(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  被加工体上に請求項1又は請求項2に記載の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト下層膜材料を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
  被加工体上に請求項1又は請求項2に記載の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト下層膜材料を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
  被加工体上に請求項1又は請求項2に記載の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスク中間膜にエッチングでパターン転写し、該パターンが形成された無機ハードマスク中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写し、更に、該パターンが形成された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
  被加工体上に請求項1又は請求項2に記載の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスク中間膜にエッチングでパターン転写し、該パターンが形成された無機ハードマスク中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写し、更に、該パターンが形成された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
  前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する方法として、波長が10nm以上300nm以下の光を用いた光リソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによってパターンを形成することを特徴とする請求項3から請求項7のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
  前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する際に、アルカリ現像又は有機溶剤によって回路パターンを現像することを特徴とする請求項3から請求項8のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
  前記被加工体として、半導体装置基板、あるいは該半導体装置基板に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることを特徴とする請求項3から請求項9のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
  前記被加工体を構成する金属が、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、モリブデン、又はこれらの合金であることを特徴とする請求項10に記載のパターン形成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
  本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高度な埋め込み/平坦化特性、エッチング耐性を有する有機膜形成用組成物を与える有機膜形成用樹脂、この樹脂を含有する有機膜形成用組成物、及びこの組成物を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0011】
  上記課題を達成するために、本発明では、
(I)繰り返し単位の少なくとも一部に、下記一般式(1)で示される、芳香環を含む環構造ARと、4個の前記ARと結合したスピロ構造SPとが交互に繰り返される構造を含む樹脂と、
(II)有機溶剤と、
を含有するものである有機膜形成用組成物を提供する。
【化1】
(上記一般式(1)中、SPは下記式(1−1)で示されるスピロ構造、ARは下記式(1−2)、(1−3)、(1−4)、(1−5)、(1−6)、又は(1−7)で示される、芳香環を含む環構造であり、S1は0〜3の整数、S2、S3、S4、S5はそれぞれ独立して0〜4の整数であり、S1+S2+S3+S4+S5=4である。ここで破線は、前記SPの環構造と前記ARの芳香環が一辺を共有して結合していることを示し、*は、前記ARの芳香環と、隣の繰り返し単位のスピロ構造の環構造が一辺を共有して結合していることを表す。)
【化2】
(上記式(1−1)中、Xは水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アシロキシ基、アルキルスルホキシ基、又はアリールスルホキシ基であり、各基の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルコキシ基、アシル基、又はアシロキシ基で置換されていてもよい。破線は、上記式(1−1)の環構造が上記一般式(1)中のARの芳香環と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記ARは、スピロ構造の隣り合う辺が別のARの芳香環と共有されておらず、前記Xやスピロ結合もない辺にのみ結合する。)
【化3】
(上記式(1−2)中、Rはすべて同じでも異なってもよく、炭素数1〜20の飽和又は不飽和の一価炭化水素基であり、Qは−O−、−CO−、−(CO)−O−、又は−O−(CO)−であり、qは0又は1であり、R11は0〜4の整数であり、S11は1〜3の整数であり、2≦R11+2×S11≦6である。破線は、上記式(1−2)の芳香環が前記スピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記スピロ構造は、上記式(1−2)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。)
【化4】
(上記式(1−3)中、R、Q、qは上記と同様であり、R21は0〜4の整数であり、R22は0〜4の整数であり、S21は0〜2の整数であり、S22は0〜2の整数であり、1≦S21+S22≦4、2≦R21+R22+2×(S21+S22)≦8である。破線は、上記式(1−3)の芳香環が前記スピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記スピロ構造は、上記式(1−3)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。)
【化5】
(上記式(1−4)中、R、Q、qは上記と同様であり、R31は0〜4の整数、R32は0〜4の整数、R33は0〜2の整数、S31は0〜2の整数、S32は0〜2の整数であり、1≦S31+S32≦4、2≦R31+R32+R33+2×(S31+S32)≦10である。破線は、上記式(1−4)の芳香環が前記スピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記スピロ構造は、上記式(1−4)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。)
【化6】
(上記式(1−5)中、R、Q、qは上記と同様であり、R41は0〜4の整数であり、R42は0〜2の整数であり、R43は0〜4の整数であり、S41は0〜2の整数であり、S42は0又は1の整数であり、S43は0〜2の整数であり、1≦S41+S42+S43≦5、2≦R41+R42+R43+2×(S41+S42+S43)≦10である。破線は、上記式(1−5)の芳香環が前記スピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記スピロ構造は、上記式(1−5)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。)
【化7】
(上記式(1−6)中、R、Q、qは上記と同様であり、R51は0〜3の整数であり、R52は0〜3の整数であり、R53は0〜3整数であり、S51は0又は1の整数であり、S52は0又は1の整数であり、S53は0又は1の整数であり、1≦S51+S52+S53≦3、2≦R51+R52+R53+2×(S51+S52+S53)≦9である。破線は、上記式(1−6)の芳香環が前記スピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記スピロ構造は、上記式(1−6)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。)
【化8】
(上記式(1−7)中、R、Q、qは上記と同様であり、R61は0〜3の整数であり、R62は0又は1の整数であり、R63は0〜3の整数であり、R64は0〜2の整数であり、S61は0又は1の整数であり、S62は0又は1の整数であり、S63は0又は1の整数であり、S64は0又は1の整数であり、1≦S61+S62+S63+S64≦4、2≦R61+R62+R63+R64+2×(S61+S62+S63+S64)≦10である。破線は、上記式(1−7)の芳香環が前記スピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記スピロ構造は、上記式(1−7)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。)
【0012】
  このような組成物であれば、高度な埋め込み/平坦化特性、曲り耐性、エッチング耐性を有する有機膜を提供できる有機膜形成用組成物となる。
【0013】
  前記有機膜形成用組成物が、更に、酸発生剤を含有するものであることが好ましい。
【0014】
  このような組成物であれば、塗布後の加熱工程で酸が発生し、その酸の効果によりスピロアルコールの芳香環化が加速され、有機塗布膜全体の芳香環化を促進できるため、高度な埋め込み/平坦化特性、曲り耐性、エッチング耐性を有する有機膜をより早く、確実に形成できる有機膜形成用組成物となる。
【0015】
  また、本発明では、被加工体上に本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト下層膜材料を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
【0016】
  また、本発明では、被加工体上に本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素含有レジスト下層膜材料を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
【0017】
  また、本発明では、被加工体上に本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜の上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスク中間膜にエッチングでパターン転写し、該パターンが形成された無機ハードマスク中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写し、更に、該パターンが形成された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
【0018】
  また、本発明では、被加工体上に本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物を用いてレジスト上層膜を形成して4層膜構造とし、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスク中間膜にエッチングでパターン転写し、該パターンが形成された無機ハードマスク中間膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写し、更に、該パターンが形成された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
【0019】
  このように、本発明の有機膜形成用組成物は、ケイ素原子を含有するレジスト下層膜又は無機ハードマスクを用いた3層レジストプロセスや、これらに加えて有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセス等の種々のパターン形成方法に好適に用いることができ、このような本発明のパターン形成方法であれば、被加工体にレジスト上層膜の回路パターンを高精度で転写、形成することができる。
【0020】
  また、前記無機ハードマスク中間膜を、CVD法又はALD法によって形成することが好ましい。
【0021】
  本発明のパターン形成方法では、例えばこのような方法で無機ハードマスク中間膜を形成することができる。
【0022】
  また、前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する方法として、波長が10nm以上300nm以下の光を用いた光リソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによってパターンを形成することが好ましい。
【0023】
  また、前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する際に、アルカリ現像又は有機溶剤によって回路パターンを現像することが好ましい。
【0024】
  本発明のパターン形成方法では、このような回路パターンの形成手段及び現像手段を好適に用いることができる。
【0025】
  また、前記被加工体として、半導体装置基板、あるいは該半導体装置基板に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることが好ましい。
【0026】
  また、前記被加工体を構成する金属が、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、モリブデン、又はこれらの合金であることが好ましい。
【0027】
  本発明のパターン形成方法であれば、上記のような被加工体を加工してパターンを形成することができる。
【0028】
  また、本発明では、繰り返し単位の少なくとも一部に、下記一般式(1)で示される、芳香環を含む環構造ARと、4個の前記ARと結合したスピロ構造SPとが交互に繰り返される構造を含むものである有機膜形成用樹脂を提供する。
【化9】
(上記一般式(1)中、SPは下記式(1−1)で示されるスピロ構造、ARは下記式(1−2)、(1−3)、(1−4)、(1−5)、(1−6)、又は(1−7)で示される、芳香環を含む環構造であり、S1は0〜3の整数、S2、S3、S4、S5はそれぞれ独立して0〜4の整数であり、S1+S2+S3+S4+S5=4である。ここで破線は、前記SPの環構造と前記ARの芳香環が一辺を共有して結合していることを示し、*は、前記ARの芳香環と、隣の繰り返し単位のスピロ構造の環構造が一辺を共有して結合していることを表す。)
【化10】
(上記式(1−1)中、Xは水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アシロキシ基、アルキルスルホキシ基、又はアリールスルホキシ基であり、各基の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルコキシ基、アシル基、又はアシロキシ基で置換されていてもよい。破線は、上記式(1−1)の環構造が上記一般式(1)中のARの芳香環と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記ARは、スピロ構造の隣り合う辺が別のARの芳香環と共有されておらず、前記Xやスピロ結合もない辺にのみ結合する。)
【化11】
(上記式(1−2)中、Rはすべて同じでも異なってもよく、炭素数1〜20の飽和又は不飽和の一価炭化水素基であり、Qは−O−、−CO−、−(CO)−O−、又は−O−(CO)−であり、qは0又は1であり、R11は0〜4の整数であり、S11は1〜3の整数であり、2≦R11+2×S11≦6である。破線は、上記式(1−2)の芳香環が前記スピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記スピロ構造は、上記式(1−2)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。)
【化12】
(上記式(1−3)中、R、Q、qは上記と同様であり、R21は0〜4の整数であり、R22は0〜4の整数であり、S21は0〜2の整数であり、S22は0〜2の整数であり、1≦S21+S22≦4、2≦R21+R22+2×(S21+S22)≦8である。破線は、上記式(1−3)の芳香環が前記スピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記スピロ構造は、上記式(1−3)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。)
【化13】
(上記式(1−4)中、R、Q、qは上記と同様であり、R31は0〜4の整数、R32は0〜4の整数、R33は0〜2の整数、S31は0〜2の整数、S32は0〜2の整数であり、1≦S31+S32≦4、2≦R31+R32+R33+2×(S31+S32)≦10である。破線は、上記式(1−4)の芳香環が前記スピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記スピロ構造は、上記式(1−4)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。)
【化14】
(上記式(1−5)中、R、Q、qは上記と同様であり、R41は0〜4の整数であり、R42は0〜2の整数であり、R43は0〜4の整数であり、S41は0〜2の整数であり、S42は0又は1の整数であり、S43は0〜2の整数であり、1≦S41+S42+S43≦5、2≦R41+R42+R43+2×(S41+S42+S43)≦10である。破線は、上記式(1−5)の芳香環が前記スピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記スピロ構造は、上記式(1−5)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。)
【化15】
(上記式(1−6)中、R、Q、qは上記と同様であり、R51は0〜3の整数であり、R52は0〜3の整数であり、R53は0〜3整数であり、S51は0又は1の整数であり、S52は0又は1の整数であり、S53は0又は1の整数であり、1≦S51+S52+S53≦3、2≦R51+R52+R53+2×(S51+S52+S53)≦9である。破線は、上記式(1−6)の芳香環が前記スピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記スピロ構造は、上記式(1−6)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。)
【化16】
(上記式(1−7)中、R、Q、qは上記と同様であり、R61は0〜3の整数であり、R62は0又は1の整数であり、R63は0〜3の整数であり、R64は0〜2の整数であり、S61は0又は1の整数であり、S62は0又は1の整数であり、S63は0又は1の整数であり、S64は0又は1の整数であり、1≦S61+S62+S63+S64≦4、2≦R61+R62+R63+R64+2×(S61+S62+S63+S64)≦10である。破線は、上記式(1−7)の芳香環が前記スピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記スピロ構造は、上記式(1−7)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。)
【0029】
  このような樹脂であれば、高度な埋め込み/平坦化特性、曲り耐性、エッチング耐性を有する有機膜を提供できる有機膜形成用組成物の材料として好適に用いることができる。
 
【発明の効果】
【0030】
  以上説明したように、本発明であれば、高度なエッチング耐性、エッチング時のよれ耐性、及び平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成するための有機膜材料の成分として有用な樹脂、及びこの樹脂を含む有機膜形成用組成物を提供できる。また、この有機膜形成用組成物は、優れたエッチング耐性と平坦性を有するので、例えば、2層レジストプロセス、ケイ素含有レジスト下層膜を用いた3層レジストプロセス、又はケイ素含有レジスト下層膜及び有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセスといった多層レジストプロセスにおけるレジスト下層膜材料として極めて有用である。また、本発明のパターン形成方法であれば、遠紫外線、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、F
2レーザー光(157nm)、Kr
2レーザー光(146nm)、Ar
2レーザー光(126nm)、極端紫外線(EUV、13.5nm)、電子線(EB)、X線露光を好適に用いることが出来るため、多層レジストプロセスにおいて、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0032】
  上述のように、高度な埋め込み/平坦化特性、エッチング耐性を有する有機膜形成用組成物、及び該有機膜形成用組成物に有用な有機膜形成用樹脂の開発が求められていた。
 
【0033】
  本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、スピロ構造に芳香環を含む環構造が一辺を共有して結合している構造が繰り返される樹脂を含む有機膜形成用組成物であれば、加熱するとスピロ環構造からHXが脱離し、炭素−炭素結合の転移によりナフタレン構造を形成するため、有機膜全体がエッチング耐性の高い芳香環構造が縮合した構造となり、これにより回転塗布等による高度な埋め込み/平坦化特性を有し、更に、芳香環が縮合した水素原子の少ない構造を形成するため、高度な曲り・よれ耐性とエッチング耐性を有する有機膜を提供できる有機膜形成用組成物となることを見出し、本発明を完成させた。
 
【0034】
  すなわち、本発明は、(I)繰り返し単位の少なくとも一部に、下記一般式(1)で示される、芳香環を含む環構造ARと、4個の前記ARと結合したスピロ構造SPとが交互に繰り返される構造を含む樹脂と、(II)有機溶剤と、を含有するものである有機膜形成用組成物である。
【化17】
(上記一般式(1)中、SPは下記式(1−1)で示されるスピロ構造、ARは下記式(1−2)、(1−3)、(1−4)、(1−5)、(1−6)、又は(1−7)で示される、芳香環を含む環構造であり、S1は0〜3の整数、S2、S3、S4、S5はそれぞれ独立して0〜4の整数であり、S1+S2+S3+S4+S5=4である。ここで破線は、前記SPの環構造と前記ARの芳香環が一辺を共有して結合していることを示し、*は、前記ARの芳香環と、隣の繰り返し単位のスピロ構造の環構造が一辺を共有して結合していることを表す。)
【化18】
(上記式(1−1)中、Xは水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アシロキシ基、アルキルスルホキシ基、又はアリールスルホキシ基であり、各基の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルコキシ基、アシル基、又はアシロキシ基で置換されていてもよい。破線は、上記式(1−1)の環構造が上記一般式(1)中のARの芳香環と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記ARは、スピロ構造の隣り合う辺が別のARの芳香環と共有されておらず、前記Xやスピロ結合もない辺にのみ結合する。)
【化19】
(上記式(1−2)中、Rはすべて同じでも異なってもよく、炭素数1〜20の飽和又は不飽和の一価炭化水素基であり、Qは−O−、−CO−、−(CO)−O−、又は−O−(CO)−であり、qは0又は1であり、R11は0〜4の整数であり、S11は1〜3の整数であり、2≦R11+2×S11≦6である。破線は、上記式(1−2)の芳香環が前記スピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記スピロ構造は、上記式(1−2)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。)
【化20】
(上記式(1−3)中、R、Q、qは上記と同様であり、R21は0〜4の整数であり、R22は0〜4の整数であり、S21は0〜2の整数であり、S22は0〜2の整数であり、1≦S21+S22≦4、2≦R21+R22+2×(S21+S22)≦8である。破線は、上記式(1−3)の芳香環が前記スピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記スピロ構造は、上記式(1−3)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。)
【化21】
(上記式(1−4)中、R、Q、qは上記と同様であり、R31は0〜4の整数、R32は0〜4の整数、R33は0〜2の整数、S31は0〜2の整数、S32は0〜2の整数であり、1≦S31+S32≦4、2≦R31+R32+R33+2×(S31+S32)≦10である。破線は、上記式(1−4)の芳香環が前記スピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記スピロ構造は、上記式(1−4)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。)
【化22】
(上記式(1−5)中、R、Q、qは上記と同様であり、R41は0〜4の整数であり、R42は0〜2の整数であり、R43は0〜4の整数であり、S41は0〜2の整数であり、S42は0又は1の整数であり、S43は0〜2の整数であり、1≦S41+S42+S43≦5、2≦R41+R42+R43+2×(S41+S42+S43)≦10である。破線は、上記式(1−5)の芳香環が前記スピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記スピロ構造は、上記式(1−5)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。)
【化23】
(上記式(1−6)中、R、Q、qは上記と同様であり、R51は0〜3の整数であり、R52は0〜3の整数であり、R53は0〜3整数であり、S51は0又は1の整数であり、S52は0又は1の整数であり、S53は0又は1の整数であり、1≦S51+S52+S53≦3、2≦R51+R52+R53+2×(S51+S52+S53)≦9である。破線は、上記式(1−6)の芳香環が前記スピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記スピロ構造は、上記式(1−6)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。)
【化24】
(上記式(1−7)中、R、Q、qは上記と同様であり、R61は0〜3の整数であり、R62は0又は1の整数であり、R63は0〜3の整数であり、R64は0〜2の整数であり、S61は0又は1の整数であり、S62は0又は1の整数であり、S63は0又は1の整数であり、S64は0又は1の整数であり、1≦S61+S62+S63+S64≦4、2≦R61+R62+R63+R64+2×(S61+S62+S63+S64)≦10である。破線は、上記式(1−7)の芳香環が前記スピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、前記スピロ構造は、上記式(1−7)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。)
 
【0035】
  以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
 
【0036】
<有機膜形成用樹脂>
  本発明の有機膜形成用樹脂は、繰り返し単位の少なくとも一部に、一般式(1)で示される、芳香環を含む環構造ARと、4個の該ARと結合したスピロ構造SPとが交互に繰り返される構造を含むものである。
 
【0038】
  上記一般式(1)中、S1は0〜3の整数、S2、S3、S4、S5はそれぞれ独立して0〜4の整数であり、S1+S2+S3+S4+S5=4である。ここで破線は、SPの環構造とARの芳香環が一辺を共有して結合していることを示し、*は、ARの芳香環と、隣の繰り返し単位のスピロ構造の環構造が一辺を共有して結合していることを表す。
 
【0039】
  上記一般式(1)中、SPは下記式(1−1)で示されるスピロ構造、ARは下記式(1−2)、(1−3)、(1−4)、(1−5)、(1−6)、又は(1−7)で示される、芳香環を含む環構造である。SPとARは、SPの五員環又は六員環の一辺と、ARの芳香環の一辺を共有して結合しており、このSPとARの結合が繰り返されるため、本発明の有機膜形成用樹脂は、繰り返し単位の少なくとも一部に、主鎖が環構造だけで形成される構造を持つ。
 
【0041】
  本発明の有機膜形成用樹脂に含まれるスピロ構造(SP)は、上記式(1−1)で示されるスピロ構造である。上記式(1−1)中、Xは水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アシロキシ基、アルキルスルホキシ基、又はアリールスルホキシ基であり、各基の水素原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルコキシ基、アシル基、又はアシロキシ基で置換されていてもよい。
 
【0042】
  上記式(1−1)中、破線は、SPの環構造が上記一般式(1)中のARの芳香環と一辺を共有して結合していることを表す。なお、SPに結合するARは、SPの隣り合う辺が別のARの芳香環と共有されておらず、Xや、五員環と六員環が一点で結合しているスピロ結合もない辺にのみ結合する。すなわち、上記式(1−1)において、破線と交わっている4辺と4つのARの芳香環の一辺がそれぞれ共有され、結合する。
 
【0043】
[芳香環を含む環構造(AR)]
  本発明の有機膜形成用樹脂に含まれる芳香環を含む環構造(AR)は、以下の式(1−2)〜(1−7)のいずれかの構造式で示される構造である。
 
【0045】
  上記式(1−2)中、Rはすべて同じでも異なってもよく、炭素数1〜20の飽和又は不飽和の一価炭化水素基であり、Qは−O−、−CO−、−(CO)−O−、又は−O−(CO)−であり、qは0又は1であり、R11は0〜4の整数であり、S11は1〜3の整数であり、2≦R11+2×S11≦6である。
 
【0046】
  上記式(1−2)中、破線は、上記式(1−2)の芳香環がスピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、スピロ構造は、上記式(1−2)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。すなわち、上記式(1−2)で示されるARは、最大で3つまでのスピロ構造と結合できる。
 
【0048】
  上記式(1−3)中、R、Q、qは前述の通りであり、R21は0〜4の整数であり、R22は0〜4の整数であり、S21は0〜2の整数であり、S22は0〜2の整数であり、1≦S21+S22≦4、2≦R21+R22+2×(S21+S22)≦8である。
 
【0049】
  上記式(1−3)中、破線は、上記式(1−3)の芳香環がスピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、スピロ構造は、上記式(1−3)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。また、上記式(1−3)中において2つの芳香環が一辺を共有して結合している辺と隣り合う辺にも、スピロ構造は結合できない。すなわち、上記式(1−3)で示されるARは、2つの芳香環がそれぞれ2つのスピロ構造と結合できるので、最大で4つまでのスピロ構造と結合できる。
 
【0051】
  上記式(1−4)中、R、Q、qは前述の通りであり、R31は0〜4の整数、R32は0〜4の整数、R33は0〜2の整数、S31は0〜2の整数、S32は0〜2の整数であり、1≦S31+S32≦4、2≦R31+R32+R33+2×(S31+S32)≦10である。
 
【0052】
  上記式(1−4)中、破線は、上記式(1−4)の芳香環がスピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、スピロ構造は、上記式(1−4)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。また、上記式(1−4)中において2つの芳香環が一辺を共有して結合している辺と隣り合う辺にも、スピロ構造は結合できない。すなわち、上記式(1−4)で示されるARは、中心の芳香環はスピロ構造と結合できず、両端の2つの芳香環がそれぞれ2つのスピロ構造と結合できるので、最大で4つまでのスピロ構造と結合できる。
 
【0054】
  上記式(1−5)中、R、Q、qは前述の通りであり、R41は0〜4の整数であり、R42は0〜2の整数であり、R43は0〜4の整数であり、S41は0〜2の整数であり、S42は0又は1の整数であり、S43は0〜2の整数であり、1≦S41+S42+S43≦5、2≦R41+R42+R43+2×(S41+S42+S43)≦10である。
 
【0055】
  上記式(1−5)中、破線は、上記式(1−5)の芳香環がスピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、スピロ構造は、上記式(1−5)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。また、上記式(1−5)中において2つの芳香環が一辺を共有して結合している辺と隣り合う辺にも、スピロ構造は結合できない。すなわち、上記式(1−5)で示されるARは、中心の芳香環は1つのスピロ構造と結合でき、両端の2つの芳香環がそれぞれ2つのスピロ構造と結合できるので、最大で5つまでのスピロ構造と結合できる。
 
【0057】
  上記式(1−6)中、R、Q、qは前述の通りであり、R51は0〜3の整数であり、R52は0〜3の整数であり、R53は0〜3整数であり、S51は0又は1の整数であり、S52は0又は1の整数であり、S53は0又は1の整数であり、1≦S51+S52+S53≦3、2≦R51+R52+R53+2×(S51+S52+S53)≦9である。
 
【0058】
  上記式(1−6)中、破線は、上記式(1−6)の芳香環がスピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、スピロ構造は、上記式(1−6)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。また、上記式(1−6)中において2つの芳香環が一辺を共有して結合している辺と隣り合う辺にも、スピロ構造は結合できない。すなわち、上記式(1−6)で示されるARは、3つの芳香環がそれぞれ1つのスピロ構造と結合できるので、最大で3つまでのスピロ構造と結合できる。
 
【0060】
  上記式(1−7)中、R、Q、qは前述の通りであり、R61は0〜3の整数であり、R62は0又は1の整数であり、R63は0〜3の整数であり、R64は0〜2の整数であり、S61は0又は1の整数であり、S62は0又は1の整数であり、S63は0又は1の整数であり、S64は0又は1の整数であり、1≦S61+S62+S63+S64≦4、2≦R61+R62+R63+R64+2×(S61+S62+S63+S64)≦10である。
 
【0061】
  上記式(1−7)中、破線は、上記式(1−7)の芳香環がスピロ構造の環構造と一辺を共有して結合していることを表す。なお、スピロ構造は、上記式(1−7)の芳香環の隣り合う辺が別のスピロ構造の環構造と共有されていない辺にのみ結合する。また、上記式(1−7)中において2つの芳香環が一辺を共有して結合している辺と隣り合う辺にも、スピロ構造は結合できない。すなわち、上記式(1−7)で示されるARは、4つの芳香環がそれぞれ1つのスピロ構造と結合できるので、最大で4つまでのスピロ構造と結合できる。
 
【0062】
[有機膜形成用樹脂の製造方法]
  ここで、本発明の有機膜形成用樹脂の製造方法の一例として、下記の工程を含む製造方法を挙げることが出来るが、これに限定されない。
 
【0063】
(α工程:ポリオール化合物(0−3)の製造)
  一つの分子内に2個の芳香環と縮合した5員環ケトンを2個以上含有する化合物である出発物質(0−1)を原料にして、アルカリ金属やアルカリ土類金属による1電子還元反応(0−2)を経由するピナコールカップリング反応によりポリオール化合物(0−3)を製造する。
【化33】
(ARは式(1−2)〜(1−7)で示される芳香環を含む環構造であり、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属である。)
 
【0064】
  ポリオール化合物(0−3)は、例えば、下記一般式で例示される出発物質(0−1)から製造することが出来るが、以下に限定されない。
 
【0069】
  上記の構造式で示される出発物質の水素原子は、置換されていてもよく、好ましい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ビニロキシ基、アリロキシ基、プロパルギルオキシ基、フェニル基、トリル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基が挙げられる。
 
【0070】
  調製する有機膜形成用樹脂の要求性能に合わせて、適切な構造の出発物質を組み合わせて用いることが可能である。平坦化特性の向上に寄与する側鎖構造や、エッチング耐性、耐熱性に寄与する剛直な芳香環構造等を含む出発物質を任意の割合で組み合わせて作製した有機膜形成用樹脂を用いることで、本発明の有機膜形成用組成物は、埋め込み/平坦化特性とエッチング耐性をより高い次元で両立することが可能である。
 
【0071】
  また、ピナコールカップリング反応によるポリオール化合物(0−3)の製造において、有機膜形成用組成物の埋め込み特性や溶剤への溶解性の改善等のために、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン、フルオレノン、ベンゾフルオレノン等のケトン類やベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンアルデヒド等の芳香族アルデヒド、アセナフタキノン、シクロペンタ[f、g]テトラセン−1,2−ジオン、1,2−インダンジオン等のジケトン類を上述した出発物質(0−1)と組み合わせて用いることができる。
 
【0072】
  ポリオール化合物(0−3)は通常、出発物質(0−1)を、有機溶媒中でLi、K、Na等のアルカリ金属類もしくはCa、Mg等のアルカリ土類金属類の存在下で、室温又は必要に応じて冷却もしくは加熱下で1電子還元反応させることで得ることが出来る。
 
【0073】
  α工程の上記反応で用いられる有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の炭化水素類等を挙げることができ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
 
【0074】
  反応方法としては、出発物質(0−1)と触媒であるアルカリ金属又はアルカリ土類金属を一括で仕込む方法、出発物質(0−1)を分散又は溶解後、触媒を一括投入する方法、触媒を分散後、出発物質(0−1)を一括又は分割し添加、又は溶剤で希釈し滴下する方法がある。反応終了後、反応に使用した触媒を除去するために有機溶剤に希釈後、分液洗浄を行い、目的物であるポリオール化合物(0−3)を回収することができる。
 
【0075】
  α工程で触媒を除去する際に使用する有機溶剤としては、目的物であるポリオール化合物(0−3)を溶解でき、水と混合しても2層分離するものであれば特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、エチルシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、及びこれらの混合物等を挙げることが出来る。
 
【0076】
  α工程で用いられる洗浄水としては、通常、脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。洗浄回数は1回以上であればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果が得られるとは限らないため、好ましくは1〜5回程度である。
 
【0077】
  分液洗浄の際に系内の触媒を除去するため、酸性水溶液で洗浄を行ってもよい。酸としては、特に限定されないが、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸類、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類等が挙げられる。
 
【0078】
  上記の酸性水溶液による分液洗浄後、続けて中性の水で洗浄してもよい。中性水としては、上記で述べた脱イオン水や超純水等を使用すればよい。洗浄回数は1回以上であればよいが、回数が少なく酸性成分を除去できないことがある。また、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1〜5回、より好ましくは2〜5回程度である。
 
【0079】
  更に、分液操作後の反応生成物は、減圧又は常圧で溶剤を濃縮乾固又は晶出操作を行い粉体として回収することもできる。また、次の工程の操作性改善のため、適度な濃度の溶液状態にしておくことも可能である。
 
【0080】
(β工程:スピロケトン化合物(0−4)の製造)
  ポリオール化合物(0−3)を酸処理して芳香環を転位させて、スピロケトン化合物(0−4)を製造する。
【化38】
 
【0081】
  スピロケトン化合物(0−4)はα工程で製造されたポリオール化合物(0−3)から製造することが出来る。
 
【0082】
  スピロケトン化合物(0−4)は、通常、有機溶媒中で酸触媒の存在下、室温又は必要に応じて冷却又は加熱下で得ることが出来る。β工程で用いられる酸触媒としては、特に限定されないが、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸類、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類、三塩化アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四塩化錫、四臭化錫、二塩化ジブチル錫、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫オキシド、四塩化チタン、四臭化チタン、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、酸化チタン(IV)等のルイス酸類等を挙げることができる。
 
【0083】
  β工程の上記反応で用いられる有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒類が挙げられ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
 
【0084】
  反応方法としては、ポリオール化合物(0−3)と酸触媒を一括で仕込む方法、ポリオール化合物(0−3)を分散又は溶解後、酸触媒を一括又は分割により添加する方法、溶剤で希釈し滴下する方法、酸触媒を分散後又は溶解後、ポリオール化合物(0−3)を一括又は分割により添加する方法や、有機溶剤で希釈し滴下する方法がある。反応終了後、反応に使用した酸触媒を除去するために有機溶剤に希釈後、分液洗浄を行い目的物であるスピロケトン化合物(0−4)を回収できる。
 
【0085】
  β工程で触媒を除去する際に使用する有機溶剤としては、目的物であるスピロケトン化合物(0−4)を溶解でき、水と混合しても2層分離するものであれば特に限定されないが、α工程で触媒を除去する際に使用する有機溶剤として例示された有機溶剤を使用できる。
 
【0086】
  β工程で用いられる洗浄水としては、通常、脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。洗浄回数は1回以上であればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1〜5回程度である。
 
【0087】
  更に、分液操作後の反応生成物は、減圧又は常圧で溶剤を濃縮乾固又は晶出操作を行い粉体として回収することもできる。また、次の工程の操作性改善のため、適度な濃度の溶液状態にしておくことも可能である。
 
【0088】
(β´工程:スピロケトン化合物(0−4)の製造の別法)
  スピロケトン化合物(0−4)の製造方法の別法として、下記のように一つの分子内に2個の芳香環と縮合した5員環ケトンを2個以上含有する化合物である出発物質(0−1)を亜リン酸化合物と反応させることにより直接スピロケトン化合物(0−4)を製造することも可能である。
【化39】
 
【0089】
  上記のように、スピロケトン化合物(0−4)は出発物質(0−1)から1工程で製造することも出来る。
 
【0090】
  この場合、スピロケトン化合物(0−4)は、亜リン酸化合物存在下で加熱を行い反応させることにより得ることが出来る。このとき用いられる亜リン酸化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイトジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト及びジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト等の化合物が挙げられ、これらを単独、又は組み合わせて用いることができる。
 
【0091】
  反応方法としては、出発物質(0−1)と亜リン酸化合物とを混合、加熱する方法が用いられる。スピロアルコール化合物(0−3)と同様に反応終了後、分液洗浄し、目的物であるスピロケトン化合物(0−4)を回収することも可能であるが、反応液を貧溶媒に晶出させ回収することも可能である。
 
【0092】
(γ工程:スピロアルコール化合物(1−0)の製造)
  スピロケトン化合物(0−4)を還元してスピロアルコール化合物(1−0)を製造する。
【化40】
 
【0093】
  スピロアルコール化合物(1−0)は、β工程又はβ´工程で製造されたスピロケトン化合物(0−4)から製造することが出来る。
 
【0094】
  スピロアルコール化合物(1−0)は、通常、有機溶媒中で還元剤の存在下、室温又は必要に応じて冷却又は加熱下で得ることが出来る。
 
【0095】
  γ工程で用いられる還元剤としては、特に限定されないが、例えば、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素ナトリウム等の金属水素化物を用いることができる。
 
【0096】
  γ工程の上記反応で用いられる有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の炭化水素類が挙げられ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
 
【0097】
  反応方法としては、スピロケトン化合物(0−4)と還元剤を一括で仕込む方法、スピロケトン化合物(0−4)を分散又は溶解後、還元剤を一括又は分割により添加する方法、有機溶剤で希釈し滴下する方法、還元剤を分散後又は溶解後、スピロケトン化合物(0−4)を一括又は分割により添加する方法、有機溶剤で希釈し滴下する方法がある。反応終了後、反応に使用した還元剤を除去するために有機溶剤に希釈後、分液洗浄を行い目的物であるスピロアルコール化合物(1−0)を回収できる。
 
【0098】
  γ工程で還元剤を除去する際に使用する有機溶剤としては、目的物であるスピロアルコール化合物(1−0)を溶解でき、水と混合すると2層分離するものであれば特に限定されないが、α工程で触媒を除去する際に使用する有機溶剤として例示された溶剤が使用できる。
 
【0099】
  γ工程で用いられる洗浄水としては、通常、脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。洗浄回数は1回以上であればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1〜5回程度である。
 
【0100】
  また、分液洗浄の際に、系内の酸性成分を除去するために、塩基性水溶液で洗浄を行ってもよい。このとき使用する塩基性水溶液に含まれる塩基としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アンモニア、及び有機アンモニウム等が挙げられる。
 
【0101】
  更に、分液洗浄の際に、系内の金属不純物又は塩基成分を除去するため、酸性水溶液で洗浄を行ってもよい。このとき使用する酸性水溶液に含まれる酸としては、特に限定されないが、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸類、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類等が挙げられる。
 
【0102】
  γ工程での塩基性水溶液、酸性水溶液による分液洗浄はいずれか一方のみでもよいし、組み合わせて行ってもよい。組み合わせて分液洗浄を行う場合、塩基性水溶液、酸性水溶液の順に行うのが金属不純物除去の観点から好ましい。
 
【0103】
  γ工程での塩基性水溶液、酸性水溶液による分液洗浄後、続けて中性の水で洗浄してもよい。中性水としては、上記で述べた脱イオン水や超純水等を使用すればよい。洗浄回数は1回以上であればよいが、確実に塩基成分、酸性成分を除去し、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果を得られるとは限らないため、好ましくは1〜5回程度である。
 
【0104】
  更に、分液操作後の反応生成物は、減圧又は常圧で溶剤を濃縮乾固又は晶出操作を行い粉体として回収することもできるが、有機膜材料を調製する際の操作性改善のため、適度な濃度の溶液状態にしておくことも可能である。このときの濃度としては、0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30重量%である。このような濃度であれば、粘度が高くなりにくいことから操作性を損なうことを防止することができ、また、溶剤の量が過大となることがないことから経済的になる。
 
【0105】
  γ工程での晶出操作で用いる溶剤としては、スピロアルコール化合物(1−0)を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、シクロヘキサノン、メチル−2−アミルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類が挙げられ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
 
【0106】
  γ工程で得られたスピロアルコール化合物(1−0)は、本発明の有機膜形成用樹脂(式(1−1)中、X=水酸基のもの)として適用してもよいし、この水酸基を別の置換基に変換してもよい。本発明の有機膜形成用樹脂は熱、酸のいずれか、又はその両方の作用により4個のARの芳香環が縮合結合したナフタレン環含有化合物を形成することが出来る。すなわち、本発明の有機膜形成用樹脂において、(1´)で示される構造は、被加工基板にコーティングされた後、熱処理されることでナフタレン環含有構造(2)となる。ナフタレン環含有構造(2)の繰り返し単位の主鎖は、芳香環だけで形成されているため、エッチング耐性の高い塗布膜として、基板上に成膜することが出来る。
【化41】
 
【0107】
  なお、上記の(1´)で示される構造は、説明のために例示的に示されたものであり、本発明の構造を限定するものではない。本発明は、(1´)の他に、別の繰り返し単位を更に含んでいてもよい。
 
【0108】
<有機膜形成用組成物>
  本発明の有機膜形成用組成物は、
(I)先述した、繰り返し単位の少なくとも一部に、一般式(1)で示される、芳香環を含む環構造ARと、4個の該ARと結合したスピロ構造SPとが交互に繰り返される構造を含む樹脂と、
(II)有機溶剤とを含有するものである。
 
【0109】
  本発明の有機膜形成用組成物には、更に別の化合物やポリマーをブレンドすることもできる。ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーは、本発明の有機膜形成用組成物と混合し、スピンコーティングの成膜性や、段差を有する基板での埋め込み特性を向上させる役割を持つ。
 
【0110】
  このような材料としては、特に限定されないが、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、3,5−ジフェニルフェノール、2−ナフチルフェノール、3−ナフチルフェノール、4−ナフチルフェノール、4−トリチルフェノール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、カテコール、4−tert−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−tert−ブチル−5−メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール、4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメチル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジアリル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフルオロ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジフェニル−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,2’ジメトキシ−4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、3,3,3’,3’,4,4’−ヘキサメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−5,5’−ジオール、5,5’−ジメチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−2,3,2’,3’−テトラヒドロ−(1,1’)−スピロビインデン−6,6’−ジオール、1−ナフトール、2−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、4−メトキシ−1−ナフトール、7−メトキシ−2−ナフトール及び1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸メチル、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5−ビニルノルボルナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、リモネン等のノボラック樹脂、及びこれらの共重合体、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルカルバゾール、ポリインデン、ポリアセナフチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロデセン、ポリテトラシクロドデセン、ポリノルトリシクレン、ポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。また、特開2004−205685号公報記載のナフトールジシクロペンタジエン共重合体、特開2005−128509号公報記載のフルオレンビスフェノールノボラック樹脂、特開2005−250434号公報記載のアセナフチレン共重合体、特開2006−227391号公報記載のフェノール基を有するフラーレン、特開2006−293298号公報記載のビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2006−285095号公報記載のアダマンタンフェノール化合物のノボラック樹脂、特開2010−122656号公報記載のビスナフトール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2008−158002号公報記載のフラーレン樹脂化合物等をブレンドすることもできる。ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーの配合量は、本発明の有機膜形成用樹脂100質量部に対して0〜1,000質量部が好ましく、より好ましくは0〜500質量部である。
 
【0111】
  本発明の有機膜形成用組成物には、スピロアルコール化合物の芳香環化反応を更に促進させるために酸発生剤を添加することが好ましい。酸発生剤は熱分解によって酸を発生させるものや、光照射によって酸を発生させるものがあるが、いずれのものも添加することができる。具体的には、特開2007−199653号公報中の(0061)〜(0085)段落に記載されている材料を添加することができる。
 
【0112】
  本発明の有機膜形成用組成物において使用可能な有機溶剤としては、本発明の有機膜形成用樹脂、酸発生剤、架橋剤、その他後述の添加剤等が溶解するものであれば特に限定されない。例えば、特開2007−199653号公報中の(0091)〜(0092)段落に記載されている溶剤等の、沸点が180℃未満の溶剤を使用することができる。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、及びこれらのうち2種以上の混合物が好ましく用いられる。
 
【0113】
  また、本発明の有機膜形成用組成物には有機溶剤として、前述の沸点が180℃未満の溶剤に、沸点が180℃以上の高沸点溶剤を添加する事も可能である(沸点が180℃未満の溶剤と沸点が180℃以上の溶剤の混合物)。高沸点有機溶剤としては、有機膜形成用樹脂を溶解できるものであれば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、塩素系溶剤等の限定は特にはないが、例えば、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、酢酸n−ノニル、
エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチン、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、γ−ブチロラクトン等が挙げられ、これらを単独又は混合し用いても良い。
 
【0114】
  高沸点溶剤の沸点は、有機膜形成用組成物を熱処理する温度に合わせて適宜選択すればよい。添加する高沸点溶剤の沸点は180℃〜300℃であることが好ましく、200℃〜300℃であることがより好ましい。沸点が180℃以上であれば、沸点が低すぎることによってベーク(熱処理)した際の揮発が速すぎる恐れがないため、十分な熱流動性を得ることができる。また、沸点が300℃以下であれば、沸点が高すぎてベーク後も揮発することなく膜中に残存してしまうことがないため、エッチング耐性等の膜物性に悪影響を及ぼす恐れがない。
 
【0115】
  また、高沸点溶剤を使用する場合、高沸点溶剤の配合量は、沸点180℃未満の溶剤100質量部に対して1〜30質量部とすることが好ましい。このような配合量であれば、配合量が少なすぎてベーク時に十分な熱流動性が付与することができなくなったり、配合量が多すぎて膜中に残存しエッチング耐性等の膜物性の劣化につながったりする恐れがない。
 
【0116】
  このように、有機膜形成用樹脂に高沸点溶剤の添加による熱流動性が付与されることで、より高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つ有機膜形成用組成物となる。
 
【0117】
  パターン形成方法時のスピンコーティングにおける塗布性を向上させるために、本発明の有機膜形成用組成物に界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤は、特に制限されないが、例えば、特開2008−111103号公報中の(0165)〜(0166)段落に記載のものを用いることができ、具体的にはDIC製のR−40,R−41,R−43等、3M製のFC−4430、FC−4432等、OMNOVA製のPF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−652−NF等が入手性の容易さから好ましく用いることができる。
 
【0118】
  また、本発明の有機膜形成用組成物には、上記の他に、埋め込み/平坦化特性を更に向上させるための添加剤を加えてもよい。
 
【0119】
  添加剤としては、埋め込み/平坦化特性を付与するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール構造を有する液状添加剤が挙げられる。また、30℃から250℃までの間の重量減少率が40質量%以上、かつ、重量平均分子量300〜200,000である熱分解性重合体が好ましく用いられる。この熱分解性重合体は、下記一般式(DP1)、(DP1a)で示されるアセタール構造を有する繰り返し単位を含有するもの等が挙げられる。
 
【0120】
【化42】
(上記式中、R
6は、水素原子、又は置換されていてもよい炭素数1〜30の飽和もしくは不飽和の一価の有機基である。Yは、炭素数2〜30の飽和又は不飽和の二価の有機基である。)
 
【0121】
【化43】
(上記式中、R
6aは、炭素数1〜4のアルキル基である。Y
aは、炭素数4〜10の飽和又は不飽和の二価の炭化水素基であり、エーテル結合を有していてもよい。nは平均繰り返し単位数を表し、3〜500である。)
 
【0122】
  なお、本発明の有機膜形成用組成物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。有機膜形成用組成物はレジスト下層膜材料又は半導体装置製造用平坦化材料の用途に用いることができる。
 
【0123】
  また、本発明の有機膜形成用組成物は、2層レジストプロセス、ケイ素含有中間層膜を用いた3層レジストプロセス、ケイ素含有無機ハードマスク中間膜及び有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセス等といった多層レジストプロセス用レジスト下層膜材料として、極めて有用である。
 
【0124】
<パターン形成方法>
[ケイ素含有レジスト下層膜を用いた3層レジストプロセス]
  本発明では、被加工体上に上述の本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素原子を含有するレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記レジスト下層膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
 
【0125】
  被加工体としては、半導体装置基板、又は該半導体装置基板上に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることが好ましく、より具体的には、特に限定されないが、Si、α−Si、p−Si、SiO
2、SiN、SiON、W、TiN、Al等の基板や、該基板上に被加工層として、上記の金属膜等が成膜されたもの等が用いられる。
 
【0126】
  被加工層としては、Si、SiO
2、SiON、SiN、p−Si、α−Si、W、W−Si、Al、Cu、Al−Si等種々のLow−k膜及びそのストッパー膜が用いられ、通常50〜10,000nm、特に100〜5,000nmの厚さに形成し得る。なお、被加工層を成膜する場合、基板と被加工層とは、異なる材質のものが用いられる。
 
【0127】
  なお、被加工体を構成する金属は、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、モリブデン、又はこれらの合金であることが好ましい。
 
【0128】
  また、被加工体として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることが好ましい。
 
【0129】
  被加工体上に本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成する方法としては特に制限されず、常法を用いることができる。
 
【0130】
  例えば、本発明の有機膜形成用組成物を、フォトレジストと同様にスピンコート法等で被加工基板上にコーティングする。スピンコート法等を用いることで、良好な埋め込み特性を得ることができる。スピンコート後、溶媒を蒸発させ、レジスト上層膜やレジスト中間層膜とのミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためにベークを行う。ベークは100℃以上600℃以下、10〜600秒の範囲内で行うことが好ましく、200℃以上500℃以下、10〜300秒の範囲内で行うことがより好ましい。ベーク温度は、更に好ましくは150℃以上500℃以下であり、特に好ましくは180℃以上400℃以下である。デバイスダメージやウェハーの変形への影響を考えると、リソグラフィーのウェハープロセスでの加熱温度の上限は、好ましくは600℃、より好ましくは500℃である。
 
【0131】
  また、別の例としては、被加工基板上に本発明の有機膜形成用組成物を、スピンコート法等でコーティングし、有機膜形成用組成物を、酸素濃度0.1%以上21%以下の雰囲気中で焼成して硬化させることにより有機膜を形成する方法も挙げられる。
 
【0132】
  本発明の有機膜形成用組成物をこのような濃度範囲の酸素雰囲気中で焼成すると、十分に硬化した膜を得ることができるため、好ましい。ベーク中の雰囲気としては空気雰囲気でも構わないが、酸素を低減させるためにN
2、Ar、He等の不活性ガスを封入しておくことは、有機膜の酸化を防止するために好ましい。酸化を防止するためには酸素濃度をコントロールすることが好ましく、酸素濃度は好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下である。ベーク中の有機膜の酸化を防止すると、吸収が増大したりエッチング耐性が低下したりすることがないため好ましい。
 
【0133】
  本発明の有機膜形成用組成物は、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板上に有機膜を形成する際、好適に用いることができる。上述のように、本発明の有機膜形成用組成物は、埋め込み/平坦化特性に優れるため、被加工基板に高さ30nm以上の構造体又は段差(凹凸)があっても、平坦な硬化膜を形成することができる。
 
【0134】
  なお、形成される有機膜の厚さは適宜選定されるが、30〜20,000nmとすることが好ましく、特に50〜15,000nmとすることが好ましい。
 
【0135】
  次に、有機膜の上にケイ素原子を含有するレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜(ケイ素含有レジスト下層膜)を形成する。ケイ素原子を含有するレジスト下層膜材料としては、ポリシロキサンベースの下層膜材料が好ましい。ケイ素含レジスト下層膜に反射防止効果を持たせることによって、反射を抑えることができる。特に193nm露光用としては、有機膜形成用組成物として芳香族基を多く含み基板とのエッチング選択性の高い材料を用いると、k値が高くなり基板反射が高くなるが、ケイ素含有レジスト下層膜として適切なk値になるような吸収を持たせることで反射を抑えることが可能になり、基板反射を0.5%以下にすることができる。反射防止効果があるケイ素含有レジスト下層膜としては、248nm、157nm露光用としてはアントラセン、193nm露光用としてはフェニル基又はケイ素−ケイ素結合を有する吸光基をペンダント構造で有し、酸あるいは熱で架橋するポリシロキサンが好ましく用いられる。
 
【0136】
  次に、レジスト下層膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成する。レジスト上層膜材料としては、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。レジスト上層膜材料をスピンコート後、60〜180℃で10〜300秒間の範囲でプリベークを行うのが好ましい。その後常法に従い、露光を行い、更に、ポストエクスポージャーベーク(PEB)、現像を行い、レジスト上層膜パターンを得る。なお、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、30〜500nmが好ましく、特に50〜400nmが好ましい。
 
【0137】
  次に、レジスト上層膜に回路パターン(レジスト上層膜パターン)を形成する。回路パターンの形成においては、波長が10nm以上300nm以下の光を用いたリソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング、又はこれらの組み合わせによって回路パターンを形成することが好ましい。
 
【0138】
  なお、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には遠紫外線、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、F
2レーザー光(157nm)、Kr
2レーザー光(146nm)、Ar
2レーザー光(126nm)、3〜20nmの軟X線(EUV)、電子ビーム(EB)、イオンビーム、X線等を挙げることができる。
 
【0139】
  また、回路パターンの形成において、アルカリ現像又は有機溶剤によって回路パターンを現像することが好ましい。
 
【0140】
  次に、回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてレジスト下層膜にエッチングでパターンを転写する。レジスト上層膜パターンをマスクにして行うレジスト下層膜のエッチングは、フルオロカーボン系のガスを用いて行うことが好ましい。これにより、ケイ素含有レジスト下層膜パターンを形成する。
 
【0141】
  次に、パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにして有機膜にエッチングでパターンを転写する。ケイ素含有レジスト下層膜は、酸素ガス又は水素ガスによるエッチング耐性を示すため、ケイ素含有レジスト下層膜パターンをマスクにして行う有機膜のエッチングは、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。これにより、有機膜パターンを形成する。
 
【0142】
  次に、パターンが転写された有機膜をマスクにして被加工体にエッチングでパターンを転写する。次の被加工体(被加工層)のエッチングは、常法によって行うことができ、例えば被加工体がSiO
2、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体としたエッチング、p−SiやAl、Wであれば塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスによるエッチングで行った場合、ケイ素含有レジスト下層膜パターンは基板加工と同時に剥離される。一方、基板加工を塩素系、臭素系ガスによるエッチングで行った場合は、ケイ素含有レジスト下層膜パターンを剥離するために、基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離を別途行う必要がある。
 
【0143】
  本発明の有機膜形成用組成物を用いて得られる有機膜は、上記のような被加工体のエッチング時のエッチング耐性に優れたものとすることができる。
 
【0144】
[ケイ素含有レジスト下層膜と有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセス]
  また、本発明では、被加工体上に上述の本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素原子を含有するレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記レジスト下層膜にエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
 
【0145】
  なお、この方法は、レジスト下層膜とレジスト上層膜の間に有機反射防止膜(BARC)を形成する以外は、上記のケイ素含有レジスト下層膜を用いた3層レジストプロセスと同様にして行うことができる。
 
【0146】
  有機反射防止膜は、公知の有機反射防止膜材料を用いてスピンコートで形成することができる。
 
【0147】
[無機ハードマスクを用いた3層レジストプロセス]
  また、本発明では、上述の本発明の有機膜形成用組成物を用いた3層レジストプロセスによるパターン形成方法として、被加工体上に上述の本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
 
【0148】
  なお、この方法は、有機膜の上にレジスト下層膜の代わりに無機ハードマスクを形成する以外は、上記のケイ素含有レジスト下層膜を用いた3層レジストプロセスと同様にして行うことができる。
 
【0149】
  ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜(SiON膜)から選ばれる無機ハードマスクは、CVD法やALD法等で形成することができる。ケイ素窒化膜の形成方法としては、例えば特開2002−334869号公報、国際公開第2004/066377号公報等に記載されている。無機ハードマスクの膜厚は好ましくは5〜200nm、より好ましくは10〜100nmである。無機ハードマスクとしては、反射防止膜としての効果が高いSiON膜が最も好ましく用いられる。SiON膜を形成するときの基板温度は300〜500℃となるために、下層膜としては300〜500℃の温度に耐える必要がある。本発明の有機膜形成用組成物を用いて形成される有機膜は高い耐熱性を有しており、300℃〜500℃の高温に耐えることができるため、CVD法又はALD法で形成された無機ハードマスクと、回転塗布法で形成された有機膜の組み合わせが可能である。
 
【0150】
[無機ハードマスクと有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセス]
  また、本発明では、上述の本発明の有機膜形成用組成物を用いた4層レジストプロセスによるパターン形成方法として、被加工体上に上述の本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜を形成し、該有機膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスクを形成し、該無機ハードマスクの上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成し、該レジスト上層膜に回路パターンを形成し、該回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスクにエッチングでパターンを転写し、該パターンが転写された無機ハードマスクをマスクにして前記有機膜にエッチングでパターンを転写し、更に、該パターンが転写された有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写するパターン形成方法を提供する。
 
【0151】
  なお、この方法は、無機ハードマスクとレジスト上層膜の間に有機反射防止膜(BARC)を形成する以外は、上記の無機ハードマスクを用いた3層レジストプロセスと同様にして行うことができる。
 
【0152】
  特に、無機ハードマスクとしてSiON膜を用いた場合、SiON膜とBARCの2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光においても反射を抑えることが可能となる。BARCを形成するもう一つのメリットとしては、SiON膜直上でのレジスト上層膜パターンの裾引きを低減させる効果があることである。
 
【0153】
  ここで、本発明の3層レジストプロセスによるパターン形成方法の一例を
図1(A)〜(F)に示す。3層レジストプロセスの場合、
図1(A)に示されるように、基板1の上に形成された被加工層2上に本発明の有機膜形成用組成物を用いて有機膜3を形成した後、ケイ素含有レジスト下層膜4を形成し、その上にレジスト上層膜5を形成する。次いで、
図1(B)に示されるように、レジスト上層膜5の露光部分6を露光し、PEB(ポストエクスポージャーベーク)を行う。次いで、
図1(C)に示されるように、現像を行ってレジスト上層膜パターン5aを形成する。次いで、
図1(D)に示されるように、レジスト上層膜パターン5aをマスクとして、フロン系ガスを用いてケイ素含有レジスト下層膜4をドライエッチング加工し、ケイ素含有レジスト下層膜パターン4aを形成する。次いで、
図1(E)に示されるように、レジスト上層膜パターン5aを除去後、ケイ素含有レジスト下層膜パターン4aをマスクとして、有機膜3を酸素プラズマエッチングし、有機膜パターン3aを形成する。更に、
図1(F)に示されるように、ケイ素含有レジスト下層膜パターン4aを除去後、有機膜パターン3aをマスクとして、被加工層2をエッチング加工し、パターン2aを形成する。
 
【0154】
  無機ハードマスクを形成する場合は、ケイ素含有レジスト下層膜4を無機ハードマスクに変更すればよく、BARCを形成する場合は、ケイ素含有レジスト下層膜4とレジスト上層膜5との間にBARCを形成すればよい。BARCのエッチングは、ケイ素含有レジスト下層膜4のエッチングに先立って連続して行ってもよいし、BARCだけのエッチングを行ってからエッチング装置を変える等してケイ素含有レジスト下層膜4のエッチングを行ってもよい。
 
【0155】
  以上のように、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジストプロセスによって、被加工体に微細なパターンを高精度で形成することができる。
 
【実施例】
【0156】
  以下、実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
【0157】
  以下の合成例には、出発物質として、下記に示すケトン化合物(K−1)〜(K−3)を用いた。
【化44】
【0158】
  以下の、合成例のポリマー分子量、分散度の測定法はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析によりポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0159】
  なお、例えば、(K−1)を用いてスピロケトン(ポリケトン)化合物を製造した場合、繰り返し単位となる可能性がある構造は下記の通り複数考えられる。そのため本発明では便宜的に下記の構造のうち、上段の左端に記載の構造をポリケトン化合物の繰り返し単位の代表構造として表記した。(K−2)、(K−3)を用いた場合も複数の繰り返し単位構造が存在する可能性があるため、同様にそのうちのひとつを代表構造として表記した。更に、ポリケトン化合物から誘導されるスピロアルコール化合物についても同様の表記方法を行った。
【化45】
【0160】
[合成例1:(A−1)の合成]
(合成例1−1:ポリオール化合物(K´−1)の合成)
【化46】
  窒素雰囲気下、ケトン化合物(K−1)28.2gをテトラヒドロフラン200gで均一分散液とした後、マグネシウム(削り状)5.3gを加え、液温50℃で12時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン300gを加え、不溶分をろ別後、2%塩酸水溶液100gで2回洗浄後、更に純水100gで5回洗浄した。有機層を減圧乾固し、ポリオール化合物(K´−1)を23.2g得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=3800、Mw/Mn=3.4504であった。
【0161】
(合成例1−2:ポリケトン化合物(K´´−1)の合成)
【化47】
  窒素雰囲気下、ポリオール化合物(K´−1)20gをトルエン100gで均一分散液とした後、メタンスルホン酸1.0gを加え、液温80℃で5時間撹拌した。室温まで冷却後、トルエン200gを加え、不溶分をろ別した。純水50gで5回洗浄し水層が中性になったことを確認後、有機層を減圧乾固し、ポリケトン化合物(K´´−1)を18.5g得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=3700、Mw/Mn=3.65であった。
【0162】
(合成例1−3:スピロアルコール化合物(A−1)の製造)
【化48】
  窒素雰囲気下、ポリケトン化合物(K´´−1)15gをトルエン80gとメタノール20gで均一溶液とした後、水素化ホウ素ナトリウム2.0gを加え、液温40℃で3時間撹拌した。アセトン10gを加え反応を停止させ、室温まで冷却した。メチルイソブチルケトン200gを加え、3%硝酸水溶液50gで洗浄を行った後、純水50gで5回洗浄した。有機層を減圧乾固後、テトラヒドロフラン50gに溶解後、ジイソプロピルエーテル200gでポリマーを晶出させた。晶出したポリマーを桐山ロートでろ別、ジイソプロピルエーテル100gで2回洗浄を行い、60℃で真空乾燥することでスピロアルコール化合物(A−1)を13.1g得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=4100、Mw/Mn=3.20であった。
【0163】
[合成例2:(A−2)の合成]
(合成例2−1:ポリケトン化合物(K´´−2)の合成)
【化49】
  窒素雰囲気下、ケトン化合物(K−1)14.1g、ケトン化合物(K−3)1.8gを亜リン酸トリエチル200g加え均一分散液とした後、還流温度まで昇温し24時間反応を行った。室温まで冷却した反応液をメタノール600gに加えてポリマーを析出させた。析出させたポリマーを桐山ロートでろ別、メタノール200gで2回洗浄を行い、60℃で真空乾燥することでポリケトン化合物(K´´−2)を12.3g得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2300、Mw/Mn=2.74であった。
【0164】
(合成例2−2:スピロアルコール化合物(A−2)の製造)
【化50】
  窒素雰囲気下、ポリケトン化合物(K´´−2)12gをトルエン80gとメタノール20gで均一溶液とした後、水素化ホウ素ナトリウム2.0gを加え、液温40℃で3時間撹拌した。アセトン10gを加え反応を停止させ、室温まで冷却した。メチルイソブチルケトン200gを加え、3%硝酸水溶液50gで洗浄を行った後、純水50gで5回洗浄した。有機層を減圧乾固後、テトラヒドロフラン50gに溶解後、ジイソプロピルエーテル200gでポリマーを晶出させた。晶出したポリマーを桐山ロートでろ別、ジイソプロピルエーテル100gで2回洗浄を行い、60℃で真空乾燥することでスピロアルコール化合物(A−2)を10.4g得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=2600、Mw/Mn=2.80であった。
【0165】
[合成例3:(A−3)の合成]
(合成例3−1:ポリケトン化合物(K´´−3)の合成)
【化51】
  窒素雰囲気下、ケトン化合物(K−2)19.2g、ケトン化合物(K−3)3.6g、亜リン酸トリエチル325gを加え均一分散液とした後、還流温度まで昇温し24時間反応を行った。室温まで冷却した反応液をメタノール1200gに加えてポリマーを析出させた。析出させたポリマーを桐山ロートでろ別、メタノール200gで2回洗浄を行い、60℃で真空乾燥することでポリケトン化合物(K´´−3)を17.7g得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=4800、Mw/Mn=3.47であった。
【0166】
(合成例3−2:スピロアルコール化合物(A−3)の製造)
【化52】
  窒素雰囲気下、ポリケトン化合物(K´´−3)15gをトルエン80gとメタノール20gで均一溶液とした後、水素化ホウ素ナトリウム2.0gを加え、液温40℃で3時間撹拌した。アセトン10gを加え反応を停止させ、室温まで冷却した。メチルイソブチルケトン200gを加え、3%硝酸水溶液50gで洗浄を行った後、純水50gで5回洗浄した。有機層を減圧乾固後、テトラヒドロフラン50gに溶解後、ジイソプロピルエーテル200gでポリマーを晶出させた。晶出したポリマーを桐山ロートでろ別、ジイソプロピルエーテル100gで2回洗浄を行い、60℃で真空乾燥することでスピロアルコール化合物(A−3)を12.6g得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=5200、Mw/Mn=3.10であった。
【0167】
[合成例4:(A−4)の合成]
(合成例4−1:ポリケトン化合物(K´´−4)の合成)
【化53】
  窒素雰囲気下、ケトン化合物(K−1)16.9g、ケトン化合物(K−2)7.7g、ケトン化合物(K−3)3.6g、亜リン酸トリエチル332gを加え均一分散液とした後、還流温度まで昇温し24時間反応を行った。室温まで冷却した反応液をメタノール1200gに加えてポリマーを析出させた。析出させたポリマーを桐山ロートでろ別、メタノール300gで2回洗浄を行い、60℃で真空乾燥することでポリケトン化合物(K´´−4)を23.1g得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=3800、Mw/Mn=2.98であった。
【0168】
(合成例4−2:スピロアルコール化合物(A−4)の製造)
【化54】
  窒素雰囲気下、ポリケトン化合物(K´´−4)20gをトルエン100gとメタノール20gで均一溶液とした後、水素化ホウ素ナトリウム3.0gを加え、液温40℃で3時間撹拌した。アセトン10gを加え反応を停止させ、室温まで冷却した。メチルイソブチルケトン300gを加え、3%硝酸水溶液50gで洗浄を行った後、純水50gで5回洗浄した。有機層を減圧乾固後、テトラヒドロフラン60gに溶解後、ジイソプロピルエーテル250gでポリマーを晶出させた。晶出したポリマーを桐山ロートでろ別、ジイソプロピルエーテル100gで2回洗浄を行い、60℃で真空乾燥することでスピロアルコール化合物(A−4)を17.4g得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、Mw=4100、Mw/Mn=2.72であった。
【0169】
  実施例は、樹脂(I)として、表1に示す化合物(A−1)〜(A−4)及び下記に示す比較例用化合物(R−1)、(R−2)を用いて行った。
【表1】
【0170】
[比較例用化合物]
【化55】
比較例用化合物(R−1):  Mw=3700、Mw/Mn=2.82
【0171】
【化56】
比較例用化合物(R−2):  Mw=3050、Mw/Mn=1.69
【0172】
  化合物(A−1)〜(A−4)、(R−1)〜(R−2)、架橋剤CR−1、酸発生剤AG−1、溶剤を、FC−4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表2に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによってレジスト下層膜組成物(UDL−1〜6、CUDL−1〜3)をそれぞれ調製した。AG−1、CR−1の構造は、下記の通りである。
【化57】
【0173】
【表2】
PGMEA  :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0174】
(実施例1−1〜1−8、比較例1−1〜1−3)
  上記で調製したレジスト下層膜材料(UDL−1〜6、CUDL−1〜3)をシリコン基板上に塗布し、表3に記載の条件でベークして、それぞれ膜厚200nmの塗布膜を形成した。これらの膜につき、東陽テクニカ社製ナノインデンターSA2型装置でナノインデンテーション試験を行い、上記塗布膜のハードネスを測定した。その結果も表3に示す。
【0175】
【表3】
【0176】
  表3に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物を使用したレジスト下層膜材料UDL−1〜6は、CUDL−1〜3に比べてハードネスの値が大きく、より緻密で強度の高い膜を形成していることが示唆された。また、スピロアルコール化合物(A−1)を用いた実施例1−1〜1−4を比較すると、酸発生剤AG−1を添加することにより芳香環化が促進され、より低い焼成温度でも緻密な膜ができることがわかる。また、AG−1を入れなくとも高い温度で焼成することで緻密な膜を形成することができることが確認できる。本発明のいずれの実施例においても高硬度の膜を形成することが可能なことが確認できた。なお、本発明の有機膜形成用組成物を使用していない比較例1−1〜1−3は、酸発生剤AG−1を添加していてもハードネスの値が低く、実施例に比べ強度が劣ることがわかる。
【0177】
[実施例2−1〜2−8、比較例2−1〜2−3]
(CF
4/CHF
3系ガスでのエッチング試験)
  UDL−1〜6、CUDL−1〜3をシリコン基板上に塗布して、空気雰囲気下、表4に示す温度でそれぞれ60秒間ベークした。それぞれ膜厚200nmの下層膜を形成し、下記条件でCF
4/CHF
3系ガスでのエッチング試験を行った。またこのとき、東京エレクトロン株式会社製ドライエッチング装置TE−8500を用い、エッチング前後のポリマー膜の膜厚差を求めた。結果を表4に併せて示す。
【0178】
  エッチング条件は下記に示す通りである。
チャンバー圧力                40.0Pa
RFパワー                    1,000W
CHF
3ガス流量              10ml/min
CF
4ガス流量                100ml/min
Heガス流量                  200ml/min
時間                          20sec
【0179】
  表4において、比較例2−1のCF
4/CHF
3系ガスでのエッチングによって減少した膜厚を100としたときの実施例、比較例のそれぞれの膜減少を比率として表した。その比率が小さいほど、エッチング耐性に優れることが判る。
【0180】
(O
2系ガスでのエッチング試験)
  CF
4/CHF
3系ガスでのエッチング試験と同様に、UDL−1〜6、CUDL−1〜3をシリコン基板上に塗布して、空気雰囲気下、表4に示す温度でそれぞれ60秒間ベークした。それぞれ膜厚200nmの下層膜を形成し、下記条件でO
2系ガスでのエッチング試験を行った。またこのとき、東京エレクトロン株式会社製ドライエッチング装置TE−8500を用い、エッチング前後のポリマー膜の膜厚差を求めた。結果を表4に併せて示す。
【0181】
  エッチング条件は下記に示す通りである。
チャンバー圧力                40.0Pa
RFパワー                    100W
O
2ガス流量                  30ml/min
N
2ガス流量                  70ml/min
時間                          60sec
【0182】
  同様に、表4において、比較例2−1のO
2系ガスでのエッチングによって減少した膜厚を100としたときの実施例、比較例のそれぞれの膜減少を比率として表した。その比率が小さいほど、エッチング耐性に優れることが判る。
【表4】
【0183】
  表4に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物を使用したUDL−1〜6を用いた実施例2−1〜8の結果ではCF
4/CHF
3系ガス及びO
2系ガスのいずれのエッチング試験においても、CUDL−1〜3に比べてエッチング後の膜の減少量が小さく、エッチング耐性に優れた膜が形成されていることがわかる。
【0184】
[実施例3−1〜3−8、比較例3−1〜3−3]
(パターンエッチング試験)
  有機膜形成用組成物(UDL−1〜6、CUDL−1〜3)を、膜厚200nmのSiO
2膜が形成された直径300mmSiウェハー基板上に塗布して、表7に示す焼成温度で膜厚200nmのレジスト下層膜を形成した。その上にケイ素含有レジスト中間層材料SOG−1を塗布して220℃で60秒間ベークして膜厚35nmのレジスト中間層膜を形成し、レジスト上層膜材料(ArF用SLレジスト溶液)を塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚100nmのレジスト上層膜を形成した。レジスト上層膜に液浸保護膜(TC−1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。上層レジストとしては、表5に示す組成の樹脂、酸発生剤、塩基化合物をFC−430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0185】
【表5】
【0186】
  なお、使用したArF単層レジストポリマー1、PAG1、Amine1、及びPGMEAの構造は下記の通りである。
【化58】
【0187】
  ケイ素含有レジスト下層膜材料(SOG−1)としては、以下のポリマーのプロピレングリコールエチルエーテル2%溶液を調製した。
【化59】
【0188】
  液浸保護膜(TC−1)としては、表6に示す組成の樹脂を溶媒中に溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0189】
【表6】
【0190】
  なお、使用した保護膜ポリマーの構造は下記の通りである。
【化60】
分子量(Mw)=8,800
分散度(Mw/Mn)=1.69
【0191】
  次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR−S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光量を変えながら露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、ピッチ100nmでレジスト線幅50nmから30nmまでのポジ型のラインアンドスペースパターンを得た。
【0192】
  更に、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いてドライエッチングによるレジストパターンをマスクにしてケイ素含有中間層の加工、ケイ素含有中間層をマスクにして下層膜、下層膜をマスクにしてSiO
2膜の加工を行った。
【0193】
  エッチング条件は下記に示すとおりである。
・レジストパターンのSOG膜への転写条件
チャンバー圧力                10.0Pa
RFパワー                    1,500W
CF
4ガス流量                15sccm
O
2ガス流量                  75sccm
時間                          15sec
【0194】
・SOG膜の下層膜への転写条件
チャンバー圧力                2.0Pa
RFパワー                    500W
Arガス流量                  75sccm
O
2ガス流量                  45sccm
時間                          120sec
【0195】
・SiO
2膜への転写条件
チャンバー圧力                2.0Pa
RFパワー                    2,200W
C
5F
12ガス流量            20sccm
C
2F
6ガス流量              10sccm
Arガス流量                  300sccm
O
2                          60sccm
時間                          90sec
【0196】
  パターン断面を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−4700)にて観察し、形状を比較し、表7にまとめた。
【0197】
【表7】
【0198】
  表7に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物を液浸リソグラフィー用3層レジストの下層膜として使用した実施例3−1〜8では、パターン形状評価において現像後のレジスト形状は良好であり、反射防止膜としての有用な効果を有することがわかる。
【0199】
  更に、本発明の有機膜形成用組成物UDL−1〜6を用いた実施例3−1〜8では、現像後のレジスト形状、酸素エッチング後、基板加工エッチング後の下層膜の形状が良好であった。露光により作られたレジスト線幅に従って、基板転写後のパターン寸法も変化し、本発明の有機膜形成用組成物を使用していない比較例3−1〜3においては、40nm程度の線幅でパターンよれが発生したが、本発明の有機膜形成用組成物UDL−1〜6を用いた場合はパターン寸法35nm以下までよれがなく、高いよれ耐性を有することが判明した。
【0200】
  本発明の下層膜のように、ハードネスが0.65GPaより高くなるような緻密な膜を形成できる下層膜を使用することにより、高いよれ耐性を得られることが示唆される。
【0201】
[実施例4−1〜4−8]
(埋め込み特性の評価)
  厚さ500nmで直径が160nmの密集ホールパターンが形成されているSiO
2段差基板上に、レジスト下層膜材料UDL−1〜6を、平坦な基板上で80nmの膜厚になるような条件で塗布し、塗布後、表8に示す焼成条件でレジスト下層膜を形成した。レジスト下層膜を形成した基板を割断し、ホールの底までレジスト下層膜が埋め込まれているかどうかを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を表8に示す。
【表8】
【0202】
  表8に示されるように、本発明の有機膜形成用組成物を用いてレジスト下層膜を形成した実施例4−1〜8では、いずれもホールの底まで良好に埋め込みができており、本発明の有機膜形成用組成物は被加工基板に段差がある場合も十分な埋め込み特性が期待でき、多層プロセス用のレジスト下層膜材料として有用な特性を有していることがわかる。
【0203】
  以上のように、本発明であれば、高度なエッチング耐性、エッチング時のよれ耐性、及び平坦化特性を併せ持つ有機膜を形成するための有機膜材料の成分として有用な樹脂、及びこの樹脂を含む有機膜形成用組成物を提供できる。また、この有機膜形成用組成物は、優れたエッチング耐性と平坦性を有するので、例えば、2層レジストプロセス、ケイ素含有レジスト下層膜を用いた3層レジストプロセス、又はケイ素含有レジスト下層膜及び有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセスといった多層レジストプロセスにおけるレジスト下層膜材料として極めて有用である。また、本発明のパターン形成方法であれば、多層レジストプロセスにおいて、被加工基板に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【0204】
  なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。