特許第6798282号(P6798282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6798282
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】AEI型ゼオライトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20201130BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20201130BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20201130BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20201130BHJP
   C07C 2/84 20060101ALI20201130BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20201130BHJP
   C07C 11/08 20060101ALI20201130BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20201130BHJP
【FI】
   C01B39/48
   B01J37/10
   B01J29/70 Z
   B01J37/04 102
   C07C2/84
   C07C11/06
   C07C11/08
   !C07B61/00 300
【請求項の数】12
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-231424(P2016-231424)
(22)【出願日】2016年11月29日
(65)【公開番号】特開2018-87105(P2018-87105A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】國武 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】原 雅寛
(72)【発明者】
【氏名】吉川 由美子
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−098149(JP,A)
【文献】 特開2016−104690(JP,A)
【文献】 特開2017−048106(JP,A)
【文献】 特開2012−024674(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0243531(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/48
B01J 29/70、37/04−37/10
C07C 11/06−11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素源と、元素M源(Mは、ホウ素、ガリウム、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種)と、アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源と、ホスホニウムカチオン及び水とを含む混合物の水熱合成により、International Zeolite Association(IZA)で規定されるコードでAEIであるゼオライトを製造する方法であって、前記混合物中のケイ素原子に対するホスホニウムカチオンのモル比が0.025以上0.5以下であることを特徴とするAEI型ゼオライトの製造方法。
【請求項2】
前記混合物中のケイ素原子に対する前記M原子の合計のモル比が0.02以上0.6以下であることを特徴とする請求項1に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
【請求項3】
前記ケイ素源として、少なくともFAU型ゼオライトを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
【請求項4】
前記混合物中のケイ素原子に対するアルミニウム原子のモル比が0.10以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
【請求項5】
前記元素M源として少なくともホウ素源を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
【請求項6】
ケイ素と、元素M(Mは、ホウ素、ガリウム、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種)と、リンとを含み、ケイ素原子に対する前記M原子の合計のモル比が0.01以上0.4以下であって、かつケイ素原子に対するリン原子のモル比が0.005以上0.2以下であることを特徴とするAEI型ゼオライト。
【請求項7】
アルミニウムを含み、かつケイ素原子に対するアルミニウム原子のモル比が0.10以下であることを特徴とする請求項6に記載のAEI型ゼオライト。
【請求項8】
前記元素Mとして少なくともホウ素を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載のAEI型ゼオライト。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載のAEI型ゼオライトを含む触媒。
【請求項10】
有機化合物原料を、請求項9に記載の触媒に接触させることを特徴とするプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
【請求項11】
前記有機化合物原料がエチレンであることを特徴とする請求項10に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
【請求項12】
前記有機化合物原料がメタノールであることを特徴とする請求項10に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ素、ガリウム及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を、ケイ素とともに、骨格の構成成分とするAEI型ゼオライト、及びその効率的な製造方法、並びに、それを触媒として用いたプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
AEI型ゼオライトは、酸素8員環の細孔を有する合成ゼオライトの一つであり、International Zeolite Association(以下これを、「IZA」と略称することがある。)が定める構造コードでAEIに分類されるトポロジーを有する。
【0003】
ゼオライトは、触媒、吸着材、分離材等の諸種の用途に用いられている。特に、AEI型ゼオライトは、細孔径が小さく、酸強度が大きく、エチレン、プロピレンや直鎖ブテンといった低級オレフィン製造用の触媒として期待されている。
【0004】
AEI型の構造を有するゼオライトとして、アルミノケイ酸塩であるSSZ−39が報告されている(特許文献1)。特許文献1には、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルピペリジニウムカチオン等の、N,N−ジアルキルピペリジンから誘導される四級アンモニウムカチオンを構造規定剤として用いて、FAU型ゼオライトを原料に用いた合成方法が開示されている。
【0005】
AEI型ゼオライトの製造方法として、特許文献1の改良方法を含めて諸種の提案(特許文献2,特許文献3)がなされている。
【0006】
例えば、特許文献2には、構造規定剤としてテトラエチルホスホニウムカチオンを用いて、FAU型ゼオライトを原料とする、リン含有AEI型ゼオライトの合成方法が開示されている。
【0007】
特許文献3には、N,N−ジアルキルピペリジンから誘導される四級アンモニウムカチオンを構造規定剤として用いて、FAU型ゼオライトを主原料とし、ホウ酸を添加してAEI型ゼオライトを合成する調製例が実施例にて開示されている。
【0008】
しかしながら、上記の公知の方法には以下の通り諸種の問題があり、必ずしも満足し得る結果は得られていない。
【0009】
特許文献1の方法では、具体的な製造方法として、ケイ素とアルミニウムを構成成分とするY型ゼオライト(FAU型構造)とコロイダルシリカを原料とし、構造規定剤として、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルピペリジニウムハイドロオキサイド等を用い、水酸化ナトリウムを含有するアルカリ性条件下で水熱合成することにより、AEI型ゼオライト(アルミノケイ酸塩)を得ている。この特許文献1では、アルミニウム以外の元素(ホウ素、ガリウム、鉄など)を構成成分とするAEI型ゼオライトも合成が可能だとしているが、実際には、実施例の全てが、ケイ素とアルミニウムを構成成分とするY型ゼオライトを原料としているため、得られるAEI型ゼオライトはケイ素とアルミニウムからなるアルミノケイ酸塩である。また、従来技術においては、ケイ素とともに、アルミニウムを主原料として使用しないと、AEI型ゼオライトを合成することができないというのが周知技術である。すなわち、アルミニウム以外の元素(ホウ素、ガリウム、鉄など)を主要な構成成分として含有するAEI型ゼオライトを合成することは非常に難しいとされている。
【0010】
特許文献2では、構造規定剤としてリンを含有するテトラエチルホスホニウムカチオンを用いて、リン含有AEI型ゼオライト(アルミノケイ酸塩)を得ている。特許文献2の製造方法は、格子定数が24.30Å以上のFAU型の結晶性アルミノケイ酸塩を原料に用いるものであり、得られるAEI型ゼオライトもアルミノケイ酸塩に限定される。
【0011】
特許文献3には、FAU型ゼオライトを主原料とし、ホウ酸を添加して、SiO/Alモル比40、SiO/Bモル比50となる組成にて水熱合成することにより、ボロアルミノケイ酸塩を合成する調製例が開示されている。しかし、合成品のSiO/Bモル比についての記載はなく、ホウ素の含有量、及びホウ素添加の効果は不明である。本発明者らが追試して組成を確認したところ、合成されたボロアルミノケイ酸塩のSiO/Alモル比は19(Al/Si=0.105)、SiO/Bモル比は820(B/Si=0.0024)であり、ホウ素の含有量が非常に少ないことが分かった。また、このときの合成収率は45%であり、生産性も非常に低いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5958370号明細書
【特許文献2】国際公開第2015/005369号
【特許文献3】特開2015−193599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来のAEI型ゼオライトは、ケイ素とともにアルミニウムを骨格の主な構成成分とするアルミノケイ酸塩であり、アルミニウム由来の強い酸点を多く有するため、有機化合物原料から低級オレフィンを製造する反応において触媒として用いた場合、コーキングが進行し易く、十分な低級オレフィン収率を得にくいという課題があった。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、中程度の酸点として作用する元素M(ホウ素、ガリウム、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種)と、リンとを含むAEI型ゼオライトを効率的に製造する方法を提供することを目的とする。また本発明は、該方法で得られるAEI型ゼオライトを触媒として用いるプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ケイ素源と、元素M源(Mは、ホウ素、ガリウム、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種)と、アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源と、ホスホニウムカチオン及び水とを含む混合物の水熱合成において、前記混合物中のホスホニウムカチオンの割合を所定の範囲とすることにより、プロピレン及び直鎖ブテンの製造に適したリン含有AEI型ゼオライトを製造できることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0016】
[1] ケイ素源と、元素M源(Mは、ホウ素、ガリウム、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種)と、アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源と、ホスホニウムカチオン及び水とを含む混合物の水熱合成により、International Zeolite Association(IZA)で規定されるコードでAEIであるゼオライトを製造する方法であって、前記混合物中のケイ素原子に対するホスホニウムカチオンのモル比が0.025以上0.5以下であることを特徴とするAEI型ゼオライトの製造方法。
[2] 前記混合物中のケイ素原子に対する前記M原子の合計のモル比が0.02以上0.6以下であることを特徴とする[1]に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
[3] 前記ケイ素源として、少なくともFAU型ゼオライトを含有することを特徴とする[1]又は[2]に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
[4] 前記混合物中のケイ素原子に対するアルミニウム原子のモル比が0.10以下であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
[5] 前記元素M源として少なくともホウ素源を含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
[6] ケイ素と、元素M(Mは、ホウ素、ガリウム、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種)と、リンとを含み、ケイ素原子に対する前記M原子の合計のモル比が0.01以上0.4以下であって、かつケイ素原子に対するリン原子のモル比が0.005以上0.20以下であることを特徴とするAEI型ゼオライト。
[7] アルミニウムを含み、かつケイ素原子に対するアルミニウム原子のモル比が0.10以下であることを特徴とする[6]に記載のAEI型ゼオライト。
[8] 前記元素Mとして少なくともホウ素を含むことを特徴とする[6]又は[7]に記載のAEI型ゼオライト。
[9] [6]〜[8]のいずれかに記載のAEI型ゼオライトを含む触媒。
[10] 有機化合物原料を、[9]に記載の触媒に接触させることを特徴とするプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
[11] 前記有機化合物原料がエチレンであることを特徴とする[10]に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
[12] 前記有機化合物原料がメタノールであることを特徴とする[10]に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ケイ素と、元素M(Mは、ホウ素、ガリウム、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種)と、リンとを含むAEI型ゼオライトを効率的に製造することができる。本発明の製造方法で得られたAEI型ゼオライトは、中程度の酸点として作用する元素Mを含むため、有機化合物原料から低級オレフィンを製造する反応において触媒として使用した場合、コーキングが抑制され、高いプロピレン及び直鎖ブテン収率で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1で得られたAEI型ゼオライトのXRDパターンを示すチャートである。
図2】実施例1で得られたAEI型ゼオライトのSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を実施するための代表的な態様を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の態様に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
【0020】
1.本発明のAEI型ゼオライト
本発明のAEI型ゼオライト(以下、「本発明のゼオライト」と称す場合がある。)は、ケイ素と、元素M(Mは、ホウ素、ガリウム、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種)と、リンとを含み、ケイ素原子に対する前記M原子の合計のモル比が0.01以上0.4以下であって、かつケイ素原子に対するリン原子のモル比が0.005以上0.20以下であることを特徴とするものである。
【0021】
本発明のゼオライトの製造方法は特に制限はないが、好ましくは、後述の本発明のAEI型ゼオライトの製造方法により製造される。
【0022】
(構造)
本発明のゼオライトは、通常、結晶性を有する。ゼオライトは、通常、ゼオライトと呼ばれる開かれた規則的なミクロ細孔(以下、単に「細孔」ということがある)を形成している多孔質結晶性化合物であり、四面体構造をもつTO単位(Tは、ゼオライトを構成する酸素以外の元素をいう)が酸素原子を共有して三次元的に連結した構造を有している。
【0023】
本発明のゼオライトは、AEI型構造を有する。
本発名におけるAEI型とは、International Zeolite Association(IZA)が定めるコードでAEIである構造のものをいう。
AEI型構造を有するゼオライトは、3種類の3.8×3.8Åの8員環細孔から構成される3次元細孔を有する。8員環細孔が交差することで、その構造内に広い空洞(ケージ)が存在する。また、AEI型構造のユニットセル(単位胞)は空間座標の定まっている原子で表した場合、その組成はT4896であり、単斜晶系である。
【0024】
AEI型構造を有するゼオライトのフレームワーク密度は、通常14.8T/nmである。
なおフレームワーク密度(単位:T/nm)とは、ゼオライトの単位体積(1nm)当たりに存在する骨格を形成する酸素以外の原子Tの個数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。なお、フレームワーク密度とゼオライトの構造との関係は、IZAの構造委員会(Structure Commission)により編纂されたゼオライトに関するデータ集(Atlas of Zeolite Framework Types,Sixth Revised Edition 2007, ELSEVIER)に示されている。
【0025】
(構成成分)
本発明のゼオライトは、T原子中にケイ素原子を通常70mol%以上含み、ケイ素原子と酸素原子以外に、リンと、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、及び鉄(Fe)からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Mを含む。
【0026】
本発明のゼオライトは、元素MがゼオライトのT原子としてその骨格内に取り込まれ、中程度の酸強度の活性点となり、エチレンやメタノール等の有機化合物の転化反応の活性点として働くため、触媒性能に優れる。通常、ホウ素原子は、骨格から脱離し易く、構造欠陥を生成するため、ゼオライトの安定性が低くなる傾向にある。そのため、メタノール転化反応などの水が発生するような反応には、ホウ素含有量の高いゼオライトは好適には用いられない。しかし、本発明のAEI型ゼオライトは、ホウ素含有量が高くても安定性が高いため、メタノール転化反応での使用にも耐えうるものである。
【0027】
本発明のゼオライトとしては、好ましくはボロケイ酸塩、ガロケイ酸塩、フェリケイ酸塩、ボロアルミノケイ酸塩、ガロアルミノケイ酸塩、フェリアルミノケイ酸塩、ボロガロアルミノケイ酸塩、ボロフェリアルミノケイ酸塩が挙げられ、より好ましくはボロアルミノケイ酸塩、フェリアルミノケイ酸塩、ボロフェリアルミノケイ酸塩が挙げられ、さらに好ましくはボロアルミノケイ酸塩である。
【0028】
また、本発明のゼオライトは、前記の元素以外に、その他の元素を含んでいてもよい。その他の元素としては、特に限定されないが、亜鉛(Zn)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、錫(Sn)、クロム(Cr)、コバルト(Co)等が挙げられる。これらの構成元素は1種類でも2種類以上でもよい。
【0029】
本発明のゼオライトのSi、M(B,Fe,Ga)、Al、P等の原子の含有量は、通常、ICP元素分析や蛍光X線分析で測定できる。蛍光X線分析では、標準試料中の分析元素の蛍光X線強度と分析元素の原子濃度との検量線を作成し、この検量線により、蛍光X線分析法(XRF)でゼオライト試料中のケイ素、アルミニウム、ガリウム、鉄原子等の含有量を求めることができる。なお、ホウ素元素の蛍光X線強度は比較的小さいため、ホウ素原子の含有量はICP元素分析で測定することが好ましい。
【0030】
(ケイ素に対する元素Mの合計のモル比)
本発明のゼオライトのケイ素原子に対する前記元素M原子の合計のモル比(M/Si)は、通常0.01以上、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.03以上で、通常0.4以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下である。前記M/Siモル比が上記範囲にあることで、中程度の酸強度の酸点が十分量となり、有機化合物原料の転化反応において、特に、メタノールを原料として用いた場合、高いメタノール吸着能、高いメタノール転化活性及びオレフィン相互変換活性が得られる。またコーク付着による触媒の失活、ケイ素原子以外のT原子の骨格からの脱離、酸点当たりの酸強度の低下といった現象を防ぐことができる。
【0031】
(ケイ素に対するリンのモル比)
本発明のゼオライトのケイ素原子に対するリン原子のモル比(P/Si)は、通常0.005以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、通常0.2以下、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.06以下である。前記P/Siモル比が上記範囲にあることで、コーキングの進行が抑制され易い。
【0032】
(リン含有量)
本発明のゼオライトの結晶内に含まれるリン含有量は、特に限定されるものではないが、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。ゼオライトの結晶内に含まれるリン含有量を上記範囲とすることで、十分な比表面積が得られ、また、炭化水素成分の高い結晶内拡散性が得られ、有機化合物原料の転化活性が高くなる。また、リン由来の酸強度が調整された酸点での反応により、コーキングが抑制される点で好ましい。尚、本発明のゼオライトは、ゼオライトの骨格内および/または骨格外にリンが一部含有されていてもよいが、好ましくは骨格外にのみ含有されるものである。
【0033】
(ケイ素に対するアルミニウムのモル比)
本発明のゼオライトのケイ素原子に対するアルミニウム原子のモル比(Al/Si)は、特に限定されるものではないが、通常0.01以上、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.033以上、さらに好ましくは0.067以上であり、通常0.20以下、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.10以下、さらに好ましくは0.08以下である。Al/Siのモル比を上記範囲とすることで、触媒として用いた場合に、コーキングの進行を抑えた上でAl由来の酸強度の強い酸点により、エチレン等の有機化合物原料を効率的に転換することができるため好ましい。
【0034】
(アルミニウムに対する元素Mの合計のモル比)
本発明のゼオライトのアルミニウム原子に対する前記元素M原子の合計のモル比(M/Al)は、通常0.01以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上であり、通常20以下、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。M/Alモル比が高い、つまり、アルミニウム含有量が相対的に低減されたものである方が、エチレンやメタノール等の有機化合物原料の転化反応において、低級オレフィン選択率及び触媒寿命の点で好ましい。また、M/Alモル比が前記上限値以下の場合、耐熱/耐水熱安定性が高くなるため、触媒の長期寿命の点でも好ましい。
【0035】
(全酸量)
本発明のゼオライトの全酸量は、前記ゼオライトの結晶細孔内に存在する酸点の量と、前記ゼオライトの結晶外表面酸点の量(以下、外表面酸量という)の総和である。全酸量は、特に限定されるものではないが、通常0.001mmol/g以上、好ましくは0.01mmol/g以上、より好ましくは0.05mmol/g以上、さらに好ましくは0.10mmol/g以上である。また、通常1.5mmol/g以下、好ましくは0.6mmol/g以下、より好ましくは0.4mmol/g以下、さらに好ましくは0.3mmol/g以下である。全酸量を上記範囲とすることで、有機化合物原料の転化活性が担保されるとともに、ゼオライトの細孔内部におけるコーク生成が抑制され、分子の結晶内拡散性が向上することで、プロピレンと直鎖ブテンの生成を促進することができる点で好ましい。
【0036】
なお、ここでの全酸量は、アンモニア昇温脱離(NH−TPD)における脱離量から算出される。具体的には、前処理としてゼオライトを真空下500℃で30分間乾燥させた後、前処理したゼオライトを100℃で過剰量のアンモニアと接触させて、ゼオライトにアンモニアを吸着させる。得られたゼオライトを100℃で真空乾燥する(または、100℃で水蒸気と接触させる)ことにより、該ゼオライトから余剰アンモニアを除く。次いでアンモニアを吸着したゼオライトを、ヘリウム雰囲気下、昇温速度10℃/分で加熱して、100−600℃におけるアンモニア脱離量を質量分析法で測定する。ゼオライト当たりのアンモニア脱離量を全酸量とする。但し、本発明における全酸量は、TPDプロファイルをガウス関数によって波形分離し、そのピークトップを240℃以上に有する波形の面積の合計とする。この「240℃」は、ピークトップの位置の判断のみに用いる指標であって、240℃以上の部分の面積を求めるという趣旨ではない。ピークトップが240℃以上の波形である限り、当該「波形の面積」は、240℃以外の部分も含む全面積を求める。240℃以上にピークトップを有する波形が複数ある場合には、それぞれの面積の和とする。
本発明のゼオライトの全酸量には、ピークトップを240℃未満に有する弱酸点由来の酸量は含めないものとする。これは、TPDプロファイルにおいて、弱酸点由来の吸着と物理吸着との区別が容易ではないためである。
【0037】
(外表面酸量)
本発明のゼオライトの結晶外表面酸量は、特に限定されるものではないが、ゼオライトの全酸量に対して、通常8%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下、最も好ましくは0%である。外表面酸量が大きすぎる場合には、外表面酸点で起こる副反応によりプロピレンや直鎖ブテンの選択性が低下する傾向がある。これは、外表面酸点で目的物以外の炭化水素を生成する反応が進行するためと推測される。また、前記ゼオライトの細孔内で生成したプロピレンや直鎖ブテンが外表面酸点で更に反応してしまうことも選択率低下の一因であると推測される。
【0038】
なお本発明のゼオライトの外表面酸量の値は、国際公開第2010/128644号に記載の方法で測定することができる。
【0039】
前記ゼオライトの外表面酸量を、上記範囲に調整する方法としては、特に限定はされないが、通常、前記ゼオライトの外表面のシリル化、水蒸気処理、熱処理等の方法が挙げられる。また、ゼオライトを成形する際にバインダーと前記ゼオライトの外表面酸点を結合させる、といった方法が挙げられる。
【0040】
(イオン交換サイト)
本発明のゼオライトのイオン交換サイトは、特に限定されない。通常、プロトンであるか(以下、「プロトン型」「H型」ともいう)、一部がリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属;マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)やバリウム(Ba)等のアルカリ土類金属;等の金属イオンとされていても良い。イオン交換サイトは、ケージ空間における金属占有容積低減による分子拡散性向上の観点からは、好ましくはプロトン、ナトリウム、カリウム、カルシウムであり、より好ましくはプロトン、ナトリウム、カリウムであり、さらに好ましくはプロトン、ナトリウムであり、特に好ましくはプロトンである。以下、例えばNaイオンで交換されているものを「Na型」ということがある。なお、アンモニウム(NH)でイオン交換されたものは、反応条件の高温下でアンモニアが脱離するため、通常プロトン型と同等に扱う。
【0041】
本発明のゼオライト中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計の含有量としては、特に限定されないが、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上で、通常5質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。アルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計の含有量を上記範囲とすることで、ゼオライトの酸量やケージ空間容積を調整することができるため、反応時のコーク蓄積を抑制することができる点で好ましい。また熱的/水熱的安定性が高くなり、触媒劣化を抑制することができる点でも好ましい。
【0042】
(含有金属)
本発明のゼオライトには、上記のイオン交換サイト以外に、Na、K等のアルカリ金属;Mg、Ca等のアルカリ土類金属;Cr、Cu、Ni、Fe、Mo、W、Pt、Re等の遷移金属が担持されていてもよい。ここで、金属担持は、通常、平衡吸着法、蒸発乾固法、ポアフィリング法等の含浸法で行うことができる。
本発明のゼオライト中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計の含有量は、イオン交換サイト以外にもこれらを含有する場合も、上記の含有量の範囲であることが好ましい。
【0043】
(平均一次粒子径)
本発明のゼオライトの平均一次粒子径は、特に限定されるものではないが、通常0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上であり、通常10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である。平均一次粒子径を上記範囲とすることで、触媒反応におけるゼオライト結晶内の拡散性及び触媒有効係数が十分高くなり、また、ゼオライト結晶性が十分なものとなり、耐水熱安定性が高くなる点で好ましい。
【0044】
なお、本発明における平均一次粒子径とは、一次粒子の粒子径に相当する。したがって、光散乱法などで測定される凝集体の粒子径とは異なる。平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(以降、「SEM」と略記する。)又は透過型電子顕微鏡(以降、「TEM」と略記する。)による粒子の観察において、粒子を任意に50個以上測定し、その一次粒子の粒子径を平均して求められる。粒子が長方形の場合、粒子の長辺・短辺を計測して(奥行は計測せず)、その和の平均(つまり(長辺+短辺)÷2)を算出して、その粒子の粒子径とする。
【0045】
(BET比表面積)
本発明のゼオライトのBET比表面積は、特に限定されるものではないが、通常300m/g以上、好ましくは400m/g以上、より好ましくは500m/g以上であり、通常1000m/g以下、好ましくは800m/g以下、より好ましくは650m/g以下である。BET比表面積が上記範囲にあることで、細孔内表面に存在する活性点が十分多く、触媒活性が高くなるため好ましい。なお、BET比表面積は、JIS8830(ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法)に準じた測定方法によって測定できる。吸着ガスとして窒素を使用し、1点法(相対圧:p/p=0.30)でBET比表面積が求められる。
【0046】
(細孔容積)
本発明のゼオライトの細孔容積は、特に限定されるものではないが、通常0.10ml/g以上、好ましくは0.15ml/g以上、より好ましくは0.20ml/g以上であり、通常0.50ml/g以下、好ましくは0.40ml/g以下、より好ましくは0.35ml/g以下である。細孔容積が上記範囲にあることで、触媒として用いた場合に、有機化合物原料の結晶内拡散性が十分なものとなり、また細孔内表面に存在する活性点が十分に機能するため、触媒活性が高くなる点で好ましい。なお、細孔容積は相対圧法により得られる窒素の吸着等温線から求められる。
【0047】
2.AEI型ゼオライトの製造方法
本発明のAEI型ゼオライトの製造方法は、ケイ素源と、元素M源(Mは、ホウ素、ガリウム、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種)と、アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源と、ホスホニウムカチオン及び水とを含む混合物(以下、この混合物を「本発明の前駆体混合物」又は単に「前駆体混合物」と称す場合がある。)の水熱合成によりAEI型ゼオライトを製造する方法であって、前駆体混合物中のケイ素原子に対するホスホニウムカチオンのモル比が0.025以上0.5以下であることを特徴とする。
【0048】
本発明のAEI型ゼオライトの製造方法では、上記の特徴を除いてはゼオライトの水熱合成の常法に従って、AEI型ゼオライトを製造することができる。すなわち、ケイ素源、元素M源と、アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源と、ホスホニウムカチオン及び水と、必要に応じてアルミニウム源、種結晶を含む前駆体混合物の混合物を調製し、これを水熱合成する方法で合成することができる。
【0049】
以下、製造方法の一例を記載する。
【0050】
(ケイ素源)
本発明で用いるケイ素源は特に限定されず、微粉シリカ、シリカゾル、シリカゲル、二酸化珪素、水ガラスなどのシリケート、テトラメトキシシランやテトラエトキシシラン等の珪素のアルコキシド、珪素のハロゲン化物などが挙げられる。また、FAU型ゼオライトやCHA型ゼオライトなどのシリカ含有ゼオライトをケイ素源として用いてもよい。
これらケイ素源は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
これらのケイ素源のうち、コスト面の有利さ、取り扱いの容易さの面で、好ましくは、微粉シリカ、シリカゾル、水ガラス、シリカ含有ゼオライトなどが用いられ、より好ましくは反応性の面で、シリカゾル、水ガラス、シリカ含有ゼオライトが用いられる。後述の通り、ケイ素源としてアルミニウム源を兼ねて少なくともFAU型ゼオライトを用いることが好ましい。
【0052】
(元素M源)
元素Mは、ホウ素、ガリウム、及び鉄から選ばれる少なくとも1種であり、好ましくはホウ素、鉄であり、より好ましくはホウ素である。水熱合成時の前駆体混合物にホウ素が存在すると、不純物を生成することなく、AEI型を指向し易くなるためである。従って、元素M源として、少なくともホウ素源を用いることが好ましい。
【0053】
元素M源としては特に限定されず、元素Mが鉄又はガリウムの場合、元素M源としては例えば、これらの元素Mの硫酸塩、硝酸塩、水酸化物、酸化物、アルコキシドなどから選ばれる。
これらの元素M源のうち、反応性の面で硫酸塩、硝酸塩、水酸化物、アルコキシドが好ましく、コスト面及び作業面で硫酸塩、硝酸塩、水酸化物がより好ましい。
【0054】
ガリウム源としては、通常、硫酸ガリウム、硝酸ガリウム、酸化ガリウム、塩化ガリウム、リン酸ガリウム、水酸化ガリウム、ガリウム含有ゼオライトなどが用いられ、好ましくは硫酸ガリウム、硝酸ガリウムであり、より好ましくは硫酸ガリウムである。
【0055】
鉄源としては、通常、硝酸鉄、硫酸鉄、酸化鉄、塩化鉄、水酸化鉄、鉄含有ゼオライトなどが用いられ、好ましくは硫酸鉄、硝酸鉄であり、より好ましくは硫酸鉄である。
【0056】
ホウ素源としては、通常、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、酸化ホウ素、ホウ素含有ゼオライトなどが用いられ、好ましくはホウ酸、ホウ酸ナトリウムであり、より好ましくはホウ酸である。
【0057】
これらの元素M源は、1種を単独で用いてもよく、同一の元素のものの2種以上を組み合わせて用いてよく、また、異なる元素のものの1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
(その他の元素源)
本発明の前駆体混合物は、上記の元素M源以外にその他の元素源を含んでいてもよい。その他の元素は特に限定されないが、亜鉛、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、錫、クロム、コバルトなどが挙げられる。これら、その他の元素源としては、これらの元素の硫酸塩、硝酸塩、水酸化物、酸化物、アルコキシドなどが挙げられ、反応性の面で硫酸塩、硝酸塩、水酸化物、アルコキシドが好ましく、コスト面及び作業面で硫酸塩、硝酸塩、水酸化物がより好ましい。
これらのその他の元素源は、本発明の前駆体混合物中に1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0059】
(アルミニウム源)
本発明の前駆体混合物には、アルミニウム源を含有していてもよい。
アルミニウム源としては、通常、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、酸化アルミニウム、アモルファスの水酸化アルミニウム、結晶性の水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミナゾル、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドなどが用いられる。また、FAU型ゼオライトやCHA型ゼオライトなどのアルミニウム含有ゼオライトをアルミニウム源として用いてもよい。アルミニウム含有ゼオライトは、アルミニウム源であると同時に、ケイ素源であり、また、後述する種結晶としての機能を有する場合がある。
【0060】
これらのアルミニウム源のうち、反応性の面で、好ましくは硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、アモルファスの水酸化アルミニウム、結晶性の水酸化アルミニウム、アルミニウム含有ゼオライトであり、より好ましくはアモルファスの水酸化アルミニウム、アルミニウム含有ゼオライトであり、さらに好ましくはアルミニウム含有ゼオライトである。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
(アルミニウム含有ゼオライト)
アルミニウム含有ゼオライトとしては、AEI型、AFX型、BEA型、CHA型、ERI型、FAU型、LTA型、LEV型、OFF型、RHO型等が挙げられ、汎用性や溶解性の点で、好ましくはAEI型、AFX型、CHA型、ERI型、FAU型、LEV型であり、より好ましくはAEI型、CHA型、FAU型であり、さらに好ましくはFAU型である。上記アルミニウム含有ゼオライトは、アルミニウム源であると同時に、ケイ素源であり、また、後述する種結晶としての機能を有するものもある。
【0062】
前記FAU型ゼオライトとしては、特に限定されず、X型ゼオライトまたはY型ゼオライトの少なくともいずれかであることが好ましく、Y型ゼオライトであることがより好ましい。
【0063】
前記FAUゼオライトの格子定数は、特に限定されるものではないが、通常24.10Å以上、好ましくは24.20Å以上、より好ましくは24.30Å以上であり、通常24.70Å以下、好ましくは24.60Å以下、より好ましくは24.50Å以下である。前記FAU型ゼオライトの格子定数が上記範囲であると、前記ゼオライトの溶解速度が大きいため、本発明の前駆体混合物中のcomposite building unitであるd6rの濃度が高まり、AEI型構造の結晶化が効率的に進行するため好ましい。
【0064】
前記アルミニウム含有ゼオライトのSi/Alモル比としては、特に限定されるものではないが、通常2以上、好ましくは5以上、より好ましくは15以上、さらに好ましくは30以上であり、通常500以下、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは50以下である。前記ゼオライトのSi/Alモル比を上記範囲とすることで、AEI型以外の構造のゼオライトの生成を抑制することができる点で好ましい。
【0065】
(アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源)
アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源のアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素としては特に限定されず、公知のゼオライト合成に使用されるものを用いることができる。アルカリ金属元素としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムなどが挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられる。これらは1種が単独に含まれていても、2種以上が含まれていてもよいが、アルカリ性が高く、結晶化を促進し易いアルカリ金属元素を含むことが好ましい。好ましくはナトリウム、カリウム、セシウム、ストロンチウム、バリウムであり、より好ましくはナトリウム、カリウム、セシウムであり、さらに好ましくはナトリウム、カリウムであり、特に好ましくはナトリウムである。
【0066】
アルカリ金属元素源、アルカリ土類金属元素源としては、その水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸水素塩、炭酸塩などが挙げられる。これらの化合物のうち、水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩は、水溶液状態で塩基性を示すものであり、好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。これらのうち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどの水酸化物が、アルカリ性が高く、特に固体のケイ素源を使用する際に、ケイ素源の溶解、続くゼオライトの結晶化を促進させる効果がある点で好ましい。
【0067】
これらのアルカリ金属元素源、アルカリ土類金属元素源は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
(ホスホニウムカチオン)
本発明の前駆体混合物中に含まれるホスホニウムカチオンとしては特に限定されず、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラプロピルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオンなどが挙げられる。これらのホスホニウムカチオンのうち、AEI型ゼオライトを指向し易い点で、好ましくはテトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオンであり、より好ましくはテトラエチルホスホニウムカチオンである。
【0069】
ホスホニウムカチオンは、本発明のAEI型ゼオライトの形成を阻害しないアニオンをともなった形態で使用され、その形態としては、水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などが挙げられ、好ましくは水酸化物である。
【0070】
これらのホスホニウムカチオンは、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
(四級アンモニウムカチオン)
本発明の前駆体混合物中には、構造規定剤として、四級アンモニウムカチオンが含まれていてもよい。四級アンモニウムカチオンとしては、AEI型構造の形成に寄与する構造規定剤となるものであれば特に限定はされず、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−2,6−ジメチルピペリジニウムカチオン、N,N−ジメチル−9−アゾニアビシクロ[3.3.1]ノナンカチオン、N,N−ジメチル−2,6−ジメチルピペリジニウムカチオン、N−エチル−N−メチル−2,6−ジメチルピペリジニウムカチオン、N,N−ジエチル−2−エチルピペリジニウムカチオン、N,N−ジメチル−2−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジニウムカチオン、N,N−ジメチル−2−エチルピペリジニウムカチオン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルピペリジニウムカチオン、N−エチル−N−メチル−2−エチルピペリジニウムカチオン、2,6−ジメチル−1−アゾニウム[5.4]デカンカチオン、N−エチル−N−プロピル−2,6−ジメチルピペリジニウムカチオン等が挙げられる。これらのうち、好ましくはN,N−ジメチル−3,5−ジメチルピペリジニウムカチオン、N,N−ジエチル−2,6−ジメチルピペリジニウムカチオン、N,N−ジメチル−9−アゾニアビシクロ[3.3.1]ノナンカチオンであり、特に好ましくはN,N−ジメチル−3,5−ジメチルピペリジニウムカチオンである。なお、置換基の配置によるシス−トランス異性体が存在する場合、これらの異性体のいずれを用いてもよく、異性体混合物として用いてもよい。
【0072】
前記構造規定剤として用いられる四級アンモニウムカチオンは、本発明のAEI型ゼオライトの形成を阻害しないアニオンをともなった形態で使用され、その形態としては、水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物などが挙げられ、好ましくは水酸化物である。
【0073】
四級アンモニウムカチオンは、1種のみを使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0074】
(種結晶)
本発明の前駆体混合物中に種結晶を添加してもよい。この種結晶としては、International Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に含むゼオライトが好ましく、AEI型、AFX型、CHA型、ERI型、FAU型、LEV型、KFI型、RHO型がより好ましく、AEI型、CHA型、FAU型がさらに好ましい。
【0075】
種結晶は、1種のみを用いてもよく、構造や組成の異なるものを2種以上組み合わせて用いてもよい。種結晶として用いるゼオライトの組成は、混合物の組成に大きく影響を与えるものでなければ、特に限定されるものではない。
【0076】
種結晶として用いるゼオライトの粒子径は、特に限定されるものではないが、平均一次粒子径として、通常0.03μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.2μm以上で、通常5μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.6μm以下である。種結晶の平均一次粒子径を上記範囲とすることで、本発明の前駆体混合物中での種結晶の溶解性が十分なものとなり、副生物の生成を抑制し、AEI型相の結晶化を効率的に促進することができる。
【0077】
また、種結晶としては、水熱合成後に焼成を行っていない構造規定剤を含むゼオライト、焼成を行って構造規定剤を含まないゼオライトのいずれを用いてもよい。結晶核として効果的に作用するためには、結晶化初期段階で溶解し過ぎない方が好適であるため、構造規定剤を含むゼオライトを用いることが好ましい。ただし、アルカリ濃度が低い条件や、合成温度が低い条件などでは、構造規定剤を含むゼオライトの溶解性が十分でない場合があり、その場合には、溶解性の高い構造規定剤を含まないゼオライトを用いることが好ましい。
【0078】
種結晶は、適当な溶媒、例えば水に分散させて前駆体混合物に添加してもよいし、分散させずに直接添加してもよい。
【0079】
(前駆体混合物の組成)
本発明において、水熱合成に供される前駆体混合物(スラリーないしゲル)の好適な組成は次の通りである。
【0080】
前駆体混合物中のケイ素原子に対する前記元素M(ホウ素、ガリウム、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種)原子の合計のモル比(M/Si)は、特に限定されるものではないが、通常0.005以上、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.08以上、特に好ましくは0.10以上で、通常0.8以下、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.3以下である。M/Siモル比を上記範囲とすることで、得られるAEI型ゼオライトに十分な酸量が得られ、高い触媒活性が得られる。また、コーク付着による触媒の失活、ケイ素以外のT原子の骨格からの脱離、酸点当たりの酸強度の低下といった現象を防ぐことができる。なお、ここでのM/Siモル比の計算には、種結晶を添加する場合、種結晶に含まれる元素M及びケイ素は含めない。
【0081】
前駆体混合物中のケイ素原子に対するホウ素原子のモル比(B/Si)としては、特に限定されるものではないが、通常0以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上で、通常0.8以下、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.4以下である。B/Siモル比を上記範囲とすることで、AEI型を指向し易くなり、またホウ素の取り込み量を増大させることができる点で好ましい。なお、ここでのB/Siモル比の計算には、種結晶を添加する場合、種結晶に含まれるホウ素及びケイ素は含めない。
【0082】
前駆体混合物中のアルミニウムに対する前記元素M原子の合計のモル比(M/Al)は、通常0.1以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上であり、通常20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。M/Alモル比を上記範囲とすることで、元素Mのゼオライト骨格への取り込みを促し、結晶化を促進することができる点で好ましい。なお、ここでのM/Alモル比の計算には、種結晶を添加する場合、種結晶に含まれる元素M及びアルミニウムは含めない。
【0083】
前駆体混合物中のケイ素原子に対するアルミニウム原子のモル比(Al/Si)は、特に限定されるものではないが、通常0以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.03以上であり、通常0.2以下、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.08以下、さらに好ましくは0.07以下である。Al/Siモル比を上記範囲とすることで、AEI型を指向し易くなり、合成収率が向上する。また、得られるAEI型ゼオライトを触媒として用いた場合に、Al由来の酸点により有機化合物原料を効率的に転換することができるため好ましい。なお、ここでのAl/Siモル比の計算には、種結晶を添加する場合、種結晶に含まれるケイ素、アルミニウムは含めない。
【0084】
前駆体混合物中のケイ素に対するアルカリ金属とアルカリ土類金属の合計のモル比[(アルカリ金属元素+アルカリ土類金属元素)/Si]は、特に限定されるものではないが、通常0.01以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上であり、通常0.5以下、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下である。上記の比率を上記範囲とすることで、前記元素MのAEI型ゼオライト骨格への取り込みが十分なものとなり、合成収率が向上する。また、副生成物の生成を抑制することができると共に、AEI相への結晶化速度を高めることができる点で好ましい。尚、上記モル比の計算には、種結晶を添加する場合、種結晶に含まれるケイ素、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属は含めない。
【0085】
前駆体混合物中の前記元素Mに対する前記アルカリ金属元素と前記アルカリ土類金属元素の合計のモル比[(アルカリ金属+アルカリ土類金属)/M]は、特に限定されるものではないが、通常0.1以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上であり、通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。上記の比率を上記範囲とすることで、結晶化時の前記元素Mとアルカリ金属、アルカリ土類金属の相互作用が効果的なものとなり、AEI型ゼオライトが得られやすい点で好ましい。尚、上記モル比の計算には、種結晶を添加する場合、種結晶に含まれる元素M、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属は含めない。
【0086】
前駆体混合物中の構造規定剤として用いるホスホニウムカチオンの含有量は、ケイ素原子に対するホスホニウムカチオンのモル比(ホスホニウムカチオン/Si)として、0.025以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.15以上で、0.5以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.2以下である。前駆体混合物中のホスホニウムカチオン量を上記範囲とすることで、前駆体混合物中での核発生を促し、AEI型ゼオライトの結晶化が促進され、収率良く合成できる点で好ましい。尚、上記モル比の計算には、種結晶を添加する場合、種結晶に含まれるホスホニウムカチオンとケイ素は含めない。
【0087】
前駆体混合物中の前記元素Mに対する前記アルカリ金属元素と前記アルカリ土類金属元素とホスホニウムカチオンの合計のモル比[(アルカリ金属+アルカリ土類金属+ホスホニウムカチオン)/M]は、特に限定されるものではないが、通常0.3以上、好ましくは3以上、より好ましくは5以上であり、通常20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下である。上記の比率を上記範囲とすることで、結晶化時の前記元素Mに対するアルカリ金属、アルカリ土類金属、ホスホニウムカチオンの相互作用が効果的なものとなり、AEI型ゼオライトが得られやすい点で好ましい。尚、上記モル比の計算には、種結晶を添加する場合、種結晶に含まれる元素M、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ホスホニウムカチオンは含めない。
【0088】
前駆体混合物中に四級アンモニウムカチオンを含む場合、その含有量は、特に限定されるものではないが、ケイ素原子に対する四級アンモニウムカチオンのモル比(四級アンモニウムカチオン/Si)として、通常0以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上であり、通常0.30以下、好ましくは0.10以下、より好ましくは0.05以下である。また、ケイ素原子に対する四級アンモニウムカチオンとホスホニウムカチオンの合計のモル比[(四級アンモニウムカチオン+ホスホニウムカチオン)/Si]は、通常0.03以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上で、通常0.5以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下である。前駆体混合物中の四級アンモニウムカチオン量を上記範囲とすることで、ホスホニウムカチオンの寄与を阻害することなく、AEI型ゼオライトの結晶化が促進され、収率良く合成できる点で好ましい。尚、上記モル比の計算には、種結晶を添加する場合、種結晶に含まれる四級アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオンとケイ素は含めない。
【0089】
前駆体混合物中の水の割合は、特に限定されるものではないが、ケイ素原子に対するHOのモル比(HO/Si)として、通常3以上、好ましくは5以上であり、通常20以下、好ましくは15以下である。前駆体混合物中の水の割合を上記範囲とすることで、結晶化を促進することができる。また、反応器当たりの生産性を高めることができる一方で、反応時の粘度上昇による撹拌混合性の低下や廃液処理コストを抑えることができる点で好ましい。
【0090】
前駆体混合物中に種結晶を添加する場合、種結晶の添加量は特に限定されず、種結晶以外の前駆体混合物に含まれるケイ素(Si)がすべてSiOであるとした時のSiOに対して、通常0質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。種結晶の添加量を上記範囲とすることで、AEI型構造を指向する前駆体量が十分なものとなり、結晶化を促進することができる。また、生成物中に含まれる種結晶由来の成分量が抑えられ、生産性を高めることができるため、生産コストを低減することができる。
【0091】
(水熱合成工程)
上記の前駆体混合物を、反応容器中で加熱することにより(水熱合成)、AEI型ゼオライトを製造することができる。
【0092】
加熱温度(反応温度)は特に限定されず、通常120℃以上、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは170℃以上であり、通常220℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下、さらに好ましくは185℃以下である。反応温度を上記範囲とすることで、AEI型ゼオライトの結晶化時間を短縮することができ、ゼオライトの収率が向上する。また、異なる構造のゼオライトの副生を抑制できる点で好ましい。
【0093】
加熱温度(反応温度)まで昇温するのに要する時間は、特に限定されるものではなく、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上であり、昇温に要する時間の上限は特にない。
【0094】
加熱時間(反応時間)は、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましくは10時間以上であり、また上限は、通常30日間以下、好ましくは14日間以下、より好ましくは7日以下である。反応時間を上記範囲とすることで、AEI型ゼオライトの収率を向上させることができ、また、異なる構造のゼオライトの副生を抑制できる点で好ましい。
【0095】
反応時の圧力は特に限定されず、密閉容器中に入れた前駆体混合物を上記温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分であるが、必要に応じて、窒素などの不活性ガスを加えて加圧してもよい。
【0096】
(分離・精製工程)
水熱合成により得られたAEI型ゼオライトは、水熱合成反応液から分離して水洗した後、該ゼオライト中に含まれる構造規定剤を除去することが望ましい。
構造規定剤の除去方法は特に限定されず、焼成や溶媒抽出等のそれ自体既知の通常用いられる方法で行えばよいが、焼成が望ましい。
【0097】
焼成工程は、空気雰囲気下、水素雰囲気下等のガス雰囲気下で実施することができる。空気雰囲気下で処理することにより、水熱合成により得られたAEI型ゼオライト中のホスホニウム塩がリン酸化物として結晶中に残存することで酸点が被覆され、酸量が低下する傾向がある。一方、水素雰囲気下で処理することにより、ホスホニウム塩が分解され、結晶外へ除去されるため、AEI型ゼオライトの酸量が十分に得られるため、より好ましい。
【0098】
焼成温度は、通常350℃以上、好ましくは400℃以上、より好ましくは450℃であり、通常900℃以下、好ましくは850℃以下、より好ましくは800℃以下である。焼成温度を上記範囲とすることで、構造規定剤を効率的に除去することができ、ゼオライトの細孔容積が十分に大きくなる。また、ゼオライトの骨格崩壊や結晶性の低下を抑制することができる。
【0099】
焼成時間は、構造規定剤が十分に取り除かれれば特に限定されないが、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上であり、通常24時間以下である。
【0100】
焼成は、酸素が含まれている雰囲気で行うのが好ましく、通常、空気雰囲気で行われる。
【0101】
3.触媒
(本発明のゼオライトの含有量)
本発明の触媒は、本発明のゼオライトを触媒活性成分として含むものである。本発明の触媒中(後述のバインダーを除く触媒活性成分中)に含まれる本発明のゼオライトの含有量は、通常80質量%以上、好ましくは90%質量以上、より好ましくは100質量%である。
【0102】
(他の活性成分)
本発明の触媒は、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明のゼオライト以外の他の活性成分を含んでいてもよい。他の活性成分としては、例えばシリコアルミノリン酸塩等のアルミノリン酸塩等が挙げられる。本発明の触媒中に含まれるアルミノリン酸塩の含有量は、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%である。シリコアルミノリン酸塩は、高温条件や水蒸気条件に対する安定性が低いため、これを含む場合、その含有量は少ない方が好ましく、本発明のゼオライトの含有量が多い方が好ましい。他の活性成分は、本発明のゼオライト中に混晶の形で含有されてもよいが、通常は、各活性成分を各々合成した後に混合する。
【0103】
(触媒の成形)
触媒活性成分である本発明のゼオライトは、そのまま触媒として反応に用いてよいし、反応に不活性な物質やバインダーを混合して触媒とし、これを反応に用いてもよい。
【0104】
該反応に不活性な物質やバインダーとしては、アルミナまたはアルミナゾル、シリカ、シリカゾル、石英、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0105】
本発明のゼオライトに、反応に不活性な物質やバインダーを混合したものを触媒として使用する場合、触媒の全酸量及び外表面酸量を上記範囲に調整するには、酸点を有さないシリカやシリカゾル等をバインダーとして用いることが好ましい。
【0106】
なお、アルミナ等の、酸点を有するバインダーを使用した場合には、触媒の全酸量及び外表面酸量の測定方法では、ゼオライトの酸量と共にバインダーの酸量も含んだ合計値として測定される。その場合はバインダー由来の酸量を別法により求め、触媒の酸量からその値を差し引くことによって、バインダー由来の酸量を含まないゼオライトのみの酸量を求めることが可能である。前記バインダーの酸量は、27Al−NMRにおいてゼオライトの酸点に由来する4配位Alのピーク強度からゼオライトの酸量を求め、アンモニア昇温脱離法により求まる触媒の酸量からその値を差し引く方法で求められる。
【0107】
(粒子径)
触媒の粒子径は、ゼオライトの合成条件や造粒・成形条件により異なるが、平均粒子径として、通常0.01μm〜500μmであり、好ましくは0.1〜100μmである。触媒の粒子径が大きくなり過ぎると、触媒の有効係数が低下する傾向があり、小さすぎると取り扱い性が劣るものとなる。この平均粒子径は、SEM観察等により求めることができる。
【0108】
4.プロピレン及び直鎖ブテンの製造方法
本発明のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法は、上記の本発明のゼオライトを含む本発明の触媒を有機化合物原料に接触させてプロピレン及び直鎖ブテンを製造するものである。
【0109】
(有機化合物原料)
有機化合物原料としては、エチレンやプロピレン、ブテン等の炭化水素化合物、メタノール、ジメチルエーテル、エタノール等の酸素含有化合物を使用することができる。
【0110】
有機化合物原料としてのエチレンは特に限定されるものではない。例えば、石油供給源から接触分解法または蒸気分解法により製造されるエチレン、石炭のガス化により得られる水素/CO混合ガスを原料としてフィッシャートロプシュ合成を行うことにより得られるエチレン、エタンの脱水素または酸化脱水素で得られるエチレン、メタセシス反応およびホモロゲーション反応により得られるエチレン、MTO(Methanol to Olefin)反応によって得られるエチレン、エタノールの脱水反応から得られるエチレン、メタンの酸化カップリングで得られるエチレン、その他の公知の各種方法により得られるエチレンを任意に用いることができる。このとき各種製造方法に起因するエチレン以外の化合物を任意に混合した状態のものをそのまま用いてもよいし、精製したエチレンを用いてもよいが、好ましくは精製したエチレンである。また、エタノールは脱水により直ちにエチレン変換されるため、エタノールをそのまま原料として用いてもよい。
【0111】
有機化合物原料としてのメタノール、ジメチルエーテルの製造由来は特に限定されない。例えば、石炭および天然ガス、ならびに製鉄業における副生物由来のCO/水素の混合ガスの水素化反応により得られるもの、植物由来のアルコール類の改質反応により得られるもの、発酵法により得られるもの、再循環プラスチックや都市廃棄物等の有機物質から得られるもの等が挙げられる。このとき各製造方法に起因するメタノールおよびジメチルエーテル以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したものを用いても良い。
【0112】
なお、有機化合物原料としては、メタノールのみを用いてもよく、ジメチルエーテルのみを用いてもよく、これらを混合して用いてもよい。メタノールとジメチルエーテルを混合して用いる場合、その混合割合に制限はない。
【0113】
有機化合物原料としては、エチレンとともに、メタノール及びジメチルエーテルから選ばれる少なくとも1種を混合していてもよい。これらを混合して用いる場合、その混合割合に制限はない。
【0114】
(反応器)
本発明における反応様式としては、有機化合物原料が反応域において気相であれば特に限定されず、反応器としては、例えば、固定床反応器、移動床反応器や流動床反応器を用いることができる。プロピレンと直鎖ブテンを併産する場合は、転化率の変動に伴い、プロピレン及び直鎖ブテンの選択率が変動する傾向にあることから、プロピレンと直鎖ブテンを一定の割合で製造するために、流動床反応器を用いることが好ましい。
【0115】
また、本発明の反応は、バッチ式、半連続式または連続式のいずれの形態でも行うことができるが、連続式で行うのが好ましく、その方法は、単一の反応器を用いた方法でも良いし、直列または並列に配置された複数の反応器を用いた方法でもよい。
【0116】
なお、流動床反応器に前述の触媒を充填する際、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と
混合して充填しても良い。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量には特に限定されない。なお、粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒子径であることが好ましい。
【0117】
また、反応器には、反応に伴う発熱を分散させることを目的に、反応基質である有機化合物原料を分割して供給しても良い。
【0118】
(基質濃度)
反応器に供給する全供給成分中の有機化合物原料の合計濃度(基質濃度)は特に制限はないが、全供給成分中、通常5モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さら好ましくは30モル%以上、特に好ましくは50モル%以上であり、通常95モル%以下、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下である。基質濃度を上記範囲にすることで、芳香族化合物やパラフィン類の副生を抑制することができ、プロピレン及び直鎖ブテンの収率を向上させることができる。また反応速度を維持できるため、触媒量を抑制することができ、反応器の大きさも抑制可能となる。
【0119】
従って、このような好ましい基質濃度となるように、必要に応じて以下に記載する希釈剤で反応基質を希釈することが好ましい。
【0120】
(希釈剤)
反応器内には、有機化合物原料の他に、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水、パラフィン類、メタン等の炭化水素類、芳香族化合物類、および、それらの混合物など、反応に不活性な気体を希釈剤として存在させることができるが、この中でもヘリウム、窒素、水(水蒸気)が共存しているのが、反応後、生成物との分離が容易であることから好ましい。
【0121】
このような希釈剤としては、有機化合物原料に含まれている不純物をそのまま使用しても良いし、別途調製した希釈剤を有機化合物原料と混合して用いても良い。
また、希釈剤は反応器に入れる前に有機化合物原料と混合しても良いし、有機化合物原料とは別に反応器に供給しても良い。
【0122】
(重量空間速度)
ここで言う重量空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの反応基質である有機化合物原料の流量であり、ここで触媒の重量とは触媒の造粒・成形に使用する不活性成分やバインダーを含まない触媒活性成分の重量である。また、流量は有機化合物原料(例えば、エチレンおよび/またはメタノールおよび/またはジメチルエーテル)の合計の流量(重量/時間)である。
【0123】
重量空間速度は、特に限定されるものではないが、通常0.01Hr−1以上、好ましくは0.1Hr−1以上、より好ましくは0.3Hr−1以上、さらに好ましくは0.5Hr−1以上であり、通常50Hr−1以下、好ましくは20Hr−1以下、より好ましくは10Hr−1以下、さらに好ましくは5Hr−1以下である。重量空間速度を上記範囲に設定することで、反応器出口ガス中の未反応の有機化合物原料の割合を減らすことができると共に、芳香族化合物やパラフィン類等の副生成物を減らすことができるため、プロピレン及び直鎖ブテンの収率を向上させることができる点で好ましい。また、一定の生産量を得るのに必要な触媒量を抑えることができ、反応器の大きさを抑えられるため好ましい。
【0124】
(反応温度)
反応温度は、有機化合物原料(例えば、メタノールおよび/またはジメチルエーテルおよび/またはエチレン)が触媒と接触してプロピレン及び直鎖ブテンを生成する温度であれば、特に制限されるものではないが、通常250℃以上、好ましくは300℃以上、より好ましくは325℃以上、さらに好ましくは350℃以上であり、通常600℃以下、好ましくは500℃以下、より好ましくは450℃以下、さらに好ましくは400℃以下である。反応温度を上記範囲にすることで、芳香族化合物やパラフィン類の副生を抑制することができるため、プロピレン及び直鎖ブテンの収率、とりわけ直鎖ブテン収率を向上させることができる。また、有機化合物原料の転化活性を高いレベルで維持することができるため、長時間にわたって高いプロピレン及び直鎖ブテン収率で製造することができる。さらに、触媒のゼオライト骨格からの脱アルミニウムが抑制されるため、触媒寿命を維持できる点で好ましい。なお、ここでの反応温度とは、触媒層出口の温度をさす。
【0125】
(反応圧力)
反応圧力は特に制限されるものではないが、通常0.01MPa(絶対圧、以下同様)以上、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上、さらに好ましくは0.2MPa以上であり、通常5MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.7MPa以下、さらに好ましくは0.5MPa以下である。反応圧力を上記範囲にすることで芳香族化合物やパラフィン類等の副生を抑制することができ、プロピレン及び直鎖ブテンの収率を向上させることができる。また反応速度も維持できる。
【0126】
(原料分圧)
有機化合物原料(例えば、エチレンおよび/またはメタノールおよび/またはジメチルエーテル)の合計の分圧は特に制限されるものではないが、通常0.005MPa以上(絶対圧、以下同様)、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.03MPa以上、さらに好ましくは0.05MPa以上、特に好ましくは0.07MPa以上であり、通常3MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下、さらに好ましくは0.3MPa以下、特に好ましくは0.1MPa以下である。原料の分圧を上記範囲にすることで芳香族化合物やパラフィン類等の副生を抑制することができ、プロピレン及び直鎖ブテンの収率を向上させることができる。また反応速度も維持できる。
【0127】
(転化率)
本発明において、有機化合物原料の転化率は特に制限されるものではないが、例えば、エチレンを有機化合物原料として用いた場合、その転化率は、通常30%以上であり、好ましくは40%以上であり、より好ましくは50以上であり、通常100%未満、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下である。また、有機化合物原料としてメタノールおよび/またはジメチルエーテルを用いた場合、その転化率は、通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上、さらに好ましくは99.5%以上であり、通常100%以下である。転化率が上記範囲になるように調整することで、芳香族化合物やパラフィン類の副生、およびゼオライト細孔内へのコークの蓄積を抑制することができ、プロピレン及び直鎖ブテンの収率を向上させることができ、かつ高い直鎖ブテン/プロピレン比で製造することができる。また、生成物中からの未反応原料の分離効率を高めることができる。
【0128】
通常、反応時間の経過とともにコークの蓄積が進行し、有機化合物原料の転化率は低下する傾向にあるため、一定時間反応させた触媒は、再生処理に供する必要がある。
【0129】
上記の転化率の範囲で運転する方法としては、特に制限されないが、以下のような方法が挙げられる。
例えば、固定床反応器で反応を行う場合には、複数個の反応器を並列に設け、転化率が上記の好ましい範囲から低下した際には、触媒と反応原料との接触を停止し、該触媒を再生工程に供する。固定床反応器においては、反応時間及び再生時間を適宜調整する、すなわち、運転における反応工程と再生工程とを切り替える時間を適宜調整することにより、上記の好ましい範囲の転化率で連続的に運転することができる。
また、流動床反応器で反応を行う場合には、反応器に対して触媒の再生器を付設し、反応器から抜き出した触媒を連続的に再生器に送り、再生器において再生された触媒を連続的に反応器に戻しながら、反応を行うことが好ましい。触媒の反応器内での滞留時間と再生器内での滞留時間を適宜調整することにより、上記の好ましい範囲の転化率で連続的に運転することができる。
【0130】
有機化合物原料の転化率が低下した触媒は、各種公知の触媒の再生方法を使用して再生することができる。
再生方法は特に限定されるものではないが、例えば、空気、窒素、水蒸気、水素等を用いて再生することができ、空気、水素を用いて再生することが好ましい。
【0131】
(反応生成物)
反応器出口ガス(反応器流出物)としては、反応生成物である、エチレン、プロピレン及び直鎖ブテン等の低級オレフィン、副生成物及び希釈剤を含む混合ガスが得られる。前記混合ガス中のプロピレン及び直鎖ブテンの濃度は、特に限定されないが、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上であり、通常95質量%以下、好ましくは90質量%以下である。
【0132】
反応条件によっては反応生成物中に未反応原料が含まれるが、未反応原料が少なくなるような反応条件で反応を行うのが好ましい。それにより、反応生成物と未反応原料との分離が容易になり、好ましくは反応生成物と未反応原料との分離が不要になる。
【0133】
副生成物としては、炭素数が4以上のオレフィン類、パラフィン類、芳香族化合物および水が挙げられる。
【0134】
本発明では、所望により、プロピレンや直鎖ブテン以外の成分をも分離・回収してもよい。特に、エチレンは、市場価格が高いため、その需要が大きい場合には、プロピレンや直鎖ブテンとともに、分離・回収することが望ましい。
【0135】
反応生成物から所望の成分を分離・回収した残分には、軽質パラフィン、エチレン、炭素数5以上のオレフィン、芳香族化合物、スチーム等を含む。この残分の少なくとも一部を、前述した原料ガスの一部に混合して、いわゆるリサイクルガスとして用いることができる。
【0136】
プロピレン及び直鎖ブテンの合計の収率は特に制限されるものではないが、通常30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上であり、上限は特に制限されないが、通常100%である。プロピレン及び直鎖ブテンの合計の収率が上記範囲にあることで、反応器出口における目的生成物の収率が十分なものとなり、原料コスト及び分離・精製の負荷を低減することができる点で好ましい。
【0137】
直鎖ブテンの収率は特に制限されるものではないが、通常15%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは25%、さらに好ましくは30%以上であり、上限は特に制限されないが、通常90%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下である。直鎖ブテンの収率が上記範囲にあることで、反応器出口における目的生成物の収率が十分なものとなり、原料コスト及び分離・精製の負荷を低減することができる点で好ましい。直鎖ブテンの収率は、例えば反応条件として、反応温度をより下げることで上げることができる。
【0138】
全ブテン中の直鎖ブテンの比率(以下、直鎖ブテン/全ブテン)は、特に制限されるものではないが、通常60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であり、最も好ましくは100%である。直鎖ブテン/全ブテン比率が、上記範囲にあることで、目的とする直鎖ブテンの収率が十分なものとなり、また、直鎖ブテンの分離・精製工程における負荷を低減することができる点で好ましい。
【0139】
(生成物の分離)
反応器出口ガスとしての、反応生成物であるプロピレン及び直鎖ブテン、未反応原料、副生成物及び希釈剤を含む混合ガスは、公知の分離・精製設備に導入し、それぞれの成分に応じて回収、精製、リサイクル、排出の処理を行えば良い。
【0140】
この分離・精製方法の一つの態様として、反応器出口のガスを冷却・圧縮し、凝縮した大部分の水分を除去する工程を含み、水分を除去した後の一部水分を含んだ炭化水素流体をモレキュラーシーブ等で乾燥し、その後蒸留により各オレフィンおよびパラフィンを精製する工程を含む方法が適用される。上記方法において、圧縮した炭化水素流体を一つの蒸留塔に供給しても良いが、多段階の圧縮機を設置し、凝縮しやすい炭化水素と凝縮しにくい炭化水素を粗分離し、これらを別々の蒸留塔に供給して蒸留を行っても良い。
【0141】
プロピレン及び直鎖ブテン以外の成分(オレフィン、パラフィン等)、特に炭素数5以上の炭化水素の一部または全ては、上記分離・精製された後に反応原料と混合するか、または直接反応器に供給することでリサイクルしても良い。また、副生成物のうち、反応に不活性な成分は希釈剤として再利用することができる。
【0142】
(プロピレンの用途)
本発明の製造方法によって得られたプロピレンは、これを重合することによりポリプロピレンを製造することができる。プロピレンの重合の方法は特に限定されないが、本発明により得られたプロピレンを直接、原料モノマーとして重合反応器に導入して使用することができる。また、本発明により得られたプロピレンは、ポリプロピレン以外にも、後述する各種反応を経てプロピレン誘導品の原料としても利用できる。例えば、アンモニア酸化によりアクリロニトリル、選択酸化によりアクロレイン、アクリル酸及びアクリル酸エステル、オキソ反応によりノルマルブチルアルコール、選択酸化によりプロピレンオキサイド及びプロピレングリコール等が製造することができる。また、プロピレンから、ワッカー反応によりアセトンを製造することができ、更に得られたアセトンよりメチルイソブチルケトンを製造することができる。また、アセトンからは、アセトンシアンヒドリンを経てメチルメタクリレートを製造することができる。また、プロピレンから、水和反応によりイソプロピルアルコールを製造することができる。また、プロピレンとベンゼンと反応させて得られるキュメンを原料に、フェノール、ビスフェノールA、またはポリカーボネート樹脂を製造することができる。
【0143】
(直鎖ブテンの用途)
本発明の製造方法によって得られた直鎖ブテンは、脱水素化することによりブタジエンを製造することができる。さらに、ブタジエンは、単独重合によりポリブタジエン(BR)、スチレンとの共重合によりスチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルとスチレンとの共重合によりアクリロニトリル−スチレン−ブタジエン樹脂(ABS樹脂)等を製造することができる。また直鎖ブテンは、その他のブテン誘導品の原料としても利用できる。例えば、直鎖ブテンは、間接水和法によりsec−ブチルアルコールを経て、続く脱水素化反応によりメチルエチルケトンを製造することができる。1−ブテンからは、重合によりポリブテン−1を製造することができ、オキソ反応によりアミルアルコール等を製造することができる。
【実施例】
【0144】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0145】
なお、以下において、得られたゼオライトの結晶のX線回折(XRD)パターンは、Rigaku社製のRINT UltimaIIIを用いて得た。X線源はCuKαであり(X線出力:40kV、40mA)、読込幅は0.2°である。
また、合成したゼオライトの組成は、誘導結合プラズマ発光分光分析により測定した。
粒子の形状は、HITACHIハイテクノロジーズ社製の走査電子顕微鏡S−5200を用いて、導電処理を行った試料を、加速電圧1.0kVで観察をすることにより測定した。
NH−TPD測定は、日本ベル(現マイクロトラックベル)社製のBELCAT−Aにより行った。
【0146】
<調製例1>
構造規定剤として用いたテトラエチルホスホニウムハイドロキサイド水溶液は、水110gにテトラエチルホスホニウムブロミド(東京化成工業製)50gおよびイオン交換樹脂(三菱化学製、ダイヤイオン)110gを加えて12時間静置することで調製した。得られたテトラエチルホスホニウムハイドロキサイド水溶液濃度は2.2M、1.1g/mlであった。
【0147】
<実施例1>
水酸化ナトリウム水溶液(8M,和光純薬工業製)0.54g、調製例1で得たテトラエチルホスホニウムハイドロキサイド水溶液3.3gを順に、水0.41gに溶解し、ホウ酸(和光純薬工業製)0.82gを加えてホウ酸が溶解するまで撹拌した後、ケイ素源としてFAU型ゼオライト(Si/Alモル比30,ZEOLYST製CBV−760)2.1gを加え、1時間撹拌することにより前駆体混合物を得た。この前駆体混合物を20mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、40rpmで回転させながら、170℃で5日間、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末2.2gを得た。生成物のXRDパターン(図1)から、得られた生成物がAEI型ゼオライトであることを確認した。ICP元素分析より、Si/Bモル比は20(B/Si=0.050)、Si/Alモル比は28(Al/Si=0.038)であり、空気焼成した場合のP/Siモル比は0.083、水素焼成した場合のP/Siモル比は0.027であることを確認した。SEM画像より、平均一次粒子径は約0.5μmであることを確認した。
【0148】
<実施例2>
ケイ素源としてFAU型ゼオライト(Si/Alモル比15,ZEOLYST製CBV−720)2.1gを用いた以外は、実施例1と同様の方法と条件で、前駆体混合物を調製し、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末1.9gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がAEI型ゼオライトであることを確認した。ICP元素分析より、Si/Bモル比は52(B/Si=0.019)、Si/Alモル比は15(Al/Si=0.067)であることを確認した。
【0149】
<実施例3>
ホウ酸の添加量を0.14gとした以外は、実施例2と同様の方法と条件で、前駆体混合物を調製し、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末1.8gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がAEI型ゼオライトであることを確認した。ICP元素分析より、Si/Bモル比は73(B/Si=0.014)、Si/Alモル比は14(Al/Si=0.071)であることを確認した。
【0150】
<実施例4>
ホウ酸の添加量を0.068gとした以外は、実施例2と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末1.7gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がAEI型ゼオライトであることを確認した。ICP元素分析より、Si/Bモル比は126(B/Si=0.008)、Si/Alモル比は14(Al/Si=0.071)であることを確認した。
【0151】
<実施例5>
テトラエチルホスホニウムハイドロキサイド水溶液の添加量を2.5gとし、水を0.96g用いた以外は、実施例4と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末1.5gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がAEI型ゼオライトであることを確認した。ICP元素分析より、Si/Bモル比は358(B/Si=0.003)、Si/Alモル比は12(Al/Si=0.083)であることを確認した。
【0152】
<実施例6>
水酸化ナトリウム水溶液0.27g、テトラエチルホスホニウムハイドロキサイド水溶液3.3gを順に、水0.66gに溶解し、硝酸ガリウム(III)n水和物(純度99.9質量%,和光純薬工業製)0.44gを加えて硝酸ガリウムが溶解するまで撹拌した後、ケイ素源としてFAU型ゼオライト(Si/Alモル比30,ZEOLYST製CBV−760)2.1gを加え、1時間撹拌することにより前駆体混合物を得た。この前駆体混合物を20mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、40rpmで回転させながら、170℃で5日間、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末1.5gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がAEI型ゼオライトであることを確認した。ICP元素分析より、Si/Gaモル比は18(Ga/Si=0.056)、Si/Alモル比は18(Al/Si=0.056)であり、空気焼成した場合のP/Siモル比は0.16、水素焼成した場合のP/Siモル比は0.056であることを確認した。
【0153】
<比較例1>
テトラエチルホスホニウムハイドロキサイド水溶液の添加量を0.33gとし、水を2.4g用いた以外は、実施例1と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末2.0gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物が非晶質相とFAU相(少量)であることを確認した。
【0154】
<比較例2>
水酸化ナトリウム水溶液0.54g、テトラエチルホスホニウムハイドロキサイド水溶液9.8gにホウ酸0.82gを加えてホウ酸が溶解するまで撹拌した後、ケイ素源としてFAU型ゼオライト(Si/Alモル比30,ZEOLYST製CBV−760)2.1gを加え、80℃で加熱しながら4.0gの水を蒸発させることにより前駆体混合物を得た。この前駆体混合物を20mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、40rpmで回転させながら、170℃で5日間、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末2.0gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がFAU相であることを確認した。
【0155】
<比較例3>
水酸化ナトリウム水溶液0.54g、テトラエチルホスホニウムハイドロキサイド水溶液3.3gを順に、水0.41gに溶解させた後、ケイ素源としてFAU型ゼオライト(Si/Alモル比30,ZEOLYST製CBV−760)2.1gを加え、1時間撹拌することにより前駆体混合物を得た。この前駆体混合物を20mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、40rpmで回転させながら、170℃で5日間、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末1.0gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がBEA相とRTH相の混合相であることを確認した。
【0156】
<比較例4>
水酸化ナトリウム水溶液0.18g、テトラエチルホスホニウムハイドロキサイド水溶液4.4gを順に、水1.1gに溶解させ、10分撹拌した後、ケイ素源としてFAU型ゼオライト(Si/Alモル比15,ZEOLYST製CBV−720)3.0gを加え、1時間撹拌することにより前駆体混合物を得た。この前駆体混合物を20mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、40rpmで回転させながら、170℃で5日間、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末2.3gを得た。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がAEI相であることを確認した。ICP元素分析より、Si/Alモル比は11(Al/Si=0.091)であり、空気焼成した場合のP/Siモル比は0.09、水素焼成した場合のP/Siモル比は0.036であることを確認した。
【0157】
以上の実施例1〜6及び比較例1〜4における原料、合成条件、合成結果を表1A、表1Bにまとめて示す。表1A、表1B中、テトラエチルホスホニウムカチオンは「SDA」と記載する。
【0158】
【表1】
【0159】
<実施例7>
実施例1で得られたAEI型ゼオライトを、水素流通下600℃で6時間焼成を行い、Na型のAEI型ゼオライトを得た。次いで、2.5Mの硝酸アンモニウム水溶液で80℃、3時間のイオン交換を2回行い、100℃で乾燥した後、空気流通下、600℃で3時間焼成し、プロトン型のAEI型ゼオライトを得た。これを触媒として、エチレンを原料とするプロピレン及び直鎖ブテンの合成反応を行った。
反応には、常圧固定床流通反応装置を用い、内径4.0mmの石英反応管に、上記触媒100mgと石英砂約0.010gの混合物を充填した。
エチレン及びヘリウムを、エチレンの重量空間速度が48Hr−1で、エチレン20体積%とヘリウム80体積%となるように反応器に供給し、350℃、0.1MPa(絶対圧)でプロピレン及び直鎖ブテンの合成反応を実施し、反応開始から5分後及び30分後の反応器出口ガスのガスクロマトグラフィーによる分析値から、転化率、選択率及び収率を算出した。その結果を表2に示す。
【0160】
<比較例5>
比較例4で得られたAEI型ゼオライトを用いた以外は、実施例7と同様にプロトン型のAEI型ゼオライトを得、これを触媒として、同様にエチレンを原料とするプロピレン及び直鎖ブテンの合成反応を行った。同様に反応開始から5分後及び30分後の反応器出口ガスのガスクロマトグラフィー分析値から、転化率、選択率及び収率を算出した。その結果を表2に示す。
【0161】
転化率は次の式により算出される値である。
エチレン転化率(%)=〔[反応器入口エチレン(mol/Hr)−反応器出口エチレ
ン(mol/Hr)]/反応器入口エチレン(mol/Hr)〕×100
【0162】
また、選択率は、以下の各式により算出される値である。下記の各式において、プロピレン、直鎖ブテン、C5+、またはパラフィンの炭化水素の「由来カーボン流量(mol/Hr)」とは、各炭化水素を構成する炭素原子のモル流量を意味する。
尚、パラフィンは炭素数1から4のパラフィンの合計、C5+は芳香族化合物を除いた炭素数5以上の炭化水素の合計である。
【0163】
・プロピレン選択率(%)=〔反応器出口プロピレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器出口エチレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
・直鎖ブテン選択率(%)=〔反応器出口直鎖ブテン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器出口エチレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
・C5+選択率(%)=〔反応器出口C5+由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器出口エチレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
・パラフィン選択率(%)=〔反応器出口パラフィン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器出口エチレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
【0164】
また、収率は、前記エチレン転化率と、生成した各成分の選択率の積により求められ、具体的にプロピレン収率、直鎖ブテン収率は、それぞれ次の式で表される。
・プロピレン収率(%)=エチレン転化率(%)×プロピレン選択率(%)/100
・直鎖ブテン収率(%)=エチレン転化率(%)×直鎖ブテン選択率(%)/100
【0165】
【表2】
【0166】
以上の結果から明らかなように、本発明の製造方法により、ケイ素と、元素M(Mは、ホウ素、ガリウム、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種)と、リンを含むAEI型ゼオライトを効率的に製造することができる。また、本発明のAEI型ゼオライトは、中程度の酸点として作用する元素Mを含むため、有機化合物原料から低級オレフィンを製造する反応において触媒として使用した場合、高いプロピレン及び直鎖ブテン収率で製造することができる。
図1
図2