特許第6799193号(P6799193)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6799193
(24)【登録日】2020年11月24日
(45)【発行日】2020年12月9日
(54)【発明の名称】搬送駆動機構
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20201130BHJP
   B65G 17/32 20060101ALI20201130BHJP
   B65G 17/48 20060101ALI20201130BHJP
【FI】
   H01L21/68 A
   B65G17/32
   B65G17/48 C
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-128516(P2020-128516)
(22)【出願日】2020年7月29日
【審査請求日】2020年7月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】高木 大
(72)【発明者】
【氏名】小泉 敏行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勇策
(72)【発明者】
【氏名】山内 一哲
(72)【発明者】
【氏名】一戸 成比呂
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6654741(JP,B1)
【文献】 国際公開第2018/084286(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/084214(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/104826(WO,A1)
【文献】 特開2019−197815(JP,A)
【文献】 特開平06−080246(JP,A)
【文献】 特開平06−239440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B65G 17/32
B65G 17/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状かつ等速運動を行う搬送駆動部材と、
前記搬送駆動部材に向って基板保持器が通過する搬送経路と、
前記搬送駆動部材に付随し、前記搬送経路を通過する駆動部とを有し、
前記駆動部の前記搬送経路における通過速度が、前記搬送駆動部材の等速運動から導かれる非線形速度となるように構成され、
前記搬送経路において、前記基板保持器を、前記駆動部の非線形速度を目標値とする所定の速度で搬送することにより、前記駆動部の位置に対して前記基板保持器の相対位置を同期させる位置同期手段を備える搬送駆動機構。
【請求項2】
前記搬送駆動部材が、鉛直面方向に向けて配置された円形の駆動輪に架け渡されるとともに、
前記駆動部が、前記搬送駆動部材の移動方向に対して直交する方向に延び且つ前記基板保持器の被駆動部と接触して当該被駆動部を駆動するための接触面を有し、
前記搬送経路が前記駆動輪の上方に配置され、
前記駆動部が前記駆動輪の縁部の軌跡に沿って円弧状に上方に移動し、前記駆動部の接触面が水平方向に対して傾斜した状態で前記搬送経路内に進入して前記基板保持器の被駆動部に接近するように構成されている請求項1記載の搬送駆動機構。
【請求項3】
前記基板保持器の被駆動部が円柱形状に形成され、前記搬送経路に沿って前記基板保持器を搬送する際に前記被駆動部の回転軸線が水平方向に向けられた場合において、
前記駆動輪の半径をrとし、前記駆動輪の角速度をωとし、前記駆動輪の中心と前記基板保持器の被駆動部の回転軸線との鉛直方向についての距離をhとし、前記駆動部の水平方向に対する傾斜角をθとしたときに、前記基板保持器の搬送速度vを、
v=hω/sin2θ
に設定する請求項2記載の搬送駆動機構。
【請求項4】
前記基板保持器の被駆動部が円柱形状に形成され、前記搬送経路に沿って前記基板保持器を搬送する際に前記被駆動部の回転軸線が水平方向に向けられた場合において、
前記駆動輪の半径をrとし、前記駆動輪の角速度をωとし、前記駆動輪の中心と前記基板保持器の被駆動部の回転軸線との鉛直方向についての距離をhとし、前記基板保持器の被駆動部の半径をbとし、前記駆動部の水平方向に対する傾斜角をθとしたときに、前記基板保持器の搬送速度vbを、
b=hω/sin2θ+(cosθ/sin2θ)bω
に設定する請求項2記載の搬送駆動機構。
【請求項5】
前記搬送経路において前記基板保持器の位置決めを行う位置決め機構を備え、当該位置決め機構が、所定のタイミングで前記搬送経路内に配置され、かつ、所定のタイミングで前記搬送経路から退避可能なストッパを有している請求項1乃至4のいずれか1項記載の搬送駆動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を保持した基板保持器を等速運動する搬送駆動部材に搬入する搬送駆動機構の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の被処理基板をトレイ等の基板保持器に載置して通過しながら成膜等の処理を行う真空処理装置が知られており、近年では、環状の搬送経路を有する真空処理装置も提案されている。
【0003】
図8は、従来技術に係る真空処理装置の全体を示す概略構成図である。
【0004】
図8に示すように、この真空処理装置101は、真空排気装置101aに接続された真空槽102を有している。
【0005】
真空槽102の内部には、基板(図示せず)を保持する基板保持器111を搬送経路に沿って複数連続して搬送する基板保持器搬送機構103が設けられている。
【0006】
ここで、基板保持器搬送機構103は、回転軸線を平行にした状態で所定距離をおいて配置された一対の駆動輪131、132に一連の搬送駆動部材133が架け渡された構造体が所定の距離をおいて平行に配置され、これにより鉛直面に対して環状で、等速運動を行う搬送経路が形成されている。
【0007】
基板保持器搬送機構103には、基板保持器111を導入する基板保持器導入部130Aと、基板保持器111を折り返して搬送する搬送折り返し部130Bと、基板保持器111を搬出する基板保持器搬出部130Cが設けられている。
【0008】
真空槽102内には、基板保持器搬送機構103の上部に第1の処理領域104が設けられるとともに基板保持器搬送機構103の下部に第2の処理領域105が設けられ、搬送駆動部材133の上側の往路側搬送部133aが、第1の処理領域104を直線的に第1の搬送方向P1に沿って通過するように構成され、下側の復路側搬送部133cが、第2の処理領域105を直線的に第2の搬送方向P2に沿って通過するように構成されている。
【0009】
そして、基板保持器搬送機構103の搬送折り返し部130Bの近傍には、基板保持器111を上下関係を維持した状態で第1の搬送方向P1から第2の搬送方向P2へ方向転換する方向転換機構140が設けられている。
【0010】
一方、真空槽102内の基板保持器搬送機構103の駆動輪131に隣接する位置には、基板保持器搬入搬出機構106が設けられている。
【0011】
この基板保持器搬入搬出機構106は、昇降機構160によって鉛直上下方向に駆動される駆動ロッド161の上端部に設けられた支持部162を有し、この支持部162上に設けられた搬送ロボット164上に上述した基板保持器111を支持して基板保持器111を鉛直上下方向に移動させるようになっている。
【0012】
そして、この搬送ロボット164を用い、基板保持器搬入搬出機構106から基板保持器搬送機構103の基板保持器導入部130Aに対して基板保持器111を搬入し、かつ、基板保持器搬送機構103の基板保持器排出部130Cから搬出される基板保持器111を基板保持器搬入搬出機構106で搬入できるように構成されている。
【0013】
真空槽102には、真空槽102内に基板保持器111を搬入し且つ真空槽102から基板保持器111を搬出するための搬入搬出室102Aが設けられている。
【0014】
この搬入搬出室102Aは、例えば上述した基板保持器搬入搬出機構106の支持部162の上方の位置に設けられており、例えば搬入搬出室102Aの上部には、開閉可能な蓋部102aが設けられている。
【0015】
このような従来技術において基板上への処理を行う場合には、処理前の基板を保持した基板保持器111を搬入搬出室102Aを介して真空槽102内に搬入するか、処理前の基板を(基板保持器搬入搬出機構106の支持部162上の搬送ロボット164に保持している基板保持器111に保持された)処理済みの基板と入れ替え、処理前の基板を保持した基板保持器111を真空槽102内の上部に配置した基板保持器搬入搬出機構106の支持部162上の搬送ロボット164に保持させる。その後、支持部162を下降し、基板保持器搬入搬出機構106から基板保持器搬送機構103の基板保持器導入部130Aに基板保持器111を搬入する。
【0016】
一方、処理済の基板、またはを保持した基板保持器111を、真空槽102の外部に搬出する場合には、基板保持器搬入搬出機構106の支持部162を真空槽102内の下部に配置し、搬送ロボット164によって基板保持器111を基板保持器搬送機構103の基板保持器搬出部130Cから基板保持器搬入搬出機構106側に取り出して搬送ロボット164に保持させた後、基板保持器搬入搬出機構106の支持部162を上昇させ、基板搬入搬出室102Aを介して基板保持器111あるいは処理済の基板を大気中に取り出す。
【0017】
しかし、従来技術では、基板保持器111の搬出入の際に基板保持器搬入搬出機構106の支持部162を昇降させて基板保持器111を上下方向に搬送し、搬送ロボット164によって基板保持器111の搬入及び搬出を行うため、基板保持器111が保持する基板の数が増加するに伴い、単位時間当たりの処理の効率を向上させることが困難であった。これに加え、基板保持器111を搬送駆動部材133に搬入する際に発生する接触摩耗を起因とするダストの発生を低減させることも品質向上の面から求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2017/104826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、このような従来の技術の課題を考慮してなされたもので、その目的とするところは、環状かつ等速運動を行う搬送駆動部材を用いて基板保持器の搬送を行う搬送駆動機構において、基板保持器を搬送駆動部材に受け渡す際にダストの発生を低減させることができるともに単位時間当たりの基板処理の効率を向上させることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するためになされた本発明は、環状かつ等速運動を行う搬送駆動部材と、前記搬送駆動部材に向って基板保持器が通過する搬送経路と、前記搬送駆動部材に付随し、前記搬送経路を通過する駆動部とを有し、前記駆動部の前記搬送経路における通過速度が、前記搬送駆動部材の等速運動から導かれる非線形速度となるように構成され、前記搬送経路において、前記基板保持器を、前記駆動部の非線形速度を目標値とする所定の速度で搬送することにより、前記駆動部の位置に対して前記基板保持器の相対位置を同期させる位置同期手段を備える搬送駆動機構である。
本発明は、前記搬送駆動部材が、鉛直面方向に向けて配置された円形の駆動輪に架け渡されるとともに、前記駆動部が、前記搬送駆動部材の移動方向に対して直交する方向に延び且つ前記基板保持器の被駆動部と接触して当該被駆動部を駆動するための接触面を有し、前記搬送経路が前記駆動輪の上方に配置され、前記駆動部が前記駆動輪の縁部の軌跡に沿って円弧状に上方に移動し、前記駆動部の接触面が水平方向に対して傾斜した状態で前記搬送経路内に進入して前記基板保持器の被駆動部に接近するように構成されている搬送駆動機構である。
本発明は、前記基板保持器の被駆動部が円柱形状に形成され、前記搬送経路に沿って前記基板保持器を搬送する際に前記被駆動部の回転軸線が水平方向に向けられた場合において、前記駆動輪の半径をrとし、前記駆動輪の角速度をωとし、前記駆動輪の中心と前記基板保持器の被駆動部の回転軸線との鉛直方向についての距離をhとし、前記駆動部の水平方向に対する傾斜角をθとしたときに、前記基板保持器の搬送速度vを、
v=hω/sin2θ
に設定する搬送駆動機構である。
本発明は、前記基板保持器の被駆動部が円柱形状に形成され、前記搬送経路に沿って前記基板保持器を搬送する際に前記被駆動部の回転軸線が水平方向に向けられた場合において、前記駆動輪の半径をrとし、前記駆動輪の角速度をωとし、前記駆動輪の中心と前記基板保持器の被駆動部の回転軸線との鉛直方向についての距離をhとし、前記基板保持器の被駆動部の半径をbとし、前記駆動部の水平方向に対する傾斜角をθとしたときに、前記基板保持器の搬送速度vbを、
b=hω/sin2θ+(cosθ/sin2θ)bω
に設定する搬送駆動機構である。
本発明は、前記搬送経路において前記基板保持器の位置決めを行う位置決め機構を備え、当該位置決め機構が、所定のタイミングで前記搬送経路内に配置され、かつ、所定のタイミングで前記搬送経路から退避可能なストッパを有している搬送駆動機構である。
【発明の効果】
【0021】
本発明にあっては、搬送駆動部材に向って基板保持器が通過する搬入搬送経路において、基板保持器を、搬送駆動部材の駆動部の非線形速度を目標値とする所定の速度で搬送することにより、当該駆動部の位置に対して基板保持器の相対位置を同期させるようにしたことから、搬入搬送経路における搬送駆動部材の速度と同等の速度で基板保持器を移動させながら基板保持器を搬送駆動部材に搬入することができ、これにより搬送駆動部材の駆動部が通過する搬入搬送経路において駆動部を基板保持器に接触させることなく移動させることができるので、当該駆動部と基板保持器との接触による摩耗に起因するダストの発生を防止することができ、その結果、真空中で成膜等の処理を行う装置において基板へのコンタミネーションを抑制することができる。
【0022】
これに加え、搬入搬送経路において基板保持器の位置決めを行う位置決め機構を備え、当該位置決め機構が、所定のタイミングで搬送経路内に配置され、かつ、所定のタイミングで搬送経路から退避可能なストッパを有している場合には、例えば搬送ローラによって基板保持器を搬送方向に沿って搬送する際に、搬送駆動部材の駆動部の位置と基板保持器の相対位置に関し、より同期精度の向上及び位置決め時間の短縮を実現させることができ、単位時間当たりの処理効率の向上に寄与する。
【0023】
これにより搬送ロボットによって基板保持器を搬送駆動部材に搬入する従来技術に比べ、基板保持器を搬送駆動部材に搬入する時間を短縮でき、また鉛直上下方向への移動方向の変化を要しないことが付加されたことにより、単位時間当たりの基板処理効率を大幅に向上させることができる。
【0024】
そして、このような本発明を真空中で成膜等の処理を行う装置に適用すれば、ダスト発生の問題を生じさせることなく単位時間当たりの基板処理枚数を向上させることができる。
【0025】
また上述した基板へのコンタミネーションの抑制の技術は、基板保持器への着膜を起因とするメンテナンスや、基板保持器の摩耗によるメンテナンスの頻度を低下させることも可能になり、この面からも真空処理装置の単位時間当たりの処理枚数の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(a)(b):本発明に係る搬送駆動機構を有する真空処理装置の実施の形態の全体を示す概略構成図
図2】同搬送駆動機構の要部を示す概略構成図
図3】(a)(b):本実施の形態に用いる基板保持器の構成を示すもので、図3(a)は平面図、図3(b)は正面図
図4】(a)〜(c):基板保持器を搬送駆動部材に搬入する動作を示す説明図(その1)
図5】(a)〜(c):基板保持器を搬送駆動部材に搬入する動作を示す説明図(その2)
図6】(a)(b):基板保持器の搬送速度の具体例を説明するための図
図7】基板保持器の搬送速度の具体例を説明するための図
図8】従来技術に係る真空処理装置の全体を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
図1(a)(b)は、本発明に係る搬送駆動機構を有する真空処理装置の実施の形態の全体を示す概略構成図、図2は、同搬送駆動機構の要部を示す概略構成図である。
【0029】
図1(a)(b)に示すように、本実施の形態の真空処理装置1は、順に隣接するように配列された、基板搬出入室2と、搬送室3と、仕込取出室4と、位置決め室5と、真空槽6とを有している。
【0030】
本実施の形態では、基板搬出入室2、搬送室3、仕込取出室4、位置決め室5、真空槽6は、ほぼ直線上に並ぶように配置されている。
【0031】
基板搬出入室2は、真空処理装置1と外部との間で処理前又は処理済の基板のみ、あるいは当該基板を保持した基板保持器10を搬出入するもので、真空槽6の外部に設けられている。
【0032】
基板搬出入室2の内部には、基板保持器10を水平に支持して搬送(搬入・搬出)するための支持ローラ20が設けられている。なお、本実施の形態の基板搬出入室2は、上下方向に昇降可能に設けられている。
【0033】
搬送室3は、基板搬出入室2の側部に接続されている。
【0034】
搬送室3内には、基板搬出入室2から搬入された基板保持器10を水平に支持して仕込取出室4に搬出する上側搬送ローラ30と、仕込取出室4から搬入された基板保持器10を支持して基板搬出入室2に搬出する下側搬送ローラ31とが設けられている。
【0035】
仕込取出室4は、搬送室3の側方に近接して配置されており、仕込取出室4の搬送室3と対向する部分には、搬入側と搬出側の一対のドアバルブ45が設けられている。
【0036】
また、仕込取出室4は、搬入側と搬出側の一対のドアバルブ46を介して位置決め室5の側部に接続されている。そして、本実施の形態の仕込取出室4は図示しない真空排気装置に接続されている。
【0037】
仕込取出室4内には、搬送室3から搬入された基板保持器10を水平に支持して位置決め室5に搬出する上側搬送ローラ40と、位置決め室5から搬入された基板保持器10を水平に支持して搬送室3に搬出する下側搬送ローラ41とが設けられている。
【0038】
位置決め室5は、基板保持器10を真空槽6内に搬入する際に基板保持器10の位置決めを行うもので、真空槽6の側部に接続されている。
【0039】
位置決め室5内には、仕込取出室4から搬入された基板保持器10を水平に支持して真空槽6に搬出する上側搬送ローラ50と、真空槽6から搬入された基板保持器10を水平に支持して仕込取出室4に搬出する下側搬送ローラ51とが設けられている。
【0040】
なお、位置決め室5の上側搬送ローラ50、仕込取出室4の上側搬送ローラ40、搬送室3の上側搬送ローラ30は、同一の高さ位置において基板保持器10を支持するように構成され、また基板搬出入室2の支持ローラ20は、基板搬出入室2の昇降により搬送室3の上側搬送ローラ30と同一の高さ位置において基板保持器10を支持するように構成されている。
【0041】
そして、これら支持ローラ20、上側搬送ローラ30、40、50の上方に、基板保持器10を真空槽6内に搬入するための後述する搬入搬送経路7(図4(a)〜(c)及び図5(a)〜(c)参照)が形成されている。
【0042】
また、図示はしないが、下側搬送ローラ31、41、51の上方に、基板保持器10を真空槽6から搬出するための(搬入搬送経路7と同等の)搬出搬送経路が形成されている。
【0043】
支持ローラ20、上側搬送ローラ30、40は、図示しないローラ駆動機構によって所定方向に所定速度で回転駆動されるように構成されている。
【0044】
これら支持ローラ20、上側搬送ローラ30、40、下側搬送ローラ31、41、ドアバルブ45、46、基板搬出入室2の昇降、仕込取出室4の減圧や大気圧への復圧等、各構成の動作については、真空処理装置1の制御部(図示せず)により制御され、後述するローラ制御部53と連携して基板保持器10の搬入及び搬出を行うことによって、処理前の基板を真空槽6へ搬入し、処理済の基板を搬出できるように構成されている。
【0045】
この場合、真空処理装置1の制御部をローラ制御部53の上位制御系として構成し、またはローラ制御部53を真空処理装置1の制御部のサブシステムとして構成することができる。
【0046】
位置決め室5の上側搬送ローラ50は、例えば図2に示すように、ローラ駆動機構52によって回転駆動されるもので、このローラ駆動機構52は、ローラ制御部53に接続されている。
【0047】
ローラ制御部53は、基板保持器10が後述する位置同期が実現可能となるような所定速度で搬送されるように、上側搬送ローラ50の回転速度を制御するものである。
【0048】
本実施の形態では、これら上側搬送ローラ50、ローラ駆動機構52及びローラ制御部53によって本発明の位置同期手段が構成されている。
【0049】
一方、位置決め室5の上側搬送ローラ50の例えば上方には、上側搬送ローラ50によって搬送される基板保持器10を所定の位置に位置決めするための位置決め機構54が設けられている。
【0050】
この位置決め機構54は移動可能なストッパ55を有し、このストッパ55が所定のタイミングで搬入搬送経路7内に配置され、搬送中の基板保持器10の所定の部分(例えば基板保持器10の後述する第2の被駆動部12)と接触することにより基板保持器10を所定の位置に停止させ、その後、所定のタイミングで搬入搬送経路7からストッパ55を退避させて基板保持器10との接触を解除するように構成されている。
【0051】
図1(a)(b)に示すように、真空槽6内には、基板保持器10を搬送する基板保持器搬送機構15が設けられている。
【0052】
本実施の形態の基板保持器搬送機構15は、例えばスプロケット等からなる、図示しない駆動機構から回転駆動力が伝達されて動作する円形の第1及び第2の駆動輪61、62を有し、これら第1及び第2の駆動輪61、62は、それぞれ鉛直面方向に向けて、また所定距離をおいて、配置されている。
【0053】
第1及び第2の駆動輪61、62には例えばコンベヤチェーン等からなる一連の搬送駆動部材16が架け渡され、これにより搬送駆動部材16は環状に形成されるとともに、等速で直線移動及び回転移動するように構成されている。
【0054】
なお厳密には、等速で直線移動する箇所は第1及び第2の駆動輪61、62のピッチ円であり、これらを結ぶピッチ線である。図4(a)〜(c)、図5(a)〜(c)、図6(a)(b)及び図7に描かれている搬送駆動部材16については、このピッチ円及びピッチ線に相当する部分が示されている。
【0055】
本実施の形態では、第1及び第2の駆動輪61、62に搬送駆動部材16が架け渡された二つの構造体が所定の距離をおいて平行に配置され、これら一対の構造体を有する基板保持器搬送機構15によって基板保持器10を搬送するように構成されている。
【0056】
搬送駆動部材16には、基板保持器10の第1の被駆動部11と接触して当該基板保持器10を搬送駆動部材16の移動方向に搬送するための複数の駆動部17が付随して設けられている。
【0057】
駆動部17は、一定の間隔をおいて搬送駆動部材16に設けられ、搬送駆動部材16の外方に向かって突出し、搬送駆動部材16の移動方向に対して直交する方向に延びる接触面18を有している(例えば図5(a)参照)。
【0058】
駆動部17は、例えばJフック形状(搬送方向上流側の突部の高さが搬送方向下流側の突部の高さより高くなるような形状)に形成され、基板保持器搬送機構15の第1の駆動輪61に沿って円弧状に上方に移動して接触面18が後述する搬入搬送経路7内に進入するようにその形状及び寸法が設定されている(図5(a)参照)。
【0059】
なお、本明細書では、駆動部17は、簡略化して棒状又はL字形状に描かれている。
【0060】
そして、搬送駆動部材16のうち上側の部分に、第1の駆動輪61から第2の駆動輪62に向って基板保持器10を搬送する往路側搬送部16aが形成されるとともに、第2の駆動輪62の周囲の部分の搬送駆動部材16によって基板保持器10の搬送方向を折り返して反対方向に転換する折り返し部16cが形成され、さらに、搬送駆動部材16のうち下側の部分に、第2の駆動輪62から第1の駆動輪61に向って基板保持器10を搬送する復路側搬送部16bが形成されている。
【0061】
本実施の形態の基板保持器搬送機構15は、各搬送駆動部材16の上側に位置する往路側搬送部16aと、各搬送駆動部材16の下側に位置する復路側搬送部16bとがそれぞれ対向し、鉛直方向に関して重なるように構成されている。
【0062】
本実施の形態では、基板保持器10を位置決め室5から基板保持器搬送機構15に向って水平方向に搬送する方向を「搬送方向」とする。また、搬入搬送経路7から往路側搬送部16aへ向かう方向を「搬入搬送方向」、復路側搬送部16bから下側搬送ローラ31、41、51の上方の搬送経路へ向かう方向を「搬出搬送方向」とも説明する。
【0063】
図1(b)に示すように、真空槽6内には、第1及び第2の処理領域6a、6bが設けられている。
【0064】
本実施の形態では、真空槽6内において、基板保持器搬送機構15の上部に、例えばスパッタリングを行う第1の処理領域6aが設けられ、基板保持器搬送機構15の下部に、例えばスパッタリングを行う第2の処理領域6bが設けられている。
【0065】
ここで、上述した搬送駆動部材16の往路側搬送部16aが、上記第1の処理領域6aを直線的に水平方向に通過するように構成され、復路側搬送部16bが、上記第2の処理領域6bを直線的に水平方向に通過するように構成されている。
【0066】
そして、これら搬送駆動部材16の往路側搬送部16a及び復路側搬送部16bを基板保持器10が通過する場合に、基板保持器10に保持された複数の基板が水平状態で搬送されるようになっている。
【0067】
図2に示すように、一対の搬送駆動部材16の往路側搬送部16aの近傍には、搬送する基板保持器10を支持する複数の基板保持器支持ローラ65がそれぞれ設けられている。
【0068】
基板保持器支持ローラ65は、位置決め室5の上側搬送ローラ50と同一の高さ位置において基板保持器10を支持するように構成されている。また図示しての説明は行わないが、搬送駆動部材16もピッチ線が維持できるように同様の支持がなされるように構成されている。
【0069】
図3(a)(b)は、本実施の形態に用いる基板保持器の構成を示すもので、図3(a)は平面図、図3(b)は正面図である。
【0070】
本実施の形態に用いる基板保持器10は、例えば基板13を保持してその両面上に真空処理を行うためのもので、開口部を有するトレイ状のものからなる。
【0071】
図3(a)に示すように、本実施の形態の基板保持器10は、例えば長尺矩形の平板状に形成され、搬送方向、並びに、搬送方向に対して直交する方向(本実施の形態では基板保持器10の長手方向)に例えば矩形状の複数の基板13を複数列に並べてそれぞれ保持するように構成されている。
【0072】
一方、基板保持器10の搬送方向に対して直交する方向の両端部には、搬送方向前方側の端部に第1の被駆動部11がそれぞれ設けられ、また、搬送方向後方側の端部に第2の被駆動部12がそれぞれ設けられている。
【0073】
これら第1及び第2の被駆動部11、12は、それぞれ基板保持器10の長手方向即ち搬送方向に対して直交する方向に延びる円柱形状に形成されている。
【0074】
そして、第1及び第2の被駆動部11、12は、搬入搬送経路7に沿って基板保持器10を搬送する際にその軸線が水平方向に向けられる。
【0075】
本実施の形態では、搬送駆動部材16の往路側搬送部16aにおいて、駆動部17の接触面18が基板保持器支持ローラ65によって支持された基板保持器10の第1の被駆動部11と接触して当該基板保持器10を搬送方向に搬送するように構成されている。
【0076】
以下、本明細書では、第1の被駆動部11を適宜被駆動部11という。
【0077】
図1(b)に示すように、基板保持器搬送機構15の第2の駆動輪62の近傍には、方向転換機構63が設けられている。
【0078】
ここで、方向転換機構63は、例えば一連の環状に形成された反転部64を有し、この反転部64に設けられた複数の支持部(図示せず)と、上記搬送駆動部材16の折り返し部16cに設けられた複数の支持部(図示せず)とによって各基板保持器10を支持し、各基板保持器10を上下関係を維持した状態で往路側搬送部16aから復路側搬送部16bに向って折り返して搬送するように構成されている。
【0079】
なお、図示はしないが、搬送駆動部材16の復路側搬送部16bの近傍には基板保持器10を支持する基板保持器支持ローラが設けられ、また搬送駆動部材16もピッチ線が維持できるように支持がなされ、駆動部17が基板保持器支持ローラによって支持された基板保持器10の被駆動部11と接触して当該基板保持器10を上記搬送方向と反対方向に搬送するように構成されている。
【0080】
次に、本実施の形態の真空処理装置1の動作を説明する。
【0081】
なお、以下の説明では、理解を容易にするため、真空槽6において通過成膜が行われている状況下で、一つの基板保持器10に注目し、これを真空槽6内の搬送駆動部材16に搬入する場合を例にとって説明する。
【0082】
また、本明細書では、水平方向に搬送される基板保持器10の第1及び第2の被駆動部11、12の軸線を通る領域であり、後述する駆動部17の接触面18が鉛直方向に向けて起立した状態(図6(a)(b)に示すθ=90°の状態)を境界として、前記境界から第2の駆動輪62側を往路側搬送部16aとし、ドアバルブ46側を搬入搬出経路7とする。復路側搬送部16b及び搬出搬送側経路もまた同様の領域とする。
【0083】
本実施の形態では、まず、基板搬出入室2内に一つの基板保持器10が存在しているとして、これを支持ローラ20によって支持した後、基板搬出入室2を上昇して支持ローラ20の高さ位置を搬送室3の上側搬送ローラ30の高さ位置と同じになるようにする。処理前/処理済の基板については、前述した作業中のいずれかの機会で交換される。当然、基板は基板保持器10と共に交換されてもよい。
【0084】
そして、基板搬出入室2の支持ローラ20を回転させ、処理前の基板を保持した基板保持器10を搬送室3内に搬入し、これを上側搬送ローラ30によって支持し、さらに上側搬送ローラ30を回転させて基板保持器10を一方のドアバルブ45を介して仕込取出室4内に搬入し、上側搬送ローラ40によって支持する。
【0085】
この際、仕込取出室4内の下側搬送ローラ41によって支持されている、処理済の基板を保持した基板保持器10を、同時に仕込取出室4内から搬送室3の下側31へ搬出することが好ましい。これは、搬入/搬出側双方のドアバルブ45を同時に開閉することが後述する仕込取出室4内の隔壁に対して交番応力を与えず、かつ、単位時間当たりの基板処理効率の可能になるからである。
【0086】
ここで、一方のドアバルブ45を閉じて仕込取出室4内の真空排気を行い、位置決め室5(または真空槽6)と同等の圧力となった後、他方のドアバルブ46を開いて仕込取出室4と位置決め室5とを連通させる。
【0087】
なお、連通するタイミングは、先行する基板保持器10の図5(c)に示す搬送方向上流側の端部が、搬送駆動部材16の等速運動(通過成膜を連続的に実施している状況)により、第1の駆動輪61付近を通過する時点で行うことが好ましい。
【0088】
このタイミングであれば先行する基板保持器10に対し、搬入搬送経路7において仕込取出室4から位置決め室5に搬入される基板保持器10が追突する危険性がなく搬入ができ、かつ、同時期に搬出搬送経路において、位置決め室5内の下側搬送ローラ51上に搬出された処理済の基板を保持した基板保持器10を、位置決め室5から仕込取出室4へと搬出することが可能になる。つまり、基板保持器10の搬入及び搬出を同時期行うことが可能になり、搬入/搬出側双方のドアバルブ46を同時に開閉することができ、これにより仕込取出室4内の隔壁に対して交番応力を与えず、かつ、単位時間当たりの基板処理効率の向上が可能になる。
【0089】
なお、ドアバルブ46は、図4(b)に示す状態の近傍のタイミングで閉とし(これによりドアバルブ46が基板保持器10を挟み込むことを回避した上で位置決め室5の搬送方向についての寸法を最小とすることができる)、仕込取出室4を真空から大気圧へと昇圧することで、ドアバルブ45を空けることができ、これにより処理済の基板を保持した基板保持器10を搬送室3に搬出することが可能になる。
【0090】
さらに、仕込取出室4の上側搬送ローラ40を回転させて基板保持器10を位置決め室5内に搬入し、上側搬送ローラ50を所定の速度で回転させながら上側搬送ローラ50によって基板保持器10を支持する。
【0091】
この場合、本実施の形態では、位置決め機構54のストッパ55を搬入搬送経路7から退避させておき、基板保持器10の第1の被駆動部11が位置決め機構54の位置を通過した後、ストッパ55を搬入搬送経路7内に配置する(図4(a)参照)。
【0092】
そして、ローラ駆動機構52(図2参照)を動作させて位置決め室5の上側搬送ローラ50を所定の速度で回転させ、基板保持器10を搬送方向に搬送する。
【0093】
さらに、基板保持器10の先端部が第1の駆動輪61付近に存在する基板保持器支持ローラ65によって支持(これにより基板保持器10の第1の被駆動部11の鉛直方向の位置を安定化することができる)される近傍の位置において、基板保持器10の第2の被駆動部12が位置決め機構54のストッパ55に接触する。この接触直前のタイミングで位置決め室5の上側搬送ローラ50への駆動力を供給遮断(フリーラン)することにより、基板保持器10は、その合計質量からなる運動エネルギーが、接触している上側搬送ローラ50の粘性抵抗(例えばローラ駆動機構である回転導入機構部が保持する回転抵抗)等に吸収されていくことで、指数関数的に減速された状態となり、最終的に位置決め機構54のストッパ55に接触させるようになっている。これによりダストが発生することなく基板保持器10の移動が停止する(図4(b)参照)。
【0094】
先に説明した、仕込取出室4と位置決め室5とを連通させるタイミングにおいて先行する基板保持器10に対する追突を生じさせないことに加え、図4(a)(b)に示すように、搬入時に搬送駆動部材16の駆動部17と基板保持器10の第1の被駆動部11が干渉することなく、かつ、駆動部17が基板保持器10の下方に近接する位置にあるタイミングで、第2の被駆動部12と位置決め機構54のストッパ55との接触事象を発生させる。このようにすることで駆動部17の外方突出寸法小さくすることが可能になり、これらを近接させるほど、装置の小型化に寄与できる。
【0095】
その後、搬送駆動部材16の駆動を継続すると、第1の駆動輪61の縁部の軌跡に沿って駆動部17が円弧状に上方に移動して更に基板保持器10の被駆動部11に接近する(図4(c)参照)。
【0096】
そして、基板保持器10の被駆動部11に駆動部17の接触面18が接触する以前の所定のタイミングで位置決め機構54のストッパ55を搬入搬送経路7から退避させる。なお、従来技術では、被駆動部11に駆動部17の接触面18を接触させ、駆動力を被駆動部11に伝えることにより、搬送駆動部材16と各基板保持器10との同期を行っていた。
【0097】
更に搬送駆動部材16の駆動を継続すると、駆動部17が第1の駆動輪61の縁部の軌跡に沿って円弧状に上方に移動して接触面18の上側端部が搬入搬送経路7に進入する(図5(a)参照)。
【0098】
そして、駆動部17の接触面18が基板保持器10の被駆動部11に接触する直前のタイミングで位置決め室5の上側搬送ローラ50の駆動を再開する。
【0099】
駆動が再開された上側搬送ローラ50は、ローラ制御部53及びローラ駆動機構52により、駆動部17の接触面18が基板保持器10の被駆動部11に接触しないように制御され、駆動部17の接触面18が鉛直方向に向けて起立した状態(図6(a)(b)に示すθ=90°の状態)近傍に配置される以降のタイミングで駆動部17の接触面18が基板保持器10の被駆動部11に接触するように、駆動部17の位置と基板保持器10の被駆動部11との相対位置に関して同期制御を行う。
【0100】
このように制御することで被駆動部11の駆動部17の接触面18上における滑り接触をなくすことにより、または最低でも滑り接触時の接触面18に対する面圧を減じる効果を産むことにより、ダストの発生を減じることが可能になる。
【0101】
本発明において、基板保持器10の搬送速度をこのように制御するのは、次の理由によるものである。
【0102】
すなわち、上述したように、搬送駆動部材16の駆動部17は、第1の駆動輪61の縁部の軌跡に沿って円弧状に上方に移動する際に、接触面18が水平方向に対して搬送方向下流側に傾斜した状態で搬入搬送経路7に進入する(図5(a)参照)。
【0103】
そして、基板保持器10の被駆動部11が水平方向に移動する一方で、駆動部17の接触面18は、水平方向に対する傾斜角度が大きくなりながら上方に移動する(図5(b)(c)参照)。
【0104】
したがって、このように傾斜角度が変化する駆動部17の接触面18を基板保持器10の被駆動部11に当接させ、基板保持器10に対して駆動力を接触伝達させた場合には、基板保持器10の被駆動部11は、搬送駆動部材16の駆動部17の接触面18上を滑りながら駆動部17によって駆動されることになり、ダストの発生の原因となる。
【0105】
また駆動部17の接触面18と基板保持器10の被駆動部11の当接においては、当接箇所から被駆動部11に対して第1の駆動輪61の接線方向の駆動力が加えられると同時に、反力として被駆動部11から駆動部17に対して基板保持器10の質量及び上側搬送ローラ50の抵抗等の合力が作用する。この駆動力と反力は搬入搬送経路7においては一致しないため(往路側搬送部16a等では一致する)モーメント荷重が発生してしまい、駆動部17を所定位置から傾斜させるなどの現象を誘発し、ダストの発生の原因となっている。また、当接の際接触面18における面圧の印加方向も、接触面18に対して直角となり得ないことから、よりダスト発生の原因となっている。
【0106】
そこで、本発明においては、搬入搬送経路7において、基板保持器10を、搬送駆動部材16の駆動部17の非線形に変化する速度を目標値として所定の速度で搬送することにより、駆動部17の位置に対して基板保持器10の相対位置を同期させるようにする。
【0107】
このように制御することにより、搬入搬送経路7における駆動部17の接触面18と基板保持器10の被駆動部11の当接を生じさせることがないか、あるいは当接箇所における面圧を減じることが可能となり、結果として成膜の問題が発生しない。
【0108】
図6(a)(b)及び図7は、基板保持器の搬送速度の具体例を説明するための図である。
【0109】
ここでは、第1の駆動輪61の半径をrとし、第1の駆動輪61の角速度をωとし、第1の駆動輪61の中心Oと基板保持器10の被駆動部11の回転軸線との鉛直方向についての距離をhとし、搬送駆動部材16の駆動部17の接触面18の水平方向に対する傾斜角をθとする。
【0110】
搬送駆動部材16に設けられた駆動部17は、上述したように、第1の駆動輪61の縁部の軌跡に沿って円弧状に移動し、駆動部17の接触面18は、水平方向に対して傾斜した状態から鉛直方向に向けて起立するようにその姿勢が変化する。
【0111】
ここで、駆動部17の接触面18が搬入搬送経路7内に進入し、駆動部17の接触面18が基板保持器10の被駆動部11に接触可能な状態(あるいは面圧がゼロではないが、ダストが発生し得ない微小な面圧が生じた状態)になった後、駆動部17の接触面18の水平方向に対する傾斜角がθである状態から、駆動部17の接触面18が鉛直方向に向けて起立した状態(θ=90°)になるまでの、駆動部17が非線形速度で移動する領域について考える(図6(a)(b)参照)。
【0112】
この場合、基板保持器10の被駆動部11の移動距離をxとすると、
x=−h/tanθで表されるから、
駆動部17の接触面18の搬入搬送経路7における速度(成分)は、
dx/dt=hω/sin2θ
となり、非線形に変化する。
【0113】
このことからすると、駆動部17の接触面18が基板保持器10の被駆動部11に接触する直前に、基板保持器10の搬送速度vを、
v=hω/sin2θ
となるように設定すれば、駆動部17の接触面18を基板保持器10の被駆動部11に接触(または当初の面圧を増加)させることなく、また基板保持器10の被駆動部11と駆動部17の接触面18との間の距離を変化させることなく基板保持器10を搬送することが可能になる。
【0114】
そして、駆動部17の接触面18が直立した後は、駆動部17は水平方向に等速で直線運動をするから、例えば駆動部17の接触面18が直立する直前に上側搬送ローラ50の回転を停止し、上側搬送ローラ50及び基板保持器支持ローラ65上において基板保持器10を慣性力で走行させて減速し、駆動部17の接触面18を基板保持器10の被駆動部11に接触させる(図5(c)参照)。
【0115】
これにより基板保持器10の搬送駆動部材16(往路側搬送部16a)への搬入が終了する。
【0116】
なお、本例においては、基板保持器10の搬送速度vを、v=hω/sin2θに対して若干増減するように設定を変更することができる。
【0117】
要するに、搬入搬送経路7において、駆動部17の接触面18が基板保持器10の被駆動部11に接触しないように基板保持器10を搬送すればよい。
【0118】
つまり、ダスト発生を極小とする観点から搬送速度vを増減することを考えた場合、駆動部17の接触面18が鉛直方向に向けて起立した状態(θ=90°)の近傍においては基板保持器10の被駆動部11の滑り成分も極小となることが利用できる。すなわち、基板保持器10の搬送駆動力はθ=90°となる以前の近傍において駆動部17が支配的となるように、搬送速度vをθに対して若干増減するように設定することが考えられる。
【0119】
このように設定することで、駆動部17の接触面18と基板保持器10の被駆動部11の間に生じる面圧に、衝撃的な変化が発生しないため、結果としてダスト発生が抑えられる。なお、基板保持器10と上側搬送ローラ50駆動力の伝達は、基板保持器10の自重を垂直抗力とする摩擦伝動を利用しているため、仮に一連の制御において多少の位置誤差が生じるとしても、この摩擦伝動部分で吸収される。
【0120】
ところで、以上の説明は基板保持器10の被駆動部11が太さが0であるとした言わば理想状態から算出したものであるが、実際には、基板保持器10の被駆動部11は太さが0ではないから、これを考慮する必要がある。
【0121】
まず、図7に示すように、駆動部17の接触面18が搬入搬送経路7に進入して直立するまでに移動する距離は、次のように考えることができる。
【0122】
ここでは、基板保持器10の被駆動部11の太さの半径をbとする。
【0123】
まず、第1の駆動輪61の中心と基板保持器10の被駆動部11の回転軸線を通る直線が水平方向に対する角度がθである場合において、搬送駆動部材16の駆動部17の接触面18が搬入搬送経路7に進入して基板保持器10の被駆動部11と接触する場合を考えると、搬送駆動部材16の駆動部17と基板保持器10の被駆動部11との接触部分と、被駆動部11の回転軸線との距離は、
π/2−θ
となるから、基板保持器10の被駆動部11と駆動部17の接触面18との接触部分が、基板保持器10の被駆動部11が直立するまでの移動距離xbは、
b=−b/cos(π/2−θ)=−b/sinθ
となる。
【0124】
そして、搬送駆動部材16の駆動部17と基板保持器10の被駆動部11との接触部分の、駆動部17の接触面18の搬送方向即ち搬入搬送経路7についての速度(成分)は、
b=d(x+xb)/dt
=hω/sin2θ+(cosθ/sin2θ)bω
となる。
【0125】
したがって、駆動部17の接触面18が基板保持器10の被駆動部11に接触する直前に、基板保持器10の搬送速度vbを、
b=hω/sin2θ+(cosθ/sin2θ)bω
となるように設定すれば、駆動部17の接触面18を基板保持器10の被駆動部11に接触させることなく、また基板保持器10の被駆動部11と駆動部17の接触面18との間の距離を変化させることなく基板保持器10を搬送することが可能になる。
【0126】
このような本例によれば、実際の搬送駆動機構において、より実機に対応した設計を行うことができ、これによってダストの発生を一層抑えることができる。
【0127】
なお、本例においても、基板保持器10の搬送速度vbを、
b=hω/sin2θ+(cosθ/sin2θ)bω
に対して若干増減するように設定を変更することができる。
【0128】
要するに、搬入搬送経路7において、駆動部17の接触面18が基板保持器10の被駆動部11に接触しないないように基板保持器10を搬送すればよい。
【0129】
以上の工程によって基板保持器10を基板保持器搬送機構の搬送駆動部材16に搬入した後、搬送駆動部材16の往路側搬送部16a上の駆動部17によって基板保持器10の被駆動部11が搬送方向に駆動され、基板保持器10が搬送駆動部材16の往路側搬送部16a上を折り返し部16cに向って搬送される。
【0130】
この動作の際、基板保持器10に保持された処理前の基板の上面に対し、図1(b)に示す第1の処理領域6aを通過する際に所定の処理を行う。
【0131】
処理工程の後、搬送駆動部材16の駆動部17を搬送方向に移動させることにより、折り返し部16cに到達した基板保持器10を方向転換機構63によって上下関係を維持した状態で復路側搬送部16bに向って折り返して搬送する。
【0132】
そして、搬送駆動部材16の復路側搬送部16bの近傍に設けられた図示しない基板保持器支持ローラによって基板保持器10を支持し、駆動部17の駆動によって基板保持器10を上記搬送方向と反対方向に搬送する。
【0133】
その後、図1に示す第2の処理領域6bを通過する際に、基板保持器10に保持された基板の下面に対して所定の処理を行う。
【0134】
そして、基板保持器10が第1の駆動輪61の位置に到達した後、位置決め室5内の下側搬送ローラ51によって基板保持器10を支持して搬送方向と反対方向に搬送し、順次仕込取出室4の下側搬送ローラ41、搬送室3の下側搬送ローラ31によって基板保持器10を支持搬送して基板搬出入室2内に搬入する。
【0135】
基板搬出入室2は予め下降させておき、支持ローラ20によって基板保持器10を支持搬送して基板搬出入室2の外部に搬出する。
【0136】
以上述べた本実施の形態にあっては、搬送駆動部材16に向って基板保持器10が通過する搬入搬送経路7において、基板保持器10を、搬送駆動部材16の駆動部17の非線形速度を目標値とする所定の速度で搬送することにより、当該駆動部17の位置に対して基板保持器10の相対位置を同期させるようにしたことから、搬入搬送経路7において搬送駆動部材16の搬送速度と同等の速度で基板保持器10を移動させながら基板保持器10を搬送駆動部材16に搬入することができ、これにより搬送ロボットによって基板保持器10を搬送駆動部材16に搬入する従来技術に比べ、基板保持器10を搬送駆動部材16に搬入する時間を大幅に短縮することができる。
【0137】
その結果、本実施の形態によれば、複数の基板保持器10を搬送駆動部材16に搬入する際の効率を大幅に向上させることができる。
【0138】
そして、本実施の形態の真空処理装置によれば、搬送駆動部材16に基板保持器10を搬入/搬出する方向と同一方向で仕込取出室4へ基板保持器10を搬入及び搬出ができるため、タクトタイムを短縮して単位時間当たりの処理枚数を向上させることができる。
【0139】
そして、本実施の形態の真空処理装置1によれば、(位置決め室5と仕込取出室4間及び仕込取出室4と搬送室3間において)基板保持器10の搬入及び搬出が同時にできるため、タクトタイムを短縮して単位時間当たりの処理枚数を向上させることができる。
【0140】
一方、図示しないが仕込取出室4内において搬入及び搬出の雰囲気を仕切ることが可能な隔壁を設け、メンテナンス時のみ、一対のドアバルブ45,46を個別に制御するように構成すれば、搬入側あるいは搬出側のみ大気あるいは真空とする工程を実施することも可能になる。
【0141】
なお、この様な個別制御はメンテナンス時のみに必要である工程であるので、隔壁の強度については個別制御することを基本としない設計が可能である。つまり、隔壁について交番応力の印加を前提とした設計としないことが可能になり、その結果として、装置が簡素化し、メンテナンス機能が向上することによる、全体の生産効率を向上させることができ、装置の単位時間当たりの処理枚数を向上させることができる。
【0142】
また、本実施の形態によれば、搬送駆動部材16の駆動部17が通過する搬入搬送経路7において駆動部17を基板保持器10に接触させることなく移動させることができるので、当該駆動部17と基板保持器10との接触による摩耗に起因するダストの発生を防止することができ、これにより基板13へのコンタミネーションを抑制することができ、また基板保持器10の第1の被駆動部11の摩耗によるメンテナンスの頻度を低下させることができる。
【0143】
さらに、本実施の形態は、搬入搬送経路7において基板保持器10の位置決めを行う位置決め機構54を備え、当該位置決め機構54が、所定のタイミングで搬入搬送経路7内に配置され、かつ、所定のタイミングで搬入搬送経路7から退避可能なストッパ55を有していることから、位置決め室5の上側搬送ローラ50によって基板保持器10を搬送方向に沿って搬送する際に、搬送駆動部材16の駆動部17の位置に対して基板保持器10の相対位置を精度良く同期させることができる。
【0144】
なお、本発明は上述した実施の形態に限られず、種々の変更を行うことができる。
【0145】
例えば上記実施の形態においては、真空処理を行う装置に適用した場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、大気中で所定の動作を行う装置に適用することもできる。
【0146】
また、上記実施の形態においては、鉛直面方向に向けて配置された第1及び第2の駆動輪61、62に搬送駆動部材16を架け渡して環状になるようにしたが、本発明はこれに限られず、搬送駆動部材が環状に形成され、搬入搬送経路内において非線形速度で搬送される限り、種々の構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0147】
1…真空処理装置
2…基板搬出入室
3…搬送室
4…仕込取出室
5…位置決め室
6…真空槽
6a…第1の処理領域
6b…第2の処理領域
7…搬入搬送経路
10…基板保持器
11…第1の被駆動部(被駆動部)
12…第2の被駆動部
13…基板
15…基板保持器搬送機構
16…搬送駆動部材
17…駆動部
18…接触面
30、40、50…上側搬送ローラ
31、41、51…下側搬送ローラ
52…ローラ駆動機構
53…ローラ制御部
54…位置決め機構
55…ストッパ
61…第1の駆動輪
62…第2の駆動輪
63…方向転換機構
65…基板保持器支持ローラ
【要約】
【課題】環状かつ等速運動を行う搬送駆動部材を用いて基板保持器の搬送を行う搬送駆動機構において、基板保持器を搬送駆動部材に搬入する際の効率を向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】本発明の搬送駆動機構は、環状かつ等速運動を行う搬送駆動部材16と、搬送駆動部材16に向って基板保持器10が通過する搬入搬送経路7と、搬送駆動部材16に付随し、搬入搬送経路7を通過する駆動部17とを有する。駆動部17の搬入搬送経路7における通過速度が、搬送駆動部材16の等速運動から導かれる非線形速度となるように構成され、搬入搬送経路7において、基板保持器10を、駆動部17の非線形速度を目標値とする所定の速度で搬送することにより、駆動部17の位置に対して基板保持器10の相対位置を同期させる位置同期手段を備える。
【選択図】 図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8