特許第6799470号(P6799470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799470
(24)【登録日】2020年11月25日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】スポット形状検出装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20201207BHJP
   G01B 11/08 20060101ALI20201207BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20201207BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   B23K26/00 M
   G01B11/08 H
   G01B11/24 K
   H01S3/00 G
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-10376(P2017-10376)
(22)【出願日】2017年1月24日
(65)【公開番号】特開2018-118267(P2018-118267A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】能丸 圭司
(72)【発明者】
【氏名】大崎 新
(72)【発明者】
【氏名】中本 顕正
【審査官】 岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−527979(JP,A)
【文献】 特開2016−41437(JP,A)
【文献】 米国特許第6313910(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
G01B 11/08
G01B 11/24
H01S 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー発振器から発振されたレーザー光線のスポット形状を検出するスポット形状検出装置であって、
レーザー発振器が発振するレーザー光線を集光する集光レンズと、該集光レンズの集光点と該集光レンズとの間に配置されるビームスプリッターと、複数のミラーを同心円上に配設した回転体と、該回転体を所定の周期で回転する駆動源と、該回転体に配設された複数のミラーによって順次反射されるレーザー光線の戻り光を該ビームスプリッターで分岐する方向に配設され該戻り光のスポット形状を撮像する撮像手段と、該撮像手段によって撮像された画像を該複数のミラーに関連付けて表示する表示手段と、から少なくとも構成され、
該複数のミラーは、該撮像手段の撮像位置に該集光点が徐々に近づき該撮像位置に至り該撮像位置から徐々に遠ざかるように該回転体に配設されている、スポット形状検出装置。
【請求項2】
該回転体の各ミラーによるレーザー光線の反射時期に同期して該撮像手段のシャッターが作動するように構成された請求項1に記載のスポット形状検出装置。
【請求項3】
各ミラーにレーザー光線が照射され反射している時間を最長として、該撮像手段のシャッターの開放時間が調整されることにより該撮像手段で捕えられる該レーザー光線の戻り光の明るさが調整される請求項1、又は2に記載のスポット形状検出装置。
【請求項4】
該集光レンズの前に減衰フィルターが配設される請求項1乃至3のいずれかに記載のスポット形状検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光線の正確なスポット形状が検出できるスポット形状検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI、LED等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ウエーハに対して吸収性を有する波長のレーザー光線が分割予定ラインに照射されアブレーション加工を実行するレーザー加工装置によって個々のデバイスに分割されて携帯電話、パソコン、液晶テレビ、照明機器等の電気機器に利用される(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
また、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を分割予定ラインの内部に位置付けて照射し、改質層を形成して外力を付与することでウエーハを個々のデバイスに分割するレーザー加工の技術も提案され、レーザー加工装置の分野において実用に供されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0004】
そして、前記したレーザー加工装置を構成するレーザー発振器が発振するレーザー光線のスポット形状が加工品質に影響を及ぼすことから、レーザー加工時の品質を確保するためには、ウエーハに照射されるレーザー光線のスポット形状を用いて、或いはスポット形状から算出されるビーム径からレーザー光線を評価するための指標であるM2ファクターを算出して評価することが必要であり、従来においてもスポット形状を検出する装置もいくつか提案されている(例えば、特許文献3〜5を参照。)。なお、M2ファクターとは、当業者において一般的に知られているものであり、レーザー光線を集光し回析限界まで絞ったときのビーム径が、理想的なガウシアンビームを回析限界まで絞ったときのビーム径の何倍になるかを示す指標値である。よって、その指標値は理想的なガウシアンビームに対する1以上の比で表されるものであり、理想的なガウシアンビームと一致する場合のM2ファクターは1となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【特許文献2】特許第3408805号公報
【特許文献3】特開2013−022634号公報
【特許文献4】特開2013−151002号公報
【特許文献5】特許第5726999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したようなスポット形状を検出して評価を行うためには、多点におけるスポット形状の検出、或いはスポットの径等に基づき把握されるM2ファクターの評価をする必要があり、スポット形状の検出には比較的多くの時間を要し作業性が悪いと共に、検出するスポット形状の再現性にも問題があり、評価の正確性を確保することに課題がある。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、短時間で効率よくレーザー発振器から照射されるレーザー光線の正確なスポット形状を検出するスポット形状検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、レーザー発振器から発振されたレーザー光線のスポット形状を検出するスポット形状検出装置であって、レーザー発振器が発振するレーザー光線を集光する集光レンズと、該集光レンズの集光点と該集光レンズとの間に配置されるビームスプリッターと、複数のミラーを同心円上に配設した回転体と、該回転体を所定の周期で回転する駆動源と、該回転体に配設された複数のミラーによって順次反射されるレーザー光線の戻り光を該ビームスプリッターで分岐する方向に配設され該戻り光のスポット形状を撮像する撮像手段と、該撮像手段によって撮像された画像を該複数のミラーに関連付けて表示する表示手段と、から少なくとも構成され、該複数のミラーは、該撮像手段の撮像位置に該集光点が徐々に近づき該撮像位置に至り該撮像位置から徐々に遠ざかるように該回転体に配設されている、スポット形状検出装置が提供される。
【0009】
該回転体の各ミラーによるレーザー光線の反射時期に同期して該撮像手段のシャッターが作動するように構成されていることが好ましい。また、各ミラーにレーザー光線が照射され反射している時間を最長として、該撮像手段のシャッターの開放時間が調整されることにより該撮像手段で捕えられる該レーザー光線の戻り光の明るさが調整されることがこのましい。さらに、該集光レンズの前に減衰フィルターが配設されるようにすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスポット形状検出装置は、レーザー発振器が発振するレーザー光線を集光する集光レンズと、該集光レンズの集光点と該集光レンズとの間に配置されるビームスプリッターと、複数のミラーを同心円上に配設した回転体と、該回転体を所定の周期で回転する駆動源と、該回転体に配設された複数のミラーによって順次反射されるレーザー光線の戻り光を該ビームスプリッターで分岐する方向に配設され該戻り光のスポット形状を撮像する撮像手段と、該撮像手段によって撮像された画像を該複数のミラーに関連付けて表示する表示手段と、から少なくとも構成され、該複数のミラーは、該撮像手段の撮像位置に該集光点が徐々に近づき該撮像位置に至り該撮像位置から徐々に遠ざかるように該回転体に配設されていることにより、容易にレーザー光線の集光点近傍領域に形成されるスポット形状を検出して表示手段に表示させることができる。より具体的には、例えば、回転体を構成するミラーの数が17枚であり1秒間に50コマの撮影ができるように構成した場合、0.34秒で集光点を挟む領域のスポット形状を撮像して表示手段に表示させることが可能になり、さらには、撮像されたスポット形状を用いてスポット径を特定すれば、M2ファクター等のビームプロファイルの評価を容易に実施することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に基づき構成されたスポット形状検出装置の全体斜視図を示す図である。
図2図1に示すスポット形状検出装置の光学系手段を説明するためのブロック図である。
図3図1に示すスポット形状検出装置のエンコーダの概略を示す概略図である。
図4図1に示すスポット形状検出装置により検出されたスポット径と、ミラーの配設位置との関連を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のスポット形状検出装置について添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0013】
図1、2には、本発明に基づいて構成されたスポット形状検出装置の一実施形態が示されている。本実施形態のスポット形状検出装置1は、スポット形状検出装置1の主要部が載置される基台2と、各々にミラーが内蔵されている複数の反射孔6a〜6q(本実施形態では17個)を同心円上に配設した円柱状の回転体(以下、「ミラーホルダ6」という。)と、該ミラーホルダ6の中心軸をなし該ミラーホルダ6を貫通する回転軸5と、該回転軸5の前端部51a、後端部51bを回転自在に支持し該基台2上に立設される支持フレーム3、4とを備えている。なお、図1には示していないが、本実施形態のスポット形状検出装置には、該ミラーホルダ6を所定の周期で回転駆動する駆動源であるモータと、該モータに付属して設けられるエンコーダが備えられており、詳細については、おって後述する。
【0014】
ミラーホルダ6には、軸方向に穿孔された複数の反射孔6a〜6qが反時計回りに備えられており、該反射孔6a〜6qは、回転軸5を中心とした同一の円周上に所定の間隔で配設されている。各反射孔6a〜6qの内部には、図2にその概略を示すように、外部から入射したレーザー光線を反射するためのミラー6a’〜6q’が内蔵されており、各ミラー6a’〜6q’は、それぞれミラーホルダ6の一端面61から矢印Xで示す方向の距離が異なるように位置付けられ固定される。各ミラー6a’〜6q’が配設される位置、及び該位置に基づく作用については、おって詳述する。なお、図1では、反射孔6k〜6pについて示されていないが、反射孔6k〜6pは、図中の支持フレーム3の背後に位置しており、他の反射孔と同様の間隔でミラーホルダ6に配設されている。
【0015】
図2に示すように、該ミラーホルダ6の中心を貫通する回転軸5の支持フレーム4側の後端部51b、及び該ミラーホルダ6を回転駆動すべく配設されたモータ7の回転軸8の先端部81には、それぞれ同一の歯数で形成された歯付きプーリ52、82が固定されており、該歯付きプーリ52、82には、歯付きベルトVが架け渡されている。該歯付きプーリ52、82と歯付きベルトVとにより、該モータ7の回転が滑りを生じることなくミラーホルダ6の回転軸5に伝達され、該モータ7の回転速度を後述する制御手段20により制御することで、ミラーホルダ6の回転周期を正確に制御することが可能になっている。
【0016】
本実施形態のスポット形状検出装置1には、上述した構成に加え、図2により具体的に示す、スポット形状を検出するための光学系手段40が配設される。該光学系手段40は、例えば、評価対象となるレーザー発振器30と、レーザー発振器30にて発振されたレーザー光線LB1を集光する集光レンズ31と、該集光レンズ31を通過したレーザー光線LB1を反射孔6a〜6qが形成されたミラーホルダ6の円周上に照射し、反射孔6a〜6qの内部に配設されたミラー6a’〜6q’で反射された戻り光LB2を反射して光路を下方に向けて変更するビームスプリッター32と、該ビームスプリッター32で反射された戻り光LB2の光路上に配設され戻り光LB2のスポット形状を撮像する撮像素子33aを内蔵した撮像手段33と、を備えている。なお、支持フレーム3には、ビームスプリッター32を通過してレーザー光線LB1をミラーホルダ―6側に導く図示しない開口部が形成されている。また、図1には示されていないが、図2の光学手段にて点線で示すように、該レーザー発振器30と、集光レンズ31との間に、レーザー光線LB1を撮像手段33によってスポット径を撮像するのに適した出力に調整すべく出力調整手段を備えることもでき、該出力調整手段としては、光減衰フィルター34を配設することができる。
【0017】
ここで、ミラーホルダ6を回転駆動するモータ7に付帯して配設されるエンコーダ9について、図2、3を参照しつつ説明する。図2、3に示すように本実施形態のエンコーダ9は、モータ7の回転軸8に配設される回転ホイール91と、該回転ホイール91の外周部を挟むように構成されたトリガ発生器92とを備えている。該トリガ発生器92には、図に示すように該回転ホイール91を挟んで例えば赤外光(IR)を発する発光素子93、該赤外光を受光する受光素子94が備えられている。該回転ホイール91が回転し、発光素子93から発せられた赤外光が回転ホイール9の外周に均等間隔で形成されたスリット91a〜91qを通過して受光素子94にて受光されると、図2の下方に示すようなトリガシグナルSが出力され、制御手段20に信号が送られる。ここで、回転ホイール91に配設されるスリット91a〜91qの開口幅は91iで最も狭く、91iから離れる程、広くなるように設定される。すなわち、トリガシグナルSの信号幅(onとなる長さ)は、91f〜91lが最も小さく(短く)、91a、91q側で最も大きく(長く)なる。該トリガシグナルSが制御手段20に送信されると、トリガシグナルSに同期して撮像手段33のシャッター(図示しない。)が開放されるように制御される。なお、本実施形態では、モータ7の回転速度を調整することにより、時計回りで見て、スリット91f〜91lによってシャッターがonとなる時間を1msec、スリット91c〜91e、91m〜91oによってonとなる時間を2msec、スリット91p〜91bによってonとなる時間を5msecに設定している。
【0018】
制御手段20は、コンピュータにより構成され、制御プログラムに従って演算処理する中央演算処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、検出した検出値、演算結果等を一時的に格納するための読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース、及び出力インターフェースとを備えている(詳細についての図示は省略)。制御手段20には、該トリガ発生器92からの信号のみならず、撮像手段33から送られる撮像データ等が入力され、該撮像データは、ランダムアクセスメモリ(RAM)に記憶され、適宜該スポット形状検出手段1の近傍に設置される表示手段mに表示される。
【0019】
ミラーホルダ6の反射孔6a〜6q内に配設されるミラー6a’〜6q’の配設位置について説明する。反射孔6a〜6q内には、レーザー光線を反射するミラーが1つずつ配設されており、ミラー6a’〜6q’の配設位置は、図2の矢印Xで示す方向において異なる位置になるように配設される。図に示すミラーホルダ6は、説明の都合上、ミラーホルダ6内に配設されたミラーの位置を側方から見た状態で透過して示すものであり、図から明らかなように、ミラー6a’がミラーホルダ6の一端面61からの距離が最も短くなるように一旦面61側に配設されており、ミラー6b’、ミラー6c’・・・となるに従い一端面61から離れるように配設され、ミラー6q’が反射孔の最も深い位置に配設される。
【0020】
各ミラー6a’〜6q’の配置位置についてさらに具体的に説明する。上述したように、レーザー発振器30によって発振されたレーザー光線LB1は、集光レンズ31を介して集光され該ミラー6a’〜6q’にて反射し、戻り光LB2となってビームスプリッター32で反射され、撮像手段33に導かれる。ここで、ミラーホルダ6の図中矢印Xの方向において中間に位置するミラー6iで反射された戻り光LB2が、撮像手段33の撮像素子33a上に集光点Pを形成するように、すなわち、撮像手段33にて撮像されるスポット形状が最も小さくなるようにその位置が設定されている。該集光点Pは、ミラー6iからミラーホルダ6の一端面61側にミラーの位置(反射位置)が移動するに従い、撮像素子33aの下方側に移動し、ミラー6iからミラーホルダ6の一端面61から遠ざかる側にミラーの位置が移動するに従い、撮像素子33aの上方側に移動するように構成されている。そして、ミラー6iを中心にしてミラー6f’〜6l’が矢印X方向でみて1mm間隔で配置され、ミラー6c’〜6f’、6l’〜6o’は5mm間隔で、ミラー6a’〜6c’、6o’〜6q’は20mm間隔で配置されており、レーザー光線の回析限界となるスポット径が最も小さくなる領域近傍でより細かにスポット形状を撮像できるように設定される。
【0021】
本実施形態のスポット形状検出装置1は、概ね以上のように構成されており、その作用について、図2を参照しながら以下に説明する。
【0022】
作業者は、レーザー光線の品質を評価すべく、評価対象となるレーザー発振器30を用意して、所定の載置台(図示せず。)に設置して照射方向の調整を実施する。次にスポット形状の検出を開始すべく、制御手段20に対して作業開始の指示を行うと、モータ7が回転を始め、歯付きプーリ82、歯付きベルトV、及び歯付きプーリ52を介して回転駆動力が伝達され、ミラーホルダ6が所定の回転周期にて回転させられる。
【0023】
ミラーホルダ6の回転周期が所定値にて安定した状態で、レーザー発振器30から例えば635nm波長のレーザー光線が所定の出力にて発振させられ、集光レンズ31に照射される。さらに、モータの回転軸8と共にエンコーダ9の回転ホイール91が回転することで、上述したようにトリガシグナルSが出力される。該スリット91a〜91qに基づいて発生するトリガシグナルSは、レーザー光線LB1が各反射孔6a〜6qに入射されるタイミングに同期してonになるように設定されている。例えば、ミラー6a’でレーザー光線LB1が反射されているタイミングで、スリット91aに基づき発生するトリガシグナルSがonされると、onされている間だけ撮像手段33のシャッター(図示しない。)を開放して、撮像素子33a上に照射される戻り光LB2のスポット形状を記録し制御手段20に送信し記憶する。さらにミラーホルダ6が回転して、ミラー6b’で反射された戻り光LB2が撮像手段33に達している際に、スリット91bに基づき発生するトリガシグナルSに基づき撮像手段33のシャッターを開放して撮像素子33a上に形成されるスポット形状が撮像され、撮像データが制御手段20に送信される。以下、同様にして、ミラー6c’〜6q’で反射する戻り光LB2が撮像手段33に達している際に、スリット91c〜91qに基づき発生するトリガシグナルSに基づいて撮像手段33のシャッターが開放されて、各ミラー6c’〜6q’の反射によって撮像素子33a上に形成されるスポット形状が制御手段20に記録される。
【0024】
なお、撮像素子33aに集光点Pの位置が近い程、撮像素子33aで受光される光線の光密度が高いため、スリット91a〜91qにより生成されるトリガシグナルSのon時間は短く設定され、集光点Pが撮像素子33aから離れる程、該on時間は相対的に長く設定されており、撮像素子33aの損傷を防止し、撮像されるスポット形状が適切に撮像されるように、露光時間の調整がなされる。このスリット91a〜91qによるon時間は、各ミラー6a’〜6q’においてレーザー光線LB1が反射されている時間においてのみ有効であるため、反射孔6a〜6qの孔形状とミラーホルダ6の回転周期によって確定される各ミラー6a’〜6q’の反射時間を最長として、シャッターが開放される時間、すなわちシャッター速度が調整されて、撮像手段33によって撮像されるスポット形状の明るさが調整される。
【0025】
以上のようにして、各ミラー6a’〜6q’にて反射された戻り光LB2のスポット形状が撮像されて、制御手段20に記録されると、撮像されたスポット形状を、各反射孔6a〜6qに関連付けて、制手段20に接続された表示手段mに表示する(図2を参照。)。
【0026】
撮像されたスポット形状が各反射孔6a〜6qに関連付けられて表示手段mに表示されるのと同時に、制御手段20に記憶されたスポット形状に基づき撮像手段33で捕捉されたスポット形状のスポット径を算出する。スポット径の算出は、撮像手段33にて撮像された画像に基づき特定されるD4σを用いる。このD4σは、強度分布の標準偏差σの4倍で規定されるものであり、レーザー光線のビーム径を特定する手法としてISOの国際標準規格により規定されており、詳細については周知であるため、ここではその説明を省略する。D4σによって各ミラー6a’〜6q’にて反射された戻り光のスポット径が検出されたならば、各ミラー6a’〜6q’に関連づけられて制御手段20に記憶される。
【0027】
図4には、縦軸に、上述した各ミラー6a’〜6q’にて反射された戻り光LB2が撮像素子33a上に形成したスポットのスポット径d(μm)を示し、横軸には該スポット径が算出された際にレーザー光線を反射していたミラーの位置(mm)を示し、各ミラーの配設位置に対応したスポット径をプロットして各点を結んだ線を実線L1で示している。該ミラーの位置は、撮像素子33a上に集光点Pが形成されるように予め設定されたミラー6iの位置を基準点(0)とし、集光点Pが撮像素子33aよりも下方(図2を参照)側に形成される側の位置を負の値となるようにし、上方に形成される側の位置を正の値となるように規定している。ここで、図4には、レーザー発振器30から、理想的なガウシアンビームが照射された場合に形成されるスポット径の値を想定し結んだ点線L2も併せて示している。本実施形態のレーザー発振器30が理想的なガウシアンビームであったと仮定し、回析限界まで照射されるレーザー光線を絞った場合のスポット径d0は、点線L2上で最もスポット径が小さくなる点P0で示すように42.00μmである。これに対し、実際に計測されたレーザー発振器30のレーザー光線を回析限界まで絞った際のスポット径dは、図に点P1示されているように50.00μmであり、これら点P0、P1で示されるスポット径に基づいてM2ファクターが算出される。
【0028】
なお、一般的なM2ファクターは、演算式:M2=θ・d/θ0・d0(θ0は理想的なガウシアンビームの拡がり角、θは実際に計測されるレーザー光線の拡がり角)で求められるが、θとθ0の差が小さい場合にはθ/θ0≒1とみなしてM2=d/d0として演算することができ、θがθ0とみなせない場合は、拡がり角θ、θ0を求め、M2ファクターを求める上記演算式に算入すればよい。以上より、M2ファクターが1に近い値である程、レーザー発振器30から発振されるレーザー光線の品質がよいと評価されることが理解される。
【0029】
本発明に基づき構成された上記実施形態は、上述したように、回転体に対して照射されたレーザー光線を反射することで、集光点位置を変化させる複数のミラーを配設し、該回転体を駆動源によって回転させることにより、短時間で集光点近傍のスポット形状を、容易に撮像し、撮像した画像を表示装置に表示することができる。そして、検出されたスポット形状に基づき、レーザー発振器を容易に評価することが可能になる。
【0030】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に含まれる限り、種々の変形例を想定することができる。上述した実施形態では、撮像手段33によって撮像されたスポット形状からスポット径を算出し、M2ファクターを求めレーザー光線の評価を行ったが、必ずしもM2ファクターを求めることに限定されるわけではない。M2ファクターを算出せずに、表示手段mに表示されたスポット形状を観察してレーザー光線の品質を評価してもよい。その場合、撮像されたスポット形状が理想的なレーザー光線である場合に形成される形状に基づいて、レーザー光線の評価を実施することができる。
【0031】
本実施形態のエンコーダ9では、回転ホイール91をモータ7の回転軸8に配設しているが、これには限定されず、ミラーホルダ6の回転軸5に配設するようにしてもよい。さらに、本実施形態では、スポット径をD4σで算出したが、これに限定されず、例えば、一般的に使用される他のビーム径の定義(10/90、20/80ナイフエッジ、1/e、D86等)に従って算出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1:スポット形状検出器
2:基台
3、4:支持フレーム
5:ミラーホルダ回転軸
51a:前端部
51b:後端部
52:歯付きプーリ
6:ミラーホルダ
6a〜6q:反射孔
6a’〜6q’:ミラー
7:モータ
8:モータ回転軸
82:歯付きプーリ
9:エンコーダ
91:回転ホイール
91a〜91q:スリット
92:トリガ発生器
93:発光素子
94:受光素子
m:表示手段
V:歯付きベルト
図1
図2
図3
図4