特許第6799283号(P6799283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799283
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】防眩性ハードコート積層体
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/14 20150101AFI20201207BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20201207BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20201207BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20201207BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   G02B1/14
   G02B1/18
   G02B5/02 B
   B32B7/023
   B32B17/10
【請求項の数】16
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-545025(P2018-545025)
(86)(22)【出願日】2017年10月11日
(86)【国際出願番号】JP2017036822
(87)【国際公開番号】WO2018070426
(87)【国際公開日】20180419
【審査請求日】2020年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2016-201358(P2016-201358)
(32)【優先日】2016年10月12日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 元信
【審査官】 菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−31467(JP,A)
【文献】 特開2010−143092(JP,A)
【文献】 特開2007−108725(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/190526(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0337161(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10− 1/18
G02B 5/00− 5/136
B32B 1/00− 43/00
C09D 1/00− 10/00
C09D 101/00−201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材より上方のプライマー層と、該プライマー層より上方のハードコート層からなる、防眩性ハードコート積層体であって、
前記プライマー層が、
(A)式[1]で表されるアルコキシシランAと、式[2]で表されるアルコキシシランBとを少なくとも含むアルコキシシランを加水分解縮合させることにより得られるラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマー
を含むプライマー層形成用組成物の硬化物からなり、
【化1】
(式中、Rはラジカル重合性二重結合を有する1価の有機基を表し、Rは炭素原子数1乃至10のアルキル基(該アルキル基はフッ素原子、少なくとも炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されたアミノ基、少なくともフェニル基で置換されたアミノ基、又はウレイド基で置換されていてもよい。)又はフェニル基を表し、R及びRはそれぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表し、aは1又は2の整数を表し、bは0乃至2の整数を表す。)
前記ハードコート層が、
(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、
(b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端に、ポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合基をこの順に介して活性エネルギー線重合性基を結合するパーフルオロポリエーテル0.1〜10質量部、
(c)1〜10μmの平均粒径を有する有機微粒子8〜30質量部、及び
(d)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤1〜20質量部
を含む硬化性組成物の硬化物からなる、
防眩性ハードコート積層体。
【請求項2】
前記成分(A)のシロキサンオリゴマーが、式[1]で表されるアルコキシシランAと、式[2]で表されるアルコキシシランBとを加水分解縮合させることにより得られるラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマーである、請求項1に記載の防眩性ハードコート積層体。
【化2】
(式中、Rはラジカル重合性二重結合を有する1価の有機基を表し、Rはフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1乃至6のアルキル基、又はフェニル基を表し、R及びRはそれぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表し、aは1又は2の整数を表し、bは0乃至2の整数を表す。)
【請求項3】
前記式[1]中のRが、ビニル基又は(メタ)アクリル基を有する1価の有機基である、請求項1又は請求項2に記載の防眩性ハードコート積層体。
【請求項4】
前記アルコキシシランAが下記式[3]で表される化合物である、請求項3に記載の防眩性ハードコート積層体。
【化3】
(式中、Rは前記式[1]における定義と同じ意味を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは炭素原子数1乃至10のアルキレン基を表す。)
【請求項5】
前記成分(A)のラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマーが、前記アルコキシシランA単位を10〜99mol%含むシロキサンオリゴマーである、請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の防眩性ハードコート積層体。
【請求項6】
前記成分(b)のパーフルオロポリエーテルのポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基が、−[OCF]−及び−[OCFCF]−を繰り返し単位として有する基である、請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の防眩性ハードコート積層体。
【請求項7】
前記成分(b)のパーフルオロポリエーテルのポリ(オキシアルキレン)基が、ポリ(オキシエチレン)基である、請求項1乃至請求項6のうち何れか一項に記載の防眩性ハードコート積層体。
【請求項8】
前記成分(a)の多官能モノマーが、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1乃至請求項7のうち何れか一項に記載の防眩性ハードコート積層体。
【請求項9】
前記成分(c)の有機微粒子が真球状粒子である、請求項1乃至請求項8のうち何れか一項に記載の防眩性ハードコート積層体。
【請求項10】
前記成分(c)の有機微粒子がポリメタクリル酸メチル粒子である、請求項1乃至請求項9のうち何れか一項に記載の防眩性ハードコート積層体。
【請求項11】
前記成分(d)の重合開始剤がアルキルフェノン類重合開始剤である、請求項1乃至請求項10のうち何れか一項に記載の防眩性ハードコート積層体。
【請求項12】
前記ハードコート層が、前記成分(c)の有機微粒子の平均粒径に比して1〜10/3倍の厚さを有する、請求項1乃至請求項11のうち何れか一項に記載の防眩性ハードコート積層体。
【請求項13】
前記ハードコート層が1〜20μmの膜厚を有する、請求項1乃至請求項12のうち何れか一項に記載の防眩性ハードコート積層体。
【請求項14】
前記ハードコート層が3〜10μmの膜厚を有する、請求項13に記載の防眩性ハードコート積層体。
【請求項15】
前記基材が、ガラスである、請求項1乃至請求項14のうち何れか一項に記載の防眩性ハードコート積層体。
【請求項16】
基材の少なくとも一方の面にプライマー層と、該プライマー層より上方にハードコート層を備える防眩性ハードコート積層体の製造方法であって、
基材上にプライマー層形成用組成物を塗布して塗膜を形成する工程、
該プライマー層形成用組成物の塗膜を加熱し該塗膜を硬化させ、プライマー層を形成する工程、
前記プライマー層上に硬化性組成物を塗布して塗膜を形成する工程、及び
該硬化性組成物の塗膜に活性エネルギー線を照射し該塗膜を硬化させ、ハードコート層を形成する工程、を含み、
前記プライマー層形成用組成物が、
(A)式[1]で表されるアルコキシシランAと、式[2]で表されるアルコキシシランBとを少なくとも含むアルコキシシランを加水分解縮合させることにより得られるラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマーを含み、
【化4】
(式中、Rはラジカル重合性二重結合を有する1価の有機基を表し、Rは炭素原子数1乃至10のアルキル基(該アルキル基はフッ素原子、少なくとも炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されたアミノ基、少なくともフェニル基で置換されたアミノ基、又はウレイド基で置換されていてもよい。)又はフェニル基を表し、R及びRはそれぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表し、aは1又は2の整数を表し、bは0乃至2の整数を表す。)
前記硬化性組成物が、
(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、
(b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端に、ポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合基をこの順に介して活性エネルギー線重合性基を結合するパーフルオロポリエーテル0.1〜10質量部、
(c)1〜10μmの平均粒径を有する有機微粒子8〜30質量部、及び
(d)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤1〜20質量部
を含む、
防眩性ハードコート積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性(アンチグレア機能)に優れるハードコート層を備える防眩性ハードコート積層体並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピューター、携帯電話、携帯ゲーム機器、ATM等のフラットパネルディスプレイにタッチパネルが搭載された製品が非常に数多く商品化されている。特に、スマートフォンやタブレットPCの登場により、マルチタッチ機能を有する静電容量式タッチパネルが一気にその搭載数を伸ばしている。
【0003】
これらタッチパネルディスプレイ表面には、その画面への外部光の映り込みによる視認性の低下を防ぐために、表面に凹凸が形成された数μm程度のハードコート層を備える防眩性ハードコートフィルムを貼り合せる方法が用いられている。表面に凹凸を形成する手法としては、数μm程度の粒径を有する微粒子をハードコート層に含有する方法が一般的に用いられている。
【0004】
ところで、静電容量式タッチパネルでは人間の指で触れることにより操作を行う。このため、操作を行う度にタッチパネルの表面に指紋が付着し、ディスプレイの画像の視認性が著しく損なわれたり、ディスプレイの外観が損なわれたりするという問題が発生している。指紋には汗由来の水分及び皮脂由来の油分が含まれており、それらの何れも付着しにくくするために、ディスプレイ表面のハードコート層には撥水性及び撥油性を付与することが強く望まれている。
しかし、静電容量式タッチパネルでは、人が毎日指で触れるため、初期の防汚性はかなりのレベルに達しているとしても、使用中に傷が入ることによりそれらの機能が低下する場合が多い。特に防眩性ハードコート層では、その表面に凹凸を有することから、引っ掛かりが発生しやすく、傷がつきやすい。そのため、使用過程での防汚性の耐久性が課題であった。
【0005】
これまで、防眩性及び耐擦傷性を有するハードコート層として、防汚性及び耐擦傷性をハードコート層表面に付与する成分として、分子内にポリ(オキシパーフルオロアルキレン)構造及び(メタ)アクリロイル基を有する表面改質剤、さらに防眩性をハードコート層に付与する成分として、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS)樹脂微粒子を用いた技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−257359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に具体的に記載された方法では、分子内にポリ(オキシパーフルオロアルキレン)構造及び(メタ)アクリロイル基を有する表面改質剤のフッ素含有量が低く、十分な防汚性及び耐擦傷性を得られないという課題があった。また、耐擦傷性を得ようとMS樹脂粒子の添加量を低減すると十分な防眩性が得られず、十分な防眩性が得られる程度にMS樹脂粒子を添加した場合には耐擦傷性が著しく低下するという課題があった。さらに、ハードコート層中における樹脂粒子の分散性が悪く、凝集物となり塗膜の外観を損なうことも課題であった。
また、アクリル系樹脂を使用したハードコード層は、特にガラス基材との密着性に劣り、基材から容易に剥離することも課題であった。
このように、防眩性に優れ、且つ高い耐擦傷性を発現するとともに、基材に対する密着性に優れるハードコート層が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、基材との密着性を高めるべく、基材とハードコート層の間にプライマー層を設けること、特に該プライマー層の形成材料にラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマーを採用することを見出した。そして、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)構造を含む分子鎖の両末端に、ポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合基を介して活性エネルギー線重合性基を結合する化合物を、フッ素系表面改質剤として用い、さらにそれに有機微粒子を添加した硬化性組成物をハードコート層形成材料に採用することにより、前記プライマー層上に、優れた防眩性及び高い耐擦傷性を有しかつ密着性に優れるハードコート層を設けた積層体となることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、第1観点として、
基材と、該基材より上方のプライマー層と、該プライマー層より上方のハードコート層からなる、防眩性ハードコート積層体であって、
前記プライマー層が、
(A)式[1]で表されるアルコキシシランAと、式[2]で表されるアルコキシシランBとを少なくとも含むアルコキシシランを加水分解縮合させることにより得られるラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマー
を含むプライマー層形成用組成物の硬化物からなり、
【化1】
(式中、Rはラジカル重合性二重結合を有する1価の有機基を表し、Rは炭素原子数1乃至10のアルキル基(該アルキル基はフッ素原子、少なくとも炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されたアミノ基、少なくともフェニル基で置換されたアミノ基、又はウレイド基で置換されていてもよい。)又はフェニル基を表し、R及びRはそれぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表し、aは1又は2の整数を表し、bは0乃至2の整数を表す。)
前記ハードコート層が、
(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、
(b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端に、ポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合基をこの順に介して活性エネルギー線重合性基を結合するパーフルオロポリエーテル0.1〜10質量部、
(c)1〜10μmの平均粒径を有する有機微粒子8〜30質量部、及び
(d)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤1〜20質量部
を含む硬化性組成物の硬化物からなる、
防眩性ハードコート積層体に関する。
第2観点として、前記成分(A)のシロキサンオリゴマーが、式[1]で表されるアルコキシシランAと、式[2]で表されるアルコキシシランBとを加水分解縮合させることにより得られるラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマーである、第1観点に記載の防眩性ハードコート積層体に関する。
【化2】
(式中、Rはラジカル重合性二重結合を有する1価の有機基を表し、Rはフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1乃至6のアルキル基、又はフェニル基を表し、R及びRはそれぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表し、aは1又は2の整数を表し、bは0乃至2の整数を表す。)
第3観点として、前記式[1]中のRが、ビニル基又は(メタ)アクリル基を有する1価の有機基である、第1観点又は第2観点に記載の防眩性ハードコート積層体に関する。
第4観点として、前記アルコキシシランAが下記式[3]で表される化合物である、第3観点に記載の防眩性ハードコート積層体に関する。
【化3】
(式中、Rは前記式[1]における定義と同じ意味を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは炭素原子数1乃至10のアルキレン基を表す。)
第5観点として、前記成分(A)のラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマーが、前記アルコキシシランA単位を10〜99mol%含むシロキサンオリゴマーである、第1観点乃至第4観点のうち何れか一項に記載の防眩性ハードコート積層体に関する。
第6観点として、前記成分(b)のパーフルオロポリエーテルのポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基が、−[OCF]−及び−[OCFCF]−を繰り返し単位として有する基である、第1観点乃至第5観点のうち何れか一項に記載の防眩性ハードコート積層体に関する。
第7観点として、前記成分(b)のパーフルオロポリエーテルのポリ(オキシアルキレン)基が、ポリ(オキシエチレン)基である、第1観点乃至第6観点のうち何れか一項に記載の防眩性ハードコート積層体に関する。
第8観点として、前記成分(a)の多官能モノマーが、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである、第1観点乃至第7観点のうち何れか一項に記載の防眩性ハードコート積層体に関する。
第9観点として、前記成分(c)の有機微粒子が真球状粒子である、第1観点乃至第8観点のうち何れか一項に記載の防眩性ハードコート積層体に関する。
第10観点として、前記成分(c)の有機微粒子がポリメタクリル酸メチル粒子である、第1観点乃至第9観点のうち何れか一項に記載の防眩性ハードコート積層体に関する。
第11観点として、前記成分(d)の重合開始剤がアルキルフェノン類重合開始剤である、第1観点乃至第10観点のうち何れか一項に記載の防眩性ハードコート積層体に関する。
第12観点として、前記ハードコート層が、前記成分(c)の有機微粒子の平均粒径に比して1〜10/3倍の厚さを有する、第1観点乃至第11観点のうち何れか一項に記載の防眩性ハードコート積層体に関する。
第13観点として、前記ハードコート層が1〜20μmの膜厚を有する、第1観点乃至第12観点のうち何れか一項に記載の防眩性ハードコート積層体に関する。
第14観点として、前記ハードコート層が3〜10μmの膜厚を有する、第13観点に記載の防眩性ハードコート積層体に関する。
第15観点として、前記基材が、ガラスである、第1観点乃至第14観点のうち何れか一項に記載の防眩性ハードコート積層体に関する。
第16観点として、基材の少なくとも一方の面にプライマー層と、該プライマー層より上方にハードコート層を備える防眩性ハードコート積層体の製造方法であって、
基材上にプライマー層形成用組成物を塗布して塗膜を形成する工程、
該プライマー層形成用組成物の塗膜を加熱し該塗膜を硬化させ、プライマー層を形成する工程、
前記プライマー層上に硬化性組成物を塗布して塗膜を形成する工程、及び
該硬化性組成物の塗膜に活性エネルギー線を照射し該塗膜を硬化させ、ハードコート層を形成する工程、を含み、
前記プライマー層形成用組成物が、
(A)式[1]で表されるアルコキシシランAと、式[2]で表されるアルコキシシランBとを少なくとも含むアルコキシシランを加水分解縮合させることにより得られるラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマーを含み、
【化4】
(式中、Rはラジカル重合性二重結合を有する1価の有機基を表し、Rは炭素原子数1乃至10のアルキル基(該アルキル基はフッ素原子、少なくとも炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されたアミノ基、少なくともフェニル基で置換されたアミノ基、又はウレイド基で置換されていてもよい。)又はフェニル基を表し、R及びRはそれぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表し、aは1又は2の整数を表し、bは0乃至2の整数を表す。)
前記硬化性組成物が、
(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、
(b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端に、ポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合基をこの順に介して活性エネルギー線重合性基を結合するパーフルオロポリエーテル0.1〜10質量部、
(c)1〜10μmの平均粒径を有する有機微粒子8〜30質量部、及び
(d)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤1〜20質量部
を含む、
防眩性ハードコート積層体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、厚さ1〜15μm程度の薄膜においても優れた耐擦傷性及び高い防眩性を有し外観にも優れるハードコート層、特に、ラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマーを含むプライマー層を基材上に設け、その上に前記ハードコート層を設けることにより、いわば基材との密着性にも優れるハードコート層を有する積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の防眩性ハードコート積層体は、基材と、該基材の上方のプライマー層と、該プライマー層より上方のハードコート層からなる。
そして本発明の防眩性ハードコート積層体において、前記プライマー層は、ラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマーを含むプライマー層形成用組成物の硬化物からなり、前記ハードコート層は、活性エネルギー線硬化性多官能モノマー等を含む硬化性組成物の硬化物からなる。
以下、本発明の防眩性ハードコート積層体を構成する各層について、詳述する。
【0012】
《基材》
本発明の防眩性ハードコート積層体における基材は特に限定されず、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合物)、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合物)、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、二酸化ケイ素、スレート等を挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよい。
中でも、本発明において、基材としてガラスを好適に使用できる。
上記基材の厚さは特に限定されないが、例えば10〜1,000μm等とすることができる。
【0013】
《プライマー層》
<プライマー層形成用組成物>
本発明の防眩性ハードコート積層体におけるプライマー層は、下記成分(A)を含むプライマー層形成用組成物の硬化物からなる:
(A)式[1]で表されるアルコキシシランAと、式[2]で表されるアルコキシシランBとを少なくとも含むアルコキシシランを加水分解縮合させることにより得られるラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマー。
【化5】
(式中、Rはラジカル重合性二重結合を有する1価の有機基を表し、Rは炭素原子数1乃至10のアルキル基(該アルキル基はフッ素原子、少なくとも炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されたアミノ基、少なくともフェニル基で置換されたアミノ基、又はウレイド基で置換されていてもよい。)又はフェニル基を表し、R及びRはそれぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表し、aは1又は2の整数を表し、bは0乃至2の整数を表す。)
【0014】
以下、上記成分(A)並びにプライマー層形成用組成物に含み得る各成分について説明する。
【0015】
[(A)ラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマー]
上記(A)ラジカル重合性二重結合を有するシロキサンオリゴマー(以下、単に(A)シロキサンオリゴマーとも称する)は、下記式[1]で表されるアルコキシシランAと、下記式[2]で表されるアルコキシシランBとを必須のアルコキシシラン単位として少なくとも含み、これらを加水分解縮合させることにより得られるシロキサンオリゴマーである。
【化6】
上記式[1]中、Rはラジカル重合性二重結合を有する1価の有機基を表し、Rはメチル基又はエチル基を表し、aは1又は2の整数を表す。
また式[2]中、Rは炭素原子数1乃至10のアルキル基(該アルキル基はフッ素原子、少なくとも炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されたアミノ基、少なくともフェニル基で置換されたアミノ基、又はウレイド基で置換されていてもよい。)又はフェニル基を表し、好ましくはRはフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表し、Rはメチル基又はエチル基を表し、bは0乃至2の整数を表す。
【0016】
上記式[1]中のRのラジカル重合性二重結合を有する1価の有機基として、ビニル基又は(メタ)アクリル基を有する1価の有機基であることが好ましい。なお、本発明では(メタ)アクリル基とは、アクリル基とメタクリル基の両方をいう。
また上記式[2]中のRが表す炭素原子数1乃至10のアルキル基(該アルキル基はフッ素原子、少なくとも炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されたアミノ基、少なくともフェニル基で置換されたアミノ基、又はウレイド基で置換されていてもよい。)としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基等が挙げられる。
また上記式[2]中のRが表す少なくとも炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されたアミノ基としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基等が挙げられる。
さらに上記式[2]中のRが表す少なくともフェニル基で置換されたアミノ基としては、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0017】
上記式[1]で表されるアルコキシシランAの中でも、下記式[3]で表される化合物が好ましい。
【化7】
式中、Rは前記式[1]における定義と同じ意味を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは炭素原子数1乃至10のアルキレン基、好ましくは炭素原子数1乃至8のアルキレン基、さらに好ましくは炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表す。
【0018】
上記Lが表す炭素原子数1乃至10のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、ペンタメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。これらの中でも、トリメチレン基が好ましい。
【0019】
このようなアルコキシシランAの具体例としては、トリメトキシ(ビニル)シラン、トリエトキシ(ビニル)シラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、トリエトキシ(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)シラン、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、トリエトキシ(8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル)シラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(ジメトキシ)(メチル)シラン、ジエトキシ(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)(メチル)シラン、トリメトキシ(4−ビニルフェニル)シラン、トリエトキシ(4−ビニルフェニル)シラン等が挙げられる。
これらの中でも、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、トリエトキシ(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)シランが好ましい。
【0020】
また上記式[2]で表されるアルコキシシランBの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシ(メチル)シラン、トリエトキシ(メチル)シラン、エチルトリメトキシシラン、トリエトキシ(エチル)シラン、トリメトキシ(プロピル)シラン、トリエトキシ(プロピル)シラン、トリメトキシ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、トリエトキシ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、トリメトキシ(ペンチル)シラン、トリエトキシ(ペンチル)シラン、ヘキシルトリメトキシシラン、トリエトキシ(ヘキシル)シラン、トリメトキシ(フェニル)シラン、トリエトキシ(フェニル)シラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジメトキシジプロピルシラン、ジエトキシジプロピルシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジメトキシジペンチルシラン、ジエトキシジペンチルシラン、ジヘキシルジメトキシシラン、ジエトキシジヘキシルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、トリメトキシ((フェニルアミノ)メチル)シラン、トリメトキシ(3−(フェニルアミノ)プロピル)シラン、トリエトキシ(3−(フェニルアミノ)プロピル)シラン、ジメトキシ(メチル)(3−(フェニルアミノ)プロピル)シラン等が挙げられる。
これらの中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシ(3−(フェニルアミノ)プロピル)シラン、トリエトキシ(3−(フェニルアミノ)プロピル)シランが好ましい。
【0021】
(A)シロキサンオリゴマーは、前記アルコキシシランA単位を、全アルコキシシラン単位のうち10〜99mol%含むシロキサンオリゴマーであることが好ましい。
【0022】
特に(A)シロキサンオリゴマーは、下記式[4]で表される構造単位を、全構造単位中少なくとも10〜99mol%含むシロキサンオリゴマーであることが好ましい。
【化8】
式中、R、R及びLは前記式[3]における定義と同じ意味を表す。
【0023】
上記(A)シロキサンオリゴマーを得る方法は特に限定されない。
例えば前記アルコキシシランA及びアルコキシシランBを含むアルコキシシランを有機溶媒中で縮合させて得られる。アルコキシシランを重縮合する方法としては、例えば、アルコキシシランをアルコール又はグリコールなどの溶媒中で加水分解・縮合する方法が挙げられる。その際、加水分解・縮合反応は、部分加水分解及び完全加水分解の何れであってもよい。完全加水分解の場合は、理論上、アルコキシシラン中の全アルコキシ基の0.5倍モルの水を加えればよいが、通常は0.5倍モルより過剰量の水を加えるのが好ましい。本発明においては、上記反応に用いる水の量は、所望により適宜選択することができるが、通常、アルコキシシラン中の全アルコキシ基の0.5〜2.5倍モルであるのが好ましい。
また、通常、加水分解・縮合反応を促進する目的で、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、サリチル酸、没食子酸、フタル酸、メリト酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸;塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等の無機酸及びその金属塩;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、トリエチルアミン等のアルカリなどの触媒が用いられる。加えて、アルコキシシランが溶解した溶液を加熱することで、更に、加水分解・縮合反応を促進させることも一般的である。その際、加熱温度及び加熱時間は所望により適宜選択できる。例えば、50℃で24時間加熱・撹拌する方法、還流下で1時間加熱・撹拌する方法などが挙げられる。
また、別法として、例えば、アルコキシシラン、溶媒及びシュウ酸の混合物を加熱して重縮合する方法が挙げられる。具体的には、あらかじめアルコールにシュウ酸を加えてシュウ酸のアルコール溶液とした後、該溶液を加熱した状態で、アルコキシシランを混合する方法である。その際、用いるシュウ酸の量は、アルコキシシランが有する全アルコキシ基の1モルに対して0.05〜5モル%とすることが好ましい。この方法における加熱は、液温50〜180℃で行うことができる。好ましくは、液の蒸発、揮散などが起こらないように、還流下で数十分〜十数時間加熱する方法である。
【0024】
本発明で使用するプライマー層形成用組成物に使用する(A)シロキサンオリゴマーのゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)は、100〜10,000、好ましくは500〜5,000である。
【0025】
本発明において、プライマー層形成材料に上記シロキサンオリゴマーを用いることにより、プライマー層形成時に該オリゴマー相互で一部加水分解縮合反応が進み、その際生成するアルコールが揮発することで、プライマー層が隙間を有する構造となるとみられ、その結果、プライマー層全体の基板並びにハードコート層との密着性向上に寄与すると推定される。
【0026】
[溶媒]
本発明に使用するプライマー層形成用組成物は、さらに溶媒を含みて、ワニスの形態としていてもよい。
この時用いられる溶媒としては、前記(A)成分、並びに所望により後述するその他成分を溶解又は分散するものであればよく、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、γ−ブチロラクトン、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等のエステル類又はエステルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のエーテル類;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、プロピレングリコール等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド類などを用いることができる。これらの溶媒は単独又は2種以上の組合せ、或いは水との混合溶媒で使用することができる。
【0027】
本発明に使用するプライマー層形成用組成物における固形分濃度は、例えば0.01〜70質量%、0.1〜50質量%、又は1〜30質量%である。ここで固形分とはプライマー層形成用組成物の全成分から溶媒成分を除いたものである。
【0028】
[その他添加剤]
さらに、本発明に使用するプライマー層形成用組成物には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて一般的に添加される添加剤、例えば、光増感剤、重合禁止剤、重合開始剤、レベリング剤、界面活性剤、密着性付与剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、貯蔵安定剤、帯電防止剤、無機充填剤、顔料、染料等、さらには、活性エネルギー線硬化性多官能モノマーなどを適宜配合してよい。
【0029】
[活性エネルギー線硬化性多官能モノマー]
本発明で使用するプライマー層形成用組成物は、その上方のハードコート層との密着性を改善させるべく、さらに活性エネルギー線硬化性多官能モノマーを含んでいてもよい。
プライマー層形成用組成物に使用する活性エネルギー線硬化性多官能モノマーとしては、後述する<(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー>に例示した多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から選択されるモノマーや、多官能エポキシ(メタ)アクリレート化合物、多官能ポリエステル(メタ)アクリレート化合物、不飽和ポリエステル等を挙げることができる。
なお、本発明において(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方をいう。例えば(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸をいう。
本発明で使用するプライマー層形成用組成物において、活性エネルギー線硬化性多官能モノマーを使用する場合、前述の(A)シロキサンオリゴマー100質量部に対して1〜300質量部の量にて、好ましくは1〜200質量部の量にて、特に好ましくは10〜100質量部の量にて使用する。
【0030】
[活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤]
本発明に使用するプライマー層形成用組成物は、上記<活性エネルギー線硬化性多官能モノマー>を含む場合、さらに後述する<(d)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤>に例示した各種重合開始剤を含んでいてもよい。
本発明に使用するプライマー層形成用組成物において、上記重合開始剤を含む場合、前記(A)シロキサンオリゴマーの100質量部に対して、0.1〜25質量部の量にて、好ましくは0.1〜20質量部の量にて、特に好ましくは1〜20質量部の量にて使用する。
【0031】
《ハードコート層》
<硬化性組成物>
本発明の防眩性ハードコート積層体におけるハードコート層は、下記(a)〜(d)を含む硬化性組成物の硬化物(すなわち硬化膜)からなる。
(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、
(b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端に、ポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合基をこの順に介して、活性エネルギー線重合性基を結合するパーフルオロポリエーテル0.1〜10質量部、
(c)1〜10μmの平均粒径を有する有機微粒子8〜30質量部、及び
(d)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤1〜20質量部。
以下、上記(a)〜(d)の各成分について説明する。
【0032】
[(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー]
活性エネルギー線硬化性多官能モノマーとは、紫外線等の活性エネルギー線を照射することで重合反応が進行し、硬化するモノマーを指す。
本発明で使用する硬化性組成物において好ましい(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマーとしては、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から選択されるモノマーである。
【0033】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシプロパン、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ビス[4−(メタ)アクリロイルチオフェニル]スルフィド、ビス[2−(メタ)アクリロイルチオエチル]スルフィド、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ε−カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
中でも好ましいものとして、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0034】
上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、1分子内にアクリロイル基又はメタクリロイル基を複数有し、ウレタン結合(−NHCOO−)を一つ以上有する化合物である。
例えば上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、多官能イソシアネートとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとの反応により得られるもの、多官能イソシアネートとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとポリオールとの反応により得られるものなどが挙げられるが、本発明で使用可能な多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物はかかる例示のみに限定されるものではない。
【0035】
なお上記多官能イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
また上記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
そして上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のジオール類;これらジオール類とコハク酸、マレイン酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸類又はジカルボン酸無水物類との反応生成物であるポリエステルポリオール;ポリエーテルポリオール;ポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0036】
本発明では、上記(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマーとして、上記多官能(メタ)アクリレート化合物及び上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から一種を単独で、或いは二種以上を組合せて使用することができる。得られる硬化物の耐擦傷性の観点から、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物を併用することが好ましい。また、上記多官能(メタ)アクリレート化合物として、5官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物及び4官能以下の多官能(メタ)アクリレート化合物を併用することが好ましい。
また、上記多官能(メタ)アクリレート化合物と上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物とを組み合わせて使用する場合、多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し、多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物20〜100質量部を使用することが好ましく、30〜70質量部を使用することがより好ましい。
さらに、上記多官能(メタ)アクリレート化合物において、上記5官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物と上記4官能以下の多官能(メタ)アクリレート化合物とを組み合わせて使用する場合、5官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し、4官能以下の多官能(メタ)アクリレート化合物10〜100質量部を使用することが好ましく、20〜60質量部を使用することがより好ましい。
また、多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物20〜100質量部かつ5官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し4官能以下の多官能(メタ)アクリレート化合物10〜100質量部にて使用すること、
多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物20〜100質量部かつ5官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し4官能以下の多官能(メタ)アクリレート化合物20〜60質量部にて使用すること、
多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物30〜70質量部かつ5官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し4官能以下の多官能(メタ)アクリレート化合物10〜100質量部にて使用すること、
多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物30〜70質量部かつ5官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し4官能以下の多官能(メタ)アクリレート化合物20〜60質量部にて使用することが好ましい。
【0037】
[(b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端に、ポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合基をこの順に介して、活性エネルギー線重合性基を結合するパーフルオロポリエーテル]
本発明では、(b)成分として、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端に、ポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合基をこの順に介して、活性エネルギー線重合性基を結合するパーフルオロポリエーテル(以降、単に「(b)両末端に重合性基を有するパーフルオロポリエーテル」とも称する)を使用する。(b)成分は、本発明で使用する硬化性組成物を適用するハードコート層における表面改質剤としての役割を果たす。
【0038】
上記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基におけるアルキレン基の炭素原子数は特に限定されないが、好ましくは炭素原子数1〜4であることが好ましい。すなわち、上記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基は、炭素原子数1〜4の2価のフッ化炭素基と酸素原子が交互に連結した構造を有する基を指し、オキシパーフルオロアルキレン基は炭素原子数1〜4の2価のフッ化炭素基と酸素原子が連結した構造を有する基を指す。具体的には、−[OCF]−(オキシパーフルオロメチレン基)、−[OCFCF]−(オキシパーフルオロエチレン基)、−[OCFCFCF]−(オキシパーフルオロプロパン−1,3−ジイル基)、−[OCFC(CF)F]−(オキシパーフルオロプロパン−1,2−ジイル基)等の基が挙げられる。
上記オキシパーフルオロアルキレン基は、一種を単独で使用してもよく、或いは二種以上を組み合わせて使用してもよく、その場合、複数種のオキシパーフルオロアルキレン基の結合はブロック結合及びランダム結合の何れであってもよい。
【0039】
これらの中でも、耐擦傷性が良好となる硬化物(ハードコート層)が得られる観点から、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基として、−[OCF]−(オキシパーフルオロメチレン基)と−[OCFCF]−(オキシパーフルオロエチレン基)の双方を繰り返し単位として有する基を用いることが好ましい。
中でも上記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基として、繰り返し単位:−[OCF]−と−[OCFCF]−とが、モル比率で[繰り返し単位:−[OCF]−]:[繰り返し単位:−[OCFCF]−]=2:1〜1:2となる割合で含む基であることが好ましく、およそ1:1となる割合で含む基であることがより好ましい。これら繰り返し単位の結合は、ブロック結合及びランダム結合の何れであってもよい。
上記オキシパーフルオロアルキレン基の繰り返し単位数は、その繰り返し単位数の総計として5〜30の範囲であることが好ましく、7〜21の範囲であることがより好ましい。
また、上記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基のゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)は、1,000〜5,000、好ましくは1,500〜2,000である。
【0040】
上記ポリ(オキシアルキレン)基におけるアルキレン基の炭素原子数は特に限定されないが、好ましくは炭素原子数1〜4であることが好ましい。すなわち、上記ポリ(オキシアルキレン)基は、炭素原子数1〜4のアルキレン基と酸素原子が交互に連結した構造を有する基を指し、オキシアルキレン基は炭素原子数1〜4の2価のアルキレン基と酸素原子が連結した構造を有する基を指す。上記アルキレン基としては、エチレン基、1−メチルエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。
上記オキシアルキレン基は、一種を単独で使用してもよく、或いは二種以上を組み合わせて使用してもよく、その場合、複数種のオキシアルキレン基の結合はブロック結合及びランダム結合の何れであってもよい。
中でも、上記ポリ(オキシアルキレン)基は、ポリ(オキシエチレン)基であることが好ましい。
上記ポリ(オキシアルキレン)基におけるオキシアルキレン基の繰り返し単位数は、例えば1〜15の範囲であり、例えば5〜12の範囲、例えば7〜12の範囲であることがより好ましい。
【0041】
上記ポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合基をこの順に介して結合する活性エネルギー線重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、ウレタン(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0042】
上記活性エネルギー線重合性基は、(メタ)アクリロイル部分等の活性エネルギー線重合性部分を1つ有するものに限られず、2つ以上の活性エネルギー線重合性部分を有するものであってもよく、例えば、以下に示すA1〜A5の構造、及びこれらの構造中のアクリロイル基をメタクリロイル基に置換した構造が挙げられる。
【0043】
【化9】
【0044】
このような(b)両末端に重合性基を有するパーフルオロポリエーテルとして、工業的製造が容易であるという点から、以下に示す化合物及びこれらの化合物中のアクリロイル基をメタクリロイル基に置換した化合物を好ましい例として挙げることができる。なお、構造式中、Aは前記式[A1]〜式[A5]で表される構造のうちの1つを表し、PFPEは前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を表し、nはそれぞれ独立してオキシエチレン基の繰り返し単位数を表し、好ましくは1〜15の数を表し、より好ましくは5〜12の数を表し、さらに好ましくは7〜12の数を表す。
【化10】
【0045】
中でも、本発明で使用する(b)両末端に重合性基を有するパーフルオロポリエーテルは、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端に、ポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合基をこの順に介して、すなわち、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端にポリ(オキシアルキレン)基がそれぞれ結合し、該両端の各ポリ(オキシアルキレン)基にそれぞれウレタン結合基が1つ結合し、そして該両端の各ウレタン結合に活性エネルギー線重合性基がそれぞれ結合したパーフルオロポリエーテルであることが好ましい。さらに、前記パーフルオロポリエーテルにおいて、活性エネルギー線重合性基が少なくとも2つ以上の活性エネルギー線重合性部分を有する基であるパーフルオロポリエーテルであることが好ましい。
【0046】
本発明において(b)両末端に重合性基を有するパーフルオロポリエーテルは、前述の(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部の割合で使用することが望ましい。
【0047】
上記(b)両末端に重合性基を有するパーフルオロポリエーテルは、例えば、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基の両末端にポリ(オキシアルキレン)基を介してヒドロキシ基を有する化合物において、その両端のヒドロキシ基に対して2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートや1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等の重合性基を有するイソシアネート化合物をウレタン化反応させる方法、(メタ)アクリル酸クロリド又はクロロメチルスチレンを脱塩酸反応させる方法、(メタ)アクリル酸を脱水反応させる方法、無水イタコン酸をエステル化反応させる方法などにより得られる。
中でも、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基の両末端にポリ(オキシアルキレン)基を介してヒドロキシ基を有する化合物において、その両端のヒドロキシ基に対して、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートや1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等の重合性基を有するイソシアネート化合物をウレタン化反応させる方法、或いは、該ヒドロキシ基に対して(メタ)アクリル酸クロリド又はクロロメチルスチレンを脱塩酸反応させる方法が、反応が容易である点で特に好ましい。
【0048】
なお本発明で使用する硬化性組成物には、(b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端に、ポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合基をこの順に介して、活性エネルギー線重合性基を結合するパーフルオロポリエーテルに加えて、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の一端にポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合基をこの順に介して、活性エネルギー線重合性基を結合し、且つその他端にポリ(オキシアルキレン)基を介してヒドロキシ基を有するパーフルオロポリエーテルや、ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両端にポリ(オキシアルキレン)基を介してヒドロキシ基を有するパーフルオロポリエーテル[活性エネルギー線重合性基を結合していない化合物]が含まれていてもよい。
【0049】
[(c)1〜10μmの平均粒径を有する有機微粒子]
本発明で使用する硬化性組成物において、1〜10μmの平均粒径を有する有機微粒子(以下、単に「(c)有機微粒子」とも称する)は、該硬化性組成物より形成されるハードコート層の表面を凹凸形状にして防眩性を付与する。
また有機微粒子は、その屈折率とハードコート層形成材料である硬化性組成物との屈折率との差を制御することで、ハードコート層のヘーズ値を制御する役割をも担うことができる。
【0050】
前記有機微粒子の形状は特に限定されないが、例えば、ビーズ状の略球形であってもよく、粉末等の不定形のものであってもよいが、略球形のものが好ましく、より好ましくは、アスペクト比が1.5以下の略球形の粒子であり、最も好ましくは真球状粒子である。
【0051】
前記有機微粒子としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル粒子(PMMA粒子)、シリコーン粒子、ポリスチレン粒子、ポリカーボネート粒子、アクリルスチレン粒子、ベンゾグアナミン粒子、メラミン粒子、ポリオレフィン粒子、ポリエステル粒子、ポリアミド粒子、ポリイミド粒子、ポリフッ化エチレン粒子等があげられる。これらの有機微粒子は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
なかでも、前記有機微粒子としてポリメタクリル酸メチル粒子を好適に用いることができる。
【0052】
本発明で使用する前記有機微粒子の平均粒径は1〜10μmの範囲であり、好ましくは2〜8μmの範囲であり、より好ましくは3〜8μmの範囲であることが好ましい。ここで平均粒径(μm)とは、Mie理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定して得られる50%体積径(メジアン径)である。前記有機微粒子の平均粒径が上記数値範囲より大きくなると、ディスプレイの画像鮮明性が低下し、また上記数値範囲より小さいと、十分な防眩性が得られず、ギラツキも大きくなるという問題が生じやすくなる。なお前記有機微粒子は、その粒度分布については特に限定されないが、粒径の揃った単分散の微粒子であることが好ましい。
前記有機微粒子は、前記(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマーの硬化物との屈折率差が0〜0.20である屈折率を有してなる有機微粒子であることが好ましく、さらに前記屈折率差が0〜0.10であることが好ましい。
また、前記有機微粒子は、その平均粒径が、後述する本発明で使用する硬化性組成物より得られる硬化物、すなわちハードコート層の膜厚に対して、有機微粒子の平均粒径b/膜厚a=0.3〜1.0の範囲を満たすように選択することが好ましい。
【0053】
前記有機微粒子は、市販品を好適に用いることができ、例えば、テクポリマー(登録商標)MBXシリーズ、同SBXシリーズ、同MSXシリーズ、同SMXシリーズ、同SSXシリーズ、同BMXシリーズ、同ABXシリーズ、同ARXシリーズ、同AFXシリーズ、同MBシリーズ、同MBPシリーズ、同MB−Cシリーズ、同ACXシリーズ、同ACPシリーズ[以上、積水化成品工業(株)製];トスパール(登録商標)シリーズ[モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(同)製];エポスター(登録商標)シリーズ、同MAシリーズ、同STシリーズ、同MXシリーズ[以上、(株)日本触媒製];オプトビーズ(登録商標)シリーズ[日産化学工業(株)製];フロービーズシリーズ[住友精化(株)製];トレパール(登録商標)PPS、同PAI、同PES、同EP[以上、東レ(株)製];3M(登録商標)ダイニオンTFマイクロパウダーシリーズ[3M社製];ケミスノー(登録商標)MXシリーズ、同MZシリーズ、同MRシリーズ、同KMRシリーズ、同KSRシリーズ、同MPシリーズ、同SXシリーズ、同SGPシリーズ[以上、綜研化学(株)製];タフチック(登録商標)AR650シリーズ、同AR−750シリーズ、同FH−Sシリーズ、同A−20、同YKシリーズ、同ASFシリーズ、同HUシリーズ、同Fシリーズ、同Cシリーズ、同WSシリーズ[以上、東洋紡(株)製];アートパール(登録商標)GRシリーズ、同SEシリーズ、同Gシリーズ、同GSシリーズ、同Jシリーズ、同MFシリーズ、同BEシリーズ[以上、根上工業(株)製];信越シリコーン(登録商標)KMPシリーズ[信越化学工業(株)製]等を用いることができる。
【0054】
本発明において(c)有機微粒子は、前述の(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部に対して、8〜30質量部、好ましくは8〜20質量部の割合で使用することが望ましい。
【0055】
[(d)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤]
本発明で使用する硬化性組成物において好ましい活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤(以下、単に「(d)重合開始剤」とも称する)は、例えば、電子線、紫外線、X線等の活性エネルギー線により、特に紫外線照射によりラジカルを発生する重合開始剤である。
上記(d)重合開始剤としては、例えばベンゾイン類、アルキルフェノン類、チオキサントン類、アゾ類、アジド類、ジアゾ類、o−キノンジアジド類、アシルホスフィンオキシド類、オキシムエステル類、有機過酸化物、ベンゾフェノン類、ビスクマリン類、ビスイミダゾール類、チタノセン類、チオール類、ハロゲン化炭化水素類、トリクロロメチルトリアジン類、あるいはヨードニウム塩、スルホニウム塩などのオニウム塩類等が挙げられる。これらは一種単独で或いは二種以上を混合して用いてもよい。
中でも本発明では、透明性、表面硬化性、薄膜硬化性の観点から(d)重合開始剤として、アルキルフェノン類重合開始剤を使用することが好ましい。アルキルフェノン類重合開始剤を使用することにより、耐擦傷性がより向上した硬化物(ハードコート層)を得ることができる。
【0056】
上記アルキルフェノン類重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシル=フェニル=ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン等のα−ヒドロキシアルキルフェノン類;2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン等のα−アミノアルキルフェノン類;2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン;フェニルグリオキシル酸メチルなどが挙げられる。
【0057】
本発明において(d)重合開始剤は、前述の(a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部に対して、1〜20質量部、好ましくは2〜10質量部の割合で使用することが望ましい。
【0058】
[(e)溶媒]
本発明で使用する硬化性組成物は、更に(e)溶媒を含み、すなわちワニス(膜形成材料)の形態とすることができる。
上記溶媒としては、前記(a)〜(d)成分を溶解・分散し、また後述する硬化物(ハードコート層)形成にかかる塗工時の作業性や硬化前後の乾燥性等を考慮して適宜選択すればよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素類;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化物類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類又はエステルエーテル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;N−メチル−2−ピロリドン等の複素環式化合物類、並びにこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
【0059】
また、塗工後の乾燥時における前記微粒子の分散性を制御する目的で、高沸点の溶媒を使用することもできる。
このような溶媒としては、例えば、酢酸シクロヘキシル、プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチンレングリコールジアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシブタノール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコール=メチル=プロピル=エーテル等が挙げられる。
【0060】
これら(e)溶媒の使用量は特に限定されないが、例えば本発明で使用する硬化性組成物における固形分濃度が1〜70質量%、好ましくは5〜50質量%となる濃度で使用する。ここで固形分濃度(不揮発分濃度とも称する)とは、本発明で使用する硬化性組成物の前記(a)〜(e)成分(及び所望によりその他添加剤)の総質量(合計質量)に対する固形分(全成分から溶媒成分を除いたもの)の含有量を表す。
【0061】
[その他添加物]
また、本発明で使用する硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて一般的に添加される添加剤、例えば、重合促進剤、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤、界面活性剤、密着性付与剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、貯蔵安定剤、帯電防止剤、無機充填剤、顔料、染料等を適宜配合してよい。
また、硬化物(ハードコート層)のヘーズ値を制御する目的で、酸化チタン等の無機微粒子を配合してもよい。
【0062】
《防眩性ハードコート積層体》
前述したとおり、本発明の防眩性ハードコート積層体は、基材と、該基材の上方のプライマー層と、該プライマー層より上方のハードコート層からなる、3層の積層体である。
本発明の防眩性ハードコート積層体は、
(i)基材上にプライマー層形成用組成物を塗布して塗膜を形成する工程、
(ii)該プライマー層形成用組成物の塗膜を加熱し硬化させ、プライマー層を形成する工程、
(iii)前記プライマー層上に硬化性組成物を塗布して塗膜を形成する工程、及び
(iv)該硬化性組成物の塗膜に活性エネルギー線を照射し硬化させ、ハードコート層を形成する工程、を含みて製造される。
ここでプライマー層形成用組成物及び硬化性組成物は、上記の各組成物を適用できる。
【0063】
上記(i)及び(iii)工程におけるプライマー層形成用組成物及び硬化性組成物のコーティング方法は、キャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等を適宜選択し得、中でも短時間で塗布できることから揮発性の高い溶液であっても利用でき、また、容易に均一な塗布を行うことができるという利点より、スピンコート法を用いることが望ましい。また、簡単に塗布することができ、かつ、大面積に塗装ムラがなく平滑な塗膜を形成することができるという利点より、ロールコート法、ダイコート法、スプレーコート法を用いることが望ましい。ここで用いるプライマー層形成用組成物及び硬化性組成物は、前述のワニスの形態にあるものを好適に使用できる。なお事前に孔径が2μm程度のフィルタなどを用いて、プライマー層形成用組成物及び硬化性組成物を濾過した後、コーティングに供することが好ましい。
【0064】
上記(i)工程のプライマー層形成用組成物のコーティング後、(ii)工程としてホットプレート又はオーブン等で加熱処理を行い、塗膜を硬化し、プライマー層を形成させる。この際の加熱処理条件としては、例えば、40〜150℃で、30秒〜10分程度とすることが好ましい。
なお、プライマー層形成用組成物に活性エネルギー線硬化性多官能モノマーや活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤が含まれている場合、後述する硬化性組成物の塗膜に適用する活性エネルギー線照射工程を適用してもよい。
【0065】
上記(iii)工程の硬化性組成物のコーティング後、好ましくは続いてホットプレート又はオーブン等で予備乾燥した後、(iv)工程として紫外線等の活性エネルギー線を照射して光硬化させ、ハードコート層を形成する。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線等が挙げられる。紫外線照射に用いる光源としては、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、UV−LED等が使用できる。
その後、ポストベークを行うことにより、具体的にはホットプレート、オーブンなどを用いて加熱することにより重合及び重縮合を完結させることができる。
【0066】
こうして得られた本発明の積層体において、上記プライマー層の厚さは特に限定されないが、例えば0.01〜1μmの範囲とすることができる。
またハードコート層は、前記有機微粒子(c)の平均粒径に比して1〜10/3倍の厚さとなるように設定することが好ましい。例えば前記ハードコート層の厚さは1〜30μmの範囲、好ましくは1〜20μm、より好ましくは3〜10μmである。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
【0068】
(1)スピンコート
装置:ズースマイクロテック社製 スピンコータ LabSpin6TT
(2)ホットプレート
装置:アズワン(株)製 MH−180CS、MH−3CS
(3)UV照射
装置:アイグラフィックス(株)製 アイ紫外硬化装置US5−0401 4kW×1灯
(4)擦傷試験
装置:新東科学(株)製 往復摩耗試験機 TRIBOGEAR TYPE:30S
荷重:250g/cm
走査速度:3m/分
(5)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
装置:東ソー(株)製 HLC−8220GPC
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)GPC KF−804L、GPC KF−805L
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI
(6)膜厚
装置:(株)ニコン製 デジタル測長機 デジマイクロ MH−15M + カウンタTC−101A
(7)光沢度
装置:コニカミノルタ(株)製 光沢計 GM−268Plus
測定角度:60度
(8)全光線透過率、ヘーズ
装置:日本電色工業(株)製 ヘーズメーター NDH5000
(9)接触角
装置:協和界面科学(株)製 DropMaster DM−501
測定温度:20℃
【0069】
また、略記号は以下の意味を表す。
PFPE1:両末端にポリ(オキシアルキレン)基(繰返し単位数8〜9)を介してヒドロキシ基を有するパーフルオロポリエーテル[ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 Fluorolink 5147X]
BEI:1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート[昭和電工(株)製 カレンズ(登録商標)BEI]
DBTDL:ジラウリン酸ジブチル錫[東京化成工業(株)製]
HTES:トリエトキシ(ヘキシル)シラン[信越化学工業(株)製 信越シリコーン(登録商標)KBE−3063]
MPTES:トリエトキシ(3−メタクリロイルオキシプロピル)シラン[信越化学工業(株)製 信越シリコーン(登録商標)KBE−503]
TEOS:テトラエトキシシラン[モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(同)製 TSL8124]
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート混合物[日本化薬(株)製 KAYALAD DPHA]
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート混合物[新中村化学工業(株)製 NKエステル A−TMM−3LM−N]
UA:6官能 脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー[ダイセル・オルネクス(株)製 EBECRYL(登録商標)5129]
SM2:パーフルオロポリエーテル構造を有するUV反応型フッ素系表面改質剤[DIC(株)製 メガファック(登録商標)RS−75、有効成分40質量%MEK/MIBK溶液]
FP1:架橋ポリメタクリル酸メチル真球状粒子[積水化成品工業(株)製 テクポリマー(登録商標)SSX−105、平均粒子径5μm]
FP2:架橋ポリメタクリル酸メチル真球状粒子[積水化成品工業(株)製 テクポリマー(登録商標)SSX−103、平均粒子径3μm]
FP3:架橋ポリメタクリル酸メチル真球状粒子[積水化成品工業(株)製 テクポリマー(登録商標)SSX−102、平均粒子径2μm]
I2959:2−ヒドロキシ−1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン[BASFジャパン(株)製 IRGACURE 2959]
EPA:p−ジメチルアミノ安息香酸エチル[日本化薬(株)製 KAYACURE EPA]
EtOH:エタノール
MEK:メチルエチルケトン
MIBK:メチルイソブチルケトン
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0070】
[製造例1]両末端にポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合を介してアクリロイル基を有するパーフルオロポリエーテルSM1の製造
スクリュー管に、PFPE1 1.05g(0.5mmol)、BEI 0.26g(1.0mmol)、DBTDL 10mg(0.016mmol)、及びMEK 1.30gを仕込んだ。この混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で24時間撹拌した。この反応混合物をMEK 3.93gで希釈して、目的化合物であるSM1の20質量%MEK溶液を得た。
得られたSM1のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3,400、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は1.2であった。
【0071】
[製造例2−1〜2−3]プライマー組成物(プライマー層形成用組成物)の調製
反応フラスコに、表1の記載に従ってアルコキシシラン及びエタノールを仕込み、窒素気流下で5分間撹拌し、アルコキシシラン/エタノール溶液を調製した。この溶液へ、表1の記載に従って別途調製したシュウ酸−水/エタノール溶液を、10分間かけて滴下した。この溶液を30分間撹拌後、内液が還流するまで(およそ80℃)加熱し1時間撹拌した。反応混合物を室温(およそ23℃)まで冷却し、シロキサンオリゴマー濃度40質量%のプライマー組成物(PR1〜PR3)を得た。
得られたシロキサンオリゴマーのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mw及び分散度:Mw/Mnは、それぞれ、1,400、1.1(PR1)、1,500、1.1(PR2)、1,500、1.1(PR3)であった。
【0072】
【表1】
【0073】
[製造例3−1〜3−4]ハードコート組成物(硬化性組成物)の調製
表2の記載に従って以下の各成分を混合し、固形分濃度40質量%のハードコート組成物(HC1〜HC4)を調製した。なお、ここで固形分とは溶媒以外の成分を指す。また、表中、[部]とは[質量部]を表す。
(1)多官能モノマー:DPHA 50質量部、UA 30質量部、及びPETA 20質量部
(2)表面改質剤:表2に記載の表面改質剤 1質量部(固形分又は有効成分換算)
(3)有機微粒子:表2に記載の有機微粒子を表2に記載の量
(4)重合開始剤:I2959 5質量部
(5)重合促進剤:EPA 0.1質量部
(6)溶媒:PGME 表2に記載の量
【0074】
【表2】
【0075】
[実施例1〜8、比較例1〜3]
表3に記載の固形分濃度(シロキサンオリゴマー濃度)になるようにPGMEで希釈したプライマー組成物を、ガラス基板(10cm×10cm、厚さ0.7mm)上に、スピンコート(1,000rpm×30秒間)し塗膜を得た。この塗膜を120℃のホットプレートで1時間加熱することで、表3に示した厚さのプライマー層(硬化膜)を形成した。
このプライマー層上に、表3に記載のハードコート組成物をスピンコート(表3に記載の回転数×30秒間)し塗膜を得た。この塗膜を120℃のホットプレートで3分間乾燥させ溶媒を除去した。得られた膜を、窒素雰囲気下、露光量500mJ/cmのUV光を照射し露光することで、表3に示した厚さのハードコート層(硬化膜)を有するハードコート積層体を作製した。
【0076】
得られたハードコート積層体の、防眩性、密着性、耐擦傷性、全光線透過率、ヘーズ、並びに水及びオレイン酸の接触角を評価した。防眩性、密着性、耐擦傷性、及び接触角の評価の手順を以下に示す。また、結果を表4に併せて示す。
【0077】
[防眩性]
得られたハードコート積層体を光沢度Gs(60°)が11.8である黒色の台に乗せ、ハードコート層表面の光沢度Gs(60°)を測定し、以下の基準に従い評価した。なおハードコート積層体として実際の使用を想定した場合、少なくともBであることが求められ、Aであることが望ましい。
A:Gs(60°)≦120
B:120<Gs(60°)≦125
C:Gs(60°)>125
【0078】
[密着性]
ハードコート層に、ガイド[コーテック(株)製 クロスカットガイドCCI−2]を使用して25マス(5×5、2mm間隔)の直角格子パターンの切込みを入れ、幅18mmの透明テープ[ニチバン(株)製 セロテープ(登録商標)CT−18]を用いたクロスカット法(JIS 5600−5−6に準拠)を用い、以下の基準に従い評価した。
A:25マス全てが剥離しない
B:1〜11マスが剥離
C:12マス以上が剥離
【0079】
[耐擦傷性]
ハードコート層表面を、往復摩耗試験機に取り付けたスチールウール[ボンスター販売(株)製 ボンスター(登録商標)#0000(超極細)]で250g/cmの荷重を掛けて1,000往復擦り、その擦った部分に油性マーカー[ゼブラ(株)製 マッキー極細(青)、細側を使用]で線を描いた。続けて描いた線を不織布ワイパー[旭化成(株)製 BEMCOT(登録商標)M−1]で拭き取り、傷の程度を目視で確認し以下の基準に従い評価した。なおハードコート積層体として実際の使用を想定した場合、少なくともBであることが求められ、Aであることが望ましい。
A:傷がつかず油性マーカーで描いた線がきれいに拭き取れる
B:かすかに傷がつくが油性マーカーで描いた線がきれいに拭き取れる
C:油性マーカーのインクが傷に入り込み拭き取れない
【0080】
[接触角]
水又はオレイン酸1μLをハードコート層表面に付着させ、その5秒後の接触角θを5点で測定し、その平均値を接触角値とした。
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
表1乃至表4に示すように、表面改質剤として両末端にポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合基を介して、アクリロイル基を結合するパーフルオロポリエーテルSM1を用いたハードコート層の形成にあたり、プライマー層を設けた実施例1乃至実施例8の積層体1乃至積層体6、積層体10及び積層体11にあっては、防眩性に優れ、密着性及び耐擦傷性も実使用において満足できる品質であり、さらに透明性に優れる積層体となった。
一方、プライマー層に、ラジカル重合性二重結合を有さないシロキサンオリゴマー(本発明の規定から外れるシロキサンオリゴマー)を使用した場合(比較例1)、そしてプライマー層を設けない場合(比較例2)、ハードコート層のガラス基板への密着性が低く、また耐擦傷性に劣る結果となった。
また、ハードコート層に、表面改質剤としてパーフルオロポリエーテル構造を有するUV反応型フッ素系表面改質剤SM2を用いた場合(比較例3)、防眩性や密着性は満足する結果が得られるものの、所望の耐擦傷性を得られなかった。
【0084】
以上、実施例の結果に示すように、表面改質剤として特定のパーフルオロポリエーテルを採用したハードコート層を有する積層体において、ラジカル重合性二重結合を有する特定のシロキサンオリゴマーを含む材料の硬化物からなるプライマー層を設けることにより、防眩性、耐擦傷性、そして基板への密着性のすべての性能を満足する積層体を得ることができる。