特許第6798548号(P6798548)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧

特許6798548ペルフルオロブロックポリマー、液状組成物、固体高分子電解質膜、および固体高分子形燃料電池用膜電極接合体
<>
  • 特許6798548-ペルフルオロブロックポリマー、液状組成物、固体高分子電解質膜、および固体高分子形燃料電池用膜電極接合体 図000015
  • 特許6798548-ペルフルオロブロックポリマー、液状組成物、固体高分子電解質膜、および固体高分子形燃料電池用膜電極接合体 図000016
  • 特許6798548-ペルフルオロブロックポリマー、液状組成物、固体高分子電解質膜、および固体高分子形燃料電池用膜電極接合体 図000017
  • 特許6798548-ペルフルオロブロックポリマー、液状組成物、固体高分子電解質膜、および固体高分子形燃料電池用膜電極接合体 図000018
  • 特許6798548-ペルフルオロブロックポリマー、液状組成物、固体高分子電解質膜、および固体高分子形燃料電池用膜電極接合体 図000019
  • 特許6798548-ペルフルオロブロックポリマー、液状組成物、固体高分子電解質膜、および固体高分子形燃料電池用膜電極接合体 図000020
  • 特許6798548-ペルフルオロブロックポリマー、液状組成物、固体高分子電解質膜、および固体高分子形燃料電池用膜電極接合体 図000021
  • 特許6798548-ペルフルオロブロックポリマー、液状組成物、固体高分子電解質膜、および固体高分子形燃料電池用膜電極接合体 図000022
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6798548
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】ペルフルオロブロックポリマー、液状組成物、固体高分子電解質膜、および固体高分子形燃料電池用膜電極接合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20201130BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20201130BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20201130BHJP
   H01M 8/1004 20160101ALI20201130BHJP
   H01M 8/1039 20160101ALI20201130BHJP
   H01M 8/1067 20160101ALI20201130BHJP
   H01M 8/1081 20160101ALI20201130BHJP
【FI】
   C08F293/00
   H01M4/86 B
   H01M8/10 101
   H01M8/1004
   H01M8/1039
   H01M8/1067
   H01M8/1081
【請求項の数】16
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-509134(P2018-509134)
(86)(22)【出願日】2017年3月22日
(86)【国際出願番号】JP2017011502
(87)【国際公開番号】WO2017170055
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2019年8月7日
(31)【優先権主張番号】特願2016-65766(P2016-65766)
(32)【優先日】2016年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平居 丈嗣
(72)【発明者】
【氏名】渡部 浩行
(72)【発明者】
【氏名】奥山 匠
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−212246(JP,A)
【文献】 特開2001−226436(JP,A)
【文献】 特開2002−212234(JP,A)
【文献】 特開2008−153175(JP,A)
【文献】 特許第4150867(JP,B2)
【文献】 国際公開第2016/002889(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 293/00
C08F 251/00 − 283/00
C08F 283/02 − 289/00
C08F 291/00 − 297/08
C08L 53/00 − 53/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換基を有するペルフルオロブロックポリマーであり、
イオン交換基を有する第1のセグメントと、イオン交換基を有さない第2のセグメントとを有するABA型ブロックポリマー(ただし、Aは前記第1のセグメントを表し、Bは前記第2のセグメントを表す。)であって、
前記第1のセグメントは、下式(u1)で表される構成単位及び下式(u2)で表される構成単位のいずれか一方又は両方を有し、
前記第2のセグメントは、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく構成単位を有し、
質量平均分子量が、100000〜1000000であり、
かつ下記tanδ−温度曲線において、−50〜30℃に少なくとも1つのピークが存在し、90〜160℃に少なくとも1つのピークが存在することを特徴とするペルフルオロブロックポリマー。
【化1】
式(u1)中、Qは、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Yは、フッ素原子または1価のペルフルオロ有機基であり、sは、0または1であり、Rf1は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキル基であり、Xは、酸素原子、窒素原子または炭素原子であり、aは、Xが酸素原子の場合0であり、Xが窒素原子の場合1であり、Xが炭素原子の場合2であり、Zは、H、一価の金属イオン、または1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンである。
【化2】
式(u2)中、Q21は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Q22は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Yは、フッ素原子または1価のペルフルオロ有機基であり、tは、0または1であり、Rf2は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキル基であり、Xは、酸素原子、窒素原子または炭素原子であり、bは、Xが酸素原子の場合0であり、Xが窒素原子の場合1であり、Xが炭素原子の場合2であり、Zは、H、一価の金属イオン、または1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンである。
tanδ−温度曲線:
前記ペルフルオロブロックポリマーについて、動的粘弾性測定装置を用いて試料幅:5.0mm、つかみ間長:15mm、測定周波数:1Hz、昇温速度:2℃/分、引張モードの条件にて、動的粘弾性測定を行い、tanδ(損失正接)−温度曲線を求める。
【請求項2】
イオン交換基が、−SOFから変換されたイオン交換基である、請求項1に記載のペルフルオロブロックポリマー。
【請求項3】
30℃における貯蔵弾性率が、100MPa以下である、請求項1または2に記載のペルフルオロブロックポリマー。
【請求項4】
イオン交換容量が、0.5〜4.0ミリ当量/g乾燥樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペルフルオロブロックポリマー。
【請求項5】
含水率が、10〜500%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のペルフルオロブロックポリマー。
【請求項6】
伝導度が、80℃、50%相対湿度の条件下において、0.01S/cm以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のペルフルオロブロックポリマー。
【請求項7】
前記第1のセグメントが、上式(u2)で表される構成単位を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のペルフルオロブロックポリマー。
【請求項8】
前記ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)の炭素数が12以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載のペルフルオロブロックポリマー。
【請求項9】
前記ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)が、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)およびペルフルオロ(ブチルビニルエーテル)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜のいずれか一項に記載のペルフルオロブロックポリマー。
【請求項10】
質量平均分子量が、110000〜900000である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のペルフルオロブロックポリマー。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のペルフルオロブロックポリマーと、液状媒体と
を含むことを特徴とする液状組成物。
【請求項12】
前記液状媒体として、含フッ素アルコールおよび炭化水素アルコールを含む、請求項11に記載の液状組成物。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のペルフルオロブロックポリマーを含むことを特徴とする固体高分子電解質膜。
【請求項14】
前記ペルフルオロブロックポリマーが、前記第1のセグメントに基づくハードセグメントと前記第2のセグメントに基づくソフトセグメントが相分離構造を形成する、請求項13に記載の固体高分子電解質膜。
【請求項15】
前記ハードセグメントが連続相を形成し、該連続相に前記ソフトセグメントが分散している、請求項14に記載の固体高分子電解質膜。
【請求項16】
触媒層を有するアノードと、触媒層を有するカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された固体高分子電解質膜とを備え、
前記アノードの触媒層、前記カソードの触媒層、および前記固体高分子電解質膜からなる群から選ばれる少なくとも1つが、請求項1〜10のいずれか一項に記載のペルフルオロブロックポリマーを含むことを特徴とする固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペルフルオロブロックポリマー、液状組成物、固体高分子電解質膜、および固体高分子形燃料電池用膜電極接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池は、たとえば、2つのセパレータの間に膜電極接合体を挟んでセルを形成し、複数のセルをスタックしたものである。膜電極接合体は、触媒層を有するアノードおよびカソードと、アノードとカソードとの間に配置された固体高分子電解質膜とを備えたものである。
【0003】
固体高分子形燃料電池においては、運転条件によって加湿と乾燥とが繰り返される。固体高分子電解質膜は、イオン交換樹脂を含むため、加湿によって膨潤し、乾燥によって収縮する。そのため、固体高分子電解質膜が加湿による膨潤と乾燥による収縮とを繰り返すことによって、固体高分子電解質膜にシワが発生しやすくなり、シワをきっかけに破断が生じやすい。固体高分子電解質膜の抵抗を減らして固体高分子形燃料電池の発電性能を向上させる点から、固体高分子電解質膜の薄肉化が求められているが、固体高分子電解質膜を薄くすると、シワの発生に起因する破断が顕著になる。そのため、加湿と乾燥とが繰り返される環境でも、より高い機械的耐性を持つ固体高分子電解質膜が望まれている。
また、触媒層は、触媒とイオン交換樹脂とを含む。触媒層は、触媒を多く含むため、クラックが入りやすい。
【0004】
ところで、固体高分子電解質膜や触媒層に含まれるイオン交換樹脂としては、下記の(1)〜(3)が提案されている。
(1)イオン交換基を有するペルフルオロビニルエーテルに基づく構成単位とテトラフルオロエチレンに基づく構成単位とを有するコポリマーからなるセグメントAと、イオン交換基を有さず、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく構成単位とテトラフルオロエチレンに基づく構成単位とからなるコポリマーであって、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく構成単位が20モル%以上含まれる非晶質のコポリマーからなるセグメントCとからなり、かつ分子量が5×10〜5×10であるブロックポリマー(特許文献1)。
(2)イオン交換基を有する分子量5000〜1000000のコポリマーからなる含フッ素ポリマー鎖セグメント(A)と、イオン交換基を有さない分子量1000〜1200000の含フッ素ポリマー鎖セグメント(B)とを有し、含フッ素ポリマー鎖セグメント(B)の結晶融点またはガラス転移点が100℃以上である含フッ素多元セグメント化ポリマー(特許文献2)。
(3)フッ素化モノマーに基づく構成単位とイオン交換基を有するフッ素化モノマーに基づく構成単位からなる、架橋にイオン交換基を伴わない架橋スルホンフッ素化イオノマー(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本特開2002−212246号公報
【特許文献2】日本特許第4150867号公報
【特許文献3】日本特開2002−053619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シワの発生による固体高分子電解質膜の破断を抑えるためには、シワが発生しても、元の形状に戻ろうとする形状復元性と、シワがさらに伸ばされても破断が生じにくいような高い伸度とを有するイオン交換樹脂を用いることが考えられる。
【0007】
しかし、上記(1)のブロックポリマーは、後述する理由から形状復元性が不充分である。また、上記(2)の含フッ素多元セグメント化ポリマーは、後述する理由から形状復元性および伸度が不充分である。また、上記(3)の架橋スルホンフッ素化イオノマーは、架橋しているため、成形性に劣る。そのため、また、上記(3)の架橋スルホンフッ素化イオノマーを用いた場合、固体高分子電解質膜の薄肉化が困難である。
【0008】
本発明は、形状復元性に優れ、伸度が高く、成形性に優れるイオン交換樹脂として用いることができるペルフルオロブロックポリマー;シワが発生しにくく、破断しにくく、薄肉な固体高分子電解質膜を形成できる、またはクラックが入りにくい触媒層を形成できる液状組成物;シワが発生しにくく、破断しにくく、薄肉化が可能な固体高分子電解質膜;および固体高分子電解質膜のシワおよび破断、または触媒層のクラックが抑えられ、発電性能に優れる固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の態様を有する。
<1>イオン交換基を有するペルフルオロブロックポリマーであり、下記tanδ−温度曲線において、−50〜30℃に少なくとも1つのピークが存在し、90〜160℃に少なくとも1つのピークが存在することを特徴とするペルフルオロブロックポリマー。
tanδ−温度曲線:
前記ペルフルオロブロックポリマーについて、動的粘弾性測定装置を用いて試料幅:5.0mm、つかみ間長:15mm、測定周波数:1Hz、昇温速度:2℃/分、引張モードの条件にて、動的粘弾性測定を行い、tanδ(損失正接)−温度曲線を求める。
<2>イオン交換基が、−SOFから変換されたイオン交換基である前記<1>のペルフルオロブロックポリマー。
<3>30℃における貯蔵弾性率が、100MPa以下である前記<1>または<2>のペルフルオロブロックポリマー。
<4>イオン交換容量が、0.5〜4.0ミリ当量/g乾燥樹脂である前記<1>〜<3>のいずれかのペルフルオロブロックポリマー。
<5>含水率が、10〜500%である前記<1>〜<4>のいずれかのペルフルオロブロックポリマー。
<6>伝導度が、80℃、50%相対湿度の条件下において、0.01S/cm以上である前記<1>〜<5>のいずれかのペルフルオロブロックポリマー。
<7>イオン交換基を有する第1のセグメントと、イオン交換基を有さない第2のセグメントとを有する、前記<1>〜<6>のいずれかのペルフルオロブロックポリマー。
<8>前記第1のセグメントが、下式(u2)で表される構成単位を有する、前記<7>のペルフルオロブロックポリマー。
【化1】
ただし、Q21は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Q22は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Yは、フッ素原子または1価のペルフルオロ有機基であり、tは、0または1であり、Rf2は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキル基であり、Xは、酸素原子、窒素原子または炭素原子であり、bは、Xが酸素原子の場合0であり、Xが窒素原子の場合1であり、Xが炭素原子の場合2であり、Zは、H、一価の金属イオン、または1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンである。
<9>前記第2のセグメントが、ペルフルオロビニルエーテルに基づく構成単位を有する、前記<7>または<8>のペルフルオロブロックポリマー。
<10>質量平均分子量が、100000〜1000000である、前記<1>〜<9>のいずれかのペルフルオロブロックポリマー。
<11>前記<1>〜<10>のいずれかのペルフルオロブロックポリマーと、液状媒体とを含むことを特徴とする液状組成物。
<12>前記液状媒体として、含フッ素アルコールおよび炭化水素アルコールを含む、前記<11>の液状組成物。
<13>前記<1>〜<10>のいずれかのペルフルオロブロックポリマーを含むことを特徴とする固体高分子電解質膜。
<14>前記ペルフルオロブロックポリマーが、イオン交換基を有する第1のセグメントと、イオン交換基を有さない第2のセグメントとを有し、該第1のセグメントに基づくハードセグメントと該第2のセグメントに基づくソフトセグメントが相分離構造を形成する前記<13>に記載の固体高分子電解質膜。
<15>前記第1のセグメントが連続相を形成し、該連続相に前記第2のセグメントが分散している前記<14>の固体高分子電解質膜。
<16>触媒層を有するアノードと、触媒層を有するカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された固体高分子電解質膜とを備え、前記アノードの触媒層、前記カソードの触媒層、および前記固体高分子電解質膜からなる群から選ばれる少なくとも1つが、前記<1>〜<10>のいずれかのペルフルオロブロックポリマーを含むことを特徴とする固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
【発明の効果】
【0010】
本発明のペルフルオロブロックポリマーは、形状復元性に優れ、伸度が高く、成形性に優れるイオン交換樹脂として用いることができる。本発明の液状組成物によれば、シワが発生しにくく、破断しにくく、薄肉な固体高分子電解質膜を形成できる、またはクラックが入りにくい触媒層を形成できる。本発明の固体高分子電解質膜は、シワが発生しにくく、破断しにくく、薄肉化が可能である。また、加湿と乾燥とが繰り返される環境でも、より高い機械的耐性を持つ。本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体は、固体高分子電解質膜のシワおよび破断、または触媒層のクラックが抑えられ、発電性能に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のペルフルオロブロックポリマーの膜の一例の横断面を示す倍率1万倍の透過型電子顕微鏡写真である。
図2】本発明のペルフルオロブロックポリマーの膜の一例の横断面を示す倍率5万倍の透過型電子顕微鏡写真である。
図3】膜電極接合体の一例を示す模式断面図である。
図4】膜電極接合体の他の例を示す模式断面図である。
図5】例1のペルフルオロブロックポリマーからなる固体高分子型電解質膜の動的粘弾性の測定結果を示すグラフである。
図6】例2のペルフルオロブロックポリマーからなる固体高解質膜の動的粘弾性の測定結果を示すグラフである。
図7】例3のペルフルオロポリマーからなる固体高分子型電解質膜の動的粘弾性の測定結果を示すグラフである。
図8】例4のペルフルオロポリマーからなる固体高分子型電解質膜の動的粘弾性の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書および請求の範囲における、用語の定義及び記載の仕方は、以下に記載のとおりである。
式(u1)で表される構成単位を単位(u1)と記す。他の式で表される構成単位もこれに準じて記す。
式(m1)で表される化合物を、化合物(m1)と記す。他の式で表される化合物もこれに準じて記す。
【0013】
「ペルフルオロブロックポリマー」とは、2種以上のセグメントを有し、炭素原子に共有結合する水素原子がすべてフッ素原子に置換されたポリマー(ただし、分子鎖の末端にヨウ素原子を有してもよく、重合開始剤由来の水素原子を有してもよい。)を意味する。
「単位」とは、モノマーが重合することによって形成された該モノマーに基づく単位を意味する。単位は、モノマーの重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
「イオン交換基」とは、該基に含まれる陽イオンの一部が、他の陽イオンに交換しうる基を意味し、H、一価の金属カチオン、アンモニウムイオン等を有する基を意味する。イオン交換基としては、スルホン酸基、スルホンイミド基、スルホンメチド基等が挙げられる。
「スルホン酸基」は、−SOおよび−SOで表される基を含む。ただし、Mは、一価の金属イオン、または1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンである。
【0014】
<ペルフルオロブロックポリマー>
本発明のペルフルオロブロックポリマーは、イオン交換基を有するペルフルオロブロックポリマーである。本発明のペルフルオロブロックポリマーは、いわゆるAB型ブロックポリマーであってもよく、ABA型ブロックポリマーであってもよく、ABAB型ブロックポリマーであってもよく、他の型のブロックポリマーであってもよい。
【0015】
図1は、本発明のペルフルオロブロックポリマーの膜の一例の横断面を示す倍率1万倍の透過型電子顕微鏡写真であり、図2は、倍率5万倍の透過型電子顕微鏡写真である。図1における大きい輪状物は、マイクログリッドである。マイクログリッド中の黒色部(Cs染色部)がイオン交換基を有する第1のセグメントに基づく相であり、白色部がイオン交換基を有さない第2のセグメントに基づく相である。イオン交換基を有する第1のセグメントに基づく相はハードセグメントであり、イオン交換基を有さない第2のセグメントに基づく相はソフトセグメントである。図2から、ハードセグメントとソフトセグメントとは充分に相分離し、ソフトセグメントが、ハードセグメントからなる連続相にサブミクロンオーダーで分散していることがわかる。
【0016】
本発明のペルフルオロブロックポリマーは、下記tanδ−温度曲線において、−50〜30℃に少なくとも1つのピークが存在し、90〜160℃に少なくとも1つのピークが存在するものである。なかでも、−30〜20℃に少なくとも1つのピークが存在し、95〜150℃に少なくとも1つのピークが存在するものがより好ましく、特に、−15〜15℃に少なくとも1つのピークが存在し、110〜140℃に少なくとも1つのピークが存在するものが好ましい。
【0017】
tanδ−温度曲線:
動的粘弾性測定装置を用いて、試料幅:5.0mm、つかみ間長:15mm、測定周波数:1Hz、昇温速度:2℃/分、引張モードの条件にて、ペルフルオロブロックポリマーについての動的粘弾性測定を行い、tanδ(損失正接)−温度曲線を求める。
一般に、tanδのピークはポリマー鎖中の種々の運動に基づく緩和点を反映しているが、本明細書に記載のtanδのピークは、緩和機構における主分散に基づくピークとして考えられる。すなわち、tanδのピークより低い温度領域では、ポリマーは樹脂状であり、tanδのピーク温度より高い温度領域では、ポリマーはゴム状態となる。
【0018】
tanδ−温度曲線において、−50〜30℃に少なくとも1つのピークが存在するということは、このピーク温度よりも高い温度領域においては、ペルフルオロブロックポリマーにおけるソフトセグメントが軟化することを示す。軟化したソフトセグメントは、ゴム状態であり、ペルフルオロブロックポリマーの伸度を高くする。一方、tanδ−温度曲線において、90〜160℃に少なくとも1つのピークが存在するということは、このピーク温度よりも低い温度領域においては、ペルフルオロブロックポリマーにおけるハードセグメントが軟化していないことを示す。軟化していないハードセグメントは、樹脂状であり、ペルフルオロブロックポリマー全体が完全にゴム状態になることを抑え、ペルフルオロブロックポリマーが伸びた後に元に戻ろうとする特性、すなわち形状復元性をペルフルオロブロックポリマーに付与する。
【0019】
したがって、tanδ−温度曲線において、−50〜30℃に少なくとも1つのピークが存在し、90〜160℃に少なくとも1つのピークが存在するペルフルオロブロックポリマーは、燃料電池の使用温度領域(−50〜160℃)において、シワが発生しても、元の形状に戻ろうとする形状復元性と、シワがさらに伸ばされても破断が生じにくいような高い伸度とを有するものとなる。
【0020】
本発明のペルフルオロブロックポリマーは、30℃における貯蔵弾性率が、100MPa以下であるものが好ましく、90MPa以下であるものがより好ましく、80MPa以下であるものがさらに好ましい。該貯蔵弾性率が前記範囲の上限値以下であれば、ペルフルオロブロックポリマー全体が樹脂状に近い性質となりにくく、形状復元性にさらに優れる。該貯蔵弾性率の下限値は、特に限定されないが、ペルフルオロブロックポリマー全体がゴム状態に近い性質となりにくい点から、1MPaである。
本発明のペルフルオロブロックポリマーの30℃における貯蔵弾性率は、以下の方法により求めることができる。本発明のペルフルオロブロックポリマーを用いて、例えば、測定試料幅を5.0mm、つかみ間長さを15mmとする測定試料を作成し、測定周波数を1Hz、測定モードを引張モードとして、動的粘弾性測定装置にて動的粘弾性測定を行うと、粘弾性特性として、貯蔵弾性率、損失弾性率、損失正接(tanδ)等の温度依存性や周波数依存性を測定することができる。得られた貯蔵弾性率の温度依存性から、30℃における貯蔵弾性率の値を読み取ることにより、30℃における貯蔵弾性率を求めることができる。
【0021】
本発明のペルフルオロブロックポリマーの質量平均分子量は、100000〜1000000が好ましく、110000〜900000がより好ましく、200000〜800000がさらに好ましい。質量平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、ハードセグメントとソフトセグメントとが充分に相分離し、ハードセグメントによる特性およびソフトセグメントによる特性が充分に発揮され、形状復元性および伸度がさらに向上する。また、ハードセグメントがイオン交換基を有する第1のセグメントであれば、イオン交換基が第1のセグメントに集中し、ペルフルオロブロックポリマーの膜の伝導度を高くすることができる。一方、質量平均分子量が前記範囲の上限値以下であれば、ペルフルオロブロックポリマーの成形性がさらに優れる。
【0022】
本発明のペルフルオロブロックポリマーのイオン交換容量は、0.5〜4.0ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましく、0.7〜2.5ミリ当量/g乾燥樹脂がより好ましく、0.8〜2.0ミリ当量/g乾燥樹脂が特に好ましい。該イオン交換容量が前記範囲の下限値以上であれば、伝導度が高くなるため、発電性能がさらに優れる膜電極接合体が得られる。該イオン交換容量が前記範囲の上限値以下であれば、分子量の高いポリマーの合成が容易である。また、ペルフルオロブロックポリマーが過度に水で膨潤しないため、機械的強度を保持できる。
【0023】
本発明のペルフルオロブロックポリマーの伝導度は、80℃50%相対湿度の条件下で0.01S/cm以上が好ましく、0.02S/cm以上がより好ましく、0.03S/cm以上がさらに好ましい。該伝導度が前記範囲の下限値以上であれば、発電性能がさらに優れる膜電極接合体が得られる。該伝導度の上限値は特に限定されないが、現実的には10S/cmである。
【0024】
本発明のペルフルオロブロックポリマーの含水率は、10〜500%が好ましく、15〜300%がより好ましい。該含水率が前記範囲の下限値以上であれば、伝導度が高くなるため、発電性能がさらに優れる膜電極接合体が得られる。該含水率が前記範囲の上限値以下であれば、ペルフルオロブロックポリマーが過度に水で膨潤しないため、機械的強度を保持できる。
【0025】
本発明のペルフルオロブロックポリマーとしては、イオン交換基を有する第1のセグメントと、イオン交換基を有さない第2のセグメントとを有するポリマーが好ましい。
第1のセグメントは、イオン交換基によって分子間でイオン架橋が形成されるため、ハードセグメントとなる。一方、第2のセグメントは、イオン架橋されていないため、ソフトセグメントとなる。
また、イオン交換基が第1のセグメントに集中しているため、イオン交換基を有さない第2のセグメントを導入しているにもかかわらず、ペルフルオロブロックポリマーの膜の伝導度を高くすることができる。
【0026】
本発明のペルフルオロブロックポリマーとしては、本発明の効果が充分に発揮されやすい点から、−SOF基から変換されたイオン交換基を有する第1のセグメントと、イオン交換基を有さない第2のセグメントとを有するポリマー(以下、「ポリマーH」という。)が好ましい。
【0027】
−SOF基から変換されたイオン交換基としては、スルホン酸基、スルホンイミド基、スルホンメチド基等が挙げられる。
イオン交換基には、陽イオンがHである酸型と、陽イオンが金属イオン、アンモニウムイオン等である塩型とがある。固体高分子形燃料電池用膜電極接合体(以下、「膜電極接合体」という。)の触媒層や固体高分子電解質膜においては、通常、酸型のイオン交換基を有するポリマーHが用いられる。
【0028】
ポリマーHにおける第1のセグメントとしては、本発明の効果が充分に発揮されやすい点から、単位(u1)および単位(u2)のいずれか一方または両方を有するものが好ましい。特に、ポリマーHを高分子量化でき、形状復元性および伸度がさらに向上する点から、単位(u2)を有するものがより好ましい。
ポリマーHにおける第2のセグメントとしては、本発明の効果が充分に発揮されやすい点から、ペルフルオロビニルエーテル(以下、PFVEとも記す。)に基づく構成単位(以下、PFVE単位とも記す。)を有するものが好ましい。
ポリマーHにおける第1のセグメントおよび第2のセグメントは、ポリマーHの機械的強度および化学的耐久性に優れる点から、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」という。)に基づく構成単位(以下、「TFE単位」という。)をさらに有することが好ましい。
【0029】
単位(u1):
【0030】
【化2】
【0031】
ただし、Qは、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Yは、フッ素原子または1価のペルフルオロ有機基であり、sは、0または1であり、Rf1は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキル基であり、Xは、酸素原子、窒素原子または炭素原子であり、aは、Xが酸素原子の場合0であり、Xが窒素原子の場合1であり、Xが炭素原子の場合2であり、Zは、H、一価の金属イオン、または1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンである。単結合は、CFYの炭素原子とSOの硫黄原子とが直接結合していることを意味する。有機基は、炭素原子を1以上含む基を意味する。
【0032】
のペルフルオロアルキレン基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、ペルフルオロアルキレン基の炭素原子−炭素原子結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよいが、SOの硫黄原子に隣接する末端には挿入されない。
ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。ペルフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。炭素数が6以下であれば、ポリマーHのイオン交換容量の低下が抑えられ、伝導性の低下が抑えられる。
【0033】
f1のペルフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。ペルフルオロアルキル基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。ペルフルオロアルキル基としては、ペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基等が好ましい。
【0034】
−SO(SOf1としては、−SO、−SON(SOf1、または−SOC(SOf1が挙げられる。Yとしては、フッ素原子またはペルフルオロアルキル基が好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメチル基がより好ましい。
【0035】
単位(u1)としては、ポリマーHの製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、単位(u1−1)〜(u1−4)が好ましい。
【0036】
【化3】
【0037】
単位(u2):
【0038】
【化4】
【0039】
ただし、Q21は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Q22は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基であり、Yは、フッ素原子または1価のペルフルオロ有機基であり、tは、0または1であり、Rf2は、エーテル性の酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキル基であり、Xは、酸素原子、窒素原子または炭素原子であり、bは、Xが酸素原子の場合0であり、Xが窒素原子の場合1であり、Xが炭素原子の場合2であり、Zは、H、一価の金属イオン、または1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンである。単結合は、CYの炭素原子とSOの硫黄原子とが直接結合していることを意味する。有機基は、炭素原子を1以上含む基を意味する。
【0040】
21、Q22のペルフルオロアルキレン基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、ペルフルオロアルキレン基の炭素原子−炭素原子結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよいが、SOの硫黄原子に隣接する末端には挿入されない。
ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
ペルフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。炭素数が6以下であれば、原料のモノマーの沸点が低くなり、蒸留精製が容易となる。また、炭素数が6以下であれば、ポリマーHのイオン交換容量の低下が抑えられ、伝導性の低下が抑えられる。
【0041】
22は、エーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。Q22がエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であれば、Q22が単結合である場合に比べ、長期にわたって固体高分子形燃料電池を運転した際に、発電性能の安定性に優れる。
21、Q22の少なくとも一方は、エーテル性の酸素原子を有する炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。エーテル性の酸素原子を有する炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基を有するモノマーは、フッ素ガスによるフッ素化反応を経ずに合成できるため、収率が良好で、製造が容易である。
【0042】
f2のペルフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
ペルフルオロアルキル基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。ペルフルオロアルキル基としては、ペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基等が好ましい。単位(u2)が2つ以上のRf2を有する場合、Rf2は、それぞれ同じ基であってもよく、それぞれ異なる基であってもよい。
【0043】
−SO(SOf2としては、−SO、−SON(SOf2、または−SOC(SOf2が挙げられる。Yとしては、フッ素原子、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖のペルフルオロアルキル基が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0044】
単位(u2)としては、ポリマーHの製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、単位(u2−1)〜(u2−3)が好ましい。
【0045】
【化5】
【0046】
PFVE単位は、第2のセグメントにソフトセグメントとしてのゴムの特性を付与するものである。
PFVEとしては、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキルビニルエーテル)等が挙げられる。
ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)およびペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキルビニルエーテル)の炭素数は、12以下であることが好ましい。
ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)またはペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキルビニルエーテル)としては、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)、ペルフルオロ(ブチルビニルエーテル)、CF=CFOCFOCFCF、CF=CFOCFOCFCFOCF、CF=CFOCFCFCFOCF、CF=CFOCFOCF、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCF3、CF=CFOCFCFOCFOCFOCFOCFOCF、CF=CFOCFCFOCFOCFOCF、およびCF=CFOCFCFOCFCFOCFCF等が挙げられる。本発明の効果が充分に発揮されやすい点から、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCF3、またはCF=CFOCFCFOCFCFOCFCFが好ましい。
【0047】
ポリマーHにおける第1のセグメントおよび第2のセグメントは、単位(u1)、単位(u2)、PFVE単位およびTFE単位以外の、第5のモノマーに基づく構成単位(以下、「第5の単位」という。)をさらに有していてもよい。
第5のモノマーとしては、たとえば、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、エチレン、プロピレンン、ペルフルオロα−オレフィン(ヘキサフルオロプロピレン等)、(ペルフルオロアルキル)エチレン(ペルフルオロブチル)エチレン等)、(ペルフルオロアルキル)プロペン(3−ペルフルオロオクチル−1−プロペン等)等が挙げられる。
【0048】
単位(u1)および単位(u2)の合計の割合は、ポリマーHの全単位のうち、5〜40モル%が好ましく、10〜30モル%がより好ましい。該割合が前記範囲内であれば、ポリマーHのイオン交換容量を好ましい範囲に調整しやすい。
PFVE単位の割合は、ポリマーHの全単位のうち、10〜55モル%が好ましく、20〜50モル%がより好ましい。該割合が前記範囲内であれば、ポリマーHの形状復元性および伸度がさらに向上する。
TFE単位の割合は、ポリマーHの全単位のうち、5〜85モル%が好ましく、20〜70モル%がより好ましい。該割合が前記範囲の下限値以上であれば、ポリマーHの機械的強度および化学的耐久性がさらに優れる。該割合が前記範囲の上限値以下であれば、単位(u1)、単位(u2)、PFVE単位による効果を損なうことがない。
【0049】
第5の単位の割合は、ポリマーHの全単位のうち、0〜70モル%が好ましく、0〜40モル%がより好ましい。該割合が前記範囲内であれば、単位(u1)、単位(u2)、PFVE単位、TFE単位による効果を損なうことがない。
ポリマーHは、単位(u1)、単位(u2)、PFVE単位および他の単位を、それぞれ1種ずつ有していてもよく、それぞれ2種以上有していてもよい。
第1のセグメントと第2のセグメントとの合計に対する第1のセグメントの割合は、10〜90質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、30〜70質量%がさらに好ましい。該割合が前記範囲の下限値以上であれば、ポリマーHの形状復元性および伸度がさらに向上する。該割合が前記範囲の上限値以下であれば、ポリマーHのイオン交換容量を好ましい範囲に調節しやすい。
【0050】
(ポリマーHの製造方法)
ポリマーHは、−SOF基を有する第1のセグメントと、イオン交換基を有さない第2のセグメントとを有するポリマー(以下、「ポリマーF」という。)の−SOF基をイオン交換基に変換することによって製造される。
ポリマーFは、たとえば、上記特許文献1に記載のヨウ素移動重合法等、公知の方法によって製造できる。以下、ABA型ブロックポリマーを例にとり、ポリマーFの製造方法について説明する。
ABA型ブロックポリマーであるポリマーFは、たとえば、ラジカル重合開始剤およびIRI(ただし、Rはエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜12のペルフルオロアルキレン基である。)の存在下に、PFVEと、必要に応じてTFEおよび第5のモノマーのいずれか一方または両方とを含むモノマー成分を重合して、第2のセグメントとなるヨウ素末端のポリマーXを得て、該ポリマーXおよびラジカル重合開始剤の存在下に、下記化合物(m1)および下記化合物(m2)のいずれか一方または両方と、必要に応じてTFEおよび第5のモノマーのいずれか一方または両方とを含むモノマー成分を重合して、ポリマーXの両末端に第1のセグメントを導入し、ポリマーFを得る方法によって製造できる。
【化6】
ただし、上記化合物(m1)におけるQ、Y、sは、単位(u’1)におけるQ、Y、sと同様であり、好ましい形態も同様である。
【化7】
ただし、上記化合物(m2)におけるQ21、Q22、Y、tは、単位(u’2)におけるQ21、Q22、Y、tと同様であり、好ましい形態も同様である。
【0051】
また、ラジカル重合開始剤およびIRI(ただし、Rは前記のとおりである。)の存在下に、化合物(m1)および化合物(m2)のいずれか一方または両方と、必要に応じてTFEおよび第5のモノマーのいずれか一方または両方とを含むモノマー成分を重合して第1のセグメントとなるヨウ素末端のポリマーXを得て、該ポリマーXおよびラジカル重合開始剤の存在下に、PFVEと、必要に応じてTFEおよび第5のモノマーのいずれか一方または両方とを含むモノマー成分を重合して、ポリマーXの両末端に第2のセグメントを導入し、ポリマーFを得る方法によって製造できる。
【0052】
ラジカル重合開始剤としては、含フッ素ポリマーの製造に用いられる公知のラジカル重合開始剤が挙げられる。ラジカル重合開始剤は、重合方法に応じて適宜選択すればよい。水性媒体中での重合(乳化重合法等)の場合には、水溶性ラジカル重合開始剤が好ましい。溶液重合の場合には、有機過酸化物開始剤やアゾ系開始剤が好ましい。
【0053】
IRIとしては、ジヨードジフルオロメタン、1,2−ジヨードペルフルオロエタン、1,3−ジヨードペルフルオロプロパン、1,4−ジヨードペルフルオロブタン、1,5−ジヨードペルフルオロペンタン、1,6−ジヨードペルフルオロヘキサン、1,7−ジヨードペルフルオロヘプタン、1,8−ジヨードペルフルオロオクタン等が挙げられる。なかでも、1,4−ジヨードペルフルオロブタン、または1,6−ジヨードペルフルオロヘキサンが好ましい。
【0054】
化合物(m1)は、たとえば、D.J.Vaugham著,”Du Pont Inovation”,第43巻、第3号,1973年、p.10に記載の方法、米国特許第4358412号明細書の実施例に記載の方法等、公知の合成方法によって製造できる。
化合物(m2)は、たとえば、国際公開第2007/013533号に記載の方法等、公知の合成方法によって製造できる。
重合法としては、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法が挙げられる。また、液体または超臨界の二酸化炭素中にて重合を行ってもよい。
【0055】
ポリマーFの−SOF基をイオン交換基に変換する方法としては、国際公開第2011/013578号に記載の方法が挙げられる。たとえば、−SOF基を酸型のスルホン酸基(−SO基)に変換する方法としては、ポリマーFの−SOF基を塩基と接触させて加水分解して塩型のスルホン酸基とし、塩型のスルホン酸基を酸と接触させて酸型化して酸型のスルホン酸基に変換する方法が挙げられる。
【0056】
以上説明した本発明のペルフルオロブロックポリマーにあっては、イオン交換基を有するため、イオン交換樹脂として用いることができる。また、以上説明した本発明のペルフルオロブロックポリマーにあっては、架橋されていないため、成形性に優れる。
また、以上説明した本発明のペルフルオロブロックポリマーにあっては、tanδ−温度曲線において、−50〜30℃に少なくとも1つのピークが存在するため、このピーク温度よりも高い温度領域において、ペルフルオロブロックポリマーにおけるソフトセグメントがゴム状態となり、ペルフルオロブロックポリマーの伸度が高くなる。また、tanδ−温度曲線において、90〜160℃に少なくとも1つのピークが存在するため、このピーク温度よりも低い温度領域において、ペルフルオロブロックポリマーにおけるハードセグメントが樹脂状となり、ペルフルオロブロックポリマー全体が完全にゴム状態になることを抑え、形状復元性を有する。したがって、本発明のペルフルオロブロックポリマーは、燃料電池の使用温度領域において、シワが発生しても、元の形状に戻ろうとする形状復元性と、シワがさらに伸ばされても破断が生じにくいような高い伸度とを有するものとなる。
【0057】
一方、上記特許文献1の実施例に具体的に記載されている(1)のブロックポリマーは、分子量が低いため、セグメントAとセグメントBとの相分離が不充分である。そのため、tanδ−温度曲線において、セグメントAとセグメントCに基づくピークが不明瞭であり、極めて小さい緩和しか有さない。またはセグメントCのみに基づく緩和点が存在しない。そのため貯蔵弾性率が30℃で100MPaより高く、ブロックポリマー全体が樹脂状に近い性質となることから、形状復元性に劣る。
上記特許文献2に記載されている(2)の含フッ素多元セグメント化ポリマーは、イオン交換基を有さない含フッ素ポリマー鎖セグメント(B)の結晶融点またはガラス転移点が100℃以上である。そのため、燃料電池の使用温度領域において、含フッ素ポリマー鎖セグメント(B)が充分にゴム状態となっておらず、伸度が低いだけではなく、形状復元性にも劣る。
【0058】
<液状組成物>
本発明の液状組成物は、本発明のペルフルオロブロックポリマーと、液状媒体とを含むものであり、液状媒体中にペルフルオロブロックポリマーが分散したものである。
液状組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、必要に応じて本発明のペルフルオロブロックポリマーおよび液状媒体以外の成分を含んでいてもよい。
【0059】
液状媒体としては、ペルフルオロブロックポリマーの分散性が良好である点から、含フッ素アルコールおよび炭化水素アルコールを含むものが好ましい。
含フッ素アルコールは、イオン交換基を有さない第2のセグメントとの親和性が大きい。炭化水素アルコールは、イオン交換基を有する第1のセグメントとの親和性が大きい。
【0060】
含フッ素アルコールとしては、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−ペンタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、3,3,3−トリフルオロ−1−プロパノール、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクタノール等が挙げられる。含フッ素アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
炭化水素アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等が挙げられる。炭化水素アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0062】
含フッ素アルコールの割合は、液状媒体のうち、5〜95質量%が好ましく、15〜85質量%がより好ましい。炭化水素アルコールの割合は、液状媒体のうち、5〜95質量%が好ましく、15〜85質量%がより好ましい。
本発明のペルフルオロブロックポリマーの割合は、液状組成物のうち、1〜50質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。
【0063】
液状組成物は、本発明のペルフルオロブロックポリマーと液状媒体とを混合することによって調製できる。
液状組成物の調製方法としては、大気圧下、またはオートクレーブ等で密閉した状態下において、液状媒体中のペルフルオロブロックポリマーに撹拌等のせん断を加える方法が挙げられる。必要に応じて、超音波等のせん断を付与してもよい。
また、ペルフルオロブロックポリマーと液状媒体とを混合した混合液を撹拌等のせん断を加えて液状組成物にする場合、ペルフルオロブロックポリマーに液状媒体を一度に全部加えた混合液に撹拌等のせん断を加えてもよいし、また、ペルフルオロブロックポリマーに液状媒体を複数回に分けて混合し、その合間に撹拌等のせん断を加えてもよい。
液状組成物の調製の際の温度は、50〜180℃が好ましく、80〜130℃がより好ましい。時間は、1〜48時間が好ましく、2〜24時間がより好ましい。
【0064】
以上説明した本発明の液状組成物にあっては、形状復元性に優れ、伸度が高く、成形性に優れる本発明のペルフルオロブロックポリマーを含むため、シワが発生しにくく、破断しにくく、薄肉な固体高分子電解質膜を形成できる、またはクラックが入りにくい触媒層を形成できる。
【0065】
<固体高分子電解質膜>
本発明の固体高分子電解質膜は、本発明のペルフルオロブロックポリマーを含む膜である。
固体高分子電解質膜の厚さは、0.5〜200μmが好ましく、1〜75μmがより好ましい。該厚さが前記範囲の下限値以上であれば、固体高分子電解質膜にシワがさらに発生しにくくなり、さらに破断しにくい。該厚さが前記範囲の上限値以下であれば、固体高分子電解質膜の伝導度が充分に高くなり、発電性能がさらに優れる膜電極接合体が得られる。
【0066】
固体高分子電解質膜は、補強材で補強されていてもよい。補強材としては、多孔体、繊維、織布、不織布等が挙げられる。補強材の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
【0067】
固体高分子電解質膜は、耐久性をさらに向上させるために、セリウムおよびマンガンからなる群から選ばれる1種以上の原子を含んでいてもよい。セリウム、マンガンは、固体高分子電解質膜の劣化を引き起こす原因物質である過酸化水素を分解する。セリウム、マンガンは、イオンとして固体高分子電解質膜中に存在することが好ましく、イオンとして存在すれば固体高分子電解質膜中でどのような状態で存在してもかまわない。
【0068】
固体高分子電解質膜は、たとえば、本発明の液状組成物を基材フィルムまたは触媒層上に塗布し、乾燥させる方法(キャスト法)により形成できる。
固体高分子電解質膜を安定化させるために、成膜後にアニール処理を行うことが好ましい。アニール処理の温度は、120〜200℃が好ましい。アニール処理の温度が120℃以上であれば、本発明のペルフルオロブロックポリマーが過度に含水しなくなる。アニール処理の温度が200℃以下であれば、イオン交換基の熱分解が抑えられる。
【0069】
以上説明した本発明の固体高分子電解質膜にあっては、イオン交換樹脂として、形状復元性に優れ、伸度が高く、成形性に優れる本発明のペルフルオロブロックポリマーを含むため、シワが発生しにくく、破断しにくく、薄肉化が可能である。また、加湿と乾燥とが繰り返される環境でも、より高い機械的耐性を持つ固体高分子電解質膜となる。
【0070】
<膜電極接合体>
図3は、膜電極接合体の一例を示す模式断面図である。膜電極接合体10は、触媒層11およびガス拡散層12を有するアノード13と、触媒層11およびガス拡散層12を有するカソード14と、アノード13とカソード14との間に、触媒層11に接した状態で配置される固体高分子電解質膜15とを具備する。
【0071】
触媒層は、触媒と、イオン交換樹脂とを含む層である。触媒としては、カーボン担体に白金または白金合金を担持した担持触媒が挙げられる。カーボン担体としては、カーボンブラック粉末、ブラファイト化カーボン、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ等が挙げられる。イオン交換樹脂としては、触媒層に用いられる公知のイオン交換樹脂が挙げられ、クラックが入りにくい触媒層を形成できる点から、本発明のペルフルオロブロックポリマーが好ましい。
【0072】
ガス拡散層は、触媒層に均一にガスを拡散させる機能および集電体としての機能を有する。ガス拡散層としては、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等が挙げられる。ガス拡散層は、ポリテトラフルオロエチレン等によって撥水化処理されていることが好ましい。
【0073】
図4に示すように、膜電極接合体10は、触媒層11とガス拡散層12との間にカーボン層16を有してもよい。カーボン層を配置することにより、触媒層の表面のガス拡散性が向上し、固体高分子形燃料電池の発電性能が大きく向上する。
カーボン層は、カーボンと非イオン性含フッ素ポリマーとを含む層である。
カーボンとしては、カーボン粒子、カーボンファイバー等が挙げられ、繊維径1〜1000nm、繊維長1000μm以下のカーボンナノファイバーが好ましい。非イオン性含フッ素ポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0074】
固体高分子電解質膜は、イオン交換樹脂を含む膜である。イオン交換樹脂としては、固体高分子電解質膜に用いられる公知のイオン交換樹脂が挙げられ、シワが発生しにくく、破断しにくく、薄肉化な固体高分子電解質膜を形成できる点から、本発明のペルフルオロブロックポリマーが好ましい。
【0075】
固体高分子電解質膜は、補強材で補強されていてもよい。固体高分子電解質膜は、耐久性をさらに向上させるために、セリウムおよびマンガンからなる群から選ばれる1種以上の原子を含んでいてもよい。
【0076】
膜電極接合体がカーボン層を有しない場合、膜電極接合体は、たとえば、固体高分子電解質膜上に触媒層を形成して膜触媒層接合体とし、該膜触媒層接合体をガス拡散層で挟み込む方法や、ガス拡散層上に触媒層を形成して電極(アノード、カソード)とし、固体高分子電解質膜を該電極で挟み込む方法により製造される。
【0077】
膜電極接合体がカーボン層を有する場合、膜電極接合体は、たとえば、基材フィルム上に、カーボンおよび非イオン性含フッ素ポリマーを含む分散液を塗布し、乾燥させてカーボン層を形成し、カーボン層上に触媒層を形成し、触媒層と固体高分子電解質膜とを貼り合わせ、基材フィルムを剥離して、カーボン層を有する膜触媒層接合体とし、該膜触媒層接合体をガス拡散層で挟み込む方法や、ガス拡散層上に、カーボンおよび非イオン性含フッ素ポリマーを含む分散液を塗布し、乾燥させてカーボン層を形成し、固体高分子電解質膜上に触媒層を形成した膜触媒層接合体を、カーボン層を有するガス拡散層で挟み込む方法により製造される。
【0078】
触媒層は、触媒層形成用塗工液を、固体高分子電解質膜、ガス拡散層、またはカーボン層上に塗布し、乾燥させる方法や、触媒層形成用塗工液を基材フィルム上に塗布し、乾燥させて触媒層を形成し、該触媒層を固体高分子電解質膜上に転写する方法により形成できる。
触媒層形成用塗工液は、イオン交換樹脂および触媒を液状媒体に分散させた液である。触媒層形成用塗工液は、たとえば、本発明の液状組成物と、触媒の分散液とを混合することにより調製できる。
固体高分子電解質膜は、たとえば、上述した本発明の固体高分子電解質膜と同様の方法によって形成できる。
【0079】
以上説明した本発明の膜電極接合体にあっては、アノードの触媒層、カソードの触媒層および固体高分子電解質膜からなる群から選ばれる少なくとも1つが、イオン交換樹脂として、形状復元性に優れ、伸度が高く、成形性に優れる本発明のペルフルオロブロックポリマーを含むため、固体高分子電解質膜のシワおよび破断、または触媒層のクラックが抑えられる。また、固体高分子電解質膜の薄肉化が可能であり、発電性能に優れる。また、固体高分子電解質膜が加湿と乾燥とが繰り返される環境でより高い機械的耐性を持つため、膜電極接合体の発電性能を長期にわたって維持することができる。
【0080】
<固体高分子形燃料電池>
膜電極接合体の両面に、ガスの流路となる溝が形成されたセパレータを配置してセルを形成し、複数のセルを積層してスタック化することにより、固体高分子形燃料電池が得られる。
セパレータとしては、金属製、カーボン製、黒鉛と樹脂を混合した材料等、各種導電性材料からなるセパレータが挙げられる。
該固体高分子形燃料電池においては、カソードに酸素を含むガス、アノードに水素を含むガスを供給することにより、発電が行われる。また、アノードにメタノールを供給して発電を行うメタノール燃料電池にも、膜電極接合体を適用できる。
【実施例】
【0081】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。例1〜3は実施例であり、例4は比較例である。
【0082】
(各構成単位の割合)
ポリマーXおよびポリマーFにおける各構成単位の割合については、各ポリマーについて19F−NMRの測定結果から求めた。ポリマーHにおける各構成単位の割合は、ポリマーFにおける各構成単位の割合に対応しているため省略する。
【0083】
(質量平均分子量)
ポリマーFの質量平均分子量は、下記条件にて測定したサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)の結果から求めたポリメチルメタクリレート換算の質量平均分子量である。ポリマーHの質量平均分子量は、ポリマーFの質量平均分子量に対応しているため省略する。
装置:東ソー社製、SEC HLC−8020、
移動相:HCFC−225cb(CClFCFCHClF)/1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(99/1体積比)、
カラム:ポリマーラボラトリー社製、Plgel 5μ MIXED−Cの2本を直列につないで用いた。
【0084】
(動的粘弾性測定)
ポリマーHからなる固体高分子電解質膜について、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製、DVA−225)を用いて、試料幅:5.0mm、つかみ間長:15mm、測定周波数:1Hz、昇温速度:2℃/分、引張モードの条件にて、動的粘弾性測定を行った。損失弾性率と貯蔵弾性率との比からtanδ(損失正接)を算出し、tanδ−温度曲線を作成した。tanδ−温度曲線から−50〜160℃の間のピーク温度を読み取った。
【0085】
(イオン交換容量)
ポリマーHからなる固体高分子電解質膜を120℃で12時間真空乾燥した。固体高分子電解質膜を、0.85モル/gの水酸化ナトリウムを、水とメタノールの質量比が10/90である溶媒に溶解した溶液に浸漬して、イオン交換基を中和した。イオン交換基を中和した後の水酸化ナトリウム溶液を0.1モル/Lの塩酸で逆滴定してポリマーHのイオン交換容量を求めた。
【0086】
(伝導度)
ポリマーHからなる固体高分子電解質膜(幅5mm)に、5mm間隔で4端子電極が配置された基板を密着させ、公知の4端子法によって、温度:80℃、相対温度:50%および20%の恒温恒湿条件下にて交流:10kHz、電圧:1Vで固体高分子電解質膜の抵抗を測定し、伝導度を算出した。
【0087】
(含水率)
ポリマーHからなる固体高分子電解質膜を80℃の温水に16時間浸漬した後、水温が25℃以下になるまで冷却した。固体高分子電解質膜を取り出し、膜の表面に付着した水をろ紙でふき取り、固体高分子電解質膜の質量(W1)を測定した。固体高分子電解質膜を窒素雰囲気のグローブボックス内にて48時間以上乾燥した後、グローブボックス内で固体高分子電解質膜の質量(W2)を測定した。下式(I)から含水率を求めた。
含水率=((W1−W2)/W2)×100 (I)
【0088】
(TQ値)
長さ1mm、内径1mmのノズルを備えたフローテスタCFT−500A(島津製作所社製)を用い、2.94MPaの押出し圧力の条件で温度を変えて、ポリマーFの押出し量が100mm/秒となる温度(TQ値)を求めた。TQが高いほど分子量は大きい。
【0089】
(破断点伸度、破断点応力)
引張試験機としては、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製、RTE−1210)を用いた。厚さ50μmの固体高分子電解質膜を、JIS K 6251にて規定の7号形ダンベルの形状に打ち抜き、試験片を得た。試験片を温度:25℃、湿度:50%RHの環境下で60mm/分の引張速度で引っ張り、ひずみに対する応力を測定し、破断点伸度、および破断点応力を得た。ひずみは引っ張った後のダンベル試験片における平行部の長さの初期長さに対する割合(%)で表した。
破断点伸度は、実用上250%以上が好ましく、300%以上がより好ましく、310%以上がさらに好ましい。破断点応力は、実用上20MPa以上が好ましく、30MPa以上であればより好ましい。
【0090】
(寸法復元率)
引張試験機としては、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製、RTE−1210)を用いた。厚さ50μmの固体高分子電解質膜を、JIS K 6251にて規定の7号形ダンベルの形状に打ち抜き、試験片を得た。試験片を温度:25℃、湿度:50%RHの環境下で50mm/分にてひずみが250%となるまで引っ張った後、引っ張りを止め、試験片に掛かる応力が0Nとなるよう引張試験機の下部チャックからサンプルを取り外した。試験片を引張試験機内で吊るした状態で、引き続き温度:25℃、湿度:50%RHにおいて2時間静置した後、試験片のひずみ(長さ)を測定し、下式(II)から寸法復元率を求めた。ひずみは初期長さに対する百分率で規格化した。
寸法復元率は、実用上、40%以上が好ましく、45%以上がより好ましい。
寸法復元率(%)=((除荷前ひずみ−除荷後ひずみ)/除荷前ひずみ)×100・・・(II)
【0091】
(化合物の略号)
TFE:CF=CF、 PMVE:CF=CFOCF
P2SVE:化合物(m2−2)、 PSVE:化合物(m1−1)、
HFC−52−13p:CF(CFH、
HFC−141b:CClFCH、IPP:((CHCHOC(O)O)
【0092】
【化8】
【0093】
(製造例1)
アンカー翼を備えた内容積20L(リットル)のステンレス鋼製オートクレーブを脱気した後、イオン交換水の8800g、F(CFOCFCFOCFCOONHの220g、およびリン酸水素二ナトリウム12水和物の0.64gを仕込み、気相を窒素置換した。アンカー翼を用いて375rpmで撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。内温が80℃になってから予め調製しておいたTFE/PMVE=25/75(モル比)の混合ガスを反応器内圧が0.8MPaG(ゲージ圧)になるまで圧入した。過硫酸アンモニウムの2.5質量%水溶液の25mLを添加し、重合を開始した。
【0094】
重合の進行に伴い、反応器内圧が低下するため、0.79MPaGに降下した時点でTFEガスを自圧で圧入し、反応器内圧を0.81MPaGに昇圧させた。この操作を繰り返し、反応器内圧を0.79〜0.81MPaGの間に保持し、重合反応を続けた。TFEガスの添加量が30gになった時点で、I(CFIの8gを窒素背圧により添加した。この間、TFEガスの80gが添加されるたびに、別のステンレス鋼製耐圧容器に用意したPMVEの50mLを反応器に窒素背圧により圧入した。PMVEの圧入はTFEガスの1120gを添加するまで続けた。
過硫酸アンモニウム水溶液添加後のTFEガスの総添加量が1200gとなった時点で、TFEガスの添加を停止し、反応器内温を10℃に冷却し、重合反応を停止させた。これにより、ポリマー(X−1)のラテックスの9940gを得た。重合時間は約12時間であった。
ラテックスの5000gを硫酸アルミニウムカリウムの5質量%水溶液7500gに添加して、ラテックスを凝集させ、ポリマー(X−1)を得た。析出したポリマー(X−1)を分離し、1回あたり5000gの超純水により6回洗浄し、50℃の真空オーブンで12時間乾燥させて、白色のポリマー(X−1)の1034gを得た。
ポリマー(X−1)における各構成単位の割合は、TFE単位/PMVE単位=69.0/31.0(モル比)であった。
【0095】
(製造例2)
アンカー翼を備えた内容積1Lのハステロイ製オートクレーブを脱気した後、PMVEの902.4g、およびHFC−52−13pの210.1gを仕込み、内温を40℃に昇温した。気相部よりTFEを、反応器の内圧が1.07MPaとなるまで仕込んだ。次いでHFC−52−13pの10.0gに予め溶解させたIPPの0.873gを圧入し、重合を開始した。温度安定時の圧力は1.07MPaGであり、圧力を1.07MPaGで維持したままTFEを連続添加し重合を行った。TFEの添加量が20.22gになったところでオートクレーブ内を冷却して重合を停止し、系内のガスをパージした。反応液を50℃の真空オーブンで12時間乾燥させて、白色のポリマー(X−2)の36.92gを得た。
ポリマー(X−2)における各構成単位の割合は、TFE単位/PMVE単位=66.2/33.8(モル比)であった。
【0096】
(例1)
内容積200mLのハステロイ製オートクレーブに、製造例1で得られたポリマー(X−1)の22.54g、およびP2SVEの228.37gを入れ、気相部を窒素で置換した後、46℃で8時間撹拌し、ポリマー(X−1)をP2SVEに溶解させた。HFC−52−13pの1.15gに予め溶解させたIPPの0.029gを加え、液体窒素で冷却して脱気した。オートクレーブにTFEの13.53gを導入し、内温が40℃になるまで加温した。温度安定時の圧力は0.50MPaGであり、圧力を0.50MPaGで維持したままTFEを連続添加し重合を行った。TFEの添加量が13.43gになったところでオートクレーブ内を冷却して重合を停止し、系内のガスをパージした。
【0097】
反応液をHFC−52−13pで希釈後、HCFC−141bおよびn−ヘキサンの混合液を添加し、ポリマーを凝集してろ過した。その後、HFC−52−13p中でポリマーを撹拌して、HCFC−141bおよびn−ヘキサンの混合液で再凝集する操作を2回繰り返した。120℃で真空乾燥して、TFE/PMVEコポリマーからなる第2のセグメントの両端に、TFE/P2SVEコポリマーからなる第1のセグメントが接続したトリブロックポリマー((TFE/P2SVE)−(TFE/PMVE)−(TFE/P2SVE))であるポリマー(F−1)の45.27gを得た。
ポリマー(F−1)における各構成単位の割合、ポリマー(F−1)の質量平均分子量を表1に示す。ポリマー(F−1)のTQ値は、300℃以上であった。
【0098】
ポリマー(F−1)を、温度:300℃、圧力:4MPaにて加圧プレス成形し、厚さ200μmのポリマー(F−1)の膜を得た。該ポリマーの膜を、アルカリ水溶液(水酸化カリウム:15質量%、ジメチルスルホキシド:30質量%、水:55質量%)中に80℃で100時間浸漬させることによって、ポリマー(F−1)中の−SOF基を加水分解し、−SOK基に変換した。さらに、該ポリマーの膜を、3モル/Lの塩酸水溶液に80℃で30分間浸漬した後、80℃の超純水に15分間浸漬した。塩酸水溶液への浸漬と超純水への浸漬のサイクルを合計5回実施し、−SOK基をスルホン酸基(−SOH)に変換した。該ポリマーの膜を浸漬している水のpHが7となるまで超純水で洗浄を繰り返し、次いで、該ポリマーの膜をろ紙に挟んで風乾し、ポリマー(H−1)の膜を得た。
【0099】
1Lのガラス製オートクレーブに、細かく切断したポリマー(H−1)の膜の33.12g、および1−プロパノール/2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノールの混合溶媒(60/40(質量比))の110.63gを加えた。撹拌しながらオートクレーブを加熱し、115℃で8時間撹拌した後、さらに90℃で15時間撹拌した。温度を115℃に戻し、さらに6時間撹拌した。次いで、前記1−プロパノール/2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノールの混合溶媒の409.09gを加えた。15時間撹拌した後、放冷し、加圧ろ過機(ろ紙:アドバンテック東洋社製、PF040)を用いてろ過することによって、ポリマー(H−1)が混合溶媒に5.46質量%で分散した液状組成物の498.88gを得た。
【0100】
上記液状組成物を、ダイコーターを用いて基材フィルムに塗布し、乾燥炉中で乾燥後、160℃で30分間のアニール処理を行うことによって、厚さ5〜50μmのポリマー(H−1)からなる固体高分子電解質膜を得た。
上記固体高分子電解質膜について、動的粘弾性、イオン交換容量、伝導度、含水率、破断点伸度、破断点応力、および寸法復元率を測定した。また、第1のセグメントと第2のセグメントとの合計に対する第1のセグメントの割合(質量%)を各構成単位の割合に基づいて算出した。結果を表1〜3に示す。以下の例2〜4についても同様に、測定結果を表1〜3に示す。動的粘弾性の測定結果は図5に示す。図5においてE´は貯蔵弾性率を表し、E´´は損失弾性率を表す。図6および7においても同様である。
【0101】
(例2)
TFEの連続添加における添加量を10.72gに変更した以外は、例1と同様にしてトリブロックポリマーであるポリマー(F−2)の42.01gを得た。
ポリマー(F−2)における各構成単位の割合およびポリマー(F−2)の質量平均分子量を表1に示す。ポリマー(F−2)のTQ値は、300℃以上であった。
ポリマー(F−1)をポリマー(F−2)に変更した以外は、例1と同様にしてポリマー(H−2)の膜を得た。
ポリマー(H−1)をポリマー(H−2)に変更した以外は、例1と同様にして液状組成物を得た。
【0102】
例1の液状組成物を例2の液状組成物に変更した以外は、例1と同様にして固体高分子電解質膜を得た。
動的粘弾性の測定結果を図6に示す。
(例3)
内容積1000mL(RITTORUのハステロイ製オートクレーブに、製造例2で得られたポリマー(X−2)の17.59g、およびP2SVEの676.85gを入れ、気相部を窒素で置換した後、40℃で7.5時間撹拌し、ポリマー(X−2)をP2SVEに溶解させた。HFC−52−13pの3.46gに予め溶解させたIPPの0.074gを加え、液体窒素で冷却して脱気した。オートクレーブにTFEの40.1gを導入し、内温が40℃になるまで加温した。温度安定時の圧力は0.50MPaGであり、圧力を0.50MPaGで維持したままTFEを連続添加し重合を行った。TFEの添加量が26.61gになったところでオートクレーブ内を冷却して重合を停止し、系内のガスをパージした。例1と同様にして凝集、再凝集、および真空乾燥を行い、トリブロックポリマーであるポリマー(F−3)の92.18gを得た。
ポリマー(F−3)における各構成単位の割合、ポリマー(F−4)の質量平均分子量を表1に示す。ポリマー(F−3)のTQ値は、158℃であった。
ポリマー(F−1)をポリマー(F−3)に、アルカリ水溶液を水酸化カリウムの20質量%水溶液に変更した以外は、例1と同様にしてポリマー(H−3)の膜を得た。
ポリマー(H−1)をポリマー(H−3)に変更した以外は、例1と同様にして液状組成物を得た。
例1の液状組成物を例3の液状組成物とし、アニール処理条件を180℃で30分間とした以外は、例1と同様にして固体高分子電解質膜を得た。動的粘弾性の測定結果を図7に示す。
【0103】
(例4)
内容積230mLのハステロイ製オートクレーブに、PSVEの123.8g、HCFC−225cbの35.23g、および2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)の63.62mgを入れ、液体窒素で冷却して脱気した。70℃に昇温してTFEを系内に導入し、圧力を1.14MPaGに保持した。圧力が1.14MPaGで一定になるように、TFEを連続的に添加した。7.9時間経過後に、オートクレーブを冷却して、系内のガスをパージして反応を終了させた。ポリマー溶液をHCFC−225cbで希釈してから、HCFC−141bを添加して、凝集した。HCFC−225cbおよびHCFC−141bを用いて洗浄を行った後、乾燥して、TFE/PSVEコポリマーであるポリマー(F’−4)の25.13gを得た。
ポリマー(F’−4)における各構成単位の割合を表1に示す。ポリマー(F’−4)のTQ値は、225℃であった。
【0104】
ポリマー(F−1)をポリマー(F’−4)に変更した以外は、例1と同様にしてポリマー(H’−4)の膜を得た。
【0105】
ポリマー(H−1)をポリマー(H’−4)に変更し、1−プロパノール/2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノールの混合溶媒の代わりにエタノール/水の混合溶媒(60/40(質量比))を用い、液状組成物の固形分濃度を26質量%とした以外は、例1と同様にして液状組成物を得た。
【0106】
例1の液状組成物を例4の液状組成物に変更した以外は、例1と同様にして固体高分子電解質膜を得た。動的粘弾性の測定結果を図8に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
表1に示すように、例1、例2の固体高分子電解質膜は、例4の固体高分子電解質膜と比べ、イオン交換容量が同等または低いにもかかわらず、伝導度が高かった。例3の固体高分子電解質膜は、イオン交換容量が高く、伝導度も高かった。
表2に示すように、例1、例2の固体高分子電解質膜は、例4の固体高分子電解質膜と比べ、破断点応力が変わらないにもかかわらず、破断点伸度が大きく向上した。例3の固体高分子電解質膜は、実用上十分な破断点伸度と破断点応力を兼ね備えていた。すなわち、例1〜3の固体高分子電解質膜は、膜の強度を維持しつつ、伸度にも優れていた。
表3に示すように、例1〜例3の固体高分子電解質膜は、例4の固体高分子電解質膜と比べ、応力が開放された際の寸法復元率が大きかった。すなわち、例1〜例3の固体高分子電解質膜は、形状復元性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明のペルフルオロブロックポリマーは、膜電極接合体における固体高分子電解質膜および触媒層などに含まれるイオン交換樹脂として有用である。
なお、2016年3月29日に出願された日本特許出願2016−65766号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0112】
10:膜電極接合体、 11:触媒層、12:ガス拡散層、 13:アノード、 14:カソード、 15:固体高分子電解質膜、 16:カーボン層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8