(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799467
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20201207BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20201207BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20201207BHJP
B24B 7/24 20060101ALI20201207BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 B
H01L21/78 V
H01L21/304 601Z
B23K26/53
B24B7/24 E
B24B7/04 A
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-2551(P2017-2551)
(22)【出願日】2017年1月11日
(65)【公開番号】特開2018-113323(P2018-113323A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 隆太郎
【審査官】
宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−225586(JP,A)
【文献】
特開2016−213235(JP,A)
【文献】
特開2009−302278(JP,A)
【文献】
特開2015−192025(JP,A)
【文献】
特開2016−127098(JP,A)
【文献】
特開2016−096295(JP,A)
【文献】
特開2006−231413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/53
B24B 7/04
B24B 7/24
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に分割予定ラインで区画されデバイスが形成され外周縁が面取りされた半導体ウエーハの表面とガラス板とが接着部材で接着され一体となった貼り合わせウエーハを該分割予定ラインに沿って分割してチップを形成するウエーハの加工方法であって、
該半導体ウエーハを加工する半導体ウエーハ加工工程と、該ガラス板を加工するガラス板加工工程とを備え、
該半導体ウエーハ加工工程は、該半導体ウエーハの該外周縁の面取り部分を切削ブレードによって除去する面取り除去工程と、
該面取り除去工程を実施した後、該半導体ウエーハの裏面を研削砥石によって研削するウエーハ研削工程と、
該ウエーハ研削工程で研削した該裏面側から該半導体ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザ光線を照射して該分割予定ラインに沿ってウエーハ分割起点を形成するウエーハ分割起点形成工程とを備え、
該ガラス板加工工程は、該ガラス板に対して透過性を有する波長のレーザ光線を照射して該分割予定ラインに沿って該ガラス板の厚み方向に延在するガラス板分割起点を内部に形成するガラス分割起点形成工程と、
該ガラス板を該研削砥石によって研削するガラス板研削工程とを備え、
該半導体ウエーハ加工工程及び該ガラス板加工工程を実施した後、開口を有するリングフレームにダイシングテープを貼着し該開口から露出した該ダイシングテープに該ガラス板側を貼着し該ダイシングテープを介して該リングフレームで該ウエーハを支持するワークセットを形成するワークセット形成工程と、
該分割予定ラインに沿って形成された該ガラス板分割起点と該ウエーハ分割起点とに外力を加えることにより該半導体ウエーハと該ガラス板とを該分割予定ラインに沿って分割してチップを形成する分割工程と、を備えるウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板に貼り合わせられたウエーハを個々のチップに分割するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チップパッケージの製造に使用されるウエーハの外周縁は、搬送などの際に欠け等が生じるのを防ぐために、面取り加工が施されている。しかし、外周縁が面取りされたウエーハを研削して薄くすると、ウエーハの外周縁がナイフエッジ状に尖ってしまい、却ってウエーハが欠けやすくなる。そのため、ウエーハを研削する前に、ウエーハの外周縁の面取りされた部分を切削除去する加工(エッジトリミング)を行っている。また、2枚のウエーハを貼り合わせて構成される積層ウエーハは、外周縁の面取り部分が除去されたウエーハを研削して薄化した後、かかるウエーハを別のウエーハに貼り合わせて形成されている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
ここで、イメージセンサ、カメラモジュールなどのチップパッケージを形成するためには、CMOSセンサが形成されたウエーハとLOGIC−ICが形成されたウエーハとを例えば酸化膜で貼り合わせて2層構造の積層ウエーハを形成し、この積層ウエーハをガラス板に接着させてから、積層ウエーハ及びガラス板とを分割することにより、個々のチップを形成している。ガラス板は、積層ウエーハに容易に貼り合わせできるように、ある程度の厚みを有している。そのため、個々のチップに分割する前には、ガラス板を薄化する必要があるが、上記のウエーハと同様に、ガラス板の外周縁にも面取り加工が施されていることから、外周縁が面取りされたガラス板を研削して薄くすると、ガラス板の外周縁がナイフエッジ状に尖って欠けやすくなる。
【0004】
そこで、従来のウエーハの加工方法においては、例えば、
図16に示すように、研削済みの半導体ウエーハ21を研削前の半導体ウエーハ22に積層して形成した2層構造の積層ウエーハ20をガラス板23に接着して貼り合わせたら、切削ブレード24によって半導体ウエーハ22の外周縁200の面取り部分とガラス板23の外周縁230の面取り部分とを同時にエッジトリミングすることによって除去している。また、切削ブレード24によって半導体ウエーハ22の外周縁200の面取り部分のみをエッジトリミングした後、半導体ウエーハ22を所定の厚みに至るまで研削し、その後ガラス板23の外周縁230の面取り部分を切削ブレード24によって除去することもできる。このようにして、ガラス板23の外周縁230の面取り部分を除去したら、ガラス板23を研削して薄化する研削工程、ガラス板23の内部に分割起点を形成する分割起点形成工程を順次行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−4795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようなガラス板23の内部に分割起点を形成する前に、ガラス板23を研削して薄くすると、例えば、
図17に示すように、ガラス板23の外周縁230側から中心Oに向かってクラック30が発生して、個片化されたチップが不良となるという問題がある。また、上記のウエーハの加工方法においては、ガラス板23に対する加工の工程数も多くなるため、加工効率も悪いという問題もある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、ガラス板に生じるクラックを低減しうるウエーハの加工方法に発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表面に分割予定ラインで区画されデバイスが形成され外周縁が面取りされた半導体ウエーハの表面とガラス板とが接着部材で接着され一体となった貼り合わせウエーハを該分割予定ラインに沿って分割してチップを形成するウエーハの加工方法であって、該半導体ウエーハを加工する半導体ウエーハ加工工程と、該ガラス板を加工するガラス板加工工程とを備え、該半導体ウエーハ加工工程は、該半導体ウエーハの該外周縁の面取り部分を切削ブレードによって除去する面取り除去工程と、該面取り除去工程を実施した後、該半導体ウエーハの裏面を研削砥石によって研削するウエーハ研削工程と、該ウエーハ研削工程で研削した該裏面側から該半導体ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザ光線を照射して該分割予定ラインに沿ってウエーハ分割起点を形成するウエーハ分割起点形成工程とを備え、該ガラス板加工工程は、該ガラス板に対して透過性を有する波長のレーザ光線を照射して該分割予定ラインに沿って該ガラス板の厚み方向に延在するガラス板分割起点を内部に形成するガラス分割起点形成工程と、該ガラス板を該研削砥石によって研削するガラス板研削工程とを備え、該半導体ウエーハ加工工程及び該ガラス板加工工程を実施した後、開口を有するリングフレームにダイシングテープを貼着し該開口から露出した該ダイシングテープに該ガラス板側を貼着し該ダイシングテープを介して該リングフレームで該ウエーハを支持するワークセットを形成するワークセット形成工程と、該分割予定ラインに沿って形成された該ガラス板分割起点と該ウエーハ分割起点とに外力を加えることにより該半導体ウエーハと該ガラス板とを該分割予定ラインに沿って分割してチップを形成する分割工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかるウエーハの加工方法は、半導体ウエーハを加工する半導体ウエーハ加工工程と、ガラス板を加工するガラス板加工工程とを備え、半導体ウエーハ加工工程は、半導体ウエーハの外周縁の面取り部分を切削ブレードによって除去する面取り除去工程と、面取り除去工程を実施した後、半導体ウエーハの裏面を研削砥石によって研削するウエーハ研削工程と、ウエーハ研削工程で研削した裏面側から半導体ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザ光線を照射して分割予定ラインに沿ってウエーハ分割起点を形成するウエーハ分割起点形成工程とを備え、ガラス板加工工程は、ガラス板に対して透過性を有する波長のレーザ光線を照射して分割予定ラインに沿ってガラス板の厚み方向に延在するガラス板分割起点を内部に形成するガラス分割起点形成工程と、ガラス板を研削砥石によって研削するガラス板研削工程とを備えたため、ガラス板の内部に分割予定ラインに沿ってガラス板の厚み方向に延在するガラス板分割起点を形成してから、ガラス板を研削することにより、ガラス板の研削中において、たとえガラス板の外周縁側にクラックが発生しても、ガラス板分割起点によってガラス板の外周縁側から中心に向けてクラックが進行するのを止めることができ、ガラス板にクラックが生じるおそれを低減することができる。
半導体ウエーハ加工工程及びガラス板加工工程を実施した後、開口を有するリングフレームにダイシングテープを貼着し開口から露出したダイシングテープにガラス板側を貼着しダイシングテープを介してリングフレームでウエーハを支持するワークセットを形成するワークセット形成工程と、分割予定ラインに沿って形成されたガラス板分割起点とウエーハ分割起点とに外力を加えることにより半導体ウエーハとガラス板とを該分割予定ラインに沿って分割してチップを形成する分割工程とを備えるため、半導体ウエーハ及びガラス板を分割して良好なチップを形成することができる。
また、本発明にかかるウエーハ加工方法では、ガラス板の外周縁の面取り部分の面取り除去工程を実施しないため、少なくともその工程分だけガラス板に対する加工の工程数が少なくなり、加工効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】積層ウエーハを構成する2つの半導体ウエーハの構成を示す斜視図である。
【
図2】半導体ウエーハの外周縁の面取り部分を面取りする状態を示す断面図である。
【
図3】研削砥石により積層ウエーハを研削する状態を示す断面図である。
【
図4】一方の半導体ウエーハが薄化された積層ウエーハの状態を示す断面図である。
【
図5】貼り合わせウエーハの構成を示す断面図である。
【
図9】ウエーハ分割起点形成工程を示す断面図である。
【
図10】反転工程及びテープ剥離工程を示す断面図である。
【
図11】ガラス板分割起点形成工程を示す断面図である。
【
図13】ガラス板の外周縁側に生じたクラックがガラス板分割起点により止められた状態を示す平面図である。
【
図14】ワークセット形成工程を示す断面図である。
【
図16】従来のウエーハの加工方法を説明する断面図である。
【
図17】従来のウエーハの加工方法において、ガラス板の外周縁から生じたクラックの状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1 積層ウエーハの構成
図1に示すように、半導体ウエーハW1は、被加工物の一例であって、例えば半導体ウエーハW2に積層されて2層構造の積層ウエーハWLとして形成される。半導体ウエーハW1,W2は、例えば円形板状のシリコン基板を有している。半導体ウエーハW1の表面W1aには格子状の分割予定ラインSによって区画されたそれぞれの領域に例えばCMOSセンサなどのデバイスD1が形成され、半導体ウエーハW2の表面W2aには格子状の分割予定ラインSによって区画されたそれぞれの領域に例えばLOGIC−ICなどのデバイスD2が形成されている。一方、半導体ウエーハW1の裏面W1b及び半導体ウエーハW2の裏面W2bは、研削砥石による研削やレーザ加工が施される被加工面となっており、例えば窒化膜が被膜されている。さらに、半導体ウエーハW1,W2の外周縁W1c,W2cの面取りされた部分は、例えば甲丸面状に形成されている。
【0012】
積層ウエーハWLを形成する前には、例えば、
図2に示すように、半導体ウエーハW1の外周縁W1cの面取り部分を切削ブレード3によって除去するエッジトリミングを施す。切削ブレード3は、例えば矢印A方向に回転しながら、切削ブレード3の外周側面が半導体ウエーハW1の外周縁W1cの面取り部分に接触しながら徐々に下降していくとともに、図示しない保持テーブルに保持された半導体ウエーハW1を、切削ブレード3の回転軸に対して直交する鉛直方向の回転軸を中心に少なくとも1回転させることにより、面取り部分が除去されて外周縁W1cに沿ったリング状の溝G1が形成される。
【0013】
図3に示すように、溝G1が形成された半導体ウエーハW1を半導体ウエーハW2に積層する。本実施形態では、半導体ウエーハW1の表面W1aを半導体ウエーハW2の表面W2aに対面させて積層することにより、半導体ウエーハW1と半導体ウエーハW2とが一体となった2層構造の積層ウエーハWLが形成される。積層ウエーハWLは、半導体ウエーハW1の表面W1aと半導体ウエーハW2の表面W2aとが電気的に接続された状態となっている。図示の例では、半導体ウエーハW1が上側で、半導体ウエーハW2が下側となっており、半導体ウエーハW1の裏面W1bが最上部において露出した状態となっている。なお、半導体ウエーハW1と半導体ウエーハW2とを貼り合わせる方法は、特に限定されず、例えば酸化膜を介して半導体ウエーハW1を半導体ウエーハW2に積層することができる。
【0014】
次いで、積層ウエーハWLのうち、半導体ウエーハW1の裏面W1bに対して被加工物を研削する研削手段5によって研削を施す。研削手段5は、鉛直方向のスピンドル50と、スピンドル50の下端に装着された研削ホイール51と、研削ホイール51の下部に環状に固着された研削砥石52とを備え、その全体が鉛直方向の回転軸を中心として回転可能であるとともに上下方向に昇降可能となっている。研削手段5は、半導体ウエーハW1の裏面W1bに対して接近する方向に下降しながら、スピンドル50を回転させ、研削砥石52を例えば矢印B方向に回転させつつ、鉛直方向の回転軸を中心として回転する半導体ウエーハW1の裏面W1bを押圧しながら少なくとも溝G1に達するまで研削する。その結果、
図4に示すように、半導体ウエーハW1の裏面W1bから窒化膜が除去されるとともに、半導体ウエーハW1が所定の厚みに薄化される。その後、半導体ウエーハW1の表面W1aに形成される分割予定ラインSに沿って、研削した半導体ウエーハW1の裏面W1bに分割溝Gを形成する。分割溝Gは、例えばレーザ半導体ウエーハW1に対して吸収性の波長を有するレーザ光線LBを照射するアブレーション加工によって分割溝Gを形成してもよいし、例えば切削ブレードを半導体ウエーハW1に所定の深さで切り込ませて分割溝Gを形成してもよい。
【0015】
2 貼り合わせウエーハの構成
図5に示すように、積層ウエーハWLがガラス板1に接着されて貼り合わせウエーハ2が形成される。ガラス板1は、例えば円形板状に形成された透明なガラス部材からなる。図示の例では、ガラス板1の第1の面1aは積層ウエーハWLが接着される被接着面となっている。一方、第1の面1aと反対側の第2の面1bは、テープ等が貼着される被貼着面となっている。ガラス板1の外周縁1cの面取りされた部分は、例えば甲丸面状に形成されている。ガラス板1に積層ウエーハWLを接着する際には、樹脂(接着剤)、両面テープなどの接着部材によって、例えばガラス板1の第1の面1aに半導体ウエーハW1の裏面W1b側を接着して固定することにより、貼り合わせウエーハ2が形成される。
【0016】
3 ウエーハの加工方法
次に、積層ウエーハWL及びガラス板1を分割して貼り合わせウエーハ2を個々のチップに形成するウエーハの加工方法について説明する。ウエーハの加工方法は、積層ウエーハWLを加工する半導体ウエーハ加工工程と、ガラス板1を加工するガラス板加工工程と、ワークセットを形成するワークセット形成工程と、半導体ウエーハW1,W2及びガラス板1を分割する分割工程とを備えている。
【0017】
(1)半導体ウエーハ加工工程
本実施形態に示す半導体ウエーハ加工工程は、半導体ウエーハW2の外周縁Wcの面取り部分を除去する面取り除去工程と、半導体ウエーハW2の裏面W2bを研削するウエーハ研削工程と、分割予定ラインSを検出するアライメント工程と、半導体ウエーハW2の内部にウエーハ分割起点を形成するウエーハ分割起点形成工程とに分けられて実施される。
【0018】
(1−1)面取り除去工程
図6に示すように、ガラス板1の第2の面1bに保護テープ4を貼着して、保護テープ4側を図示しない自転可能な保持テーブルに保持させる。続いて、例えば矢印A方向に回転する切削ブレード3の外周側面が半導体ウエーハW2の外周縁W2cの面取り部分に接触しながら徐々に下降していくとともに、回転する切削ブレード3の刃先を所定の高さ(半導体ウエーハW2の裏面W2bから表面W2aに至る高さ)に位置づけ、貼り合わせウエーハ2を切削ブレード3の回転軸と直交する鉛直方向の貼り合わせウエーハ2の中心を貫通した回転軸を軸として貼り合わせウエーハ2を少なくとも1回転させることにより、半導体ウエーハW2の外周縁W2cに沿って全ての面取り部分が除去される。
【0019】
(1−2)ウエーハ研削工程
面取り除去工程を実施した後、
図7に示すように、研削手段5の下方側に貼り合わせウエーハ2を保持した保持テーブルを移動させ、鉛直方向の貼り合わせウエーハ2の中心を貫通した回転軸を軸として貼り合わせウエーハ2を回転させる。研削手段5は、半導体ウエーハW2の裏面W2bに対して接近する方向に下降しながら、スピンドル50を回転させ、研削砥石52を例えば矢印B方向に回転させつつ半導体ウエーハW2の裏面W2bを押圧しながら所定の厚みに至るまで研削する。このようにして半導体ウエーハW2の裏面W2bから窒化膜が除去されるとともに、半導体ウエーハW2は所定の厚みに薄化される。
【0020】
(1−3)アライメント工程
ウエーハ研削工程を実施した後、
図8に示すように、貼り合わせウエーハ2の上方側に配置されたアライメントカメラ6によって半導体ウエーハW2を上方から撮像して、パターンマッチング等の画像処理を施すことにより、半導体ウエーハW2の内部にレーザ加工すべき
図1に示した分割予定ラインSを検出するアライメントを行う。
【0021】
(1−4)ウエーハ分割起点形成工程
図9に示すように、レーザ光線照射手段7aを用いて半導体ウエーハW2の内部に分割予定ラインSに沿ってウエーハ分割起点8を形成する。レーザ光線照射手段7aは、半導体ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザ光線を下方に照射するレーザヘッド70と、レーザ光線を発振する図示しない発振器とを少なくとも備えている。レーザヘッド70の内部には、発振器から発振されたレーザ光線を集光するための集光レンズが内蔵されている。レーザ光線照射手段7aは、鉛直方向に集光点の位置を調節可能になっている。つまり、レーザヘッド70を鉛直方向に移動させてレーザ光線の集光点の位置を調節することができる。なお、集光レンズ群により集光点の位置を調節してもよい。
【0022】
ウエーハ分割起点8を半導体ウエーハW2の内部に形成するときは、レーザ光線照射手段7aは、レーザヘッド70を半導体ウエーハW2に接近する方向に下降させ、レーザ光線LB1の集光点を半導体ウエーハW2の内部の所望位置に調整する。続いて、貼り合わせウエーハ2を水平方向に移動させるとともに、レーザヘッド70は、レーザ光線LB1をウエーハ研削工程で研削した半導体ウエーハW2の裏面W2b側から
図1に示した分割予定ラインSに沿って照射する。このとき、半導体ウエーハW2の裏面W2bから窒化膜が除去されていることから、レーザ光線LB1の半導体ウエーハW2内部への入射が妨げられることがなく、半導体ウエーハW2の内部に強度の低下したウエーハ分割起点8を形成することができる。このようにして、すべての分割予定ラインSに沿ってレーザ光線LB1を照射してウエーハ分割起点8を形成したら、ウエーハ分割起点形成工程が完了する。なお、ウエーハ分割起点形成工程は、少なくとも後述する分割工程を実施する前までに実施すればよい。また、レーザ光線LB1を半導体ウエーハW2により入射し易くするために空気の屈折率より大きく半導体ウエーハW2の屈折率より小さい部材(例えば樹脂)を半導体ウエーハW2のレーザ光線LB1が入射される面に塗布して乾燥させ層を形成するとよい。この層は、後述するワークセット形成工程で保護テープ4aを剥離するときに、保護テープ4aとともに剥離させてもよいし、後述する分割工程後に剥離させてもよい。
【0023】
(2)ガラス板加工工程
本実施形態に示すガラス板加工工程は、貼り合わせウエーハ2を反転させるとともに保護テープ4を剥離する反転工程及びテープ剥離工程と、アライメント工程と、ガラス板1の内部にガラス板分割起点を形成するガラス板分割起点形成工程と、ガラス板1の第2の面1bを研削するガラス板研削工程とに分けられて実施される。
【0024】
(2−1)反転工程及びテープ剥離工程
図10に示すように、貼り合わせウエーハ2の表裏を反転させ、ガラス板1を上側にして、積層ウエーハWLを下側に位置づけるとともに、ガラス板1の第2の面1bから保護テープ4を剥離する。これにより、ガラス板1の第2の面1bが最上部において露出した状態となる。ガラス板加工工程を実施する際には、積層ウエーハWL側が保持テーブルに保持されるため、最下部に位置する半導体ウエーハW2に例えば保護テープ4aを貼着しておくとよい。
【0025】
(2−2)アライメント工程
ガラス板1の内部にガラス板分割起点を形成する前に、上記のアライメントカメラ6によって貼り合わせウエーハ2の上方から撮像して、パターンマッチング等の画像処理を施すことにより、ガラス板1の内部にレーザ加工すべき位置の直下の分割予定ラインSを検出するアライメントを行う。なお、ガラス板1は透明であり、また、ガラス板1の第1の面1aに貼り合わせられた研削済みの半導体ウエーハW1の裏面W1bからは窒化膜が除去されているため、アライメントカメラ6によって分割予定ラインSを容易に検出することができる。
【0026】
(2−3)ガラス板分割起点形成工程
図11に示すように、レーザ光線照射手段7bを用いて、ガラス板1の内部の所定位置にガラス板分割起点9を形成する。ガラス板分割起点9をガラス板1の内部に形成するときは、レーザ光線照射手段7bは、レーザヘッド70をガラス板1に接近する方向に下降させ、ガラス板1に対し透過性の波長を有するレーザ光線LB2の集光点をガラス板1の内部の所望位置(図示の例ではガラス板1の第1の面1a側に最も近い位置)に調整する。続いて、貼り合わせウエーハ2を水平方向に移動させるとともに、レーザヘッド70は、ガラス板1に対して透過性を有する波長のレーザ光線LB2をガラス板1の第2の面1b側から
図1に示した分割予定ラインSに沿って照射し、ガラス板1の内部にガラス板分割起点9を形成する。本実施形態に示すガラス板分割起点9は、列をなす複数の微細な孔であり、このガラス板分割起点9が内部に形成されることでガラス板1が割れやすくなる。
【0027】
ここで、レーザ光線照射手段7bは、所定の間隔をあけてガラス板1の厚み方向に延在して
図1に示した分割予定ラインSの延在方向に複数のガラス板分割起点9を配列させて形成するとよい。つまり、ガラス板1の内部にすべての分割予定ラインSに沿って配列した微細な孔を形成する。具体的には、レーザヘッド70を鉛直方向に移動させて細いレーザ光線LB2の集光点(集光エリア)をガラス板1の内部に位置づけ第1の面1aにおいて開口した微細な孔を形成する。なお、各ガラス板分割起点9の間隔は、例えば5μm程度である。また、微細な孔の周囲には環状の変質層ALが形成される。この変質層ALは微細な孔を形成したときの熱応力(微細な孔を中心に広がる方向の力)が加わった領域を形成しており、上記の間隔で微細な孔を形成すると変質層ALがつながって形成される。さらに、上記の例では、レーザ光線LB2の集光点(集光エリア)をガラス板1の内部に位置づけているが、第1の面1a付近か、第1の面1a表面に位置づけてもよい。微細な孔は、第1の面1aから第2の面1bにかけて貫通して形成されていなくてもよい。変質層ALは、ガラス板1の厚み方向に形成されていればよい。
【0028】
(2−4)ガラス板研削工程
図12に示すように、研削手段5によってガラス板1の第2の面1bを所定の厚みに至るまで研削して薄化する。具体的には、研削手段5の下方側に貼り合わせウエーハ2を保持した保持テーブルを移動させ、鉛直方向の貼り合わせウエーハ2の中心を貫通した回転軸を軸として貼り合わせウエーハ2を回転させつつ、研削手段5は、ガラス板1の第2の面1bに対して接近する方向に下降しながら、スピンドル50を回転させ、研削砥石52を例えば矢印B方向に回転させつつガラス板1の第2の面1bを押圧しながら所定の厚みに至るまで研削する。このとき、
図13に示すように、研削にともなってガラス板1の外周縁1c側にクラック10が発生しても、ガラス板1の内部に形成された複数のガラス板分割起点9において、ガラス板1の外周縁1c側から中心Oに向けてクラック10が進行するのを止めることができる。これにより、ガラス板1の内部を良好な状態でガラス板1を所定の厚みに薄化することができる。
【0029】
(3)ワークセット形成工程
半導体ウエーハ加工工程及びガラス板加工工程を実施した後、
図14に示すように、貼り合わせウエーハ2の表裏を反転させ、積層ウエーハWLを上側にして、ガラス板1を下側に位置づけ、開口を有するリングフレーム11にダイシングテープ12を貼着し開口から露出したダイシングテープ12にガラス板1側を貼着して、ダイシングテープ12を介してリングフレーム11で貼り合わせウエーハ2を支持するワークセット13を形成する。また、半導体ウエーハW2の裏面W2bから保護テープ4aを剥離する。
【0030】
(4)分割工程
図15に示すように、例えば支持テーブル14においてワークセット13を支持して、支持テーブル14の上方側に配設されたブレーキングブレード15によって分割予定ラインSに沿って積層ウエーハWL及びガラス板1を分割する。支持テーブル14は、間隙140が形成され、ダイシングテープ12を介して貼り合わせウエーハ2を支持することができる。ブレーキングブレード15は、その先端部15aが
図1に示した分割予定ラインSの直線に沿って直線形状に形成されており、被加工物の内部に外力を加えることができる。ブレーキングブレード15には、押圧手段16が接続されており、上下方向に移動可能となっている。
【0031】
まず、半導体ウエーハW2の分割予定ラインSとブレーキングブレード15との位置合わせを行うために、図示しないアライメントカメラにより分割予定ラインSを検出する。続いて、ダイシングテープ12側を下向きにした状態で支持テーブル14の上にワークセット13を載置する。このとき、1本の分割予定ラインSを支持テーブル14の間隙140の内側に移動させることにより、間隙140の上方側に1本の分割予定ラインSに沿って形成されたウエーハ分割起点8、分割溝G及びガラス板分割起点9を位置づける。次いで、ブレーキングブレード15の先端部15aを、ウエーハ分割起点8、分割溝G及びガラス板分割起点9が形成された分割予定ラインSの真上の位置に位置づける。
【0032】
押圧手段16は、ブレーキングブレード15をワークセット13に接近する方向に下降させ、ブレーキングブレード15の先端部15aによって半導体ウエーハW2の裏面W2b側から下方に押圧して、分割予定ラインSに形成されたウエーハ分割起点8、分割溝G及びガラス板分割起点9に外力(曲げ応力)を加える。これにより、ワークセット13のうち間隙140の上方に位置する部分が下方に押され、曲げ応力に耐えられなくなった半導体ウエーハW2、W1及びガラス板1は、ウエーハ分割起点8、分割溝G及びガラス板分割起点9を起点に分割される。
【0033】
1本の分割予定ラインSに沿って分割した後、ワークセット13を例えば矢印Y方向にインデックス送りして、隣接する分割予定ラインSを支持テーブル14の間隙140の内側に移動させてブレーキングブレード15の先端部15aを分割予定ラインSに当接できる位置に位置づけて位置合わせを行ったら、隣接する分割予定ラインSをブレーキングブレード15で押圧し、ウエーハ分割起点8、分割溝G及びガラス板分割起点9に外力(曲げ応力)を加える。このようにして、ブレーキングブレード15によって、すべての分割予定ラインSに沿って半導体ウエーハW2、W1及びガラス板1を分割したら、分割工程が完了する。その結果、半導体ウエーハW1、W2及びガラス板1は、個々のチップに形成される。
【0034】
このように、本発明にかかるウエーハの加工方法では、半導体ウエーハ加工工程を実施した後ガラス板加工工程に進んで、ガラス板1に対して透過性を有する波長のレーザ光線LB2を照射して分割予定ラインSに沿ってガラス板1の厚み方向に延在するガラス板分割起点9を内部に形成するガラス分割起点形成工程を実施してから、ガラス板1を研削砥石52によって研削するガラス板研削工程を実施するように構成したため、ガラス板1の研削中に、たとえガラス板1の外周縁1c側にクラック10が発生しても、ガラス板分割起点9によって、外周縁1c側から中心Oに向けてクラック10が進行するのを止めることができ、ガラス板1にクラックが生じるおそれを低減することができる。半導体ウエーハ加工工程及びガラス板加工工程を実施した後は、ワークセット形成工程及び分割工程を順次実施するため、半導体ウエーハW1,W2及びガラス板1を分割して良好なチップを形成することができる。
また、本発明にかかるウエーハ加工方法では、ガラス板1の外周縁1cの面取り部分の面取り除去工程を実施しないため、少なくともその工程分だけガラス板1に対する加工の工程数が少なくなり、加工効率が向上する。
【0035】
本実施形態では、ガラス板1に貼り合わせられた半導体ウエーハは、2層構造の積層ウエーハWLとして説明したが、これに限定されるものではなく、ガラス板1に貼り合わせられる半導体ウエーハは1層でもよいし、3層以上でもよい。
【符号の説明】
【0036】
1:ガラス板 1a:第1の面 1b:第2の面 1c:外周縁
2:貼り合わせウエーハ 3:切削ブレード 4,4a:保護テープ
5:研削手段 50:スピンドル 51:研削ホイール 52:研削砥石
6:アライメントカメラ 7a,7b:レーザ光線照射手段 70:レーザヘッド
8:ウエーハ分割起点 9:ガラス板分割起点 10:クラック
11:リングフレーム 12:ダイシングテープ 13:ワークセット
14:支持テーブル 140:間隙 15:押圧手段 150:ブレーキングブレード
151:昇降手段
20:積層ウエーハ 21,22:半導体ウエーハ 23:ガラス板
24:切削ブレード 30:クラック
W1,W2:半導体ウエーハ W1a,W2a:表面 W1b,W2b:裏面
W1c,W2c:外周縁 S:分割予定ライン D1,D2:デバイス
WL:積層ウエーハ G:分割溝 AL:変質層