(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
図において、開示されるシステム及び方法の類似又は対応する要素は、同じ参照番号で示される。これら図面は、必ずしも縮尺率が同じではない。
【0014】
本発明の実施形態は、複数のオシロスコープを組み合わせてチャンネル総数を拡張し、これら複数のオシロスコープが、ユーザの観点からは単一のスコープとして動作することを可能にする。より詳細には後述するように、1つのトリガ・イベントの1つの事象だけが必要で、結果として、オシロスコープ間のトリガ・ジッタが除去され、残存する波形間ジッタだけが、個々のデジタイザの非相関のショートターム・ジッタである。言い換えると、別々のオシロスコープ中のオシロスコープ・デジタイザ間のジッタを、単一のオシロスコープ内の複数デジタイザ間のジッタと比較可能である。
【0015】
本発明の実施形態は、論理和(OR)機能をも可能にし、これは、複数のオシロスコープのどれがトリガ・イベントを起こすかを知る必要なしに、低ジッタの全ての利点を提供する。これは、どの信号がイベントを持っているか知ること無しに、複数のオシロスコープで多数の信号の観測を可能にする。
【0016】
図1は、本発明の実施形態による複数オシロスコープ・システムのブロック図を描いている。
図1に描かれたシステムは、ホスト100と、2つのクライアント102及び104とを有している。しかし、そのコンセプトは、任意の個数のクライアントに容易に拡張できる。複数のオシロスコープの1個の制御システムは、これら複数のオシロスコープの全てに関する制御システムとしての役割を果たす。
図1では、ホスト100が、クライアント102及び104に関する制御システムとしての役割を果たす。
【0017】
オシロスコープの簡略した制御システムが、ホスト100中に示されている。制御システムは、アクイジション・コントローラ108へ送信するクロックに加えて、デジタイザ・クロックを生成するタイムベース・ブロック106を含む。
【0018】
デジタイザ・ブロック110は、複数のデジタイザ(図示せず)を用いて、アナログ波形を離散デジタル波形に変換し、この離散デジタル波形は、メモリ(図示せず)に記憶される。デジタイザ用のサンプル・クロックは、タイムベース106から導出される。デジタイザ・ブロック110は、ホスト100中にDigSyncClock1と呼ばれる低速クロック112も含み、これもタイムベース106から導出される。「クロック」は、時として、「クロック発生装置」又は「クロック回路」を意味し、時として、クロック信号を意味するが、単純にだたクロックと呼ぶことがあることに注意されたい。DigSyncClock1は、アクイジション・コントローラ108及び波形メモリ用のアドレス発生装置と同期した通信のために利用される。
【0019】
しかし、本発明は、各デジタイザ・ブロック110内の複数のデジタイザを揃える(align:アライメントする)ための外部信号を必要としない。この機能は、複数オシロスコープ同期システムに関しては、各オシロスコープが非インターリーブのデジタイザとして抽出されるようにして、各オシロスコープに対して内部的に実行される。よって、個々のクライアント・オシロスコープは、切り離すことができ、スタンド・アローン(独立型)のオシロスコープとして利用可能である。
【0020】
アクイジション・コントローラ108は、種々のイベントに基づくアクイジション・サイクルのシーケンス処理を制御する。例えば、もしユーザがオシロスコープを停止させたければ、アクイジション・コントローラ108は、デジタイザ・ブロック110中のデジタイザを停止させる。もしトリガ・イベントが生じれば、アクイジション・コントローラ108は、トリガ・イベントにタイム・スタンプを付け、適切な量のポスト・トリガ時間の後に、デジタイザ・ブロック110中のデジタイザを停止させる。
【0021】
アクイジション・コントローラ108は、デジタイザ・ブロック110との同期通信のために、TrigSyncClock1 114を利用するが、これもタイムベース106から導出される。TrigSyncClock1 114及びDigSyncClock1 112は、好ましくは同一周波数である。しかし、TrigSyncClock1 114の周期は、DigSyncClock1 112の周期の任意の倍数であっても良い。実際、異なるDigSyncClock112を有するオシロスコープの異なるモデルをサポートするため、TrigSyncClock1 114の周期は、接続されたクライアント・オシロスコープについての全てのDigSyncClock1 112の周期の最も小さい公倍数とする必要がある。
【0022】
クライアント102及び104のいずれかの内でトリガ生じるという状況において、クライアント102及び104からホスト100へとトリガ情報を通信するために、データ・リンク(図示せず)が複数のオシロスコープ間にある。データ・リンクは、波形データもクライアント102及び104からホスト100へと転送するので、必要に応じて、波形の制御及び表示がホスト・オシロスコープ100でまとめられる。
【0023】
詳しくは後述のように、種々の制御リンク(同様に図示せず)が、オシロスコープ間の電源の入/切の情報をコーディネートし、ホスト100がシステムの接続状態を知るための情報を提供する。
【0024】
本発明は、ホスト100に関して上述したアクイジション制御システムを、クライアント102及び104に拡張する。クライアント102及び104は、デジタイザ・ブロック110及びアクイジション・コントローラ108も含んでいる。DigSyncClock112及びTrigSyncClock114について、クライアント102及び104のそれぞれ内のクロックを区別するため、クライアント102に関してはDigSyncClock2及びTrigSyncClock2と呼び、クライアント104に関してはDigSyncClock3及びTrigSyncClock3と呼ぶ。
【0025】
クライアント102及び104は、ホスト100のタイムベース106を利用する。即ち、DigClock1が、ホストからDigClock1_Out2を通してクライアント102のタイムベース106へとDigClock2_inを通って送られる。DigClock1は、ホストからDigClock1_Out3を通してクライアント104のタイムベース106へもDigClock3_Inを通って送られる。即ち、クライアント102及び104の両方のタイムベース106は、ホスト100のタイムベース106からDigClock信号を受ける。
【0026】
図1は、1つのホスト100と2つのクライアント102及び104のシステムを示しているが、本発明は、任意の個数のクライアントで動作する。更に、内部的にか又は外部ケーブル接続によるかのどちらかで設定できる。
【0027】
図1は、ホスト100とクライアント102及び104とを行き来する種々の信号を示す。これら信号は、
図2〜4に関して、より詳細に後述される。
【0028】
図2は、
図1のシステムにおいて、新しいアクイジション・サイクルを始めることについて、タイミング状況を描いている。簡単のため、単一のホストとクライアントが、タイミング・チャートに示されている。しかし、そのコンセプトは、任意の個数のクライアントに容易に拡張される。
【0029】
アクイジション・サイクルが始まるとき、ホスト及びクライアントは、デジタイザ110を起動し、続いて、トリガ・イベントの発生を可能にする必要がある。先のアクイジションからポスト処理が完了するか、又は、起動すると、各オシロスコープのアクイジション・コントローラ・ブロック108は、それぞれのAcqReady信号200及び204をアサートする。単一のオシロスコープのみが使われている場合、AcqReady信号は、アクイジション・コントローラ108にRun1信号をデジタイザ110に送り、データのメモリ(図示せず)への記憶を開始するように命じる。
【0030】
図1の複数オシロスコープ構成では、全てのAcqReady信号がホスト100へ送られる。即ち、AcqReady2_Outは、AcqReady1_In2へ送られ、AcqReady3_Outは、AcqReady1_In3へ送られる。ホスト100は、接続されたクライアントのそれぞれについて、別々のAcqReady1_In/Outの対を有する。
図1に示されるように、例えば、ホストは、AcqReady2_Out及びAcqReady3_Outをそれぞれ通して、クライアント102及び104のAcqReady信号を受けるために、AcqReady1_In2及びAcqReady1_In3を含む。
【0031】
ホスト100は、接続されたクライアントから全てのAcqReadyを受けた時点で、全てのクライアントがアクイジション開始の準備が完了したとわかる。例えば、
図2では、AcqReady1が200においてハイになり、ホスト100がアクイジションの準備が完了していることを示す。クライアントは、そのクライアントがアクイジションの準備が完了すると、そのAcqReady2 202信号をAcqReady2_Out204を通して発行する。AcqReady2_Out204信号を206においてAcqReady1_Inで受けるよりも先にAcqReady1が200でハイになっているので、AcqReady1_Outは、AcqReady1_Inを206で受けると直ぐに、208においてハイになる。即ち、AcqReady1_Outは、全てのAcqReady1_Inを受けると、208においてハイになり、AcqReadyのいずれかがローになると、ローになる。
【0032】
このAcqReady
2_Out信号204が配信された後、ホスト100上のRun1が、214において、TrigSyncClock1の立ち上がりエッジでハイになる。Run1がハイになると、Run1_Outも216でハイになり、Run1信号が複数のクライアント装置に配信される。これは、218において示され、Run1をRun2_Inの218で受けるとハイになり、Run2が220においてハイになる。
【0033】
Run1信号が214においてハイになり、Run2信号が220でハイになった後、アドレス発生部のカウントが、ホスト100においては、DigSyncClock1の次のハイ、222で始まり、クライアント102においては、DigSyncClock2の次のハイ、224で始まる。
【0034】
システムは、Run1_OutからRun2_Inまでの伝播遅延に、いくらかのセットアップ時間を加えただけ、TrigSyncClock1から遅れるように、TrigSyncClock2の位相を調整する。伝播遅延は、
図2及び3においてAとして示されている。
【0035】
詳細は後述のように、TrigSyncClock114は、可変である。これは、リターン信号がクライアントからホストまでのセットアップ時間を充分に持てるようように選択される。ラッチ処理及び送信処理は、両方共にクロックの立ち上がりエッジで行われる。しかし、オシロスコープは、立ち下がりエッジでラッチし、立ち上がりエッジで送信し、両方向でセットアップ時間が同じとなるように位相を調整するよう設定されても良い。
【0036】
図3は、トリガ・イベントが生じるときについてのタイミング・チャートを描いている。
図2に続き、ホスト及びクライアント中のアクイジション・メモリは、トリガ・イベントが生じるのを待っている期間についてデータを取り込んでいる。クライアントかホストか、どちらでトリガ・イベントが生じても、Run(実行)信号のアサート停止(deassertion)がホスト100のアクイジション・コントローラ108へ送られ、そこからホスト100自身とクライアント102及び104へと再度配信される。Runの最初のアサート停止は、ホスト100が受けて、これが使用される。
【0037】
上述のように、
図3は、ホスト100でトリガが生じた場合のタイミング・チャートを示している。これに代えて、
図4は、クライアント102でトリガが生じた場合のタイミング・チャートを示している。
【0038】
図3から始めると、ホスト100において、300でトリガ・イベントが生じる。トリガ・イベントが生じた後、TrigSyncClock1の次のハイで、Run1がロー302になる。ホスト100で、Run1信号がRun1_Out304を通してクライアント102へ送り出され、クライアント102はその信号をRun2_Inで受けて、306でローになる。詳しくは後述するが、複数のSyncClockの位相アライメントのため、これは、ホストからクライアントまでの明確な遅延を用いて生じる。Run2_Inが306でローになるのに応答して、Run2は、TrigSyncClock2の次のハイ、308でローになる。Run1及びRun2が、302及び308でそれぞれローになる場合、ポスト・トリガ・カウンタは、DigSyncClock1及びDigSyncClock2の次のハイ、310及び312でそれぞれ始動する。
【0039】
図4では、トリガ・イベント400が、クライアントで生じる。Run(実行)のアサート停止は、最初に、Run2_Outが402でローになることによってホストへ送られ、404において、Run1_Inで受ける。次に、システムは、
図3でのように、ホストでトリガが生じた場合にしたように、続ける。クライアントからのRun2_Out信号402を404においてRun1_Inで受けると、ホスト100は、406でローになることによって、直ちにRun1_Out信号をクライアントへ配信する。もしシステム中に複数のクライアントがある場合には、上述のように、このRun1_Outは、全てのクライアントへ送信される。クライアントは、その信号をRun2_Inで受けて、408でローになる。Run2_Inが408でローになるのに応答して、Run2は、TrigSyncClock2の次のハイで、410においてローになる一方で、Run1は、TrigSyncClock1の次のハイで、412においてローになる。Run1及びRun2が、410及び412において、それぞれローになると、ポスト・トリガ・カウンタは、DigSyncClock1及びDigSyncClock2それぞれの次のハイ、414及び416で始動する。
【0040】
オシロスコープにおいてトリガが生じると、そのオシロスコープ(ホスト又は複数のクライアントの1つのいずれか)は、そのローカルのTrigSyncClockに対するそのトリガのタイムスタンプを計算する。
図3では、このタイムスタンプは、ttoff1であり、
図4では、タイムスタンプはttoff2である。
【0041】
1つのアクイジション・サイクルが完了した後、タイムスタンプttoffは、処理のためにホストへ送信される。これは、どのオシロスコープでトリガが生じたかに応じて、ttoff1又はttoff2となる。ホストは、そのトリガについての一貫したメモリ・ロケーションを決定するのに、このタイムスタンプ情報をそれ自身のアドレス発生部カウントと共に用いることができる。もし1つよりも多いトリガ、よって、ほとんど同じ時点でトリガ・イベントをホスト又はクライアントが受けたことが原因で、1つよりも多いトリガ・タイムスタンプttoffがある場合、ホストは、どのttoff値を使うかを選択するのに、同点決着判断を利用できる。ホストが利用する同点決着は、非常に単純なものにできる。例えば、ホスト100が最初でクライアントが続くという順番、又は、トリガ信号はクライアントからホスト中の共通点へ送られ、ここで最初のトリガ・イベントをもっと正確に決定、というような予め指定した優先順位を設定しても良い。
【0042】
上述のように、TrigSyncClock及びDigSyncClockは、ホスト又はクライアント内で、位相が互いにアライメントされる。ホスト内でのデジタイザ110からアクイジション・コントローラ108へのAcqReady信号の通信は、ホスト内のSyncClock(同期クロック)によって同期される。デジタル・オシロスコープにおいて、起動時に現在行われているように、DigSyncClockを生成する分周回路は、その立ち上がりエッジが、TrigSyncClockの立ち上がりエッジ間のほぼ中間に存在するまで、ずらされる。そうすることで、1つのアクイジションからその次まで、そして、1つの電源投入サイクルからその次まで、アクイジション・コントローラ108から一貫してRun及びAcqReady信号が受けられるのを確実にする。
【0043】
オシロスコープは、常に1つよりも多いデジタイザを有するので、これらデジタイザが、1つの電源投入サイクルからその次まで、同じ位相になるのを確実にすべきである。SyncClock処理は、DigSyncClockの位相のいずれかがメタステーブルとなる可能性があるために、これらデジタイザの位相アライメントを、タイムベース・クロックの半分内に追い込むだけであり、これは、DigSyncClockのずらした最終的な位相の不確実性の原因となりえる。これを解決するため、高速エッジ、矩形波又はインパルス信号のような校正信号を、複数デジタイザの全てに送り、その波形をデジタイズしても良い。次に、システムは、捕捉した校正信号の位相を分析し、必要に応じて、DigSyncClockを余分なサイクルだけずらす(dump)。即ち、セットアップ時間の違反(violation)が観測されるまでDigSyncClockのそれぞれをずらし、その次に、その違反から一定の距離にDigSyncClockをずらす。
【0044】
各クライアント内でのTrigSyncClock及びDigSyncClock間の位相アライメントで、上述したホスト内の同じ手続が続いて起きる。
【0045】
異なるオシロスコープのSyncClock間の位相アライメントでも、異なるオシロスコープ間のTrigSyncClockを互いに位相アライメントする必要性を除いて、上述と同じ原理が続いて起きる。TrigSyncClockの位相がずらされるときには、上述のように確立した内部的な一貫性を維持するのに加えて、1つのオシロスコープ内のそれぞれのDigSyncClockがずらされる。
【0046】
簡単のため、
図2〜4のタイミング・ダイヤグラムでは、TrigSyncClock114及びDigSyncClock112が同じ周波数として示されているが、TrigSyncClock114の周期をDigSyncClock112の倍数とすることも良くある。DigSyncClock112は、個々のオシロスコープ内の高い更新レートをサポートするために、可能な限り高速なものが選択される。しかし、この周波数は、単一のオシロスコープ内に存在する伝播遅延によって制限される。これは、概して、オシロスコープ間のケーブル中の伝播遅延に関しては、高速過ぎるであろう。従って、必要に応じて、TrigSyncClocks114をもっと遅くした方が良い。詳しくは後述のように、TrigSyncClock114は、予想される最も長いケーブルに対応するように、いくらか遅めに選択しても良いし、又は、電源投入時にダイナミックに決定しても良い。これによって、特定の複数オシロスコープ構成でだけ必要とされる更新レートは抑制される一方で、個々のオシロスコープが単独で使用されたときには、依然として高い更新レートを実現可能にする。
【0047】
クライアントのTrigSyncClock114の位相は、伝播遅延までずらされ、加えて、入ってくるRun_Inイベントに関して、クライアントにおいて適切なセットアップ時間が実現される。クライアントのTrigSyncClock114の位相がずらされるので、クライアントは、Run_In信号のラッチ処理において、突然大きな変化を観測することになろう。この変化は、Run_In信号の到着時間が、TrigSyncClock114の遷移(transition)のほんの少し前から、ほんの少し後へと変化するときに生じる。
【0048】
このサイクル・スリップの観測が可能な方法は、複数ある。
図2〜4のタイミング・ダイヤグラムに見られる1つの方法は、戻りのAcqReady1_In信号が1クロック期間フルにスリップするものである。別の方法は、Run2_Outを、それがホスト100に戻ってくる前に、再同期するものである。ひとたび、このメタステーブル・ポイントが見つかれば、次に、クライアントは、ホスト100の制御の下で、確実に適切なセットアップ時間とするため、TrigSyncClock114をいくらか適切な一定量だけ更に遅延させる。TrigSyncClock114の周波数が充分遅く選択されていると仮定すれば、これを行うことにより、Run及びAcqReadyのようなクライアントからホストへの通信も堅実で且つ同期して受信されることも保障される。
【0049】
クライアントのTrigSyncClock114の位相を、その全範囲を通してずらすことによって、TrigSyncClock114の必要な期間を推量できる。しかし、これは遅いし、繰り返しである。この処理をより簡単に、より速く行い、そして、デジタイザを有しない装置で実現可能にするため、
図5に示すリング・オシレータ・ステップ・システムを用いても良く、以下で論ずる。
【0050】
図5は、装置間の遅延を決定するために使用するリング・オシレータ・ステップの単純化したダイアグラムを示す。1つの実施形態では、HFステップ信号源508が、ホスト100及びクライアント102の両方において、
図6に示すように構成される。立ち上がりエッジが、ホスト100において起動される一方で、クライアント(図
5では、クライアント102)は、そのエッジがローに維持され、これによって、高速なエッジが、500で、そして遅れて504で現れる。この遅延は、
図8において、800で示されている。このエッジは、XORゲートを通過し、802の伝播遅延の後に、506において現れる。このエッジは、502においてホスト100へ戻り、804の伝播遅延の後に受信される。このエッジは、ホスト100中のXORゲートで反転され、このサイクルを繰り返すことで、2*(800+802+806+806)に等しい時間周期のリング・オシレータを形成する。
【0051】
別の実施形態では、HFステップ信号源508を、
図7に示すように構成することもできる。そのタイミング・ダイヤグラムは、リング・オシレータの周波数を測定する代わりに、そのパルスがホスト100でデジタル化され、その幅が測定されることを除けば、同じに見える。
【0052】
高周波数(HF)ステップ信号源をリング・オシレータ構造に構成することにより、オシロスコープ間のケーブルのおおよその長さの決定が、速く、簡単である。ホスト及びクライアント間のHF Step In(HFステップ入力)、HF Step Out(HFステップ出力)、AcqReady_In、AcqReady_Out、Run_In及びRun_Outから構成される6つの信号のセット(組)は、同じケーブル内に含まれるので、かなり良く整合(マッチ)していると仮定される。しかし、異なるクライアントの複数セット間で、整合の要件は必要でないし、利点でさえもない。
【0053】
TrigSyncClock114の設定を容易にするため、ホスト100及びクライアント102のHFステップ間の遅延は、デジタイザを用いてホストでデジタル化した
図8に示すようなパルスの幅を測定することによって決定できる。パルスは、ホストによって始まり、クライアントを通って伝播し、パルスがホストに戻って到着することによって終わり、そして、ケーブルの遅延の約2倍である。これは、ホスト及びクライアントの対のそれぞれについて繰り返される。これに代えて(そして、好ましくは)、もしHFステップ信号源508中のラッチを除去したなら、リング・オシレータは、
図5に示すように、クライアント及びホスト間に形成される。すると、発振の周期は、オシロスコープ間の往復伝播遅延の2倍である。正確且つ高速に、このクロック周期を測定するために、タイマ・カウンタをホスト・コントローラ中に構成しても良い。こうしたテクニックは、クライアントに、HFステップ信号をデジタル化するか又はタイムスタンプする能力がない状況において、有益である。
【0054】
最も長いケーブル・セットに関してマージンを確保する必要から、マッチング(整合)ができないという程度まで、TrigSyncClocks114の周波数は落とさなければならない。DigSyncClockの周波数は、変化しないままであることに注意されたい。これらは、各オシロスコープ内で固定であり、内部のタイミング要件によって設定される。このTrigSyncClock114の周期は、常に、DigSyncClock112の周期の整数倍でなければならない。このシステムは、異なる内部DigSyncClock周期を有する非類似の複数オシロスコープ・モデルが、依然としてこの技術の利点を享受することを可能にする。これは、オシロスコープの異なる世代間の下位及び上位互換も可能にする。このような場合の要件は、TrigSyncClock114の周期が、異なる複数オシロスコープにおける全てのDigSyncClock周期の整数倍でなければならない、というものである。
【0055】
ホストからクライアントへ、そして再度戻ってくる往復距離がわかれば、各方向でHFステップの長さの整合を可能な限り良く確保することによって、片道の距離の近似値が決定される。この情報があれば、ホスト及びクライアントそれぞれ中のデジタイザがHFステップ信号を受けたとき、このステップを受けたおおよその相対的な時間がわかり、従って、複数オシロスコープ間の相対的な遅延がわかる。
【0056】
同じケーブル・セットが使われている限り、整合した遅延が、ある電源投入サイクルからその次へと維持されるであろう。もし電源投入サイクル間にケーブル・セットが変更されるか、再アレンジされると、複数オシロスコープ間の同期通信を確保するために、上述の遅延測定シーケンスが繰り返されるであろう。
【0057】
もしユーザが複数オシロスコープ間の極めて正確な位相アライメントを望むなら、既知の整合させた信号対が、ホスト上のあるチャンネルと、クライアント上のあるチャンネルに供給される。そのデジタル化した信号間の相対的な遅延を測定することによって、複数オシロスコープ間の正確な相対遅延がわかる。この測定値を、HFステップ校正信号を用いて得たものと比較することによって、この正確なアライメントが、電源サイクル間で維持される。これは、単一のオシロスコープ内の複数チャンネルをアライメントするために、工場で採用されている手続と類似している。内部の複数デジタイザ間の相互接続は、ユーザによって変更できないので、1つのオシロスコープ内における校正は、繰り返す必要はない。
【0058】
本発明は、スタンド・アローンのユニットとして使用されるときに、オシロスコープの高速更新レートの性能を犠牲にすることなしに、複数オシロスコープ間の任意のケーブル距離について、うまく機能する。更に、本発明を用いることで、異なるオシロスコープ間のデジタル化(Digitizing)チャンネル間のジッタが、1つのオシロスコープ内の複数チャンネル間のジッタと同様となる。本発明は、異なる複数オシロスコープ・モデルについても、内部のクロック処理アーキテクチャが異なっていても、うまく機能し、従って、下位及び上位互換がサポートされる。更に、オシロスコープは、ユーザによって、ホスト又はクライアントとして、簡単に設定できる。
【0059】
好ましい実施形態において、本発明の原理を説明及び図示してきたが、こうした原理から離れることなく、本発明は、構成や細部において変更できることは当然である。例えば、本発明の概念は、以下のように記述しても良い。
【0060】
即ち、本発明の概念1は、複数のオシロスコープを同期させる試験測定システムであって、
クロック信号を出力するよう構成されるホスト・タイムベース・クロックと、
上記クロック信号に基づくデジタイザ同期クロックを含むホスト・デジタイザと、
上記クロック信号に基づくトリガ同期クロックを含み、入力信号のアクイジションを開始するための実行信号(Run signal)を出力するよう構成されるホスト・アクイジション・コントローラと
を有するホスト・オシロスコープと、
少なくとも1つのクライアント・オシロスコープとを具え、
上記クライアント・オシロスコープのそれぞれが、
上記ホスト・タイムベース・クロックからの上記クロック信号を受け、上記クロック信号を出力するよう構成されるクライアント・タイムベース・クロックと、
上記クロック信号に基づくデジタイザ同期クロックを含むクライアント・デジタイザと、
上記クロック信号に基づくトリガ同期クロックを含むクライアント・アクイジション・コントローラと
を有し、上記クライアント・アクイジション・コントローラのそれぞれが、上記実行信号を上記ホスト・アクイジション・コントローラから受けて、上記実行信号に基いて、新たな入力信号のアクイジションを開始するよう構成される。
【0061】
本発明の概念2は、上記概念1の試験測定システムであって、このとき、上記クライアント・アクイジション・コントローラのそれぞれが、上記クライアント・オシロスコープがアクイジションを受ける準備が完了したときに、アクイジション準備完了(Acquisition Ready)信号を出力するよう構成されると共に、上記ホスト・アクイジション・コントローラが、上記クライアントのそれぞれから上記アクイジション準備完了信号を受けたときに、上記実行信号(Run signal)を出力するよう更に構成されている。
【0062】
本発明の概念3は、上記概念1の試験測定システムであって、このとき、上記ホスト・オシロスコープ及び上記クライアント・オシロスコープのそれぞれは、トリガを更に含み、各トリガがトリガ信号を出力するよう構成され、上記ホスト・オシロスコープ及びクライアント・オシロスコープのそれぞれが、上記トリガ信号に基づいてアクイジション停止信号を出力するよう構成され、上記ホスト・アクイジション・コントローラが、上記アクイジション停止信号に基いて上記システム中の全てのオシロスコープに上記アクイジション停止信号を出力するよう構成される。
【0063】
本発明の概念4は、上記概念1の試験測定システムであって、このとき、各オシロスコープの上記デジタイザ同期クロックと、各オシロスコープの上記トリガ同期クロックは、同じ周波数である。
【0064】
本発明の概念5は、上記概念1の試験測定システムであって、このとき、各オシロスコープの上記トリガ同期クロックの周期は、各オシロスコープの上記デジタイザ同期クロックの周期の倍数である。
【0065】
本発明の概念6は、上記概念1の試験測定システムであって、このとき、各オシロスコープの上記トリガ同
期クロックの周期は、複数の上記オシロスコープの全ての上記デジタイザ同期クロックの周期の最小公倍数の倍数である。
【0066】
本発明の概念7は、上記概念1の試験測定システムであって、このとき、各デジタイザ同期クロックの位相は、上記デジタイザ同期クロックの立ち上がりエッジが、各トリガ同期クロックのハイ出力の間の中間となるまで進められる。
【0067】
本発明の概念8は、上記概念1の試験測定システムであって、このとき、各トリガ同期クロックの位相は、校正信号に基いて設定される。
【0068】
本発明の概念9は、上記概念1の試験測定システムであって、このとき、各クライアント・トリガ同期クロックの周波数は、更に、上記ホスト・オシロスコープ及び各クライアント・オシロスコープ間の絶対的な遅延に基づいている。
【0069】
本発明の概念10は、複数のオシロスコープを同期させる方法であって、
ホスト・オシロスコープから、ホスト・タイムベースからのホスト・クロック信号を複数のクライアントに出力する処理と、
上記ホスト・クロック信号に基いてホスト・デジタイザ同期クロックを設定する処理と、
上記ホスト・クロック信号に基いてホスト・トリガ同期クロックを設定する処理と、
入力信号のアクイジションを開始するための実行信号を生成する処理と、
上記複数のクライアントに、対応する複数の入力信号のアクイジションを開始するための上記実行信号を出力する処理と
を具える方法。
【0070】
本発明の概念11は、上記概念10の方法であって、
上記ホスト・オシロスコープでトリガ信号を受ける処理と、
上記トリガ信号を受けたときに、
アクイジション停止信号を出力する処理と
を更に具えている。
【0071】
本発明の概念12は、上記概念10の方法であって、
クライアント・オシロスコープからトリガ信号を受ける処理と、
上記トリガ信号を受けたときに、アクイジション停止信号を上記ホストへ出力する処理と、
上記ホストからの受けたアクイジション停止信号に基いて、上記アクイジションを停止する処理と
を更に具えている。
【0072】
本発明の概念13は、上記概念10の方法であって、このとき、各オシロスコープの上記トリガ同期クロックの周期は、上記オシロスコープ中の全ての上記デジタイザ同期クロックの周期の最小公倍数の倍数であって、各トリガ同期クロックの位相は、校正信号に基づいて設定される。
【0073】
本発明の概念14は、複数のオシロスコープを同期させる方法であって、
ホスト・クロック信号をクライアントで受ける処理と、
上記ホスト・クロック信号に基いてクライアント・デジタイザ同期クロックを設定する処理と、
上記ホスト・クロック信号に基いてクライアント・トリガ同期クロックを設定する処理と、
アクイジション準備完了信号をホストに出力する処理と、
上記ホストから実行信号を受ける処理と、
上記実行信号を受けたときに、アクイジションを開始する処理と
を具える方法。
【0074】
本発明の概念15は、上記概念14の方法であって、
トリガ信号を出力する処理と、
上記トリガ信号に応じて、第1のアクイジション停止信号を出力する処理と、
ホストから第2のアクイジション停止信号を受ける処理と、
上記アクイジション停止信号に応答して上記アクイジションを停止する処理と
を更に具えている。