特許第6797514号(P6797514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6797514シリカ薄膜形成用リンス液、これを用いたシリカ前駆体薄膜およびシリカ薄膜の製造方法、ならびにこれらを用いて製造されるシリカ薄膜前駆体およびシリカ薄膜
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  • 特許6797514-シリカ薄膜形成用リンス液、これを用いたシリカ前駆体薄膜およびシリカ薄膜の製造方法、ならびにこれらを用いて製造されるシリカ薄膜前駆体およびシリカ薄膜 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797514
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】シリカ薄膜形成用リンス液、これを用いたシリカ前駆体薄膜およびシリカ薄膜の製造方法、ならびにこれらを用いて製造されるシリカ薄膜前駆体およびシリカ薄膜
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20201130BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   H01L21/308 E
   H01L21/316 G
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-150089(P2015-150089)
(22)【出願日】2015年7月29日
(65)【公開番号】特開2016-115916(P2016-115916A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2018年5月10日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0181864
(32)【優先日】2014年12月16日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0079441
(32)【優先日】2015年6月4日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】任 浣 熙
(72)【発明者】
【氏名】鄭 日
(72)【発明者】
【氏名】高 尚 蘭
(72)【発明者】
【氏名】金 佑 翰
(72)【発明者】
【氏名】金 ハヌル
(72)【発明者】
【氏名】尹 熙 燦
(72)【発明者】
【氏名】李 漢 松
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−203858(JP,A)
【文献】 特開2006−216704(JP,A)
【文献】 特開2003−197611(JP,A)
【文献】 特開2008−235479(JP,A)
【文献】 特開2012−099753(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2005−0032187(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304−21/3063
H01L 21/308
H01L 21/312−21/32
H01L 21/465−21/467
H01L 21/47−21/475
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエチルベンゼン(diethylbenzene)、インダン(indane)、インデン(indene)、tert−ブチルトルエン(tert−butyl toluene)、フェニル基および酸素原子を含むヘテロ炭化水素化合物を含有する混合物、またはこれらの組み合わせを含み、
前記フェニル基および酸素原子を含むヘテロ炭化水素化合物は、メチルアニソール(methylanisole)、ジフェニルエーテル(diphenyl ether)、ブチルベンゾエート(butyl benzoate)、ブチルフェニルエーテル(Butyl phenyl ether)、アリルメチルフェノール(allylmethylphenol)、イソブチルフェニルプロピオンアルデヒド(isobutylphenyl propionaldehyde)、フェニルシクロヘキサノン(phenylcyclohexanone)またはこれらの組み合わせを含むシリカ薄膜形成用リンス液。
【請求項2】
水素化ポリシラザン、水素化ポリシロキサザン、またはこれらの組み合わせを含むシリカ薄膜前駆体を剥離する機能を有する、請求項1に記載のシリカ薄膜形成用リンス液。
【請求項3】
前記フェニル基および酸素原子を含むヘテロ炭化水素化合物を含有する混合物は、前記フェニル基および酸素原子を含むヘテロ炭化水素化合物を10重量%以上70重量%以下の含量で含むものである、請求項1に記載のシリカ薄膜形成用リンス液。
【請求項4】
基板を準備する段階と、
前記基板上にケイ素含有溶液を塗布する段階と、
請求項1〜のいずれか一項に記載のシリカ薄膜形成用リンス液を前記ケイ素含有溶液が塗布された基板に部分的に噴射する段階と、
を含むシリカ前駆体薄膜の製造方法。
【請求項5】
請求項に記載の製造方法によって製造されたシリカ前駆体薄膜を硬化する段階を含むシリカ薄膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、シリカ薄膜形成用リンス液、およびこれを用いたシリカ前駆体薄膜およびシリカ薄膜の製造方法、ならびにこれらを用いて製造されるシリカ薄膜前駆体およびシリカ薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカは凹凸が形成されている基板に塗布および加熱されて谷が形成された部分をギャップフィル(gap−fill)して膜を平坦化させる材料として用いられている。このようなシリカ材料で形成されたシリカ薄膜は、例えば、LSI、TFT液晶表示装置などの半導体素子の層間絶縁膜、平坦化膜、パッシベーション膜、素子間分離絶縁体などとして幅広く用いられている。具体的に、絶縁膜としてSTI、ILD、IMD層などに用いられている。STI(Shallow Trench Isolation;STI)は、集積回路(IC)でトランジスターのようなデバイス間の適切な分離を達成するために用いられ、STIは、半導体基板でトレンチ(trench)を形成させた後、トレンチを絶縁物質で満たすことを含む。このように満たされたトレンチは活性領域の大きさおよび配置を規定する。また、ILD、IMD領域の層間絶縁膜を満たすことを含む。このようなSTI、ILD、IMD絶縁層を形成するために集積回路(IC)内に形成されたギャップ(gap)および層(layer)をシリカ層形成用シリコン系コーティング組成物で満たして形成されたシリカ層が用いられ得る。
【0003】
シリカ質の膜を半導体素子などに形成する場合、通常、次のような方法が採用されている。つまり、まず必要に応じて半導体、配線、電極などが形成された、段差を有するまたは段差を有さない基板上に水素化ポリシロキサザン溶液をスピン塗布し、加熱して塗膜から溶媒が除去され、次いで、所定の温度以上で焼成して水素化ポリシロキサザンがシリカ質の膜(シリカ薄膜)へ転換される。このような転換されたシリカ質の膜が層間絶縁膜、平坦化膜、パッシベーション膜、素子間分離絶縁体などとして用いられている。
【0004】
一般に、シリカ薄膜は、ケイ素(Si)含有溶液を基板上にスピンコートまたはスリットコート方式で塗布する段階を含む製造方法によって形成されるが、この時、基板の周辺部にビードが形成されたり基板裏面にケイ素含有溶液が適用され得る。
【0005】
このように意図しない部位に適用された、ケイ素含有溶液に由来するシリカ前駆体成分を剥離するためにリンス液が用いられるが、この時、境界部分がシャープ(sharp)に剥離されないか、または剥離しようとする部分に膜質が残存する問題がある。このような問題を解決するために関連研究が進行されたが(特許文献1)、剥離される部分と剥離されない部分との間の高さ差(段差)の改善が依然として解決課題として残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第2004−0068989号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、シリカ薄膜の境界部分をシャープに形成するためにシリカ前駆体薄膜を剥離することができるシリカ薄膜形成用リンス液を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、前記シリカ薄膜形成用リンス液を用いたシリカ薄膜前駆体およびシリカ薄膜の製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明のさらなる他の目的は、前記シリカ薄膜形成用リンス液を用いて製造されたシリカ薄膜前駆体およびシリカ薄膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、トリメチルベンゼン(trimethylbenzene)、ジエチルベンゼン(diethylbenzene)、インダン(indane)、インデン(indene)、tert−ブチルトルエン(tert−butyl toluene)、メチルナフタレン(methylnaphthalene)、炭素数12以上である芳香族炭化水素含有混合物、炭素数12以上である脂肪族炭化水素含有混合物、フェニル基および酸素原子を含むヘテロ炭化水素化合物を含有する混合物、またはこれらの組み合わせを含むシリカ薄膜形成用リンス液を提供する。
【0011】
前記シリカ薄膜形成用リンス液は、水素化ポリシラザン、水素化ポリシロキサザン、またはこれらの組み合わせを含む前記シリカ前駆体薄膜を除去する機能を有することができる。なお、本明細書において、水素化ポリシラザンは、さらに水素が付加した過水素化ポリシラザンも含まれるものとする。
【0012】
前記シリカ薄膜形成用リンス液は、炭素数12〜30の芳香族炭化水素含有混合物、炭素数12〜30の脂肪族炭化水素含有混合物またはこれらの組み合わせを含むものであり得る。
【0013】
前記フェニル基および酸素原子を含むヘテロ炭化水素化合物を含有する混合物は、前記フェニル基および酸素原子を含むヘテロ炭化水素化合物を10重量%以上70重量%以下の含量で含むものであり得る。
【0014】
前記フェニル基および酸素原子を含むヘテロ炭化水素化合物は、その構造内にエーテル、アルデヒド、アルコール、ケトン、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0015】
前記フェニル基および酸素原子を含むヘテロ炭化水素化合物は、メチルアニソール(methylanisole)、ジフェニルエーテル(diphenyl ether)、ブチルベンゾエート(butyl benzoate)、ブチルフェニルエーテル(Butyl phenyl ether)、アリルメチルフェノール(allylmethylphenol)、イソブチルフェニルプロピオンアルデヒド(isobutylphenyl propionaldehyde)、フェニルシクロヘキサノン(phenylcyclohexanone)またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0016】
本発明の他の実施形態は、前記基板上にケイ素含有溶液を塗布する段階と、上述したシリカ薄膜形成用リンス液を前記ケイ素含有溶液が塗布された基板に部分的に噴射する段階と、を含むシリカ前駆体薄膜の製造方法を提供する。
【0017】
本発明のさらなる他の実施形態は、前記製造方法により製造されたシリカ前駆体薄膜を硬化する段階を含むシリカ薄膜の製造方法を提供する。
【0018】
本発明の他の実施形態は、上述したシリカ薄膜形成用リンス液を用いて製造されたシリカ前駆体薄膜を提供する。
【0019】
本発明のさらなる他の実施形態は、前記シリカ薄膜から形成されたシリカ薄膜を提供する。
【0020】
ここで、前記シリカ前駆体薄膜は、下記計算式1により測定された段差(ΔT)が400nm以下であり得る。
【0021】
【数1】
【0022】
また、前記シリカ薄膜は、上記計算式1により測定された段差(ΔT)が例えば400nm以下であるシリカ前駆体薄膜から形成され得る。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、シリカ薄膜形成用リンス液内に含まれている水分と不純物の含有量を低減させることによって、薄膜特性に影響を与えないながらも、シリカ前駆体薄膜の境界面をシャープに剥離することで、シリカ薄膜の境界部分をシャープに形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】シリカ薄膜形成用リンス液の剥離特性評価方法を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態をより詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものに過ぎず、本発明はこれによって制限されず、後述する特許請求の範囲の範疇だけにより定義される。
【0026】
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。
【0027】
本明細書で「置換」とは、別途の定義がない限り、作用基中の一つ以上の水素原子がハロゲン原子(F、Cl、Br、またはI)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、イミノ基(=NH、=NR、ここでRは、炭素数1〜10のアルキル基である)、アミノ基(−NH、−NH(R)、−N(R)(R)、ここでR〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基である)、アミジノ基、ヒドラジンまたはヒドラゾン基、カルボキシル基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜10のヘテロアルキル基、炭素数3〜20のヘテロアリール基および炭素数2〜20のヘテロシクロアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されたり、または2個の水素原子が=O、=S、=NR(Rは、C1〜C10のアルキル基である)、=PR(Rは、C1〜C10のアルキル基である)および=SiR(RおよびRは、独立して、C1〜C10のアルキル基である)からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されたり、または3個の水素原子が≡N、≡Pおよび≡SiR(Rは、C1〜C10のアルキル基である)からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されたものを意味する。
【0028】
本明細書で層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるという時、これは他の部分の「直接隣接して上」にある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。
【0029】
以下、一実施形態に係るシリカ薄膜形成用リンス液について説明する。
【0030】
一実施形態に係るシリカ薄膜形成用リンス液は、トリメチルベンゼン(trimethylbenzene)、ジエチルベンゼン(diethylbenzene)、インダン(indane)、インデン(indene)、tert−ブチルトルエン(tert−butyl toluene)、メチルナフタレン(methylnaphthalene)、炭素数12以上である芳香族炭化水素含有混合物、炭素数12以上である脂肪族炭化水素含有混合物、フェニル基および酸素原子を含むヘテロ炭化水素化合物を含有する混合物、またはこれらの組み合わせを含む。
【0031】
前記で羅列された化合物は、置換または非置換の構造であり得る。
【0032】
前記混合物とは、複数の化合物の組み合わせを意味し、ここで前記複数の化合物は、同一種類の化合物であってもよく、異なる種類の化合物であってもよい。
【0033】
シリカ前駆体薄膜は、水素化ポリシラザン、水素化ポリシロキサザン、またはこれらの組み合わせを含むことができ、例えばペルヒドロポリシラザン含有溶液を基板上にコーティングして形成することができる。
【0034】
前記シリカ薄膜は、水素化ポリシラザン、水素化ポリシロキサザン、またはこれらの組み合わせを含むことができ、例えばペルヒドロポリシラザン含有溶液を基板上にコーティングした後、硬化(転換)して形成することができる。
【0035】
前記シリカ薄膜の形成過程で、部分的に不必要に形成されたシリカ前駆体薄膜を基板から剥離させる必要があるが、前記リンス液はシリカ前駆体薄膜に対する溶解性およびエッジ切断性が良好で、これらのリンス液をシリカ前駆体薄膜に適用すると、シリカ前駆体薄膜が剥離される部分と剥離されない部分との間の高さ差(段差)を顕著に低めることができる。
【0036】
前記炭素数12以上である芳香族炭化水素含有混合物は、例えば、炭素数12〜30の芳香族炭化水素を含むことができ、前記炭素数12以上である脂肪族炭化水素含有混合物は、炭素数12〜30の脂肪族炭化水素を含むことができるが、これに限定されない。
【0037】
前記フェニル基および酸素原子を含むヘテロ炭化水素化合物を含有する混合物は、前記フェニル基および酸素原子を含むヘテロ炭化水素化合物を例えば10重量%以上70重量%以下の含有量で含むことができる。
【0038】
前記フェニル基および酸素原子を含むヘテロ炭化水素化合物は、その構造内にフェニル基と酸素含有部分、例えばエーテル、アルデヒド、アルコール、ケトン、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0039】
例えば、前記フェニル基および酸素原子を含むヘテロ炭化水素化合物は、メチルアニソール(methylanisole)、ジフェニルエーテル(diphenyl ether)、ブチルベンゾエート(butyl benzoate)、ブチルフェニルエーテル(Butyl phenyl ether)、アリルメチルフェノール(allylmethylphenol)、イソブチルフェニルプロピオンアルデヒド(isobutylphenyl propionaldehyde)、フェニルシクロヘキサノン(phenylcyclohexanone)またはこれらの組み合わせを含むことができるが、これに限定されない。
【0040】
前記フェニル基および酸素原子を含むヘテロ炭化水素化合物をシリカ薄膜形成用リンス液に用いる場合、リンス液混合物全体に対して10重量%以上70重量%以下の含有量で含ませる。この場合、シリカ前駆体薄膜およびシリカ薄膜の段差特性をさらに向上させることができる。
【0041】
一実施形態に係るシリカ薄膜形成用リンス液は、薄膜特性に及ぼす影響を最小化しながらも、シリカ前駆体薄膜の境界面をシャープに剥離することができ、これによってシリカ薄膜の境界部分をシャープに形成できるだけでなく、ゲル化速度が遅くて保管安定性も良好である。
【0042】
前記シリカ薄膜形成用リンス液内に含まれている水分含有量は、例えば150ppm以下であり、具体的には100ppm以下であり得る。
【0043】
他の一実施形態によれば、基板を準備する段階と、前記基板上にケイ素含有溶液を塗布する段階と、上述したシリカ薄膜形成用リンス液を前記ケイ素含有溶液が塗布された基板に部分的に噴射する段階と、を含むシリカ前駆体薄膜の製造方法を提供する。
【0044】
さらなる他の一実施形態によれば、前記製造方法によって製造されたシリカ前駆体薄膜を硬化する段階を含むシリカ薄膜の製造方法を提供する。
【0045】
前記基板の材料は特に限定されず、例えばシリコンウエハーが用いられ得る。また前記基板の形状も特に限定されず、例えば板型、フィルム型などを用いることができ、前記基板の表面状態も平坦型、凹凸型、または曲面型など制限なしに選択することができる。
【0046】
前記ケイ素含有溶液は、ケイ素含有化合物および溶媒を含むことができる。ここで、ケイ素含有化合物としては、例えば水素化ポリシラザン、水素化ポリシロキサザン等を挙げることができ、またこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0047】
前記ケイ素含有化合物の物性は特に限定されないが、例えば重量平均分子量1,000〜200,000、酸素含有量0.2重量%〜3重量%、SiH基の全体量で占めるSiH基の比率(SiH/SiH(total))は15モル%〜35モル%、塩素含有量1ppm以下であり得る。
【0048】
ケイ素含有溶液の溶媒としては、特に制限されないが、たとえばキシレン、ジ−n−ブチルエーテル等の公知の溶媒を用いることができる。
【0049】
前記ケイ素含有溶液の塗布方式として、例えばスピンコーティング、噴霧コーティング、フローコーティング、ローラーコーティング、浸漬コーティング、ワイピング法、スポンジワイピング法など公知の方式を用いることができるが、特定の方法に限定されない。
【0050】
シリカ薄膜形成用リンス液の噴射は、例えば前記ケイ素含有溶液が塗布された基板を約500〜4,000rpmの回転速度で回転させた状態で、前記リンス液を除去成分が位置する部分、例えば前記基板のエッジ部と背面に噴射させることができる。
【0051】
さらに他の一実施形態によれば、上述したシリカ薄膜形成用リンス液を用いて製造されたシリカ前駆体薄膜を提供する。
【0052】
さらに他の一実施形態によれば、上述したシリカ薄膜形成用リンス液を用いて製造されたシリカ薄膜を提供する。
【0053】
前記シリカ薄膜は、例えば、半導体素子、ディスプレイ素子などの絶縁膜、平坦化膜、パッシベーション膜、素子間分離絶縁体として用いられ得る。
【0054】
前記シリカ前駆体薄膜は、薄膜の境界面の剥離特性に優れ、下記計算式1により測定された段差(ΔT)が例えば400nm以下であり得る。
【0055】
【数2】
【0056】
また、前記シリカ薄膜は、上記計算式1により測定された段差(ΔT)が例えば400nm以下であるシリカ前駆体薄膜から形成され得る。
【0057】
以下、実施例を通じて上述した本発明の実施形態をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は単に説明の目的のためのものに過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0058】
(合成例:ケイ素含有化合物の合成)
容量2Lの攪拌、温度制御装置付き反応器の内部を乾燥窒素で置換した。そして、乾燥ピリジン1,500gを注入して十分に混合した後に反応器に入れ、これを20℃に保温した。次いで、ジクロロシラン100gを1時間にかけて徐々に注入した。そして、攪拌しながらここにアンモニア70gを3時間にかけて徐々に注入した。次いで、乾燥窒素を30分間注入して反応器内に残存するアンモニアを除去した。得られた白色のスラリー状の生成物を乾燥窒素雰囲気中で1μmのテフロン(登録商標)製の濾過器を用いて濾過したところ、濾液1,000gを得た。ここに乾燥キシレン1,000gを添加した後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒をピリジンからキシレンで置換する操作を総3回繰り返しながら固形分濃度を20%に調整し、最後に、ポアサイズ0.03μmのテフロン(登録商標)製の濾過器で濾過した。得られたペルヒドロポリシラザンの酸素含有量は3.8%、SiH/SiH(total)は0.22、重量平均分子量は4,000、塩素含有量は0.9ppmであった。
【0059】
(参考例1、11、実施例2〜10、比較例1〜4:シリカ薄膜形成用リンス液)
下記表1のような組成でシリカ薄膜形成用リンス液を準備した。
【0060】
(評価1:残膜および段差特性の評価)
前記合成例で得られた化合物をジ−n−ブチルエーテル溶媒と混合してケイ素含有溶液(20重量%)を準備した。前記ケイ素含有溶液3ccをスピンコーターにセッティングし、直径8インチのベアシリコンウエハーの中央部分に回転数1500rpmで20秒間スピン塗布して厚さ約500nmの膜を形成した。次いで、ウエハー外周部から約3mm離れた位置の上部で参考例1、11、実施例2〜10、および比較例1〜4によるシリカ薄膜形成用リンス液を流量10mL/minで5秒間噴射した。その後、150℃のホットプレートで3分間加熱乾燥させた。
【0061】
前記過程を通じて得られたシリカ前駆体薄膜の剥離特性を評価した。
【0062】
図1は、シリコンウエハー上のシリカ前駆体薄膜にリンス液を噴射した後のシリカ前駆体薄膜の形態を例示した図面であり、図1を参照して前記シリカ薄膜形成用リンス液の剥離特性評価方法を説明する。
【0063】
図1を参照すると、シリカ前駆体薄膜の終端が膨らんで段差(ΔT)が生成されるが、剥離しようとする部分、つまり、ウエハー外周部で3mmの膜を除去して残膜の有無を観察する。
【0064】
段差(ΔT)は、反射分光型膜厚計であるXE300(PARK system社製)およびSEMであるS−4800(Type−2)(Hitachi社製)を用いてウエハー外周部から約10mmまでの範囲(SEMはΔT付近だけ)をスキャンして測定し、剥離しようとする部分の残膜有無は光学顕微鏡であるLV100D(Nikon社製)と反射分光膜厚計であるST−4000(K−MAC社製)を用いて確認した。
【0065】
(評価2:ゲル化日数の評価)
100gのガラス瓶に評価1で用いた前記ケイ素含有溶液2.3gと参考例1、11、実施例2〜10、および比較例1〜4によるシリカ薄膜形成用リンス液23gを入れて混合し、蓋を開けた状態で22℃、50%RHの室内に放置して、ゲル化するまでの日数を肉眼で観察した。
【0066】
前記評価1および2の結果を下記表1に共に示した。
【0067】
【表1】
【0068】
前記表1を参照すると、本願発明の実施例に係るリンス液を用いた場合、比較例に比べて膜段差が減少し、外周部の切断時に残膜が残っていないことを確認できる。また、本願発明の実施例に係るリンス液を用いた場合、保管安定性にも優れていることを確認できる。
【0069】
以上を通じて本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属するのは当然である。
図1