂のカルボキシル基の一部に、(メタ)アクリル酸グリシジルのような重合性不飽和基とエポキシ基を1分子中に有する化合物を反応させて得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂や、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂に酸無水物を付加して得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を始めとして広範な樹脂を用いることができる。
【0046】
透明基板上に印刷された遮光膜の硬化方法ならびに硬化性樹脂成分(A)は、透明基板の耐熱性や使用される環境、要求される寸法精度、信頼性に適合するように選定される。
【0047】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
以下の実施例における各種評価は断りのない限り以下の通りに行った。
[固形分濃度]
後述の合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔質量:W0(g)〕に含浸させて秤量し〔W1(g)〕、160℃にて2hr加熱した後の質量〔W2(g)〕から次式より求めた。
固形分濃度(質量%)=100×(W2−W0)/(W1−W0)
【0049】
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置〔平沼産業(株)製 商品名COM-1600〕を用いて1/10N−KOH水溶液で滴定して求めた。
【0050】
[分子量]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC){東ソー(株)製HLC-8220GPC、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuperH-2000(2本)+TSKgelSuperH-3000(1本)+TSKgelSuperH-4000(1本)+TSKgelSuper-H5000(1本)〔東ソー(株)製〕、温度:40℃、速度:0.6ml/min}にて測定し、標準ポリスチレン〔東ソー(株)製PS−オリゴマーキット〕換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた値である。
【0051】
[一次粒子径測定]
粒子含有溶液を粒子濃度0.1wt%程度に溶剤で希釈し、得られた分散液をカーボン支持膜付き金属性メッシュへ滴下して作成した測定用サンプルを、透過型電子顕鏡(TEM;日本電子社製、JEM−2000EX)により観測して得られた粒子径を一次粒子径とした。
【0052】
[平均二次粒子径測定]
得られた黒色遮光性粒子含有分散液又は透明粒子含有分散液について、動的光散乱法の粒度分布計(大塚電子株式会社製、粒径アナライザーFPAR-1000)により、キュムラント法により求められる平均二次粒子径をそれぞれ測定した。黒色遮光性粒子含有分散液は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)にて分散された粒子の濃度が0.1〜0.5質量%となるように希釈して測定用サンプルとした。また、透明粒子を含有する分散液では測定可能な散乱強度となるように、メタノールにて粒子濃度が1〜10w%に希釈して測定用サンプルとした。
【0053】
[粘度測定]
遮光膜用黒色樹脂組成物の粘度をE型粘度計(東機産業製、RE80L)でもって23℃で測定した。測定は、当該組成物の調製直後に行い、その後密封できる容器に移し、5℃冷蔵1か月保管後ならびに40℃で一週間加速エージング後、同様の条件にて粘度を測定し、初期粘度よりの粘度上昇を判定した。
【0054】
[遮光度(OD値)測定]
ポストベーク後の遮光膜付ガラス基板を用いて、大塚電子製OD計で測定した。
【0055】
[膜厚測定]
ポストベーク後の遮光膜付きガラス基板を、触針式膜厚計〔テンコール(株)製〕を用いて測定した。
【0056】
[屈折率の測定]
アッベの屈折率計を用いて測定した。
【0057】
[反射光学特性の測定]
ポストベーク後の遮光膜付ガラス基板を用いて、遮光膜を形成した面の反対側の面側からコニカミノルタ社製の測色計CM2600dを用いて、D65光源、10°視野にて測定を行った。
また、反射率は、当該反射光学特性の測定で得られたL*の測定値より、以下の計算式により求めた。
反射率(%)={(L*+16)/116}×100
【0058】
[インクジェット吐出安定性試験]
遮光膜用黒色樹脂組成物をコニカミノルタIJ製ピエゾ素子駆動型インクジェットヘッド(14pL/drop;KM512M)に仕込み、パージ、インクジェットヘッド吐出面の洗浄実施後、当該組成物の吐出状態を30分間連続で飛翔観察カメラにて確認し、液滴が吐出しない、飛翔軌道が明らかに垂直でない等、著しい不具合がなければ○とした。さらに間欠吐出試験(インクジェットヘッド吐出面洗浄後30分間静置し、再吐出したときの不吐出ノズルの数をカウント)にて、全512ノズル中不吐出ノズルの数が10個未満を○、30個未満を△、30個以上を×とした。
【0059】
[現像特性評価]
遮光膜用黒色樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板上に、ポストベーク後の膜厚が1.2μmとなるように塗布し、80℃で1分間プリベークした。その後、露光ギャップを80μmに調整し乾燥塗膜の上に、ライン/スペース=20μm/20μmのネガ型フォトマスクを被せ、I線照度30mW/cm2の超高圧水銀ランプで100mJ/cm2の紫外線を照射し感光部分の光硬化反応を行った。次に、この露光済み塗板を0.05%水酸化カリウム水溶液中、23℃にて1kgf/cm2圧シャワー現像を行い、パターンが観察された時間を現像抜け時間(BT秒)とし、さらに20秒の現像を行った後、5kgf/cm2圧のスプレー水洗を行い、塗膜の未露光部を除去しガラス基板上に画素パターンを形成し、その後、熱風乾燥機を用いて230℃にて30分間熱ポストベークした。各実施例、及び比較例における得られた遮光膜の評価項目と方法は以下の通りである。
パターン直線性ならびに塗膜表面の平滑性:ポストベーク後の20μmラインを顕微鏡ならびにSEMで観察し、ギザツキが観測された場合を×、ない場合を○とした。また、粗大粒子によるライン膜厚にばらつきがある場合は、平滑性×と判定した。
【0060】
次に、実施例で用いた樹脂の合成例を示すが、まず、以下の合成例、実施例中で用いる略号について示す。
BPFE:9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンとクロロメチルオキシランとの反応物。
BPDA:3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA:1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物
TPP:トリフェニルホスフィン
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
BDGAC:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物〔日本化薬(株)製商品名DPHA〕
HDDA:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
【0061】
[合成例1]
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中に、BPFE 78.63g(0.17mol)、アクリル酸24.50g(0.34mol)、TPP 0.45g、及びPGMEA 114gを仕込み、100〜105℃の加熱下で12hr撹拌し、反応生成物を得た。
次いで、得られた反応生成物にBPDA 25.01g(0.085mol)及びTHPA 12.93g(0.085mol)を仕込み、120〜125℃の加熱下で6hr撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(A)-1を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は55.8wt%であり、酸価(固形分換算)は103mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは2600であった。
【0062】
[樹脂溶液の調製:A成分溶液]
以下の(A)成分を含有する樹脂溶液A1〜A3を調製した。この樹脂溶液A1〜A3をそれぞれ乾燥・硬化させた硬化物の屈折率は、いずれも1.50〜1.55であった。
【0063】
(1)樹脂溶液A1(インクジェット印刷用―1):光硬化型樹脂組成物
BDGAC 86.9質量部、ウレタンアクリレート〔共栄社化学(株)製商品名UA-306H〕10.0質量部、光開始剤OXE−02(BASF製)0.75質量部、ビックケミー・ジャパン(株)製商品名 BYK(登録商標)-333の10% BDGAC希釈溶液を1.23質量部、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン〔信越化学工業(株)製商品名 KBE-585〕1.14質量部を混合し、1μmデプスフィルターによって加圧ろ過を行い、樹脂溶液A1を調製した。
【0064】
(2)樹脂溶液A2(インクジェット印刷用−2):熱硬化型樹脂組成物
BDGAC 82.9質量部、合成例1で得られた重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(A)-1 6.3質量部、フェノールノボラック型エポキシ樹脂〔三菱化学(株)製商品名JER154、エポキシ当量178、1分子中の平均官能基数3.0〕3.2質量部、DPHA 4.0質量部、ビックケミー・ジャパン(株)製商品名 BYK(登録商標)-333の10% BDGAC希釈溶液を1.24質量部、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン〔信越化学工業(株)製商品名 KBE-585〕2.95質量部を混合し、樹脂溶液A2を調製した。
【0065】
(3)樹脂溶液A3(フォトリソグラフィー用):光硬化型樹脂組成物
PGMEA 78.7質量部、合成例1で得られた重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(A)-1 12.3質量部、DPHA 2.41質量部、光重合開始剤OXE−02(BASF製)0.81質量部、ビックケミー・ジャパン(株)製商品名 BYK(登録商標)-333の10%BDGAC希釈溶液を1.24質量部、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン〔信越化学工業(株)製商品名 KBE-585〕2.95質量部を混合し、樹脂溶液A3を調製した。
【0066】
[黒色遮光性粒子含有分散液の調製:B成分]
(1)カーボンブラック分散液B1(インクジェット印刷用):BDGAC中でカーボンブラック濃度25質量%、分散樹脂〔樹脂溶液(A)−1中の樹脂成分〕として8質量%、高分子分散剤2質量%となるようにしてビーズミル中にて分散を行い、カーボンブラック分散液B1とした。得られた分散液中のカーボンブラック平均二次粒子径は106nmであった。
(2)カーボンブラック分散液B2(フォトリソグラフィー用):PGMEA中でカーボンブラック濃度25質量%、分散樹脂〔樹脂溶液(A)−1中の樹脂成分〕8質量%、高分子分散剤2質量%となるようにしてビーズミル中にて分散を行い、カーボンブラック分散液B2とした。得られた分散液中のカーボンブラック平均二次粒子径は98nmであった。
【0067】
[透明粒子含有分散液の調製:C成分]
シリカの屈折率は1.45(文献値)、アルミナの屈折率は1.74(文献値)を用いた。調製した分散液の特性を表1に示した。
(1)シリカ分散液C1:日産化学工業(株)製コロイダルシリカをγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランにて表面処理し、この表面処理されたシリカが50質量%濃度になるように高分子分散剤5質量%と共にHDDA中にビーズミルにて分散を行い、シリカ分散液C1とした。
(2)シリカ分散液C2:日産化学工業(株)製コロイダルシリカをγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランにて表面処理し、この表面処理されたシリカが30質量%濃度になるように高分子分散剤3質量%と共にDPHA中にてビーズミルにて分散を行いシリカ分散液C2とした。
(3)シリカ分散液C3:日産化学工業(株)製コロイダルシリカをγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランにて表面処理したシリカの濃度が30質量%になるように、高分子分散剤3質量%と共にTMPTA中にてビーズミルにて分散を行いシリカ分散液C3とした。
(4)シリカ分散液C4:粒状シリカ(日本アエロジル社製アエロジル)が濃度20質量%になるように高分子分散剤10質量%と共にPGMEA中にてビーズミルにて分散を行い、シリカ分散液C4とした。
(5)アルミナ分散液C5:日産化学工業(株)製コロイダルアルミナをγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランにて表面処理し、表面処理されたコロイダルアルミナの濃度が30質量%になるように、高分子分散剤3質量%と共にHDDA中にてビーズミルにて分散を行いアルミナ分散液C5とした。
【0068】
[遮光膜用黒色樹脂組成物およびその遮光膜の調製ならびに評価]
[実施例1]
樹脂溶液A2を14.5質量部、カーボンブラック分散液B1を15質量部、シリカ分散液C1を0.5質量部で混合し(全30質量部)、1μmデプスフィルターによって加圧ろ過を行い、遮光膜用黒色樹脂組成物を調製した。調製した当該組成物の初期粘度(室温)は10.3mPa・secだった。この遮光膜用黒色樹脂組成物を無アルカリガラス上にスピンコートにて回転数を変えて塗布し、これらを90℃にて5分間乾燥、さらに230℃にて30分間ポストベークして遮光膜付ガラス基板を作成した。
【0069】
[実施例2〜3、比較例1〜3]
前述の樹脂溶液A2及びカーボンブラック分散液B1と透明粒子含有分散液を表2〜3に示す質量部にて混合して遮光膜用黒色樹脂組成物を調製し、実施例1と同様にして粘度測定を行った。更にこの遮光膜用黒色樹脂組成物を無アルカリガラス上に塗布し、90℃にて5分間乾燥、さらに230℃にて30分間ポストベークして遮光膜付ガラス基板を作成した。結果を表2〜3に示す。
実施例1〜3における遮光膜付ガラス基板では、透明粒子を含まない比較例1の遮光膜付ガラス基板に比べ、同じカーボンブラック濃度にもかかわらず反射率を下げることができた。一方、アルミナ粒子(屈折率文献値1.74)を含有する比較例2の遮光膜付ガラス基板では反射率の低減は見られなかった。また平均二次粒子径がカーボンブラック粒子のそれよりも大きいシリカ粒子を用いた比較例3においては、遮光膜付ガラス基板の反射率は低減するものの、その硬化膜表面をSEMで観察したところ凝集粒子によるところの硬化膜表面の突起物が観察され、好ましくなく、膜厚にもばらつきがみられた。また遮光膜用黒色樹脂組成物においてはその40℃保管時の粘度が初期値に比較して著しい増粘があり、さらにインクジェット吐出試験においてノズルつまりが発生した。
【0070】
[実施例4]
樹脂溶液A1を14.5質量部、カーボンブラック分散液B1を15質量部、シリカ分散液C1を0.5質量部で混合し(全30質量部)、1μmデプスフィルターによって加圧ろ過を行い、遮光膜用黒色樹脂組成物を調製した。調製した当該組成物の初期粘度(室温)は10.0mPa・secだった。この遮光膜用黒色樹脂組成物を無アルカリガラス上にスピンコートにて回転数を変えて塗布し、90℃にて5分間乾燥、さらに紫外線露光1000mJ(365nm基準)、120℃にて30分ポストベークして遮光膜付ガラス基板を作成した。
【0071】
[実施例5〜6、比較例4〜6]
前述の樹脂溶液A1及びカーボンブラック分散液B1と透明粒子含有分散液とを、表2〜3に示す質量部にて混合して遮光膜用黒色樹脂組成物を調製し、実施例1と同様にして粘度測定を行った。更にこの遮光膜用黒色樹脂組成物を無アルカリガラス上にスピンコートにて回転数を変えて塗布し、90℃にて5分間乾燥、さらに紫外線露光1000mJ(365nm基準)、120℃にて30分ポストベークして遮光膜付ガラス基板を作成した。
実施例4〜6における遮光膜付ガラス基板では、透明粒子を含まない比較例4に比べ、同じカーボンブラック濃度にもかかわらず反射率が低下した。一方、アルミナ粒子(屈折率文献値1.74)を含有する比較例5の遮光膜付ガラス基板では反射率の低減は見られなかった。また平均二次粒子径がカーボンブラック粒子のそれよりも大きいシリカ粒子を用いた比較例6においては、遮光膜付ガラス基板の反射率は低減するものの、その硬化膜表面の平滑性は好ましくなかった。
【0072】
[実施例7、比較例7〜8]
全固形分濃度に対するカーボンブラック濃度を40質量%と変えて、実施例1ならびに比較例3及び比較例1と同様な遮光膜用黒色樹脂組成物を調製し、その粘度と遮光膜付ガラス基板の光学特性を評価した。結果を表2〜3に示す。
実施例7における遮光膜付ガラス基板では、透明粒子を含まない比較例8に比べ、同じカーボンブラック濃度にもかかわらず反射率を下げることができた。一方、平均二次粒子径がカーボンブラック粒子のそれよりも大きいシリカ粒子を用いた比較例7においては、遮光膜付ガラス基板の反射率は低減するものの、硬化膜表面をSEMで観察したところ凝集粒子によるところの硬化膜表面の突起物が観察され、好ましくなく、膜厚にばらつきがみられた。また遮光膜用黒色樹脂組成物においてはその40℃保管時の粘度が初期値に比較して著しい増粘があり、さらにインクジェット吐出試験においてノズルつまりが発生した。
【0073】
[実施例8及び比較例9〜10]
樹脂溶液A3及びカーボンブラック分散液B2としてフォトリソグラフィー向け遮光膜用黒色樹脂組成物を調製し、同様に粘度測定を行った。この遮光膜用黒色樹脂組成物を無アルカリガラス上にスピンコートにて塗布し、80℃にて5分間乾燥、石英マスクを通して紫外線露光100mJ(365nm基準)を行い、0.05%KOH水溶液中23℃にて40秒間浸漬/浸透し、更に230℃にて30分ポストベークして遮光膜付ガラス基板を作成した。結果を表4に示す。
実施例8における遮光膜付基板では、透明粒子を含まない比較例9に比べ、同じカーボンブラック濃度にもかかわらず反射率が低下した。一方、平均二次粒子径がカーボンブラック粒子のそれよりも大きいシリカ粒子を用いた比較例10においては、遮光膜付基板の反射率は低減するものの、硬化膜表面をSEMで観察したところ凝集粒子によるところの硬化膜表面の突起物が観察され、好ましくなく膜厚にばらつきがみられた。さらに20μmラインのエッジ形状に、実施例8及び比較例9では観察されないギザツキが見られた。また遮光膜用黒色樹脂組成物においてはその40℃保管時の粘度が初期値に比較して増粘が見られた。
【0074】
[実施例9〜10]
樹脂溶液をA2及びカーボンブラック分散液B1とし、全固形分濃度に対するシリカ濃度(C1)を変えて遮光膜用黒色樹脂組成物を調製し、実施例1同様にして遮光膜付ガラス基板の光学特性を評価した。結果を表5に示す。いずれもシリカ分散液の添加により反射率が低下することが分かった。
【0075】
[実施例11〜12]
樹脂溶液をA3及びカーボンブラック分散液B2とし、全固形分濃度に対するシリカ濃度(C1)を変えて遮光膜用黒色樹脂組成物を調製し、実施例8と同様にして遮光膜付ガラス基板の光学特性を評価した。結果を表5に示す。いずれもシリカ分散液の添加により反射率が低下することが分かった。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】