(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6799777
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】絶縁電線
(51)【国際特許分類】
H01B 7/04 20060101AFI20201207BHJP
H01B 7/02 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
H01B7/04
H01B7/02 F
H01B7/02 H
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-125426(P2016-125426)
(22)【出願日】2016年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-228487(P2017-228487A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】黄 得天
(72)【発明者】
【氏名】塩田 精一
(72)【発明者】
【氏名】滝 毅義
【審査官】
神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭48−029111(JP,B1)
【文献】
特開2015−187956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/04
H01B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の素線を撚り合わせた導体と、前記導体の外周にテープを巻き付けて形成されたテープ層と、前記テープ層の外周に設けられた被覆層とを備え、
前記導体と前記テープ層との間には滑材層が設けられており、
前記被覆層は、前記導体の前記素線間の間隙に前記テープ層を介して押し込まれて前記テープ層に接着しており、前記被覆層の内面に前記導体を構成する前記素線の形状に対応した溝を有することを特徴とする絶縁電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電盤等に用いられる絶縁電線に関する。
【背景技術】
【0002】
配電盤内用電線として集合撚線導体に架橋ポリエチレン絶縁体が被覆された電線が使われており、盤内で電線が曲げられた状態で敷設されている。
【0003】
絶縁電線について、種々の技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−235024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、配電盤の小型化に伴い、配線スペースも限られるようになり、より狭いスペースでも配線ができるように、より小さな力で曲げることができる、可撓性に優れた絶縁電線が求められている。
そこで、本発明の目的は、より小さな力で曲げて配線することができる、可撓性に優れた絶縁電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は以下のとおりである。
【0007】
[1]導体と、前記導体の外周にテープを巻き付けて形成されたテープ層と、前記テープ層の外周に設けられた被覆層とを備え、前記導体と前記テープ層との間には滑材層が設けられていることを特徴とする絶縁電線。
[2]前記被覆層は、充実押出しにより形成される充実押出層からなり、前記テープ層と前記被覆層とは接着している[1]に記載の絶縁電線。
[3]前記滑材層はシリコーンオイルからなり、前記テープ層はポリエチレンテレフタレートテープからなり、前記充実押出層は架橋ポリエチレンからなる[2]に記載の絶縁電線
が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より小さな力で曲げて配線することができる、可撓性に優れた電線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電線の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(絶縁電線)
図1は、本発明の実施の形態に係る絶縁電線の構造を示す斜視図である。
【0011】
図1に示される本発明の実施の形態に係る絶縁電線10は、複数本の素線を撚り合せた導体1と、導体1の外周にテープを巻き付けて形成されたテープ層2と、テープ層2の外周に設けられた被覆層3とを備え、導体1とテープ層2の間には、滑材層(図示なし)が設けられている。
【0012】
(導体1)
導体1は、例えば軟銅線や銅合金からなる素線を撚り合わせた集合撚線導体からなる。この素線や集合撚線導体にはSnめっき等のめっきが施されていても良い。
【0013】
(テープ層2)
テープ層2は、絶縁性のテープをその両端が重なるように縦添えして形成しても良いし、絶縁性のテープを重ねラップ巻きして形成しても良い。このテープ層2は、端末処理時に導体1と被覆層3とを分離するためのセパレータとして機能する。
【0014】
テープ層2の絶縁性テープとしては、被覆層3を充実押出しにより形成する際の熱と圧力によって、テープ層2が被覆層3に接着し易い材料が好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)テープが好ましい。また、加熱圧着による接着が可能なホットメルト接着剤からなるホットメルト接着層を、絶縁性テープの外面(被覆層3に面する側)に設けたホットメルト接着層付き絶縁性テープを用いることもできる。テープの厚みは、10μm〜50μmが好ましい。
【0015】
(滑材層)
テープ層2と導体1との間には、シリコーンオイル、フッ素オイルまたはタルク等からなる滑材層が設けられている。導体1上に滑材層を形成してから、絶縁性テープを巻き付けてテープ層2を形成しても良いし、絶縁性テープの片面に予め滑材層を形成してから、導体1に巻き付けてテープ層2を形成しても良い。
【0016】
この滑材層は、上述の被覆層3を充実押出しする際に、導体1とテープ層2とが接着することを防止する。これにより、導体1とテープ層2とが接着しておらず、かつ界面において滑るので、絶縁電線から被覆層3及びテープ層2を除去して導体1を露出させる端末処理が容易である。
【0017】
また、絶縁電線10を曲げた際に、導体1とテープ層2との界面で滑りが生じるので、導体1と被覆層3との間で抵抗が少なく、小さい力で曲げ易くなる。つまり、導体1は、被覆層3から曲げに抵抗する力を受け難くなり、少ない曲げ抵抗で曲がることになり、可撓性が向上する。
【0018】
(被覆層3)
絶縁電線10は、テープ層2の直上に、被覆層3が設けられている。この被覆層3は、充実押出しにより形成される充実押出層からなる。この被覆層3の充実押出し被覆の際に、被覆層3となる溶融樹脂の熱により被覆層3とテープ層2とが接着し、圧力により溶融樹脂が導体1の素線間の間隙にテープ層2を介して押し込まれる。従って、被覆層3の内面は、導体1を構成する素線の形状に対応したパターンが転写されて、溝が形成されている。
【0019】
この被覆層3は、例えば架橋ポリエチレン絶縁体によって形成され、厚さは、0.5mm〜3mmが好ましい。
【0020】
本実施の形態によれば、以下の作用、効果を奏する。
(1)導体1とテープ層2との間には、滑り性に優れた滑材層が設けられているので、被覆層3を充実押出しにより形成しても、導体1とテープ層2との密着(接着)が防止されると共に、導体1からテープ層2を除去し易い。
(2)絶縁電線は、滑り性に優れた滑材層を備えているので、絶縁電線10を曲げた際に、導体1は被覆層3から曲げに抵抗する力を受け難くなり、少ない曲げ抵抗で曲がることになり、絶縁電線10の可撓性は向上する。
(3)テープ層2は、被覆層3と接着しているので、被覆層3を除去する際にテープ層2も同時に除去することができる。
【実施例】
【0021】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。
【0022】
(実施例1)
まず、厚さ23μm、幅55mmのPET基材の片面にシリコーンオイルを塗布し、滑材層付のPETテープを用意した。公称断面積100SQ(導体構成19/34/0.45)の集合撚線導体からなる導体1に、この滑材層付のPETテープを、導体1側に滑材層が面するように重ねラップで巻き、テープ層2を形成した。最後に、架橋ポリエチレンからなる、厚さ2mmの被覆層3を充実に押出被覆し、外径約17.7mmの絶縁電線10を作製した。
【0023】
(比較例1)
公称断面積100SQ(導体構成19/34/0.45)の集合撚線導体からなる導体に、架橋ポリエチレンからなる、厚さ2mmの被覆層を充実に押出被覆し、外径約17.7mmの絶縁電線を作製した。
【0024】
(可撓性試験)
可撓性試験は、一端を基台に固定し、他端を500mm張り出させた片持ち梁の状態に絶縁電線をセットし、その他端(自由端)に錘を載せて行った。所定のたわみ量となるのに必要な錘の重量で比較したところ、実施例1の絶縁電線の方がより少ない重量(より小さな力)でたわむことを確認し、可撓性に優れていることを確認した。
【0025】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず種々に変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0026】
10:絶縁電線
1:導体、2:テープ層、3:被覆層