特許第6799367号(P6799367)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799367
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】プローブ及びスキュー補正方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 13/20 20060101AFI20201207BHJP
   G01R 13/28 20060101ALI20201207BHJP
   G01R 29/26 20060101ALI20201207BHJP
   G01R 29/08 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   G01R13/20 F
   G01R13/28 D
   G01R29/26 D
   G01R29/08 D
【請求項の数】2
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-150018(P2015-150018)
(22)【出願日】2015年7月29日
(65)【公開番号】特開2016-31372(P2016-31372A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2018年7月23日
(31)【優先権主張番号】62/030476
(32)【優先日】2014年7月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/745757
(32)【優先日】2015年6月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ジー・ニーリム
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・アール・マグリー
(72)【発明者】
【氏名】マーチン・ロックウェル
(72)【発明者】
【氏名】アイラ・ジー・ポロック
【審査官】 永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第7893746(US,B1)
【文献】 特開2004−327797(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0174448(US,A1)
【文献】 特表2009−538580(JP,A)
【文献】 特開2008−45898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 13/20
G01R 13/28
G01R 29/08
G01R 29/26
G01R 31/26
G01R 31/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験装置からの差動信号を形成する第1及び第2入力信号を試験測定装置に接続するプローブであって、
上記第1入力信号を受けるように構成された第1入力端と、
上記第2入力信号を受けるように構成された第2入力端と、
上記第1入力端に接続され、上記第1入力信号を遅延させて、上記第1入力信号及び上記第2入力信号の間のスキューを除去するように構成された電気的可変遅延器と、
上記第2入力信号及び上記電気的可変遅延器からの上記第1入力信号を受けるように構成された増幅器と
コモン・モード信号の大きさ又は周波数領域分析に基づいて上記スキューの量を求め、上記スキューの量に基づいて、上記スキューを除去するように上記電気的可変遅延器の遅延を調整するプロセッサと
を備えるプローブ。
【請求項2】
差動信号を形成する第1及び第2入力信号の間のスキューを補正する方法であって、
上記第1入力信号を受ける処理と、
上記第2入力信号を受ける処理と、
コモン・モード信号の大きさ又は周波数領域分析に基づいて、上記第1入力信号及び上記第2入力信号の間のスキューの量を求める処理と、
上記第1入力信号及び上記第2入力信号の間のスキューの量に基づいて、少なくとも1つの電気的可変遅延器の遅延を調整して、上記第1入力信号及び上記第2入力信号の間の上記スキューを除去する処理と
を備えるスキュー補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのプローブ入力経路における遅延を自動的に調整可能なプローブと、差動信号におけるスキュー及びモード変換を最小にするために電気的に調整可能な遅延器を自動的に調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単一の試験測定機器チャンネルを用い、被試験装置(DUT)から、高速シリアル・データ・バス上の如き名目上の差動信号を取り込むために、一般的に差動入力プローブを用いる。米国テクトロニクスによるトライモード(TriMode:商標)プローブにより、プローブをその接続ポイントから移動することなく、差動と、シングル・エンドと、コモン・モードとの測定の間で切り替えることができる(非特許文献2を参照のこと)。例えば、トライモード・プローブは、コモン・モード信号を取り込む、又は、差動対信号の何れかの側をシングル・エンド信号として取り込む追加の能力を有する。
【0003】
理想的な差動信号は、2つの分離した導線上で送られる2つの相補的信号を含んでいる。DUTから試験測定機器への導線の2つ側の間における、及び/又は試験測定機器自体の内部における任意のスキュー又は遅延により、差動信号のモード変換が生じる。モード変換は、差動信号の一部がコモン・モード信号として現れたときであり、逆も又同様である。スキューによるモード変換は、高周波数にて次第に悪くなる。例えば、25GHzでの単なる1ピコ秒(ps)のスキューは、差動信号として現れるコモン・モード電圧の15%以上になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−038786号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「位相器」の写真1「可変遅延線」、[online]、株式会社NF回路設計ブロック、[2015年7月28日検索]、インターネット、(http://www.nfcorp.co.jp/techinfo/dictionary/032.html)
【非特許文献2】「トライモード・プローブ・ファミリ」、[online]、テクトロニクス、[2015年7月28日検索]、インターネット、(http://jp.tek.com/datasheet/differential-probe-low-voltage/p7500-series)
【非特許文献3】「トライモード・プローブ・アーキテクチャ」、文献番号51Z-20874-0、[online]、テクトロニクス、[2015年7月29日検索]、インターネット、(http://jp.tek.com/document/1126460)
【非特許文献4】「導体電導とコモン・モード」、[online]、株式会社村田製作所、[2015年7月29日検索]、インターネット、(http://www.murata.com/ja-jp/products/emc/emifil/knowhow/basic/chapter05-p1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スキューに関するモード変換によるエラーを最小化する1つのアプローチは、プローブ入力の一方又は両方にて、例えば、トロンボーン形式の可変遅延器を機械的に設けることであり、機械的可変遅延器を機械的に調整して遅延を一致させることである(非特許文献1を参照のこと)。いくつかの場合、この調整をプローブの製造にて行って、プローブ・ケーブルにおける不一致を補償する。しかし、これは、DUTからプローブへのユーザの導線におけるスキューに役立たない。あるいは、この調整は、ユーザがアクセス可能でもよいが、ユーザにとって調整は依然として不便である。
【0007】
スキュー関連のモード変換によるエラーを最小化する他のアプローチは、試験測定機器の2チャンネルを用いて、差動対信号の各側を別々に取り込むことである。デジタル信号処理を用いて、第1チャンネル波形のタイミングを調整して、第2チャンネル波形のタイミングに合わせる。次に、これら2つの波形を減算して、差動信号を見つける。この方法は、用いる演算機能に応じて、コモン・モード又はいずれかのシングル・エンド信号が利用可能な場合に、トライモード機能を提供する。しかし、この方法は、1チャンネルの代わりに2チャンネルを用いる必要があるので、かなりコストがかかる。
【0008】
必要なことは、導線の違いによる差動信号の2つの側の間のスキューを除去して、差動信号におけるモード変換を除去又は最小化するように、プローブでの遅延を調整できる能力である。本発明の実施例は、従来技術におけるこれの制限及び他の制限に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある実施例は、プローブを含んでおり、このプローブは、第1入力信号を受けるように構成された第1入力端と、第2入力信号を受けるように構成された第2入力端と、第1入力端に接続された第1ケーブルと、第2入力端に接続された第2ケーブルと、第1ケーブルに接続され、第1入力信号を遅延させて第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューを除去するように構成された電気的に調整可能な遅延器と、第2入力信号及び電気的に調整可能な遅延器からの第1入力信号を受けるように構成された増幅器とを含んでいる。
【0010】
本発明のある他の実施例は、第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューを補正する方法を含んでおり、この方法は、第1入力信号を受けることと、第2入力信号を受けることと、第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューの量を求めることと、第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューを除去するように少なくとも1つの電気的に調整可能な可変遅延器の遅延を調整することとを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明のいくつかの実施例による電気的に調整可能な遅延器を有するプローブを示す。
図2図2は、本発明のいくつかの実施例による電気的に調整可能な遅延器を有する他のプローブを示す。
図3図3は、本発明のいくつかの実施例による電気的に調整可能な遅延器を有する他のプローブを示す。
図4図4は、本発明のいくつかの実施例による電気的に調整可能な遅延器を有する他のプローブを示す。
図5図5は、本発明のいくつかの実施例による図1〜4のプローブの1つを用いた試験測定システムを示す。
図6図6は、本発明のいくつかの実施例による図1〜4のプローブの1つを用いた他の試験測定システムを示す。
図7図7は、種々の差動信号及びコモン・モード信号の一例を示す。
図8図8は、種々の差動信号及びコモン・モード信号の他の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図において、開示するシステム及び方法の類似素子又は対応素子は、同じ参照番号で示す。これら図は、必然的な縮尺調整を行っていない。
【0013】
本発明は、電気的に調整可能な遅延器を伴うプローブに関する。好ましくは、このプローブは、各入力経路内にて電気的に調整可能な遅延器を有する。しかし、後述にて詳細に開示する如く、いくつかの実施例は、電気的に調整可能な遅延器を1つの入力経路内に含むと共に、他の入力経路内は、固定遅延器を有する。このプローブは、試験測定機器の単一チャンネルを用いる図1に示すようなトライモード・プローブ100でもよい。
【0014】
いくつかの実施例において、トライモード・プローブ100は、3つの入力端102、104及び106を含む。第1入力端102は、被試験装置から第1信号を受け、第2入力端104は、被試験装置から第2信号を受け、第3入力端は、接地に接続されている。トライモード・プローブ100は、バッファ108及び110と、ケーブル112及び114と、調整可能な可変遅延器116及び118と、トライモード増幅器120とを更に含んでいる。調整可能な可変遅延器116及び118は、トライモード増幅器120から分離していてもよいし、トライモード増幅器120と同じ集積チップ上で集積されてもよい。
【0015】
トライモード増幅器120は、第1入力端A、第2入力端B及び第3入力端(接地入力)を有する。上述の如く、米国テクトロニクスによるトライモード・プローブは、プローブと被試験装置(DUT)上の試験点との間の接続を変更することなく、差動測定、シングル・エンド測定及びコモン・モード測定の間で切り替えることができる。トライモード・プローブは、以下の如く、4つの入力モードを有する。すなわち、(1)A−B(差動測定)、(2)A−接地(正シングル・エンド測定)、(3)B−接地(負シングル・エンド測定)及び(4)(A+B)/2−接地(コモン・モード測定)である。次に、式「(A+B)/2−接地」によって、コモン・モード信号を求める。
【0016】
しかし、本発明は、図1に示す実施例に限定されない。例えば、図2に示すように、調整可能な可変遅延器116及び118を、ケーブル112及び114の前に配置してもよいし、バッファ108及び110と共に集積化してもよい。図3に示すように、他の実施例において、プローブが50オーム入力用途の場合、バッファ108及び110を除去できる。
【0017】
図1〜3を参照してトライモード・プローブを説明したが、図4に示して更に詳細に説明するように、差動プローブを本発明と共に用いてもよい。差動プローブ400は、図1〜3に示した3入力端ではなく、わずか2つの入力端102及び104を含んでいる。また、差動プローブ400は、トライモード増幅器120ではなく差動増幅器402を含んでいる。
【0018】
多くの異なる形式の広帯域直流結合の電気的に調整可能な可変遅延器116及び118を用いることができる。これら電気的に調整可能な可変遅延器116及び118は、性能条件及びコストの要因に基づいて選択できる。例えば、バッファ108及び110と、又はトライモード増幅器120/差動増幅器402と集積できるかに応じて、電気的に調整可能な可変遅延器を選択してもよい。
【0019】
利用できる電気的調整可能な可変遅延器116及び118の例は、バラクタ同調集中素子遅延線、MEMS切替遅延セグメント、又は切替アクティブ遅延要素である。電気的な可変遅延器の他の例は、2015年6月22日出願された米国特許出願第14/745711号に記載されている。しかし、電気的に調整可能な可変遅延器116及び118は、これらの形式の遅延器に限定されない。任意の広帯域直流結合の電気的に調整可能な可変遅延器を用いることができる。
【0020】
より詳細に後述する如く、第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューを求めて、次に、電気的に調整可能な可変遅延器116及び118を用いて補正できる。しかし、図1〜4に示す2つの調整可能な可変遅延器116及び118を用いるのではなく、一方の入力経路が電気的に調整可能な可変遅延器を有し、他方の入力経路が固定遅延器を有してもよい。かかる実施例において、電気的に調整可能な可変遅延器は、スキューを除去するように調整される。
【0021】
使用に当たって、図5に示すように、プローブ500を被測定装置502に取り付ける。プローブ500は、上述の任意のプローブでよい。プローブ500は、試験測定機器504にも接続される。試験測定機器504は、より詳細の後述するように、プロセッサ506及びユーザ・インタフェース508を含んでいる。また、より詳細に後述するように、試験測定機器504は、トリガ回路510を含んでもよい。
【0022】
プローブ500は、被試験装置502からの差動信号を受ける。次に、いくつかの実施例において、信号を試験測定機器504のプロセッサ506に送る。プロセッサ506は、被試験装置502からの差動信号におけるスキュー量を求め、差動信号の2つの側の間のスキューの量を決定する。スキューを決定すると、プロセッサ506は、電気的に調整可能な可変遅延器116及び118にインストラクションを送り、差動信号の各側の遅延量を調整して、スキューの量を除去又は軽減する。
【0023】
プロセッサ506は、好ましくはデジタル・プロセッサであり、受けた信号、又はこれに関係するパラメータをプロセッサに送る前にデジタル化しておく。しかし、プロセッサ506は、アナログ・プロセッサとして実現してもよい。このアナログ・プロセッサは、更に詳細に後述するように、受けたアナログ信号の関係パラメータをモニタし、電気的に調整可能な可変遅延器を制御するように設計されている。
【0024】
種々の他の実施例において、図6に示す如く、プロセッサ506をプローブ500内に配置して、スキューの量を求めてもよい。試験測定機器504又はプローブ500は、実行可能なインストラクションを蓄積するメモリ(図示せず)を含んでもよい。この実行可能なインストラクションは、ここで述べた方法及び処理を実現し、他の点では、試験測定機器及び/又はプローブを制御する。さらに、他の実施例において、試験測定機器及びプローブ500の両方におけるプロセッサ506を用いて、後述する方法を実行できる。
【0025】
プロセッサ506により、差動信号の2つの側の間のスキュー量を求めることができる多数の方法がある。しかし、各方法において、確定したタイミング関係を有する基準信号を、差動信号との比較に対する標準として用いなければならない。遅延量を求めて差動信号のスキューをなくす方法は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの任意の組合せによって実現できる。
【0026】
かかる基準信号の1つは、図7に示す如く、被試験装置502からの、仮定では対称であるが単に名目上の差動信号である。差動信号700は、V及びVを含んでいる。また、コモン・モード信号702は、VCMとして示される。
【0027】
波形V及びVの両方が同時に捕捉できると、一方の信号のエッジに対応する他方の信号のエッジからの平均遅延を測定するのが容易であり、両方の極性のエッジを平均化できる。スキューを求めると、平均スキューがゼロになるまで、電気的に調整可能な可変遅延器116及び118を調整でき、その結果、スキューを除去する。例えば、図8において、差動信号700のVエッジをVエッジからの遅延として直接的に測定でき、平均遅延測定値により、プローブのスキューなしに必要な遅延設定を直接的に決定する。
【0028】
しかし、異なる時点で差動信号の各側を捕捉するように、即ち、先ず差動信号の一方の側を、次に差動信号の他の側を捕捉するようにプローブ500がプログラムされているならば、別のトリガ源512を用いてもよい。差動信号の2つの捕捉した信号の間の共通タイミング基準として、別のトリガ源512を用いることができる。すなわち、トリガ源512の信号のタイミングに基づいて、差動信号の各側のタイミングを求めることができる。
【0029】
他の実施例において、別のトリガ源を用いるのではなく、コモン・モード信号を観察することによって、スキューなしの量を求めることができる。例えば、等しくない立ち上がり時間及び立ち下がり時間により、被試験装置502がある顕著なコモン・モード信号自体を発生するかもしれないが、被試験装置502が対称ならば、図7に示すように、コモン・モード信号702は、差動信号のどちらの極性エッジでも同じである。スキューによるモード変換は、図8に示す如く、差動信号のエッジ極性に応じたコモン・モード信号を誘導する。仮定では対称である名目上の差動信号を観察することにより、プローブ500を自動的にスキューなしにするために、コモン・モードを観察するようにプローブ500をプログラムし、このコモン・モード信号の大きさを最小にするように、及び/又はあるエッジから次のエッジへの形が一致するようにスキューを調整する。一致させるコモン・モード形状の位置を識別する際に、高速シリアル信号のボー・レートの知識も有用である。
【0030】
差動信号を周波数領域で分析して、スキューによるエラーを識別できる。例えば、図7及び8に示す如き名目上の差動高速シリアル信号におけるスキューが原因のコモン・モード信号の中身は、半分のボー・レートにて最高周波数となる。典型的なドライブ・エラー、例えば、等しくない立ち上がり時間及び立ち下がり時間が原因のコモン・モード信号の中身は、そのボー・レートにて最高となる。
【0031】
スキューを除去するためにプロセッサ506が実行する上述の種々の方法は、仮定では対称である信号源の点から先の、いかなるスキューも除去する。よって、被試験装置502が受信機端部にてプローブ接続されれば、これは、ユーザ・チャネル内のスキューを補償する。チャンネルによるスキューではなく、プローブ500が原因となるスキューをユーザが除去したい場合、プローブ500の位置に基準を設けなければならない。これは、差動対の2つの導線を短絡させ、プローブ500の入力端102及び104並びに両方の導線で信号を同じにすることを確実にすることによって行える。この場合、差動信号を形成する2つの波形V及びV間にスキューがなく、完全に対称であれば、差動信号を観察するようにプログラムされたプローブ500では、信号が全く見えないはずであるしかし、もし短絡の状態にて信号が存在するならば、プロセッサは、電気的に調整可能な可変遅延器116及び118の各々に対して必要な遅延の量を決定し、短絡の状態にて観察した差動信号を最小化又は除去するための遅延量を設定することができる。
【0032】
プロセッサは、また、差動信号の立ち上がり時間及び立ち下がり時間に基づいて、電気的に調整可能な可変遅延器116及び118を遅延させる量を決定し、これら電気的な可変遅延器116及び118を調整して異なる立ち上がり時間及び立ち下がり時間の差異を最小にする。他の実施例において、プロセッサは、ボー・レートの半整数倍に近い周波数バンドにおけるエネルギーを最大にすることによって、電気的に調整可能な可変遅延器116及び118を遅延させる量を決定できる。
【0033】
試験測定機器504は、ユーザ・インタフェース508を含んでもよい。ユーザ・インタフェース508により、プローブ500が自動的に差動信号のスキュー量を求めて補正するか、又は、ユーザが所望の遅延の量を入力できるようにするかを、ユーザが選択できる。次に、ユーザ・インタフェース508でユーザが入力した遅延の量に基づいて、電気的に調整可能な可変遅延器116及び118を調整する。
【0034】
上述の方法では、既に述べたように、電気的に調整可能な可変遅延器116及び118での調整を説明したが、遅延器の一方のみが電気的に調整可能な遅延器であり、他方が固定遅延器でもよい。電気的に調整可能な可変遅延器を調整する一方、固定遅延器を固定状態に維持する。すなわち、両方の遅延器に調整を行うのではなく、一方の遅延器のみを固定遅延器での入力経路に関連して調整する。

【0035】
差動信号のスキューをなくすように遅延の量を求める上述の方法は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はこれらの任意の組合せにて実現できる。
【0036】
ここで用いた用語「プロセッサ」は、アナログ又はデジタルを問わず、メモリと連携したマイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC、専用ハードウェア制御器を含むことを意図している。本発明の1つ以上の概念は、1つ以上のコンピュータ(モニタ・モジュールを含む)又は他の装置によって実行される1つ以上のプログラム・モジュールの如く、コンピュータが利用可能なデータ及びコンピュータが実行可能なインストラクションによって実現できる。一般的に、プログラム・モジュールは、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含んでおり、これらは、コンピュータ又は他の装置内のプロセッサが実行した際に、特定のタスク又は実装された特定のアブストラクト・データ形式を実行する。コンピュータが実行可能なインストラクションは、ハードディスク、光ディスク、取り外し可能なストレージ媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどの如く、コンピュータが読出し可能な持続性のある媒体に蓄積できる。当業者に理解できる如く、プログラム・モジュールの機能は、種々の実施例で説明したように、組合せてもよいし、分散してもよい。さらに、この機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などの如きハードウェア又はファームウェアにおいて、全体的に又は部分的に実現できる。特定のデータ構造を用いて、本発明の1つ以上の概念をより効果的に実現できる。かかるデータ構造は、ここで述べたコンピュータ実行可能なインストラクション及びコンピュータ利用可能なデータの範囲内で考慮される。
【0037】
本発明の好適な実施例において、本発明の原理を説明し図示したが、かかる原理を逸脱することなく本発明を配置及び細部において変更できることが明らかである。例えば、本発明の種々の概念は、以下のように記述できる。
【0038】
すなわち、本発明の概念1は、プローブであり;第1入力信号を受けるように構成された第1入力端と;第2入力信号を受けるように構成された第2入力端と;第1入力端に接続され、第1入力信号を遅延させて、第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューを除去するように構成された電気的に調整可能な遅延器と;第2入力信号及び電気的に調整可能な遅延器からの第1入力信号を受けるように構成された増幅器とを備える。
【0039】
本発明の概念2は、概念1のプローブであって;電気的に調整可能な遅延器は、第1電気的に調整可能な遅延器であって;このプローブは、第2入力端に接続された第2電気的に調整可能な遅延器を更に備えており、この第2電気的に調整可能な遅延器は、第1電気的に調整可能な遅延器と組み合わさって第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューを除去するように第2入力信号を遅延させるように構成されている。

【0040】
本発明の概念3は、概念1のプローブであって;電気的に調整可能な遅延器に接続され、遅延調整量を求めるように構成されたプロセッサを更に備える。
【0041】
本発明の概念4は、概念1のプローブであって;プローブが差動プローブである。
【0042】
本発明の概念5は、概念1のプローブであって;このプローブは、トライモード・プローブであり、このプローブは、接地信号を受けるように構成された第3入力端を更に備えている。トライモード・プローブは、プローブと被測定装置上の試験点との間の接続を変更することなく、差動測定、シングル・エンド測定及びコモン・モード測定の間を切り替える能力がある点に留意されたい。
【0043】
本発明の概念6は、概念1のプローブであり;電気的に調整可能な遅延器を増幅器内に集積している。
【0044】
本発明の概念7は、2つの入力信号の間のスキューを調整するシステムであり;概念1のプローブと;電気的に調整可能な遅延器の遅延調整量を求めるように構成されたプロセッサを含む試験測定機器とを備えている。
【0045】
本発明の概念8は、概念7のシステムであって;試験測定機器は、ユーザからの電気的に調整可能な遅延器用の遅延調整量を受け入れるように構成されたユーザ・インタフェースを更に含んでいる。
【0046】
本発明の概念9は、第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューを補正する方法であって;この方法は;第1入力信号を受けることと;第2入力信号を受けることと;第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューの量を求めることと;第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューの量に基づいて少なくとも1つの電気的に調整可能な可変遅延器の遅延を調整して、第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューを除去することとを備えている。
【0047】
本発明の概念10は、概念9の方法であって;第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューの量を求めることは、第1入力信号のエッジから第2入力信号の対応するエッジまでの遅延を測定することを含む。
【0048】
本発明の概念11は、概念9の方法であって;トリガ信号を受けることを更に備え;第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューの量を求めることは、第1入力信号及び第2入力信号の間の共通タイミングを求めることと、この共通タイミングに基づいて第1入力信号のエッジから第2入力信号の対応するエッジまでの遅延を測定することを含む。
【0049】
本発明の概念12は、概念9の方法であって;第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューの量を求めることは、コモン・モード信号の大きさに基づいてスキューの量を求めることを含む。
【0050】
本発明の概念13は、概念9の方法であって;第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューの量を求めることは、コモン・モード信号の周波数領域分析に基づいてスキューの量を求めることを含む。
【0051】
本発明の概念14は、概念9の方法であって;第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューの量を求めることは、第1入力信号及び第2入力信号がスキューを除いて名目上一致したときに観察した差動信号の大きさに基づいてスキューの量を求めることを含む。
【0052】
本発明の概念15は、概念9の方法であって;第1入力信号及び第2入力信号の間のスキューの量を求めることは、差動信号内のエッジの遷移時点に基づいてスキューの量を求めることを含む。
【符号の説明】
【0053】
100 トライモード・プローブ
102 第1入力端
104 第2入力端
106 第3入力端
108 第1バッファ
110 第2バッファ
112 第1ケーブル
114 第2ケーブル
116 第1調整可能な可変遅延器
118 第2調整可能な可変遅延器
120 トライモード増幅器
400 差動プローブ
402 差動増幅器
500 プローブ
502 被試験装置
504 試験測定機器
506 プロセッサ
508 ユーザ・インタフェース
510 トリガ回路
512 トリガ源
700 差動信号
702 コモン・モード信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8