特許第6797735号(P6797735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6797735ボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6797735
(24)【登録日】2020年11月20日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】ボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/11 20060101AFI20201130BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20201130BHJP
   H01F 1/113 20060101ALI20201130BHJP
   C01G 49/00 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   H01F1/11
   H01F41/02 G
   H01F1/113
   C01G49/00 C
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-69787(P2017-69787)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-174175(P2018-174175A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595156333
【氏名又は名称】DOWAエフテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】綾部 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】山田 智也
(72)【発明者】
【氏名】坪井 禅
(72)【発明者】
【氏名】三島 泰信
(72)【発明者】
【氏名】千田 正康
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−157939(JP,A)
【文献】 特開2010−263201(JP,A)
【文献】 特開2016−072634(JP,A)
【文献】 特開2009−099969(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第106128743(CN,A)
【文献】 特開2002−175907(JP,A)
【文献】 特開2007−214510(JP,A)
【文献】 特開平04−302101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/11
C01G 49/00
H01F 1/113
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−Feと炭酸ストロンチウムと融剤を混合して造粒した後、焼成し、粗粉砕してフェライトの粗粉を得る工程と、α−Feと炭酸ストロンチウムを混合して造粒した後、粗粉を得る際の焼成の温度より低い温度で焼成し、粉砕して、フェライトの粗粉より平均粒径が小さいフェライトの微粉を得る工程と、フェライトの粗粉と微粉を混合し、粉砕し、焼鈍する工程とを備えたボンド磁石用フェライト粉末の製造方法において、フェライトの粗粉を得る際に、炭酸ストロンチウムに対するα−Feのモル比を5.3〜5.45にするとともに、α−Feと炭酸ストロンチウムの合計に対する融剤の添加量を0.4〜1.0質量%にすることを特徴とする、ボンド磁石用フェライト粉末の製造方法。
【請求項2】
前記融剤がホウ酸であることを特徴とする、請求項1に記載のボンド磁石用フェライト粉末の製造方法。
【請求項3】
前記粗粉の短軸長に対する長軸長の比が1.4以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のボンド磁石用フェライト粉末の製造方法。
【請求項4】
前記粗粉のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)が10μm以上であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末の製造方法。
【請求項5】
前記微粉のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)が0.6〜1.5μmであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末の製造方法。
【請求項6】
前記微粉の比表面積が前記粗粉の比表面積より大きいことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末の製造方法。
【請求項7】
レーザー回折式体積基準の粒度分布測定装置により得られた体積基準の粒度分布において、粒径0.6〜1.5μmの範囲内に第1のピークを有するとともに、粒径10〜15μmの範囲内に第2のピークを有し、第1のピークの高さに対する第2のピークの高さの比が1.2〜2.0であることを特徴とする、ボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項8】
前記ボンド磁石用フェライト粉末の圧縮密度が3.7g/cm以上であることを特徴とする、請求項7のボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項9】
前記ボンド磁石用フェライト粉末の長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比の平均値が1.4以下であることを特徴とする、請求項7または8のボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項10】
前記ボンド磁石用フェライト粉末93.75重量部とシランカップリング剤0.8重量部と滑剤0.8重量部と粉末状のポリアミド樹脂4.65重量部を混合して得られた混合物を230℃で混練して得られた平均径2mmの混練ペレットを12.0KOeの磁場中において温度290℃、成形圧力8.5N/mmで射出形成して得られた直径15mm×高さ8mmで磁場の配向方向が円柱の中心軸に沿った方向の円柱形のボンド磁石について、BHトレーサーを使用して測定磁場10kOeで測定した残留磁化Brが3400G以上であることを特徴とする、請求項7乃至9のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれかに記載のボンド磁石用フェライト粉末と、バインダとを備えたことを特徴とする、ボンド磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法に関し、特に、フェライトの粗粒と微粒を含むボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、AV機器、OA機器、自動車電装部品などに使用される小型モータや、複写機のマグネットロールなどに使用される磁石のような高磁力の磁石として、フェライト系焼結磁石が使用されている。しかし、フェライト系焼結磁石は、欠け割れが発生したり、研磨が必要なために生産性に劣るという問題があることに加えて、複雑な形状への加工が困難であるという問題がある。
【0003】
そのため、近年では、AV機器、OA機器、自動車電装部品などに使用される小型モータなどの高磁力の磁石として、希土類磁石のボンド磁石が使用されている。しかし、希土類磁石は、フェライト系焼結磁石の約20倍のコストがかかり、また、錆び易いという問題があるため、フェライト系焼結磁石の代わりにフェライト系ボンド磁石を使用することが望まれている。
【0004】
しかし、ボンド磁石と焼結磁石では密度が大きく異なり、例えば、フェライト系焼結磁石の密度が5.0g/cm程度であるのに対して、フェライト系ボンド磁石は、樹脂やゴムなどのバインダを含むために、その密度はフェライト系焼結磁石よりも低くなり、磁力が低下する。そのため、フェライト系ボンド磁石の磁力を高くするために、フェライト粉末の含有率を増加させることが必要になる。しかし、フェライト系ボンド磁石中のフェライト粉末の含有率を増加させると、フェライト粉末とバインダとの混練時に、これらの混練物の粘度が高くなり、混練時の負荷が増大して、生産性が低下し、極端な場合には混練することができなくなる。また、混練することができたとしても、成形時に混練物の流動性が悪くなるので、生産性が低下し、極端な場合には成形することができなくなる。
【0005】
このようなフェライト系ボンド磁石の問題を解決するために、フェライト粉末の充填性を高めることが重要である。このフェライト粉末の充填性は、一般に粒度分布や圧縮密度と関連性が高く、フェライト粉末の充填性を高めるためには、圧縮密度を高くする必要がある。
【0006】
このような圧縮密度が高く、高充填性のボンド磁石用フェライト粉末の製造方法として、酸化鉄を含む複数の原材料を造粒して得られた造粒物を塩化物の蒸気圧下において1050〜1300℃で焼成して得られた焼成物を解砕または粉砕した後に大気中において800〜1100℃でアニールして得られた第1の粉末と、酸化物を含む複数の原材料を造粒して得られた造粒物を大気中において900〜1200℃で焼成して得られた焼成物を解砕または粉砕した後に大気中において800〜1100℃で焼成して得られた第2の粉末とを混合して、異方性ボンド磁石用フェライト粉末を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、酸化鉄を含む複数のフェライト原料を造粒して得られた造粒物に塩化カリウムを含ませて酸素濃度0.1〜6体積%の雰囲気中において1230〜1300℃で焼成してフェライト粉末(粗粉末)を得るとともに、酸化鉄を含む複数のフェライト原料を造粒して得られた造粒物を900〜1100℃で焼成してフェライト粉末(微粉末)を得た後、フェライト粉末(粗粉末)100重量部に対してフェライト粉末(微粉末)20重量部以上50重量部未満を混合して得られた混合粉末を解砕して得られた混合解砕物をアニールして、ボンド磁石用フェライト粉末を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010-263201号公報(段落番号0013−0018)
【特許文献2】特開2016-157939号公報(段落番号0015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1〜2の方法では、ボンド磁石用フェライト粉末の圧縮密度をさらに高くして、充填性をさらに高くすることにより、ボンド磁石の磁気特性をさらに向上させるために、フェライトの粗粉の製造の際の焼成温度を高くして、フェライトの粗粉の粒子径を大きくすることにより、フェライトの粗粉と微粉の粒子径の差を大きくして、圧縮密度を高くしようとしても、粗粉の粒子間の焼成が進んでしまい、粗粉の短軸長に対する長軸長の比が高くなって、圧縮密度をさらに高くすることができなかった。また、特許文献1〜2の方法では、ボンド磁石中のフェライト粉末の含有率をさらに高く(例えば、93.75質量%以上と高く)すると、ボンド磁石用フェライト粉末を混合してボンド磁石を製造する際の流動性が低下して、ボンド磁石の磁気特性が悪化する。
【0010】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、圧縮密度が高く、ボンド磁石中のフェライト粉末の含有率が高くてもボンド磁石を製造する際の流動性が高く、磁気特性に優れたボンド磁石を得ることができる、ボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、α−Feと炭酸ストロンチウムと融剤を混合して造粒した後、焼成し、粗粉砕してフェライトの粗粉を得る工程と、α−Feと炭酸ストロンチウムを混合して造粒した後、粗粉を得る際の焼成の温度より低い温度で焼成し、粉砕して、フェライトの粗粉より平均粒径が小さいフェライトの微粉を得る工程と、フェライトの粗粉と微粉を混合し、粉砕し、焼鈍する工程とを備えたボンド磁石用フェライト粉末の製造方法において、フェライトの粗粉を得る際に、炭酸ストロンチウムに対するα−Feのモル比を5.3〜5.45にするとともに、α−Feと炭酸ストロンチウムの合計に対する融剤の添加量を0.4〜1.0質量%にすることにより、圧縮密度が高く、ボンド磁石中のフェライト粉末の含有率が高くてもボンド磁石を製造する際の流動性が高く、磁気特性に優れたボンド磁石を得ることができる、ボンド磁石用フェライト粉末を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明によるボンド磁石用フェライト粉末の製造方法は、α−Feと炭酸ストロンチウムと融剤を混合して造粒した後、焼成し、粗粉砕してフェライトの粗粉を得る工程と、α−Feと炭酸ストロンチウムを混合して造粒した後、粗粉を得る際の焼成の温度より低い温度で焼成し、粉砕して、フェライトの粗粉より平均粒径が小さいフェライトの微粉を得る工程と、フェライトの粗粉と微粉を混合し、粉砕し、焼鈍する工程とを備えたボンド磁石用フェライト粉末の製造方法において、フェライトの粗粉を得る際に、炭酸ストロンチウムに対するα−Feのモル比を5.3〜5.45にするとともに、α−Feと炭酸ストロンチウムの合計に対する融剤の添加量を0.4〜1.0質量%にすることを特徴とする。
【0013】
このボンド磁石用フェライト粉末の製造方法において、融剤がホウ酸であるのが好ましく、粗粉の短軸長に対する長軸長の比が1.4以下であるのが好ましい。また、粗粉のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)が10μm以上であるのが好ましく、微粉のレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)が0.6〜1.5μmであるのが好ましい。また、微粉の比表面積が粗粉の比表面積より大きいのが好ましい。
【0014】
また、本発明によるボンド磁石用フェライト粉末は、レーザー回折式粒度分布測定装置により得られた体積基準の粒度分布において、粒径0.6〜1.5μmの範囲内に第1のピークを有するとともに、粒径10〜15μmの範囲内に第2のピークを有し、第1のピークの高さに対する第2のピークの高さの比が1.2〜2.0であることを特徴とする。
【0015】
このボンド磁石用フェライト粉末において、圧縮密度が3.7g/cm以上であるのが好ましく、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比の平均値が1.4以下であるのが好ましい。また、ボンド磁石用フェライト粉末93.75重量部とシランカップリング剤0.8重量部と滑剤0.8重量部と粉末状のポリアミド樹脂4.65重量部を混合して得られた混合物を230℃で混練して得られた平均径2mmの混練ペレットを12.0KOeの磁場中において温度290℃、成形圧力8.5N/mmで射出形成して得られた直径15mm×高さ8mmで磁場の配向方向が円柱の中心軸に沿った方向の円柱形のボンド磁石について、BHトレーサーを使用して測定磁場10kOe(795.8kA/m)で測定した残留磁化(残留磁束密度)Brが3400G以上であるのが好ましい。
【0016】
また、本発明によるボンド磁石は、上記のボンド磁石用フェライト粉末と、バインダとを備えたことを特徴とする。
【0017】
なお、本明細書中において、「短軸長に対する長軸長の比」とは、短軸長(1粒子を平行な2本の直線で挟み込んだときの直線間距離の最小値)に対する長軸長(1粒子を平行な2本の直線で挟み込んだときの直線間距離の最大値)の比(長軸長/短軸長)をいう。
【0018】
また、「レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置を使用して焦点距離20mm、分散圧5bar、吸引圧130mbarで測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)をいい、「レーザー回折式粒度分布測定装置により得られた体積基準の粒度分布」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置を使用して焦点距離20mm、分散圧5bar、吸引圧130mbarで得られた体積基準の粒度分布をいう。
【0019】
また、体積基準の粒度分布における「ピーク」とは、体積基準の粒度分布を頻度分布として表す際に、粒度分布の隣り合う測定点の粒径の比が1.25以下になるように測定して得られた頻度分布を示すヒストグラムにおいて、極大値を示す測定点とその前後の測定点の3つの測定点における粒径とその頻度を二次関数で近似したときのその二次関数のピークをいい、そのピークにおける頻度を「ピークの高さ(ピーク高さ)」という。
【0020】
また、「比表面積」とは、比表面積測定装置を使用してBET一点法によって測定されたBET比表面積をいう。
【0021】
さらに、「圧縮密度」とは、ボンド磁石用フェライト粉末10gを内径2.54cmφの円筒形の金型に充填した後に1トン/cmの圧力で圧縮したときのボンド磁石用フェライト粉末の密度をいう。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、圧縮密度が高く、ボンド磁石中のフェライト粉末の含有率が高くてもボンド磁石を製造する際の流動性が高く、磁気特性に優れたボンド磁石を得ることができる、ボンド磁石用フェライト粉末を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例および比較例で得られたボンド磁石用フェライト粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により得られた体積基準の粒度分布を示す図である。
図2】実施例1で得られたボンド磁石用フェライトの走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明によるボンド磁石用フェライト粉末の製造方法の実施の形態では、α−Feと炭酸ストロンチウムと融剤を混合して造粒した後、焼成し、粗粉砕してフェライトの粗粉を得る工程と、α−Feと炭酸ストロンチウムを混合して造粒した後、粗粉を得る際の焼成の温度より低い温度で焼成し、粉砕して、フェライトの粗粉より平均粒径が小さい(好ましくは、比表面積がフェライトの粗粉の比表面積より大きい)フェライトの微粉を得る工程と、フェライトの粗粉と微粉を混合し、粉砕し、焼鈍(アニール)する工程とを備えたボンド磁石用フェライト粉末の製造方法において、フェライトの粗粉を得る際に、炭酸ストロンチウムに対するα−Feのモル比を5.3〜5.45にするとともに、α−Feと炭酸ストロンチウムの合計に対する融剤の添加量を0.4〜1.0質量%にする。
【0025】
フェライトの粗粉は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)が10μm以上であるのが好ましく、短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)が1.4以下であるのが好ましい。
【0026】
このフェライトの粗粉を製造する際の融剤の添加量は、α−Feと炭酸ストロンチウムの合計に対して0.4〜1.0質量%である。融剤の添加量が0.4質量%未満であると、粗粉の累積50%粒子径(D50径)が10μm未満になり、フェライトの微粉と混合して製造したボンド磁石用フェライト粉末の圧縮密度が低下し、ボンド磁石を製造する際の流動性が低下し、そのボンド磁石用フェライト粉末を使用して製造したボンド磁石の残留磁化(残留磁束密度)Brが低下する。一方、融剤の添加量が1.0質量%を超えると、不純物としての融剤の残留割合が高くなり、フェライトの微粉と混合して製造したボンド磁石用フェライト粉末の飽和磁化σsが低下し、ボンド磁石用フェライト粉末を使用して製造したボンド磁石の残留磁化Brが低下する。
【0027】
また、フェライトの粗粉を製造する際の炭酸ストロンチウムに対するα−Feのモル比は5.3〜5.45(好ましくは5.3〜5.4)である。融剤の添加量がα−Feと炭酸ストロンチウムの合計に対して0.4〜1.0質量%であっても、炭酸ストロンチウムに対するα−Feのモル比が5.45を超えると、フェライトの粗粉の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)が1.4より大きくなり、フェライトの微粉と混合して製造したボンド磁石用フェライト粉末の圧縮密度が低下し、流動性が低下し、そのボンド磁石用フェライト粉末を使用して製造したボンド磁石の残留磁化Brが低下する。一方、融剤の添加量がα−Feと炭酸ストロンチウムの合計に対して0.4〜1.0質量%であっても、炭酸ストロンチウムに対するα−Feのモル比が5.3未満であると、未反応のSrO化合物が残留し、フェライトの微粉と混合して製造したボンド磁石用フェライト粉末の飽和磁化σsが低下し、ボンド磁石用フェライト粉末を使用して製造したボンド磁石の残留磁化Brが低下する。
【0028】
フェライトの粗粉を製造する際の融剤として、ホウ酸、酸化ビスマス、ホウ酸塩などを使用することができるが、ホウ酸を使用するのが好ましい。
【0029】
フェライトの粗粉を製造する際にα−Feおよび炭酸ストロンチウムに融剤とともに塩化カリウムを添加するのが好ましい。フェライトの粗粉を製造する際の焼成温度は1230〜1300℃であるのが好ましく、焼成時の酸素濃度は0.1〜6体積%であるのが好ましい。
【0030】
フェライトの微粉は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)が0.6〜1.5μmであるのが好ましい。このフェライトの微粉を製造する際の焼成温度は、フェライトの粗粉を製造する際の焼成温度より低く、900〜1300℃であるのが好ましい。また、ボンド磁石用フェライト粉末を製造するために、フェライトの粗粉100質量部に対してフェライトの微粉20〜50重量部を混合するのが好ましい。
【0031】
また、本発明によるボンド磁石用フェライト粉末は、レーザー回折式粒度分布測定装置により得られた体積基準の粒度分布を頻度分布において、粒径0.6〜1.5μm(好ましくは0.9〜1.2μm)の範囲内に第1のピークを有するとともに、粒径10〜15μm(好ましくは10〜12μm)の範囲内に第2のピークを有し、第1のピークの高さに対する第2のピークの高さの比が1.2〜2.0(好ましくは1.2〜1.5)である。
【0032】
ボンド磁石用フェライト粉末の第1のピーク(小粒径側のピーク)が0.6μm未満であると、比表面積が大き過ぎて、ボンド磁石を製造するためにボンド磁石用フェライト粉末を樹脂などと混合する際の流動性が低下し、1.5μmを超えると、圧縮密度が低過ぎて、流動性が低下する。また、第2のピーク(大粒径側のピーク)が10μm未満であると、圧縮密度が低過ぎて、流動性が低下し、15μmを超えると、本発明によるボンド磁石用フェライト粉末の製造方法の実施の形態によってボンド磁石用フェライト粉末を製造するのが困難になる。さらに、第1のピークの高さに対する第2のピークの高さの比が1.2未満であると、ボンド磁石用フェライト粉末の微粉の比率が高くなり過ぎて、比表面積が大きくなって、流動性が低下し、2.0を超えると、ボンド磁石用フェライト粉末の粗粉の比率が高くなり過ぎて、圧縮密度が低下して、流動性が低下する。
【0033】
このボンド磁石用フェライト粉末において、圧縮密度が3.7g/cm以上(好ましくは3.8g/cm以上)であるのが好ましく、長軸長が1.0μm以上である粒子の短軸長に対する長軸長の比の平均値が1.4以下であるのが好ましい。この平均値が1.4以下であれば、ボンド磁石用フェライト粉末中で大きな粒子が動き易くなり、圧縮密度が高くなって、流動性が向上する。また、ボンド磁石を製造するためにボンド磁石用フェライト粉末を樹脂などと混合する際の流動度MFRは40g/10分以上であるのが好ましい。
【0034】
また、ボンド磁石用フェライト粉末93.75重量部とシランカップリング剤0.8重量部と滑剤0.8重量部と粉末状のポリアミド樹脂4.65重量部を混合して得られた混合物を230℃で混練して得られた平均径2mmの混練ペレットを12.0KOeの磁場中において温度290℃、成形圧力8.5N/mmで射出形成して得られた直径15mm×高さ8mmの(磁場の配向方向が円柱の中心軸に沿った方向の)円柱形のボンド磁石について、BHトレーサーを使用して測定磁場10kOe(795.8kA/m)で測定した残留磁化(残留磁束密度)Brが3400G以上であるのが好ましい。
【0035】
上記のようなボンド磁石用フェライト粉末は、ボンド磁石を製造するためにボンド磁石用フェライト粉末を樹脂などと混合する際の流動度MFRが高く、残留磁化Brが高い優れた磁気特性のボンド磁石を製造することができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明によるボンド磁石用フェライト粉末およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0037】
[実施例1]
(フェライトの粗粉の製造)
ヘマタイト(α−Fe)と炭酸ストロンチウム(SrCO)をモル比5.37:1.0になるように秤量して混合し、この混合物に対して0.5質量%のホウ酸と2.3質量%の塩化カリウムを加えて混合した後、水を加えて直径3〜10mmの球状に造粒して得られた造粒物を、内燃式のロータリーキルンに投入し、炉内の酸素濃度が3体積%になるように空気導入量を調整して、1330℃で20分間焼成して焼成物を得た。この焼成物をローラーミルで粗粉砕して、フェライトの粗粉を得た。
【0038】
このフェライトの粗粉の比表面積(SSA)を比表面積測定装置(ユアサアイオニクス株式会社製のモノソーブ)を使用してBET一点法によって測定したところ、比表面積は0.23m/gであった。また、フェライトの粗粉の体積基準の粒度分布を乾式レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社日本レーザー製(HELOS&RODOS))を使用して焦点距離20mm、分散圧5.0bar、吸引圧130mbarで測定したところ、レーザー回折式粒度分布測定装置を使用して焦点距離20mm、分散圧5bar、吸引圧130mbarで測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)は12.9μmであった。さらに、フェライトの粗粉の形状指標として、短軸長(1粒子を平行な2本の直線で挟み込んだときの直線間距離の最小値)に対する長軸長(1粒子を平行な2本の直線で挟み込んだときの直線間距離の最大値)の比(長軸長/短軸長)の平均値を求めたところ、1.36であり、良好な形状を有する粒子であった。なお、短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値は、フェライトの粗粉4.5gとNCクリアラッカー5.7gを遠心ボールミル(FRITSCH社製のPULNERISETTE type702)により分散させた塗料をアプリケータバーによりシート上に塗布した後、塗布面に対して平行に配向磁場5kOeを印加した配向させて、(フェライトの粗粉の粒子のc軸方向が塗布面と平行になるため)塗布面の真上から粒子のc軸方向の粒径を測定することができるようにし、乾燥させたシートを走査型電子顕微鏡(SEM)(株式会社日立ハイテクノロジーズ製のS−3400N)により観察し、5000倍のSEM写真中の200個以上の粒子について、長軸長と短軸長を計測して算出した。
【0039】
(フェライトの微粉の製造)
α−Feと炭酸ストロンチウムをモル比5.5:1.0になるように秤量して混合した後、水を加えて直径3〜10mmの球状に造粒して得られた造粒物を、内燃式のロータリーキルンに投入し、大気雰囲気中において1050℃で20分間焼成して焼成物を得た。この焼成物をローラーミルで粗粉砕した後、乾式の振動ボールミルで粉砕して、フェライトの微粉を得た。
【0040】
このフェライトの微粉の比表面積と累積50%粒子径(D50径)を上記と同様の方法により測定したところ、比表面積は7.0m/gであり、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)が0.9μmであった。
【0041】
(ボンド磁石用フェライト粉末の製造)
得られたフェライトの粗粉100重量部とフェライトの微粉42重量部(粗粉:微粉=70:30)と水210重量部とを湿式のアトライターに投入し、粉砕および混合処理を行ってスラリーを得た。このスラリーをろ過して得られた固形物を大気中において150℃で10時間乾燥させて、乾燥ケーキを得た。この乾燥ケーキをミキサーで解砕して得られた解砕物を、振動ボールミル(株式会社村上精機工作所製のUras Vibrator KEC−8−YH)により、媒体として直径12mmのスチール製ボールを使用して、回転数1800rpm、振幅8mmで14分間粉砕処理を行った。このようにして得られた粉砕物を電気炉により大気中において970℃で30分間焼鈍(アニール)して、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0042】
このボンド磁石用フェライト粉末について、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を上記と同様の方法により算出したところ、1.33であった。また、ボンド磁石用フェライト粉末の体積基準の粒度分布を乾式レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社日本レーザー製(HELOS&RODOS))を使用して焦点距離20mm、分散圧5.0bar、吸引圧130mbarで測定したところ、小粒径側のピークは1.07μm、大粒径側のピークは12.02μmにあり、小粒径側のピーク(微粉ピーク)の高さに対する大粒径側のピーク(粗粉ピーク)の高さの比(粗粉ピーク高さ/微粉ピーク高さ)は1.44であった。なお、この体積基準の粒度分布を頻度分布として表す際に滑らかな曲線を描くことができるように、粒度分布の隣り合う測定点の粒径の比が1.25以下になるようにした。また、ボンド磁石用フェライト粉末の比表面積を上記と同様の方法により測定したところ、1.58m/gであった。また、ボンド磁石用フェライト粉末10gを内径2.54cmφの円筒形の金型に充填した後に1トン/cmの圧力で圧縮したときのボンド磁石用フェライト粉末の密度をボンド磁石用フェライト粉末の圧縮密度(CD)として測定したところ、3.82g/cmであった。また、ボンド磁石用フェライト粉末の磁気特性として、VSM(東英工業株式会社製のVSM−P7)を使用して磁化の測定を行い、外部磁場10kOeにおける磁化を測定し、飽和磁化σsを求めたところ、56.1emu/gであった。
【0043】
(ボンド磁石の製造)
得られたボンド磁石用フェライト粉末93.75重量部と、シランカップリング剤(東レダウコーニング株式会社製のZ−6094N)0.8重量部と、滑剤(ヘンケル社製のVPN−212P)0.8重量部と、粉末状のポリアミド樹脂(宇部興産株式会社製のP−1011F)4.65重量部とを秤量し、ミキサーに充填して混合して得られた混合物を230℃で混練して、平均径2mmの混練ペレットを得た。なお、メルトフローインデクサー(株式会社東洋精機製作所製のメルトフローインデクサーC−5059D2)を使用して、上記の混合物が270℃、荷重10kgで押し出された重量を測定し、この重量を10分当たりで押し出された量に換算することにより、ボンド磁石用フェライト粉末を混合する際の流動度MFRを求めたところ、42g/10分であった。この混練ペレットを射出成形機(住友重機械工業株式会社製)に装填して、12.0KOeの磁場中において温度290℃、成形圧力8.5N/mmで射出形成して、直径15mm×高さ8mmの円柱形(磁場の配向方向は円柱の中心軸に沿った方向)のボンド磁石(F.C.93.75質量%、12.0KOe)を得た。
【0044】
このボンド磁石の磁気特性として、BHトレーサー(東英工業株式会社製のTRF−5BH)を使用して、測定磁場10kOeでボンド磁石の残留磁化Brを測定したところ、3413Gであった。
【0045】
[実施例2]
乾燥ケーキをミキサーで解砕して得られた解砕物を振動ボールミルで粉砕する時間を7分間にした以外は、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0046】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を算出したところ、1.35であった。また、実施例1と同様の方法により、体積基準の粒度分布を測定したところ、小粒径側のピークは1.01μm、大粒径側のピークは11.78μmにあり、微粉ピークの高さに対する粗粉ピークの高さの比(粗粉ピーク高さ/微粉ピーク高さ)は1.26であった。また、実施例1と同様の方法により、比表面積および圧縮密度を測定したところ、比表面積は1.73m/gであり、圧縮密度は3.80g/cmであった。また、実施例1と同様の方法により、飽和磁化σsを求めたところ、56.4emu/gであった。
【0047】
また、得られた磁石用フェライト粉末を用いて、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を作製し、残留磁化Brを測定したところ、3407Gであった。なお、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を混合する際の流動度MFRを求めたところ、45g/10分であった。
【0048】
[比較例1]
α−Feと炭酸ストロンチウムをモル比5.95:1.0にし、ホウ酸の添加量を0.2質量%にして、1280℃で焼成した以外は、実施例1と同様の方法により、フェライトの粗粉を得た。
【0049】
このフェライトの粗粉について、実施例1と同様の方法により、比表面積および体積基準の粒度分布を測定したところ、比表面積は0.83m/gであり、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)は3.8μmであった。また、実施例1と同様の方法により、フェライトの粗粉の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を求めたところ、1.50であった。
【0050】
得られたフェライトの粗粉を使用して、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0051】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を算出したところ、1.48であった。また、実施例1と同様の方法により、体積基準の粒度分布を測定したところ、小粒径側のピークはなく、大粒径側のピークは2.77μmであった。また、実施例1と同様の方法により、比表面積および圧縮密度を測定したところ、比表面積は2.39m/gであり、圧縮密度は3.57g/cmであった。また、実施例1と同様の方法により、飽和磁化σsを求めたところ、56.0emu/gであった。
【0052】
また、得られた磁石用フェライト粉末を用いて、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を作製し、残留磁化Brを測定したところ、3318Gであった。なお、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を混合する際の流動度MFRを求めたところ、16g/10分であった。
【0053】
[比較例2]
α−Feと炭酸ストロンチウムをモル比5.95:1.0にし、ホウ酸の添加量を0.2質量%にした以外は、実施例1と同様の方法により、フェライトの粗粉を得た。
【0054】
このフェライトの粗粉について、実施例1と同様の方法により、比表面積および体積基準の粒度分布を測定したところ、比表面積は0.54m/gであり、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)は4.2μmであった。また、フェライトの粗粉の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を求めたところ、1.41であった。
【0055】
得られたフェライトの粗粉を使用して、粗粉と微粉の質量比を75:25とした以外は、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0056】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を算出したところ、1.43であった。また、実施例1と同様の方法により、体積基準の粒度分布を測定したところ、小粒径側のピークは1.14μm、大粒径側のピークは3.37μmにあり、微粉ピークの高さに対する粗粉ピークの高さの比(粗粉ピーク高さ/微粉ピーク高さ)は1.57であった。また、実施例1と同様の方法により、比表面積および圧縮密度を測定したところ、比表面積は1.97m/gであり、圧縮密度は3.63g/cmであった。また、実施例1と同様の方法により、飽和磁化σsを求めたところ、55.8emu/gであった。
【0057】
また、得られた磁石用フェライト粉末を用いて、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を作製し、残留磁化Brを測定したところ、3365Gであった。なお、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を混合する際の流動度MFRを求めたところ、35g/10分であった。
【0058】
[比較例3]
ホウ酸の添加量を0.2質量%にした以外は、実施例1と同様の方法により、フェライトの粗粉を得た。
【0059】
このフェライトの粗粉について、実施例1と同様の方法により、比表面積および体積基準の粒度分布を測定したところ、比表面積は0.52m/gであり、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した焦点距離20mmで体積基準の累積50%粒子径(D50径)は4.2μmであった。また、フェライトの粗粉の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を求めたところ、1.45であった。
【0060】
得られたフェライトの粗粉を使用して、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0061】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を算出したところ、1.45であった。また、実施例1と同様の方法により、体積基準の粒度分布を測定したところ、小粒径側のピークは1.08μm、大粒径側のピークは3.58μmにあり、微粉ピークの高さに対する粗粉ピークの高さの比(粗粉ピーク高さ/微粉ピーク高さ)は1.61であった。また、実施例1と同様の方法により、比表面積および圧縮密度を測定したところ、比表面積は2.05m/gであり、圧縮密度は3.62g/cmであった。また、実施例1と同様の方法により、飽和磁化σsを求めたところ、55.6emu/gであった。
【0062】
また、得られた磁石用フェライト粉末を用いて、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石を作製し、残留磁化Brを測定したところ、3302Gであった。なお、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を混合する際の流動度MFRを求めたところ、12g/10分であった。
【0063】
[比較例4]
ホウ酸を添加せず、1350℃で焼成した以外は、実施例1と同様の方法により、フェライトの粗粉を得た。
【0064】
このフェライトの粗粉について、実施例1と同様の方法により、比表面積および体積基準の粒度分布を測定したところ、比表面積は0.98m/gであり、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積基準の累積50%粒子径(D50径)は3.5μmであった。また、フェライトの粗粉の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を求めたところ、2.12であった。
【0065】
得られたフェライトの粗粉を使用して、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石用フェライト粉末を得た。
【0066】
このボンド磁石用フェライト粉末について、実施例1と同様の方法により、長軸長が1.0μm以上の粒子の短軸長に対する長軸長の比(長軸長/短軸長)の平均値を算出したところ、2.06であった。また、実施例1と同様の方法により、体積基準の粒度分布を測定したところ、小粒径側のピークはなく、大粒径側のピークは3.02μmであった。また、実施例1と同様の方法により、比表面積および圧縮密度を測定したところ、比表面積は2.54m/gであり、圧縮密度は3.42g/cmであった。また、実施例1と同様の方法により、飽和磁化σsを求めたところ、55.8emu/gであった。
【0067】
また、得られた磁石用フェライト粉末を用いて、実施例1と同様の方法により、ボンド磁石の作製を試みたが、ボンド磁石用フェライト粉末が流動しなかったため、ボンド磁石を作製することができなかった。
【0068】
これらの実施例および比較例の結果を表1〜表3に示す。また、実施例および比較例で得られたボンド磁石用フェライト粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置により得られた体積基準の粒度分布を図1に示し、実施例1で得られたボンド磁石用フェライトの走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図2に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
図1
図2