(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリマーネットワークが一軸性の屈折率異方性を有し、ポリマーネットワークの光軸方向又は配向容易軸方向と低分子液晶の配向容易軸方向が同一方向である請求項2に記載の液晶表示素子。
前記重合体又は共重合体が、少なくとも一方に電極を有する2枚の透明基板間に挟持した液晶組成物中の重合性化合物を、液晶層の温度範囲を−50℃から30℃としながらエネルギー線を照射することにより重合することで得られた重合体又は共重合体である請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
前記重合体又は共重合体が、少なくとも一方に電極を有する2枚の透明基板間に挟持した液晶組成物中の重合性化合物を、エネルギー線照射前の基板法線方向に対するプレチルト角が0.1〜30度になるような電圧を印加しながらエネルギー線を照射することにより重合することで得られた重合体又は共重合体である請求項1〜6のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
1質量%以上10質量%未満の重合性化合物を含有する重合性液晶組成物を用い屈折率異方性又は配向容易軸方向を有するポリマーネットワークを形成した請求項6〜9のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
10質量%以上40質量%未満の重合性化合物を含有する重合性液晶組成物を用い屈折率異方性又は配向容易軸方向を有するポリマーネットワークを形成した請求項6〜9のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<液晶組成物>
[液晶化合物]
本発明に用いられる液晶組成物としては、一般式(LC)で表される液晶化合物を含有することが好ましい。
【0021】
一般式(LC)中、R
LCは、炭素原子数1〜15のアルキル基を表す。該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH
2基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−又は−C≡C−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子に置換されていてもよい。R
LCのアルキル基は、それぞれ分岐鎖状の基であってもよく、直鎖状の基であってもよいが、直鎖状の基であることが好ましい。
【0022】
一般式(LC)中、A
LC1及びA
LC2は、それぞれ独立して、下記の基(a)、基(b)及び基(c)からなる群より選ばれる基を表す。
(a)トランス−1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のCH
2基又は隣接していない2個以上のCH
2基は酸素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。)、
(b)1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個以上のCH基は窒素原子で置換されていてもよい。)、
(c)1,4−ビシクロ(2.2.2)オクチレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、又はクロマン−2,6−ジイル基。
【0023】
前記の基(a)、基(b)又は基(c)に含まれる1つ又は2つ以上の水素原子はそれぞれ、フッ素原子、塩素原子、−CF
3又は−OCF
3で置換されていてもよい。
一般式(LC)中、Z
LCは単結合、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH
2CH
2−、−(CH
2)
4−、−OCH
2−、−CH
2O−、−OCF
2−、−CF
2O−、−COO−又は−OCO−を表す。
一般式(LC)中、Y
LCは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、及び炭素原子数1〜15のアルキル基を表す。該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH
2基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−、−C≡C−、−CF
2O−、−OCF
2−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子によって置換されていてもよい。
【0024】
一般式(LC)中、aは1〜4の整数を表す。aが2、3又は4を表し、一般式(LC)中にA
LC1が複数存在する場合、複数存在するA
LC1は、同一であっても異なっていてもよく、Z
LCが複数存在する場合、複数存在するZ
LCは、同一であっても異なっていてもよい。
前記一般式(LC)で表される化合物は、下記一般式(LC1)及び一般式(LC2)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
【0026】
一般式(LC1)又は(LC2)中、R
LC11及びR
LC21は、それぞれ独立して炭素原子数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH
2基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−又は−C≡C−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子によって置換されていてもよい。一般式(LC1)又は(LC2)で表わされる化合物としては、R
LC11及びR
LC21は、それぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基がより好ましく、直鎖状であることが更に好ましく、アルケニル基としては下記構造を表すことが最も好ましい。
【0027】
【化10】
(式中、環構造へは右端で結合するものとする。)
【0028】
一般式(LC1)又は(LC2)中、A
LC11及びA
LC21はそれぞれ独立して下記の何れかの構造を表す。該構造中、シクロヘキシレン基中の1つ又は2つ以上のCH
2基は酸素原子で置換されていてもよく、1,4−フェニレン基中の1つ又は2つ以上のCH基は窒素原子で置換されていてもよく、また、該構造中の1つ又は2つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、−CF
3又は−OCF
3で置換されていてもよい。
【0030】
一般式(LC1)又は(LC2)で表わされる化合物としては、A
LC11及びA
LC21はそれぞれ独立して下記の何れかの構造が好ましい。
【0032】
一般式(LC1)又は(LC2)中、X
LC11、X
LC12、X
LC21〜X
LC23は、それぞれ独立して水素原子、塩素原子、フッ素原子、−CF
3又は−OCF
3を表し、Y
LC11及びY
LC21はそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、フッ素原子、シアノ基、−CF
3、−OCH
2F、−OCHF
2又は−OCF
3を表す。一般式(LC1)又は(LC2)で表わされる化合物としては、Y
LC11及びY
LC21は、それぞれ独立してフッ素原子、シアノ基、−CF
3又は−OCF
3が好ましく、フッ素原子又は−OCF
3がより好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0033】
一般式(LC1)又は(LC2)中、Z
LC11及びZ
LC21は、それぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH
2CH
2−、−(CH
2)
4−、−OCH
2−、−CH
2O−、−OCF
2−、−CF
2O−、−COO−又は−OCO−を表す。一般式(LC1)又は(LC2)で表わされる化合物としては、Z
LC11及びZ
LC21は、それぞれ独立して単結合、−CH
2CH
2−、−COO−、−OCO−、−OCH
2−、−CH
2O−、−OCF
2−又は−CF
2O−が好ましく、単結合、−CH
2CH
2−、−OCH
2−、−OCF
2−又は−CF
2O−がより好ましく、単結合、−OCH
2−又は−CF
2O−が更に好ましい。
【0034】
一般式(LC1)又は(LC2)中、m
LC11及びm
LC21は、それぞれ独立して1〜4の整数を表す。一般式(LC1)又は(LC2)で表わされる化合物としては、m
LC11及びm
LC21は、それぞれ独立して1、2又は3が好ましく、低温での保存安定性、応答速度を重視する場合には1又は2がより好ましく、ネマチック相上限温度の上限値を改善する場合には2又は3がより好ましい。一般式(LC1)又は(LC2)中に、A
LC11、A
LC21、Z
LC11及びZ
LC21が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0035】
一般式(LC1)で表わされる化合物としては、下記一般式(LC1−a)から一般式(LC1−c)で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
【0037】
一般式(LC1−a)〜(LC1−c)中、R
LC11、Y
LC11、X
LC11及びX
LC12はそれぞれ独立して前記一般式(LC1)におけるR
LC11、Y
LC11、X
LC11及びX
LC12と同じ意味を表す。一般式(LC1−a)から一般式(LC1−c)で表される化合物としては、R
LC11はそれぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基がより好ましい。また、X
LC11及びX
LC12はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子が好ましく、Y
LC11はそれぞれ独立してフッ素原子、−CF
3又は−OCF
3が好ましい。
【0038】
一般式(LC1−a)〜(LC1−c)中、A
LC1a1、A
LC1a2及びA
LC1b1は、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表す。また、一般式(LC1−a)〜(LC1−c)中、X
LC1b1、X
LC1b2、X
LC1c1〜X
LC1c4はそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、フッ素原子、−CF
3又は−OCF
3を表す。一般式(LC1−a)から一般式(LC1−c)で表される化合物としては、X
LC1b1、X
LC1b2、X
LC1c1〜X
LC1c4はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子が好ましい。
【0039】
また、一般式(LC1)は、下記一般式(LC1−d)から一般式(LC1−p)で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であることも好ましい。
【0044】
一般式(LC1−d)〜(LC1−p)中、R
LC11、Y
LC11、X
LC11及びX
LC12はそれぞれ独立して前記一般式(LC1)におけるR
LC11、Y
LC11、X
LC11及びX
LC12と同じ意味を表す。一般式(LC1−d)〜(LC1−p)で表わされる化合物としては、R
LC11はそれぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基がより好ましい。また、X
LC11及びX
LC12はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子が好ましい。Y
LC11はそれぞれ独立してフッ素原子、−CF
3又は−OCF
3が好ましい。
【0045】
一般式(LC1−d)〜(LC1−p)中、A
LC1d1、A
LC1f1、A
LC1g1、A
LC1j1、A
LC1k1、A
LC1k2、A
LC1m1〜A
LC1m3はそれぞれ独立して、1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表す。
【0046】
一般式(LC1−d)〜(LC1−p)中、X
LC1d1、X
LC1d2、X
LC1f1、X
LC1f2、X
LC1g1、X
LC1g2、X
LC1h1、X
LC1h2、X
LC1i1、X
LC1i2、X
LC1j1〜X
LC1j4、X
LC1k1、X
LC1k2、X
LC1m1及びX
LC1m2はそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、フッ素原子、−CF
3又は−OCF
3を表す。一般式(LC1−d)〜(LC1−m)で表わされる化合物としては、X
LC1d1〜X
LC1m2はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子が好ましい。
【0047】
一般式(LC1−d)〜(LC1−p)中、Z
LC1d1、Z
LC1e1、Z
LC1j1、Z
LC1k1、Z
LC1m1はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH
2CH
2−、−(CH
2)
4−、−OCH
2−、−CH
2O−、−OCF
2−、−CF
2O−、−COO−又は−OCO−を表す。一般式(LC1−d)〜(LC1−p)で表わされる化合物としては、Z
LC1d1〜Z
LC1m1はそれぞれ独立して単結合、−CH
2CH
2−、−(CH
2)
4−、−CF
2O−又は−OCH
2−が好ましい。
【0048】
一般式(LC1−d)〜(LC1−p)で表わされる化合物としては、下記一般式(LC1−1)から一般式(LC1−45)で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。一般式(LC1−1)から一般式(LC1−45)中、R
LC11はそれぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基を表す。
【0066】
一般式(LC2)は、下記一般式(LC2−a)から一般式(LC2−g)で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
【0068】
一般式(LC2−a)〜(LC2−g)中、R
LC21、Y
LC21、X
LC21〜X
LC23はそれぞれ独立して前記一般式(LC2)におけるR
LC21、Y
LC21、X
LC21〜X
LC23と同じ意味を表す。一般式(LC2−a)〜(LC2−g)で表わされる化合物としては、R
LC21はそれぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基がより好ましい。また、X
LC21〜X
LC23はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子が好ましく、Y
LC21はそれぞれ独立してフッ素原子、−CF
3又は−OCF
3が好ましい。
【0069】
一般式(LC2−a)〜(LC2−g)中、X
LC2d1〜X
LC2d4、X
LC2e1〜X
LC2e4、X
LC2f1〜X
LC2f4及びX
LC2g1〜X
LC2g4はそれぞれ独立して水素原子、塩素原子、フッ素原子、−CF
3又は−OCF
3を表す。一般式(LC2−a)〜(LC2−g)で表わされる化合物としては、X
LC2d1〜X
LC2g4はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子が好ましい。
【0070】
一般式(LC2−a)〜(LC2−g)中、Z
LC2a1、Z
LC2b1、Z
LC2c1、Z
LC2d1、Z
LC2e1、Z
LC2f1及びZ
LC2g1はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH
2CH
2−、−(CH
2)
4−、−OCH
2−、−CH
2O−、−OCF
2−、−CF
2O−、−COO−又は−OCO−を表す。一般式(LC2−a)〜(LC2−g)で表わされる化合物としては、Z
LC2a1〜Z
LC2g4はそれぞれ独立して−CF
2O−又は−OCH
2−が好ましい。
【0071】
前記一般式(LC)で表される化合物は、下記一般式(LC3)〜一般式(LC5)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物であることも好ましい。
【0073】
(式中、R
LC31、R
LC32、R
LC41、R
LC42、R
LC51及びR
LC52はそれぞれ独立して炭素原子数1〜15のアルキル基を表し、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の−CH
2−は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−又は−C≡C−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン原子によって置換されていてもよく、A
LC31、A
LC32、A
LC41、A
LC42、A
LC51及びA
LC52はそれぞれ独立して下記の何れかの構造
【0075】
(該構造中シクロヘキシレン基中の1つ又は2つ以上の−CH
2−は酸素原子で置換されていてもよく、1,4−フェニレン基中の1つ又は2つ以上の−CH−は窒素原子で置換されていてもよく、また、該構造中の1つ又は2つ以上の水素原子はフッ素原子、塩素原子、−CF
3又は−OCF
3で置換されていてもよい。)のいずれかを表し、Z
LC31、Z
LC32、Z
LC41、Z
LC42、Z
LC51及びZ
LC51はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CH
2CH
2−、−(CH
2)
4−、−COO−、−OCH
2−、−CH
2O−、−OCF
2−又は−CF
2O−を表し、Z
5は−CH
2−又は酸素原子を表し、X
LC41は水素原子又はフッ素原子を表し、m
LC31、m
LC32、m
LC41、m
LC42、m
LC51及びm
LC52はそれぞれ独立して0〜3を表し、m
LC31+m
LC32、m
LC41+m
LC42及びm
LC51+m
LC52は1、2又は3であり、A
LC31〜A
LC52、Z
LC31〜Z
LC52が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていても良い。)で表される化合物からなる群より選ばれる化合物を一種又は二種以上含むことが好ましい。
R
LC31〜R
LC52は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基が好ましく、アルケニル基としては下記構造を表すことが最も好ましく、
【0076】
【化38】
(式中、環構造へは右端で結合するものとする。)
A
LC31〜A
LC52はそれぞれ独立して下記の構造が好ましく、
【0078】
Z
LC31〜Z
LC51はそれぞれ独立して単結合、−CH
2O−、−COO−、−OCO−、−CH
2CH
2−、−CF
2O−、−OCF
2−又は−OCH
2−が好ましい。
一般式(LC3)、一般式(LC4)、及び一般式(LC5)で表される化合物として、一般式(LC3−1)、一般式(LC4−1)、及び一般式(LC5−1)
【0080】
(式中、R
31〜R
33は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、R
41〜R
43は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、Z
31〜Z
33は単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CH
2CH
2−、−(CH
2)
4−、−COO−、−OCO−、−OCH
2−、−CH
2O−、−OCF
2−又は−CF
2O−を表し、X
41は水素原子又はフッ素原子を表し、Z
34は−CH
2−又は酸素原子を表す。)で表される化合物群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有することが好ましい。
一般式(LC3−1)〜一般式(LC5−1)において、R
31〜R
33は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表すことが好ましく、炭素原子数2〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜4のアルケニル基を表すことがより好ましく、炭素原子数3〜5のアルキル基又は炭素原子数2のアルケニル基を表すことがさらに好ましく、炭素原子数3のアルキル基を表すことが特に好ましい。
【0081】
R
41〜R
43は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1〜5のアルキル基あるいは炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又は炭素原子数4〜8のアルケニル基あるいは炭素原子数3〜8のアルケニルオキシ基を表すことが好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基又は炭素原子数1〜3のアルコキシ基を表すことがより好ましく、炭素原子数3のアルキル基又は炭素原子数2のアルコキシ基を表すことがさらに好ましく、炭素原子数2のアルコキシ基を表すことが特に好ましい。
Z
31〜Z
33は単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CH
2CH
2−、−(CH
2)
4−、−COO−、−OCO−、−OCH
2−、−CH
2O−、−OCF
2−又は−CF
2O−を表すが、単結合、−CH
2CH
2−、−COO−、−OCH
2−、−CH
2O−、−OCF
2−又は−CF
2O−を表すことが好ましく、単結合又は−CH
2O−を表すことがより好ましい。
液晶組成物において、一般式(LC3−1)、一般式(LC4−1)、及び一般式(LC5−1)で表される化合物群から選ばれる化合物を5質量%〜50質量%含有することが好ましく、5質量%〜40質量%含有することが好ましく、5質量%〜30質量%含有することがより好ましく、8質量%〜27質量%含有することがより好ましく、10質量%〜25質量%含有することがさらに好ましい。
【0082】
一般式(LC3−1)で表される化合物は具体的には次に記載する一般式(LC3−11)〜一般式(LC3−15)で表される化合物が好ましい。
【0084】
(式中、R
31は炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表し、R
41aは炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。)
一般式(LC4−1)で表される化合物は具体的には次に記載する一般式(LC4−11)〜一般式(LC4−14)で表される化合物が好ましい。
【0086】
(式中、R
32は炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表し、R
42aは炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、X
41は水素原子又はフッ素原子を表す。)
一般式(LC5−1)で表される化合物は具体的には次に記載する一般式(LC5−11)〜一般式(LC5−14)で表される化合物が好ましい。
【0088】
(式中、R
33は炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表し、R
43aは炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、Z
34は−CH
2−又は酸素原子を表す。)
一般式(LC3−11)、一般式(LC3−13)、一般式(LC4−11)、一般式(LC4−13)、一般式(LC5−11)、及び一般式(LC5−13)において、R
31〜R
33は、一般式(LC3−1)〜一般式(LC5−1)における同様の実施態様が好ましい。R
41a〜R
41cは炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましく、炭素原子数1又は2のアルキル基がより好ましく、炭素原子数2のアルキル基が特に好ましい。
一般式(LC3−12)、一般式(LC3−14)、一般式(LC4−12)、一般式(LC4−14)、一般式(LC5−12)、及び一般式(LC5−14)において、R
31〜R
33は、一般式(LC3−1)〜一般式(LC5−1)における同様の実施態様が好ましい。R
41a〜R
41cは炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましく、炭素原子数1又は3のアルキル基がより好ましく、炭素原子数3のアルキル基が特に好ましい。
一般式(LC3−11)〜一般式(LC5−14)の中でも、誘電率異方性の絶対値を増大するためには、一般式(LC3−11)、一般式(LC4−11)、一般式(LC5−11)、一般式(LC3−13)、一般式(LC4−13)及び一般式(LC5−13)が好ましく、一般式(LC3−11)、一般式(LC4−11)、一般式(LC5−11)がより好ましい。
本発明の液晶表示素子における液晶層は、一般式(LC3−11)〜一般式(LC5−14)で表される化合物を1種又は2種以上含有することが好ましく、1種又は2種含有することがより好ましく、一般式(LC3−1)で表される化合物を1種又は2種含有することが特に好ましい。
【0089】
また、一般式(LC3)、一般式(LC4)、及び一般式(LC5)で表される化合物として、一般式(LC3−2)、一般式(LC4−2)、及び一般式(LC5−2)
【0091】
(式中、R
51〜R
53は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、R
61〜R
63は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、B
1〜B
3はフッ素置換されていてもよい、1,4−フェニレン基又はトランス−1,4−シクロヘキシレン基を表し、Z
41〜Z
43は単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CH
2CH
2−、−(CH
2)
4−、−COO−、−OCO−、−OCH
2−、−CH
2O−、−OCF
2−又は−CF
2O−を表し、X
42は水素原子又はフッ素原子を表し、Z
44は−CH
2−又は酸素原子を表す。)
で表される化合物群から選ばれる化合物を少なくとも1種含有することが好ましい。
一般式(LC3−2)、一般式(LC4−2)、及び一般式(LC5−2)において、R
51〜R
53は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表すことが好ましく、炭素原子数2〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜4のアルケニル基を表すことがより好ましく、炭素原子数3〜5のアルキル基又は炭素原子数2のアルケニル基を表すことがさらに好ましく、炭素原子数3のアルキル基を表すことが特に好ましい。
【0092】
R
61〜R
63は炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1〜5のアルキル基あるいは炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又は炭素原子数4〜8のアルケニル基あるいは炭素原子数3〜8のアルケニルオキシ基を表すことが好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基又は炭素原子数1〜3のアルコキシ基を表すことがより好ましく、炭素原子数3のアルキル基又は炭素原子数2のアルコキシ基を表すことがさらに好ましく、炭素原子数2のアルコキシ基を表すことが特に好ましい。
B
31〜B
33はフッ素置換されていてもよい、1,4−フェニレン基又はトランス−1,4−シクロヘキシレン基を表すが、無置換の1,4−フェニレン基又はトランス−1,4−シクロヘキシレン基が好ましく、トランス−1,4−シクロヘキシレン基がより好ましい。
Z
41〜Z
43は単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CH
2CH
2−、−(CH
2)
4−、−COO−、−OCO−、−OCH
2−、−CH
2O−、−OCF
2−又は−CF
2O−を表すが、単結合、−CH
2CH
2−、−COO−、−OCH
2−、−CH
2O−、−OCF
2−又は−CF
2O−を表すことが好ましく、単結合又は−CH
2O−を表すことがより好ましい。
一般式(LC3−2)、一般式(LC3−3)、一般式(LC4−2)、及び一般式(LC5−2)で表される化合物は、液晶組成物において10〜60質量%含有することが好ましいが、20〜50質量%含有することがより好ましく、25〜45質量%含有することがより好ましく、28〜42質量%含有することがより好ましく、30〜40質量%含有することがさらに好ましい。
【0093】
一般式(LC3−2)で表される化合物は具体的には次に記載する一般式(LC3−21)〜一般式(LC3−29)で表される化合物が好ましい。
また、一般式(LC3−3)で表される化合物として、次に記載する一般式(LC3−31)〜一般式(LC3−33)で表される化合物も好ましい。
【0095】
(式中、R
51は炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表し、R
61aは炭素原子数1〜5のアルキル基を表すが、一般式(LC3−2)におけるR
51及びR
61と同様の実施態様が好ましい。)
【0096】
一般式(LC4−2)で表される化合物は具体的には次に記載する一般式(LC4−21)〜一般式(LC4−26)で表される化合物が好ましい。
【0098】
(式中、R
52は炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表し、R
62aは炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、X
42は水素原子又はフッ素原子を表すが、一般式(LC4−2)におけるR
52及びR
62と同様の実施態様が好ましい。)
一般式(LC5−2)で表される化合物は具体的には次に記載する一般式(LC5−21)〜一般式(LC5−26)で表される化合物が好ましい。
【0100】
(式中、R
53は炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基を表し、R
63aは炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、W
2は−CH
2−又は酸素原子を表すが、一般式(LC5−2)におけるR
53及びR
63と同様の実施態様が好ましい。)
【0101】
一般式(LC3−21)、一般式(LC3−22)、一般式(LC3−25)、一般式(LC4−21)、一般式(LC4−22)、一般式(LC4−25)、一般式(LC5−21)、一般式(LC5−22)、及び一般式(LC5−25)において、R
51〜R
53は、一般式(LC3−2)、一般式(LC4−2)及び一般式(LC5−2)における同様の実施態様が好ましい。R
61a〜R
63aは炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましく、炭素原子数1又は2のアルキル基がより好ましく、炭素原子数2のアルキル基が特に好ましい。
一般式(LC3−23)、一般式(LC3−24)及び一般式(LC3−26)、一般式(LC4−23)、一般式(LC4−24)及び一般式(LC4−26)、一般式(LC5−23)、一般式(LC5−24)及び一般式(LC5−26)においてR
51〜R
53は、一般式(LC3−2)、一般式(LC4−2)及び一般式(LC5−2)における同様の実施態様が好ましい。R
61a〜R
63aは炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましく、炭素原子数1又は3のアルキル基がより好ましく、炭素原子数3のアルキル基が特に好ましい。
一般式(LC3−21)〜一般式(LC5−26)の中でも、誘電率異方性の絶対値を増大するためには、一般式(LC3−21)、一般式(Lc3−22)及び一般式(LC3−25)、一般式(LC4−21)、一般式(LC4−22)及び一般式(LC4−25)、一般式(LC5−21)、一般式(LC5−22)及び一般式(LC5−25)が好ましい。
一般式(LC3−2)、一般式(Lc4−2)及び一般式(LC5−2)で表される化合物は1種又は2種以上含有することができるが、B
1〜B
3が1,4−フェニレン基を表す化合物、及びB
1〜B
3がトランス−1,4−シクロヘキシレン基を表す化合物をそれぞれ少なくとも1種以上含有することが好ましい。
【0102】
また、一般式(LC3)で表される化合物として、他には、下記一般式(LC3−a)及び一般式(LC3−b)
【0104】
(式中、R
LC31、R
LC32、A
LC31及びZ
LC31はそれぞれ独立して前記一般式(LC3)におけるR
LC31、R
LC32、A
LC31及びZ
LC31と同じ意味を表し、X
LC3b1〜X
LC3b6は水素原子又はフッ素原子を表すが、X
LC3b1及びX
LC3b2又はX
LC3b3及びX
LC3b4のうちの少なくとも一方の組み合わせは共にフッ素原子を表し、m
LC3a1は1、2又は3であり、m
LC3b1は0又は1を表し、A
LC31及びZ
LC31が複数存在する場合は、それらは同一であっても異なっていても良い。)で表される化合物群から選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
R
LC31及びR
LC32はそれぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基又は炭素原子数2〜7のアルケニルオキシ基を表すことが好ましい。
A
LC31は、1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表すことが好ましく、1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基を表すことがより好ましい。
Z
LC31は単結合、−CH
2O−、−COO−、−OCO−、−CH
2CH
2−を表すことが好ましく、単結合を表すことがより好ましい。
【0105】
一般式(LC3−a)としては、下記一般式(LC3−a1)を表すことが好ましい。
【0107】
(式中、R
LC31及びR
LC32はそれぞれ独立して前記一般式(LC3)におけるR
LC31及びR
LC32と同じ意味を表す。)
R
LC31及びR
LC32はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基が好ましく、R
LC31が炭素原子数1〜7のアルキル基を表し、R
LC32が炭素原子数1〜7のアルコキシ基を表すことがより好ましい。
一般式(LC3−b)としては、下記一般式(LC3−b1)〜一般式(LC3−b12)を表すことが好ましく、一般式(LC3−b1)、一般式(LC3−b6)、一般式(LC3−b8)、一般式(LC3−b11)を表すことがより好ましく、一般式(LC3−b1)及び一般式(LC3−b6)を表すことがさらに好ましく、一般式(LC3−b1)を表すことが最も好ましい。
【0109】
(式中、R
LC31及びR
LC32はそれぞれ独立して前記一般式(LC3)におけるR
LC31及びR
LC32と同じ意味を表す。)
R
LC31及びR
LC32はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基が好ましく、R
LC31が炭素原子数2又は3のアルキル基を表し、R
LC32が炭素原子数2のアルキル基を表すことがより好ましい。
また、一般式(LC4)で表される化合物は、下記一般式(LC4−a)から一般式(LC4−c)で表される化合物が好ましく、一般式(LC5)で表される化合物は、下記一般式(LC5−a)から一般式(LC5−c)で表される化合物が好ましい。
【0111】
(式中、R
LC41、R
LC42及びX
LC41はそれぞれ独立して前記一般式(LC4)におけるR
LC41、R
LC42及びX
LC41と同じ意味を表し、R
LC51及びR
LC52はそれぞれ独立して前記一般式(LC5)におけるR
LC51及びR
LC52と同じ意味を表し、Z
LC4a1、Z
LC4b1、Z
LC4c1、Z
LC5a1、Z
LC5b1及びZ
LC5c1はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CH
2CH
2−、−(CH
2)
4−、−COO−、−OCH
2−、−CH
2O−、−OCF
2−又は−CF
2O−を表す。)
R
LC41、R
LC42、R
LC51及びR
LC52はそれぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基又は炭素原子数2〜7のアルケニルオキシ基を表すことが好ましい。
Z
LC4a1〜Z
LC5c1はそれぞれ独立して単結合、−CH
2O−、−COO−、−OCO−、−CH
2CH
2−を表すことが好ましく、単結合を表すことがより好ましい。
【0112】
前記一般式(LC)で表される化合物は、下記一般式(LC6)で表される化合物(ただし、一般式(LC1)〜一般式(LC5)で表される化合物を除く。)から選ばれる1種又は2種以上の化合物であることも好ましい。
【0114】
一般式(LC6)中、R
LC61及びR
LC62は、それぞれ独立して炭素原子数1〜15のアルキル基を表す。該アルキル基中の1つ又は2つ以上のCH
2基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−、−COO−又は−C≡C−で置換されてよく、該アルキル基中の1つ又は2つ以上の水素原子は任意にハロゲン置換されていてもよい。一般式(LC6)で表わされる化合物としては、R
LC61及びR
LC62は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基が好ましく、アルケニル基としては下記のいずれかの構造を表すことが最も好ましい。
【0115】
【化53】
(式中、環構造へは右端で結合するものとする。)
【0116】
一般式(LC6)中、A
LC61〜A
LC63はそれぞれ独立して下記の何れかの構造を表す。該構造中、シクロヘキシレン基中の1つ又は2つ以上のCH
2CH
2基は−CH=CH−、−CF
2O−、−OCF
2−で置換されていてもよく、1,4−フェニレン基中1つ又は2つ以上のCH基は窒素原子で置換されていてもよい。
【0118】
一般式(LC6)で表わされる化合物としては、A
LC61〜A
LC63は、それぞれ独立して下記のいずれかの構造が好ましい。
【化55】
【0119】
一般式(LC6)中、Z
LC61及びZ
LC62はそれぞれ独立して単結合、−CH=CH−、−C≡C−、−CH
2CH
2−、−(CH
2)
4−、−COO−、−OCH
2−、−CH
2O−、−OCF
2−又は−CF
2O−を表し、mLC61は0〜3を表す。一般式(LC6)で表わされる化合物としては、Z
LC61及びZ
LC62はそれぞれ独立して単結合、−CH
2CH
2−、−COO−、−OCH
2−、−CH
2O−、−OCF
2−又は−CF
2O−が好ましい。
【0120】
一般式(LC6)で表わされる化合物としては、下記一般式(LC6−a)から一般式(LC6−v)で表される化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。一般式(LC6−a1)〜一般式(LC6−p1)の式中、R
LC61及びR
LC62はそれぞれ独立して炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数1〜7のアルコキシ基、炭素原子数2〜7のアルケニル基又は炭素原子数2〜7のアルケニルオキシ基を表す。
【0125】
[重合性化合物]
本発明に係る重合体又は共重合体は、以下の一般式(X1b)で表される重合性化合物の1種又は2種以上を重合させて得た重合体又は共重合体を含有する。
【0126】
【化60】
(式中、A
8は水素原子又はメチル基を表し、6員環T
1、T
2及びT
3はそれぞれ独立して
【0128】
のいずれか(ただしmは1から4の整数を表す。)を表し、
qは0又は1を表し、
Y
1及びY
2はそれぞれ独立して単結合、−CH
2CH
2−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−OCF
2−、−CF
2O−、−(CH
2)
4−、−CH
2CH
2O−、−OCH
2CH
2−、−CH=CHCH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH=CH−、−COO−CH
2CH
2−、−OCO−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2−COO−又は−CH
2CH
2−OCO−を表すが、Y
1及びY
2の少なくとも一つは−COO−CH
2CH
2−、−OCO−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2−COO−又は−CH
2CH
2−OCO−を表し、qが0を表す場合、Y
1は−COO−CH
2CH
2−、−OCO−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2−COO−又は−CH
2CH
2−OCO−を表し、
Y
3及びY
4はそれぞれ独立して単結合、炭素原子数1〜12のアルキレン基(該アルキレン基中の1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立して酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていてもよく、該アルキレン基中の1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立してフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていてもよい。)を表し、
B
8は水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜14のアルキル基を表し、該アルキル基は末端の−CH
3がアクリロイル基又はメタクリロイル基に置換されても良い。)
重合性化合物は、重合性の官能基を分子中に少なくとも2つ以上有するものを使用することが好ましい。なかでも一般式(I)
【0129】
【化62】
(式中、W
1及びW
2はそれぞれ独立的に単結合、−O−、−COO−又は−OCO−を表し、Y
1及びY
2はそれぞれ独立的に−COO−又は−OCO−を表し、p及びqはそれぞれ独立的に2〜13の整数を表すが、式中に存在する1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い。)で表される化合物が好ましい。
一般式(I)において、W
1及びW
2は−O−を表し、Y
1は−COO−を表し、Y
2は−OCO−を表し、p及びqはそれぞれ独立的に3〜12の整数である化合物がより好ましく、p=q=6又はp=q=3である化合物が好ましい。
一般式(I)で表される化合物はさらに具体的には、一般式(I−1)〜一般式(I―8)で表される化合物を挙げることができる。
【0131】
(式中、p及びqは一般式(I)における意味と同じ。)
一般式(I−1)〜一般式(I―8)において、p及びqはそれぞれ独立的に3〜13の整数であることが好ましい。
一般式(I)で表される化合物は、安定に液晶相を発現させる目的と結晶相の析出を避ける目的から、2種以上含有させることが好ましく、一般式(I−1)〜一般式(I―8)において、p=q=6又はp=q=3の化合物を2種以上含有することが特に好ましい。
また、一般式(II)
【0132】
【化64】
(式中、W
3及びW
4はそれぞれ独立的に単結合、−O−、−COO−又は−OCO−を表し、Y
3は−COO−又は−OCO−を表し、r及びsはそれぞれ独立的に2〜13の整数を表すが、式中に存在する1,4−フェニレン基は炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良い。)で表される化合物を含有させることも好ましい。一般式(II)のような2官能液晶性アクリレートを用いると、室温でスメクチックA相を呈する組成物を容易に得ることができる。一般式(II)で表される化合物は、さらに具体的には、一般式(II−1)〜一般式(II―10)で表される化合物を挙げることができる。
【0133】
(式中、r及びsは一般式(II)における意味と同じ。)
また、以下に示す化合物も好ましい。
【0140】
【化71】
(式中、R
34は、水素原子又はメチル基を表し、e及びfは一般式(X1b)におけるY
3及びY
4と同じ意味を表す。)
【0141】
本発明に係る重合体又は共重合体は、前記一般式(X1b)で表される重合性化合物以外の他の重合性化合物の重合体又は共重合体を含有してもよい。このような重合性化合物としては、一つの反応性基を有する単官能性の重合性化合物、及び二官能又は三官能等の二つ以上の反応性基を有する多官能性の重合性化合物が挙げられる。反応性基を有する重合性化合物はメソゲン性部位を含んでいても、含んでいなくてもよい。
反応性基を有する重合性化合物において、反応性基は光による重合性を有する置換基が好ましい。特に、垂直配向膜が熱重合により生成するときに、垂直配向膜材料の熱重合の際に、反応性基を有する重合性化合物の反応を抑制できるので、反応性基は光による重合性を有する置換基が特に好ましい。
なかでも以下の一般式(P)で表される化合物が好ましい(但し、一般式(X1b)で表される化合物を除く。)。
【0142】
【化72】
(上記一般式(P)中、Z
p1は、フッ素原子、シアノ基、水素原子、水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい炭素原子数1〜15のアルキル基、水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい炭素原子数1〜15のアルコキシ基、水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい炭素原子数1〜15のアルケニル基、水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよい炭素原子数1〜15のアルケニルオキシ基又は−Sp
p2−R
p2を表し、
R
p1及びR
p2はそれぞれ独立して以下の式(R−I)から式(R−IX):
【0143】
【化73】
のいずれかを表し、前記式(R−I)〜(R−IX)中、R
2〜R
6はお互いに独立して、水素原子、炭素原子数1〜5個のアルキル基または炭素原子数1〜5個のハロゲン化アルキル基であり、Wは単結合、−O−またはメチレン基であり、Tは単結合または−COO−であり、p、tおよびqはそれぞれ独立して、0、1または2を表し、
Sp
p1及びSp
p2はスペーサー基を表し、Sp
p1及びSp
p2はそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜12のアルキレン基又は−O−(CH
2)
s−(式中、sは1〜11の整数を表し、酸素原子は芳香環に結合するものとする。)を表し
L
p1及びL
p2はそれぞれ独立して、単結合、−O−、−S−、−CH
2−、−OCH
2−、−CH
2O−、−CO−、−C
2H
4−、−COO−、−OCO−、−OCOOCH
2−、−CH
2OCOO−、−OCH
2CH
2O−、−CO−NR
a−、−NR
a−CO−、−SCH
2−、−CH
2S−、−CH=CR
a−COO−、−CH=CR
a−OCO−、−COO−CR
a=CH−、−OCO−CR
a=CH−、−COO−CR
a=CH−COO−、−COO−CR
a=CH−OCO−、−OCO−CR
a=CH−COO−、−OCO−CR
a=CH−OCO−、−(CH
2)
z−C(=O)−O−、−(CH
2)z−O−(C=O)−、−O−(C=O)−(CH
2)z−、−(C=O)−O−(CH
2)z−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF
2−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CF
2CH
2−、−CH
2CF
2−、−CF
2CF
2−又は−C≡C−(式中、R
aはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、前記式中、zは1〜4の整数を表す。)を表し、
M
p2は、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、アントラセン−2,6−ジイル基、フェナントレン−2,7−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、インダン−2,5−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表すが、M
p2は無置換であるか又は炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素原子数1〜12のハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又は−R
p1で置換されていても良く、
M
p1は以下の式(i−11)〜(ix−11):
【0144】
【化74】
(式中、★でSp
p1と結合し、★★でL
p1若しくはL
p2と結合する。)のいずれかを表し、
M
p3は以下の式(i−13)〜(ix−13):
【0145】
【化75】
(式中、★でZ
p1と結合し、★★でL
p2と結合する。)のいずれかを表し、
m
p2〜m
p4はそれぞれ独立して、0、1、2又は3を表し、m
p1及びm
p5はそれぞれ独立して1、2又は3を表すが、Z
p1が複数存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよく、R
p1が複数存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよく、R
p2が複数存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよく、Sp
p1が複数存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよく、Sp
p2が複数存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよく、L
p1が複数存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよく、M
p2が複数存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよい。)
【0146】
また、当該重合性化合物は1種又は2種以上含有することが好ましい。
一般式(P)において、Z
p1は−Sp
p2−R
p2であることが好ましく、R
11及びR
12はそれぞれ独立して式(R−1)から式(R−3)のいずれかであることが好ましい。
また、前記一般式(P)において、m
p1+m
p5が2以上であることが好ましい。
また、前記一般式(P)において、L
p1は、単結合、−OCH
2−、−CH
2O−、−CO−、−C
2H
4−、−COO−、−OCO−、−COOC
2H
4−、−OCOC
2H
4−、−C
2H
4OCO−、−C
2H
4COO−、−CH=CH−、−CF
2−、−CF
2O−、−(CH
2)
z−C(=O)−O−、−(CH
2)z−O−(C=O)−、−O−(C=O)−(CH
2)z−、−CH=CH−COO−、−COO−CH=CH−、−OCOCH=CH−、−(C=O)−O−(CH
2)z−、−OCF
2−又は−C≡C−であり、L
p2は、−OCH
2CH
2O−、−COOC
2H
4−、−OCOC
2H
4−、−(CH
2)
z−C(=O)−O−、−(CH
2)z−O−(C=O)−、−O−(C=O)−(CH
2)z−、−(C=O)−O−(CH
2)z−、−CH=CH−COO−、−COO−CH=CH−、−OCOCH=CH−、−C
2H
4OCO−又は−C
2H
4COO−であり、前記式中のzは、1〜4の整数であることが好ましい。
また、前記一般式(P)のL
p1およびL
p2の少なくともいずれかが、−(CH
2)
z−C(=O)−O−、−(CH
2)z−O−(C=O)−および−O−(C=O)−(CH
2)z−、−(C=O)−O−(CH
2)z−からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、前記一般式(P)において、R
p1及びR
p2はそれぞれ独立して以下の式(R−1)から式(R−15):
【0147】
【化76】
のいずれかがより好ましい。
【0148】
また、前記一般式(P)のm
p3は0、1、2又は3を表し、m
p2が1の場合L
p1は単結合であり、m
p2が2又は3の場合複数存在するL
p1の少なくとも1つは単結合であることが好ましい。
また、前記一般式(P)のm
p3は0、1、2又は3を表し、m
p3が1の場合M
p2は1,4−フェニレン基であり、m
p3が2又は3の場合複数存在するM
p2のうち少なくともL
p1を介してM
p1と隣接するM
p2は1,4−フェニレン基であることが好ましい。
更に、前記一般式(P)のm
p3は0、1、2又は3を表し、M
p2の少なくとも1つが、1つ又は2つ以上のフッ素で置換されている1,4−フェニレン基であることが好ましい。
更に、前記一般式(P)のm
p4は0、1、2又は3を表し、M
p3の少なくとも1つが、1つ又は2つ以上のフッ素で置換されている1,4−フェニレン基であることが好ましい。
また、前記一般式(P)におけるスペーサー基(Sp
p1、Sp
p2、Sp
p4)としては、単結合、−OCH
2−、−(CH
2)
zO−、−CO−、−C
2H
4−、−COO−、−OCO−、−COOC
2H
4−、−OCOC
2H
4−、−(CH
2)
z−、−C
2H
4OCO−、−C
2H
4COO−、−CH=CH−、−CF
2−、−CF
2O−、−(CH
2)
z−C(=O)−O−、−(CH
2)
z−O−(C=O)−、−O−(C=O)−(CH
2)
z−、−(C=O)−O−(CH
2)
z−、−O−(CH
2)
z−O−、−OCF
2−、−CH=CH−COO−、−COO−CH=CH−、−OCOCH=CH−又は−C≡C−であることが好ましく、当該Zは1以上10以下の整数であることが好ましい。
【0149】
一般式(P)の重合性化合物は、一般式(P−a)、一般式(P−b)、一般式(P−c)および一般式(P−d)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい(但し、一般式(X1b)で表される化合物を除く。)。
【0150】
【化77】
上記一般式(P−a)〜一般式(P−d)中、R
p1及びR
p2はそれぞれ独立して以下の式(R−I)から式(R−IX):
【0151】
【化78】
のいずれかを表し、前記式(R−I)〜(R−IX)中、R
2〜R
6はお互いに独立して、水素原子、炭素原子数1〜5個のアルキル基または炭素原子数1〜5個のハロゲン化アルキル基であり、Wは単結合、−O−またはメチレン基であり、Tは単結合または−COO−であり、p、tおよびqはそれぞれ独立して、0、1または2を表し、
環Aおよび環Bはそれぞれ独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、アントラセン−2,6−ジイル基、フェナントレン−2,7−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、インダン−2,5−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表すが、無置換であるか又は炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素原子数1〜12のハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又は−R
p1で置換されていていることが好ましく、
環Cは以下の式(c−i)〜(c−ix):
【0152】
【化79】
(式中、★でSp
p1と結合し、★★でL
p5若しくはL
p6と結合する。)のいずれかを表し、
Sp
p1及びSp
p4はスペーサー基を表し、X
p1〜X
p4は、それぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表すことが好ましく、
L
p4、L
p5およびL
p6はそれぞれ独立して、単結合、−OCH
2−、−CH
2O−、−CO−、−C
2H
4−、−COO−、−OCO−、−COOC
2H
4−、−OCOC
2H
4−、−C
2H
4OCO−、−C
2H
4COO−、−CH=CH−、−CF
2−、−CF
2O−、−(CH
2)
z−C(=O)−O−、−(CH
2)
z−O−(C=O)−、−O−(C=O)−(CH
2)
z−、−(C=O)−O−(CH
2)
z−、−O−(CH
2)
z−O−、−OCF
2−、−CH=CHCOO−、−COOCH=CH−、−OCOCH=CH−又は−C≡C−であることが好ましく、前記式中のzは、1〜4の整数であることが好ましい。
【0153】
L
p3は、−CH=CHCOO−、−COOCH=CH−または−OCOCH=CH−であることが好ましい。
上記一般式(P−a)で表される化合物において、m
p6およびm
p7は、それぞれ独立して、0、1、2または3を表すことが好ましい。また、m
p6+m
p7=2〜5であることがより好ましい。
上記一般式(P−d)で表される化合物において、m
p12及びm
p15はそれぞれ独立して1、2又は3を表し、m
p13は、0、1、2又は3を表すことが好ましく、m
p14は、0又は1を表すことが好ましい。また、m
p12+m
p15=2〜5であることがより好ましい。R
p1が複数存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよく、R
p1が複数存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよく、R
p2が複数存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよく、Sp
p1が複数存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよく、Sp
p4が複数存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよく、L
p4およびL
p5が複数存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよく、環A〜環Cが複数存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよい。
【0154】
以下に一般式(P−a)〜一般式(P−d)で表される化合物の好ましい構造を例示する。
一般式(P−a)で表される化合物の好ましい例として、下記式(P−a−1)〜式(P−a−31)で表される重合性化合物が挙げられる。
【0158】
【化83】
一般式(P−b)で表される化合物の好ましい例として、下記式(P−b−1)〜式(P−b−34)で表される重合性化合物が挙げられる。
【0161】
【化86】
一般式(P−c)で表される化合物の好ましい例として、下記式(P−c−1)〜式(P−c−52)で表される重合性化合物が挙げられる。
【0164】
【化89】
一般式(P−d)で表される化合物は、以下の一般式(P−d’)で表される化合物が好ましい。
【0165】
【化90】
(上記一般式(P−d’)で表される化合物において、m
p10は、2または3を表すことがより好ましい。その他の記号は上記一般式(p−d)と同一なので省略する。)
一般式(P−d)で表される化合物の好ましい例として、下記式(P−d−1)〜式(P−d−31)で表される重合性化合物が挙げられる。
【0173】
一般式(P)における「炭素原子数1〜15個のアルキル基」は、直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、直鎖状のアルキル基がより好ましい。また、上記一般式(1)中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜15個のアルキル基であり、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜8個のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜6個のアルキル基がより好ましい。
一般式(P)における「炭素原子数1〜15個のアルキル基」の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、3−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基などが挙げられる。なお、本明細書中において、アルキル基の例は共通であり、各々のアルキル基の炭素原子数の数によって適宜上記例示から選択される。
一般式(P)における「炭素原子数1〜15個のアルコキシ基」の例は、該置換基中の少なくとも1個の酸素原子が環構造と直接結合する位置に存在することが好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(n−プロポキシ基、i−プロポキシ基)、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基がより好ましい。なお、本明細書中において、アルコキシ基の例は共通であり、各々のアルコキシ基の炭素原子数の数によって適宜上記例示から選択される。
一般式(P)における「炭素原子数2〜15個のアルケニル基」の例は、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、2−ヘキセニル基等が挙げられる。また、より好ましいアルケニル基としては次に記載する式(i)(ビニル基)、式(ii)(1−プロペニル基)、式(iii)(3−ブテニル基)および式(iv)(3−ペンテニル基):
【0174】
【化98】
(上記式(i)〜(iv)中、*は環構造への結合部位を示す。)
で表されるが、本願発明の液晶組成物が重合性モノマーを含有する場合は、式(ii)および式(iv)で表される構造が好ましく、式(ii)で表される構造がより好ましい。なお、本明細書中において、アルケニル基の例は共通であり、各々のアルケニル基の炭素原子数の数によって適宜上記例示から選択される。
また、低分子液晶との溶解性を高めて結晶化を抑制するのに好ましい単官能性の反応基を有する重合性化合物としては、下記一般式(VI)で表される重合性化合物が挙げられる(但し、一般式(X1b)で表される化合物を除く。)。
【0176】
(式中、X
3は、水素原子又はメチル基を表し、Sp
3は、単結合、炭素原子数1〜12のアルキレン基又は−O−(CH
2)
t−(式中、tは2〜11の整数を表し、酸素原子は芳香環に結合するものとする。)を表し、Vは炭素原子数2〜20の直鎖もしくは分岐多価アルキレン基又は炭素原子数5〜30の多価環状置換基を表すが、多価アルキレン基中のアルキレン基は酸素原子が隣接しない範囲で酸素原子により置換されていてもよく、炭素原子数5〜20のアルキル基(基中のアルキレン基は酸素原子が隣接しない範囲で酸素原子により置換されていてもよい。)又は環状置換基により置換されていてもよく、Wは水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜15のアルキル基を表す。式中の全ての1,4−フェニレン基は、任意の水素原子が−CH
3、−OCH
3、フッ素原子、又はシアノ基に置換されていてもよい。)
【0177】
上記一般式(VI)において、X
3は、水素原子又はメチル基を表すが、反応速度を重視する場合には水素原子が好ましく、反応残留量を低減することを重視する場合にはメチル基が好ましい。
上記一般式(VI)において、Sp
3は、単結合、炭素原子数1〜12のアルキレン基又は−O−(CH
2)
t−(式中、tは2〜11の整数を表し、酸素原子は芳香環に結合するものとする。)を表すが、炭素鎖の長さがTgに影響を及ぼすので、重合性化合物含有量が10重量%未満の場合に、あまり長くないことが好ましく、単結合又は炭素原子数1〜5のアルキレン基が好ましく、重合性化合物含有量が6重量%未満の場合は、単結合又は炭素原子数1〜3のアルキレン基がより好ましい。重合性化合物含有量が10重量%以上の場合は、炭素数5〜10のアルキレン基が好ましい。また、Sp
3が−O−(CH
2)
t−を表す場合も、tは1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。更に、炭素原子数がプレチルト角に影響を及ぼすので必要に応じて所望のプレチルト角が得られるようにSp
3の炭素原子数が異なる重合性化合物を複数混合して用いることが好ましい。
上記一般式(VI)において、Vは炭素原子数2〜20の直鎖もしくは分岐多価アルキレン基又は炭素原子数5〜30の多価環状置換基を表すが、多価アルキレン基中のアルキレン基は酸素原子が隣接しない範囲で酸素原子により置換されていてもよく、炭素原子数5〜20のアルキル基(基中のアルキレン基は酸素原子が隣接しない範囲で酸素原子により置換されていてもよい。)又は環状置換基により置換されていてもよく、2つ以上の環状置換基により置換されていることが好ましい。
【0178】
一般式(VI)で表される重合性化合物は更に具体的には、一般式(X1a)
【0180】
(式中、A
1は水素原子又はメチル基を表し、
A
2は単結合又は炭素原子数1〜8のアルキレン基(該アルキレン基中の1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立して酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていてもよく、該アルキレン基中の1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立してフッ素原子、メチル基又はエチル基で置換されていてもよい。)を表し、
A
3及びA
6はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基(該アルキル基中の1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立して酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていてもよく、該アルキル基中の1個又は2個以上の水素原子は、それぞれ独立してハロゲン原子又は炭素原子数1〜17のアルキル基で置換されていてもよい。)を表わし、
A
4及びA
7はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜10のアルキル基(該アルキル基中の1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立して酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていてもよく、該アルキル基中の1個又は2個以上の水素原子は、それぞれ独立してハロゲン原子又は炭素原子数1〜9のアルキル基で置換されていてもよい。)を表し、
pは0〜10を表し、
B
1、B
2及びB
3は、それぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基(該アルキル基中の1個又は2個以上のメチレン基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、それぞれ独立して酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていてもよく、該アルキル基中の1個又は2個以上の水素原子は、それぞれ独立してハロゲン原子又は炭素原子数3〜6のトリアルコキシシリル基で置換されていてもよい。)を表わす化合物が挙げられる。
【0181】
上記一般式(X1a)は、一般式(II−b)で表される化合物が好ましい。
【0182】
【化101】
一般式(II−b)で表される化合物は、具体的には下記式(II−q)〜(II−z)、(II−aa)〜(II−al)で表される化合物であることが好ましい。
【0186】
上記一般式(VI)、一般式(XaI)及び一般式(II−b)で表される化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0187】
更に、一般式(VI)で表される重合性化合物は具体的には、一般式(X1c)
【0189】
(式中、R
70は水素原子又はメチル基を表し、R
71は縮合環を有する炭化水素基を表す。)で表わす化合物も挙げられる。
例示化合物としては、以下に示されるが、これらに限定される訳ではない。
【0193】
【化109】
また、低分子液晶との溶解性を高めて結晶化を抑制するのに好ましい多官能性の反応基を有する重合性化合物としては、下記一般式(V)で表される重合性化合物が好ましい(但し、一般式(X1b)で表される化合物を除く。)。
【0195】
(式中、X
1及びX
2はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、Sp
1及びSp
2はそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜12のアルキレン基又は−O−(CH
2)
s−(式中、sは1〜11の整数を表し、酸素原子は芳香環に結合するものとする。)を表し、Uは炭素原子数2〜20の直鎖もしくは分岐多価アルキレン基又は炭素原子数5〜30の多価環状置換基を表すが、多価アルキレン基中のアルキレン基は酸素原子が隣接しない範囲で酸素原子により置換されていてもよく、炭素原子数5〜20のアルキル基(基中のアルキレン基は酸素原子が隣接しない範囲で酸素原子により置換されていてもよい。)又は環状置換基により置換されていてもよく、kは1〜5の整数を表す。式中の全ての1,4−フェニレン基は、任意の水素原子が−CH
3、−OCH
3、フッ素原子、又はシアノ基に置換されていてもよい。)
【0196】
上記一般式(V)において、X
1及びX
2はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表すが、反応速度を重視する場合には水素原子が好ましく、反応残留量を低減することを重視する場合にはメチル基が好ましい。
上記一般式(V)において、Sp
1及びSp
2はそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜12のアルキレン基又は−O−(CH
2)
s−(式中、sは2〜11の整数を表し、酸素原子は芳香環に結合するものとする。)を表すが、本発明の液晶表示素子に於けるプレチルト角は該炭素原子数、液晶との含有量、及び用いる配向膜の種類や配向処理条件に影響される。従って必ずしも限定されるものではないが、例えばプレチルト角を5度程度にする場合は、炭素鎖があまり長くないことが好ましく、単結合又は炭素原子数1〜5のアルキレン基がより好ましく、単結合又は炭素原子数1〜3のアルキレン基がより好ましい。更に、プレチルト角が2度程度以内にするには、炭素原子数を6〜12の重合性化合物を用いることが好ましく、炭素原子数が8〜10がより好ましい。また、Sp
1及びSp
2が−O−(CH
2)
s−を表す場合も、プレチルト角に影響を及ぼすので適宜必要に応じてSp
1及びSp
2の長さを調整して用いることが好ましく、プレチルト角を増加させる目的ではsは1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。プレチルト角を小さくする目的では、sは6〜10が好ましい。また、Sp
1及びSp
2の少なくとも一方が、単結合であることで分子の非対称性が発現するためプレチルトを誘起するので好ましい。
【0197】
また、上記一般式(V)においてSp
1及びSp
2が同一である化合物も好ましく、Sp
1及びSp
2が同一である化合物を2種以上用いることが好ましい。この場合、互いにSp
1及びSp
2が異なった2種以上を用いることがより好ましい。
上記一般式(V)において、Uは炭素原子数2〜20の直鎖もしくは分岐多価アルキレン基又は炭素原子数5〜30の多価環状置換基を表すが、多価アルキレン基中のアルキレン基は酸素原子が隣接しない範囲で酸素原子により置換されていてもよく、炭素原子数5〜20のアルキル基(基中のアルキレン基は酸素原子が隣接しない範囲で酸素原子により置換されていてもよい。)、環状置換基により置換されていてもよく、2つ以上の環状置換基により置換されていることが好ましい。
上記一般式(V)において、Uは具体的には、以下の式(Va−1)から式(Va−23)を表すことが好ましい。アンカーリング力を高くするためには直線性が高いビフェニール等が好ましく、式(Va−1)から式(Va−6)を表すことが好ましい。又、式(Va−6)から式(Va−11)を表す構造は、液晶との溶解性が高い点で好ましく、式(Va−1)から式(Va−6)と組み合わせて用いることが好ましい。
【0212】
(式中、両端はSp
1又はSp
2に結合するものとする。Z
p1及びZ
p2はそれぞれ独立して、−OCH
2−、−CH
2O−、−COO−、−OCO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2CH
2−、−CF
2CF
2−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CH
2CH
2−、−OCO−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2−COO−、−CH
2CH
2−OCO−、−COO−CH
2−、−OCO−CH
2−、−CH
2−COO−、−CH
2−OCO−、−CY
1=CY
2−、−C≡C−又は単結合を表す。式中の全ての1,4−フェニレン基は、任意の水素原子が、−CH
3、−OCH
3、フッ素原子、又はシアノ基に置換されていてもよい。又、シクロへキシレン基中の1つ又は2つ以上のCH
2CH
2基は−CH=CH−、−CF
2O−、−OCF
2−で置換されていてもよい。)
Uが環構造を有する場合、前記Sp
1及びSp
2は少なくとも一方が−O−(CH
2)
s−(式中、sは1〜7の整数を表し、酸素原子は芳香環に結合するものとする。)を表すことが好ましく、両方共に−O−(CH
2)
s−であることも好ましい。
上記一般式(V)において、kは1〜5の整数を表すが、kが1の二官能化合物、又はkが2の三官能化合物であることが好ましく、二官能化合物であることがより好ましい。
【0213】
上記一般式(V)で表される化合物は、具体的には、以下の一般式(Vb)で表される化合物が好ましい(但し、一般式(X1b)で表される化合物を除く。)。
【0214】
【化125】
(式中、X
1及びX
2はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、Sp
1及びSp
2はそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜12のアルキレン基又は−O−(CH
2)
s−(式中、sは1〜11の整数を表し、酸素原子は芳香環に結合するものとする。)を表し、Z
1は−OCH
2−、−CH
2O−、−COO−、−OCO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2CH
2−、−CF
2CF
2−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CH
2CH
2−、−OCO−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2−COO−、−CH
2CH
2−OCO−、−COO−CH
2−、−OCO−CH
2−、−CH
2−COO−、−CH
2−OCO−、−CY
1=CY
2−(Y
1及びY
2はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子を表す。)、−C≡C−又は単結合を表し、Cは1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基又は単結合を表し、式中の全ての1,4−フェニレン基は、任意の水素原子がフッ素原子により置換されていてもよい。)
【0215】
上記一般式(Vb)において、X
1及びX
2は、はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表すが、いずれも水素原子を表すジアクリレート誘導体、又はいずれもメチル基を有するジメタクリレート誘導体が好ましく、一方が水素原子を表し、もう一方がメチル基を表す化合物も好ましい。これらの化合物の重合速度は、ジアクリレート誘導体が最も早く、ジメタクリレート誘導体が遅く、非対称化合物がその中間であり、その用途により好ましい態様を用いることができる。
【0216】
上記一般式(Vb)において、Sp
1及びSp
2はそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜12のアルキレン基又は−O−(CH
2)s−を表すが、少なくとも一方が−O−(CH
2)s−であることが好ましく、両方が−O−(CH
2)s−を表す態様がより好ましい。この場合、sは1〜6が好ましい。
上記一般式(Vb)において、Z
1は、−OCH
2−、−CH
2O−、−COO−、−OCO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2CH
2−、−CF
2CF
2−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CH
2CH
2−、−OCO−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2−COO−、−CH
2CH
2−OCO−、−COO−CH
2−、−OCO−CH
2−、−CH
2−COO−、−CH
2−OCO−、−CY
1=CY
2−(Y
1及びY
2はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子を表す。)、−C≡C−又は単結合を表すが、−OCH
2−、−CH
2O−、−COO−、−OCO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2CH
2−、−CF
2CF
2−又は単結合が好ましく、−COO−、−OCO−又は単結合がより好ましく、単結合が特に好ましい。上記一般式(Vb)において、Cは任意の水素原子がフッ素原子により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基又は単結合を表すが、1,4−フェニレン基又は単結合が好ましい。Cが単結合以外の環構造を表す場合、Z
1は単結合以外の連結基も好ましく、Cが単結合の場合、Z
1は単結合が好ましい。
以上より、上記一般式(Vb)において、Cが単結合を表し、環構造が二つの環で形成される場合が好ましく、環構造を有する重合性化合物としては、具体的には以下の一般式(V−1)から(V−6)で表される化合物が好ましく、一般式(V−1)から(V−4)で表される化合物が特に好ましく、一般式(V−2)で表される化合物が最も好ましい。
【0218】
また、上記一般式(Vb)において、以下の一般式(V1−1)から(V1−5)で表される化合物が液晶組成物との溶解性を高める上で好ましく、一般式(V1−1)で表される化合物が特に好ましい。
また、上記一般式(Vb)が三つの環構造で形成される場合も好ましく用いられ、一般式(V1−6)から(V1−13)で表される化合物が液晶組成物との溶解性を高める上で好ましい。更に、液晶とのアンカーリング力が強い一般式(V−1)から(V−6)で表される化合物は、アンカーリング力が弱く液晶組成物との相溶性が良好な一般式(V1−1)から(V1−5)で表される化合物と混合して用いることも好ましい。
【0228】
(式中、q1及びq2は、それぞれ独立して1〜12の整数を示し、R
3は水素原子又はメチル基を表す。)
上記一般式(V)で表される化合物としては、具体的には、以下の一般式(Vc)で表される化合物が、反応速度を高める点で好ましく、又、プレチルト角を熱的に安定化させるので好ましい。更に、必要に応じてSp
1、Sp
2及びSp
3の炭素原子数を調整して所望のプレチルト角を得ることもできる。プレチルトと該炭素原子数の関係は、官能基が2個の場合と同様の傾向を示す。
【0229】
【化136】
(式中、X
1、X
2及びX
3はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、Sp
1、Sp
2及びSp
3はそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜12のアルキレン基又は−O−(CH
2)
s−(式中、sは2〜7の整数を表し、酸素原子は芳香環に結合するものとする。)を表し、Z
11は、−OCH
2−、−CH
2O−、−COO−、−OCO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2CH
2−、−CF
2CF
2−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−OCO−、−COO−CH=CH−、−OCO−CH=CH−、−COO−CH
2CH
2−、−OCO−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2−COO−、−CH
2CH
2−OCO−、−COO−CH
2−、−OCO−CH
2−、−CH
2−COO−、−CH
2−OCO−、−CY
1=CY
2−、−C≡C−又は単結合を表し、Jは1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基又は単結合を表し、式中の全ての1,4−フェニレン基は、任意の水素原子がフッ素原子により置換されていてもよい。)
【0230】
重合性化合物として、光配向機能を有する化合物を用いることも好ましい。中でも、光異性化を示す化合物を用いることが好ましい。
光配向機能を有する重合性化合物としては、具体的には、一般式(Vb)において、
X
1及びX
2がそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、Sp
1及びSp
2がそれぞれ独立して、単結合、炭素原子数1〜8のアルキレン基又は−O−(CH
2)
s−(式中、sは1〜7の整数を表し、酸素原子は芳香環に結合するものとする。)を表し、Z
1が−N=N−を表し、Cが1,4−フェニレン基、トランス−1,4−シクロヘキシレン基(任意の水素原子がフッ素原子により置換されていてもよい。)又は単結合を表す化合物が好ましい。
中でも、以下の一般式(Vn)で表される化合物が好ましい。
【0231】
【化137】
(式中、Rn1及びRn2はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、式中、pn及びqnは、それぞれ独立して1〜12の整数を示す。)
【0232】
[重合開始剤]
本発明に用いる重合性化合物の重合方法としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等を用いることが可能であるが、ラジカル重合により重合することが好ましく、光フリース転位によるラジカル重合、光重合開始剤によるラジカル重合がより好ましい。
【0233】
ラジカル重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤を用いることができるが、光重合開始剤が好ましい。具体的には以下の化合物が好ましい。
ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、4′−フェノキシアセトフェノン、4′−エトキシアセトフェノン等のアセトフェノン系;
【0234】
ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン系;
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系;
ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル系;
ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2,5−ジメチルベンゾフェノン、3,4−ジメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;
2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系;
ミヒラーケトン、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系;
10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が好ましい。この中でも、ベンジルジメチルケタールが最も好ましい。
又、ラジカルの寿命や反応性を考慮して複数の重合開始剤を用いることも好ましい。
【0235】
更に、上述の重合開始剤を使用せずに、光フリース転位によるラジカル重合として紫外線を吸収する共役系の構造を有する重合性液晶化合物を含有させて重合させることもできる。例えば、一般式(X1c−1)から(X1c−4)で表される共役系構造を有する重合性液晶化合物を重合開始剤の代わりに用いることで液晶素子の電圧保持率を低下させないので好ましい。又、重合促進を目的にこれらと重合開始剤と併用することも好ましい。
【0237】
[重合性液晶組成物]
本発明に用いられる重合性液晶組成物は、上記に例示される液晶組成物と、上記に例示される1質量%以上10質量%未満の重合性化合物を含有することが好ましいが、重合性化合物の含有量の下限値は2質量%以上が好ましく、上限値は9質量%未満が好ましく、7質量%未満がより好ましく、5質量%未満がより好ましく、4質量%未満がより好ましい。また、本発明に用いられる重合性液晶組成物は、上記に例示される液晶組成物と、上記に例示される10質量%以上40質量%未満の重合性化合物を含有することも好ましいが、この場合の重合性化合物の含有量の下限値は9質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、上限値は30%質量未満が好ましく、25%質量未満がより好ましく、20%質量未満がより好ましく、15%質量未満がより好ましい。更に、本発明に用いられる重合性液晶組成物は、上記に例示される液晶組成物と、上記に例示される5質量%以上15質量%未満の重合性化合物を含有することが好ましく、7質量%以上12%未満の重合性化合物を含有することがより好ましい。本発明に用いられる重合性液晶組成物は、1質量%以上40質量%未満の重合性化合物を含有することで、一軸性の光学異方性、又は一軸性の屈折率異方性又は配向容易軸方向を有するポリマーネットワークを形成するものであることが好ましく、該ポリマーネットワークの光学軸又は配向容易軸と低分子液晶の配向容易軸が略一致するように形成されていることがより好ましい。
【0238】
尚、該ポリマーネットワークには、複数のポリマーネットワークが集合することにより高分子薄膜を形成したポリマーバインダも含まれる。ポリマーバインダは、一軸配向性を示す屈折率異方性を有しており、該薄膜に低分子液晶が分散され、該薄膜の一軸性の光学軸と低分子液晶の光学軸が略同一方向へ揃っていることが特徴である。従って、これにより、光散乱型液晶である高分子分散型液晶又はポリマーネットワーク型液晶とは異なり光散乱が起こらず偏光を用いた液晶素子に於いて高コントラストな表示が得られる点と、立下り時間を短くして液晶素子の応答性を向上させることが特徴である。更に、本発明に用いられる重合性液晶組成物は、ポリマーネットワーク層を液晶素子全体に形成させるものであり、液晶素子基板上にポリマーの薄膜層を形成させてプレチルトを誘起させるPSA(Polymer Sustained Alignment)型液晶組成物とは異なる。
【0239】
何れの濃度に於いてもTgの異なる重合性化合物を少なくとも二種類以上含有させて必要に応じてTgを調整することが好ましい。Tgが高いポリマーの前駆体である重合性化合物は、架橋密度が高くなる分子構造を有する重合性化合物であって、官能基数が2以上であることが好ましい。又、Tgが低いポリマーの前駆体は、官能基数が1であるか、又は2以上であって、官能基間にスペーサとしてアルキレン基等を有し分子長を長くした構造であることが好ましい。ポリマーネットワークの熱的安定性や耐衝撃性向上に対応することを目的にポリマーネットワークのTgを調整する場合、多官能モノマーと単官能モノマーの比率を適宜調整することが好ましい。又、Tgはポリマーネットワークの主鎖、及び側鎖に於ける分子レベルの熱的な運動性とも関連しており、電気光学特性にも影響を及ぼしている。例えば、架橋密度を高くすると主鎖の分子運動性が下がり低分子液晶とのアンカーリング力が高まり駆動電圧が高くなると共に立下り時間が短くなる。一方、Tgが下がるように架橋密度を下げるとポリマー主鎖の熱運動性が上がることにより、低分子液晶とのアンカーリング力が下がり駆動電圧が下がり立下り時間が長くなる傾向を示す。ポリマーネットワーク界面に於けるアンカーリング力は、上述のTgの他にポリマー側鎖の分子運動性にも影響され、多価分岐アルキレン基、及び多価アルキル基を有する重合性化合物を用いることでポリマー界面のアンカーリング力が下げられる。又、多価分岐アルキレン基、及び多価アルキル基を有する重合性化合物は、プレチルト角を誘起させるのに有効で極角方向のアンカーリング力を下げる方向に作用する。
【0240】
重合性液晶組成物が液晶相を示した状態で、重合性液晶組成物中の重合性化合物を重合させることにより、重合性化合物の分子量が増加して液晶組成物と重合性化合物を相分離させる。二相に分離する形態は、含有する液晶化合物の種類や重合性化合物の種類に大きく依存して異なる。液晶相中に重合性化合物相が無数に島状の核として発生して成長するバイノーダル分解で相分離構造を形成しても良く、液晶相と重合性化合物相との濃度の揺らぎから相分離するスピノーダル分解により相分離構造を形成しても良い。バイノーダル分解によるポリマーネットワークを形成させるには、少なくとも低分子液晶の含有量を85質量%以上にするのが好ましく、重合性化合物の反応速度が速い化合物を用いることにより可視光の波長より小さい大きさの重合性化合物の核を無数に発生させてナノオーダーの相分離構造が形成されるので好ましい。結果として重合性化合物相に於ける重合が進むと相分離構造に依存して可視光の波長より短い空隙間隔のポリマーネットワークが形成され、一方、ポリマーネットワークの空隙は低分子液晶相の相分離によるもので、この空隙の大きさが可視光の波長より小さいと、光散乱性が無く高コントラストで、且つポリマーネットワークからのアンカーリング力の影響が強まり立下り時間が短くなり高速応答の液晶表示素子が得られるようになり特に好ましい。
【0241】
バイノーダル分解に於ける重合性化合物相の核生成は、化合物の種類や組合せによる相溶性の変化や、反応速度、温度等のパラメーターに影響され適宜必要に応じて調整することが好ましい。反応速度は、紫外線重合の場合は、重合性化合物の官能基や光開始剤の種類及び含有量、紫外線露光強度によるもので反応性を促進するように紫外線露光条件を適宜調整すれば良く、少なくとも20mW/cm
2以上の紫外線露光強度が好ましい。低分子液晶が85質量%以上では、スピノーダル分解による相分離構造でポリマーネットワークを形成させることが好ましい、スピノーダル分解では周期性のある二相の濃度の揺らぎによる相分離微細構造が得られるので可視光波長より小さい均一な空隙間隔を容易に形成するので好ましい。ポリマーネットワークで形成させることが好ましい。重合性化合物の割合が15質量%未満ではバイノーダル分解による相分離構造を形成させることが好ましく、15質量%以上ではスピノーダル分解による相分離構造を形成させることが好ましい。重合性化合物含有量が増加すると、温度の影響で低分子液晶相と重合性化合物相との二相分離する相転移温度が存在する。二相分離転移温度より高い温度では等方相を示すが、低いと分離が起こり均一な相分離構造が得られず好ましくない。温度により二相分離する場合は、二相分離温度より高い温度に於いて相分離構造を形成させることが好ましい。上述した何れの場合も、低分子液晶の配向状態と同様の配向状態を保持しながらポリマーネットワークが形成される。形成されたポリマーネットワークは、低分子液晶の配向に倣うように光学異方性を示す。ポリマーネットワーク中の液晶層の形態としては、ポリマーの3次元ネットワーク構造中に液晶組成物が連続層をなす構造、液晶組成物のドロップレットがポリマー中に分散している構造、又は両者が混在する構造、更に、両基板面を起点にポリマーネットワーク層が存在し、対面基板との中心付近では液晶層のみである構造が挙げられる。何れもの構造もポリマーネットワークの作用により0〜90°のプレチルト角が液晶素子基板界面に対して誘起されていることが好ましい。形成するポリマーネットワークは、共存する低分子液晶を液晶セルの配向膜が示す配向方向へ配向させる機能を有することが好ましく、更に、ポリマー界面方向に対して低分子液晶をプレチルトさせる機能を有していることも好ましい。ポリマー界面に対して低分子液晶をプレチルトさせる重合性化合物を導入すると液晶素子の駆動電圧を低くさせるのに有用で好ましい。又、屈折率異方性を有しても良く、配向方向へ液晶を配向させる機能は、メソゲン基を有する重合性化合物を用いることが好ましい。
【0242】
VAモード等の垂直配向セルに対しては垂直配向を誘起するメソゲン基を有しない多価アルキル基、又は多価分岐アルキレン基を有する重合性化合物を用いても良く、メソゲン基を有する重合性化合物との併用でも好ましい。上述の重合性液晶組成物を用いて相分離重合により垂直配向セル内にポリマーネットワークが形成された場合は、繊維状、又は柱状のポリマーネットワークが液晶セル基板に対して低分子液晶の垂直方向と略同一の方向に形成されていることが好ましい。又、セル基板表面にある垂直配向膜に液晶が傾斜配向を誘起するようにラビング処理等を施してプレチルト角を誘起するようにした垂直配向膜が用いられた場合は、プレチルトして配向している低分子液晶と同方向に繊維状、又は柱状のポリマーネットワークが傾斜して形成されていることが好ましい。
更に、電圧を印加しながらプレチルト角を誘起する方法では、重合性液晶組成物の閾値電圧よりも0.9V程度低い電圧から2V程度高い電圧の範囲で電圧を印加しながら重合させると繊維状、又は柱状のポリマーネットワークが所望のプレチルト角、好ましくは0.1〜30°のプレチルト角を誘起するように傾斜して形成されるのでより好ましくなる。何れの方法で形成された繊維状、又は柱状のポリマーネットワークは、二枚のセル基板間を連結していることが特徴である。これにより、プレチルト角の熱的安定性が向上して液晶表示素子の信頼性を高められる。
他に、繊維状、又は柱状のポリマーネットワークを傾斜配向させて形成することにより低分子液晶のプレチルト角を誘起させる方法として、官能基とメソゲン基の間にあるアルキレン基の炭素原子数が6以上のプレチルト角の誘起角度が小さい二官能アクリレートと官能基と、メソゲン基の間にあるアルキレン基の炭素原子数が5以上のプレチルト角の誘起角度が大きい二官能アクリレートを組合せ用いる方法が挙げられる。これらの化合物の配合比を調整することにより所望のプレチルト角を誘起させることができる。
【0243】
更に、可逆性の光配向機能を有する重合性化合物を少なくとも0.01%以上1%以下の範囲で添加して繊維状、又は柱状のポリマーネットワークを形成させる方法が挙げられる。この場合、トランス体に於いて低分子液晶と同様の棒状の形態になり低分子液晶の配向状態へ影響を及ぼす。本発明の重合性液晶組成物に含有されている該トランス体は、紫外線をセル上面から平行光として露光すると紫外線の進む方向と該棒状の分子長軸方向が平行になるように揃い、低分子液晶も同時に該トランス体の分子長軸方向へ揃うように配向する。セルに対して傾斜して紫外線を露光すると、該トランス体の分子長軸が傾斜方向に向き液晶を紫外線の傾斜方向へ配向させるようになる。即ち、プレチルト角を誘起するようになり光配向機能を示す。この段階で重合性化合物を架橋させると誘起したプレチルト角が重合相分離で形成された繊維状、又は柱状のポリマーネットワークにより固定化される。従って、VAモードで重要なプレチルト角の誘起は、電圧印加しながら重合相分離させる方法、誘起するプレチルト角が異なる重合性化合物を複数添加して重合相分離させる方法、可逆性の光配向機能を有する重合性化合物が示す光配向機能を用いて紫外線が進む方向へ低分子液晶及び重合性液晶化合物を配向させ重合相分離する方法を必要に応じて用い本発明の液晶素子を作製することができる。
光配向機能を有する重合性化合物は、紫外線を吸収してトランス体になる光異性化合物であることが好ましく、更に、光配向機能を有する重合性化合物の反応速度が光配向機能を有する重合性化合物以外の重合性化合物の反応速度より遅いことが好ましい。UV露光されると、直ちに光配向機能を有する重合性化合物はトランス体になり光の進む方向に配向すると、周囲の重合性を含む液晶化合物も同様の方向へ配向する。この時、重合相分離が進行して低分子液晶長軸方向とポリマーネットワークの配向容易軸方向が光配向機能を有する重合性化合物の配向容易軸と同一方向へ揃いUV光が進む方向へプレチルト角が誘起される。
【0244】
更に、IPSやFFSモード等の平行配向セルに於いては、重合性液晶組成物を用いて相分離重合により繊維状、又は柱状のポリマーネットワークが液晶セル基板面に有る配向膜の配向方向に対して低分子液晶は平行配向するが、形成された繊維状、又は柱状のポリマーネットワークの屈折率異方性又は配向容易軸方向と低分子液晶の配向方向と略同一の方向に形成されていることが好ましい。更に、繊維状、又は柱状のポリマーネットワークは、低分子液晶が分散している空隙を除いて略セル全体に存在していることがより好ましい。ポリマー界面方向に対して該プレチルト角を誘起させることを目的に、メソゲン基を有しない多価アルキル基、又は多価アルキレン基を有する重合性化合物とメソゲン基を有する重合性化合物を用いることが好ましい。
【0245】
更に、電気光学特性は、ポリマーネットワーク界面の表面積、及びポリマーネットワークの空隙間隔に影響されるが、光散乱を起こさないことが重要で、平均空隙間隔を可視光の波長より小さくすることが好ましい。例えば、該界面の表面積を広げて該空隙間隔を小さくさせるにはモノマー組成物含有量を増加させる方法がある。これにより、重合相分離構造が変化して該空隙間隔が微細になることにより該界面の表面積が増加するようにポリマーネットワークが形成され駆動電圧、及び立ち下がり時間が短くなる。重合相分離構造は、重合温度にも影響される。
本発明に於いては、相分離速度を速くして重合させることで微細な空隙を有する相分離構造が得られるようにすることが好ましい。相分離速度は、低分子液晶と重合性化合物との相溶性や重合速度に大きく影響される。化合物の分子構造や含有量に大きく依存するので適宜組成を調整して使用することが好ましい。該相溶性が高い場合は、該重合速度の高い重合性化合物を用いることが好ましく、紫外線重合の場合は、紫外線強度を高めることが好ましい。又、重合性液晶組成物中の重合性化合物の含有量を増やすことも好ましい。相溶性が低い場合は、相分離速度は十分に速くなるので本発明の液晶素子を作製するのに好ましい。相溶性を低くする方法として、低温で重合させる方法が挙げられる。低温にすると液晶の配向秩序度が上がり、液晶とモノマーの相溶性が下がるため、重合相分離速度を速くすることができる。更に別の方法として、重合性液晶組成物を過冷却状態を示す温度にして重合させる方法も挙げられる。この場合、重合性液晶組成物の融点よりも僅かに低くすれば良いので、数度温度を低くするだけで相分離を速くさせることも可能になり好ましい。これらにより、モノマー組成物含有量数十%を液晶へ添加した場合に相当する重合相分離構造、即ち、立ち下がり時間が短くなるように作用する構造であるポリマーネットワーク界面の表面積が多く該空隙間隔が微細なポリマーネットワーク構造が形成される。従って、本発明の重合性液晶組成物は、立ち下がり時間が短くなるように配向機能、架橋密度、アンカーリング力、空隙間隔、を考慮して重合性液晶組成を適宜調整することが好ましい。
【0246】
本発明の重合性液晶組成物を用いた液晶素子において、高いコントラストの表示を得るには光散乱が起こらないようにする必要があるが、上述した方法を考慮して目的の電圧−透過率特性、及びスイッチング特性を得られるように相分離構造を制御して適切なポリマーネットワーク層構造を形成させることが重要である。ポリマーネットワーク層構造を具体的に説明すると次のようになる。
【0247】
<ポリマーネットワーク層連続構造>
液晶相中に液晶表示素子全面にポリマーネットワーク層が形成され液晶相が連続している構造であって、ポリマーネットワークの配向容易軸や一軸の光学軸が低分子液晶の配向容易軸と略同一方向であることが好ましく、低分子液晶のプレチルト角を誘起するようにポリマーネットワークを形成させることが好ましく、ポリマーネットワークの平均空隙間隔を可視光の波長より小さい大きさで少なくとも450nmより小さくすることにより光散乱は起こらなくなるので好ましい。更に、応答の立下り時間をポリマーネットワークと低分子液晶との相互作用効果(アンカーリング力)により低分子液晶単体の応答時間より短くするには、50nm〜450nmの範囲にする事が好ましい。立下り時間が液晶のセル厚の影響が少なくなりセル厚が厚くても薄厚並の立下り時間を示すようにするには、少なくとも平均空隙間隔が下限は200nm付近で且つ上限は450nm付近の範囲に入るようにすることが好ましい。平均空隙間隔を減少させると駆動電圧の増加が課題になるが、駆動電圧の増加を25V以下に抑制して立ち下がり応答時間を短くするには250nm近傍から450nmの範囲に入るようにすれば良く、立下り応答時間が約5msecから約1msecの範囲に改善ができるので好ましい。又、駆動電圧が5V程度以内の増加に抑制するには、平均空隙間隔が300nm付近から450nmの範囲にすることが好ましい。更に、ポリマーネットワークの平均空隙間隔を制御して立下り応答時間を1msec以下の高速応答にすることも可能である。駆動電圧が30V以上に増加する場合があるが、平均空隙間隔を50nm付近から250nm付近の間にすれば良く、0.5msec以下にするには50nm近傍から200nm付近にすることが好ましい。ポリマーネットワークの平均直径は、平均空隙間隔と相反し、20nmから700nmの範囲にあることが好ましい。重合性化合物の含有量が増えると平均直径は増加する傾向にある。反応性を高くして重合相分離速度を高めるとポリマーネットワークの密度が増加してポリマーネットワークの平均直径が減少するので必要に応じて相分離条件を調整すれば良い。重合性化合物含有量が10%以下の場合は、平均直径が20nmから160nmにあることが好ましく、平均空隙間隔が200nmから450nm範囲に於いては、平均直径が40nmから160nmの範囲であることが好ましい。重合性化合物含有量が10%より大きくなると50nmから700nmの範囲が好ましく、50nmから400nmの範囲がより好ましい。
【0248】
<ポリマーネットワーク層不連続構造>
液晶表示素子全面にポリマーネットワーク層が形成され液晶相が連続している構造に対して、重合性化合物含有量が低くなりセル全体にポリマーネットワーク層が被うのに必要な量が不足するとポリマーネットワーク層が不連続に形成される。ポリイミド配向膜等の基板表面の極性が高いと重合性化合物が液晶セル基板界面付近に集まり易く、基板表面からポリマーネットワークが成長して基板界面に付着するようにポリマーネットワーク層が形成され、セル基板表面からポリマーネットワーク層、液晶層、ポリマーネットワーク層、対向基板の順で積層されるように形成される。ポリマーネットワーク層/液晶層/ポリマーネットワーク層の積層構造を示し、且つセル断面方向に対して少なくともセル厚の0.5%以上、好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上の厚さのポリマーネットワーク層が形成されているとポリマーネットワークと低分子液晶とのアンカーリング力の作用により立下り時間が短くなる効果が発現して好ましい傾向を示す。但し、セル厚の影響が大きくなるのでセル厚を増すと立ち下がり時間が長くなる場合は、ポリマーネットワーク層の厚さを必要の応じて増加させれば良い。ポリマーネットワーク層に於けるポリマーネットワークの構造は、低分子液晶と配向容易軸や一軸の光学軸が略同一の方向へ揃っていれば良く、低分子液晶がプレチルト角を誘起するように形成されていれば良い。平均空隙間隔は90nmから450nmの範囲が好ましい。
【0249】
例えば、重合性化合物含有量が1質量%から6質量%にする場合は、アンカーリング力の高いメソゲン基を有する二官能モノマーを用いることが好ましく、官能基間の距離が短い構造で重合速度が速い二官能モノマーを用いることが好ましく、0℃以下の低温で重合相分離構造を形成させることが好ましい。重合性化合物含有量を6質量%から10質量%未満にする場合は、該二官能モノマーとアンカーリング力が低い単官能モノマーとの組み合わせが好ましく、必要に応じて25℃から−20℃の範囲で重合相分離構造を形成させることが好ましい。更に、該融点が室温以上であれば該融点より5℃程度低くすると低温重合と同様な効果が得られるので好ましい。重合性化合物含有量を10質量%から40質量%にする場合は、ポリマーバインダ、又はポリマーネットワークの影響が低分子液晶の配向や駆動電圧に大きく影響を及ぼし駆動電圧を増大させるので、低分子液晶の配向機能を有し、且つアンカーリング力が比較的弱いメソゲン基を有する重合性化合物を用いることが好ましい。例えば、アンカーリング力が弱くメソゲン基を有する重合性化合物は、官能基とメソゲン基の間にあるアルキレン基の炭素数を増やすことが有効で炭素数が5〜10が好ましい。又、重合性化合物が30質量%を超えるとポリマーバインダ中に液晶滴が分散した状態になることもあり、この場合でも屈折率異方性を有しているポリマーバインダであって基板面の配向膜が示す配向方向とポリマーバインダの光軸方向が揃うことが好ましい。
【0250】
重合性液晶組成物中の重合性化合物の濃度が高いほど、液晶組成物とポリマー界面とのアンカーリング力は大きくなり、τdは高速化する。一方、液晶組成物とポリマー界面とのアンカーリング力は大きくなると、τrは低速化する。τdとτrの和を1.5ms未満とするためには、重合性液晶組成物中の重合性化合物の濃度は、1質量%以上40質量%未満であり、2質量%以上15質量%以下が好ましく、3質量%以上8質量%以下がより好ましい。
TFT駆動液晶表示素子に用いる場合は、フリッカーの抑制、焼付けによる残像等の信頼性を向上させる必要があり電圧保持率が重要な特性になる。電圧保持率を低下させる原因は、重合性液晶組成物内に含有しているイオン性不純物にあると考えられる。特に、可動イオンが電圧保持率に強く影響を及ぼす。そのため、少なくとも比抵抗を10
14Ω・cm以上が得られるように精製処理等を施し可動イオンを取り除くことが好ましい。又、ラジカル重合でポリマーネットワークを形成させると光重合開始剤等から発生するイオン性不純物により電圧保持率が低下する場合があるが、有機酸や低分子の副生成物発生量が少ない重合開始剤を選定することが好ましい。
【0251】
[液晶表示素子]
本発明の液晶表示素子は、液晶組成物中に重合体又は共重合体を含有し、重合体又は共重合体の含有量が液晶組成物及び重合体又は共重合体の合計の質量の1質量%以上40質量%未満である以外は、従来技術による液晶表示素子と同じ構造を有する。即ち、本発明に係る液晶表示素子は、少なくとも一方に電極を有する2枚の透明基板間に液晶層が狭持された構造を有している。そして、本発明の液晶表示素子は、少なくとも一方の透明基板上に液晶組成物を配向させるための配向層を有することが好ましい。基板に設けられたこの配向層と基板に設けられた電極に電圧を印加して、液晶分子の配向が制御される。ポリマーネットワーク又はポリマーバインダが一軸性の屈折率異方性又は配向容易軸方向を有し、ポリマーネットワーク又はポリマーバインダの光軸方向又は配向容易軸方向と低分子液晶の配向容易軸方向が同一方向であることが好ましい。この点で、一軸性の屈折率異方性又は配向容易軸方向を有さない光散乱型のポリマーネットワーク液晶や高分子分散型液晶とは異なる。更に、配向層の配向容易軸方向とポリマーネットワーク又はポリマーバインダの配向容易軸方向が同一であることが好ましい。偏光板、位相差フィルムなどを具備させることにより、この配向状態を利用して表示させる。液晶表示素子としては、TN、STN、ECB、VA、VA−TN、IPS、FFS、πセル、OCB、コレステリック液晶などの動作モードに適用できる。中でも、VA、IPS、FFS、VA−TN、TN、ECBが特に好ましい。尚、本発明の液晶表示素子は、液晶組成物中に重合体又は共重合体を含有する点で、配向膜上に重合体又は共重合体を有するPSA(Polymer Sustained Alignment)型液晶表示素子とは異なる。
【0252】
本発明の液晶表示素子の基板間の距離(d)は、2〜5μmの範囲が好ましく、3.5μm以下が更に好ましい。一般に、液晶組成物の複屈折率とセル厚の積が0.275近傍になるように複屈折率を調整するが、本発明の重合性液晶組成物では重合相分離後にポリマーネットワークが形成されるため、ポリマーネットワークのアンカーリング力作用とポリマーネットワークの光学的な性質により電界印加時の液晶表示素子の複屈折率が低くなるので液晶組成物、及び重合組成物、又は重合性液晶組成物に含まれる液晶組成物の複屈折率(Δn)と基板間の距離(d)の積は、駆動電圧がポリマーネットワーク形成により5V程度以内の増加では0.3〜0.4μmの範囲が特に好ましく、3V程度以内の増加では0.30〜0.35μmの範囲が更に好ましく、駆動電圧が1V以内の増加では0.29〜0.33μmの範囲が特に好ましい。液晶表示素子の基板間の距離(d)及び液晶組成物の複屈折(Δn)と基板間の距離(d)の積をそれぞれ上記範囲内とすることにより、透過率は、低分子液晶のみに匹敵して高く、高速応答で色再現性が好ましい表示を得ることができる。重合性液晶組成物に用いる液晶組成物の複屈折率を、セル厚(d)と複屈折率(Δn)の積が0.275に対して1から1.9倍になるようにすることが好ましい。
【0253】
本発明の液晶表示素子の駆動電圧は、液晶組成物の誘電異方性や弾性定数だけで決まるものではなく、液晶組成物とポリマー界面との間で作用するアンカーリング力に大きく影響される。
例えば高分子分散型液晶表示素子の駆動電圧に関する記述として、特開平6−222320号公報において次式の関係が示されている。
【0255】
(Vthはしきい値電圧を表わし、1Kii及び2Kiiは弾性定数を表わし、iは1、2又は3を表わし、Δεは誘電率異方性を表わし、<r>は透明性高分子物質界面の平均空隙間隔を表わし、Aは液晶組成物に対する透明性高分子物質のアンカーリング力を表わし、dは透明性電極を有する基板間の距離を表わす。)
【0256】
これによると、光散乱型液晶表示素子の駆動電圧は、透明性高分子物質界面の平均空隙間隔、基板間の距離、液晶組成物の弾性定数・誘電率異方性、及び液晶組成物と透明性高分子物質間のアンカーリングエネルギーによって決定される。
このうち本発明の液晶表示素子で制御できるパラメータは、液晶物性とポリマー間のアンカーリング力である。アンカーリング力は、該ポリマーの分子構造、及び低分子液晶の分子構造に大きく依存するため、アンカーリング力が強い重合性化合物を選定すれば応答時間を1.5ms以下に速くすることが可能であるが同時に、駆動電圧が30V以上に増加するので、駆動電圧が30V以下で応答速度が1.5ms以下になるように適宜液晶化合物、及び重合性化合物の選定を行い組成を調整することが好ましい。アンカーリング力の強いポリマー前駆体とアンカーリング力の弱いポリマー前駆体を適宜配合して駆動電圧と応答速度のバランスが取れるように組成を調整することが好ましい。一方、駆動電圧を低くするのに求められる液晶組成物の物性としては、P型液晶では誘電異方性が6以上で、N型液晶では誘電異方性が−3以下にすることが特に好ましい。又、複屈折率を0.09以上にすることが好ましい。更に、液晶組成物の複屈折率と繊維状、又は柱状ポリマーネットワークの屈折率を可能な限り近づけ光散乱を無くすとより好ましくなる。但し、ポリマー前駆体の濃度に液晶素子のリターデーションが影響されるので、適宜、必要なリターデーションが得られるように液晶組成物の複屈折率を増減させて使用することが好ましい。
【0257】
本発明の液晶表示素子は、上述した液晶組成物を−50℃から30℃としながらエネルギー線を照射して、重合性化合物を重合して液晶組成物中に屈折率異方性又は配向容易軸方向を有するポリマーネットワーク形成して得られたものであることが好ましい。重合温度の上限は、30℃であり、20℃〜−10℃好ましい。実施例において後述するように、本発明者は、重合性化合物組成に依存して低温重合、及び常温重合により、τdが更に高速化することを見出した。この理由は、1)低温により液晶分子の配向度が上昇した状態で重合すること、2)低温重合により重合したポリマーと液晶組成物との相溶性が下がることで相分離が容易になり、重合相分離速度が速まりポリマーネットワークの空隙間隔が微細になること、3)比較的アンカーリング力が低い重合性化合物を用いても空隙間隔が微細なため、アンカーリング力の影響力が強くなるような屈折率異方性ポリマーネットワークの形成等によるものと考えられる。
【0258】
更に、本発明の液晶表示素子は、一軸性の屈折率異方性又は配向容易軸方向を持つポリマーネットワーク又はポリマーバインダの光軸方向又は配向容易軸方向が透明基板に対してプレチルト角を成すように形成されたものであることが好ましく、電界の強さを調整して低分子液晶の配向制御行い、基板面に対して傾斜させることにより、上述した液晶層に電圧を印加しながらエネルギー線を照射することで、重合性化合物を高分子化せしめ、液晶組成物中の屈折率異方性又は配向容易軸方向を有する重合体を得てなる構成であることが好ましい。垂直配向のVAモードに於いては、基板法線方向に対してプレチルト角が20度以内になるように電圧を印加して重合させることにより、現行のVAモードセルの用いられているポルトリュージョン等やPSA液晶の微細なポリマー突起に相当する効果があるだけではなく、PSAでは実現できない高速応答を示すので特に好ましい。又、電界方向を複数の方向から印加して高分子化させることによりマルチドメインを形成させることができ、視野角向上が可能でより好ましくなる。更に、基板界面垂直配向膜界面に於いて低分子液晶がプレチルト角を誘起するように光配向処理やラビング配向処理等を該配向膜に施すことで低分子液晶配向の傾く方向が規定されスイッチング時の配向欠陥発生が抑制され好ましく、複数の方向へ傾くように該配向処理を施すとことも好ましい。前記液晶層は、重合性化合物を含有した液晶組成物に対し、適宜−50℃から30℃の温度範囲で交流電界を印加するとともに、紫外線もしくは電子線を照射することで、屈折率異方性を有するポリマーネットワークの光軸方向が基板面に対してプレチルト角を成すように液晶中に形成される。このプレチルト角は低分子液晶の誘電異方性により電界を印加することにより誘起された配向状態で重合相分離させると、重合後のポリマーネットワークの光軸を基板面に対して傾斜させた液晶素子を得ることができ、前記重合性化合物を高分子化せしめた構成であることがより好ましい。
【0259】
本発明の液晶表示素子に使用される2枚の基板はガラス又はプラスチックの如き柔軟性をもつ透明な材料を用いることができる。透明電極層を有する透明基板は、例えば、ガラス板等の透明基板上にインジウムスズオキシド(ITO)をスパッタリングすることにより得ることができる。
【0260】
カラーフィルターは、例えば、顔料分散法、印刷法、電着法又は、染色法等によって作成することができる。顔料分散法によるカラーフィルターの作成方法を一例に説明すると、カラーフィルター用の硬化性着色組成物を、該透明基板上に塗布し、パターニング処理を施し、そして加熱又は光照射により硬化させる。この工程を、赤、緑、青の3色についてそれぞれ行うことで、カラーフィルター用の画素部を作成することができる。その他、該基板上に、TFT、薄膜ダイオード等の能動素子を設けた画素電極を設置してもよい。
【0261】
前記基板を、透明電極層が内側となるように対向させる。その際、スペーサーを介して、基板の間隔を調整してもよい。このときは、得られる調光層の厚さが1〜100μmとなるように調整するのが好ましい。1.5から10μmが更に好ましく、偏光板を使用する場合は、コントラストが最大になるように液晶の屈折率異方性Δnとセル厚dとの積を調整して表示モードにより550nmの1/2、又は1/4になるようにすることが好ましい。又、二枚の偏光板がある場合は、各偏光板の偏光軸を調整して視野角やコントラトが良好になるように調整することもできる。更に、視野角を広げるための位相差フィルムも使用することもできる。スペーサーとしては、例えば、ガラス粒子、プラスチック粒子、アルミナ粒子、フォトレジスト材料などからなる柱状スペーサー等が挙げられる。その後、エポキシ系熱硬化性組成物等のシール剤を、液晶注入口を設けた形で該基板にスクリーン印刷し、該基板同士を貼り合わせ、加熱しシール剤を熱硬化させる。
【0262】
2枚の基板間に重合性液晶組成物を狭持させる方法は、通常の真空注入法又はODF法などを用いることができる。ODF法の液晶表示素子製造工程においては、バックプレーンまたはフロントプレーンのどちらか一方の基板にエポキシ系光熱併用硬化性などのシール剤を、ディスペンサーを用いて閉ループ土手状に描画し、その中に脱気下で所定量の重合性液晶組成物を滴下後、フロントプレーンとバックプレーンを接合することによって液晶表示素子を製造することができる。本発明に用いられる重合性液晶組成物は、ODF工程における液晶・モノマー複合材料の滴下が安定的に行えるため、好適に使用することができる。
【0263】
重合性化合物を重合させる方法としては、液晶の良好な配向性能を得るためには、適度な重合速度が望ましいので、活性エネルギー線である紫外線又は電子線を単一又は併用又は順番に照射することによって重合させる方法が好ましい。紫外線を使用する場合、偏光光源を用いても良いし、非偏光光源を用いても良い。また、重合性液晶組成物を2枚の基板間に挟持させて状態で重合を行う場合には、少なくとも照射面側の基板は活性エネルギー線に対して適当な透明性が与えられていなければならない。また、重合性化合物を含有した液晶組成物に対し、
重合性液晶組成物を−50℃から20℃の温度範囲で交流電界を印加するとともに、紫外線もしくは電子線を照射することが好ましい。印加する交流電界は、周波数10Hzから10kHzの交流が好ましく、周波数100Hzから5kHzがより好ましく、電圧は液晶表示素子の所望のプレチルト角に依存して選ばれる。つまり、印加する電圧により液晶表示素子のプレチルト角を制御することができる。横電界型MVAモードの液晶表示素子においては、配向安定性及びコントラストの観点からプレチルト角を80度から89.9度に制御することが好ましい。
【0264】
照射時の温度は、重合性液晶組成物が−50℃から30℃の温度範囲であることが好ましい。紫外線を発生させるランプとしては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等を用いることができる。また、照射する紫外線の波長としては、液晶組成物の吸収波長域でない波長領域の紫外線を照射することが好ましく、必要に応じて、365nm未満の紫外線をカットして使用することが好ましい。照射する紫外線の強度は、0.1mW/cm
2〜100W/cm
2が好ましく、2mW/cm
2〜50W/cm
2がより好ましい。照射する紫外線のエネルギー量は、適宜調整することができるが、10mJ/cm
2から500J/cm
2が好ましく、100mJ/cm
2から200J/cm
2がより好ましい。紫外線を照射する際に、強度を変化させても良い。紫外線を照射する時間は照射する紫外線強度により適宜選択されるが、10秒から3600秒が好ましく、10秒から600秒がより好ましい。
【0265】
(横電界型)
まず、本発明の一実施形態の液晶表示素子について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の液晶表示素子の一例を示す概略断面図である。本発明の一実施形態の液晶表示素子10は、配向層4が表面に形成された第一の基板2と、前記第一の基板から離間して設けられ、かつ光配向層が表面に形成された第二の基板7と、前記第一の基板2および第二の基板7間に充填され、かつ前記一対の配向層と当接する液晶層5と、を備え、前記配向層4(4a,4b)と前記第一の基板2との間にアクティブ素子として薄膜トランジスタ、共通電極22および画素電極を備えた電極層3を有している。
【0266】
図1は、液晶表示素子の構成を模式的に示す図である。
図1では、説明のために便宜上各構成要素を離間して記載している。本発明の一実施形態の液晶表示素子10の構成は、
図1に記載するように、対向に配置された第一の透明絶縁基板2と、第二の透明絶縁基板7との間に挟持された重合性液晶組成物(または液晶層5)を有する横電界方式(図では一例としてIPSの一形態としてのFFSモード)の液晶表示素子である。第一の透明絶縁基板2は、液晶層5側の面に電極層3が形成されている。また、液晶層5と、第一の透明絶縁基板2及び第二の透明絶縁基板7のそれぞれの間に、液晶層5を構成する重合性液晶組成物と直接当接してホモジニアス配向を誘起する一対の配向膜4(4a,4b)を有し、該重合性液晶組成物中の液晶分子は、電圧無印加時に前記基板2,7に対して略平行になるように配向されている。
図1および
図3に示すように、前記第二の基板7および前記第一の基板2は、一対の偏光板1,8により挟持されてもよい。さらに、
図1では、前記第二の基板7と配向膜4との間にカラーフィルター6が設けられている。なお、本発明に係る液晶表示素子の形態としては、いわゆるカラーフィルターオンアレイ(COA)であってもよく、薄膜トランジスタを含む電極層と液晶層との間にカラーフィルターを設けても、または当該薄膜トランジスタを含む電極層と第二の基板との間にカラーフィルターを設けてもよい。
すなわち、本発明の一実施形態の液晶表示素子10は、第一の偏光板1と、第一の基板2と、薄膜トランジスタを含む電極層3と、配向膜4と、重合性液晶組成物を含む液晶層5と、配向膜4と、カラーフィルター6と、第二の基板7と、第二の偏光板8と、が順次積層された構成である。
第一の基板2と第二の基板7はガラス又はプラスチックの如き柔軟性をもつ透明な材料を用いることができ、一方はシリコン等の不透明な材料でも良い。2枚の基板2、7は、周辺領域に配置されたエポキシ系熱硬化性組成物等のシール材及び封止材によって貼り合わされていて、その間には基板間距離を保持するために、例えば、ガラス粒子、プラスチック粒子、アルミナ粒子等の粒状スペーサーまたはフォトリソグラフィ法により形成された樹脂からなるスペーサー柱が配置されていてもよい。
【0267】
図2は、
図1における基板2上に形成された電極層3のII線で囲まれた領域を拡大した平面図である。
図3は、
図2におけるIII−III線方向に
図1に示す液晶表示素子を切断した断面図である。
図2に示すように、第一の基板2の表面に形成されている薄膜トランジスタを含む電極層3は、走査信号を供給するための複数のゲート配線24と表示信号を供給するための複数のデータ配線25とが、互いに交差してマトリクス状に配置されている。なお、
図2には、一対のゲート配線24及び一対のデータ配線25のみが示されている。
複数のゲート配線24と複数のデータ配線25とにより囲まれた領域により、液晶表示装置の単位画素が形成され、該単位画素内には、画素電極21及び共通電極22が形成されている。ゲート配線24とデータ配線25が互いに交差している交差部近傍には、ソース電極27、ドレイン電極26およびゲート電極28を含む薄膜トランジスタが設けられている。この薄膜トランジスタは、画素電極21に表示信号を供給するスイッチ素子として、画素電極21と連結している。また、ゲート配線24と並行して、共通ライン(図示せず)が設けられる。この共通ラインは、共通電極22に共通信号を供給するために、共通電極22と連結している。
【0268】
薄膜トランジスタの構造の好適な一態様は、例えば、
図3で示すように、基板2表面に形成されたゲート電極11と、当該ゲート電極11を覆い、且つ前記基板2の略全面を覆うように設けられたゲート絶縁層12と、前記ゲート電極11と対向するよう前記ゲート絶縁層12の表面に形成された半導体層13と、前記半導体層13の表面の一部を覆うように設けられた保護層14と、前記保護層14および前記半導体層13の一方の側端部を覆い、かつ前記基板2表面に形成された前記ゲート絶縁層12と接触するように設けられたドレイン電極16と、前記保護層14および前記半導体層13の他方の側端部を覆い、かつ前記基板2表面に形成された前記ゲート絶縁層12と接触するように設けられたソース電極17と、前記ドレイン電極16および前記ソース電極17を覆うように設けられた絶縁保護層18と、を有している。ゲート電極11の表面にゲート電極との段差を無くす等の理由により陽極酸化被膜(図示せず)を形成してもよい。
【0269】
前記半導体層13には、アモルファスシリコン、多結晶ポリシリコンなどを用いることができるが、ZnO、IGZO(In−Ga−Zn−O)、ITO等の透明半導体膜を用いると、光吸収に起因する光キャリアの弊害を抑制でき、素子の開口率を増大する観点からも好ましい。
さらに、ショットキー障壁の幅や高さを低減する目的で半導体層13とドレイン電極16またはソース電極17との間にオーミック接触層15を設けても良い。オーミック接触層には、n型アモルファスシリコンやn型多結晶ポリシリコン等のリン等の不純物を高濃度に添加した材料を用いることができる。
【0270】
ゲート配線26やデータ配線25、共通ライン29は金属膜であることが好ましく、Al、Cu、Au、Ag、Cr、Ta、Ti、Mo、W、Ni又はその合金がより好ましく、Al又はその合金の配線を用いる場合が特に好ましい。また、絶縁保護層18は、絶縁機能を有する層であり、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、ケイ素酸窒化膜等で形成される。
【0271】
図2及び
図3に示す実施の形態では、共通電極22はゲート絶縁層12上のほぼ全面に形成された平板状の電極であり、一方、画素電極21は共通電極22を覆う絶縁保護層18上に形成された櫛形の電極である。すなわち、共通電極22は画素電極21よりも第一の基板2に近い位置に配置され、これらの電極は絶縁保護層18を介して互いに重なりあって配置される。画素電極21と共通電極22は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IZTO(Indium Zinc Tin Oxide)等の透明導電性材料により形成される。画素電極21と共通電極22が透明導電性材料により形成されるため、単位画素面積で開口される面積が大きくなり、開口率及び透過率が増加する。
【0272】
また、画素電極21と共通電極22とは、これらの電極間にフリンジ電界を形成するために、画素電極21と共通電極22との間の電極間距離(最小離間距離とも称する):Rが、第一の基板2と第二の基板7との距離:Gより小さくなるように形成される。ここで、電極間距離:Rは各電極間の基板に水平方向の距離を表す。
図3では、平板状の共通電極22と櫛形の画素電極21とが重なり合っているため、電極間距離:R=0となる例が示されており、最小離間距離:Rが第一の基板2と第二の基板7との距離(すなわち、セルギャップ):Gよりも小さくなるため、フリンジの電界Eが形成される。したがって、FFS型の液晶表示素子は、画素電極21の櫛形を形成するラインに対して垂直な方向に形成される水平方向の電界と、放物線状の電界を利用することができる。画素電極21の櫛状部分の電極幅:l、及び、画素電極21の櫛状部分の間隙の幅:mは、発生する電界により液晶層5内の液晶分子が全て駆動され得る程度の幅に形成することが好ましい。また、画素電極と共通電極との最小離間距離Rは、ゲート絶縁層12の(平均)膜厚として調整することができる。また、本発明に係る液晶表示素子は、
図3とは異なり、画素電極21と共通電極22との間の電極間距離(最小離間距離とも称する):Rが、第一の基板2と第二の基板7との距離:Gより大きくなるように形成されてもよい(IPS方式)。この場合、例えば、櫛状の画素電極および櫛状の共通電極が略同一面内に交互になるよう設けられる構成など挙げられる。
【0273】
本発明に係る液晶表示素子の好ましい一形態は、フリンジ電界を利用するFFS方式の液晶表示素子であることが好ましく、共通電極22と画素電極21との隣接する最短離間距離dが、配向膜4同士(基板間距離)の最短離間距離Dより短いと、共通電極と画素電極との間にフリンジ電界が形成され、液晶分子の水平方向および垂直方向の配向を効率的に利用することができる。本発明のFFS方式液晶表示素子の場合、長軸方向が、配向層の配向方向と平行になるように配置している液晶分子に電圧を印加すると、画素電極21と共通電極22との間に放物線形の電界の等電位線が画素電極21と共通電極22の上部にまで形成され、液晶層5内の液晶分子の長軸が形成された電界に沿って配列する。したがって、低い誘電異方性でも液晶分子が駆動することができる。
【0274】
本発明に係るカラーフィルター6は、光の漏れを防止する観点で、薄膜トランジスタおよびストレイジキャパシタ23に対応する部分にブラックマトリックス(図示せず)を形成することが好ましい。また、カラーフィルター6は、通常R(赤)G(緑)B(青)の3つフィルター画素から映像や画像の1ドットからなり、例えば、これら3つのフィルターはゲート配線の延びる方向に並んでいる。当該カラーフィルター6は、例えば、顔料分散法、印刷法、電着法又は、染色法等によって作製することができる。顔料分散法によるカラーフィルターの作製方法を一例に説明すると、カラーフィルター用の硬化性着色組成物を、該透明基板上に塗布し、パターニング処理を施し、そして加熱又は光照射により硬化させる。この工程を、赤、緑、青の3色についてそれぞれ行うことで、カラーフィルター用の画素部を作製することができる。その他、該基板上に、TFT、薄膜ダイオード等の能動素子を設けた画素電極を設置したいわゆるカラーフィルターオンアレイでもよい。
電極層3及びカラーフィルター6上には、液晶層5を構成する重合性液晶組成物と直接当接してホモジニアス配向を誘起する一対の配向膜4が設けられている。
また、偏光板1及び偏光板8は、各偏光板の偏光軸を調整して視野角やコントラストが良好になるように調整することができ、それらの透過軸がノーマリブラックモードで作動するように、互いに直行する透過軸を有することが好ましい。特に、偏光板1及び偏光板8のうちいずれかは、液晶分子の配向方向と平行な透過軸を有するように配置することが好ましい。また、コントラストが最大になるように液晶の屈折率異方性Δnとセル厚dとの積を調整することが好ましい。更に、視野角を広げるための位相差フィルムも使用することもできる。
また、他の液晶表示素子の実施形態として、IPS方式の場合は、近接する共通電極と画素電極との最短離間距離dが液晶配向膜間の最短離間距離Gより長い条件であり、例えば、共通電極と画素電極とが同一基板上に形成され、かつ当該共通電極と当該画素電極とが交互に配置されている場合であって、近接する共通電極と画素電極との最短離間距離dが液晶配向膜間の最短離間距離Gより長い構造などが挙げられる。
【0275】
本発明に係る液晶表示素子の製造方法において、電極層を有する基板および/または基板表面に被膜を形成した後、当該被膜が内側となるように一対の基板を離間して対向させた後、液晶組成物を基板間に充填することが好ましい。その際、スペーサーを介して、基板の間隔を調整することが好ましい。
前記基板間の距離(得られる液晶層の平均厚さであり、被膜間の離間距離とも称する。)は、1〜100μmとなるように調整するのが好ましい。前記被膜間の平均離間距離は、1.5〜10μmが更に好ましい。
本発明において、基板間の距離を調整するために使用するスペーサーとしては、例えば、ガラス粒子、プラスチック粒子、アルミナ粒子、フォトレジスト材料などからなる柱状スペーサー等が挙げられる。
図1〜
図3を用いて説明したFFS型の液晶表示素子は一例であって、本発明の技術的思想から逸脱しない限りにおいて、他の様々な形態で実施することが可能である。
【0276】
本発明に係る液晶表示素子の他の実施形態を
図4および
図5を用いて以下説明する。例えば、
図4は、
図1における基板2上に形成された電極層3のII線で囲まれた領域を拡大した平面図の他の実施形態である。
図4に示すように、画素電極21がスリットを有する構成としてもよい。また、スリットのパターンを、ゲート配線24又はデータ配線25に対して傾斜角を持つようにして形成してもよい。
当該
図4に示す画素電極21は、略長方形の平板体の電極を略矩形枠状の切欠き部でくり抜かれた形状である。また、当該画素電極21の背面には絶縁保護層18(図示せず)を介して櫛歯状の共通電極22が一面に形成されている。そして、隣接する共通電極と画素電極との最短離間距離Rは配向層同士の最短離間距離Gより短い場合はFFS方式になり、長い場合はIPS方式になる。また、前記画素電極の表面には保護絶縁膜及び配向膜層によって被覆されていることが好ましい。なお、上記と同様に、前記複数のゲート配線24と複数のデータ配線25とに囲まれた領域にはデータ配線25を介して供給される表示信号を保存するストレイジキャパシタ23を設けてもよい。なお、切欠き部の形状は特に制限されるものではなく、
図4で示す略矩形だけでなく、楕円、円形、長方形状、菱形、三角形、または平行四辺形など公知の形状の切欠き部を使用できる。また、隣接する共通電極と画素電極との最短離間距離Rが配向層同士の最短離間距離Gより長い場合はIPS方式の表示素子になる。
【0277】
図5は、
図3とは別の実施形態であり、
図2におけるIII−III線方向に
図1に示す液晶表示素子を切断した断面図の他の例である。配向層4および薄膜トランジスタ20を含む電極層3が表面に形成された第一の基板2と、配向層4が表面に形成された第二の基板8とが所定の間隔Dで配向層同士向かい合うよう離間しており、この空間に液晶組成物を含む液晶層5が充填されている。第一の基板2の表面の一部にゲート絶縁層12、共通電極22、絶縁保護層18、画素電極21および配向層4の順で積層されている。また、
図4にも示すように、画素電極21は、平板体の中央部および両端部が三角形状の切欠き部でくり抜かれ、さらに残る領域を長方形状の切欠き部でくり抜かれた形状であり、かつ共通電極22は前記画素電極21の略楕円形状の切欠き部と略平行に櫛歯状の共通電極が前記画素電極より第一の基板側に配置されてなる構造である。
図5に示す例では、櫛形あるいはスリットを有する共通電極22を用いており、画素電極21と共通電極22との電極間距離はR=αとなる(なお、
図5では便宜上電極間距離の水平成分をRとして記載している)。さらに、
図3では共通電極22がゲート絶縁層12上に形成されている例が示されていたが、
図5に示されるように、共通電極22を第一の基板2上に形成して、ゲート絶縁層12を介して画素電極21を設けるようにしてもよい。画素電極21の電極幅:l、共通電極22の電極幅:n、及び、電極間距離:Rは、発生する電界により液晶層5内の液晶分子が全て駆動され得る程度の幅に適宜調整することが好ましい。隣接する共通電極と画素電極との最短離間距離Rは配向層同士の最短離間距離Gより短い場合はFFS方式になり、長い場合はIPS方式になる。さらに、
図5では画素電極21と共通電極22の厚み方向の位置が異なるが、両電極の厚み方向における位置を同一にしてもまたは共通電極が液晶層5側に設けてもよい。
【0278】
(垂直電界型)
本発明の好ましい他の実施形態は、液晶組成物を用いた垂直電界型の液晶表示素子である。
図6は、垂直電界型の液晶表示素子の構成を模式的に示す図である。また、
図7では、説明のために便宜上各構成要素を離間して記載している。
図7は、当該
図6における基板上に形成された薄膜トランジスタを含む電極層300(または薄膜トランジスタ層300とも称する。)のVII線で囲まれた領域を拡大した平面図である。
図8は、
図7におけるVIII−VIII線方向に
図6に示す液晶表示素子を切断した断面図である。以下、
図6〜9を参照して、本発明に係る垂直電界型の液晶表示素子を説明する。
本発明に係る液晶表示素子1000の構成は、
図6に記載するように透明導電性材料からなる透明電極(層)600(または共通電極600とも称する。)を具備した第二の基板800と、透明導電性材料からなる画素電極および各画素に具備した前記画素電極を制御する薄膜トランジスタを形成した薄膜トランジスタ層300を含む第一の基板200と、前記第一の基板200と第二の基板800との間に挟持された重合性液晶組成物(または液晶層500)を有し、該重合性液晶組成物に係る中の液晶分子の電圧無印加時の配向が前記基板200,800に対して略垂直である液晶表示素子である。また
図6および
図8に示すように、前記第二の基板800および前記第一の基板200は、一対の偏光板100,900により挟持されてもよい。さらに、
図6では、前記第一の基板200と共通電極600との間にカラーフィルター700が設けられている。またさらに、本発明に係る液晶層500と隣接し、かつ当該液晶層500を構成する重合性液晶組成物と直接接するよう一対の配向膜400が透明電極(層)600,1400表面に形成されている。
すなわち、本発明に係る液晶表示素子1000は、第一の偏光板100と、第一の基板200と、薄膜トランジスタを含む電極層(又は薄膜トランジスタ層とも称する)300と、光配向膜400と、液晶組成物を含む層500と、配向膜400と、共通電極600と、カラーフィルター700と、第二の基板800と、第二の偏光板900と、が順次積層された構成である。尚、配向膜400は光配向膜であることが好ましい。
【0279】
図9は、本発明におけるVAモード液晶表示装置の一態様を表す断面模式図であり、配向膜を配向処理(マスクラビングあるいは光配向)を用いて製造された液晶セルの、液晶層内に形成されたポリマーネットワーク構造及び液晶分子配列構造を示している。液晶セルの透明電極の内側(液晶層側)には、ガラス基板の法線方向から僅かに傾いた(0.1〜5.0 °)垂直配向膜が形成されており、垂直配向膜及び液晶分子は、上下基板間で略90°の捩じれ構造を有している。
垂直配向膜の配向規制力を受け重合性モノマーが垂直方向に配列し、UV光照射によって重合性モノマーを重合・固定化させてポリマーネットワークを形成する。このようにして形成されたポリマーネットワークは、(V1)上下基板にまたがってポリマーネットワークを形成、(V2)上(下)基板から液晶方向に向かってポリマーネットワークを形成するも途中までのもの、(V3)配向膜の表面近傍のみポリマーネットワークを形成。(主に単官能モノマーの場合)、(V4)液晶層内でポリマーネットワーク同士が結合(Floatingはしていない)の、およそ4種類の構造を有するものと推定される。
この様にして形成された異方性を有するポリマーポリマネットワークは、液晶層とはほぼ完全に分離しており、これら高分子ネットワークの間に液晶分子は配向配列しているものと考えられる。液晶分子と高分子ネットワークが混在し、電圧無印加時に光散乱を起こす所謂ポリマーネットワーク型液晶の分子配列構造とは明らかに異なり、またPSA等で用いられる配向膜近傍に偏在する配向維持層のそれとも全く異なる構造を有するものである。
例示として、配向膜を用いた方法によるポリマーネットワークと液晶分子配列構造を示したが、リブやスリット等の構造物を有する所謂MVA方式においても、基板界面近傍のポリマーネットワークや液晶分子のプレティルトが、構造物やスリットを介して印加される斜め電界強度などによってやや異なるだけであり、本質的には、上図のような構造を有するものと推定される。
この様なポリマーネットワークと液晶分子による液晶分子配列を有するVA型液晶表示装置では、電圧無印加時の液晶分子に対するアンカーリング力が、液晶配向膜とポリマーネットワークの持つアンカーリング力の相乗作用により、より強く作用する事となって、結果的に電圧OFF時の応答速度を速くすることが可能となる。
【0280】
(横・斜め電界型)
配向膜に対してマスクラビングやマスク露光等の煩雑な工程を行なわず、電極構造を工夫するだけの簡便な手法で液晶表示領域を配向分割できる新たな表示技術として、斜め電界と横電界を液晶層に作用させる方法が提案されている。
図10は、上記技術を用いたTFT液晶表示素子の一画素PXにおける最小の単位構成体を概略的に示す平面図である。以下に、横・斜め電界モード液晶表示装置の構造及び動作について、簡単に説明する。
画素電極PEは、主画素電極PA及び副画素電極PBを有している。これらの主画素電極PA及び副画素電極PBは、互いに電気的に接続されており、これらの主画素電極PA及び副画素電極PBがともにアレイ基板ARに備えられている。主画素電極PAは、第2方向Yに沿って延出しており、副画素電極PBは、第2方向Yとは異なる第1方向Xに沿って延出している。図示した例では、画素電極PEは、略十字状に形成されている。副画素電極PBは、主画素電極PAの略中央部に結合し、主画素電極PAからその両側、即ち画素PXの左側及び右側に向かって延出している。これらの主画素電極PA及び副画素電極PBは、互いに略直交している。画素電極PEは、画素電極PBにおいて図示を省略したスイッチング素子と電気的に接続されている。
【0281】
共通電極CEは、主共通電極CA及び副共通電極CBを有しており、これらの主共通電極CA及び副共通電極CBは、互いに電気的に接続されている。共通電極CEは、画素電極PEとは電気的に絶縁されている。共通電極CEにおいて、主共通電極CA及び副共通電極CBの少なくとも一部は、対向基板CTに備えられている。主共通電極CAは、第2方向Yに沿って延出している。この主共通電極CAは、主画素電極PAを挟んだ両側に配置されている。このとき、X−Y平面内において、主共通電極CAのいずれも主画素電極PAとは重ならず、主共通電極CAのそれぞれと主画素電極PAとの間には略等しい間隔が形成されている。つまり、主画素電極PAは、隣接する主共通電極CAの略中間に位置している。副共通電極CBは、第1方向Xに沿って延出している。副共通電極CBは、副画素電極PBを挟んだ両側に配置されている。このとき、X−Y平面内において、副共通電極CBのいずれも副画素電極PBとは重ならず、副共通電極CBのそれぞれと副画素電極PBとの間には略等しい間隔が形成されている。つまり、副画素電極PBは、隣接する副共通電極CBの略中間に位置している。
図示した例では、主共通電極CAは、第2方向Yに沿って直線的に延出した帯状に形成されている。副共通電極CBは、第1方向Xに沿って直線的に延出した帯状に形成されている。なお、主共通電極CAは第1方向Xに沿って間隔をおいて2本平行に並んでおり、以下では、これらを区別するために、図中の左側の主共通電極をCALと称し、図中の右側の主共通電極をCARと称する。また、副共通電極CBは第2方向Yに沿って間隔をおいて2本平行に並んでおり、以下では、これらを区別するために、図中の上側の主共通電極をCBUと称し、図中の下側の主共通電極をCBBと称する。主共通電極CAL及び主共通電極CARは、副共通電極CBU及び副共通電極CBBと同電位である。図示した例では、主共通電極CAL及び主共通電極CARは、副共通電極CBU及び副共通電極CBBとそれぞれ繋がっている。
主共通電極CAL及び主共通電極CARは、それぞれ当該画素PXと左右に隣接する画素間に配置されている。すなわち、主共通電極CALは図示した当該画素PXとその左側の画素(図示せず)との境界に跨って配置され、主共通電極CARは図示した当該画素PXとその右側の画素(図示せず)との境界に跨って配置されている。副共通電極CBU及び主共通電極CBBは、それぞれ当該画素PXと上下に隣接する画素間に配置されている。すなわち、副共通電極CBUは図示した当該画素PXとその上側の画素(図示せず)との境界に跨って配置され、副共通電極CBBは図示した当該画素PXとその下側の画素(図示せず)との境界に跨って配置されている。
【0282】
図示した例では、一画素PXにおいて、画素電極PEと共通電極CEとで区画された4つの領域が主として表示に寄与する開口部あるいは透過部として形成される。この例では、液晶分子LMの初期配向方向は、第2方向Yと略平行な方向である。第1配向膜AL1は、アレイ基板ARの対向基板CTと対向する面に配置され、アクティブエリアACTの略全体に亘って延在している。この第1配向膜AL1は、画素電極PEを覆っており、第2層間絶縁膜13の上にも配置されている。このような第1配向膜AL1は、水平配向性を示す材料によって形成されている。なお、アレイ基板ARは、さらに、共通電極の一部として第1主共通電極及び第1副共通電極を備えている場合もある。
図11は、8分割斜め電界モード液晶セルの電極構造の模式図である。この様に1画素を8つに分割することで更なる広視野角化を実現できる。
次に、上記構成の液晶表示パネルの動作について説明する。液晶層に電圧が印加されていない状態、つまり画素電極PEと共通電極CEとの間に電界が形成されていない無電界時(OFF時)には、
図10において破線で示したように液晶層LQの液晶分子LMは、その長軸が第1配向膜AL1の第1配向処理方向PD1及び第2配向膜AL2の第2配向処理方向PD2を向くように配向している。このようなOFF時が初期配向状態に相当し、OFF時の液晶分子LMの配向方向が初期配向方向に相当する。厳密には、液晶分子LMは、X−Y平面に平行に配向しているとは限らず、プレティルトしている場合が多い。このため、液晶分子LMの厳密な初期配向方向とは、OFF時の液晶分子LMの配向方向をX−Y平面に正射影した方向である。
【0283】
第1配向処理方向PD1及び第2配向処理方向PD2は、ともに第2方向Yと略平行な方向である。OFF時においては、液晶分子LMは、
図10に破線で示したように、その長軸が第2方向Yと略平行な方向を向くように初期配向する。つまり、液晶分子LMの初期配向方向は、第2方向Yと平行(あるいは、第2方向Yに対して0°)である。
図示した例のように、第1配向処理方向PD1及び第2配向処理方向PD2が平行且つ同じ向きである場合、液晶層LQの断面において液晶分子LMは、液晶層LQの中間部付近で略水平(プレティルト角が略ゼロ)に配向し、ここを境界として第1配向膜AL1の近傍及び第2配向膜AL2の近傍において対称となるようなプレティルト角を持って配向する(スプレイ配向)。このように液晶分子LMがスプレイ配向している状態では、基板の法線方向から傾いた方向においても第1配向膜AL1の近傍の液晶分子LMと第2配向膜AL2の近傍の液晶分子LMとにより光学的に補償される。したがって、第1配向処理方向PD1及び第2配向処理方向PD2が互いに平行、且つ、同じ向きである場合には、黒表示の場合に光漏れが少なく、高コントラスト比を実現することができ、表示品位を向上することが可能となる。なお、第1配向処理方向PD1及び第2配向処理方向PD2が互いに平行且つ逆向きである場合、液晶層LQの断面において、液晶分子LMは、第1配向膜AL1の近傍、第2配向膜AL2の近傍、及び、液晶層LQの中間部において略均一なプレチルト角を持って配向する(ホモジニアス配向)。バックライト4からのバックライト光の一部は、第1偏光板PL1を透過し、液晶表示パネルLPNに入射する。液晶表示パネルLPNに入射した光は、第1偏光板PL1の第1偏光軸AX1と直交する直線偏光である。このような直線偏光の偏光状態は、OFF時の液晶表示パネルLPNを通過した際にほとんど変化しない。このため、液晶表示パネルLPNを透過した直線偏光は、第1偏光板PL1に対してクロスニコルの位置関係にある第2偏光板PL2によって吸収される(黒表示)。
【0284】
一方、液晶層LQに電圧が印加された状態、つまり、画素電極PEと共通電極CEとの間に電位差が形成された状態(ON時)では、画素電極PEと共通電極CEとの間に基板と略平行な横電界(あるいは斜め電界)が形成される。液晶分子LMは、電界の影響を受け、その長軸が図中の実線で示したようにX−Y平面と略平行な平面内で回転する。
図10に示した例では、画素電極PEと主共通電極CALとの間の領域のうち、下側半分の領域内の液晶分子LMは、第2方向Yに対して時計回りに回転し図中の左下を向くように配向し、また、上側半分の領域内の液晶分子LMは、第2方向Yに対して反時計回りに回転し図中の左上を向くように配向する。画素電極PEと主共通電極CARとの間の領域のうち、下側半分の領域内の液晶分子LMは、第2方向Yに対して反時計回りに回転し図中の右下を向くように配向し、上側半分の領域内の液晶分子LMは、第2方向Yに対して時計回りに回転し図中の右上を向くように配向する。このように、各画素PXにおいて、画素電極PEと共通電極CEとの間に電界が形成された状態では、液晶分子LMの配向方向は、画素電極PEと重なる位置を境界として複数の方向に分かれ、それぞれの配向方向でドメインを形成する。つまり、一画素PXには複数ドメインが形成される。
このようなON時には、第1偏光板PL1の第1偏光軸AX1と直交する直線偏光は、液晶表示パネルLPNに入射し、その偏光状態は、液晶層LQを通過する際に液晶分子LMの配向状態に応じて変化する。このようなON時においては、液晶層LQを通過した少なくとも一部の光は、第2偏光板PL2を透過する(白表示)。このような構造によれば、一画素内に4つのドメインを形成することが可能となるため、4方向での視野角を光学的に補償することができ、広視野角化が可能となる。したがって、階調反転がなく、高い透過率の表示を実現することができ、表示品位の良好な液晶表示装置を提供することが可能となる。また、一画素内において、画素電極PEと共通電極CEとで区画される4つの領域それぞれについて開口部の面積を略同一に設定することにより、各領域の透過率が略同等となり、それぞれの開口部を透過した光が互いに光学的に補償し合い、広い視野角範囲に亘って均一な表示を実現することが可能となる。
【実施例】
【0285】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
【0286】
[実施例1]
P型液晶組成物として下記(LCP−1)で示される組成物(Δn0.103、粘性η20mPa・s、Vth 1.72Vrms)を調製した。重合性化合物として下記式(V1−1−1)で示される化合物を用いた。
P型液晶組成物(LCP−1)97%、重合性化合物(V1−1−1)2.94%、重合光開始剤Irgacure651が0.06%になるよう重合性液晶組成物(LCM−1)を調製した。固形の重合性化合物(V1−1−1)を60℃に加熱して液晶(LCP−1)に溶解させた後、室温で重合性化合物(V1−1−1)が均一に溶解してネマチック液晶相を示していることを偏光顕微鏡で確認した。
液晶の一軸配向(ホモジニアス配向)が得られるように、セルギャップ3μmのポリイミド配向膜を塗布したITO付きパラレルラビング配向のセルを用いた。重合性液晶組成物(LCM−1)を真空注入法によりガラスセル内に注入した。
【0287】
注入後ガラスセルを取り出し、注入口を封口剤3026E(スリーボンド社製)で封止した。紫外線カットフィルターL−37(ホーヤ カンデオ オプトロニクス社製)を介した照射強度が15mW/cm
2の紫外線を、25℃で300秒間照射した。これにより重合性液晶組成物中の重合性化合物を重合させて、ECBモードの液晶表示素子を得た。直交する二枚の偏光板の間に作製したセルをラビング処理方向と偏光軸方向が一致するように置くと暗視野になり一軸配向が得られていることを確認した。
60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定したところ、駆動電圧V90は、14.6Vrmsであった。
【0288】
【化139】
【0289】
【化140】
【0290】
次いで、ECBモードにおける応答時間を調べた。結果、τdがLCP−1では5msであったのが2.7msへと、τdの高速化が確認された。一方、重合性液晶組成物中の重合性化合物の濃度が上昇するにつれ、同一駆動電圧におけるτrが若干遅くなる傾向は見られたがτr+τdの全体の応答は速くなることを確認した。
セル作製に用いた重合性液晶組成物を20℃で1週間放置して重合性化合物による結晶化が無いことを確認した。
【0291】
[実施例2]
P型液晶組成物(LCP−1;Δn0.103、粘性η20mPa・s)95%、重合性化合物(V1−1−1)5%及び重合光開始剤Irgacure651を重合性化合物(V1−1−1)に対して2%含有する重合性液晶組成物(LCM−2)を調製した。
液晶の一軸配向(ホモジニアス配向)が得られるように、セルギャップ3.5μmのポリイミド配向膜を塗布したITO付きパラレルラビング配向のセルを用いた。重合性液晶組成物(LCM−1)を60℃に加熱してLCP−1に溶解させて、真空注入法によりガラスセル内に注入した。
注入後ガラスセルを取り出し、注入口を封口剤3026E(スリーボンド社製)で封止した。紫外線カットフィルターL−37(ホーヤ カンデオ オプトロニクス社製)を介した照射強度が15mW/cm
2の紫外線を、25℃又は−10℃で300秒間照射した。これにより重合性液晶組成物中の重合性化合物を重合させて、ECBモードの液晶表示素子を得た。
25℃又は−10℃で重合させて得られた液晶表示素子に、60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性を測定したところ25℃での重合では、駆動電圧V90が17.0Vrms、−10℃での重合では、駆動電圧V90が27Vrmsになり低温重合により駆動電圧が増加することが確認された。
【0292】
次いで、ECBモードにおける応答時間を調べた。25℃での重合では、τdが1.4ms、−10℃での重合では、τdが0.7msになり低温重合によりτdの高速化が確認された。一方、同一駆動電圧におけるτrにおいては、25℃での重合では、τrが1.1ms、−10℃での重合では、τdが0.9msになり、−10℃で重合させて得られた液晶表示素子の応答速度は、25℃で重合させた場合と比較して高速化していることが確認された。
【0293】
[実施例3]
N型液晶組成物として下記(LCN−1)で示される組成物(Δn0.102、粘性η16.8、Δε−3.8)を調製した。重合性化合物として式(V1−1−1)で示される化合物を用いた。
N型液晶組成物として(LCN−1;Δn0.102、粘性η16.8、Δε−3.8)98%、重合性化合物(V1−1−1)1.96%、及び重合光開始剤Irgacure651を重合性化合物(V1−1−1)に対して0.04%含有する重合性液晶組成物(LCM−3)を調製した。
液晶の垂直配向(ホメオトロピック配向)が得られるように、セルギャップ3μmのポリイミド配向膜を塗布した後、基板面法線方向に対してプレチルト角が1°〜2°になるようにラビング配向処理を施しITO付きパラレルラビング配向のセルを用いた。固形の重合性化合物(V1−1−1)を60℃に加熱して液晶(LCN−1)に溶解させた後、室温で重合性化合物(V1−1−1)が均一に溶解してネマチック液晶相を示していることを偏光顕微鏡で確認した。重合性液晶組成物(LCM−3)を60℃に加熱して、真空注入法によりガラスセル内に注入した。
注入後ガラスセルを取り出し、注入口を封口剤3026E(スリーボンド社製)で封止した。紫外線カットフィルターL−37(ホーヤ カンデオ オプトロニクス社製)を介した照射強度が15mW/cm
2の紫外線を、25℃で300秒間照射した。これにより重合性液晶組成物の重合性化合物を重合させて、VAモードの液晶表示素子を得た。直交する二枚の偏光板の間に作製したセルを置くと黒くなりセルを方位角方向へ回転しても暗視野が変化せず、ポリマーネットワークの光軸方向と液晶配向容易軸方向が同一方向であることを確認した。
【0294】
60Hzの矩形波を印加して電圧―透過率特性及び応答時間を測定した。結果、駆動電圧V90が11.3Vrmsでτdが2.3ms、τrが1.2msで、N型液晶組成物LCN−1のみを用いたセル応答時間(τd:5.3ms、τr:7.1ms、駆動電圧V90:7.9Vrms)に比べて高速化が確認された。又、周波数60Hz間隔でゲートをON状態にしてセルに電圧1Vを16.6ミリ秒間印加して、ゲートOFF後に、セルが保持された電圧を測定して電圧保持率を求めた。25℃の電圧保持率は、99.7%、70℃の電圧保持率は95.4%であった。
セル作製に用いた重合性液晶組成物を20℃で1週間放置して重合性化合物による結晶化が無いことを確認した。
【0295】
【化141】
【0296】
[実施例4〜11、比較例1〜3]
N型液晶組成物として(LCN−1)、及び(LCN−2)を用い、重合性化合物として(V1−1−1)〜(V1−1−5)で示される化合物を用い、下記表1に示すように添加し、重合光開始剤Irgacure651を各重合性化合物に対して2%になるように添加して、重合性液晶組成物を調整した。実施例3と同様の方法でVAモードの液晶セルを作製した。
これにより重合性液晶組成物の重合性化合物を重合させてセル内全体に相分離構造を形成させて、VAモードの液晶表示素子を得た。
セル作製に用いた重合性液晶組成物を20℃で1週間放置して重合性化合物による結晶化が無いことを確認した。
【0297】
作製したセルのVAモードに60Hzの矩形波を印加して、電圧−透過率特性及び応答時間を測定した。各特性を表1に示す。表1の比較例1は、液晶組成物(LCN−1)100%の場合の駆動電圧V90、立下り時間、立上り時間を示す。比較例2は、液晶組成物(LCN−2)100%の場合の駆動電圧V90、立下り時間、立上り時間を示す。比較例3は、(V1−1−2)を0.5%の少量添加した場合を示す。この場合、立上がり時間は比較例1及び比較例2の液晶組成物100%の場合に比べ長くなり応答時間の改善が見られないが、実施例4の重合性化合物(V1−1−2)を1%にすると立下り時間及び立上り時間ともに短くなり応答性が向上する。更に、(V1−1−1)又は(V1−1−2)の添加量を増やすと、立下り時間、及び立上り時間が短くなり応答性が大幅に向上する。又、(V1−1−3)、(V1−1−4)、(V1−1−5)との組合せに於いても立下り時間、及び立上り時間が短くなり応答性が大幅に向上することを確認した。
【0298】
【化142】
【0299】
【化143】
【0300】
【表1】
【0301】
偏光顕微鏡を用いて直交する二枚の偏光板の間に、作製したセルを置くと暗視野になりセルを方位角方向へ回転しても暗視野の黒レベルが変化していないことから、液晶分子、及びポリマーネットワークを構成しているメソゲン基がホメオトロピック配向であり、ポリマーネットワーク光軸方向と液晶配向容易軸方向がセル面に直行するように形成されていることを確認した。ポリマーネットワーク光軸方向と液晶配向容易軸を一致させるように形成されたポリマーネットワークのアンカーリング力は、立ち下がり時間が短くなるように作用することが確認された。更に、ポリマーネットワークのアンカーリング力の効果により駆動電圧の増加が伴うが、同時に電界効果で立ち上がり時間も短くなり応答性が向上した。立ち下がり時間は、液晶の回転粘性、及び弾性定数に大きく影響されているが、光学異方性を持つポリマーネットワークを液晶中に形成させるとポリマーネットワークからのアンカーリング力で立下り時間が向上し、応答性が良好なディスプレイの表示材料に有用になる。
【0302】
[実施例12]
ITO電極が形成された一対のガラス基板の液晶と接する側に、シプレイ(株)製のレジストLC−200により高さ1.5μm、幅10μmの土手(突起)を間隙37.5μmとなるよう交互に設け、セルギャップ3.5μmのMVAモード液晶パネルを作成した。液晶の垂直配向(ホメオトロピック配向)が得られるように、ポリイミド配向膜を塗布後、焼成して垂直配向膜を形成した。駆動モードは上下ガラス基板の外側に配置されている偏光子がクロスニコルであるノーマリーブラックモードである。
N型液晶組成物として上記(LCN−1)を用い、重合性化合物として式(V1−1−1)で示される化合物をそれぞれ1%刻みで1〜5%添加し、重合性液晶組成物を調整した。重合性液晶組成物を60℃に加熱して、真空注入法によりガラスセル内に注入後、液晶セルを取り出し、注入口を封口剤3026E(スリーボンド社製)で封止した。次に、液晶層に閾値電圧以下(1V)の64Hzの交流矩形波電圧を印加した状態で、紫外線カットフィルターL−37(ホーヤ カンデオ オプトロニクス社製)を介して照射紫外(UV)強度が20mW/cm
2の紫外線を60秒間、25℃で60秒間照射し、光重合性モノマーを重合させて、ポリマーネットワーク型のMVA構造を有する液晶パネルを作製した。作製したパネルに60Hzの矩形波を印加して、電圧−透過率特性、及び応答時間を測定した。
【0303】
立ち下がり時間τd、立ち上がり時間τrは、V90を与える60Hzの矩形波電圧を印加して測定した。式(V1−1−1)で表される化合物を1%〜3%迄の間で少量添加すると立下り時間が短くなり応答性が向上した。ポリマーネットワーク光軸方向と液晶配向容易軸を一致させるように形成されたポリマーネットワークのアンカーリング力の効果で立ち下がり時間が短くなることが確認された。更に、駆動電圧の増加に伴い立ち上がり時間も短くなり応答性が向上した。立下がり時間は、液晶の回転粘性、及び弾性定数に大きく影響されているが、光学異方性を持つポリマーネットワークを液晶中に形成させるとポリマーネットワークからのアンカーリング力で立下り時間が向上し、応答性が良好なディスプレイの表示材料に有用になる。
【0304】
この様にして作成したポリマーネットワーク型のMVA構造を有する液晶パネルを、二枚の偏光子が直交する偏光顕微鏡間に置くと黒表示が観測され、セルを方位角方向へ回転しても黒が変化せず、ポリマーネットワーク光軸方向と液晶配向容易軸方向が同一方向であることを確認した。
この液晶パネルに、閾値電圧以上の電圧を印加しながら上記と同様にクロスニコル間で偏光顕微鏡によって観察すると、配向分割されていると思われる配向の境界領域にディスクリネーションラインが4本出現している事が観察された。ディスクリネーションラインは、液晶分子配列の乱れによって生じることから、この事により1画素が4分割されている事を確認することができた。
光軸方向と液晶配向容易軸方向がセル面に直行するように形成されていることを確認した。ポリマーネットワーク光軸方向と液晶配向容易軸を一致させるように形成されたポリマーネットワークのアンカーリング力の効果で立下がり時間が短くなることが確認された。更に、駆動電圧の増加に伴い立上がり時間も短くなり応答性が向上した。一方の基板に、リブ構造を儲け、対向基板側にITOのスリット構造を設けたセルにおいても同様の評価を行ったが、表示特性に大きな差は観測されなかった。
【0305】
[実施例13]
4−カルコン基を有する光配向膜塗布溶液を第1基板及び第2基板に対して、スピンキャスト法により塗布した後、180℃で60分間焼成して配向膜を形成した。続いて、
図12示す配向方位に沿って、配向膜に対し入射角40度で波長365nmのP偏光を3mW/cm
2の強度で400秒照射することで、光照射による配向処理を実施した。
プレティルト角を測定したところ、第1配向膜近傍及び第2配向膜近傍における液晶分子のプレチルト角は88.5°であった。配向膜の構成分子は、高分子鎖の側鎖に4−カルコン光官能基(感光性基)を有するが、この光配向処理により、光官能基が二量化反応により二量体を形成し、架橋構造が形成された。なお、本実施例においては、第1基板の各画素内を2つの配向処理領域に分け、互いに反対方向から光照射を行った。また、第2基板の各画素内も同様に、2つの配向処理領域に分け、互いに反対方向から光照射を行った。そして、シール形成、スペーサ散布等を行った後、基板貼り合わせ工程において、第1基板と第2基板とを配向処理方向が直交するように貼り合わせた。これにより、各画素内に液晶分子のツイスト方向の異なる4つのドメイン領域を形成させた。
【0306】
N型液晶組成物(LCN−1)に、上記式(V1−1−1)で表される化合物を1%、2%、3%、10%、及び20%添加し、重合性液晶組成物を調整した。次いで、重合性液晶組成物を液晶パネルに注入・封止後、UV光照射を行い、光配向処理によるVATN型のポリマーネットワーク液晶表示パネルを作製した。セルギャップは3.5μmであった。得られた液晶パネルの電圧−透過率特性及び応答速度を測定した。いずれも立下り時間が高速化してた。重合性モノマーの添加量が1%から2%未満の領域では、モノマーの添加量が増加するに従って立下がり時間が高速化する反面、立上がり時間がV90電圧(飽和電圧)の上昇の影響を受け、やや遅くなってしまう傾向にあったが、2%以上の添加量になると、液晶分子配列構造がきちんと揃う為、立上がり応答速度も高速化した。更に添加量を増して10%になると、ポリマーネットワークの配向規制力の影響が顕著に現れ、立下がり時間は0.6msと、重合性モノマー無添加時の4.2msの約1/7のとなり、極めて高速な立下がり応答時間が得られた。立上がり時間に関しても、駆動電圧が高くなっている影響も有るが、0.9msと、重合性モノマー無添加時よりも4倍以上の高速化が達成できており、立上がり時間と立下がり時間の合計(τr+τd)も1.5msと、重合性モノマー無添加時の12.4msと高速応答化している事が確認できた。
【0307】
直交する二枚の偏光板の間に作製したセルを置くと黒表示が観測され、セルを方位角方向へ回転しても黒が変化せず、ポリマーネットワーク光軸方向と液晶配向容易軸方向が同一方向であることを確認した。この液晶パネルに、閾値電圧以上の電圧を印加しながら上記と同様にクロスニコル間に1枚、λ/4波長版を挿入して回転させると、濃・淡・濃・淡と1回転中に濃淡の状態が順に4回出現する事を観測し、1画素が綺麗に4分割されている事を確認した。
【0308】
[実施例14]
上下基板のITO透明電極に互い違いにスリット構造を有するPVA電極構造を有するVA型液晶セルを作製した。スリットの間隔と電極幅は、それぞれ5μmの電極構造とした。これらの基板上に、印刷法を用いて垂直配向膜( ポリイミド材料)を形成し、180℃で60分の熱処理を行った。この2枚のガラス基板を径3.5μmのスペーサを介して貼り合わせ、空セルを作製した。N型液晶組成物として上記式(LCN−1)を用い、重合性化合物として式(V1−1−1)で表される化合物を2%及び10%を添加してそれぞれ重合性液晶組成物を調整し、同様にしてポリマーネットワーク構造を有するPVA液晶パネルを作製した。得られた液晶パネルの電圧−透過率特性及び応答時間を測定した。いずれも立下り時間が高速化した。また、重合性モノマーを10%添加した場合は、駆動電圧の上昇が見られたが、立下がり速度のみならず、立上がり速度も高速化し、τr+τd=1.3msという極めて高速な応答速度が確認された。直交する二枚の偏光板の間に作製したパネルを置くと黒表示が観測され、パネルを方位角方向へ回転しても黒が変化せず、ポリマーネットワーク光軸方向と液晶配向容易軸方向が同一方向であることを確認した。この液晶パネルに、閾値電圧以上の電圧を印加しながら上記と同様にクロスニコル間で偏光顕微鏡によって観察をすると、配向分割されていると思われる配向の境界領域にディスクリネーションラインが4本出現している事が観察された。ディスクリネーションラインは、液晶分子配列の乱れ(境界)によって生じることから、この事により1画素が4分割されている事を確認することができた。
【0309】
[実施例15]
図13に記載のフィッシュボーン型電極構造を有するテストセルを作製した。
図13において、所定のセルギャップで対向して貼り合わされた2枚のガラス基板間に液晶層が封止されている。対向する2枚の基板の対向面にはそれぞれITOからなる透明電極が形成されている。0.7mmの厚さのガラス基板を用い、対向基板には、共通電極を形成した。透明電極には電極材料(ITO)の一部を抜いたスリット部512cが設けられている。長方形のセルの各対向辺の中点を結ぶ十字状で幅5μmのスリット部512cが配向規制用構造物として機能し、スリット部512cから斜め45°方向に延びて幅5μmのスリット部512cがピッチ8μmで複数形成されており、これらが傾斜時の方位角方向の乱れを抑える補助的な配向制御因子として機能する。表示用画素電極の幅は3μmである。画素幹部電極512aと画素枝部電極512bは45度の角度を有しながら、画素中央を対称中心として90度づつ異なる4方向に枝部電極が延在された構造を有している。これらの基板上に、印刷法を用いて垂直配向膜( ポリイミド材料) を形成し、180℃で60分の熱処理を行った。この2枚のガラス基板を径3.5μmのスペーサを介して貼り合わせ、液晶が未注入の状態の空セルを作製した。
【0310】
N型液晶組成物として上記式(LCN−1)を用い、式(V1−1−2)で示される化合物を20%添加して重合性液晶組成物を調整し、ポリマーネットワーク構造を有するフィッシュボーン型VA液晶パネルを作製した。また、重合性モノマーを添加していない式(LCN−1)を注入したフィッシュボーン型VA液晶パネルの電圧−透過率特性及び応答速度を測定した。立下り時間、立上がり時間ともに短く、τr+τd=1.1msと極めて高速な応答性を有する液晶表示装置を得ることができた。直交する二枚の偏光板の間に作製したセルを置くと黒表示が観測され、セルを方位角方向へ回転しても黒が変化せず、ポリマーネットワーク光軸方向と液晶配向容易軸方向が同一方向であることを確認した。
この液晶パネルに、閾値電圧以上の電圧を印加しながら上記と同様にクロスニコル間で偏光顕微鏡によって観察をすると、配向分割されていると思われる配向の境界領域にディスクリネーションラインが4本出現している事が観察された。ディスクリネーションラインは、液晶分子配列の乱れによって生じることから、1画素に4つのドメインに配向分割されている事を確認することができた。
【0311】
[実施例16]
図14に示す横・斜め電界モード動作が可能なテスト用の液晶セルを作製して、各種電気光学特製を評価した。
厚さ0.7mmのITO透明電極層がスパッタ法によって形成された透明ガラス基板を用い、フォトエッチング法によって電極幅が10μmの窓枠状の透明電極基板を作製した。下側第1ガラス基板と上側第2ガラス基板の窓枠状のITO電極の形成されたガラス基板に、ポリイミド配向膜を塗布・焼成した後、ラビング配向処理を行った。
第1ガラス基板のラビング方向は図の下から上に向かって行い、対向配置される第2ガラス基板側も同方向(図の下から上)にラビングを行いパラレル配向とした。この様な配向処理法により、液晶分子はスプレー配向状態を取る。次いで、下側第1ガラス基板の黒格子部のITO透明電極と、上側第2ガラス基板側の斜線格子部のITO透明電極が、丁度半ピッチずれて25μmピッチとなる様に対向配置させ、3.5μmの球状スペーサを介して熱硬化性接着剤を用いて張り合わせた。
この様な電極の組み合わせによって、黒格子の電極は斜線部の電極の中央部を十文字に4分割するような主素電極、副画素電極、斜線部はそれぞれ主画素電極、副画素電極に対応する主共通電極、副共通電極として機能することになり、15μm×15μmの表示領域を有する4つの表示領域に分割されることとなる。
【0312】
上記式(LCP−1)で示されるP型液晶組成物(Δn=0.103、粘性η=20mPa・s、Δε=7.5)98重量%に、式(V1−1−1)で表される化合物を2.0重量%添加し、更に、重合光開始剤Irgacure651を式(V1−1−1)で表される化合物に対して2.0重量%添加し、60℃に加熱して液晶組成物に溶解させ、重合性液晶組成物を調整した。得られた重合性液晶組成物を真空注入法によって液晶セル内に注入した。液晶を注入した後、液晶セルを取り出し、注入口を封口剤3026E(スリーボンド社製)で封止した。紫外線カットフィルターL−37(ホーヤ カンデオ オプトロニクス社製)を介した照射強度が15mW/cm
2の紫外線を、25℃で300秒間照射し、重合性液晶組成物中の重合性化合物を重合させて、斜め電界モードの液晶表示素子を得た。また、式(V1−1−1)で表される化合物の添加量を3.0重量%にした以外は同様にして斜め電界モードの液晶表示素子を得た。得られた液晶セルを、電圧無印加の状態でクロスニコル状態の偏光顕微鏡のステージ上にラビング処理方向と偏光軸方向が一致する方向に置くと、暗視野(ノーマリーブラック)になり、一軸配向性が得られていることを確認した。光重合性モノマーの添加量が増えると閾値電圧、飽和電圧とも上昇するが、特に飽和電圧の上昇幅が大きくなり、電圧−透過率特性の立ち上がりは緩やかになった。光重合性モノマーを3%加えた液晶セルの飽和電圧は無添加時の3.29Vから5.47Vへと、2V以上高電圧側にシフトしてしまうことが確認された。
【0313】
しかしながら、実際には、例えば液晶TVの場合の最大駆動電圧は15V近辺であり、液晶表示素子の飽和電圧がこれ以下であれば特に問題となる事は無い。重合性モノマーの添加量の増加とともに、Tr,Tdとも高速応答となった。このことから、動きの激しいアニメ等の動画やアクションムービー、スポーツ番組に適した高速応答表示が得られたと考えられる。液晶表示素子の飽和電圧が15V以下であれば、重合性官能基の添加量が少々多くとも、高速動画表示という点で、大きなメリットを享受できることになる。立上がりの応答速度はτrは、光重合性モノマーの添加量が増加すると僅かに遅くなる傾向が見られるが、表示特性上何ら問題のないレベルであると考えられる。一方、立下がり速度τdは、光重合性モノマーの添加量が多くなるに従って高速応答化しており、無添加時は5〜6msであったものが、2重量%添加で3〜4msへ、3重量%添加したものでは、2〜3msへと、およそ1/2の時間に短縮されており、光照射によって初期配向膜と略同方向に形成されたポリマーネットワークのアンカリング力の作用によって高速応答化されていることが確認された。
【0314】
得られた液晶セルを電圧無印加の状態で、クロスニコル状態の偏処理方向と偏光軸方向が一致する方向に置いてノーマリーブラックとなるのを確認した後、飽和電圧を印加して液晶セルを観測した。偏光顕微鏡にX−Yステージを設置して、4つに配向分割されたそれぞれの表示領域を観察したが、光学的には等価であり全く区別がつかなかった。閾値と飽和電圧の中間的な電圧を印加しても、全く光学的には等価な状態であった。次いで4つの表示領域中の1つの領域を選択し、上記の中間的な電圧を印加しながら偏光顕微鏡のステージを回転させて最も暗くなる位置を探して、その角度を固定した。その様な状態で、X−YステージをX方向、Y方向に移動させながら、他の3つの異なる領域を観察した。初めに設定した領域と180度異なる領域は、ほぼ同じような暗さの状態であることが観測され、初めに設定した領域と90度異なる領域では、グレー状態になっていることが観測された。これにより、少なくとも固定した領域と90度、あるいは270度異なる領域とでは、液晶分子の配列方向が異なっていることが確認でき、配向分割がきちんと行われていることを確認する事ができた。又、本実施例で用いた液晶セルはパラレル配向処理を施したものであり、液晶分子はスプレー配向状態となっている。その為、電圧印加によって液晶層中央の分子は液晶基板に略平行配向し、斜め電界によって回転を受けながら中央部を境に上下方向に広がった液晶分子配列をとる為、丁度ダブルSTNパネルの様に完全に位相差が補償され、視野角依存性が解消されることが確認できた。
【0315】
本実施例においては、誘電異方性が正の液晶組成物を用いて、
図14に示す液晶セルでその動作及び電気光学特性を評価・確認したが、実際のTFT液晶表示パネルの場合は、TFT基板側に1層の絶縁膜を介して画素電極と、共通電極の一部又は全部が形成され、対向基板側に、共通電極の一部又は全部が形成される様になり、斜め電界効果と横電界効果が同時に液晶分子に作用するために、負の誘電異方性を有する液晶組成物を用いても本実施例と同様の効果が得られる事になる。その場合の配向処理方向としては、アンチパラレル配向、パラレル配向の何れでも良い。
又、本実施例においては、配向処理方法としてラビング法を用いているが、TFT基板側の電極構造や配線構造は極めて複雑で段差が多いことから、ラビング法によって配向膜全面を均一に一様な表面配向性を得ることが難しく、ラビングによって発生するゴミ・ケバ、及びラビング時の帯電によるTFTの破壊などが発生する等から、光配向処理法が特に好ましい。光配向処理法としては、254nm近傍のUV光による光分解型のポリイミドを用いたり、313nm近傍の光による桂皮酸やクマリン等の光官能基を有する光2量化を起こすポリマーによる光配向処理、又は365nm近傍の光による光異性化を起こすアゾ系の光配向ポリマーを用いることなどが好ましい。
以上述べてきた様に、どの様な構造を有する横電界方式(IPSモード、FFSモード)の液晶表示装置においても、ニ官能モノマーを、正又は負の誘電異方性を有する液晶組成物に添加してUV光を照射することによりナノ相分離反応を誘引させて、液晶配向膜による初期配向による平行配向方向と略同方向にポリマーネットワークが形成され、そのポリマーネットワークのアンカリング力と初期垂直配向のアンカリング力の相乗作用により、横電界方式液晶表示装置の応答速度、特に液晶の立下り時の応答速度が高速応答化されることを確認する事ができた。
【0316】
[実施例17]
図15は、本発明の効果を確認する為に用いたIPSモード評価用テストセルの電極構造を示す平面図及び液晶の分子配列を示す模式平面図である。厚さ0.7mmのガラス基板上にITOを成膜した後、エッチングによって中央部で左右反対方向に対称にくの字型をした幅10μmの短冊状の電極を、10μmの間隔をあけて基板の上下方向から形成した。共通電極と画素電極は同一基板平面上に形成されており、共通電極部分は白抜き、画素電極部分は斜線で示す。共通電極と画素電極は、それぞれ互い違いになるように配置された櫛歯電極構造をとっており、櫛歯電極は紙面の上下方向に対して、それぞれ左右方向に15度の傾きを有しており、第1象限から第4象限の4つの領域に配向分割された櫛歯電極構造を有しており、これを第1基板とした(L/s=10μmm/10μm)。
上記第1基板と、3.5μmの球状スペーサーを介して対向配置されるガラス厚0.7mmの透明電極の無い第2基板上(図示されない)に、ポリイミド配向膜を塗布・焼成した後、ラビング配向処理を行った。第1基板のラビング方向は図の下から上に向かって行い、対向配置される第2基板側は、逆方向(図の上から下)にラビングを行いアンチパラレル配向とした。2つの櫛歯電極群とラビング配向方向となす角度は15°とした。偏光子と検光子は、クロスニコル状態でテストセルの外側に配置されており、偏光子の透過軸若しくは偏光軸は液晶分子の初期配向方向と平行又は直角に配置されている。この結果、このテストセルでは、電圧無印加時はノーマリブラックの状態を得た。
【0317】
図15に示すような電極構造を有する第1基板及び電極のない第2基板に、ポリイミド溶液を塗布・焼成後にラビング処理を行い、3.5μmの球状シリカスペーサを用いて対向配置させて張り合わせ、アンチパラレル配向によるIPSモード用のテストセルを作成した。尚、ラビング方向は、紙面の左右方向(水平方向)とした。上記式(LCN−1)で示される液晶組成物98.0重量%に式(V1−1−1)で表される化合物2.0重量%を混合したものを60℃に加熱して液晶組物に溶解させた後、真空注入法によって液晶セル内に注入した。尚、重合光開始剤Irgacure651が重合性化合物(V1−1−1)に対して2.0重量%含有されている。
液晶を注入した後、注入口を封口剤3026E(スリーボンド社製)で封止した。紫外線カットフィルターL−37(ホーヤ カンデオ オプトロニクス社製)を介した照射強度が15mW/cm
2の紫外線を、25℃で300秒間照射し、重合性液晶組成物中の重合性化合物を重合させて、FFSモードの液晶表示素子を得た。電圧無印加の状態でクロスニコル状態の偏光顕微鏡のステージ上にラビング処理方向と偏光軸方向が一致する方向に置くと、暗視野(ノーマリーブラック)になり、一軸配向性が得られていることを確認した。
τrに関しては、式(LCN−1)で示される液晶組成物が100重量%では29.5msであったものが、式(V1−1−1)で表される化合物2.0重量%を添加して重合させると15.6msの応答時間となり、応答速度が改善された。τdに関しても同様に、高速応答化されており、式(LCN−1)で示される液晶組成物が100重量%では17.1msであったものが、式(V1−1−1)で表される化合物2.0重量%を添加して重合させると12.3msとなり高速応答化されている事が確認できた。そのほかの駆動電圧領域、即ち中間調表示時においても、τr、τdは高速応答性を示すことが確認できた。
【0318】
液晶セルを電圧無印加の状態で、クロスニコル状態の偏光板の間に配向処理方向と偏光軸方向が一致する方向に置いてノーマリーブラックとなるのを確認した後、飽和電圧を印加して液晶セルを観測した。偏光顕微鏡にX−Yステージを設置して、4つに配向分割されたそれぞれの表示領域を観察したが、光学的には等価であり全く区別がつかなかった。閾値と飽和電圧の中間的な電圧を印加しても、全く光学的には等価な状態であった。次いで4つの表示領域中の1つの領域を選択し、上記の中間的な電圧を印加しながら偏光顕微鏡のステージを回転させて最も暗くなる位置を探して、その角度を固定した。その様な状態で、X−YステージをX方向、Y方向に移動させながら、他の3つの異なる領域を観察した。はじめに設定した領域と180度異なる領域は、ほぼ同じような暗さの状態にあることが観測され、それとは90度異なる領域では、グレー状態になっていることが観測された。これにより、少なくとも最初に固定した領域と90度、あるいは270度異なる領域とでは、液晶分子の配列方向が異なっていることが確認でき、配向分割がきちんと行われていることを確認する事ができた。
【0319】
[実施例18]
図16に示すような電極構造を有する第1基板及び電極のない第2基板に、ポリイミド溶液を塗布・焼成後にラビング処理を行い、3.5μmの球状シリカスペーサを用いて対向配置させて張り合わせ、アンチパラレル配向によるFFSモード用のテストセルを作成した(L/s=10μm/30μm)。
図16は、くの字型の画素電極を有するFFSモード用テストセルの電極構造を示す平面図である。0.7mmのガラス基板上にITOの平面電極を配置し、その上にSiN等の透明絶縁層を設け、その上にITO透明電極層をスパッタ成膜し、エッチングによって画素電極を形成した。画素電極は、20μm間隔で10μmの幅を有した短冊型の形状をして形成し、絶縁膜の下層部に形成された平面電極を共通電極とし、これを第1基板とした。上記第1基板と、3.5μmの球状スペーサーを介して対向配置されるガラス厚0.7mmの第2基板上(図示されない)に、ポリイミド配向膜を塗布・焼成した後、ラビング配向処理を行った。第1基板のラビング方向は図の下から上に向かって行い、対向配置される第2基板側は、逆方向(図の上から下)にラビングを行いアンチパラレル配向とした。2つの櫛歯電極群とラビング配向方向となす角度は15°とした。
この場合も
図15を用いて説明した場合と全く同様に、液晶表示領域は第1象限から第4象限までの4つの領域に配向分割され、それぞれ異なった回転方向を有する液晶分子配列をとることがわかる。更には、IPSモード時ではIPSの画素電極と共通電極上の液晶分子には電圧が印加されず、開口率が低くなっていたが、FFSモードでは共通電極部領域の液晶分子にも電圧が印加されて液晶分子が回転運動を起こすために、液晶パネルの開口率は、30%程度向上することになる。
【0320】
上記式(LCP−1)で示されるP型液晶組成物を98重量%に式(V1−1−1)で表される化合物2.0重量%を混合し、60℃に加熱して液晶組物に溶解させた後、真空注入法によって液晶セル内に注入した。尚、重合光開始剤Irgacure651が式(V1−1−1)で表される化合物に対して2.0%含有されている。液晶を注入した後、注入口を封口剤3026E(スリーボンド社製)で封止した。紫外線カットフィルターL−37(ホーヤ カンデオ オプトロニクス社製)を介した照射強度が15mW/cm
2の紫外線を、25℃で300秒間照射し、重合性液晶組成物中の重合性化合物を重合させて、FFSモードの液晶表示素子を作製した。クロスニコル状態の偏光板の間に作製した液晶セルをラビング処理方向と偏光軸方向が一致する方向に置くと暗視野(ノーマリーブラック)になり、一軸配向性が得られていることを確認した。得られた液晶セルを用いて、それぞれ電圧-応答特性を測定した。(LCP−1)で示されるP型液晶組成物100重量%の閾値電圧は2.5V、飽和電圧は4.5Vであった。飽和電圧を印加した場合の光透過率は70%であった。一方、式(V1−1−1)で表される化合物2.0重量%を重合させると閾値電圧は、ほぼ同様の2.5Vであったが飽和電圧は7.1Vと、約3V飽和電圧が上昇した。光重合によるポリマーネットワーク構造形成の有無に係らず、閾値電圧はほぼ同じ値を示した。この一因として、閾値近傍の電圧駆動領域における低分子液晶の回転角度がそれほど大きくないため、ポリマーネットワーク構造による回転運動に対する障害やアンカリング力による影響を受けにくいということが考えられる。又、使用したP型液晶組成物の誘電異方性が7.5と大きく、表示モードもFFSであることから、共通電極と画素電極の間隔がIPSモードよりも狭まっており横電界が効率的に印加されていることが考えられる。但し、一般的には光重合性モノマーの添加量の増加に伴い、閾値電圧も高くなる傾向にあることが確認されている。
【0321】
一方、高電圧印加時においては、液晶分子の回転角度が大きくなり、ポリマーネットワーク構造やアンカリング力によって回転運動が妨げられる結果飽和電圧は上昇し、その上昇幅は閾値電圧のそれに比べて大きくなってしまうために、電圧-透過率特性がポリマーネットワークを形成しないものより緩慢な傾きを持つようになる。
次に、得られた液晶セルを用いて、それぞれ立上がり応答時間τr、立下がり時間τdの電圧依存性を測定した。τr(0%)、τd(0%)は、光重合性モノマー(V1−1−1)を含まない液晶組成物を用いたセルの応答時間、τr(2%)、τd(2%)は、光重合性モノマー(V1−1−1)を2重量%含有する液晶組成物を重合させた液晶セルの応答時間とすると、(LCP−1)で示されるP型液晶組成物100重量%の液晶セルに4.5Vの飽和電圧を与えたときのτr(0%)は1.0ms、τd(0%)は11.4msであったものが、モノマー(V1−1−1)を2重量%含有する液晶組成物を使用した液晶セルでは飽和電圧7.1Vを印加したときのτr(2%)、τd(2%)は、それぞれ0.8ms、4.7msであった。τrに関しては、ポリマーネットワークの形成の有無に係らずほぼ同じ応答時間であったが、τdはポリマーネットワーク形成によって半分以下の時間に大幅に改善されることが確認できた。
しかし、飽和電圧付近での立ち上がりの応答時間は、ポリマーネットワーク構造体が形成されても大きな差異は無い事が分かった。
【0322】
本実験により、電圧無印加の状態で、クロスニコル状態の偏光板の間に配向処処理方向と偏光軸方向が一致する方向に置いてノーマリーブラックとなるのを確認した後、飽和電圧を印加して液晶セルを観測した。偏光顕微鏡にX−Yステージを設置して、4つに配向分割されたそれぞれの表示領域を観察したが、光学的には等価であり全く区別がつかなかった。閾値と飽和電圧の中間的な電圧を印加しても、全く光学的には等価な状態であった。
次いで4つの表示領域中の1つの領域を選択し、上記の中間的な電圧を印加しながら偏光顕微鏡のステージを回転させて最も暗くなる位置を探して、その角度を固定した。その様な状態で、X−YステージをX方向、Y方向に移動させながら、他の3つの異なる領域を観察した。はじめに設定した領域と180度異なる領域は、ほぼ同じような暗さの状態であることが観測され、それとは90度異なる領域では、グレー状態になっていることが観測された。これにより、少なくとも最初に固定した領域と90度、或いは270度異なる領域とでは、液晶分子の配列方向が異なっていることが確認でき、配向分割がきちんと行われていることを確認する事ができた。これらの技術は、単に高速応答性を有するTV等の動画表示装置のほか、カラーフィルタ不要なフィールドシーケンシャル方式への採用も可能である。また、近年、急速に注目を集めている超大型高精細の4K×2K−TVや、4K×8K−TVなどへの応用展開が期待される。