特許第6798088号(P6798088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6798088ヘテロ環化合物およびこれを含む有機電子素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6798088
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】ヘテロ環化合物およびこれを含む有機電子素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/04 20060101AFI20201130BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20201130BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20201130BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   C07D495/04CSP
   C07D495/04 101
   H05B33/14 B
   H05B33/22 B
   H05B33/22 D
   H01L31/04 154B
   C09K11/06 635
【請求項の数】12
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2019-563557(P2019-563557)
(86)(22)【出願日】2019年4月2日
(65)【公表番号】特表2020-523288(P2020-523288A)
(43)【公表日】2020年8月6日
(86)【国際出願番号】KR2019003855
(87)【国際公開番号】WO2019221386
(87)【国際公開日】20191121
【審査請求日】2019年11月19日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0056461
(32)【優先日】2018年5月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジ フーン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ソンリム
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ドゥーワン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュン ハ
(72)【発明者】
【氏名】リム、ボギュ
【審査官】 布川 莉奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−129224(JP,A)
【文献】 特表2014−520186(JP,A)
【文献】 特表2011−502363(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/190345(WO,A1)
【文献】 特開2012−235076(JP,A)
【文献】 特開2012−036358(JP,A)
【文献】 Adv. Mater.,2017年12月22日,30, 1705208
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C09K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるヘテロ環化合物:
[化学式1]
【化1】
前記化学式1において、
L1〜L4はそれぞれ、置換もしくは非置換のアリーレン基;または置換もしくは非置換の2価のヘテロ環基であり、
R1〜R11はそれぞれ、水素;または置換もしくは非置換のアルキル基であり、
X1およびX2はそれぞれ、水素;置換もしくは非置換のアルキル基;またはハロゲン基であり、
m、nおよびpはそれぞれ、1〜4の整数である。
【請求項2】
前記化学式1は、下記化学式1−1で表されるものである、請求項1に記載のヘテロ環化合物:
[化学式1−1]
【化2】
前記化学式1−1において、
R1〜R10およびL1〜L4は、前記化学式1で定義したものと同じであり、
R12およびR13はそれぞれ、水素;または置換もしくは非置換のアルキル基であり、
X101、X102、X201およびX202はそれぞれ、水素;置換もしくは非置換のアルキル基;またはハロゲン基である。
【請求項3】
前記X1およびX2はそれぞれ、フッ素である、請求項1に記載のヘテロ環化合物。
【請求項4】
前記化学式1は、下記化学式1−2または1−3で表されるものである、請求項1に記載のヘテロ環化合物:
[化学式1−2]
【化3】
[化学式1−3]
【化4】
前記化学式1−2および1−3において、
R1〜R10は、前記化学式1で定義したものと同じであり、
R12およびR13はそれぞれ、水素;または置換もしくは非置換のアルキル基であり、
X101、X102、X201およびX202はそれぞれ、水素;置換もしくは非置換のアルキル基;またはハロゲン基である。
【請求項5】
前記R1〜R4は、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基である、請求項1から4のいずれか一項に記載のヘテロ環化合物。
【請求項6】
前記R11は、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基である、請求項1に記載のヘテロ環化合物。
【請求項7】
前記ヘテロ環化合物は、下記化学式2−1〜2−15のいずれか1つで表されるものである、請求項1に記載のヘテロ環化合物:
[化学式2−1]
【化5】
[化学式2−2]
【化6】
[化学式2−3]
【化7】
[化学式2−4]
【化8】
[化学式2−5]
【化9】
[化学式2−6]
【化10】
[化学式2−7]
【化11】
[化学式2−8]
【化12】
[化学式2−9]
【化13】
[化学式2−10]
【化14】
[化学式2−11]
【化15】
[化学式2−12]
【化16】
[化学式2−13]
【化17】
[化学式2−14]
【化18】
[化学式2−15]
【化19】
【請求項8】
第1電極と、
前記第1電極に対向して備えられる第2電極と、
前記第1電極と第2電極との間に備えられ、有機活性層を含む1層以上の有機物層とを含み、
前記有機活性層は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のヘテロ環化合物を含むものである有機電子素子。
【請求項9】
前記有機活性層は、電子供与体および電子受容体を含み、
前記電子受容体は、前記ヘテロ環化合物を含むものである、請求項8に記載の有機電子素子。
【請求項10】
前記有機電子素子は、有機太陽電池、有機光電素子、有機発光素子、有機感光体、または有機トランジスタである、請求項8または9に記載の有機電子素子。
【請求項11】
基板上に第1電極を形成するステップと、
前記第1電極上に電子輸送層を形成するステップと、
前記電子輸送層上に有機活性層を含む1層以上の有機物層を形成するステップと、
前記有機物層上に第2電極を形成するステップとを含み、
前記有機活性層は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のヘテロ環化合物を含むものである有機電子素子の製造方法。
【請求項12】
前記電子輸送層上に有機活性層を含む1層以上の有機物層を形成するステップは、スピン−コーティング(spin−coating)方式で行われ、
前記スピン−コーティングの速度は、1,300rpm〜1,600rpmである、請求項11に記載の有機電子素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年5月17日付で韓国特許庁に出願された韓国特許出願第10−2018−0056461号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は、ヘテロ環化合物およびこれを含む有機電子素子に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書において、有機電子素子とは、有機半導体物質を用いた電子素子であって、電極と有機半導体物質との間における正孔および/または電子の交流を必要とする。有機電子素子は、動作原理によって、下記のように大きく2つに分けられる。第一は、外部の光源から素子に流入した光子によって有機物層でエキシトン(exiton)が形成され、このエキシトンが電子と正孔に分離され、この電子と正孔がそれぞれ異なる電極に伝達されて電流源(電圧源)として使用される形態の電子素子である。第二は、2つ以上の電極に電圧または電流を加えて電極と界面をなす有機半導体物質層に正孔および/または電子を注入し、注入された電子と正孔によって作動する形態の電子素子である。
【0004】
有機電子素子の例としては、有機太陽電池、有機光電素子、有機発光素子、有機感光体(OPC)、および有機トランジスタなどがあり、これらはいずれも、素子の駆動のために、電子/正孔注入物質、電子/正孔抽出物質、電子/正孔輸送物質、または発光物質を必要とする。以下、主に有機太陽電池について具体的に説明するが、前記有機電子素子では、電子/正孔注入物質、電子/正孔抽出物質、電子/正孔輸送物質、または発光物質がいずれも類似の原理で作用する。
【0005】
太陽電池は、太陽光から直接電気的エネルギーを変化させる電池で、化石エネルギーの枯渇とその使用による地球環境的な問題を解決するためのクリーンな代替エネルギー源であるため、研究が活発に進められている。ここで、太陽電池とは、太陽光から光エネルギーを吸収して電子と正孔が発生する光起電効果を利用して電流−電圧を生成する電池を意味する。
【0006】
太陽電池は、光起電力効果(photovoltaic effect)を応用することにより、太陽エネルギーを直接電気エネルギーに変換できる素子である。太陽電池は、薄膜を構成する物質によって、無機太陽電池と、有機太陽電池とに分けられる。
【0007】
太陽電池の設計による多様な層および電極の変化により、エネルギー変換効率を高めるための多くの研究が進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ヘテロ環化合物およびこれを含む有機電子素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書の一実施態様は、下記化学式1で表されるヘテロ環化合物を提供する。
[化学式1]
【化1】
前記化学式1において、
L1〜L4はそれぞれ、置換もしくは非置換のアリーレン基;または置換もしくは非置換の2価のヘテロ環基であり、
R1〜R11はそれぞれ、水素;または置換もしくは非置換のアルキル基であり、
X1およびX2はそれぞれ、水素;置換もしくは非置換のアルキル基;またはハロゲン基であり、
m、nおよびpはそれぞれ、1〜4の整数である。
【0010】
また、本明細書の一実施態様は、
第1電極と、
前記第1電極に対向して備えられる第2電極と、
前記第1電極と第2電極との間に備えられ、有機活性層を含む1層以上の有機物層とを含み、
前記有機活性層は、前記ヘテロ環化合物を含むものである有機電子素子を提供する。
【0011】
また、本明細書の一実施態様は、
基板上に第1電極を形成するステップと、
前記第1電極上に電子輸送層を形成するステップと、
前記電子輸送層上に有機活性層を含む1層以上の有機物層を形成するステップと、
前記有機物層上に第2電極を形成するステップとを含み、
前記有機活性層は、前記ヘテロ環化合物を含むものである有機電子素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本明細書の一実施態様に係るヘテロ環化合物は、広い光吸収領域と高いLUMOエネルギー準位を有するので、前記ヘテロ環化合物を有機電子素子の有機活性層に用いた時、高い水準の効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本明細書の一実施態様に係る有機太陽電池を示す図である。
図2】化合物1、PBDB−T、および比較化合物のフィルム状態のUV−VIs吸収スペクトルを示すグラフである。
図3】本明細書の実施例1〜4で製造された有機太陽電池の電圧に応じた電流密度を示す図である。
図4】本明細書の比較例1〜4で製造された有機太陽電池の電圧に応じた電流密度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本明細書についてより詳細に説明する。
【0015】
本明細書の一実施態様は、前記化学式1で表されるヘテロ環化合物を提供する。
【0016】
従来の有機電子素子に関する研究は、有機活性層の電子受容体がPCBMのようなフラーレン化合物の時、高効率を奏する電子供与体物質を探すのに集中していた。しかし、フラーレン化合物を含む有機電子素子は、吸収領域、開放電圧および素子寿命などの性能において限界にぶつかっているため、ITICのような非フラーレン系化合物を電子受容体として活用する研究が増加している。
【0017】
本発明の発明者らは、非フラーレン系化合物のなかでも、dialkyloxyl−benzeneをコアとして用いて、O原子とS原子との間の相互作用により平面性が増加した、前記化学式1で表される化合物を電子受容体として用いることにより、従来の電子受容体物質に比べてより広い領域の光を吸収することができ、有機太陽電池をはじめとする有機電子素子の効率および安定性を高めることができることを究明した。
【0018】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0019】
本明細書において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、2つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0020】
本明細書において、エネルギー準位は、エネルギーの大きさを意味するものである。したがって、真空準位からマイナス(−)方向にエネルギー準位が表示される場合にも、エネルギー準位は、当該エネルギー値の絶対値を意味すると解釈される。例えば、HOMOエネルギー準位とは、真空準位から最高占有分子オービタル(highest occupied molecular orbital)までの距離を意味する。また、LUMOエネルギー準位とは、真空準位から最低非占有分子オービタル(lowest unoccupied molecular orbital)までの距離を意味する。
【0021】
本明細書において、「置換」という用語は、化合物の炭素原子に結合した水素原子が他の置換基に変わることを意味し、置換される位置は、水素原子の置換される位置すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定せず、2以上置換される場合、2以上の置換基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0022】
本明細書において、「置換もしくは非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;ヒドロキシ基;アルキル基;シクロアルキル基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルケニル基;アリール基;およびヘテロ環基からなる群より選択された1個以上の置換基で置換されているか、前記例示された置換基のうち2以上の置換基が連結された置換基で置換されるか、もしくはいずれの置換基も有しないことを意味する。
【0023】
本明細書において、分枝鎖を有する置換基の炭素数は、前記分枝鎖の炭素数を含む。例えば、「1つ以上のメチル基を分枝鎖として有する炭素数3〜20のアルキル基」において、前記「3〜20」は、前記「1つ以上のメチル基」の炭素数を含む数値である。
【0024】
本明細書において、前記アルキル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1〜50のものが好ましい。具体例としては、メチル、エチル、プロピル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、1−メチルブチル、1−エチルブチル、ペンチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、ヘキシル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、ヘプチル、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n−オクチル、tert−オクチル、1−メチルヘプチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、n−ノニル、2,2−ジメチルヘプチル、1−エチル−プロピル、1,1−ジメチル−プロピル、イソヘキシル、2−メチルヘキシル、4−メチルヘキシル、および5−メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。
【0025】
前記アルキル基は、アリール基またはヘテロアリール基で置換されて、アリールアルキル基またはヘテロアリールアルキル基として作用できる。前記アリール基およびヘテロアリール基はそれぞれ、後述するアリール基およびヘテロアリール基の例示の中から選択可能である。
【0026】
本明細書において、アリール基は、単環式もしくは多環式であってもよい。
【0027】
本明細書において、前記アリール基が単環式アリール基の場合、炭素数は特に限定されないが、炭素数6〜30のものが好ましい。具体的には、単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、およびターフェニル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本明細書において、前記アリール基が多環式アリール基の場合、炭素数は特に限定されないが、炭素数10〜30のものが好ましい。具体的には、多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、およびフルオレニル基などがあるが、これらに限定されるものではない。前記フルオレニル基は置換されていてもよいし、隣接した置換基が互いに結合して環を形成してもよい。
【0029】
本明細書において、ヘテロ環基は、炭素でない原子、異種原子を1以上含むものであって、具体的には、前記異種原子は、O、N、SeおよびSなどからなる群より選択される原子を1以上含むことができる。ヘテロ環基の炭素数は特に限定されないが、炭素数2〜60のものが好ましい。ヘテロ環基の例としては、チオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジン基、トリアゾール基、アクリジル基、ピリダジン基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリン基、キノキサリニル基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、ベンズオキサゾール基、ベンズイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、フェナントロリン(phenanthroline)基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、フェノチアジニル基、およびジベンゾフラニル基などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0030】
前記ヘテロ環基は、単環もしくは多環であってもよいし、芳香族、脂肪族、または芳香族と脂肪族との縮合環であってもよい。
【0031】
本明細書において、ヘテロアリール基は、芳香族であることを除けば、前述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。
【0032】
本明細書において、アリーレン基は、アリール基に結合位置が2つあるもの、すなわち2価の基を意味する。これらはそれぞれ、2価の基であることを除けば、前述したアリール基の説明が適用可能である。
【0033】
本明細書において、ヘテロアリーレン基は、ヘテロアリール基に結合位置が2つあるもの、すなわち2価の基を意味する。これらはそれぞれ、2価の基であることを除けば、前述したヘテロアリール基の説明が適用可能である。
【0034】
本明細書の一実施態様は、前記化学式1で表される化合物を提供する。
【0035】
本明細書の一実施態様において、前記pは、2であり、括弧内のOR11は、互いに同一でも異なっていてもよく、互いにベンゼン環のパラ(para)位に置換されていてもよい。
【0036】
本明細書の一実施態様において、前記nおよびmはそれぞれ、1または2である。
【0037】
本明細書の一実施態様において、前記nおよびmはそれぞれ、1である。
【0038】
本明細書の一実施態様において、前記nおよびmはそれぞれ、2である。
【0039】
本明細書の一実施態様において、前記X1およびX2はそれぞれ、水素またはフッ素である。
【0040】
本明細書の一実施態様において、前記X1およびX2はそれぞれ、水素である。
【0041】
本明細書の一実施態様において、前記X1およびX2はそれぞれ、フッ素である。
【0042】
本明細書の一実施態様において、前記X1およびX2はそれぞれ、炭素数1〜10の直鎖のアルキル基である。
【0043】
本明細書の一実施態様において、前記X1およびX2はそれぞれ、メチル基である。
【0044】
本明細書の一実施態様において、前記化学式1は、下記化学式1−1で表されてもよい。
[化学式1−1]
【化2】
前記化学式1−1において、
R1〜R10およびL1〜L4は、前記化学式1で定義したものと同じであり、
R12およびR13はそれぞれ、水素;または置換もしくは非置換のアルキル基であり、
X101、X102、X201およびX202はそれぞれ、水素;置換もしくは非置換のアルキル基;またはハロゲン基である。
【0045】
本明細書の一実施態様において、前記L1〜L4はそれぞれ、フェニレン基または2価のチオフェン基である。
【0046】
本明細書の一実施態様において、前記化学式1は、下記化学式1−2または1−3で表されてもよい。
[化学式1−2]
【化3】
[化学式1−3]
【化4】
前記化学式1−2および1−3において、
R1〜R10は、前記化学式1で定義したものと同じであり、
R12およびR13はそれぞれ、水素;または置換もしくは非置換のアルキル基であり、
X101、X102、X201およびX202はそれぞれ、水素;置換もしくは非置換のアルキル基;またはハロゲン基である。
【0047】
本明細書の一実施態様において、前記X101、X102、X201およびX202はそれぞれ、水素である。
【0048】
本明細書の一実施態様において、前記X101、X102、X201およびX202はそれぞれ、フッ素である。
【0049】
本明細書の一実施態様において、前記X101、X102、X201およびX202はそれぞれ、炭素数1〜10の直鎖のアルキル基である。
【0050】
本明細書の一実施態様において、前記X101、X102、X201およびX202はそれぞれ、メチル基である。
【0051】
本明細書の一実施態様において、前記R1〜R4はそれぞれ、置換もしくは非置換のアルキル基である。
【0052】
本明細書の一実施態様において、前記R1〜R4はそれぞれ、炭素数1〜30の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基である
【0053】
本明細書の一実施態様において、前記R1〜R4はそれぞれ、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基である。
【0054】
本明細書の一実施態様において、前記R1〜R4はそれぞれ、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基である。
【0055】
本明細書の一実施態様において、前記R1〜R4はそれぞれ、炭素数1〜10の直鎖のアルキル基である。
【0056】
本明細書の一実施態様において、前記R1〜R4はそれぞれ、ヘキシル基である。
【0057】
本明細書の一実施態様において、前記R5〜R10はそれぞれ、水素である。
【0058】
本明細書の一実施態様において、前記R11は、炭素数1〜30の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基である。
【0059】
本明細書の一実施態様において、前記R11は、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基である。
【0060】
本明細書の一実施態様において、前記R11は、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基である。
【0061】
本明細書の一実施態様において、前記R11は、炭素数1〜10の直鎖のアルキル基である。
【0062】
本明細書の一実施態様において、前記R11は、ヘキシル基である。
【0063】
本明細書の一実施態様において、前記R12およびR13はそれぞれ、炭素数1〜30の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基である
【0064】
本明細書の一実施態様において、前記R12およびR13はそれぞれ、炭素数1〜20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基である。
【0065】
本明細書の一実施態様において、前記R12およびR13はそれぞれ、炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基である。
【0066】
本明細書の一実施態様において、前記R12およびR13はそれぞれ、炭素数1〜10の直鎖のアルキル基である
【0067】
本明細書の一実施態様において、前記R12およびR13はそれぞれ、ヘキシル基である。
【0068】
本明細書の一実施態様において、前記ヘテロ環化合物は、下記化学式2−1〜2−15のいずれか1つで表されるものである。
[化学式2−1]
【化5】
[化学式2−2]
【化6】
[化学式2−3]
【化7】
[化学式2−4]
【化8】
[化学式2−5]
【化9】
[化学式2−6]
【化10】
[化学式2−7]
【化11】
[化学式2−8]
【化12】
[化学式2−9]
【化13】
[化学式2−10]
【化14】
[化学式2−11]
【化15】
[化学式2−12]
【化16】
[化学式2−13]
【化17】
[化学式2−14]
【化18】
[化学式2−15]
【化19】
【0069】
前記化学式2−1〜2−15において、
【化20】
のように表された構造を含む場合、Y1が5位に置換された化合物と6位に置換された化合物とが混合されていることを意味し、Y1が5位に置換された化合物とY1が6位に置換された化合物との質量比は、1:9〜9:1、具体的には7:3であってもよい。
【0070】
本明細書の一実施態様において、前記ヘテロ環化合物は、300nm〜1,000nmの吸収領域を示し、好ましくは700nm〜900nmで最大吸収波長を有する。
【0071】
これによって、有機電子素子への適用時、電子供与体の吸収領域(300nm〜700nm)と相補的な吸収を示して、有機電子素子への適用時、高い短絡電流を示すことができる。
【0072】
本明細書の一実施態様において、前記化合物は、可視光線全波長領域の光吸収が可能であり、赤外線領域の光も吸収することができる。これによって、素子の吸収波長範囲が広い効果を示すことができる。
【0073】
本明細書の一実施態様は、第1電極と、前記第1電極に対向して備えられる第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に備えられ、有機活性層を含む1層以上の有機物層とを含み、前記有機活性層は、前記ヘテロ環化合物を含むものである有機電子素子を提供する。
【0074】
また、本明細書の一実施態様は、基板上に第1電極を形成するステップと、前記第1電極上に電子輸送層を形成するステップと、前記電子輸送層上に有機活性層を含む1層以上の有機物層を形成するステップと、前記有機物層上に第2電極を形成するステップとを含み、前記有機活性層は、前記ヘテロ環化合物を含むものである有機電子素子の製造方法を提供する。
【0075】
本明細書の一実施態様において、前記有機活性層を含む1層以上の有機物層を形成するステップは、スピン−コーティング(spin−coating)方式で行われ、前記スピン−コーティングの速度は、1,300rpm〜1,600rpmであってもよい。
【0076】
スピン−コーティングの速度が前記範囲にある時、有機活性層の厚さが100nm前後に形成され、有機電子素子の性能が向上できる。
【0077】
本発明の有機電子素子は、前記化学式1で表されるヘテロ環化合物が有機活性層に含まれることを除けば、通常の有機電子素子の製造方法および材料によって製造される。
【0078】
本明細書の一実施態様において、前記有機活性層は、電子供与体および電子受容体を含み、前記電子受容体は、前記ヘテロ環化合物を含む。
【0079】
本明細書において、有機活性層は、光活性層または発光層であってもよい。
【0080】
本明細書において、前記有機電子素子は、有機太陽電池、有機光電素子、有機発光素子、有機感光体(OPC)、または有機トランジスタであってもよい。
【0081】
以下、有機太陽電池について例示する。前記有機太陽電池において、有機活性層は、光活性層であり、前述した有機電子素子は、後述する有機太陽電池に関する説明を引用することができる。
【0082】
本明細書の一実施態様は、第1電極と、前記第1電極に対向して備えられる第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に備えられ、光活性層を含む1層以上の有機物層とを含み、前記光活性層は、前記ヘテロ環化合物を含むものである有機太陽電池を提供する。
【0083】
前記有機太陽電池は、基板、正孔輸送層、正孔注入層、電子注入層、および/または電子輸送層をさらに含んでもよい。
【0084】
本明細書の一実施態様において、前記有機太陽電池は、付加的な有機物層をさらに含んでもよい。前記有機太陽電池は、様々な機能を同時に有する有機物を用いて有機物層の数を減少させることができる。
【0085】
本明細書の一実施態様において、前記光活性層は、電子供与体および電子受容体を含み、前記電子受容体は、前記ヘテロ環化合物を含む。
【0086】
前記ヘテロ環化合物を含む電子受容体物質は、dialkyloxyl−benzeneをコアに適用して、従来の電子受容体物質より向上した性能を示すことができる。具体的には、前記ヘテロ環化合物を有機太陽電池の電子受容体物質として用いる場合、O原子とS原子との間の相互作用により平面性が増加するので、従来の電子受容体物質に比べてより広い領域の光を吸収することができる。これによって、高い短絡電流密度(short−circuit current density)が得られるだけでなく、LUMOエネルギーレベルの変化によって向上した開放電圧(open−circuit voltage)を得ることができ、窮極的には有機太陽電池の光−電変換効率を高めることができる。
【0087】
本明細書の一実施態様において、前記電子供与体は、当技術分野で適用される物質を使用することができ、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT:poly3−hexyl thiophene)、PCDTBT(poly[N−9'−heptadecanyl−2,7−carbazole−alt−5,5−(4'−7'−di−2−thienyl−2',1',3'−benzothiadiazole)])、PCPDTBT(poly[2,6−(4,4−bis−(2−ethylhexyl)−4H−cyclopenta[2,1−b;3,4−b']dithiophene)−alt−4,7−(2,1,3−benzothiadiazole)])、PFO−DBT(poly[2,7−(9,9−dioctylfluorene)−alt−5,5−(4,7−bis(thiophene−2−yl)benzo−2,1,3−thiadiazole)])、PTB7(Poly[[4,8−bis[(2−ethylhexyl)oxy]benzo[1,2−b:4,5−b']dithiophene−2,6−diyl][3−fluoro−2−[(2−ethylhexyl)carbonyl]thieno[3,4−b]thiophenediyl]])、PSiF−DBT(Poly[2,7−(9,9−dioctyl−dibenzosilole)−alt−4,7−bis(thiophen−2−yl)benzo−2,1,3−thiadiazole])、PTB7−Th(Poly[4,8−bis(5−(2−ethylhexyl)thiophen−2−yl)benzo[1,2−b;4,5−b']dithiophene−2,6−diyl−alt−(4−(2−ethylhexyl)−3−fluorothieno[3,4−b]thiophene−)−2−carboxylate−2−6−diyl)])、およびPBDB−T(poly(benzodithiophene−benzotriazole)からなる群より選択される1種以上の物質を含むことができる。
【0088】
本明細書の一実施態様において、前記電子供与体は、PBDB−Tであってもよい。
【0089】
前記電子供与体と前記電子受容体との質量比は、1:2〜2:1であってもよいし、好ましくは1:1.5〜1.5:1、さらに好ましくは1:1であってもよい。
【0090】
本明細書の一実施態様において、前記電子供与体および電子受容体は、バルクヘテロジャンクション(BHJ)を構成することができる。バルクヘテロジャンクションとは、光活性層で電子供与体物質と電子受容体物質とが互いに混ざっていることを意味する
【0091】
本明細書の一実施態様において、前記電子供与体は、p型有機物層であってもよく、前記電子受容体は、n型有機物層であってもよい。
【0092】
本明細書の一実施態様において、前記第1電極は、アノードであり、前記第2電極は、カソードである。もう一つの実施態様において、前記第1電極は、カソードであり、前記第2電極は、アノードである。
【0093】
もう一つの実施態様において、前記有機太陽電池は、アノード、正孔輸送層、光活性層、電子輸送層、およびカソードの順に配列されてもよく、カソード、電子輸送層、光活性層、正孔輸送層、およびアノードの順に配列されてもよいが、これに限定されない。
【0094】
本明細書の一実施態様において、前記有機太陽電池は、ノーマル(Normal)構造である。前記ノーマル構造では、基板、第1電極、正孔輸送層、光活性層を含む有機物層、電子輸送層、および第2電極の順に積層される。
【0095】
本明細書の一実施態様において、前記有機太陽電池は、インバーテッド(Inverted)構造である。前記インバーテッド構造では、基板、第1電極、電子輸送層、光活性層を含む有機物層、正孔輸送層、および第2電極の順に積層される。
【0096】
図1は、本明細書の一実施態様に係る有機太陽電池100を示す図である。図1によれば、有機太陽素子100は、第1電極10および/または第2電極20側から光が入射して、光活性層30が全波長領域の光を吸収すると、内部でエキシトンが生成される。エキシトンは、光活性層30で正孔と電子に分離され、分離された正孔は、第1電極10および第2電極20の1つであるアノード側に移動し、分離された電子は、第1電極10および第2電極20の他の1つであるカソード側に移動して、有機太陽電池に電流が流れることができる。
【0097】
本明細書の一実施態様において、前記有機太陽電池は、タンデム(tandem)構造である。この場合、前記有機太陽電池は、2層以上の光活性層を含むことができる。
【0098】
本明細書の一実施態様に係る有機太陽電池は、光活性層が1層または2層以上であってもよい。
【0099】
もう一つの実施態様において、バッファ層が光活性層と正孔輸送層との間、または光活性層と電子輸送層との間に備えられる。この時、正孔注入層がアノードと正孔輸送層との間にさらに備えられてもよい。また、電子注入層がカソードと電子輸送層との間にさらに備えられてもよい。
【0100】
本明細書の一実施態様において、前記基板は、透明性、表面平滑性、取扱容易性および防水性に優れたガラス基板または透明プラスチック基板になってもよいが、これに限定されず、有機太陽電池に通常用いられる基板であれば制限されない。具体的には、ガラス、PET(polyethylene terephthalate)、PEN(polyethylene naphthalate)、PP(polypropylene)、PI(polyimide)、およびTAC(triacetyl cellulose)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
前記第1電極の材料は、透明で導電性の優れた物質になってもよいが、これに限定されない。例えば、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属、またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO:Sbのような金属と酸化物との組み合わせ;およびポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ[3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0102】
前記第1電極の形成方法は特に限定されないが、例えば、スパッタリング、E−ビーム、熱蒸着、スピンコーティング、スクリーンプリンティング、インクジェットプリンティング、ドクターブレード、またはグラビアプリンティング法を使用することができる。
【0103】
前記第1電極を基板上に形成する場合、これは、洗浄、水分除去および親水性改質過程を経ることができる。
【0104】
例えば、パターニングされたITO基板を、洗浄剤、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次に洗浄した後、水分除去のために、加熱板で、100℃〜150℃で1分〜30分間、好ましくは120℃で10分間乾燥し、基板が完全に洗浄されると、基板表面を親水性に改質する。
【0105】
前記のような表面改質により接合表面電位を光活性層の表面電位に適した水準に維持することができる。また、改質時、第1電極上に高分子薄膜の形成が容易になり、薄膜の品質も向上できる。
【0106】
第1電極の前処理技術としては、a)平行平板型放電を利用した表面酸化法、b)真空状態でUV紫外線を用いて生成されたオゾンを通して表面を酸化する方法、およびc)プラズマによって生成された酸素ラジカルを用いて酸化する方法などがある。
【0107】
第1電極または基板の状態によって、前記方法のうちの1つを選択することができる。ただし、どの方法を利用しても、共通して、第1電極または基板表面の酸素離脱を防止し、水分および有機物の残留を最大限に抑制することが好ましい。この時、前処理の実質的な効果を極大化することができる。
【0108】
具体例として、UVを用いて生成されたオゾンを通して表面を酸化する方法を使用することができる。この時、超音波洗浄後、パターニングされたITO基板を加熱板(hot plate)でベーキング(baking)してよく乾燥させた後、チャンバに投入し、UVランプを作用させて、酸素ガスがUV光と反応して発生するオゾンによってパターニングされたITO基板を洗浄することができる。
【0109】
しかし、本明細書におけるパターニングされたITO基板の表面改質方法は特に限定させる必要はなく、基板を酸化させる方法であればいかなる方法でも構わない。
【0110】
前記第2電極は、仕事関数の小さい金属になってもよいが、これに限定されない。具体的には、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛のような金属、またはこれらの合金;またはLiF/Al、LiO/Al、LiF/Fe、Al:Li、Al:BaF、Al:BaF:Baのような多層構造の物質になってもよいが、これに限定されるものではない。
【0111】
前記第2電極は、5×10−7torr以下の真空度を示す熱蒸着機の内部で蒸着されて形成されるが、この方法にのみ限定されるものではない。
【0112】
前記正孔輸送層および/または電子輸送層物質は、光活性層で分離された電子と正孔を電極に効率的に伝達させる役割を担い、物質を特に制限しない。
【0113】
前記正孔輸送層物質は、PEDOT:PSS(Poly(3,4−ethylenedioxythiophene)doped with poly(styrenesulfonic acid))、モリブデン酸化物(MoO);バナジウム酸化物(V);ニッケル酸化物(NiO);およびタングステン酸化物(WO)などになってもよいが、これらにのみ限定されるものではない。
【0114】
前記電子輸送層物質は、BCP(bathocuproine)または電子抽出金属酸化物(electron−extracting metal oxides)になってもよいし、具体的には、BCP(bathocuproine)、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体;Alqを含む錯体;Liqを含む金属錯体;LiF;Ca;チタン酸化物(TiO);亜鉛酸化物(ZnO);およびセシウムカーボネート(CsCO)などになってもよいが、これらにのみ限定されるものではない。
【0115】
本明細書の一実施態様において、前記光活性層を形成する方法としては、真空蒸着法または溶液塗布法を使用することができ、溶液塗布法とは、電子供与体および/または電子受容体のような光活性物質を有機溶媒に溶解させた後、溶液をスピンコーティング、ディップコーティング、スクリーンプリンティング、スプレーコーティング、ドクターブレード、およびブラシペインティングなどの方法で塗布する方法を意味するが、これらの方法にのみ限定されるものではない。
【0116】
本明細書の一実施態様に係る化合物は、後述する製造方法で製造される。後述する製造例では代表的な例示を記載するが、必要に応じて、置換基を追加または除外してもよいし、置換基の位置を変更することができる。また、当技術分野で知られている技術に基づいて、出発物質、反応物質および反応条件などを変更することができる。
【0117】
また、本明細書を具体的に説明するために、実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本明細書に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本明細書の範囲が以下に詳述する実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例】
【0118】
<製造例:化合物1〜15の製造>
【0119】
製造例1.化合物1の製造
【0120】
(1)化合物Aの製造
【化21】
【0121】
コンデンサ付きの丸底フラスコで、((2,5−ビス(ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン)ビス(チオフェン−5,2−ジイル))ビス(トリメチルスタンナン)(((2,5−bis(hexyloxy)−1,4−phenylene)bis(thiophene−5,2−diyl))bis(trimethylstannane))5gを、Pd(dba) 0.43gおよびトリ(o−トリル)ホスフィン(Tri(o−tolyl)phosphine)0.57gと共にトルエン150mLに溶かした後、還流させた。温度が100℃になった時、エチル2−ブロモチオフェン−3−カルボキシレート(ethyl2−bromothiophene−3−carboxylate)5.15g(2.5eq)をトルエン5mLに溶かしてゆっくり注入した後、12時間還流させた。反応が終了した後、カラムクロマトグラフィーを通して、前記化合物A(diethyl5',5'''−(2,5−bis(hexyloxy)−1,4−phenylene)bis([2,2'−bithiophene]−3−carboxylate))を得た。
【0122】
(2)化合物Bの製造
【化22】
【0123】
丸底フラスコで、1−ブロモ−4−ヘキシルベンゼン(1−bromo−4−hexylbenzene)8.16g(5.3eq)をTHF200mLに溶かした後、−78℃で、n−BuLi13.5mLをゆっくり注入した後、1時間同じ温度で撹拌させた。(1)で製造した化合物AをTHF50mLに溶かした後、撹拌中の丸底フラスコにゆっくり注入した後、常温で12時間撹拌させた。クロロホルムを通して有機層を抽出した後、溶媒を除去し、オクタン100mL、酢酸(acetic acid)10mL、および硫酸1mLに溶かした後、65℃で4時間還流させた。蒸留水を通して反応を終了し、カラムクロマトグラフィーを通して、前記化合物B(2,2'−(2,5−bis(hexyloxy)−1,4−phenylene)bis(4,4−bis(4−hexylphenyl)−4H−cyclopenta[2,1−b:3,4−b']dithiophene))を得た。
【0124】
(3)化合物Cの製造
【化23】
【0125】
丸底フラスコで、前記(2)で製造した化合物B1gをTHF100mLに溶かした後、−78℃で、n−BuLi0.76mLをゆっくり注入した。1時間同じ温度で撹拌した後、DMF0.5mLをゆっくり注入し、12時間撹拌した。蒸留水を通して反応を終了した後、有機層を抽出した後、カラムクロマトグラフィーを通して、前記化合物C(6,6'−(2,5−bis(hexyloxy)−1,4−phenylene)bis(4,4−bis(4−hexylphenyl)−4H−cyclopenta[2,1−b:3,4−b']dithiophene−2−carbaldehyde))を得た。
【0126】
(4)化合物1の製造
【化24】
【0127】
コンデンサ付きの丸底フラスコで、前記(3)で製造した化合物C1gおよび2−(3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イリデン)マロノニトリル(2−(3−oxo−2,3−dihydro−1H−inden−1−ylidene)malononitrile)0.7gをクロロホルム10mLに溶かし、ピリジン1mLを注入した後、60℃で12時間還流させた。メタノールを通して濾過後、カラムクロマトグラフィーを通して、前記化合物1(2,2'−((2Z,2'Z)−(((2,5−bis(hexyloxy)−1,4−phenylene)bis(4,4−bis(4−hexylphenyl)−4H−cyclopenta[2,1−b:3,4−b']dithiophene−6,2−diyl))bis(methanylylidene))bis(3−oxo−2,3−dihydro−1H−indene−2,1−diylidene))dimalononitrile)を得た。
【0128】
製造された化合物1のフィルム状態のUVスペクトルを図2に示した。
【0129】
製造例2.化合物2〜5の製造
前記製造例1の(4)において、2−(3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イリデン)マロノニトリル(2−(3−oxo−2,3−dihydro−1H−inden−1−ylidene)malononitrile)の代わりに、それぞれ下記表1の材料を用いたことを除けば、前記製造例1と同様の過程を進行させて、下記の化合物2〜5を製造した。
【表1】
[化合物2]
【化25】
[化合物3]
【化26】
[化合物4]
【化27】
[化合物5]
【化28】
【0130】
製造例3.化合物6の製造
【化29】
【0131】
(1)化合物B2の製造
前記製造例1の(2)において、1−ブロモ−4−ヘキシルベンゼン(1−bromo−4−hexylbenzene)の代わりに、2−ヘキシルチオフェン(2−hexylthiophene)を用いたことを除けば、製造例1の(2)と同様の過程で前記化合物B2を製造した。
【0132】
(2)化合物C2の製造
前記製造例1の(3)において、化合物Bの代わりに、前記化合物B2を用いたことを除けば、製造例1の(3)と同様の過程で前記化合物C2を製造した。
【0133】
(3)化合物6の製造
前記製造例1の(4)において、化合物Cの代わりに、前記化合物C2を用いたことを除けば、製造例1の(4)と同様の過程で前記化合物6を製造した。
【0134】
製造例4.化合物7〜10の製造
前記製造例3の(3)において、2−(3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イリデン)マロノニトリル(2−(3−oxo−2,3−dihydro−1H−inden−1−ylidene)malononitrile)の代わりに、それぞれ下記表2の材料を用いたことを除けば、前記製造例3と同様の過程を進行させて、下記の化合物7〜10を製造した。
【表2】
[化合物7]
【化30】
[化合物8]
【化31】
[化合物9]
【化32】
[化合物10]
【化33】
【0135】
製造例5.化合物11の製造
【化34】
【0136】
(1)化合物B3の製造
前記製造例1の(2)において、1−ブロモ−4−ヘキシルベンゼン(1−bromo−4−hexylbenzene)の代わりに、1−ブロモ−3−ヘキシルベンゼン(1−bromo−3−hexylbenzene)を用いたことを除けば、製造例1の(2)と同様の過程で前記化合物B3を製造した。
【0137】
(2)化合物C3の製造
前記製造例1の(3)において、化合物Bの代わりに、前記化合物B3を用いたことを除けば、製造例1の(3)と同様の過程で前記化合物C3を製造した。
【0138】
(3)化合物11の製造
前記製造例1の(4)において、化合物Cの代わりに、前記化合物C3を用いたことを除けば、製造例1の(4)と同様の過程で前記化合物11を製造した。
【0139】
製造例6.化学式12〜15の製造
前記製造例5の(3)において、2−(3−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イリデン)マロノニトリル(2−(3−oxo−2,3−dihydro−1H−inden−1−ylidene)malononitrile)の代わりに、それぞれ下記表3の材料を用いたことを除けば、前記製造例5と同様の過程を進行させて、下記の化合物12〜15を製造した。
【表3】
[化合物12]
【化35】
[化合物13]
【化36】
[化合物14]
【化37】
[化合物15]
【化38】
【0140】
<実施例:有機太陽電池の製造>
【0141】
実施例1.
【0142】
(1)複合溶液の製造
下記の化合物ポリ[(2,6−(4,8−ビス(5−(2−エチルヘキシル)チオフェン−2−イル)−ベンゾ[1,2−b:4,5−b']ジチオフェン))−アルト−(5,5−(1',3'−ジ−2−チエニル−5',7'−ビス(2−エチルヘキシル)ベンゾ[1',2'−c:4',5'−c']ジチオフェン−4,8−ジオン))](poly[(2,6−(4,8−bis(5−(2−ethylhexyl)thiophen−2−yl)−benzo[1,2−b:4,5−b']dithiophene))−alt−(5,5−(1',3'−di−2−thienyl−5',7'−bis(2−ethylhexyl)benzo[1',2'−c:4',5'−c']dithiophene−4,8−dione))]、PBDB−T)(Mn:25,000g/mol、Solarmer社)を電子供与体物質とし、前記製造例で合成された化合物1を電子受容体物質として、1:1の質量比でクロロベンゼン(Chlorobenzene、CB)に溶かして、2wt%濃度の複合溶液(composite solution)を製造した。
【化39】
【0143】
(2)有機太陽電池の製造
ITOが1.5×1.5cmのバータイプ(bar type)でコーティングされたガラス基板(11.5Ω/□)を、蒸留水、アセトン、および2−プロパノールを用いて超音波洗浄し、ITO表面を10分間オゾン処理して第1電極を形成した。
【0144】
前記第1電極上に、ZnOナノ粒子溶液(N−10、Nanograde Ltd、2.5wt%in 1−butanol、0.45μmのPTFEにフィルタリング)を、4,000rpmで40秒間スピン−コーティング(spin−coating)した後、80℃で10分間熱処理して残っている溶媒を除去することにより電子輸送層を形成した。
【0145】
この後、前記(1)で製造した複合溶液を、前記電子輸送層上に、70℃で1300rpmで25秒間スピン−コーティングして光活性層を形成し、前記光活性層上に、MoOを0.2Å/sの速度および10−7torrの真空下で10nmの厚さに熱蒸着して正孔輸送層を形成した。
【0146】
この後、熱蒸着機の内部でAgを1Å/sの速度で100nmの厚さに蒸着して第2電極を形成することにより、インバーテッド(inverted)構造の有機太陽電池を製造した。
【0147】
実施例2.
前記実施例1において、光活性層の形成時、(1)で製造した複合溶液を1,400rpmでスピン−コーティングしたことを除けば、実施例1と同様の過程で有機太陽電池を製造した。
【0148】
実施例3.
前記実施例1において、光活性層の形成時、(1)で製造した複合溶液を1,500rpmでスピン−コーティングしたことを除けば、実施例1と同様の過程で有機太陽電池を製造した。
【0149】
実施例4.
前記実施例1において、光活性層の形成時、(1)で製造した複合溶液を1,600rpmでスピン−コーティングしたことを除けば、実施例1と同様の過程で有機太陽電池を製造した。
【0150】
比較例1.
前記実施例1において、複合溶液の製造時、化合物1の代わりに、下記の比較化合物を用いたことを除けば、前記実施例1と同様の過程で有機太陽電池を製造した。
[比較化合物]
【化40】
【0151】
比較例2.
前記比較例1において、光活性層の形成時、複合溶液を1,400rpmでスピン−コーティングしたことを除けば、比較例1と同様の過程で有機太陽電池を製造した。
【0152】
比較例3.
前記比較例1において、光活性層の形成時、複合溶液を1,500rpmでスピン−コーティングしたことを除けば、比較例1と同様の過程で有機太陽電池を製造した。
【0153】
比較例4.
前記比較例1において、光活性層の形成時、複合溶液を1,600rpmでスピン−コーティングしたことを除けば、比較例1と同様の過程で有機太陽電池を製造した。
【0154】
前記実施例1〜4および比較例1〜4で製造された有機太陽電池の光電変換特性を、100mW/cm(AM1.5)の条件で測定し、下記表4にその結果を示した。
【表4】
【0155】
前記表4で、前記Spin−speedは、電子輸送層上に複合溶液をスピン−コーティングして光活性層を形成する時の、装備の回転速度を、Vocは開放電圧を、Jscは短絡電流を、FFはフィルファクター(Fill factor)を、ηはエネルギー変換効率を意味する。開放電圧と短絡電流はそれぞれ、電圧−電流密度曲線の4つの象限におけるX軸およびY軸切片であり、この2つの値が高いほど、太陽電池の効率は好ましく高くなる。また、フィルファクター(Fill factor)は、曲線の内部に描ける長方形の広さを、短絡電流と開放電圧との積で割った値である。エネルギー変換効率(η)は、前記開放電圧(Voc)、短絡電流(Jsc)およびフィルファクター(FF)の積を、入射した光の強度(Pin)で割ると求められ、この値が高いほど好ましい。
【数1】
【0156】
前記表4の結果をみると、本明細書の一実施態様に係る化合物1を電子受容体として用いた実施例1〜4の有機太陽電池は、本願の化学式1の−OR11位にFが置換された比較化合物を用いた比較例1〜4の有機太陽電池に比べて開放電圧が高く、フィルファクターなどの素子効率に優れ、エネルギー変換効率に優れていることが分かる。
【0157】
具体的には、化合物1を含む有機太陽電池は、高いFF値を有することができ、結果的に8.6%以上、好ましくは9%以上の高いエネルギー変換効率を示すことができる。
【0158】
また、図3および図4はそれぞれ、実施例および比較例で製造された有機太陽電池の光−電変換特性を示す図であるが、実施例で製造された有機太陽電池の方が、比較例の有機太陽電池に比べて製造条件による性能のばらつきが少ないことを確認することができる。
【符号の説明】
【0159】
10:第1電極
20:第2電極
30:光活性層
100:有機太陽電池
図1
図2
図3
図4