特許第6798853号(P6798853)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成エレクトロニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6798853-信号検出装置 図000002
  • 特許6798853-信号検出装置 図000003
  • 特許6798853-信号検出装置 図000004
  • 特許6798853-信号検出装置 図000005
  • 特許6798853-信号検出装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6798853
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】信号検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/14 20060101AFI20201130BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   G01D5/14 E
   G01B7/30 M
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-206795(P2016-206795)
(22)【出願日】2016年10月21日
(65)【公開番号】特開2018-66695(P2018-66695A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 新
(72)【発明者】
【氏名】大久保 圭二
【審査官】 清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−348173(JP,A)
【文献】 特開平09−189509(JP,A)
【文献】 特開2011−066486(JP,A)
【文献】 特開2005−331399(JP,A)
【文献】 特開2011−038919(JP,A)
【文献】 特開昭54−136859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00−7/34
G01D 5/00−5/252
G01D 5/39−5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の方向及び前記一の方向に直交する平面内で部材に対して移動可能な移動体に取り付けられた磁石が発生する磁場に基づく第一検出信号を出力し、前記部材に取り付けられた第一磁気検出部と、
前記移動体が前記平面内で回転することによって前記磁石が前記第一磁気検出部に近付いた際には前記磁石が遠退き、前記移動体が前記平面内で回転することによって前記磁石が前記第一磁気検出部から遠退いた際には前記磁石が近付くように前記部材に取り付けられ、前記磁石が発生する磁場に基づく第二検出信号を出力する第二磁気検出部と、
前記第一検出信号及び前記第二検出信号の和信号を生成する和信号生成部と、
前記和信号生成部から入力される和信号に基づいて、前記第一磁気検出部及び前記第二磁気検出部に対する前記磁石の前記平面内での回転角を算出する算出部と
前記第一検出信号及び前記第二検出信号の差信号を生成する差信号生成部と、
前記平面内で前記第一磁気検出部に近付く又は遠退く方向である第一方向における前記磁石の移動に基づく第一信号に関連する第一係数を前記和信号を用いて演算する第一係数演算部と、
前記部材に取り付けられ前記磁場の強度を検出し、前記平面内で前記第一方向と直交する方向である第二方向における前記磁石の移動に基づく第二信号を出力する第三磁気検出部と、
前記第二信号に関連する第二係数を前記第三磁気検出部から入力される第二信号を用いて演算する第二係数演算部と
を備え
前記算出部は、
前記差信号生成部から入力される差信号を前記和信号生成部から入力される和信号で除算する除算部と、
前記差信号生成部から入力される差信号に含まれる前記第一方向に関連する成分の一部を、前記第一係数演算部から入力される第一係数を用いて除去し、該差信号に含まれる前記第二方向に関連する成分を、前記第二係数演算部から入力される第二係数を用いて除去する成分除去前段部と
を有する
信号検出装置。
【請求項2】
一の方向及び前記一の方向に直交する平面内で部材に対して移動可能な移動体に取り付けられた磁石が発生する磁場に基づく第一検出信号を出力し、前記部材に取り付けられた第一磁気検出部と、
前記移動体が前記平面内で回転することによって前記磁石が前記第一磁気検出部に近付いた際には前記磁石が遠退き、前記移動体が前記平面内で回転することによって前記磁石が前記第一磁気検出部から遠退いた際には前記磁石が近付くように前記部材に取り付けられ、前記磁石が発生する磁場に基づく第二検出信号を出力する第二磁気検出部と、
前記第一検出信号及び前記第二検出信号の和信号を生成する和信号生成部と、
前記和信号生成部から入力される和信号に基づいて、前記第一磁気検出部及び前記第二磁気検出部に対する前記磁石の前記平面内での回転角を算出する算出部と
前記第一検出信号及び前記第二検出信号の差信号を生成する差信号生成部と、
前記平面内で前記第一磁気検出部に近付く又は遠退く方向である第一方向における前記磁石の移動に基づく第一信号に関連する第一係数を前記和信号を用いて演算する第一係数演算部と、
前記部材に取り付けられ前記磁場の強度を検出し、前記平面内で前記第一方向と直交する方向である第二方向における前記磁石の移動に基づく第二信号を出力する第三磁気検出部と、
前記第二信号に関連する第二係数を前記第三磁気検出部から入力される第二信号を用いて演算する第二係数演算部と
を備え
前記算出部は、
前記平面内で前記第一磁気検出部に近付く又は遠退く方向である第一方向における前記磁石の移動に基づく第一信号に関連する第一係数を前記和信号を用いて演算する第一係数演算部と、
前記差信号生成部から入力される差信号に含まれる前記第一方向に関連する成分を、前記第一係数演算部から入力される第一係数を用いて除去する除去部と、
前記差信号生成部から入力される差信号に含まれる前記第一方向に関連する成分の一部を、前記第一係数演算部から入力される第一係数を用いて除去し、該差信号に含まれる前記第二方向に関連する成分を、前記第二係数演算部から入力される第二係数を用いて除去する成分除去前段部と
を有する
信号検出装置。
【請求項3】
前記部材に取り付けられ、前記磁場に基づいて、前記一の方向における前記磁石の移動に基づく第三信号を出力する第四磁気検出部と、
前記第三信号に関連する第三係数を前記第四磁気検出部から入力される第三信号を用いて演算する第三係数演算部と
を備え、
前記算出部は、前記成分除去前段部から入力される信号に含まれる前記一の方向に関連する成分を、前記第三係数演算部から入力される第三係数及び前記算出部の出力信号を用いて除去する成分除去後段部を有する
請求項1又は2に記載の信号検出装置。
【請求項4】
前記部材に取り付けられ、前記磁場に基づいて、前記一の方向における前記磁石の移動に基づく第三信号を出力する第四磁気検出部と、
前記第三信号に関連する第三係数を前記第四磁気検出部から入力される第三信号を用いて演算する第三係数演算部と
を備え、
前記算出部は、前記成分除去前段部から入力される信号に含まれる前記一の方向に関連する成分を、前記第三係数演算部から入力される第三係数及び所定値を用いて除去する成分除去後段部を有する
請求項1又は2に記載の信号検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場の強度に基づいて位置制御用の信号を検出する信号検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機器などに設けられた小型カメラを用いて静止画像を撮影する機会が増えている。これに伴い、静止画像の撮影時に手ブレ(振動)があったとしても、結像面上での像ブレを防いで鮮明な撮影ができるようにした光学式手ブレ補正(OIS;Optical Image Stabilizer/以下、「手ブレ補正」と略記する場合がある)装置が種々提案されている(例えば特許文献1)。このような手ブレ補正装置は、例えば小型カメラに用いられるレンズホルダに固定された磁石が発生する磁場を検出してレンズホルダの位置制御を行う。
【0003】
レンズホルダは、所定のステージや弾性部材などで、直交する3軸方向に移動が制限された状態で携帯電話機器の筐体などに設けられている。しかしながら、携帯電話機器などの小型化薄型化に伴い、このようなステージや弾性部材を設けるための領域を確保することが困難になっている。このため、レンズホルダは、ステージなどに取り付けられずに携帯電話機器に設けられるので、撮影時に手ブレが生じると、従来の3軸方向の移動に加えて、従来は存在しなかった、2軸で形成される平面内で回転してしまう場合がある。しかしながら、2軸に動いた際、正確に回転角度を検出する手法がなく、回転を制御することが難しい。このため、従来の手ブレ補正装置は、この平面内でのレンズホルダの回転に基づく像ブレを十分に補正できないという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−1964660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、平面内で回転する磁石の回転角を検知することができる信号検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様による信号検出装置は、一の方向及び前記一の方向に直交する平面内で部材に対して移動可能な移動体に取り付けられた磁石が発生する磁場に基づく第一検出信号を出力し、前記部材に取り付けられた第一磁気検出部と、前記移動体が前記平面内で回転することによって前記磁石が前記第一磁気検出部に近付いた際には前記磁石が遠退き、前記移動体が前記平面内で回転することによって前記磁石が前記第一磁気検出部から遠退いた際には前記磁石が近付くように前記部材に取り付けられ、前記磁石が発生する磁場に基づく第二検出信号を出力する第二磁気検出部と、前記第一検出信号及び前記第二検出信号の和信号を生成する和信号生成部と、前記和信号生成部から入力される和信号に基づいて、前記第一磁気検出部及び前記第二磁気検出部に対する前記磁石の前記平面内での回転角を算出する算出部と、前記第一検出信号及び前記第二検出信号の差信号を生成する差信号生成部と、前記平面内で前記第一磁気検出部に近付く又は遠退く方向である第一方向における前記磁石の移動に基づく第一信号に関連する第一係数を前記和信号を用いて演算する第一係数演算部と、前記部材に取り付けられ前記磁場の強度を検出し、前記平面内で前記第一方向と直交する方向である第二方向における前記磁石の移動に基づく第二信号を出力する第三磁気検出部と、前記第二信号に関連する第二係数を前記第三磁気検出部から入力される第二信号を用いて演算する第二係数演算部とを備え、前記算出部は、前記差信号生成部から入力される差信号を前記和信号生成部から入力される和信号で除算する除算部と、前記差信号生成部から入力される差信号に含まれる前記第一方向に関連する成分の一部を、前記第一係数演算部から入力される第一係数を用いて除去し、該差信号に含まれる前記第二方向に関連する成分を、前記第二係数演算部から入力される第二係数を用いて除去する成分除去前段部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、平面内で回転する磁石の回転角を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態による信号検出装置1の位置検出対象のカメラモジュール2の概略構成を示す外観図であり、図1(a)はカメラモジュール2の斜視図であり、図1(b)はカメラモジュール2の平面図である。
図2】本発明の第1実施形態による信号検出装置1の概略構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第2実施形態による信号検出装置3の概略構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第3実施形態による信号検出装置5の概略構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第4実施形態による信号検出装置7の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態による信号検出装置及び信号検出方法について図1及び図2を用いて説明する。本実施形態による信号検出装置1は、カメラ機能付電子機器100に備えられている。本実施形態におけるカメラ機能付電子機器100は、例えばスマートフォンなどの携帯電話機器、デジタルカメラ及びデジタルムービーなどである。
【0010】
図1は、カメラ機能付電子機器100に備えられたカメラモジュール2の概略構成を示す斜視図(図1(a))及び平面図(図1(b))である。図1(a)では、理解を容易にするため、ホール素子HEx1,HEx2,HEy,HEz(詳細は後述する)が取り付けられた筐体4(詳細は後述する)の図示は省略されている。また、図1(a)及び図1(b)には、説明の便宜上、カメラモジュール2に対応付けられたXYZ直交座標系が図示されている。
【0011】
図1に示すように、カメラモジュール2は、薄板長方形状のレンズホルダ(移動体の一例)21と、レンズホルダ21の中央に形成された貫通孔に取り付けられたレンズ22とを有している。レンズホルダ21は、カメラ機能付電子機器100に備えられた筐体(部材の一例)4のホルダ取付部41(図1(b)参照)に設けられている。レンズホルダ21は、ホルダ取付部41において、筐体4に対して移動可能に設けられている。
【0012】
カメラモジュール2は、レンズホルダ21の周囲の少なくとも一部に設けられた磁石Mを有している。磁石Mは、磁石Mx,磁石My及び磁石Mzで構成されている。磁石Mx,Myは、レンズホルダ21の側面に取り付けられている。磁石Myは、磁石Mxが配置されたレンズホルダ21の側面に直交する側面に配置されている。磁石Mzは、レンズホルダ21を挟んで磁石Mxに対向配置されている。磁石Mzは、筐体4に設けられたホルダ取付部41内でレンズホルダ21が動いても、ホール素子HEzとの間隔が一定に保たれるようにホルダ取付部41内に設けられている。磁石Mzは、レンズホルダ21を外側から抱える構造を有している。磁石Mzとレンズホルダ21とは、互いに独立して可動するようになっている。
【0013】
図1(b)に示すように、ホール素子HEx1,HEx2,HEy,HEzは、筐体4に取り付けられている。ホール素子HEx1(第一磁気検出部の一例)及びホール素子HEx2(第二磁気検出部の一例)は、磁石Mxに対向配置されている。ホール素子HEy(第三磁気検出部の一例)は、磁石Myに対向配置されている。ホール素子HEz(第四磁気検出部の一例)は、磁石Mzに対向配置されている。
【0014】
ホール素子HEx1の周囲には、磁石Mxに対向配置されたコイルCx1が設けられている。コイルCx1には、ホール素子HEx1が検出する検出信号に基づく電流が供給される。ホール素子HEx2の周囲には、磁石Mxに対向配置されたコイルCx2が設けられている。コイルCx2及びコイルCx1は、互いに隣り合って配置されている。コイルCx2には、ホール素子HEx2が検出する検出信号に基づく電流が供給される。ホール素子HEyの周囲には、磁石Myに対向配置されたコイルCyが設けられている。コイルCyには、ホール素子HEyが検出する検出信号に基づく電流が供給される。ホール素子HEzの周囲には、磁石Mzに対向配置されたコイルCzが設けられている。コイルCzには、ホール素子HEzが検出する検出信号に基づく電流が供給される。
【0015】
磁石Mx,My,Mzは、薄板直方体形状を有している。磁石Mx及び磁石Mzは、磁石Myよりも大きく形成されている。磁石Mx,Myは1つのN極と1つのS極を有する永久磁石である。磁石Mxは、S極をレンズホルダ21側に分布させ、N極をホール素子HEx1側に分布させて配置されている。磁石Myは、S極をレンズホルダ21側に分布させ、N極がホール素子HEy側に分布させて配置されている。磁石Mzは2つのN極と2つのS極を有る永久磁石である。磁石Mzは、短辺方向に並ぶS極及びN極をレンズホルダ21側及びホール素子HEz側の双方に分布させて配置されている。レンズホルダ21側及びホール素子HEz側のそれぞれのS極同士は対角に分布され、レンズホルダ21側及びホール素子HEz側のそれぞれのN極同士は対角に分布されている。なお、磁石Mx,My,Mzは、図1に示すのとは逆にN極及びS極が分布されていてもよい。また、本構成では、磁石Mx,My,Mzは各々1つずつだが、それぞれの磁石Mx,My,Mzは複数個あっても問題ない。
【0016】
レンズホルダ21及び磁石Mx,Myは、ホルダ取付部41において筐体4に対して相対的に移動可能に設けられている。後述する信号検出装置1は、ホール素子HEx1,HEx2,HEy,HEzの検出信号に基づいて、磁石Mx,My,Mzの移動量や移動方向を検出し、撮影時の手ブレなどによる磁石Mx,My,Mz及びレンズホルダ21の移動を抑制するための信号などを出力するようになっている。また、磁石Mzは、焦点調整のために、レンズ22の光軸方向のレンズ22の位置検出にも使われる場合がある。本構成では、筐体4にホール素子HEx1,HEx2,HEy,HEzなどのセンサが搭載され、磁石Mx,My,Mzがレンズホルダ21に搭載されているが、これが逆の関係でも問題ない。
【0017】
図1(a)及び図1(b)に示すように、レンズホルダ21の基準位置(設計値)において、レンズ22の光軸方向にXYZ直交座標系のZ軸方向(一の方向の一例)が対応付けられている。また、レンズホルダ21の基準位置において、レンズ22の光軸方向に直交する平面にXY座標平面が対応付けられている。また、ホール素子HEx1、HEx2及びホール素子HEzの並ぶ方向にX軸方向が対応付けられている。換言すると、X軸方向は、磁石Myの長辺が延在する方向に対応付けられている。ホール素子HEx側からホール素子HEz側に向かう方向がX軸の正方向である。さらに、ホール素子HEx1及びホール素子HEx2が並ぶ方向にY軸方向が対応付けられている。換言すると、Y軸方向は、磁石Mxの長辺が延在する方向に対応付けられている。ホール素子HEy側からホール素子が設けられていないレンズホルダ21の側壁側に向かう方向がY軸の正方向である。
【0018】
次に、本実施形態による信号検出装置1の概略構成について図1を参照しつつ図2を用いて説明する。図2では、理解を容易にするため、信号検出装置1に接続された制御部6、制御部6によって制御される駆動部8及び駆動部8によって駆動されるコイルCx1,Cx2,Cy,Czが併せて図示されている。
【0019】
図2に示すように、信号検出装置1は、XYZ直交座標系のZ軸方向及びZ軸方向に直交するXY座標平面内で筐体4に対して移動可能な磁石M(図1参照)に取り付けられた磁石Mxが発生する磁場に基づく第一検出信号SHx1を検出するホール素子HEx1を備えている。また、信号検出装置1は、レンズホルダ21(図1参照)がXY座標平面内で回転することによって磁石Mxがホール素子HEx1に近付いた際には磁石Mxが遠退き、レンズホルダ21がXY座標平面内で回転することによって磁石Mxがホール素子HEx1から遠退いた際には磁石Mxが近付くように筐体4に取り付けられ、磁石Mxが発生する磁場に基づく第二検出信号SHx2を出力するホール素子HEx2を備えている。なお、この場合、レンズホルダ21がXY座標平面内でX軸方向に平行移動した場合には磁石Mxはホール素子HEx1及びホール素子HEx2に対して相対的に同じ方向に動く。
【0020】
レンズホルダ21の回転角が十分小さい場合、ホール素子HEx1が出力する第一検出信号SHx1は以下の式(1)で表すことができ、ホール素子HEx2が出力する第二検出信号SHx2は以下の式(2)で表すことができる。
SHx1= B×(α×x+1)×sinθ+B0×(α×x+1)
+B×(α×x+1)×(β×y+1)
+B×(α×x+1)×(γ×z+1)×sinθ ・・・(1)
SHx2=−B×(α×x+1)×sinθ+B0×(α×x+1)
−B×(α×x+1)×(β×y+1)
−B×(α×x+1)×(γ×z+1)×sinθ ・・・(2)
【0021】
式(1)及び式(2)は近似的に一次項で表現しているが、場合によっては高次項、またはその他関数、テーブルを使って、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の移動の影響を表現しても構わない。また一次で表した際にオフセット項を+1と表現しているが、これに関しては各々の環境で最適な0を含むオフセット項にしても問題ない。
【0022】
式(1)において、「B」は、レンズホルダ21(すなわち磁石M)が基準位置に存在する場合にホール素子HEx1が検出する磁石Mxが発生する磁場の磁束密度の基準値(設計値)を表している。「α」は、ホール素子HEx1と磁石Mxとの相対距離が基準位置からX軸方向にずれた場合の磁石Mxが発生する磁場の変化率を表している。「x」は、ホール素子HEx1と磁石Mxとの相対距離の基準位置からのX軸方向へのずれ量を表している。「B0」は、ホール素子HEx1が検出する検出信号に含まれるオフセット量を表している。
【0023】
また、式(1)において、「θ」は、磁石Mx,My,Mz(すなわちレンズホルダ21(図1参照))の基準位置からの回転角、すなわち基準位置に対する傾斜角(チルト角)を表している。「β」は、ホール素子HEyと磁石Myとの相対距離が基準位置からY軸方向にずれた場合の磁石Myが発生する磁場の変化率を表している。「y」は、ホール素子HEyと磁石Myとの相対距離の基準位置からのY軸方向へのずれ量を表している。「γ」は、ホール素子HEzと磁石Mzとの相対距離が基準位置からZ軸方向にずれた場合の磁石Mzが発生する磁場の変化率を表している。「z」は、ホール素子HEzと磁石Mzとの相対距離の基準位置からのZ軸方向へのずれ量を表している。
【0024】
式(2)において、「B」は、レンズホルダ21(すなわち磁石M)が基準位置に存在する場合にホール素子HEx2が検出する磁石Mxが発生する磁場の磁束密度の基準値(設計値)を表している。「α」は、ホール素子HEx2と磁石Mxとの相対距離が基準値からX軸方向にずれた場合の磁石Mxが発生する磁場の変化率を表している。「x」は、ホール素子HEx2と磁石Mxとの相対距離の基準位置からのX軸方向へのずれ量を表している。「B0」は、ホール素子HEx2が検出する検出信号に含まれるオフセット量を表している。また、各項にオフセット:+1があるが、磁石Mの構成によっては不必要なケースもある。
【0025】
また、式(2)において、「θ」は、磁石Mx,My,Mz(すなわちレンズホルダ21(図1参照))の基準位置からの回転角、すなわち基準位置に対する傾斜角(チルト角)を表している。「β」は、ホール素子HEyと磁石Myとの相対距離が基準位置からY軸方向にずれた場合の磁石Myが発生する磁場の変化率を表している。「y」は、ホール素子HEyと磁石Myとの相対距離の基準位置からのY軸方向へのずれ量を表している。「γ」は、ホール素子HEzと磁石Mzとの相対距離が基準位置からZ軸方向にずれた場合の磁石Mzが発生する磁場の変化率を表している。「z」は、ホール素子HEzと磁石Mzとの相対距離の基準位置からのZ軸方向へのずれ量を表している。
【0026】
信号検出装置1は、従来の手振れ補正装置では検出することができない、レンズホルダ21がX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の少なくともいずれかの方向に動き、かつ回転した際のレンズホルダ21の回転角θを算出することができるように構成されている。
【0027】
図1に示すように、磁石Mxは、レンズホルダ21に固定されており、ホール素子HEx1及びホール素子HEx2は、磁石Mx対向し、かつ互いに隣り合って並んで配置されている。このため、レンズホルダ21が基準位置に対してX軸の正方向に距離xだけ移動すると、ホール素子HEx1およびホール素子HEx2と磁石Mxとの相対距離は距離xだけ長くなる。また、レンズホルダ21が基準位置に対してX軸の負方向に距離xだけ移動すると、ホール素子HEx1およびホール素子HEx2と磁石Mxとの相対距離は距離xだけ短くなる。さらに、レンズホルダ21がXY座標平面内で基準位置に対して回転角θだけ回転すると、ホール素子HEx1と磁石Mxとの相対距離はsinθに比例する距離だけ短く(長く)なるのに対し、ホール素子HEx2と磁石Mxとの相対距離はsinθに比例する距離だけ長く(短く)なる。このように、レンズホルダ21がXY座標平面内で回転した場合、ホール素子HEx1及び磁石Mxの相対位置関係と、ホール素子HEx2及び磁石Mxの相対位置関係とは、逆の関係にあるので、式(1)及び式(2)に示すように、第一検出信号SHx1及び第二検出信号SHx2は、オフセット成分(B0×(α×x+1)の項)以外は、正負が逆であって絶対値が同じになる。
【0028】
図2に戻って、信号検出装置1は、第一検出信号SHx1及び第二検出信号SHx2の和信号を生成する和信号生成部11を備えている。和信号生成部11の2つの入力端子のうちの一方には、ホール素子HEx1の出力端子が接続されている。和信号生成部11の2つの入力端子のうちの他方には、ホール素子HEx2の出力端子が接続されている。
【0029】
信号検出装置1は、和信号生成部11から入力される和信号S+に基づいて、ホール素子HEx1及びホール素子HEx2に対する磁石MxのXY座標平面内での回転角を算出する算出部16を備えている。算出部16の構成については後述する。
【0030】
信号検出装置1は、第一検出信号SHx1及び第二検出信号SHx2の差信号S−を生成する差信号生成部12を備えている。差信号生成部12の2つの入力端子のうちの一方には、ホール素子HEx1の出力端子が接続されている。差信号生成部12の2つの入力端子のうちの他方には、ホール素子HEx2の出力端子が接続されている。差信号生成部12に第一検出信号SHx1及び第二検出信号SHx2が入力されるのと、差信号生成部12に入力される第一検出信号SHx1及び第二検出信号SHx2と同一の検出信号が和信号生成部11に入力されるのは、ほぼ同時である。
【0031】
式(1)及び式(2)において「sinθ=θ(θ≒0)」と近似すると、和信号S+及び差信号S−は、式(1)及び式(2)より、以下の式(3)及び式(4)で表すことができる。
S+=SHx1+SHx2
=2×B0×(α×x+1) ・・・(3)
S−=SHx1−SHx2
= 2×B×(α×x+1)×θ
+2×B×(α×x+1)×(β×y+1)
+2×B×(α×x+1)×γ×z×θ ・・・(4)
【0032】
ここで、磁石Mがホール素子HEx1,HEx2に対してX軸、Y軸及びZ軸方向に移動せず(x=y=z=0)に回転した場合、式(4)より、差信号S−は「2×B×θ」となる。磁束密度Bは、磁石Mがホール素子HEx1,HEx2に対して基準位置に配置されている場合にホール素子HEx1,HEx2が検出する磁場の磁束密度である。つまり、磁束密度Bは基準値(設計値)であって既知である。このため、差信号S−の値と磁束密度Bの値を式(4)に代入することにより、ホール素子HEx1,HEx2(すなわち筐体4)に対する磁石M(すなわちレンズホルダ21)のXY座標平面内での回転角θを算出することができる。
【0033】
一方、磁石Mがホール素子HEx1,HEx2に対してX軸、Y軸及びZ軸方向のうちの少なくとも1つの方向に移動し、かつXY座標平面内で回転すると、式(4)に示すように、差信号S−には、X軸方向に関する成分(B×(α×x+1))、Y軸方向に関する成分(B×(β×y+1))及びZ軸方向に関する成分(B×(γ×z×θ))の少なくともいずれかが含まれる。変化率α,β、γは未知数である。このため、磁石Mが、ホール素子HEx1,HEx2に対してX軸、Y軸及びZ軸方向のうちの少なくとも1つの方向に移動し、かつXY座標平面内で回転した場合、磁石M(すなわちレンズホルダ21)の回転角θは、差信号S−のみからでは算出することができない。
【0034】
そこで、信号検出装置1は、差信号S−に含まれるX軸方向に関する成分を和信号S+を用いて除去し、差信号S−に含まれるY軸方向に関する成分をホール素子HEyが検出するY信号SHy(詳細は後述する)を用いて除去し、差信号S−に含まれるZ軸方向に関する成分をホール素子HEzが検出するZ信号SHz(詳細は後述する)を用いて除去するようになっている。
【0035】
図2に示すように、信号検出装置1は、XY座標平面内でホール素子HEx1に近付く又は遠退く方向であるX軸方向(第一方向の一例)における磁石Mxの移動に基づくX信号(第一信号の一例)SHxに関連するX方向係数(第一係数の一例)Kxを和信号S+を用いて演算するX方向係数演算部(第一係数演算部の一例)13を備えている。X方向係数演算部13の入力端子は、和信号生成部11の出力端子に接続されている。これにより、X方向係数演算部13には、和信号生成部11から出力される和信号S+が入力されるようになっている。
【0036】
X信号SHxは、式(1)及び式(2)に含まれる「B×(α×x+1)」に相当する。つまり、X信号SHxは、磁石MがX軸方向のみに移動した場合(y=z=θ=0)にホール素子HEx1が検出する第一検出信号SHx1の絶対値及びホール素子HEx2が検出する第二検出信号SHx2の絶対値に等しい信号である。X方向係数Kxは、式(1)から式(4)に示す「α×x+1」に相当する。「B0」は既知であるため、X方向係数演算部13は、和信号S+からX方向係数Kxを演算することができる。
【0037】
信号検出装置1は、筐体4に取り付けられ磁石Myの磁場の強度を検出し、XY座標平面内でX軸方向と直交する方向であるY軸方向(第二方向の一例)における磁石Myの移動に基づくY信号(第二信号の一例)SHyを出力するホール素子HEyを備えている。XY座標平面内での磁石Myの回転に伴ってY信号SHyに含まれる回転成分は、XY座標平面内での磁石Mxの回転に伴って第一検出信号SHx1,SHx2に含まれる回転成分と比較して極めて小さい。このため、本実施形態では、Y信号SHyに含まれる回転成分は無視する。したがって、Y信号SHyは、磁石MがY軸方向のみに移動した場合にホール素子HEyが検出する信号となる。このため、Y信号SHyは、式(1)、式(2)及び式(4)に含まれる「B×(β×y+1)」に相当する。
【0038】
信号検出装置1は、Y信号SHyに関連するY方向係数(第二係数の一例)Kyをホール素子HEyから入力されるY信号SHyを用いて演算するY方向係数演算部(第二係数演算部の一例)14を備えている。Y方向係数演算部14の入力端子は、ホール素子HEyの出力端子に接続されている。これにより、Y方向係数演算部14には、ホール素子HEyから出力されるY信号SHyが入力されるようになっている。Y方向係数Kyは、式(1)から式(4)に示す「β×y+1」に相当する。「B」は既知であるため、Y方向係数演算部14は、Y信号SHyからY方向係数Kyを演算することができる。
【0039】
信号検出装置1は、筐体4に取り付けられ磁石Mzの磁場の強度を検出し、Z軸方向における磁石Mzの移動に基づくZ信号(第三信号の一例)SHzを出力するホール素子HEzを備えている。XY座標平面内での磁石Mzの回転に伴ってZ信号SHzに含まれる回転成分は、XY座標平面内での磁石Mxの回転に伴って第一検出信号SHx1,SHx2に含まれる回転成分と比較して極めて小さい。このため、本実施形態では、Z信号SHzに含まれる回転成分は無視する。したがって、Z信号SHzは、磁石MがZ軸方向のみに移動した場合にホール素子HEzが検出する信号となる。このため、Z信号SHzは、式(1)、式(2)及び式(4)に含まれる「B×(γ×z+1)」に相当する。
【0040】
信号検出装置1は、Z信号SHzに関連するZ方向係数(第三係数の一例)Kzをホール素子HEzから入力されるZ信号SHzを用いて演算するZ方向係数演算部(第三係数演算部の一例)15を備えている。Z方向係数演算部15の入力端子は、ホール素子HEzの出力端子に接続されている。これにより、Z方向係数演算部15には、ホール素子HEzから出力されるZ信号SHzが入力されるようになっている。Z方向係数Kzは、式(1)から式(4)に示す「γ×z+1」に相当する。「B」は既知であるため、Z方向係数演算部15は、Z信号SHzからZ方向係数Kzを演算することができる。
【0041】
信号検出装置1に備えられた算出部16は、差信号生成部12から入力される差信号S−に含まれるX方向に関連する成分(B×(α×x+1))の一部を、X方向係数演算部13から入力されるX方向係数Kxを用いて除去し、差信号S−に含まれるY方向に関連する成分(B×(β×y+1))を、Y方向係数演算部14から入力されるY方向係数Kyを用いて除去する成分除去前段部161を有している。
【0042】
成分除去前段部161の3つの入力端子のうち、第1端子にはX方向係数演算部13の出力端子が接続され、第2端子にはY方向係数演算部14の出力端子が接続され、第3端子には差信号生成部12の出力端子が接続されている。これにより、成分除去前段部161には、X方向係数演算部13が出力しX方向係数Kxの情報を含むX方向係数信号Skxと、Y方向係数演算部14が出力しY方向係数Kyの情報を含むY方向係数信号Skyと、差信号生成部12が出力する差信号S−とが入力される。「B」は既知であるため、成分除去前段部161は、X方向係数信号Skxに含まれるX方向係数Kx及Y方向係数信号Skyに含まれるY方向係数Kyを用いて、差信号S−を構成する「2×B×(α×x+1)×(β×y+1)」の項に相当する成分を除去する。成分除去前段部161は、演算結果の信号であってX方向及びY方向に関連する成分を除去した演算信号Sefを算出部16に設けられた成分除去後段部163に出力する。
【0043】
算出部16は、成分除去前段部161から入力される演算信号Sefに含まれるZ方向に関連する成分(B×γ×z)を、Z方向係数演算部15から入力されるZ方向係数Kzの情報を含むZ方向係数信号Skz及び算出部16の出力信号Soを用いて除去する成分除去後段部163を有している。
【0044】
成分除去後段部163の4つの入力端子のうち、第1端子にはX方向係数演算部13の出力端子が接続され、第2端子にはZ方向係数演算部15の出力端子が接続され、第3端子には成分除去前段部161の出力端子が接続され、第4端子には算出部16の出力端子が接続されている。これにより、成分除去後段部163には、X方向係数演算部13が出力するX方向係数信号Skxと、Z方向係数演算部15が出力しZ方向係数Kzの情報を含むZ方向係数信号Skzと、成分除去前段部161が出力する演算信号Sefと、算出部16が出力する出力信号Soとが入力される。
【0045】
成分除去後段部163は、X方向係数信号Skxに含まれるX方向係数Kx、Z方向係数信号Skzに含まれるZ方向係数Kz、回転角θの情報を含む出力信号Soを用いて、成分除去前段部161が出力する演算信号Sefに含まれて差信号S−を構成する「2×B×(α×x+1)×γ×z×θ」の項に相当する成分を減衰する。より具体的には、成分除去後段部163は、算出部16が算出した回転角θの値をフィードバックして、「2×B×(α×x+1)×γ×z×θ」の項に相当する成分を減衰する。成分除去後段部163は、演算結果の信号であってZ方向に関連する成分を減衰した演算信号Sebを算出部16に設けられた除算部165に出力する。成分除去後段部163は、出力信号Soをフィードバックするフィードバック処理を繰り返すことにより、最終的に出力信号Soの例えば電圧値が回転角θの真値に収束する。
【0046】
算出部16は、差信号生成部12から入力される差信号S−を和信号生成部11から入力される和信号S+で除算する除算部165を有している。除算部165の2つの入力端子のうち、一方の端子には成分除去後段部163が接続され、他方の端子には和信号生成部11の出力端子が接続されている。
【0047】
回転角θの真値となった出力信号Soがフィードバックされると、成分除去後段部163が出力する演算信号Sebは、差信号生成部12が出力する差信号S−からX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に関連する成分が除去された信号となる。すなわち、演算信号Sebは、式(4)における「2×B×(α×x+1)×(β×y+1)」及び「2×B×(α×x+1)×γ×z×θ」の項を除去した式で表すことができる。したがって、除算部165が出力する信号、すなわち算出部16の出力信号Soは、以下の式(5)で表すことができる。
So=S−/S+
=(2×B×(α×x+1)×θ
+2×B×(α×x+1)×(β×y+1)
+2×B×(α×x+1)×γ×z×θ)
/(2×B0×(α×x+1))
=(B/B0)×θ ・・・(5)
但し、2×B×(α×x+1)×(β×y+1)=0、2×B×(α×x+1)×γ×z×θ)=0、とする。
【0048】
式(5)に示すように、算出部16が出力する出力信号Soには、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の変化率α,β,γが含まれず、回転角θのみが含まれる。磁束密度B及びオフセット量B0は既知であるため、出力信号Soに基づいて回転角θを求めることができる。
【0049】
また、「2×B×(α×x+1)×(β×y+1)=0」という条件のみ用い、式(5)をまとめると、出力信号Soは、以下の式(6)のように表すことができる。
So=S−/S+
=(2×B×(α×x+1)×θ
+2×B×(α×x+1)×(β×y+1)
+2×B×(α×x+1)×γ×z×θ)
/(2×B0×(α×x+1))
=(B+B×γ×z)×θ/B0 ・・・(6)
【0050】
式(6)において、「z」はZ軸方向の位置センサ(ホール素子HEz)から算出し、「γ」は事前に求めておけば、出力信号Soからも回転角θが算出できる。
【0051】
図2に示すように、カメラ機能付電子機器100は、信号検出装置1に接続された制御部6と、制御部6に接続された駆動部8とを備えている。
【0052】
制御部6は、X方向係数演算部13の出力端子に接続された入力端子を有するX方向制御部61と、算出部16の出力端子に接続された入力端子を有するチルト制御部63と、Y方向係数演算部14の出力端子に接続された入力端子を有するY方向制御部65と、Z方向係数演算部15の出力端子に接続された入力端子を有するZ方向制御部67とを備えている。これにより、X方向制御部61には、X方向係数演算部13が出力するX方向係数信号Skxが入力される。チルト制御部63には、算出部16が出力する出力信号Soが入力される。Y方向制御部65には、Y方向係数演算部14が出力するY方向係数信号Skyが入力される。Z方向制御部67には、Z方向係数演算部15が出力するZ方向係数信号Skzが入力される。
【0053】
X方向制御部61は、入力されたX方向係数信号Skxに基づいて、基準位置からのレンズホルダ21のX方向の移動量を算出し、X方向制御信号Sxdを生成する。チルト制御部63は、入力された出力信号Soに基づいて、基準位置からのレンズホルダ21の回転角θを算出し、チルト制御信号Sθを生成する。Y方向制御部65は、入力されたY方向係数信号Skyに基づいて、基準位置からのレンズホルダ21のY方向の移動量を算出し、Y方向制御信号Sydを生成する。Z方向制御部67は、入力されたZ方向係数信号Skzに基づいて、基準位置からのレンズホルダ21のZ方向の移動量を算出し、Z方向制御信号Szdを生成する。
【0054】
駆動部8は、X方向制御部61の出力端子及びチルト制御部63の出力端子に接続された2つの入力端子を有するコイル駆動部81と、X方向制御部61の出力端子及びチルト制御部63の出力端子に接続された2つの入力端子を有するコイル駆動部83を備えている。また、駆動部8は、Y方向制御部65の出力端子に接続された入力端子を有するコイル駆動部85と、Z方向制御部67の出力端子に接続された入力端子を有するコイル駆動部87とを備えている。これにより、コイル駆動部81には、X方向制御部61が出力するX方向制御信号Sxdと、チルト制御部63が出力するチルト制御信号Sθとが入力される。コイル駆動部83には、X方向制御部61が出力するX方向制御信号Sxdと、チルト制御部63が出力するチルト制御信号Sθとが入力される。コイル駆動部85には、Y方向制御部65が出力するY方向制御信号Sydが入力される。コイル駆動部87には、Z方向制御部67が出力するZ方向制御信号Szdが入力される。
【0055】
コイル駆動部81は、入力されたX方向制御信号Sxd及びチルト制御信号Sθに基づいて、必要なコイルCx1に供給されレンズホルダ21を基準位置に戻すために電流の電流量及び向きを決定し、出力端子に接続されたコイルCx1に電流を供給する。コイル駆動部83は、入力されたX方向制御信号Sxd及びチルト制御信号Sθに基づいて、必要なコイルCx2に供給されレンズホルダ21を基準位置に戻すために電流の電流量及び向きを決定し、出力端子に接続されたコイルCx2に電流を供給する。コイル駆動部85は、入力されたY方向制御信号Sydに基づいて、レンズホルダ21を基準位置に戻すために必要なコイルCyに供給する電流の電流量及び向きを決定し、出力端子に接続されたコイルCyに電流を供給する。コイル駆動部87は、入力されたZ方向制御信号Szdに基づいて、必要なコイルCzに供給されレンズホルダ21を基準位置に戻すために電流の電流量及び向きを決定し、出力端子に接続されたコイルCzに電流を供給する。これにより、撮影時にカメラ機能付電子機器100に手ブレが生じても、レンズホルダ21の位置ズレが抑制されるので、結像面上での像ブレを防いで鮮明な撮影が可能になる。
【0056】
次に、本実施形態による信号検出方法について図1及び図2を用いて簡単に説明する。
本実施形態による信号検出方法ではまず、Z軸方向に直交するXY座標平面内で筐体4に対して移動可能なレンズホルダ21に取り付けられた磁石Mxが発生する磁場に基づく第一検出信号SHx1を、ホール素子HEx1が出力する。このとき、レンズホルダ21がXY座標平面内で回転することによって磁石Mxがホール素子HEx1に近付いた際には磁石Mxが遠退き、レンズホルダ21がXY座標平面内で回転することによって磁石Mxがホール素子HEx1から遠退いた際には磁石Mxが近付くように筐体4に取り付けられたホール素子HEx2が、磁石Mxが発生する磁場に基づく第二検出信号SHx2を出力する。ホール素子HEx1が第一検出信号SHx1を出力するタイミングと、ホール素子HEx2が第二検出信号SHx2を出力するタイミングとはほぼ同時である。
【0057】
また、本実施形態による信号検出方法では、第一検出信号SHx1及び第二検出信号SHx2の和信号S+を和信号生成部11で生成し、生成された和信号S+に基づいて、ホール素子HEx1及びホール素子HEx2に対する磁石MのXY座標平面内での回転角θを算出部16で算出する。算出部16は、上述のとおり回転角θを算出する。
【0058】
以上説明したように、本実施形態による信号検出装置及び信号検出方法によれば、磁石が、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の少なくともいずれかの方向に移動するとともに、XY座標平面内で回転したとしても、XY座標平面内で回転する磁石の回転角を算出することができる。これにより、本実施形態による信号検出装置及び信号検出方法によれば、磁石が固定されたレンズホルダの手ブレなどによる振動を抑制できる。
【0059】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態による信号検出装置及び信号検出方法について図3を用いて説明する。本実施形態による信号検出装置3は、上記第1実施形態による信号検出装置1と同様に、カメラ機能付電子機器に備えられている。本実施形態におけるカメラ機能付電子機器300は、上記第1実施形態と同様に、スマートフォンなどの携帯電話機器、デジタルカメラ及びデジタルムービーなどである。また、本実施形態におけるカメラモジュールの構成は、上記第1実施形態と同様であるため、以下、図1を適宜参照して、本実施形態による信号検出装置3を説明する。なお、上記第1実施形態による信号検出装置1と同一の作用・機能を奏する構成要素には同一の符号を付してその説明は省略する
【0060】
図3に示すように、本実施形態による信号検出装置3は、上記第1実施形態における算出部16とは異なる構成の算出部17を備えている。算出部17は、成分除去前段部161と、除算部165とを有している。さらに、算出部17は、成分除去前段部161から入力される演算信号Sefに含まれるZ軸方向に関連する成分(B×(γ×z×θ))を、Z方向係数演算部15から入力されるZ方向係数Kzの情報を含むZ方向係数信号Skz及び所定値を用いて除去する成分除去後段部171を有している。さらに、算出部17は、成分除去後段部171に入力される所定値を生成する所定値生成部173を有している。
【0061】
成分除去後段部171の4つの入力端子のうち、第1端子にはX方向係数演算部13の出力端子が接続され、第2端子にはZ方向係数演算部15の出力端子が接続され、第3端子には成分除去前段部161の出力端子が接続され、第4端子には所定値生成部173の出力端子が接続されている。成分除去後段部171は、算出部17の出力信号Soではなく所定値生成部173が出力する一定信号Scが入力される点を除いて、上記第1実施形態における成分除去後段部163と同様の構成を有し、同様の機能を発揮するようになっている。一定信号Scは、例えば電圧値が所定値であって信号レベルが一定の信号である。
【0062】
成分除去後段部171は、差信号S−を構成する「2×B×(α×x+1)×γ×z×θ」の項のθに一定信号Scの値を用いて、この項に相当する成分を除去する。カメラ機能付電子機器300を用いて写真撮影して手ブレが生じた場合、XY座標平面内での磁石M(すなわちレンズホルダ21)の回転角θは、例えば0〜2°程度である。そこで、本実施形態による信号検出装置3は、所定値生成部173によって例えば0〜2°に相当する一定信号Scを生成して成分除去後段部171に入力する。これにより、成分除去後段部171は、差信号S−を構成する「2×B×(α×x+1)×γ×z×θ」の項を、入力される一定信号Sc、X方向係数信号Skxに含まれるX方向係数Kx及びZ方向係数信号Skzに含まれるZ方向係数Kzを用いて除去する。算出部17は、除算部165において、成分除去後段部171から出力され「2×B×(α×x+1)×γ×z×θ」の項が除去された演算信号Sebを和信号S+で除算することにより、式(5)に示す「B/B0)×θ」を算出することができる。
【0063】
本実施形態による信号検出方法は、成分除去後段部171における処理が異なる点を除いて、上記第1実施形態による信号検出方法と同様であるため、説明は省略する。
【0064】
以上説明したように、本実施形態による信号検出装置3及び信号検出方法によれば、磁石Mが、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の少なくともいずれかの方向に移動するとともに、XY座標平面内で回転したとしても、XY座標平面内で回転する磁石の回転角を算出することができる。このため、本実施形態による信号検出装置3及び信号検出方法は、上記第1実施形態による信号検出装置1及び信号検出方法と同様の効果が得られる。
【0065】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態による信号検出装置及び信号検出方法について図4を用いて説明する。本実施形態による信号検出装置5は、上記第1実施形態による信号検出装置1と同様に、カメラ機能付電子機器に備えられている。本実施形態におけるカメラ機能付電子機器500は、上記第1実施形態と同様に、スマートフォンなどの携帯電話機器、デジタルカメラ及びデジタルムービーなどである。また、本実施形態におけるカメラモジュールの構成は、上記第1実施形態と同様であるため、以下、図1を適宜参照して、本実施形態による信号検出装置5を説明する。なお、上記第1実施形態による信号検出装置1と同一の作用・機能を奏する構成要素には同一の符号を付してその説明は省略する
【0066】
図5に示すように、本実施形態による信号検出装置5は、上記第1実施形態における算出部16とは異なる構成の算出部18を備えている。算出部18は、成分除去前段部161と、成分除去後段部163とを有している。さらに、算出部18は、XY座標平面内でホール素子HEx1に近付く又は遠退く方向であるX軸方向(第一方向の一例)における磁石M(磁石Mx)の移動に基づくX信号(第一信号の一例)に関連するX方向係数(第一係数の一例)Kxを和信号S+を用いて演算するX方向係数演算部583を有している。X方向係数演算部583は、X方向係数演算部13と同様の構成を有している。また、算出部18は、差信号生成部12から入力される差信号S−に含まれるX軸方向に関連する成分を、X方向係数演算部583から入力されるX方向係数Kxを用いて除去する除去部581とを有している。
【0067】
X方向係数演算部583の入力端子は、和信号生成部11の出力端子に接続されている。除去部581の2つの入力端子のうち、一方の端子にはX方向係数演算部583の出力端子が接続され、他方の端子には成分除去後段部163の出力端子が接続されている。除去部581が出力する演算信号Sebは、算出部18の出力信号Soとなる。X方向係数演算部583は、入力される和信号+に基づいて、X方向係数Kxの情報を含むX方向係数信号Skxを除去部581に出力する。除去部581は、入力されるX方向係数Kx(=α×x+1)を用いて、成分除去後段部163から入力される演算信号Seb(=(2×B×(α×x+1)×θ)から「α×x+1」を除去して式(5)に示す「(B/B0)×θ」を算出する。
【0068】
本実施形態による信号検出方法は、X方向係数演算部583及び除去部581における処理が異なる点を除いて、上記第1実施形態による信号検出方法と同様であるため、説明は省略する。
【0069】
以上説明したように、本実施形態による信号検出装置5及び信号検出方法によれば、磁石Mが、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の少なくともいずれかの方向に移動するとともに、XY座標平面内で回転したとしても、XY座標平面内で回転する磁石の回転角を算出することができる。このため、本実施形態による信号検出装置5及び信号検出方法は、上記第1実施形態による信号検出装置1及び信号検出方法と同様の効果が得られる。
【0070】
〔第4実施形態〕
本発明の第4実施形態による信号検出装置及び信号検出方法について図5を用いて説明する。本実施形態による信号検出装置7は、上記第1実施形態による信号検出装置1と同様に、カメラ機能付電子機器に備えられている。本実施形態におけるカメラ機能付電子機器700は、上記第1実施形態と同様に、スマートフォンなどの携帯電話機器、デジタルカメラ及びデジタルムービーなどである。また、本実施形態におけるカメラモジュールの構成は、上記第1実施形態と同様であるため、以下、図1を適宜参照して、本実施形態による信号検出装置7を説明する。なお、上記第1から第3実施形態1,3,5による信号検出装置と同一の作用・機能を奏する構成要素には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0071】
図5に示すように、本実施形態による信号検出装置7は、上記第1実施形態における算出部16とは異なる構成の算出部19を備えている。算出部19は、成分除去前段部161と、成分除去後段部171と、所定値生成部173と、X方向係数演算部583と、除去部581とを有している。成分除去後段部171及び所定値生成部173は、上記第2実施形態における成分除去後段部171及び所定値生成部173と同様の構成を有し、同様の機能を発揮するようになっている。また、X方向係数演算部583及び除去部581は、上記第3実施形態におけるX方向係数演算部583及び除去部581と同様の構成を有し、同様の機能を発揮するようになっている。
【0072】
成分除去後段部171は、上記第2実施形態における成分除去後段部171と同様の処理により、「2×B×(α×x+1)×γ×z×θ」の項が除去された演算信号Sebを除去部581に出力する。除去部581は、上記第3実施形態における除去部581と同様の処理により、X方向係数演算部583から入力されるX方向係数Kx(=α×x+1)を用いて、入力された演算信号Seb(=(2×B×(α×x+1)×θ)から「α×x+1」を除去して式(5)に示す「B/B0)×θ」を算出する。
【0073】
本実施形態による信号検出方法は、成分除去後段部171、X方向係数演算部583及び除去部581における処理が異なる点を除いて、上記第1実施形態による信号検出方法と同様であるため、説明は省略する。
【0074】
以上説明したように、本実施形態による信号検出装置7によれば、磁石Mが、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の少なくともいずれかの方向に移動するとともに、XY座標平面内で回転したとしても、XY座標平面内で回転する磁石Mの回転角を算出することができる。このため、本実施形態による信号検出装置7及び信号検出方法は、上記第1実施形態による信号検出装置1及び信号検出方法と同様の効果が得られる。
【0075】
次に、上記第1から第4の実施形態による信号検出プログラムについて説明する。
上記第1から第4の実施形態による信号検出装置1,3,5,7の一部の構成は、コンピュータプログラムとして具体化することができる。例えば、信号検出装置1,3,5,7の各部の機能、より具体的には、和信号生成部11、差信号生成部12、X方向係数演算部13、Y方向係数演算部14、Z方向係数演算部15、算出部16,17,18,19の機能を信号検出プログラムとして実現することができる。したがって、本発明の一部または全ては、ハードウェアまたはソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード、ステートマシン、ゲートアレイ等を含む)に組み入れることができる。さらに、本発明は、コンピュータ(カメラ機能付電子機器に設けられた制御用中央演算処理装置を含む)によって使用可能な、またはコンピュータ可読の記憶媒体上のコンピュータプログラム製品の形態をとることができ、この媒体には、コンピュータによって使用可能な、またはコンピュータ可読のプログラムコードが組み入れられる。コンピュータによって使用可能な、またはコンピュータ可読の媒体は、命令実行システム、装置若しくはデバイスによって、またはそれらとともに使用されるプログラムを、収録する、記憶する、通信する、伝搬する、または搬送することのできる、任意の媒体とすることができる。
【0076】
本発明は、上記第1から第4実施形態に限らず種々の変形が可能である。
上記第2及び第4実施形態による信号検出装置3,7は、X方向係数演算部13,583を有しているが、本発明はこれに限られない。信号検出装置3,7は、X方向係数演算部13,583のいずれか一方を有し、1つのX方向係数演算部の出力端子が成分除去前段部161、成分除去後段部163,171除去部581及びX方向制御部61のそれぞれの入力端子に接続されていても、上記第2及び第4実施形態による信号検出装置3,7と同様の効果が得られる。さらに、X方向係数演算部が1つになるため、信号検出装置の小型化を図ることができる。
【0077】
本発明の技術的範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の技術的範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0078】
1,3,5,7 信号検出装置
2 カメラモジュール
4 筐体
6 制御部
8 駆動部
11 和信号生成部
12 差信号生成部
13,583 X方向係数演算部
14 Y方向係数演算部
15 Z方向係数演算部
16,17,18,19 算出部
21 レンズホルダ
22 レンズ
41 ホルダ取付部
61 X方向制御部
63 チルト制御部
65 Y方向制御部
67 Z方向制御部
81,83,85,87 コイル駆動部
100,300,500,700 カメラ機能付電子機器
161 成分除去前段部
163,171 成分除去後段部
165 除算部
173 所定値生成部
581 除去部
HEx1,HEx2,HEy,HEz ホール素子
M,Mx,My,Mz 磁石
図1
図2
図3
図4
図5