(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
モリブデンを含む金属は、モリブデン含有アルミニウム、モリブデン含有鉄、モリブデン含有ニッケル、モリブデン含有銅、モリブデン含有銀、モリブデン含有チタン、モリブデン含有クロム、及びモリブデン含有タンタルの少なくとも一つ以上の金属から成ること
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のリチウム空気二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
〔リチウム空気二次電池の概要〕
図1は、本実施形態に係るリチウム空気二次電池の基本的な構成図である。同図に示すように、リチウム空気二次電池100は、一般的によく知られたリチウム空気二次電池と同様に、ガス拡散型の空気極101(正極)と、リチウムを含む負極102と、空気極101と負極102とに挟まれて配置された電解質103を備える。
【0013】
空気極101の一方の面は大気に曝され、他方の面は電解質103と接する。また、負極102の電解質103の側の面は、電解質103と接する。なお、電解質103は、電解液又は固体電解質のどちらであってもよい。
【0014】
電解液とは、電解質が液体形態である場合をいう。また、固体電解質とは、電解質がゲル形態又は固体形態である場合をいう。
【0015】
以下、本実施形態のリチウム空気二次電池100の各構成要素について説明する。
【0016】
(I)空気極
本実施形態では、空気極101が、モリブデンを含む金属の多孔体で構成される。モリブデンを含む金属は、モリブデン含有アルミニウム、モリブデン含有鉄、モリブデン含有チタン、モリブデン含有ニッケル、モリブデン含有クロム、モリブデン含有珪素、モリブデン含有錫、モリブデン含有亜鉛、モリブデン含有ルテニウム、モリブデン含有銅、モリブデン含有銀、モリブデン含有パラジウム、モリブデン含有金、モリブデン含有白金、モリブデン含有コバルト、及びモリブデン含有タンタルの少なくとも一つ以上の金属から成る。 つまり、空気極101は、例えば、モリブデン含有アルミニウムとモリブデン含有鉄を混合したものでもよい。又は、それらの合金で有ってもよい。
【0017】
空気極101は、一方の面が大気に触れ、他方の面が電解質103と接している。空気極101の、電解質/電極(モリブデン含有金属多孔体)/ガス(酸素)の三相界面サイトにおいて電極反応が進行する。例えば、電解質103を有機電解液(固体電解質に有機電解液を含浸したものを含む)から構成した場合、空気極101の中に有機電解液が浸透し、同時に大気中の酸素ガスが供給され、電解液−電極−ガス(酸素)が共存する三相界面サイトが形成される。空気極101が高活性であれば、酸素還元(放電)および酸素発生(充電)がスムーズに進行し、電池性能は大きく向上することになる。
【0018】
空気極101上での電極反応は次のように表すことができる。
【0019】
2Li
++(1/2)O
2+2e
- → Li
2O・・・(1)
2Li
++O
2+2e
- → Li
2O
2・・・(2)
式(1)、式(2)中のリチウムイオン(Li
+)は、負極102から電気化学的酸化により電解質103中に溶解し、この有機電解液中を空気極101表面まで移動してきたものである。また、酸素(O
2)は、大気(空気)中から空気極101内部に取り込まれたものである。なお、負極102から溶解する材料(Li
+)、空気極101で析出する材料(Li
2O
2)、および空気(O
2)を
図1に構成要素と共に示している。
【0020】
次に、空気極101について、より詳細に説明する。上述した様に、空気極101は、モリブデンを含む金属の多孔体(Moドープポーラス金属)から成る。モリブデンを含む金属の多孔体は、好ましくは連続した細孔(貫通孔)を備えた共連続多孔構造を有する共連続多孔体であり、好ましくはメソポーラスまたはナノポーラスである三次元網目構造とされているものである。
【0021】
リチウム空気二次電池の電池効率を上げるためには、電極反応を引き起こす三相界面サイトがより多く存在することが望ましい。このような観点から、空気極101には、三相界面サイトが多量に存在することが望ましく、空気極101を構成するモリブデンを含む金属の多孔体の比表面積はなるべく大きい方がよいと考えられる。
【0022】
モリブデンを含む金属の多孔体は、例えば平均孔径が2μm以下であり、比表面積が1m
2/g以上であることが好適である。このようなモリブデンを含む金属の多孔体は、例えば、金属溶融体などで合金の一成分を溶出するデアロイング法を用いて製造することが望ましい。なお、平均孔径は、モリブデンを含む金属の多孔体を走査型電子顕微鏡(SEM)等で拡大観察し、10μm四方(10μm×10μm)あたりの気孔数、および気孔の直径を計測して、「平均孔径=全気孔の直径の合計/気孔数」により平均値を求めた値である。また、比表面積は、N
2吸着によるBET法により求めた比表面積である。
【0023】
空気極101を構成するモリブデンを含む金属の多孔体は、例えば、上述したデアロイング法や焼結法などの周知の方法を用いて製造できる。例えば、焼結法では、モリブデンを含む金属(Moドーブ金属)の微粉末を1500℃以下で焼結させてモリブデンを含む金属の多孔体を製造する。また、デアロイング法は、例えば、モリブデンを含む金属よりも電気化学的に卑な金属を含む合金を酸性水溶液に浸漬し、合金中の卑な金属を溶出することで、モリブデンを含む金属の多孔体を製造する。
【0024】
デアロイング法において、脱成分媒体として酸性水溶液ではなく、金属溶融体を脱成分媒体に使用することも可能であり、この場合、脱成分はイオン化傾向によって限定されるものではない。具体的には、例えば、チタン(Ti)とモリブデン(Mo)と銅(Cu)の合金シートをマグネシウム(Mg)の溶融体に1〜30分浸漬し、引き上げて凝固し、凝固したシートを硝酸水溶液(HNO
3)に浸漬し、残ったMoドーブポーラスTiを洗浄後乾燥することで、モリブデンを含む金属の多孔体シートを得ることができる。必要に応じて、得られた多孔体シートを、打ち抜き刃、レーザーカッタなどなどにより所望の直径(例えば23mm)の円形に切り抜いて空気極101とすればよい。
【0025】
なお、モリブデン含有チタンに限らず、上述した様に、モリブデン含有アルミニウム、モリブデン含有鉄、モリブデン含有ニッケル、モリブデン含有クロム、モリブデン含有珪素、モリブデン含有錫、モリブデン含有亜鉛、モリブデン含有ルテニウム、モリブデン含有銅、モリブデン含有銀、モリブデン含有パラジウム、モリブデン含有金、モリブデン含有白金、モリブデン含有コバルト、及びモリブデン含有タンタルの少なくとも一つ以上の金属から成る。また、上記モリブデンを含む金属の合金の多孔体を用いてもよい。つまり、空気極101は、上記の金属を混合したものでもよいし、上記の金属の合金で有ってもよい。
【0026】
(II)空気極の触媒
次に、空気極101の触媒について説明する。空気極101に、酸素還元(放電)および酸素発生(充電)の両反応に対して高活性な金属触媒または金属酸化物触媒を触媒として加える(担持させる)ことで、さらに高性能な二次電池として機能させることができる。
【0027】
触媒は、例えば、チタン、バナジウム(V)、クロム(C、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、プラセオジム(Pr)、金(Au)、白金(Pt)、セリウム(Ce)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、タンタル(Ta)、および錫(Sn)の少なくとも1つ以上の金属、又は少なくとも一つ以上の当該金属の酸化物(金属酸化物)を含む。この酸化物は、水分子を含む水和物であってもよい。
【0028】
特に、ルテニウム、酸化ルテニウム(RuO
2)が好ましい。ルテニウムや酸化ルテニウムを触媒として用いることで、リチウム空気二次電池の性能が高まる。空気極101の触媒とするルテニウムは、正極活物質である酸素との相互作用が強く、多くの酸素種を表面上に吸着することができる。また、酸化ルテニウムは、ルテニウムが、+4、+3などの価数を有するイオンで存在しうる。また、これらの酸化物を合成する際の条件によっては、内部に酸素を取り込むことができる空孔(酸素空孔)が存在する場合もある。このような酸化ルテニウムもまた、正極活物質である酸素との相互作用が強く、多くの酸素種を酸化物表面上に吸着もしくは酸素空孔内に貯蔵することができる。
【0029】
このように、触媒に吸着された、または酸素空孔内に吸蔵された酸素種は、上記式(1)および式(2)の酸素源(活性な中間反応体)として酸素還元反応に使用され、上記反応が容易に進むようになる。また、式(1)および式(2)の逆反応である充電反応に対しても、上記のルテニウムなどの金属(または金属酸化物)は活性を有している。従って、電池の充電に対応する空気極101上での酸素発生反応も効率よく進行する。このように、ルテニウムなどの金属や酸化ルテニウムなどの金属酸化物は、触媒として有効に機能する。
【0030】
(III)空気極の作製
次に、空気極101の作製について説明する。以下では、触媒としてルテニウムまたは酸化ルテニウムを用いた場合を例に説明する。
【0031】
例えば、モリブデンを含む金属の多孔体シートを、ルテニウム塩化物、ルテニウム硝酸塩などの水溶液に浸漬してこれら水溶液をシートに含浸させ、この後、水溶液を蒸発させて固化することで、ルテニウムからなる触媒が担持した金属多孔体からなる空気極101が得られる。ルテニウムからなる複数の微粒子が、金属多孔体(空気極101)の表面に担持された状態となる。微粒子は、粒径が1〜50nm程度とするのが好ましい。さらに好ましくは、微粒子の粒径を2〜10nmとするとよい。
【0032】
次に、触媒を酸化ルテニウムとすることについて説明する。例えば、上述した様に空気極101に担持させたルテニウム粒子を、酸化させることで酸化ルテニウムとすればよい。金属ルテニウムの酸化は、周知の方法で行えばよい。例えば、ルテニウムが表面に担持されているモリブデンを含む金属の多孔体を、大気中で熱処理することで、ルテニウムを酸化することができる。また、ルテニウムが表面に担持されているモリブデンを含む金属の多孔体を、高温高圧下の水(H
2O)中で処理(水熱合成)することで、ルテニウムを酸化することができる。また、酸化剤で酸化することで、ルテニウムを酸化することができる。酸化剤による酸化が望ましい。
【0033】
酸化剤で酸化することで得られたモリブデンを含む金属の多孔体表面の酸化ルテニウムは、結晶化が進んでいないアモルファス状態である。このアモルファス状態の前駆体を、500℃程度の高温熱処理することで、結晶性の酸化ルテニウムとすることができる。このような結晶性の酸化ルテニウムは、空気極101の電極触媒として用いた場合においても高い性能を示す。
【0034】
上述のとおり、結晶性の酸化ルテニウムは高い活性を示すが、高温熱処理で結晶化させた酸化ルテニウムは、表面積が著しく低下することがあり、粒子の凝集により粒子径も100nm程度となることがある。また、特に、高温熱処理で結晶化した酸化ルテニウムは、粒子が凝集するため、モリブデンを含む金属の多孔体上に高分散で触媒を担持させることが困難なことがある。このため、十分な触媒効果を得るために、空気極101中に酸化ルテニウムを大量に添加しなければならない場合があり、コストが不利になることがある。
【0035】
一方、上記のアモルファス状の前駆体を100〜200℃程度の比較的低温で乾燥した場合には、前駆体の粒子は、アモルファス状態を維持しつつ、粒子中には付着水が存在する水和物[RuO
2・nH
2O]となる。なお、nは、1molのRuO
2に対するH
2Oのモル数である。このような低温乾燥により得られた、酸化ルテニウムの水和物を触媒として用いることができる。
【0036】
上述したアモルファス状の酸化ルテニウムは、焼結がほとんど進んでいないため、大きな表面積を有し、粒子径も10nm程度と非常に小さい値を示す。これは触媒として好適であり、本願の電極触媒として用いた場合にも、優れた電池性能を得ることができる。
【0037】
空気極101では、電極触媒表面に三相界面サイトが多量に生成されることが重要であり、使用する触媒は高比表面積であることが望ましい。このため、ルテニウムを担持させるために用いるルテニウム塩化物、ルテニウム硝酸塩などの水溶液には、界面活性剤を添加して用いることが好ましい。モリブデンを含む金属の多孔体の表面に吸着する疎水基と金属イオンが吸着する親水基を有する界面活性剤を用いることで、モリブデンを含む金属の多孔体の表面に金属イオンを高い分散度で吸着させることができるようになる。
【0038】
上記界面活性剤は、分子内にモリブデンを含む金属の多孔体表面に吸着する疎水基と金属イオンが吸着する親水基を有していれば特に限定されないが、非イオン系の界面活性剤が好ましい。例えば、エステル型のものとして、ラウリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等、エーテル型のものとして、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等、エステルエーテル型のものとして、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルポリエチレングリコール等、アルカノールアミド型のものとして、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、コカミドDEA等、高級アルコールのものとして、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等、ポロキサマー型のものとして、ポロキサマージメタクリレート等を挙げることができる。
【0039】
界面活性剤の水溶液の濃度は、0.1〜20g/Lであればよい。また、界面活性剤を加えたルテニウム塩化物、ルテニウム硝酸塩などの水溶液は、例えば、室温〜50℃とし、また、モリブデンを含む金属の多孔体の浸漬時間は、1〜48時間とすればよい。このようにして、ルテニウムからなる触媒を担持した金属多孔体は、触媒活性をさらに高めることが可能である。
【0040】
以上のように、モリブデンを含む金属の多孔体に、ルテニウムからなる触媒を担持させることにより、電極の活性が向上し、リチウム空気二次電池の空気極として用いた場合、高いサイクル性能を示す。特に、空気極101を構成するモリブデンを含む金属の多孔体は、微細な開気孔が存在する。この微細な開気孔が存在するモリブデンを含む金属の多孔体にルテニウムなどの触媒が担持されれば、正極活物質である酸素との相互作用を高めることができ、かつ、多くの酸素種を電極表面上に吸着することができる。これにより、上述した三相界面サイトが効率よく形成され、酸素還元(放電)および酸素発生(充電)がスムーズに進行して電池性能が大きく向上する。
【0041】
(IV)負極
次に、負極102について説明する。負極102は負極活性物質から構成する。この負極活性物質は、リチウム空気二次電池の負極材料として用いることができる材料であれば特に制限されない。例えば、金属リチウムを挙げることができる。あるいは、リチウムイオンを吸蔵および放出することができる物質である、リチウムと、シリコンまたは錫との合金、あるいはLi
2.6Co
0.4Nなどのリチウム窒化物を例として挙げることができる。
【0042】
なお、シリコンまたは錫の合金を負極102として用いる場合、負極102を作成する時にリチウムを含まないシリコンまたは錫などを用いることもできる。しかし、この場合には、リチウム空気二次電池の作製に先立って、化学的手法または電気化学的手法(例えば、電気化学セルを組んで、リチウムとシリコンまたは錫との合金化を行う方法)によって、シリコンまたは錫が、リチウムを含む状態にあるように処理しておく必要がある。
【0043】
具体的には、作用極にシリコンまたは錫を含み、対極にリチウムを用い、有機電解質中で還元電流を流すことによって合金化を行うなどの電気化学的な処理をしておくことが好ましい。
【0044】
負極102は、従来の方法で形成することができる。例えば、リチウム金属を負極102とする場合には、複数枚の金属リチウム箔を重ねて所定の形状に成形することで、負極102を作製すればよい。
【0045】
金属リチウムから構成した負極102における放電時の反応は、以下のように表すことができる。
【0046】
Li→Li
++e
−…(3)
一方、充電時の負極102においては、式(3)の逆反応であるリチウムの析出反応が起こる。
【0047】
次に、電解質103について説明する。電解質103は、空気極101(正極)および負極102間でリチウムイオンの移動が可能な物質であればよい。例えば、リチウムイオンを含む金属塩を溶解した非水溶媒(有機溶媒)を電解質103とすればよい。具体的には、リチウムイオンを含む金属塩としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド[(CF
3SO
2)
2NLi;LiTFSI]などのリチウムイオンを含む金属塩を挙げることができる。
【0048】
また、溶媒としては、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸メチルプロピル(MPC)、炭酸メチルイソプロピル(MIPC)、炭酸メチルブチル(MBC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルプロピル(EPC)、炭酸エチルイソプロピル(EIPC)、炭酸エチルブチル(EBC)、炭酸ジプロピル(DPC)、炭酸ジイソプロピル(DIPC)、炭酸ジブチル(DBC)、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸1,2−ブチレン(1,2−BC)などの炭酸エステル系溶媒、1,2−ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)などのエーテル系溶媒、γ−ブチロタクトン(GBL)などのラクトン系溶媒、またはジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド系溶媒、あるいはこれらの中から2種類以上を混合した溶媒を挙げることができる。
【0049】
また、電解質103を構成する他の材料として、75Li
2S・25P
2S
5などのガラス状物質、Li
14ZnGe
4O
16などのLISICON(Li
+ Super Ionic Conductor)などのリチウムイオンを通す固体電解質がある。また、上述した有機電解質とポリエチレンオキシド(PEO)をコンポジット化した物質などのリチウムイオンを通すポリマー電解質なども電解質103を構成する材料として挙げられる。電解質103を構成する材料は、これらに限定されず、リチウム空気二次電池で従来から使用されるリチウムイオンを通す固体電解質またはリチウムイオンを通すポリマー電解質であれば好適に使用することができる。
【0050】
なお、リチウム空気二次電池は、上記構成に加え、セパレータ、電池ケース、金属メッシュ(例えばチタンメッシュ)などの構造部材、また、リチウム空気二次電池に要求される要素を含むことができる。これらは、従来のものを使用することができる。
〔リチウム空気二次電池の構成〕
次に、本実施形態のリチウム空気二次電池100の構成について説明する。
【0051】
図2は、本実施形態のリチウム空気二次電池100のより詳細な構成例を示す断面図である。
【0052】
図2に示すリチウム空気二次電池100は、円柱形のリチウム空気電池であり、空気極101、負極102、電解質103、セパレータ105、空気極支持体115、空気極固定用リング104、負極固定用リング107、負極固定用座金108、負極支持体109、固定ねじ110、Oリング111、空気極端子121、及び負極端子122を備える。
【0053】
空気極101、負極102、電解質103、及びセパレータ105は、円筒形状の空気極支持体115に収容される。空気極支持体115は、円筒内中央部に仕切り151があり、仕切り151により空気極101が配置される第1領域105aと、負極102及びセパレータ105が配置される第2領域105bとに区画されている。また、仕切り151は中央部が開口しており、開口部により第1領域105aと第2領域105bが連通している。
【0054】
液状の電解質103は、仕切り151の開口に配置され、空気極101および塩橋となるセパレータ105に挟まれている。セパレータ105には電解質103が含浸している。なお、セパレータ105の周囲にも電解質103は配置されている。電解質103は、1mol/Lのリチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド/トリエチレングリコールジメチルエーテル[(CF
3SO
2)
2NLi/TEGDME]溶液である。
【0055】
また、空気極101は、ポリテトラフルオロエチレン (PTFE)より構成された空気極固定用リング104と仕切り151とに挟まれて、空気極支持体115の円筒内の第1領域105aに固定されている。空気極固定用リング104の開口内において、空気極101と空気との接触する電極の有効面積は、2cm
2とされている。一方、セパレータ105は、PTFEより構成された負極固定用リング107と仕切り151とに挟まれて、空気極支持体115の円筒内の第2領域105bに固定されている。このようにして、液状の電解質103が、仕切り151の開口において空気極101とセパレータ105との間に封入されている。
【0056】
また、負極102は、負極固定用リング107の内部で、負極固定用座金108が積層され、この上に金属から構成された負極支持体109が被せられている。負極102は、厚さ150μmの4枚の金属リチウム箔が同心円上に重ねられて構成され、負極固定用座金108に圧着されている。負極102は、有効面積が2cm
2とされている。負極支持体109は、固定ねじ110により空気極支持体115に固定されている。また、空気極支持体115と負極支持体109との間には、Oリング111が配置されている。
【0057】
固定ねじ110により空気極支持体115の側に押しつけられている負極支持体109により、負極固定用座金108を介し、負極102がセパレータ105の方向に押圧され、セパレータ105に圧接されている。
【0058】
なお、空気極支持体115は、金属から構成されているが、図示していないが、PTFEに被覆され、電解質103,セパレータ105などと絶縁分離されている。なお、空気極101と空気極支持体115が接触する部分は、電気的接触をとるためにPTFEによる被覆を施さない。また、金属から構成された固定ねじ110も、図示していないが、PTFEに被覆され、空気極支持体115と負極支持体109とが、電気的に分離された状態としている。
【0059】
〔リチウム空気二次電池の作製手順〕
続いて、
図2のリチウム空気二次電池100の作製手順について説明する。
【0060】
リチウム空気電池セルは、露点が-60℃以下の乾燥空気中で以下手順で作製する。
【0061】
以降において説明する実験例に記載するようにして作製した空気極101を、空気極支持体115の第1領域105aにおいて、仕切り151に接する状態に配置して空気極固定用リング104で固定した。空気極101と空気極支持体115が接触する部分は、電気的接触をとるためPTFEによる被覆を施していない。
【0062】
次に、空気極支持体115の第2領域105bにおいて、仕切り151に接する状態にセパレータ105を配置した。次に、負極固定用リング107に負極102として厚さ150μmの4枚の金属リチウム箔(有効面積:2cm
2)を圧着した。次に、負極固定用リング107を、空気極支持体115の第2領域105bに配置し、この中央部に、負極102が圧着された負極固定用リング107を勘合した。
【0063】
次に、空気極101と負極102との間に電解質103を構成する電解液(1mol/Lのリチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド/トリエチレングリコールジメチルエーテル)を充填し、この状態で、空気極支持体115の底面にOリング111を配置して負極支持体109を被せ、固定ねじ110で空気極支持体115に固定した。この後、空気極端子121を空気極支持体115に接続して固定し、負極端子122を負極支持体109に接続して固定した。
【0064】
作製したリチウム空気二次電池100の電池性能を測定した。
【0065】
〔電池のサイクル試験〕
次に、電池のサイクル試験について説明する。電池のサイクル試験は、充放電測定システム(Bio Logic社製)を用いて、空気極101の面積当たりの電流密度で0.1mA/cm
2を通電し、開回路電圧から電池電圧が、2.0Vに低下するまで放電電圧の測定を行った。電池の充電試験は、放電時と同じ電流密度で、電池電圧が、4.0Vに達するまで行った。電池の充放電試験は、通常の生活環境下で行った。充放電容量は空気極重量当たりの値(mAh/g)で表した。
【0066】
本実施形態に係るリチウム空気二次電池100の空気極101を変えて、電池性能を評価した実験例1〜3について説明する。
【0067】
〔実験例1〕
はじめに、実験例1について説明する。実験例1は、モリブデンを含む金属の多孔体を空気極101として使用し、触媒を用いない例である。空気極101を、以下のようにして合成した。以下の説明では、代表として、モリブデンを含む金属としてモリブデン含有チタンを用いる場合について説明するが、後述する合金材料および液体金属を他の材料に変えることで、他のモリブデンを含む金属による多孔体を作製することができる。
【0068】
まず、チタンおよびモリブデンおよび銅粉末を原子比で29.7:0.3:70になるように混合し、アーク溶製することでチタンモリブデン銅合金(Ti
29.7Mo
0.3Cu
70)板を得た。得られたチタンモリブデン銅合金板を圧延機で、厚さ50μmのチタンモリブデン銅合金シートに加工した。また、このシートに、ハンドリング用のチタンワイヤーを2本スポット溶接した。
【0069】
次に、ヘリウム(He)雰囲気中で、700℃のマグネシウム液体中に、このチタンモリブデン銅合金シートを5分浸漬し、銅成分の選択的溶出を促して、チタンの多孔体を形成した。引き上げて凝固したチタンの多孔体を硝酸水溶液(HNO
3)に浸漬し、マグネシウム−銅(Mg−Cu)成分を溶解除去した。残ったモリブデン含有チタンの多孔体は、硝酸水溶液が残留しないように、蒸留水による洗浄を5回繰り返し、この後、60℃で一晩乾燥した。得られたシートについて、X線回折(XRD)測定、ICP測定、SEM観察、BET比表面積測定を行い評価した。
【0070】
上記手法で作製したモリブデン含有チタンの多孔体シートは、膜厚40μmであり、XRD測定よりチタン(Ti,JCPDSカードNo.00−044−1294)単相であることを確認し、ICP測定より、TiとMoの組成ずれが生じていないことを確認した。また、SEM観察により、平均孔径100nmであることを確認した。また、BET法によりチタンの多孔体の比表面積を測定したところ、10m
2/gであった。
【0071】
このようなモリブデン含有チタンの多孔体シートを用いて空気極101を作製した。このモリブデン含有チタンの多孔体を直径23mmの円形に切り抜き、ガス拡散型の空気極101を得た。
【0072】
〔実験例2〕
次に、実験例2について説明する。実験例2では、金属またはこの酸化物を触媒として担持させたモリブデンを含む金属の多孔体を空気極として使用する例である。以下の説明では、代表として、モリブデンを含む金属としてモリブデン含有チタンを用い、触媒として酸化ルテニウムを用いる場合について説明する。なお、上述した様に、他のモリブデンを含む金属による多孔体を作製することができる。また、ルテニウムを任意の金属に変更することで、任意の金属酸化物を触媒としてモリブデンを含む金属の多孔体に担持させることができる。また、酸化の工程を行わないことで、任意の金属を触媒としてモリブデンを含む金属多孔体に担持させることができる。
【0073】
モリブデン含有チタンの多孔体は、上述した実験例1と同様にすることで作製した。次に、界面活性剤であるポロキサマーのブロック共重合体のポロキサマージメタクリレート(Pluronic−F127、Aldrich製)を5mg/mlの濃度で蒸留水に溶解させ、この溶液にモリブデン含有チタンの多孔体を浸漬させ、振とう器で24時間攪拌し、多孔体の細孔内に界面活性剤を含浸させた。次いで、上記の溶液に、0.1mol/Lの塩化ルテニウム(RuCl
3;フルヤ金属社製)水溶液を加えて振とう器で24時間攪拌し、多孔体内部に塩化ルテニウム塩を含浸させた。この後、モリブデン含有チタンの多孔体を50℃で蒸発乾固し、アルゴン雰囲気中300℃で熱処理し、界面活性剤を除去して、金属ルテニウムを担持したモリブデン含有チタンの多孔体を得た。
【0074】
XRD測定により、得られたルテニウムはルテニウム単相(Ru,PDFカードNo.01−070−0274)であることを確認した。また、TEM観察を行ったところ、モリブデン含有チタンの多孔体の孔内まで、平均粒径4nmの金属ルテニウム粒子が均一に析出していることを確認した。なお、上記平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)等で拡大し、1μm四方(1μm×1μm)あたりの粒子の直径を計測して、平均値を求めた値である。
【0075】
この金属ルテニウム微粒子を担持するモリブデン含有チタンの多孔体に、徐々に過酸化水素水(30%)を滴下し、金属ルテニウム微粒子を担持するモリブデン含有チタンの多孔体全体を過酸化水素水で浸らせる。ガス発生が終了した後、蒸留水による洗浄を5回繰り返した。これらの処理により、モリブデン含有チタンの多孔体に担持している金属ルテニウム微粒子が酸化し、酸化ルテニウムとなる。
【0076】
洗浄後、アルゴン雰囲気500℃で6時間熱処理した。このようにして得られた実験例2の酸化ルテニウム担持モリブデン含有チタン多孔体を、XRD測定、TEM観察を行い、評価した。XRD測定より、酸化ルテニウム(RuO
2,PDFファイルNo.40−1290)のピークを観察することができた。モリブデン含有チタンの多孔体に担持された触媒は、酸化ルテニウム単相であることを確認した。また、TEMにより酸化ルテニウムは、共連続体の表面に平均粒径100nmの粒子状で析出しているのが観察された。
【0077】
実験例2は、この酸化ルテニウムを担持したモリブデン含有チタンの多孔体を空気極101に用いた。
【0078】
〔実験例3〕
次に、実験例3について説明する。実験例3は、酸化ルテニウムの水和物を触媒として担持させたモリブデンを含む金属の多孔体を空気極として使用する例である。モリブデン含有チタンの多孔体は、上述した実験例1,2と同様にすることで作製した。また、多孔体への触媒担持において、実験例2では、アルゴン雰囲気500℃で6時間熱処理する工程を、実験例3ではアルゴン雰囲気100℃で6時間熱処理する工程に変え、酸化ルテニウムを水和物とした。
【0079】
XRD測定より、得られたモリブデン含有チタンの多孔体に担持している酸化ルテニウムは水和物となっているアモルファスであることを確認した。酸化ルテニウム水和物(RuO
2・nH
2O)は、TG−DTA測定よりn=0.7であることが分かった。
【0080】
TEM観察を行ったところ、金属ルテニウムを担持したモリブデン含有チタンの多孔体と同様、孔内まで複数の酸化ルテニウム水和物粒子が、平均粒径5nmで均一に析出していることを確認した。
【0081】
上記の作製手順により、電極触媒である酸化ルテニウム水和物(RuO
2・0.7H
2O)を、モリブデン含有チタンの多孔体上に高分散で担持できる。また、このような高分散担持に伴い、放電時の過酸化リチウムの析出サイト増加、及び酸素の吸着能の向上が実現され、各種特性の改善が期待できる。
【0082】
実験例3は、上述した様に作製した酸化ルテニウム水和物(RuO
2・0.7H
2O)を触媒として担持しているモリブデン含有チタンの多孔体を空気極101として用いた。
【0083】
〔比較例1〕
次に、比較例1について説明する。比較例1では、空気極用の電極に従来から使用されている材料であるカーボン(ケッチェンブラックEC600JD)を用い、また、触媒として金属ルテニウムを用いた例を示す。この空気極を用いたリチウム空気二次電池セルを以下のようにして作製した。
【0084】
金属ルテニウム粉末、ケッチェンブラック粉末、およびPTFE粉末を50:30:20の重量比で、らいかい機を用いて十分に粉砕混合してロール成形し、厚さ0.5mmのシート状電極を作製した。このシート状電極を直径23mmの円形に切り抜き、チタンメッシュ上にプレスすることにより、ガス拡散型の空気極101を比較例1とした。
【0085】
〔電池性能の評価結果〕
実験例1のリチウム空気二次電池の初回の放電と充電曲線を
図3に示す。
図3の横軸は充放電容量(mAh/g)、縦軸は電池電圧(V)である。充電曲線を実線、放電曲線を破線で示す。
【0086】
図3に示すように、モリブデン含有チタンの多孔体を空気極に用いた実験例1では、平均放電電圧は2.7V、放電容量は545mAh/gであることが分かる。また、初回の充電容量は、放電容量とほぼ同様の540mAh/gであり、実験例1のリチウム空気二次電池は可逆性に優れていることが分かる。
【0087】
表1に、放電容量のサイクル依存性を示す。
図4にそのグラフを示す。
図4の横軸は充放電サイクル回数(回)、縦軸は放電容量(mAh/g)である。
図4において、実験例1を●、実験例2を◆、実験例3を▲、及び比較例を□で表す。
【0089】
実験例1では、充放電サイクルを100回繰り返しても、比較例1の様な放電容量の急激な減少は見られない(
図4:●)。また、充電時の電圧は、凡そ3.4Vに平坦部(
図3)が見られ、非特許文献1のリチウム空気二次電池よりも低い値を示す。
【0090】
実験例2の放電容量は、初回で627mAh/gを示し、実験例1の触媒として酸化ルテニウムを担持していないモリブデン含有チタンの多孔体を用いた場合より大きい値であった。また、実験例2のリチウム空気二次電池は、充放電のサイクルを繰り返しても安定した挙動を示すことが分かった(
図4:◆)。
【0091】
実験例3の放電容量は、初回で702mAh/gを示した。これは、実験例2のような付着水を含有していない酸化ルテニウムを触媒に用いた場合より大きい値であった。また、サイクルに関しても安定して作動することを確認した(
図4:▲)。
【0092】
比較例1の初回放電容量は、約800mAh/gと実験例1,2よりも大きな値を示した。しかしながら、充放電サイクルを繰り返すと、実験例1,2とは異なり放電容量の極端な減少が見られ、20サイクル後の容量維持率は初回の約13%であった(
図4:□)。
【0093】
表2に、充放電サイクルを繰り返して充放電電圧の推移を測定した結果を示す。
【0095】
実験例1では、充放電のサイクルを繰り返すことにより若干の放電容量の低下が見られるが、安定した放電容量を示す。
【0096】
実験例2では、実験例1よりも過電圧の減少が見られ、充放電のエネルギー効率が改善された。また、充放電サイクルを繰り返しても顕著な過電圧の増加が見られず安定に作動することが確認できた。
【0097】
この実験例2における特性の向上は、非常に大きな活性を有した酸化ルテニウムを電極触媒として用いることにより、酸化還元(放電)及び酸素発生(充電)の両反応が空気極101においてスムーズに行われたことによると考えられる。
【0098】
実験例3では、実験例2と同様に過電圧の減少が見られ、充放電のエネルギー効率が改善されていることが分かる。また、充放電サイクルを繰り返しても顕著な過電圧の増加が見られず安定に作動することが確認できた。
【0099】
比較例1では、実験例1〜3よりも充電電圧が高い値である。また、サイクルを繰り返すと過電圧は増加し、20回目でサイクルを繰り返すことが困難になった。
【0100】
表3に、モリブデンを含む金属の多孔体を空気極(実験例1)としたリチウム空気二次電池のモリブデン材料を変えて測定した放電容量のサイクル依存性を示す。
【0101】
モリブデンは、次の何れかである。モリブデン含有アルミニウム、モリブデン含有鉄、モリブデン含有チタン、モリブデン含有ニッケル、モリブデン含有クロム、モリブデン含有珪素、モリブデン含有錫、モリブデン含有亜鉛、モリブデン含有ルテニウム、モリブデン含有銅、モリブデン含有銀、モリブデン含有パラジウム、モリブデン含有金、モリブデン含有白金、モリブデン含有コバルト、及びモリブデン含有タンタルである。
【0103】
表3に示すように、サイクル数が増加することで放電容量の低下は見られるが、空気極にカーボンを用いた比較例1に比べれば良好な特性を示す。このように、モリブデンを含む金属の多孔体は、リチウム空気二次電池の空気極として優れた活性を有していることが確認できた。
【0104】
表4に、実験例2の他の金属酸化物を触媒として担持させたモリブデンを含む金属の多孔体を空気極とした場合の放電容量のサイクル依存性を示す。他の金属酸化物を以下に示す。
【0105】
酸化チタン(TiO
2/MoドーブTi)、酸化バナジウム(V
2O
5/MoドーブTi)、酸化クロム(Cr
2O
3/MoドーブTi)、酸化マンガン(MnO
2/MoドーブTi)、酸化鉄(Fe
2O
3/MoドーブTi)、酸化コバルト(Co
2O
3/MoドーブTi)、酸化ニッケル(NiO/MoドーブTi)、酸化銅(CuO/MoドーブTi)、酸化亜鉛(ZnO/MoドーブTi)、酸化モリブデン(MoO
3/MoドーブTi)、酸化銀物(AgO/MoドーブTi)、酸化カドミウム(CdO/MoドーブTi)、酸化パラジウム(PdO/MoドーブTi)、酸化鉛(ZnO/MoドーブTi)、酸化セリウム(CeO
2/MoドーブTi)、酸化ニオブ(NbO/MoドーブTi)、酸化イットリウム(Y
2O
3/MoドーブTi)、酸化タンタル(Ta
2O
5/MoドーブTi)、及び酸化錫(SnO/MoドーブTi)を触媒として用いた。
【0107】
表5に、実験例2の他の金属を触媒として担持させたモリブデンを含む金属の多孔体を空気極とした場合の放電容量のサイクル依存性を示す。触媒として担持させた他の金属を以下に示す。
【0108】
チタン(Ti/MoドーブTi)、バナジウム(V/MoドーブTi)、クロム(Cr/MoドーブTi)、マンガン(Mn/MoドーブTi)、鉄(Fe/MoドーブTi)、コバルト(Co/MoドーブTi)、ニッケル(Ni/MoドーブTi)、銅(Cu/MoドーブTi)、亜鉛(Zn/MoドーブTi)、モリブデン(Mo/MoドーブTi)、銀(Ag/MoドーブTi)、カドミウム(Cd/MoドーブTi)、パラジウム(Pd/MoドーブTi)、鉛(Pb/MoドーブTi)、ルテニウム(Ru/MoドーブTi)、ロジウム(Rh/MoドーブTi)、プラセオジム(Pr/MoドーブTi)、銀(Ag/MoドーブTi)、金(Au/MoドーブTi)、白金(Pt/MoドーブTi)、セリウム(Ce/MoドーブTi)、ニオブ(Nb/MoドーブTi)、イットリウム(Y/MoドーブTi)、タンタル(Ta/MoドーブTi)、及び錫(Sn/MoドーブTi)を触媒として用いた。
【0110】
表4と表5に示すように何れの触媒でも初回の放電容量は、600mAh/g以上を示し、実験例1のように触媒を担持していないモリブデンを含む金属の多孔体よりも全体的に大きな値が得られた。これらの金属酸化物又は金属においても、酸化ルテニウムを触媒とした場合と同様に電池特性が改善されることが確認できた。
【0111】
以上説明したように、本発明によれば、空気極101をモリブデンを含む金属の多孔体で構成することで、従来の材料を用いる場合よりも、充放電のエネルギー効率を改善し、放電容量が大きく且つ充放電サイクル性能の優れたリチウム空気二次電池を提供することができる。なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で変形が可能である。