特許第6799441号(P6799441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799441
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】ベーカリー製品用湯種生地
(51)【国際特許分類】
   A21D 10/00 20060101AFI20201207BHJP
   A21D 2/02 20060101ALI20201207BHJP
   A21D 2/08 20060101ALI20201207BHJP
   A21D 2/16 20060101ALI20201207BHJP
   A21D 8/02 20060101ALI20201207BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20201207BHJP
【FI】
   A21D10/00
   A21D2/02
   A21D2/08
   A21D2/16
   A21D8/02
   A21D13/00
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-224119(P2016-224119)
(22)【出願日】2016年11月17日
(65)【公開番号】特開2018-78844(P2018-78844A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白羽根 みき
【審査官】 大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−213474(JP,A)
【文献】 特開2003−265093(JP,A)
【文献】 特開2003−265094(JP,A)
【文献】 特開2004−000029(JP,A)
【文献】 特開2003−023955(JP,A)
【文献】 特開2011−097923(JP,A)
【文献】 特開2009−201469(JP,A)
【文献】 特開2009−201468(JP,A)
【文献】 特開2010−259411(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/101972(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 2/00 − 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して、乳清ミネラルを、固形分として0.030.2質量部、糖類を固形分として1〜30質量部、食用油脂を1〜250質量部、水を50〜150質量部含有するベーカリー製品用湯種生地。
【請求項2】
上記乳清ミネラルを含有する乳化油脂を使用した請求項記載のベーカリー製品用湯種生地。
【請求項3】
上記乳化油脂の乳化状態が水中油型である、請求項2に記載のベーカリー製品用湯種生地。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のベーカリー製品用湯種生地を含有するベーカリー生地。
【請求項5】
請求項4記載のベーカリー生地の焼成及び/又はフライ品であるベーカリー製品。
【請求項6】
穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して、乳清ミネラルを、固形分として0.030.2質量部、糖類を固形分として1〜30質量部及び食用油脂を1〜250質量部含有する種生地材料を、80〜100℃の水の存在下に混捏するベーカリー製品用湯種生地の製造方法であって、上記水の量が穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して、50〜150質量部である、ベーカリー製品用湯種生地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本捏生地への混合性が良好であり、且つ、風味に優れ、内相が良好でソフトでもっちりした食感を示すベーカリー製品を製造するためのベーカリー製品用湯種生地、及びこれを用いたベーカリー製品、並びに、ベーカリー製品用湯種生地の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、もっちりとした食感のパンや洋菓子等のベーカリー製品を得る方法の1種として、湯種法が多く用いられるようになってきている。湯種法とは、ベーカリー製品の製造にあたり、その穀粉材料の一部を高温の水の存在下で混捏して湯種生地とし、本捏工程で、この湯種生地にさらに残りの穀粉材料、中種生地、イースト、常温の水、副原料等を加えて混捏してベーカリー生地とし、常法によりベーカリー製品を得る方法である。
【0003】
しかし、湯種生地は、高温の水の存在下で混捏されることにより、穀粉原料に含まれる澱粉質の多くが糊化されているため、粘弾性の高い生地になっており、本捏工程で粉末原料や水などの原材料となかなか均一に混合することができないという問題、すなわち、混合性が悪いという問題があった。
【0004】
この混合性の問題については水分含量の高い湯種生地にすることで一応解消可能である。しかし、水分含量の高い湯種生地は生地の老化が著しく、特に、冷蔵温度に保存すると急激に老化が進み、極端な場合には離水を起こし、かびが発生したりする問題もある。そして、そのような老化した湯種生地を用いてベーカリー生地を製造すると、生地の伸展性が低下するため、得られるベーカリー製品の内相が荒れたものとなったり、ぱさついた食感になってしまう問題があった。
【0005】
そこで、湯種生地に油脂を添加する方法(例えば特許文献1参照)や、湯種生地に特定の乳蛋白を含有させる方法(例えば特許文献2参照)や、湯種生地に特定の水中油型乳化物を配合する方法(例えば特許文献3参照)、湯種生地に乳化剤を配合する方法(例えば特許文献4参照)、湯種生地に酸性水中油型乳化油脂組成物を配合する方法(例えば特許文献5参照)、湯種生地に特定の乳原料を配合する方法(例えば特許文献6参照)などの方法により湯種生地の老化防止、さらには得られるベーカリー製品の内相や食感を改良する試みが行なわれている。
【0006】
しかし、これらの方法では本捏時の混合性の問題と湯種生地の老化の問題を同時に解決できるものではなく、特に水分含量の高い湯種生地を使用した場合はその効果が十分ではないことに加え、得られたベーカリー製品の食感がねちゃついたものとなってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−265093号公報
【特許文献2】特開2003−265094号公報
【特許文献3】特開2004−000029号公報
【特許文献4】特開2003−023955号公報
【特許文献5】特開2009−201468号公報
【特許文献6】特開2009−201469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は、本捏生地への混合性が良好である湯種生地、及び、風味に優れ、内相が良好でソフトでもっちりした食感を示すベーカリー製品を得ることができるベーカリー生地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意研究した結果、乳清ミネラルを湯種生地に添加することで、上記目的を達成し得ることを知見した。
すなわち本発明は、上記知見に基づきなされたもので、穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して、乳清ミネラルを、固形分として0.001〜1質量部含有するベーカリー製品用湯種生地を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、上記ベーカリー製品用湯種生地を含有するベーカリー生地を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、上記ベーカリー生地の焼成及び/又はフライ品であるベーカリー製品を提供するものである。
【0012】
さらに、本発明は、穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して、乳清ミネラルを、固形分として0.001〜1質量部含有する種生地材料を、80〜100℃の水の存在下に混捏するベーカリー製品用湯種生地の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のベーカリー製品用湯種生地によれば、水分含量を増やさずとも、本捏生地への混合性が良好であり、且つ、風味に優れ、内相が良好でソフトでもっちりした食感を示すベーカリー製品を得ることができる。
本発明のベーカリー製品用湯種生地の製造方法によれば、水分含量を増やさずとも、本捏生地への混合性が良好であり、且つ、風味に優れ、内相が良好でソフトでもっちりした食感を示すベーカリー製品を簡単に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のベーカリー製品用湯種生地について詳細に説明する。
本発明に使用される穀粉類及び/又は澱粉類は、ベーカリー製品用湯種生地における主成分である。本発明のベーカリー製品用湯種生地においては、上記穀粉類のみを用いてもよく、上記澱粉類のみを用いてもよく、該穀粉類及び該澱粉類を組み合わせて用いてもよい。本発明で使用される穀粉類としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、フランス粉、薄力粉、デュラム粉、小麦胚芽、全粒粉、小麦ふすま、デュラム粉、大麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ麦全粒粉、大豆粉、ハトムギ粉等が挙げられる。本発明においては、上記穀粉類として例示したものの中から選ばれた1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明で使用される澱粉類としては、例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、モチ米澱粉等の澱粉や、それらの化工澱粉等が挙げられる。本発明においては、上記澱粉類として例示したものの中から選ばれた1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明では、穀粉類が好ましく用いられ、特に強力粉が好ましく用いられる。
【0015】
次に、本発明の有効成分である乳清ミネラルについて詳述する。
乳清ミネラルとは、乳又はホエイ(乳清)から、可能な限り蛋白質や乳糖を除去したものであり、高濃度に乳の灰分を含有するという特徴を有する。そのため、そのミネラル組成は、原料となる乳やホエイ中のミネラル組成に近い比率となる。
【0016】
本発明で使用する乳清ミネラルとしては、ソフトで風味良好なパンを得ることができる点で、固形分中のカルシウム含量が2質量%未満、特に1質量%未満の乳清ミネラルを使用することが好ましい。なお、該カルシウム含量は低いほど好ましい。
【0017】
牛乳から通常の製法で製造された乳清ミネラルは、固形分中のカルシウム含量が5質量%以上である。上記カルシウム含量が2質量%未満の乳清ミネラルを得る方法としては、乳又はホエイから、膜分離及び/又はイオン交換、さらには冷却により、乳糖及び蛋白質を除去して乳清ミネラルを得る際に、あらかじめカルシウムを低減した乳を使用した酸性ホエイを用いる方法、或いは、チーズ製造時に副産物として生成する甘性ホエイから乳清ミネラルを製造する際に、例えば遠心分離によってカルシウムを除去する工程を挿入することで得る方法が挙げられる。工業的に実施する上での効率やコストの点では、甘性ホエイから乳清ミネラルを製造する際に、例えば膜分離によってある程度ミネラルを濃縮した後に、カルシウムを除去する工程を挿入することで得る方法を採ることが好ましい。ここで使用する脱カルシウムの方法としては、特に限定されず、調温保持による沈殿法等の公知の方法を採ることができる。
【0018】
上記乳清ミネラルは、流動状、ペースト状、粉末状等、どのような形態であってもよい。それらの形態のうち、粉末状の形態で使用することが好ましい。乳清ミネラルを粉末状にする場合には、乳又はホエイから乳糖及び蛋白質を除去して液状の乳清ミネラルを得た後に、例えば、液状の乳清ミネラルを濃縮し、スプレードライして造粒すればよい。
【0019】
本発明のベーカリー製品用湯種生地における上記乳清ミネラルの含有割合は、穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して、乳清ミネラルを、固形分として0.001〜1質量部、より好ましくは0.01〜1質量部、さらに好ましくは0.01〜0.3質量部である。本発明において「穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して」とは、穀粉類及び澱粉類のうち、穀粉類のみ用いた場合には、穀粉類100質量部に対する割合を意味する。一方、穀粉類及び澱粉類のうち、澱粉類のみを用いた場合には、澱粉類100質量部に対する割合を意味する。穀粉類及び澱粉類の双方を用いた場合には、穀粉類と澱粉類との合計100質量部に対する割合を意味する。以下、「穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して」というときは、上記の意味で用いられる。
ここで、乳清ミネラルの含有量が0.001質量部未満であると、本発明の効果、特に混合性の改良効果がみられなくなり、1質量部超であると、得られるベーカリー製品の風味に影響を及ぼすおそれがある。
【0020】
本発明のベーカリー製品用湯種生地は、穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して糖類を固形分として好ましくは1〜30質量部、より好ましくは5〜20質量部、さらに好ましくは5〜15質量部含有するものであることが好ましい。糖類の含有割合が1質量部未満であると、湯種生地の耐老化性が悪化してしまうおそれがある。30質量部を超えると、湯種生地製造時に穀粉類及び/又は澱粉類の糊化が十分に行なわれないおそれがあり、結果として良好な内相でソフトでもっちりした食感を示すベーカリー製品が得られないおそれがある。
【0021】
本発明のベーカリー製品用湯種生地に使用することのできる糖類としては、上白糖(砂糖)、グラニュー糖、粉糖、蔗糖、液糖、はちみつ、ブドウ糖、果糖、黒糖、麦芽糖、乳糖、シクロデキストリン、酵素糖化水飴、酸糖化水飴、還元ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、パラチニット、ラクチトール、直鎖オリゴ糖アルコール、分岐オリゴ糖アルコール、高糖化還元水飴、還元麦芽糖水飴、還元水飴、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、キシロース、トレハロース、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、アラビノース、パラチノースオリゴ糖、アガロオリゴ糖、キチンオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ヘミセルロース、モラセス、イソマルトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、カップリングシュガー、ラフィノース、ラクチュロース、テアンデオリゴ糖、ゲンチオリゴ糖等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0022】
本発明のベーカリー製品用湯種生地においては食用油脂を含有することが好ましい。食用油脂を含有することで、ベーカリー製品用湯種生地の老化耐性がより向上し、かつ、ベーカリー生地の機械耐性も高まり、且つ、得られるベーカリー製品の食感がソフトで良好な口溶けを有し老化耐性も高いものとなる。
【0023】
本発明のベーカリー製品用湯種生地において使用される食用油脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油、バターオイル等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。さらに食用油脂を含有する乳化物、例えば、バター、マーガリン、クリーム、牛乳、濃縮乳等や、ショートニング、流動ショートニング等の加工油脂製品も用いることもできる。本発明のベーカリー製品用湯種生地においては、上記の食用油脂として例示したものの中から選ばれた1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明のベーカリー製品用湯種生地における食用油脂の含有量は、穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して1〜250質量部である。食用油脂の量が1質量部未満であると耐老化性を得る効果が十分でなく、好ましくは5質量部以上である。一方、食用油脂の含有量が多いほど湯種生地の耐老化性、及び、得られるベーカリー製品の耐老化性は向上するが、250質量部を超えると湯種生地として製造することが困難となる。また、作業性及び出来上がるベーカリー製品の食味の点から、食用油脂の含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。従って、上記食用油脂の含有量は、穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して5〜150質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましい。
【0025】
また、本発明のベーカリー製品用湯種生地が食用油脂を含有する場合、上記乳清ミネラルを含有した乳化油脂を使用すると、得られるベーカリー製品の風味が向上する点で好ましい。このときの乳化油脂の乳化状態としては、油中水型或いは水中油型のいずれでもよいが、生地への分散性がより良好である点から水中油型のものが好ましい。また、上記乳化油脂における乳清ミネラルの含有量は、好ましくは乳化油脂中、好ましくは0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%である。上記乳化油脂における食用油脂の含有量は好ましくは乳化油脂中、好ましくは5〜65質量%、より好ましくは10〜50質量%である。上記乳化油脂における水の含有量は乳化油脂中、好ましくは30〜94.95質量%、より好ましくは49〜89.5質量%である。上記の水としては、湯種生地の製造に用いられる物を特に制限なく用いることができ、具体的には、天然水や水道水が挙げられる。
なお上記乳化油脂は、その他の成分として必要により、上記糖類に加え、乳化剤、酸化防止剤、糖アルコール、澱粉、小麦粉、無機塩及び有機酸塩、ゲル化剤、乳製品、乳蛋白、酵素、卵製品、着香料、調味料等の呈味成分、着色料、保存料、pH調整剤等を用いることができる。
【0026】
なお、本発明のベーカリー製品用湯種生地における水の含有量は、上記食用油脂の乳化物、上記乳化油脂をはじめ下記のその他に含まれる水の含量も含め、穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して好ましくは50〜150質量部、より好ましくは70〜130質量部である。上記の水としては、湯種生地の製造に用いられる物を特に制限なく用いることができ、具体的には、天然水や水道水が挙げられる。
【0027】
また、本発明のベーカリー製品用湯種生地は、上記穀粉類、澱粉類、乳清ミネラル、糖類、食用油脂、及び水以外に、必要に応じて、従来ベーカリー製品用湯種生地に用いられている、増粘安定剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤、甘味料、乳や乳製品、卵製品、無機塩、有機酸塩、キモシン等の蛋白質分解酵素、トランスグルタミナーゼ、ラクターゼ(β−ガラクトシダーゼ)、α―アミラーゼ、グルコアミラーゼ等の糖質分解酵素、ジグリセライド、植物ステロール、植物ステロールエステル、果汁、濃縮果汁、果汁パウダー、乾燥果実、果肉、野菜、野菜汁、香辛料、香辛料抽出物、ハーブ、直鎖デキストリン・分枝デキストン・環状デキストン等のデキストリン類、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、その他各種食品素材、着香料、苦味料、調味料等の呈味成分、着色料、保存料、酸化防止剤、pH調整剤、強化剤等を含有する場合がある。
【0028】
次に、本発明のベーカリー製品用湯種生地の製造方法について述べる。
本発明のベーカリー製品用湯種生地の製造方法は、穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して、乳清ミネラルを、固形分として0.001〜1質量部含有する種生地材料を、80〜100℃の水の存在下に混捏するものである。
【0029】
混捏方法は、従来湯種法に用いられている方法であれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、種生地材料に熱湯を加えて混捏する方法、或いは種生地材料に常温の水又は温湯を加え、加熱しながら混捏する方法等が挙げられ、混捏後の生地温度(捏上温度)が50〜80℃、好ましくは55〜70℃となるようにすれば良い。水の量及び混捏時間は何ら限定されるものではなく、従来の湯種法において通常用いられている範囲であればよく、例えば、水の量は、穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して50〜150質量部、混捏時間は、2〜20分である。
【0030】
本発明のベーカリー製品用湯種生地の製造方法においては、上記種生地材料は食用油脂を含有していてもよい。上記種生地材料が食用油脂を含有する場合、該種生地材料における食用油脂の含有量は、穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対し1〜250質量部とすることが好ましく、5〜150質量部とすることがより好ましく、5〜50質量部とすることがより好ましい。また、上記種生地材料が食用油脂を含有する場合、上記食用油脂及び上記乳清ミネラルを、該食用油脂及び該乳清ミネラルを含有する乳化油脂の形態で穀粉類及び/又は澱粉類に加えることが好ましい。上記乳化油脂における食用油脂、乳清ミネラル、水等の含有量、乳化油脂の乳化状態等に関しては上述した通りである。上記乳化油脂の製造方法に関しては特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。
【0031】
また、本発明に使用する上記食用油脂として乳化物を使用する場合、或いは上記乳化油脂を使用する場合は、該乳化物或いは該乳化油脂を80〜100℃に加熱して、該乳化物或いは該乳化油脂に含まれる水分を混捏の際に用いる80〜100℃の水として用いることができる。
【0032】
本発明のベーカリー生地は、上記ベーカリー製品用湯種生地を含有するものである。
本発明のベーカリー生地における、上記ベーカリー製品用湯種生地の含有量は、湯種生地に使用する穀粉類及び/又は澱粉類を含むベーカリー生地中の全穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対し10〜100質量部、好ましくは30〜80質量部である。
【0033】
なお、上記ベーカリー生地の種類としては、特に限定されるものではないが、例えば、食パン、バラエティブレッド、菓子パン、フランスパン、イギリスパン、ライ麦パン、デニッシュ・ペストリー、イングリッシュマフィン、グリッシーニ、コーヒーケーキ、ブリオッシュ、シュトーレン、パネトーネ、クロワッサン、イーストパイ、ピタ、ナン、マフィン、蒸しパン、イーストドーナツ、ワッフル、パイ等のパン類生地や、スナックカステラ、バターケーキ、スポンジケーキ、シフォンケーキ、サンドケーキ等のケーキ生地、さらにはこれらの冷凍品や冷蔵品が挙げられる。
なかでも本発明では、湯種生地を使用することで大きな食感改良効果が得られることからパン類生地であることが好ましく、より好ましくは、食パン生地、バラエティブレッド生地、菓子パン生地、フランスパン生地である。
【0034】
なお、該ベーカリー生地の製造方法は、一般的なベーカリー生地の製造方法に従って得ることができ、パン類であれば中種法、ストレート法等、ケーキ類であれば、オールインミックス法、シュガーバッター法、フラワーバッター法等を適宜選択可能である。
例えば、パン類の製造方法を例に挙げると、従来公知の湯種法によるパン類の製造方法において用いられている方法は全て用いることができる。例えば、ベーカリー製品用湯種生地に、小麦粉、イースト、その他副原料、常温の水を加えて常法により混捏する方法、ベーカリー製品用湯種生地とは別に、小麦粉、イースト、その他副原料、常温の水を加えて常法により混捏した中種生地を得、ベーカリー製品用湯種生地と中種生地とを(必要に応じて、さらに小麦粉、その他副原料とともに)混合して常法により混捏する方法等を挙げることができる。
【0035】
本発明のベーカリー製品は上記ベーカリー生地を焼成及び/又はフライしてなるものであり、良好な内相でソフトでもっちりした食感を示すものである。
焼成方法やフライ方法は、特に制限されず、一般的なベーカリー生地の製造方法に従って得ることができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0037】
<乳清ミネラルの製造>
〔製造例1〕
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエイをナノ濾過膜分離した後、さらに逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮し、次いで、80℃、20分の加熱処理をして生じた沈殿を遠心分離して除去し、これをさらにエバポレーターで濃縮し、スプレードライ法により、固形分98質量%の乳清ミネラルAを得た。得られた乳清ミネラルAの固形分中のカルシウム含量は0.4質量%であった。
【0038】
〔製造例2〕
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエイをナノ濾過膜分離した後、さらに逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮し、次いで、これをさらにエバポレーターで濃縮し、スプレードライ法により、固形分98質量%の乳清ミネラルBを得た。得られた乳清ミネラルBの固形分中のカルシウム含量は2.2質量%であった。
【0039】
<乳化油脂組成物の製造>
〔製造例3〕
パーム油8質量部にレシチン0.1質量部とグリセリン脂肪酸エステル0.1質量部を溶解した油相を用意した。一方、水68質量部に乳糖8質量部、脱脂粉乳(糖含量=50質量%、蛋白質含量=36質量%)15質量部、乳清ミネラルA0.5質量部、リン酸塩0.2質量部、香料0.1質量部を溶解した水相を用意した。該油相と水相を65℃で混合し、攪拌して予備乳化物を調製した。該予備乳化物をVTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機ステリラボ)で143℃で5秒間殺菌し、10MPaの圧力で均質化後、5℃まで冷却し、水中油型の形態である乳化油脂組成物Aを得た。
【0040】
〔製造例4〕
上記製造例1で得られた乳清ミネラルA0.5質量部に代えて、製造例2で得られた乳清ミネラルB0.5質量部を使用した以外は製造例3と同様の配合・製造で、水中油型の形態である乳化油脂組成物Bを得た。
〔製造例5〕
【0041】
乳清ミネラルAを配合せず、水の配合量を68質量部から68.5質量部に変更した以外は製造例3と同様の配合・製造で、水中油型の形態である乳化油脂組成物Cを得た。
【0042】
<ベーカリー製品用湯種生地、ベーカリー生地、及び、ベーカリー製品の製造>
〔実施例1〕
強力粉500gに、製造例1で得られた乳清ミネラルA0.5g、砂糖50g、大豆液状油50g、及び熱水(95℃)500gを加えて十分に混捏し、ベーカリー製品用湯種生地(A)を得た。なお、捏上温度は70℃であった。
得られたベーカリー製品用湯種生地(A)は、穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して乳清ミネラルを固形分として0.1質量部、糖類を10質量部、食用油脂10質量部を含有するものであった。
【0043】
ここで得られたこのベーカリー製品用湯種生地(A)は5℃で3日間保存した。その後、ベーカリー製品用湯種生地(A)に、強力粉1500g、砂糖100g、イースト40g、イーストフード2g、食塩40g、及び水(常温)1120gを加えて、低速3分、中速5分混捏し、ここでマーガリン100gを加え、さらに低速2分、中速5分混捏してベーカリー生地(A)を得た。
ここで湯種生地(A)の本捏生地への混合性について、目視により観察し、下記の評価基準に従って評価し、結果を表1に記載した。
【0044】
得られたベーカリー生地(A)は、フロアタイム60分とったのち、200gに分割・丸め、ベンチタイム15分とったのち、モルダーで成形し、これを3斤のプルマン型に6本入れ、38℃、相対湿度85%のホイロで60分発酵させ、蓋をして、固定窯で、200℃45分焼成してベーカリー製品(A)(プルマンブレッド)を得た。
得られたベーカリー製品(A)は、25℃で24時間保管した後、スライサーで12mm厚にスライスし、食感、風味、及び、内相の評価の比較試験を行い、結果を表1に記載した。
【0045】
〔実施例2〕
実施例1における乳清ミネラルA0.5gに代えて乳清ミネラルB0.5gを使用した以外は実施例1と同様の配合、製法でベーカリー製品用湯種生地(B)、ベーカリー生地(B)、及び、ベーカリー製品(B)を得た。
得られたベーカリー製品用湯種生地(B)は、穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して乳清ミネラルを固形分として0.1質量部、糖類を10質量部、食用油脂10質量部を含有するものであった。
湯種生地の混合性、及び、ベーカリー製品の評価については実施例1と同様に行い、結果を表1に記載した。
【0046】
〔実施例3〕
強力粉500gに、製造例3で得られた乳化油脂組成物A100g、砂糖35g、大豆液状油42g、及び熱水(95℃)430gを加えて十分に混捏し、ベーカリー製品用湯種生地(C)を得た。なお、捏上温度は70℃であった。
得られたベーカリー製品用湯種生地(C)は、穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して乳清ミネラルを固形分として0.1質量部、糖類を10質量部、食用油脂10質量部を含有するものであった。
実施例1におけるベーカリー製品用湯種生地(A)に代えてベーカリー製品用湯種生地(C)を使用した以外は実施例1と同様の配合、製法でベーカリー生地(C)、及び、ベーカリー製品(C)を得た。
湯種生地の混合性、及び、ベーカリー製品の評価については実施例1と同様に行い、結果を表1に記載した。
【0047】
〔実施例4〕
実施例3における乳化油脂組成物A100gに代えて乳化油脂組成物B100gを使用した以外は実施例3と同様の配合、製法でベーカリー製品用湯種生地(D)、ベーカリー生地(D)、及び、ベーカリー製品(D)を得た。
得られたベーカリー製品用湯種生地(D)は、穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して乳清ミネラルを固形分として0.1質量部、糖類を10質量部、食用油脂10質量部を含有するものであった。
湯種生地の混合性、及び、ベーカリー製品の評価については実施例1と同様に行い、結果を表1に記載した。
【0048】
〔実施例5〕
実施例1における乳清ミネラルAの添加量を0.5gから0.15gに変更した以外は実施例1と同様の配合、製法でベーカリー製品用湯種生地(E)、ベーカリー生地(E)、及び、ベーカリー製品(E)を得た。
得られたベーカリー製品用湯種生地(E)は、穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して乳清ミネラルを固形分として0.03質量部、糖類を10質量部、食用油脂10質量部を含有するものであった。
湯種生地の混合性、及び、ベーカリー製品の評価については実施例1と同様に行い、結果を表1に記載した。
【0049】
〔実施例6〕
実施例1における乳清ミネラルAの添加量を0.5gから1.0gに変更した以外は実施例1と同様の配合、製法でベーカリー製品用湯種生地(F)、ベーカリー生地(F)、及び、ベーカリー製品(F)を得た。
得られたベーカリー製品用湯種生地(F)は、穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して乳清ミネラルを固形分として0.2質量部、糖類を10質量部、食用油脂10質量部を含有するものであった。
湯種生地の混合性、及び、ベーカリー製品の評価については実施例1と同様に行い、結果を表1に記載した。
【0050】
〔比較例1〕
実施例1における乳清ミネラルA0.5gを無添加とした以外は実施例1と同様の配合、製法でベーカリー製品用湯種生地(G)、ベーカリー生地(G)、及び、ベーカリー製品(G)を得た。
得られたベーカリー製品用湯種生地(G)は、乳清ミネラルを含有せず、穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して糖類を10質量部、食用油脂10質量部を含有するものであった。
湯種生地の混合性、及び、ベーカリー製品の評価については実施例1と同様に行い、結果を表1に記載した。
【0051】
〔比較例2〕
実施例3における乳化油脂組成物A100gに代えて乳化油脂組成物C100gを使用した以外は実施例3と同様の配合、製法でベーカリー製品用湯種生地(H)、ベーカリー生地(H)、及び、ベーカリー製品(H)を得た。
得られたベーカリー製品用湯種生地(H)は、乳清ミネラルを含有せず、穀粉類及び/又は澱粉類100質量部に対して糖類を10質量部、食用油脂10質量部を含有するものであった。
湯種生地の混合性、及び、ベーカリー製品の評価については実施例1と同様に行い、結果を表1に記載した。
【0052】
<混合性評価基準>
◎:極めて良好であった。
○:良好であった。
△:やや不良であった。
×:塊が生じていた。
<パンのソフト性評価基準>
◎:極めて良好であった。
○:良好であった。
△:若干ぱさついた食感であった。
×:老化しており硬く、ぱさついた食感であった。
<パンのもっちり感評価基準>
◎:極めて良好であった。
○:良好であった。
△:もっちり感が弱いものであった。
×:もっちり感が感じられないものであった。
<パンの風味評価基準>
◎:しっかりした香りと甘みが感じられ、極めて良好であった。
○:香りと甘みが感じられ、良好であった。
△:香りと甘みがやや弱いものであった。
×:香りと甘みが弱いものであった。
<パンの内相の評価基準>
◎:極めて良好であった。
○:良好であった。
△:やや不均質な内相であった。
×:荒れた内相であった。
【0053】
【表1】