(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
図において、開示するシステム及び方法の類似素子又は対応素子は、同じ参照番号で示す。これら図は、必然的な縮尺調整を行っていない。
【0013】
本発明は、電気的に調整可能な遅延器を伴うプローブに関する。好ましくは、このプローブは、各入力経路内にて電気的に調整可能な遅延器を有する。しかし、後述にて詳細に開示する如く、いくつかの実施例は、電気的に調整可能な遅延器を1つの入力経路内に含むと共に、他の入力経路内は、固定遅延器を有する。
このプローブは、試験測定機器の単一チャンネルを用いる
、図1に示す
ようなトライモード・プローブ100でもよい。
【0014】
いくつかの実施例において、トライモード・プローブ100は、3つの入力端102、104及び106を含む。第1入力端102は、被試験装置から第1信号を受け、第2入力端104は、被試験装置から第2信号を受け、第3入力端は、接地に接続されている。トライモード・プローブ100は、バッファ108及び110と、ケーブル112及び114と、調整可能な可変遅延器116及び118と、トライモード増幅器120とを更に含んでいる。調整可能な可変遅延器116及び118は、トライモード増幅器120から分離していてもよいし、トライモード増幅器120と同じ集積チップ上で集積されてもよい。
【0015】
トライモード増幅器120は、第1入力端A、第2入力端B及び第3入力端(接地入力)を有する。上述の如く、米国テクトロニクスによるトライモード・プローブは、プローブと被試験装置(DUT)上の試験点との間の接続を変更することなく、差動測定、シングル・エンド測定及びコモン・モード測定の間で切り替えることができる。トライモード・プローブは、以下の如く、4つの入力モードを有する。すなわち、(1)A−B(差動測定)、(2)A−接地(正シングル・エンド測定)、(3)B−接地(負シングル・エンド測定)及び(4)(A+B)/2−接地(コモン・モード測定)である。次に、式「(A+B)/2−接地」によって、コモン・モード信号を求める。
【0016】
しかし、本発明は、
図1に示す実施例に限定されない。例えば、
図2に示すように、調整可能な可変遅延器116及び118を、ケーブル112及び114の前に配置してもよいし、バッファ108及び110と共に集積化してもよい。
図3に示すように、他の実施例において、プローブが50オーム入力用途の場合、バッファ108及び110を除去できる。
【0017】
図1〜3を参照してトライモード・プローブを説明したが、
図4に示して更に詳細に説明するように、差動プローブを本発明と共に用いてもよい。差動プローブ400は、
図1〜3に示した3入力端ではなく、わずか2つの入力端102及び104を含んでいる。また、差動プローブ400は、トライモード増幅器120ではなく差動増幅器402を含んでいる。
【0018】
多くの異なる形式の広帯域直流結合の電気的に調整可能な可変遅延器116及び118を用いることができる。これら電気的に調整可能な可変遅延器116及び118は、性能条件及びコストの要因に基づいて選択できる。例えば、バッファ108及び110と、又はトライモード増幅器120/差動増幅器402と集積できるかに応じて、電気的に調整可能な可変遅延器を選択してもよい。
【0019】
利用できる電気的
に調整可能な可変遅延器116及び118の例は、バラクタ同調集中素子遅延線、MEMS切替遅延セグメント、又は切替アクティブ遅延要素である。電気的な可変遅延器の他の例は、2015年6月22日出願された米国特許出願第14/745711号に記載されている。しかし、電気的に調整可能な可変遅延器116及び118は、これらの形式の遅延器に限定されない。任意の広帯域直流結合の電気的に調整可能な可変遅延器を用いることができる。
【0020】
より詳細に後述する如く、第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューを求めて、次に、電気的に調整可能な可変遅延器116及び118を用いて補正できる。しかし、
図1〜4に示す2つの調整可能な可変遅延器116及び118を用いるのではなく、一方の入力経路が電気的に調整可能な可変遅延器を有し、他方の入力経路が固定遅延器を有してもよい。かかる実施例において、電気的に調整可能な可変遅延器は、スキューを除去するように調整される。
【0021】
使用に当たって、
図5に示すように、プローブ500を被測定装置502に取り付ける。プローブ500は、上述の任意のプローブでよい。プローブ500は、試験測定機器504にも接続される。試験測定機器504は、より詳細の後述するように、プロセッサ506及びユーザ・インタフェース508を含んでいる。また、より詳細に後述するように、試験測定機器504は、トリガ回路510を含んでもよい。
【0022】
プローブ500は、被試験装置502からの差動信号を受ける。次に、いくつかの実施例において、信号を試験測定機器504のプロセッサ506に送る。プロセッサ506は、被試験装置502からの差動信号におけるスキュー量を求め、差動信号の2つの側の間のスキューの量を決定する。スキューを決定すると、プロセッサ506は、電気的に調整可能な可変遅延器116及び118にインストラクションを送り、差動信号の各側の遅延量を調整して、スキューの量を除去又は軽減する。
【0023】
プロセッサ506は、好ましくはデジタル・プロセッサであり、受けた信号、又はこれに関係するパラメータをプロセッサに送る前にデジタル化しておく。しかし、プロセッサ506は、アナログ・プロセッサとして実現してもよい。このアナログ・プロセッサは、更に詳細に後述するように、受けたアナログ信号の関係パラメータをモニタし、電気的に調整可能な可変遅延器を制御するように設計されている。
【0024】
種々の他の実施例において、
図6に示す如く、プロセッサ506をプローブ500内に配置して、スキューの量を求めてもよい。試験測定機器504又はプローブ500は、実行可能なインストラクションを蓄積するメモリ(図示せず)を含んでもよい。この実行可能なインストラクションは、ここで述べた方法及び処理を実現し、他の点では、試験測定機器及び/又はプローブを制御する。さらに、他の実施例において、試験測定機器及びプローブ500の両方におけるプロセッサ506を用いて、後述する方法を実行できる。
【0025】
プロセッサ506により、差動信号の2つの側の間のスキュー量を求めることができる多数の方法がある。しかし、各方法において、確定したタイミング関係を有する基準信号を、差動信号との比較に対する標準として用いなければならない。遅延量を求めて差動信号のスキューをなくす方法は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの任意の組合せによって実現できる。
【0026】
かかる基準信号の1つは、
図7に示す如く、被試験装置502からの、仮定では対称であるが単に名目上の差動信号である。差動信号700は、V
H及びV
Lを含んでいる。また、コモン・モード信号702は、V
CMとして示される。
【0027】
波形V
H及びV
Lの両方が同時に捕捉できると、一方の信号のエッジに対応する他方の信号のエッジからの平均遅延を測定するのが容易であり、両方の極性のエッジを平均化できる。スキューを求めると、平均スキューがゼロになるまで、電気的に調整可能な可変遅延器116及び118を調整でき、その結果、スキューを除去する。例えば、
図8において、差動信号700のV
LエッジをV
Hエッジからの遅延として直接的に測定でき、平均遅延測定値により、プローブのスキューなしに必要な遅延設定を直接的に決定する。
【0028】
しかし、異なる時点で差動信号の各側を捕捉するように、即ち、先ず差動信号の一方の側を、次に差動信号の他の側を捕捉するようにプローブ500がプログラムされているならば、別のトリガ源512を用いてもよい。差動信号の2つの捕捉した信号の間の共通タイミング基準として、別のトリガ源512を用いることができる。すなわち、トリガ源512の信号のタイミングに基づいて、差動信号の各側のタイミングを求めることができる。
【0029】
他の実施例において、別のトリガ源を用いるのではなく、コモン・モード信号を観察することによって、スキューなしの量を求めることができる。例えば、等しくない立ち上がり時間及び立ち下がり時間により、被試験装置502がある顕著なコモン・モード信号自体を発生するかもしれないが、被試験装置502が対称ならば、
図7に示すように、コモン・モード信号
702は、差動信号の
どちらの極性エッジ
でも同じである。スキューによるモード変換は、
図8に示す如く、差動信号のエッジ極性に応じたコモン・モード信号を誘導する。仮定では対称である名目上の差動信号を観察することにより、プローブ500を自動的にスキューなしにするために、コモン・モードを観察するようにプローブ500をプログラムし、このコモン・モード信号の大きさを最小にするように、及び/又はあるエッジから次のエッジへの形が一致するようにスキューを調整する。一致させるコモン・モード形状の位置を識別する際に、高速シリアル信号のボー・レートの知識も有用である。
【0030】
差動信号を周波数領域で分析して、スキューによるエラーを識別できる。例えば、
図7及び8に示す如き名目上の差動高速シリアル信号におけるスキューが原因のコモン・モード信号の中身は、半分のボー・レートにて最高周波数となる。典型的なドライブ・エラー、例えば、等しくない立ち上がり時間及び立ち下がり時間が原因のコモン・モード信号の中身は、そのボー・レートにて最高となる。
【0031】
スキューを除去するためにプロセッサ506が実行する上述の種々の方法は、仮定では対称である信号源の
点から先の、いかなるスキューも除去する。よって、被試験装置502が受信機端部にてプローブ接続されれば、これは、ユーザ・チャ
ンネル内のスキューを補償する。チャンネルによるスキューではなく、プローブ500が原因となるスキューをユーザが除去したい場合、プローブ500の位置に基準を設けなければならない。これは、差動対の2つの導線を短絡させ、プローブ500の入力端102及び104並びに両方の導線で信号を同じにすることを確実にすることによって行える。
この場合、差動信号を形成する2つの波形VH及びVL間にスキューがなく、完全に対称であれば、差動信号を観察するようにプログラムされたプローブ500では、信号が全く見えない
はずである。
しかし、もし短絡の状態にて信号が存在するならば、プロセッサは、電気的に調整可能な可変遅延器116及び118の各々に対して必要な遅延の量を決定し、短絡の状態にて観察した差動信号を最小化又は除去するための遅延量を設定することができる。
【0032】
プロセッサは、また、差動信号の立ち上がり時間及び立ち下がり時間に基づいて、電気的に調整可能な可変遅延器116及び118を遅延させる量を決定し、これら電気的な可変遅延器116及び118を調整して異なる立ち上がり時間及び立ち下がり時間の差異を最小にする。他の実施例において、プロセッサは、ボー・レートの半整数倍に近い周波数バンドにおけるエネルギーを最大にすることによって、電気的に調整可能な可変遅延器116及び118を遅延させる量を決定できる。
【0033】
試験測定機器504は、ユーザ・インタフェース508を含んでもよい。ユーザ・インタフェース508により、プローブ500が自動的に差動信号のスキュー量を求めて補正するか、又は、ユーザが所望の遅延の量を入力できるようにするかを、ユーザが選択できる。次に、ユーザ・インタフェース508でユーザが入力した遅延の量に基づいて、電気的に調整可能な可変遅延器116及び118を調整する。
【0034】
上述の方
法では、既に述べたように、電気的に調整可能な可変遅延器116及び118での調整を説明したが、遅延器の一方のみが電気的に調整可能な遅延器であり、他方が固定遅延器でもよい。電気的に調整可能な可変遅延器を調整する一方、固定遅延器を固定状態に維持する。すなわち、両方の遅延器に調整を行うのではなく、一方の遅延器のみを固定遅延器での入力経路に関連して調整する。
【0035】
差動信号のスキューをなくすように遅延の量を求める上述の方法は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はこれらの任意の組合せにて実現できる。
【0036】
ここで用いた用語「プロセッサ」は、アナログ又はデジタルを問わず、メモリと連携したマイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC、専用ハードウェア制御器を含むことを意図している。本発明の1つ以上の概念は、1つ以上のコンピュータ(モニタ・モジュールを含む)又は他の装置によって実行される1つ以上のプログラム・モジュールの如く、コンピュータが利用可能なデータ及びコンピュータが実行可能なインストラクションによって実現できる。一般的に、プログラム・モジュールは、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含んでおり、これらは、コンピュータ又は他の装置内のプロセッサが実行した際に、特定のタスク又は実装された特定のアブストラクト・データ形式を実行する。コンピュータが実行可能なインストラクションは、ハードディスク、光ディスク、取り外し可能なストレージ媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどの如く、コンピュータが読出し可能な持続性のある媒体に蓄積できる。当業者に理解できる如く、プログラム・モジュールの機能は、種々の実施例で説明したように、組合せてもよいし、分散してもよい。さらに、この機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などの如きハードウェア又はファームウェアにおいて、全体的に又は部分的に実現できる。特定のデータ構造を用いて、本発明の1つ以上の概念をより効果的に実現できる。かかるデータ構造は、ここで述べたコンピュータ実行可能なインストラクション及びコンピュータ利用可能なデータの範囲内で考慮される。
【0037】
本発明の好適な実施例において、本発明の原理を説明し図示したが、かかる原理を逸脱することなく本発明を配置及び細部において変更できることが明らかである。例えば、本発明の種々の概念は、以下のように記述できる。
【0038】
すなわち、本発明の概念1は、プローブであり;第1入力信号を受けるように構成された第1入力端と;第2入力信号を受けるように構成された第2入力端と;第1入力端に接続され、第1入力信号を遅延させて、第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューを除去するように構成された電気的に調整可能な遅延器と;第2入力信号及び電気的に調整可能な遅延器からの第1入力信号を受けるように構成された増幅器とを備える。
【0039】
本発明の概念2は、概念1のプローブであって;電気的に調整可能な
遅延器は、第1電気的に調整可能な
遅延器であって;このプローブは、第2入力端に接続された第2電気的に調整可能な遅延器を更に備えており、この第2電気的に調整可能な遅延器は、第1電気的に調整可能な遅延器と組み合わさって第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューを除去するように第2入力信号を遅延させるように構成されている。
【0040】
本発明の概念3は、概念1のプローブであって;電気的に調整可能な遅延器に接続され、遅延調整量を求めるように構成されたプロセッサを更に備える。
【0041】
本発明の概念4は、概念1のプローブであって;プローブが差動プローブである。
【0042】
本発明の概念5は、概念1のプローブであって;このプローブは、トライモード・プローブであり、このプローブは、接地信号を受けるように構成された第3入力端を更に備えている。トライモード・プローブは、プローブと被測定装置上の試験点との間の接続を変更することなく、差動測定、シングル・エンド測定及びコモン・モード測定の間を切り替える能力がある点に留意されたい。
【0043】
本発明の概念6は、概念1のプローブであり;電気的に調整可能な遅延器を増幅器内に集積している。
【0044】
本発明の概念7は、2つの入力信号の間のスキューを調整するシステムであり;概念1のプローブと;電気的に調整可能な遅延器の遅延調整量を求めるように構成されたプロセッサを含む試験測定機器とを備えている。
【0045】
本発明の概念8は、概念7のシステムであって;試験測定機器は、ユーザからの電気的に調整可能な遅延器用の遅延調整量を受け入れるように構成されたユーザ・インタフェースを更に含んでいる。
【0046】
本発明の概念9は、第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューを補正する方法であって;この方法は;第1入力信号を受けることと;第2入力信号を受けることと;第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューの量を求めることと;第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューの量に基づいて少なくとも1つの電気的に調整可能な可変遅延器の遅延を調整して、第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューを除去することとを備えている。
【0047】
本発明の概念10は、概念9の方法であって;第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューの量を求めることは、第1入力信号のエッジから第2入力信号の対応するエッジまでの遅延を測定することを含む。
【0048】
本発明の概念11は、概念9の方法であって;トリガ信号を受けることを更に備え;第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューの量を求めることは、第1入力信号及び第2入力信号の間の共通タイミングを求めることと、この共通タイミングに基づいて第1入力信号のエッジから第2入力信号の対応するエッジまでの遅延を測定することを含む。
【0049】
本発明の概念12は、概念9の方法であって;第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューの量を求めることは、コモン・モード信号の大きさに基づいてスキューの量を求めることを含む。
【0050】
本発明の概念13は、概念9の方法であって;第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューの量を求めることは、コモン・モード信号の周波数領域分析に基づいてスキューの量を求めることを含む。
【0051】
本発明の概念14は、概念9の方法であって;第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューの量を求めることは、第1入力信号及び第2入力信号がスキューを除いて名目上一致したときに観察した差動信号の大きさに基づいてスキューの量を求めることを含む。
【0052】
本発明の概念15は、概念9の方法であって;第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューの量を求めることは、差動信号内のエッジの遷移時点に基づいてスキューの量を求めることを含む。