特許第6800062号(P6800062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800062
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20201207BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20201207BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20201207BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J7/24
   C09J133/00
   H01L21/78 Q
   H01L21/78 B
   H01L21/78 M
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-62316(P2017-62316)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-165293(P2018-165293A)
(43)【公開日】2018年10月25日
【審査請求日】2018年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100122242
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 多香子
(72)【発明者】
【氏名】大田 郷史
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/004825(WO,A1)
【文献】 特開2011−119548(JP,A)
【文献】 特開2015−128126(JP,A)
【文献】 特開2016−89145(JP,A)
【文献】 特開2008−153587(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/154912(WO,A1)
【文献】 特開2011−168658(JP,A)
【文献】 特開2011−216704(JP,A)
【文献】 特開2004−186256(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0136322(US,A1)
【文献】 特開2016−9822(JP,A)
【文献】 特開2015−187263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00− 5/10
7/00− 7/50
9/00−201/10
H01L 21/78− 21/80
B23K 26/00− 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも一面側に形成された粘着剤層とを有する粘着テープであって、
5%モジュラスが6.5MPa以下であり、
前記基材フィルムは、ポリオレフィンからなり、
前記粘着剤層は、アクリル系ポリマーを含み、エネルギー線を照射することにより硬化するエネルギー線硬化性の粘着剤組成物により形成され、
前記粘着剤層のプローブタック試験の積分値が12kPa以上であることを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
半導体ウエハの分割予定部分にレーザー光を照射して、該半導体ウエハ内部に破断起点となる改質領域を形成するレーザー加工工程と、
前記半導体ウエハに前記粘着剤層を貼り付けるテープ貼付工程と、
エキスパンドすることで前記半導体ウエハを分断ラインに沿って個片化する個片化工程とを含む半導体ウエハの個片化方法に用いられることを特徴とする請求項1に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等をチップ状の素子に分断するダイシング工程において、半導体ウエハ等を固定するのに利用できるとともに、エキスパンドすることによりチップ状に分断するのに利用できる、エキスパンド可能な粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集積回路(IC:Integrated Circuit)などの半導体装置の製造工程では、回路パターン形成後のウエハを薄膜化するためにウエハ裏面を研削するバックグラインド工程、ウエハの裏面に粘着性および伸縮性のある粘着テープを貼り付けた後、ウエハをチップ単位に分断するダイシング工程、粘着テープを拡張(エキスパンド)するエキスパンド工程、分断されたチップをピックアップするピックアップ工程、さらにピックアップされたチップをリードフレームやパッケージ基板等に接着する(あるいは、スタックドパッケージにおいては、チップ同士を積層、接着する)ダイボンディング(マウント)工程が実施される。
【0003】
上記ダイシング工程では、一般に、基材フィルム上に粘着剤層が積層された粘着テープが使用される。このような粘着テープを用いる場合は、まず、ウエハの裏面に粘着テープの粘着剤層を貼合してウエハを固定し、ダイシングブレードを用いてウエハをチップ単位にダイシングする。その後、粘着テープをウエハの径方向に拡張することによって、チップ同士の間隔を広げるエキスパンド工程が実施される。このエキスパンド工程は、その後のピックアップ工程において、CCDカメラ等によるチップの認識性を高めるとともに、チップをピックアップする際に、隣接するチップ同士が接触することによって生じるチップの破損を防止するために実施される。
【0004】
近年のICカードの普及にともない、その構成部材である半導体チップの薄型化が進められている。このため、従来350μm程度の厚みであったウエハを、50〜100μmあるいはそれ以下まで薄くすることが求められるようになった。脆質部材であるウエハは、薄くなるにつれて、加工や運搬の際、破損する危険性が高くなる。このような極薄ウエハは、上述のような高速回転するダイシングブレードにより切断されると、半導体ウエハの特に裏面側にチッピング等が生じ、チップの抗折強度が著しく低下するという問題があった。
【0005】
このため、レーザー光を半導体ウエハの内部に照射して選択的に改質領域を形成させながらダイシングラインを形成して改質領域を起点として半導体ウエハを切断する、いわゆるステルスダイシング法が提案されている(特許文献1)。ステルスダイシング法によれば、レーザー光を半導体ウエハの内部に照射して改質領域を形成後、極薄の半導体ウエハを粘着テープに貼付し、粘着テープをエキスパンドすることで、ダイシングラインに沿って半導体ウエハを分割(ダイシング)し、半導体チップを歩留まりよく生産することができる。
【0006】
上述のステルスダイシング法によれば、レーザー光の照射および粘着テープの拡張によって、非接触でウエハを切断するので、ウエハへの物理的負荷が小さく、現在主流のブレードダイシングを行う場合のようなウエハのチッピングを発生させることなくウエハの切断が可能である。このため、ブレードダイシングに代わり得る優れた技術として注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3762409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなステルスダイシング法を用いて、微小サイズの半導体チップを生産する場合、スクライブラインと呼ばれる半導体チップ間のラインが増加することから、粘着テープをより大きく拡張させることが必要となる。しかしながら、大きく拡張させると、粘着テープが通常よりも引き伸ばされるため、従来の粘着テープでは、粘着テープを固定しているリングフレームから剥がれてしまい、ウエハ内部の改質領域に力が充分に伝達されず、ウエハを歩留まりよくチップ化できないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、個片化工程においてエキスパンドにより大きく拡張させても、リングフレームから剥がれることがなく、ウエハ内部の改質領域に力が充分に伝達されウエハを歩留まりよくチップ化することができる粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するため、本発明に係る粘着テープは、基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも一面側に形成された粘着剤層とを有する粘着テープであって、5%モジュラスが6.5MPa以下であり、前記粘着剤層のプローブタック試験の積分値が12kPa以上であることを特徴とする。
【0011】
上記粘着テープは、前記粘着剤層が、エネルギー線を照射することにより硬化するエネルギー線硬化性の粘着剤組成物により形成されることが好ましい。
【0012】
また、上記粘着テープは、前記粘着剤層が、アクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物により形成されることが好ましい。
【0013】
また、上記粘着テープは、前記基材フィルムがポリオレフィンからなることが好ましい。
【0014】
また、上記粘着テープは、半導体ウエハの分割予定部分にレーザー光を照射して、該半導体ウエハ内部に破断起点となる改質領域を形成するレーザー加工工程と、前記半導体ウエハに前記粘着剤層を貼り付けるテープ貼付工程と、エキスパンドすることで前記半導体ウエハを分断ラインに沿って個片化する個片化工程とを含む半導体ウエハの個片化方法に用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、個片化工程においてエキスパンドにより大きく拡張させても、リングフレームから剥がれることがなく、ウエハ内部の改質領域に力が充分に伝達されウエハを歩留まりよくチップ化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る粘着テープの構造を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の実施例に係る粘着テープを用いた半導体ウエハの個片化方法におけるレーザー加工工程を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の実施例に係る粘着テープを用いた半導体ウエハの個片化方法におけるテープ貼付工程を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の実施例に係る粘着テープを用いた半導体ウエハの個片化方法における個片化工程を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の実施例に係る粘着テープを用いた半導体チップのピックアップ工程を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る粘着テープ1を示す断面図である。本発明の粘着テープ1は、エキスパンドにより半導体ウエハ6(図2参照)内部に形成された改質領域7(図2参照)を起点として分断ラインに沿って個片化する際に用いられるものである。この粘着テープ1は、基材フィルム2と基材フィルム2上に設けられた粘着剤層3とを有する。粘着テープ1は、粘着剤層3の取り扱い性をよくするために、セパレータ4が粘着剤層3上に設けられていてもよい。
【0019】
粘着テープ1は、5%モジュラスが6.5MPa以下であり、粘着剤層3のプローブタック試験の積分値が12kPa以上である。なお、粘着剤層3を、後述するエネルギー線硬化性の粘着剤組成物により形成した場合には、エネルギー線照射の前後で、粘着テープ1の5%モジュラスおよび粘着剤層3のプローブタック試験の積分値が変化する場合がある。エキスパンドによる個片化工程は、通常、エネルギー線照射前に行うが、エネルギー線照射後に行われることもある。したがって、本発明において規定する粘着テープ1の5%モジュラス、粘着剤層3のプローブタック試験の積分値は、通常、エネルギー線照射前の物性値であるが、エネルギー線照射後に上記物性値を満足する粘着テープも本発明の範囲に含まれる。エキスパンドによる個片化工程において上記物性値を満足することが重要となる。
【0020】
なお、基材フィルム2および粘着剤層3は、半導体ウエハ6を個片化する際に用いられるリングフレーム8(図3等参照)に対応する形状に切断(プリカット加工)されていることが好ましい。さらに、本発明の粘着テープ1は、ウエハ1枚分ごとに切断された形態であってもよいし、ウエハ1枚分ごとに切断されたものが複数形成された長尺のセパレータ4を、ロール状に巻き取った形態であってもよい。以下に、各層の構成について説明する。
【0021】
<基材フィルム>
基材フィルム2は、均一かつ等方的な拡張性を有するとエキスパンドによる個片化工程においてウエハが全方向に偏りなく切断できる点で好ましく、その材質については、粘着テープ1の5%モジュラスが6.5MPa以下となるものであれば、とくに限定されない。
【0022】
基材フィルム2を構成する樹脂については、例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体加硫物、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリアミド、アイオノマー、ニトリルゴム、ブチルゴム、スチレンイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴムおよびその水添加物または変性物等などを用いてもよい。
【0023】
中でも、基材フィルム2は、エキスパンド時に優れた伸張性を示すことから、ポリオレフィンからなることが好ましい。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのα−オレフィンの単独重合体または共重合体あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0024】
特に、アイオノマーが用いられた基材フィルム2の場合、基材フィルム2の繰り出し方向と幅方向に対して均一な物性を獲得することができる。従って、エキスパンドでの分割が行われる場合に個片化されたチップ間隔を均一にできる。
【0025】
なお、図1に示す例では、基材フィルム2は単層であるが、これに限定されず、2種以上の樹脂を積層させた複数層構造であってもよいし、1種類の樹脂を2層以上に積層させてもよい。2種以上の樹脂は、架橋性か非架橋性かが統一されていれば各々の特性がより増強されて発現する観点で好ましく、架橋性か非架橋性を組合わせて積層した場合には各々の欠点が補われる点で好ましい。
【0026】
薄すぎると取扱いが難しく、厚すぎるとコストが高くなるため、50〜200μmが好ましく、80〜150μmがさらに好ましい。
【0027】
複数層の基材フィルム2の製造方法としては、従来公知の押出法、ラミネート法などを用いることができる。ラミネート法を用いる場合は、層間に接着剤を介在させてもよい。接着剤としては従来公知の接着剤を用いることができる。
【0028】
基材フィルム2の粘着剤層3に接する面には、密着性を向上させるために、コロナ処理を施したり、プライマー等の処理を施してもよい。
【0029】
<粘着剤層>
本発明の粘着テープ1において、粘着剤層3を構成する粘着剤組成物は、粘着剤層3のプローブタック試験の積分値が12kPa以上となるものであれば、とくに限定されない。
【0030】
粘着剤層3は、種々の粘着剤組成物により形成され得る。例えば、天然ゴムや各種の合成ゴムなどのゴム系ポリマー、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系等をベースポリマーとした粘着剤組成物が用いられる。この中でも、アクリル系ポリマー、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとこれと共重合可能な他の不飽和単量体との共重合体を使用することが好ましい。
【0031】
これらの樹脂成分に凝集力を付加するために、粘着剤層3を構成する粘着剤組成物には、架橋剤を配合することができる。該架橋剤としては、樹脂成分中の官能基に対応して、この官能基と反応可能な官能基を有する架橋剤を適宜選択することにより、粘着剤に凝集力を付与するとともに、初期の粘着力を所望の値に設定することができる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン樹脂などが挙げられる。
【0032】
汎用性の点から、架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤が好ましい。具体的には、多価イソシアネート化合物、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、リジンイソシアネートなどが用いられる。
【0033】
また、粘着剤層3を構成する粘着剤組成物は、半導体ウエハ6を個片化した後のピックアップ性を向上させるために、エネルギー線を照射することにより硬化するエネルギー線硬化性の粘着剤組成物であることが好ましい。なお、ここで、エネルギー線とは、紫外線のような光線、または電子線などの電離性放射線をいう。
【0034】
エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、たとえば、特公平1−56112号公報、特開平7−135189号公報等に記載のものが好ましく使用されるが、これらに限定されることはない。
【0035】
本発明においては、紫外線硬化型粘着剤組成物を用いることが好ましい。その場合には、放射線により硬化し三次元網状化する性質を有すればよく、例えば通常のゴム系あるいはアクリル系の感圧性の樹脂成分に対して、分子中に少なくとも2個の光重合性炭素−炭素二重結合を有する低分子量の光重合性化合物(以下、光重合性化合物という)および光重合開始剤を配合することができる。
【0036】
光重合性化合物としては、たとえば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、オルガノポリシロキサン組成物、市販のオリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。
【0037】
粘着剤を構成する樹脂成分として、光硬化性炭素−炭素二重結合を有するものを使用してもよい。例えば、主鎖の繰り返し単位に対して光硬化性炭素−炭素二重結合を有し、かつ官能基を有するアクリル系共重合体及び/又はメタクリル系共重合体(a1)と、該官能基と反応し得る官能基をもつ化合物(a2)とを反応させて得たものを挙げることができる。前記の主鎖の繰り返し単位に対して放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有し、かつ官能基を有するアクリル系共重合体及び/又はメタクリル系共重合体(a1)は、例えば、放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有するアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルなどの単量体(a1−1)と、官能基を有する単量体(a1−2)とを共重合させて得ることができる。
【0038】
単量体(a1−1)としては、例えば、アルキルエステルのアルキル基の炭素数が6〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、デシルアクリレート)を挙げることができる。また、アルキルエステルのアルキル基の炭素数が5以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、ペンチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、またはこれらと同様のメタクリレートなど)を挙げることができる。
【0039】
単量体(a1−2)が有する官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、環状酸無水基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。単量体(a1−−2)の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、けい皮酸、イタコン酸、フマル酸、フタル酸、2−ヒドロキシアルキルアクリレート類、2−ヒドロキシアルキルメタクリレート類、グリコールモノアクリレート類、グリコールモノメタクリレート類、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、アリルアルコール、N−アルキルアミノエチルアクリレート類、N−アルキルアミノエチルメタクリレート類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸、無水フタル酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部を水酸基またはカルボキシル基および放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する単量体でウレタン化したものなどを列挙することができる。
【0040】
前記(a2)の官能基がカルボキシル基や環状酸無水基の場合は、(a1)の有する官能基としては、例えば、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。また(a2)の官能基が水酸基の場合は、(a1)の有する官能基としては、例えば、環状酸無水基、イソシアネート基などを挙げることができる。(a2)の官能基がアミノ基の場合は、(a1)の有する官能基としては、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができる。(a2)の官能基がエポキシ基である場合には、(a1)の有する官能基としては、例えば、カルボキシル基、環状酸無水基、アミノ基などを挙げることができる。
【0041】
紫外線硬化型粘着剤の場合には、粘着剤中に光重合開始剤を混入することにより、紫外線照射による重合硬化時間ならびに紫外線照射量を少なくなることができる。このような光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノンなどが挙げられる。
【0042】
なお、粘着剤組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、各種添加成分を含有させることができる。例えば、粘着付与剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、軟化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤等の公知の添加剤などが含まれていてもよい。また、無機化合物フィラーを適宜加えてもよい。
【0043】
粘着剤層3の厚さは特に制限されないが、好ましくは4〜30μm、特に好ましくは5〜25μmである。
【0044】
粘着剤層3は、従来の粘着剤層の形成方法を利用して形成することができる。例えば、上記粘着剤組成物を、基材フィルム2の所定の面に塗布して形成する方法や、上記粘着剤組成物を、セパレータ(例えば、離型剤が塗布されたプラスチック製フィルム又はシート等)上に塗布して粘着剤層3を形成した後、該粘着剤層3を基材の所定の面に転写する方法により、基材フィルム2上に粘着剤層3を形成することができる。なお、粘着剤層3は単層の形態を有していてもよく、積層された形態を有していてもよい。
【0045】
<セパレータ>
セパレータ4は、粘着剤層3の取り扱い性をよくするとともに粘着剤層3を保護するためのものである。本実施の形態の粘着テープ1に用いられるセパレータ4としては、ポリエステル(PET、PBT、PEN、PBN、PTT)系、ポリオレフィン(PP、PE)系、共重合体(EVA、EEA、EBA)系、またこれらの材料を一部置換して、更に接着性や機械的強度を向上したフィルム使用することができる。また、これらのフィルムの積層体であってもよい。
【0046】
セパレータ4の厚さは、特に限定されるものではなく、適宜に設定してよいが、25〜50μmが好ましい。
【0047】
粘着剤層3は、プローブタック試験の積分値が12kPa以上である。プローブタック試験の積分値は、例えば、株式会社レスカのタッキング試験機TAC−IIを用いて求めることができる。具体的には、粘着テープ1の粘着剤層3を上にし、上側より直径3.0mmのSUS304製のプローブを接触させる。プローブを測定試料に接触させる時のスピードは30mm/minであり、接触荷重は0.98Nであり、接触時間は1秒である。その後、プローブを600mm/minの剥離速度で上方に引き剥がし、引き剥がすのに要する力を測定し、その積分値を求める。測定温度は23℃である。
【0048】
粘着剤層3のプローブタック試験の積分値が12kPa未満であると、エキスパンドによる個片化工程において粘着テープ1を大きく拡張させたとき、粘着力が不十分であるためリングフレームから剥がれてしまい、半導体ウエハ6を分断することができない。
【0049】
粘着テープ1は、5%モジュラスが6.5MPa以下である。粘着テープ1の5%モジュラスは、JIS K 7127/2/300に準拠して引張強度試験機を用いて測定することができ、例えば、株式会社東洋精機製作所製のストログラフ試験機を用いて測定することができる。5%モジュラスは、粘着テープ1の25mm幅の短冊状サンプルを、温度23℃、相対湿度50%の環境下、標線間距離およびつかみ間距離が100mm、引張り速度300mm/minの条件で引張試験を行い、5%歪み時の応力を測定することにより得られる。
【0050】
粘着テープ1の5%モジュラスが6.5MPaより大きいと、エキスパンドによる粘着テープ1の応力により、粘着テープ1がリングフレームから剥離してしまうため、半導体ウエハ6を分断することができない。
【0051】
<用途>
本発明の粘着テープ1は、本発明の粘着テープ1は、エキスパンドにより半導体ウエハ6(図2参照)内部に形成された改質領域7(図2参照)を起点として分断ラインに沿って個片化する個片化工程を含む半導体装置の製造方法に使用されるものである。したがって、その他の工程や工程の順序などは特に限定されない。例えば、以下の半導体装置の製造方法(A),(B)において好適に使用できる。
【0052】
半導体装置の製造方法(A)
(a)回路パターンが形成されたウエハ表面に表面保護テープを貼合する工程と、
(b)前記ウエハ裏面を研削するバックグラインド工程と、
(c)前記ウエハを前記ウエハ裏面に粘着テープの粘着剤層を貼り付けるテープ貼付工程と、
(d)前記ウエハ表面から前記表面保護テープを剥離する工程と、
(e)前記ウエハの分割予定部分にレーザー光を照射し、前記ウエハ内部に多光子吸収による改質領域を形成するレーザー加工工程と、
(f)前記粘着テープを拡張することにより、前記ウエハを分断ラインに沿って分断し、複数のチップを得る個片化工程と、
(g)前記チップを、前記粘着テープの粘着剤層からピックアップする工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【0053】
半導体装置の製造方法(B)
(a)回路パターンが形成されたウエハ表面に表面保護テープを貼合する工程と、
(b)前記ウエハの分割予定部分にレーザー光を照射し、前記ウエハ内部に多光子吸収による改質領域を形成する工程と、
(c)前記ウエハ裏面を研削するバックグラインド工程と、
(d)前記ウエハを前記ウエハ裏面に前記粘着テープの粘着剤層を貼り付けるテープ貼付工程と、
(e)前記ウエハ表面から前記表面保護テープを剥離する工程と、
(f)前記粘着テープを拡張することにより、前記ウエハを分断ラインに沿って分断し、複数のチップを得る個片化工程と、
(g)前記チップを、前記粘着テープの粘着剤層からピックアップする工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【0054】
<使用方法>
本発明の粘着テープ1を、上記半導体装置の製造方法(B)に適用した場合の、粘着テープ1の使用方法について、図2図5を参照しながら説明する。
【0055】
まず、回路パターンが形成された半導体ウエハ6の表面に、紫外線硬化性成分を粘着剤に含む、回路パターン保護用の表面保護テープ13(図2参照)を貼合し、半導体ウエハ6の裏面を研削するバックグラインド工程を実施する。
【0056】
バックグラインド工程の終了後、図2に示すように、半導体ウエハ6の分割予定部分にレーザー光を照射して、半導体ウエハ6の内部に多光子吸収による改質領域7を形成する。
【0057】
次に、半導体ウエハ6の裏面に粘着テープ1を貼合する。粘着テープ1の粘着剤層3と半導体ウエハ6の裏面を貼り合わせるとともに、粘着剤層3の外周部とリングフレーム8(図3参照)を貼り合わせる。
【0058】
次に、粘着テープ1が貼合された半導体ウエハ6を粘着テープ1側を下にして吸着テーブル(図示しない)上へ載置する。そして、吸着テーブルに吸着固定された半導体ウエハ6の上方から、エネルギー線光源を用いて、例えば1000mJ/cm2の紫外線を表面保護テープ13の基材面側に照射し、表面保護テープ13の半導体ウエハ6に対する粘着力を低下させ、半導体ウエハ6表面から表面保護テープ13を剥離する。これにより、図3に示すように、リングフレーム8に、改質領域7が設けられた半導体ウエハ6が貼り付けられた粘着テープ1が保持された状態となる。
【0059】
次に、リングフレーム8に、改質領域7が設けられた半導体ウエハ6が貼り付けられた粘着テープ1を、基材フィルム2側を下にして、エキスパンド装置のステージ(図示しない)上に載置する。
【0060】
次に、図4に示すように、リングフレーム8を固定した状態で、エキスパンド装置の中空円柱形状の突き上げ部材10を上昇させ、粘着テープ1を拡張(エキスパンド)する。拡張条件としては、エキスパンド速度が、例えば5〜500mm/secであり、エキスパンド量(突き上げ量)が、例えば5〜25mmである。このように粘着テープ1が半導体ウエハ6の径方向に引き伸ばされることで、半導体ウエハ6が、前記改質領域7を起点としてチップ9単位に分断される。
【0061】
その後、粘着剤層3にエネルギー線硬化処理または熱硬化処理等を施し、粘着剤層3の半導体ウエハ6に対する粘着力を弱めた後、図5に示すように、チップ9を基材フィルム2側から突き上げピン11で突き上げて、吸着コレット12によりピックアップする。
【0062】
<実施例>
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、実施例および比較例について詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0063】
(1)基材フィルムの作成
<基材フィルム1>
エチレン−酢酸ビニル共重合体(株式会社NUC製 商品名「NUC−3660」)を使用し、140℃で溶融し、押出機を用いて厚さ100μmとなるように成形して基材フィルム1を作成した。
<基材フィルム2>
エチレン−メタクリル酸−(アクリル酸2−メチル−プロピル)−Zn++アイオノマー樹脂(三井・デュポンポリケミカル株式会社製、商品名「ハイミランAM7316」)を140℃で溶融し、押出機を用いて厚さ100μmとなるように成形して基材フィルム2を作成した。
<基材フィルム3>
ポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製、商品名「F227D」)を140℃で溶融し、押出機を用いて厚さ100μmとなるように成形して基材フィルム3を作成した。
【0064】
(2)粘着剤の調製
<粘着剤1>
アクリル系ベースポリマー(2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートからなる共重合体、重量平均分子量30万、ガラス転移点=−35℃)100質量部に対して、ポリイソシアネート化合物(東ソー株式会社製、商品名「コロネートL」)2質量部、光重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物としてテトラメチロールメタンテトラアクリレート75質量部、および光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア184」)を、1.5質量部を添加し混合して、アクリル系の粘着剤1を得た。
【0065】
<粘着剤2>
アクリル系ベースポリマー(2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートからなる共重合体、重量平均分子量30万、ガラス転移点=−35℃)100質量部に対して、ポリイソシアネート化合物(東ソー株式会社製、商品名「コロネートL」)3質量部、光重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物としてテトラメチロールメタンテトラアクリレート50質量部、および光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア184」)1.5質量部を添加し混合して、アクリル系の粘着剤2を得た。
【0066】
(3)粘着テープの作成
<実施例1>
粘着剤1を酢酸エチルに溶解させ攪拌した粘着剤組成物を、離型処理したポリエチレン−テレフタレートフィルムよりなる剥離ライナーに、乾燥後の厚さが10μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥させた後、基材フィルム1と貼り合わせ、基材フィルム上に粘着剤層が形成された実施例1に係る粘着テープを作成した。
【0067】
<実施例2、比較例1〜3>
基材フィルム、粘着剤、粘着剤層の厚さを表1に記載の組合せにした以外は、実施例1と同様の手法により、実施例2、比較例1〜3に係る粘着テープを作成した。
【0068】
実施例・比較例に係る粘着テープの5%モジュラス、粘着剤層のプローブタック試験の積分値、半導体ウエハの分断性、粘着テープのリングフレームからの剥離について、下記のように測定、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0069】
(4)5%モジュラス値の測定
実施例・比較例に係る粘着テープについて、25mm幅の短冊状サンプルを作成した。該短冊状サンプルを、JIS K 7127/2/300に準拠して、温度23℃、相対湿度50%の環境下、標線間距離およびつかみ間距離が100mm、引張り速度300mm/minの条件で引張試験を行い、5%歪み時の応力を測定した。測定には、株式会社東洋精機製作所製のストログラフ試験機を用いた。
【0070】
(5)プローブタック試験の積分値
株式会社レスカのタッキング試験機TAC−IIを用いて行った。測定モードは、設定した加圧値までプローブを押し込み、設定した時間が経過するまで加圧値を保持するようにコントロールし続ける”Constant Load”を用いた。粘着テープの粘着剤層を上にし、上側より直径3.0mmのSUS304製のプローブを接触させた。プローブを測定試料に接触させる時のスピードは30mm/minであり、接触荷重は0.98Nであり、接触時間は1秒である。その後、プローブを600mm/minの剥離速度で上方に引き剥がし、引き剥がすのに要する力を測定し、その積分値を読み取った。プローブ温度は23℃であり、プレート温度は23℃とした。
【0071】
(6)リングフレームからの剥離
回路パターンが形成された半導体ウエハ(厚さ50μm、径300mm)にレーザー光を照射し、ウエハ内部に改質領域を形成した。レーザー照射後の半導体ウエハ及びステンレス製のリングフレームに、粘着テープをラミネートした。次に、エキスパンド装置によりリングフレームを固定し、粘着テープを以下のエキスパンド条件にてエキスパンドした。
エキスパンド速度:300mm/min
エキスパンド量:25mm
ここで、エキスパンド量とは、押下げ前と押下げ後のリングフレームと突き上げ部材の相対位置の変化量をいう。
なお、チップサイズは0.5mm×0.5mmである。
【0072】
上記エキスパンドを実施した後、粘着テープを目視にて観察し、リングフレームからの剥離がなかったものを良品として「○」とし、一部でも剥離が見られたものを不良品として「×」として評価した。
【0073】
(7)ウエハ分断性
上記エキスパンドを実施した後、半導体ウエハがチップに分割されているか否かを、光学顕微鏡で観察し、全て分割されているものを良品として「○」とし、一部でも分割されていないものを不良品として「×」として評価した。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に示すように、実施例1,2は、粘着テープの5%モジュラスが6.5MPa以下であり、粘着剤層のプローブタック試験の積分値が12kPa以上であるため、ウエハ分断性およびリングフレームからの剥離の評価において良好な結果となった。
【0076】
一方、比較例1は、粘着テープの5%モジュラスが6.5MPaより大きく、粘着剤層のプローブタック試験の積分値も12kPa未満であるため、ウエハ分断性およびリングフレームからの剥離の評価において劣る結果となった。比較例2は、粘着テープの5%モジュラスが6.5MPaより大きく、エキスパンドの際に粘着テープにかかる応力により粘着テープがリングフレームから剥離したため、ウエハ分断性およびリングフレームからの剥離の評価において劣る結果となった。比較例3は、粘着剤層のプローブタック試験の積分値が12kPa未満であり、粘着力不足によりエキスパンドの際に粘着テープがリングフレームから剥離したため、ウエハ分断性およびリングフレームからの剥離の評価において劣る結果となった。
【符号の説明】
【0077】
1:粘着テープ
2:基材フィルム
3:粘着剤層
6:半導体ウエハ
7:改質領域
8:リングフレーム
図1
図2
図3
図4
図5