特許第6800113号(P6800113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6800113繊維含有樹脂基板、封止後半導体素子搭載基板、封止後半導体素子形成ウエハ、封止後半導体素子搭載シート、半導体装置、及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800113
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】繊維含有樹脂基板、封止後半導体素子搭載基板、封止後半導体素子形成ウエハ、封止後半導体素子搭載シート、半導体装置、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20201207BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20201207BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20201207BHJP
   C08G 59/06 20060101ALI20201207BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20201207BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20201207BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20201207BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20201207BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20201207BHJP
   B32B 27/04 20060101ALI20201207BHJP
   B32B 5/10 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   H01L23/30 B
   H01L21/56 R
   C08G59/06
   C08G59/40
   C08J5/24CFC
   B32B27/38
   B32B27/20 Z
   B32B27/12
   B32B27/04
   B32B5/10
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-163784(P2017-163784)
(22)【出願日】2017年8月28日
(65)【公開番号】特開2019-41064(P2019-41064A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2019年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】堤 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】藤井 修一
(72)【発明者】
【氏名】萩原 健司
(72)【発明者】
【氏名】山口 伸介
【審査官】 正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−073432(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/125350(WO,A1)
【文献】 特開2016−113483(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/068786(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0244590(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
B32B 5/10
B32B 27/04
B32B 27/12
B32B 27/20
B32B 27/38
C08G 59/06
C08G 59/40
C08J 5/24
H01L 21/56
H01L 23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個以上の半導体素子が搭載された基板又はシートの半導体素子搭載面、あるいは半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を一括封止するための繊維含有樹脂基板であって、繊維基材に熱硬化性エポキシ樹脂を含浸させて該熱硬化性エポキシ樹脂を硬化又は半硬化させた熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材と、該熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材の片面上に形成された、前記半導体素子搭載面又は前記半導体素子形成面を被覆するための未硬化樹脂層とを有し、該未硬化樹脂層が
(A)結晶性を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂、
(B)前記(A)成分以外の25℃で非流動性であるエポキシ樹脂、
(C)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物、
(D)無機充填材、及び
(E)ウレア系硬化促進剤、
を含有する組成物から形成されたものであり、かつ、
前記(A)成分の含有量が、前記(A)、(B)及び(C)成分の総和100質量部に対して10〜25質量部であり、前記(E)成分の含有量が、前記(A)、(B)及び(C)成分の総和100質量部に対して0.05〜6質量部であることを特徴とする繊維含有樹脂基板。
【請求項2】
前記(D)成分の含有量が、前記組成物100質量部に対して80〜93質量部であることを特徴とする請求項1に記載の繊維含有樹脂基板。
【請求項3】
前記(E)成分が、下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の繊維含有樹脂基板。
NHCONR (1)
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基であり、R及びRは炭素数1〜6のアルキル基である。R〜Rは互いに同じでも異なっていてもよい。)
【請求項4】
2個以上の半導体素子が搭載された基板の半導体素子搭載面が、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層の硬化物によって一括封止されたものであることを特徴とする封止後半導体素子搭載基板。
【請求項5】
2個以上の半導体素子が形成されたウエハの半導体素子形成面が、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層の硬化物によって一括封止されたものであることを特徴とする封止後半導体素子形成ウエハ。
【請求項6】
2個以上の半導体素子が搭載されたシートの半導体素子搭載面が、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層の硬化物によって一括封止されたものであることを特徴とする封止後半導体素子搭載シート。
【請求項7】
半導体装置であって、請求項に記載の封止後半導体素子搭載基板、請求項に記載の封止後半導体素子形成ウエハ、又は請求項に記載の封止後半導体素子搭載シートが個片化されたものであることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
半導体装置を製造する方法であって、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層により前記2個以上の半導体素子が搭載された基板又はシートの半導体素子搭載面あるいは前記2個以上の半導体素子が形成されたウエハの半導体素子形成面を被覆する被覆工程、前記未硬化樹脂層を加熱、硬化することで、前記半導体素子搭載面又は前記半導体素子形成面を一括封止し、封止後半導体素子搭載基板、封止後半導体素子形成ウエハ、又は封止後半導体素子搭載シートとする封止工程、及び前記封止後半導体素子搭載基板、前記封止後半導体素子形成ウエハ又は前記封止後半導体素子搭載シートをダイシングし、個片化することで、半導体装置を製造する個片化工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用の繊維含有樹脂基板、封止後半導体素子搭載基板、封止後半導体素子形成ウエハ、封止後半導体素子搭載シート、半導体装置、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体封止技術はトランスファー成形が主流であるが、樹脂の流動が起きるトランスファー成形においては、パッケージサイズの限界や薄型高密度化によるチップ、ワイヤーへの影響、成形におけるフィラーの不均一分布によるパッケージの反り、カルやランナーが必要なことによる樹脂の使用効率など様々な課題がある。このような背景を元に、コンプレッション(圧縮)成形法の適用が検討され、液状だけでなく、種々のシート状封止材料が検討されている。(特許文献1、2)
【0003】
しかしながら、コンプレッション成形法では、200mm(8インチ)程度の小径ウエハや金属等の小径基板を使用した場合は現状でも大きな問題もなく封止できるが、300mm(12インチ)以上の半導体素子を搭載した大径基板や半導体素子を形成した大径ウエハを封止した場合では、封止硬化時のエポキシ樹脂等の収縮応力により基板やウエハに反りが生じることが大きな問題であった。また、半導体素子を搭載した大径基板の半導体素子搭載面をウエハレベルで封止する場合には、封止硬化時のエポキシ樹脂等の収縮応力により半導体素子が金属等の基板から剥離したり、次工程の作業が行えなかったりするといった問題が発生するため、量産化できないことが大きな問題であった。
【0004】
このような半導体素子を搭載した基板や半導体素子を形成したウエハの大径化に伴う問題を解決する方法として、フィラーを封止用樹脂組成物に90wt%近くまで充填することや、封止用樹脂組成物の低弾性化によって硬化時の収縮応力を小さくすることが挙げられる(特許文献3、4、5)。
【0005】
しかし、フィラーを90wt%近くまで充填すると封止用樹脂組成物の粘度が上昇し、封止用樹脂組成物を流し込み、成形や封止をするときに基板に搭載された半導体素子に力が加わり、半導体素子が基板から剥離するといったトランスファー成形時と同じ問題が新たに発生する。また、封止用樹脂硬化物を低弾性化すると、封止された半導体素子を搭載した基板や半導体素子を形成したウエハの反りは改善されるが、耐熱性や耐湿性等の封止性能の低下につながる。そのため、これらの方法では根本的な解決に至っていなかった。
【0006】
これらのことから、大径ウエハや金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板やウエハに反りが生じたり、半導体素子が金属等の基板から剥離したりすることなく、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面、又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面をウエハレベルで一括封止でき、かつ封止後には耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れる封止材が求められていた。
【0007】
これらの問題を解決するために、繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸させて該熱硬化性樹脂を本硬化した熱硬化性樹脂含浸繊維基材と該熱硬化性樹脂含浸繊維基材の片面上に形成された未硬化の熱硬化性樹脂組成物にて半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面又は
半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を被覆するといった手法が報告されている。これは繊維基材と半導体素子搭載基板との熱膨張係数を近づけることで、成形後の反りを抑えるといった手法であるが、実際には繊維基材に未硬化の熱硬化性樹脂組成物を搭載するのが非常に難しく、搭載後もハンドリング性に乏しいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−073621号公報
【特許文献2】特開2006−216899号公報
【特許文献3】特開2009−060146号公報
【特許文献4】特開2007−001266号公報
【特許文献5】特開2012−151451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、大径ウエハや金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り及び基板からの半導体素子の剥離を抑制でき、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面をウエハレベルで一括封止できるとともに、未硬化樹脂層の保存安定性や硬化前のハンドリング性に優れる繊維含有樹脂基板を提供することを目的とする。また、該繊維含有樹脂基板により封止された封止後半導体素子搭載基板、封止後半導体素子形成ウエハ及び封止後半導体素子搭載シート、及び該封止後半導体素子搭載基板、封止後半導体素子形成ウエハ及び封止後半導体素子搭載シートを個片化した半導体装置、及び本発明の繊維含有樹脂基板を用いた半導体装置の製造方法を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、本発明では、2個以上の半導体素子が搭載された基板又はシートの半導体素子搭載面、あるいは半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を一括封止するための繊維含有樹脂基板であって、繊維基材に熱硬化性エポキシ樹脂を含浸させて該熱硬化性エポキシ樹脂を硬化又は半硬化させた熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材と、該熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材の片面上に形成された、前記半導体素子搭載面又は前記半導体素子形成面を被覆するための未硬化樹脂層とを有し、該未硬化樹脂層が
(A)結晶性を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂、
(B)前記(A)成分以外の25℃で非流動性であるエポキシ樹脂、
(C)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物、
(D)無機充填材、及び
(E)ウレア系硬化促進剤、
を含有する組成物から形成されたものである繊維含有樹脂基板を提供する。
【0011】
このような繊維含有樹脂基板であれば、大径ウエハや金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り及び基板からの半導体素子の剥離を抑制でき、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面をウエハレベルで一括封止できるとともに、未硬化樹脂層の保存安定性や硬化前のハンドリング性に優れる繊維含有樹脂基板とすることができる。
【0012】
また、前記(A)成分の含有量が、前記(A)、(B)及び(C)成分の総和100質量部に対して10〜25質量部であり、前記(E)成分の含有量が、前記(A)、(B)及び(C)成分の総和100質量部に対して0.05〜6質量部であることが好ましい。
【0013】
このような(A)成分の含有量であれば、未硬化樹脂層の可とう性が十分であるとともに、タック性が強くなったり、未硬化樹脂層としての保持力が低下したり、未硬化樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度が低くなりすぎたりするおそれがない。またこのような(E)成分の含有量であれば、組成物の硬化物の耐熱性及び耐湿性のバランスが悪くなったり、成形時の硬化速度が非常に遅く又は速くなったりするおそれがない。
【0014】
また、前記(D)成分の含有量が、前記組成物100質量部に対して80〜93質量部であることが好ましい。
【0015】
このような(D)成分の含有量であれば、未硬化樹脂層に十分な強度を与えることができるとともに、増粘による充填不良や柔軟性が失われることによる半導体装置内での剥離等の不良が発生するおそれがない。
【0016】
また、前記(E)成分が、下記一般式(1)で表されるものであることが好ましい。
NHCONR (1)
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基であり、R及びRは炭素数1〜6のアルキル基である。R〜Rは互いに同じでも異なっていてもよい。)
【0017】
このような(E)成分を含むものとすることで、未硬化樹脂層の保存安定性と硬化性をさらにバランス良く達成することができる。
【0018】
また、本発明では、2個以上の半導体素子が搭載された基板の半導体素子搭載面が、上述の繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層によって一括封止されたものである封止後半導体素子搭載基板を提供する。
【0019】
このような封止後半導体素子搭載基板であれば、大径の半導体素子搭載基板を一括封止した場合にも、基板の反り及び基板からの半導体素子の剥離が抑制された封止後半導体素子搭載基板となる。
【0020】
また、本発明では、2個以上の半導体素子が形成されたウエハの半導体素子形成面が、上述の繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層によって一括封止されたものである封止後半導体素子形成ウエハを提供する。
【0021】
このような封止後半導体素子形成ウエハであれば、大口径の半導体素子形成ウエハを一括封止した場合にも、ウエハの反りが抑制された封止後半導体素子形成ウエハとなる。
【0022】
また、本発明では、2個以上の半導体素子が搭載されたシートの半導体素子搭載面が、上述の繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層によって一括封止されたものである封止後半導体素子搭載シートを提供する。
【0023】
このような封止後半導体素子搭載シートであれば、大面積の半導体素子搭載シートを一括封止した場合にも、シートの反り及びシートからの半導体素子の剥離が抑制された封止後半導体素子搭載シートとなる。
【0024】
また、本発明では、半導体装置であって、上述の封止後半導体素子搭載基板、封止後半導体素子形成ウエハ、又は封止後半導体素子搭載シートが個片化されたものである半導体装置を提供する。
【0025】
このような半導体装置であれば、より耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れる繊維含有樹脂基板により封止され、基板やウエハ、シートの反りがなく、基板やシートからの素子の剥離が抑制された高品質な半導体装置となる。
【0026】
また、本発明では、半導体装置を製造する方法であって、上述の繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層により前記2個以上の半導体素子を搭載した基板又はシートの半導体素子搭載面あるいは前記2個以上の半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を被覆する被覆工程、前記未硬化樹脂層を加熱、硬化することで、前記半導体素子搭載面又は前記半導体素子形成面を一括封止し、封止後半導体素子搭載基板、封止後半導体素子形成ウエハ、又は封止後半導体素子搭載シートとする封止工程、及び前記封止後半導体素子搭載基板、前記封止後半導体素子形成ウエハ又は前記封止後半導体素子搭載シートをダイシングし、個片化することで、半導体装置を製造する個片化工程を有する半導体装置の製造方法を提供する。
【0027】
このような半導体装置の製造方法であれば、上述のような高品質な半導体装置を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明の繊維含有樹脂基板であれば、大径ウエハや金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離を抑制でき、半導体素子を搭載した基板やシートの半導体素子搭載面、又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面をウエハレベルで一括封止できるとともに、未硬化樹脂層の保存安定性や硬化前のハンドリング性、特に、未硬化樹脂層を形成後、ハンドリング時における未硬化樹脂層の耐クラック性に優れる繊維含有樹脂基板を提供することができる。また、本発明の繊維含有樹脂基板により封止された本発明の封止後半導体素子搭載基板、封止後半導体素子形成ウエハ、及び封止後半導体素子搭載シートであれば、基板やウエハ、シートの反りがなく、基板やシートからの半導体素子の剥離が抑制された封止後半導体素子搭載基板、封止後半導体素子形成ウエハ、及び封止後半導体素子搭載シートを提供することができる。また本発明の半導体装置であれば、より耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れる繊維含有樹脂基板により封止され、基板やウエハ、シートの反りがなく、基板やシートからの素子の剥離が抑制された高品質な半導体装置となる。また本発明の半導体装置の製造方法であれば、このような高品質な半導体装置を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の繊維含有樹脂基板の一例の断面図である。
図2】本発明の封止後半導体素子搭載基板の一例の断面図である。
図3】本発明の封止後半導体素子形成ウエハの一例の断面図である。
図4】本発明の封止後半導体素子搭載基板が個片化された半導体装置の一例の断面図である。
図5】本発明の封止後半導体素子形成ウエハが個片化された半導体装置の一例の断面図である。
図6】本発明の半導体装置の製造方法の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
上述のように、大径ウエハや金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り及び基板からの半導体素子の剥離を抑制でき、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面をウエハレベルで一括封止できるとともに、未硬化樹脂層の保存安定性や硬化前のハンドリング性に優れる繊維含有樹脂基板の開発が求められていた。
【0031】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、特定の組み合わせのエポキシ樹脂及びウレア系硬化促進剤を含有する組成物から形成された未硬化樹脂層を有する繊維含有樹脂基板であれば、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0032】
即ち、本発明は、2個以上の半導体素子が搭載された基板又はシートの半導体素子搭載面、あるいは半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を一括封止するための繊維含有樹脂基板であって、繊維基材に熱硬化性エポキシ樹脂を含浸させて該熱硬化性エポキシ樹脂を硬化又は半硬化させた熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材と、該熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材の片面上に形成された、前記半導体素子搭載面又は前記半導体素子形成面を被覆するための未硬化樹脂層とを有し、該未硬化樹脂層が
(A)結晶性を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂、
(B)前記(A)成分以外の25℃で非流動性であるエポキシ樹脂、
(C)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物、
(D)無機充填材、及び
(E)ウレア系硬化促進剤、
を含有する組成物から形成されたものである繊維含有樹脂基板である。
【0033】
以下、本発明の繊維含有樹脂基板、封止後半導体素子搭載基板、封止後半導体素子形成ウエハ、封止後半導体素子搭載シート、半導体装置、及び半導体装置の製造方法について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
<<繊維含有樹脂基板>>
本発明の繊維含有樹脂基板の一例の断面図を図1に示す。図1の繊維含有樹脂基板10は、熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材1と、該熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材1の片面上に形成された未硬化樹脂層2とを有するものである。
【0035】
[熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材]
本発明の繊維含有樹脂基板は熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材を有する。該熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材は、繊維基材に熱硬化性エポキシ樹脂を含浸させて、該熱硬化性エポキシ樹脂を硬化又は半硬化させたものである。熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材の熱膨張係数は半導体素子搭載基板や半導体素子形成ウエハ、半導体素子搭載シートの熱膨張係数に合わせることができるので、後述する未硬化樹脂層を硬化させた時の収縮応力を抑制することができる。したがって、本発明の繊維含有樹脂基板により大径ウエハや金属等の大型基板あるいは大面積のシートを封止した場合であっても、基板やウエハ、シートの反りや基板やシートからの半導体素子の剥離を抑制することができる。また、個片化前後において封止成形物を支持する役割を有し、ハンドリング時に封止樹脂層、即ち、未硬化樹脂層の耐クラック性を向上させることができる。
【0036】
<繊維基材>
本発明に用いる繊維基材としては、例えば炭素繊維、ガラス繊維、石英ガラス繊維、金属繊維等の無機繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維等の有機繊維、さらには炭化ケイ素繊維、炭化チタン繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維等からなる基材が例示され、製品特性に応じていかなるものも使用することができるが、好ましくはガラス繊維、石英繊維、炭素繊維からなる基材であり、より好ましくは絶縁性の高いガラス繊維や石英ガラス繊維からなる基材である。
【0037】
このような繊維基材の形態としては、例えば長繊維フィラメントを一定方向に引きそろえたロービング、繊維クロス、不織布等のシート状のもの、更にはチョップストランドマット等が例示されるが、厚さを調整するために、積層体を形成することができるものであれば好ましい。
【0038】
<熱硬化性エポキシ樹脂>
一般的な熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂からなる混成樹脂が例示されるが、封止用樹脂、即ち、未硬化樹脂層の樹脂との相性から、本発明では繊維基材に含侵させる樹脂として、熱硬化性エポキシ樹脂を使用する。熱硬化性エポキシ樹脂としては、通常半導体素子の封止に使用されるものであれば、特に制限はない。
【0039】
<熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材の作製方法>
繊維基材に熱硬化性エポキシ樹脂を含浸させる方法としては、溶剤法とホットメルト法が挙げられ、いずれの方法も実施することができる。溶剤法とは熱硬化性エポキシ樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、該樹脂ワニスを繊維基材に含浸させ、その後、有機溶剤を揮散除去する方法であり、ホットメルト法とは固形の熱硬化エポキシ性樹脂を加熱溶解して、繊維基材に含浸させる方法である。
【0040】
繊維基材に含浸した熱硬化性エポキシ樹脂を硬化又は半硬化させる方法としては、特に制限はされないが、繊維基材に含浸した熱硬化性エポキシ樹脂を加熱により脱溶媒等して硬化又は半硬化する方法等が例示される。
【0041】
本発明において半硬化とは、JIS K 6800:2006「接着剤・接着用語」に定義されているようなB−ステージ(熱硬化性樹脂の硬化中間体、この状態での樹脂は加熱すると軟化し、ある種の溶剤に触れると膨潤するが、完全に溶融、溶解することはない)状態をいうものである。
【0042】
熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材の厚さは使用する繊維クロス等の繊維基材の厚さによって決まり、厚い熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材を作製する場合は繊維クロス等の繊維基材の使用枚数を多くし、積層して作製することができる。
【0043】
熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材の厚さは、繊維基材に含浸させた熱硬化性エポキシ樹脂を硬化又は半硬化したいずれの場合も20μm〜1mmであることが好ましく、より好ましくは25μm〜500μmである。20μm以上であれば、十分な反り矯正の効果が得られるとともに、未硬化樹脂層の耐クラック性も良好なものとなる。
【0044】
熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材は、2個以上の半導体素子が搭載された基板又はシートの半導体素子搭載面、あるいは半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を一括封止した後の反りを低減させ、2個以上の半導体素子を配列、接着させた基板やウエハ、シートを補強するために重要である。そのため、熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材は硬くて剛直なものであることが望ましい。
【0045】
また、熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材のX−Y方向の熱膨張係数に制限はないが、使用する基板、ウエハ、及びシートの熱膨張係数に近い値であることが好ましく、より好ましくは3ppm以下である。熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材のX−Y方向の熱膨張係数がこれを満たすことで、未硬化樹脂層、即ち、封止層の膨張・収縮を抑えることができ、反りを抑制することができる。なお、X−Y方向とは熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材の面方向をいう。また、X−Y方向の熱膨張係数は、熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材の面方向に任意にX軸、Y軸を取って測定した熱膨張係数をいう。
【0046】
[未硬化樹脂層]
本発明の繊維含有樹脂基板は未硬化樹脂層を有する。該未硬化樹脂層は、半導体素子を被覆するためのものであり、熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材の片面上に形成される。
【0047】
未硬化樹脂層の形成には、ハンドリング性や熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材との密着性などの観点から、後述する(A)〜(E)成分を含有する組成物(未硬化樹脂層形成用組成物)を使用する。以下、未硬化樹脂層形成用組成物に使用する各成分について更に詳しく説明する。
【0048】
<(A)成分>
本発明において、未硬化樹脂層形成用組成物に用いられる(A)成分は、結晶性を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂である。このような(A)成分を使用することで、組成物を、未硬化樹脂層を形成するために、例えば後述の方法でシート状に成形した際に、シートに柔軟性を付与することができるだけでなく、熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材との密着性が良好であり、後述する(D)成分である無機充填材を高充填しても良好な封止成形性を有するものとすることができる。また(A)成分は、分子量等に制限されずに用いることができるが、好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
【0049】
また、(A)成分としては、例えば、YL−6810(以上、三菱化学(株)製)、YSLV−70XY、YSLV−80XY(以上、新日鉄住金化学(株)製)などの市販品を使用することができる。
【0050】
(A)成分の含有量は、(A)成分と、後述する(B)成分である(A)成分以外の25℃で非流動性であるエポキシ樹脂及び(C)成分である1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物との総和100質量部に対して10〜25質量部であることが好ましく、より好ましくは12〜22質量部であり、さらに好ましくは14〜20質量部である。10質量部以上であれば、組成物をシート状に成形した際に、シートに十分な可とう性を付与でき、25質量部以下であれば、十分な可とう性を保持しつつも、タック性が強くなったり、シートとしての保持力が低下したり、シートを構成する樹脂のガラス転移温度が低くなりすぎたりするおそれがない。
【0051】
<(B)成分>
本発明において、未硬化樹脂層形成用組成物に用いられる(B)成分は、前記(A)成分以外の25℃で非流動性であるエポキシ樹脂である。25℃で流動性を有するエポキシ樹脂を使用すると、組成物をシート状に成形した際に、タック性や貼り付き性が強く、離形フィルムから剥がしにくくなるなどハンドリング性に欠けるシートとなるため、本発明では25℃で非流動性であるエポキシ樹脂を使用する。
【0052】
(B)成分のエポキシ樹脂の例としては、一般的な固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂、及び4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂等のビフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、トリスフェニロールメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェニロールエタン型エポキシ樹脂、及びフェノールジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂の芳香環を水素化したエポキシ樹脂、及び脂環式エポキシ樹脂、トリアジン誘導体エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、組成物をシート状に成形した際のシートのタック性を始めとするハンドリング性の向上の点から、軟化点50〜120℃を有するのが好ましい。
【0053】
<(C)成分>
本発明において、未硬化樹脂層形成用組成物に用いられる(C)成分は、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物である。この(C)成分は上述の(A)成分及び(B)成分に対する硬化剤として使用するものであり、1分子中に2個以上、好ましくは3個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば一般に公知のものが使用できる。このような(C)成分としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。これらのフェノール系の樹脂は、分子量、軟化点、水酸基量等に制限なく使用することができるが、軟化点が低く比較的低粘度のものが好ましい。
【0054】
(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分中のエポキシ基に対し、(C)成分中のフェノール性水酸基の当量比が、0.5〜2.0となる量が好ましく、より好ましくは0.7〜1.5となる量である。当量比0.5以上、2.0以下となる量であれば、未硬化樹脂層の硬化性、機械特性、及び耐湿性等が低下するおそれがない。
【0055】
<(D)成分>
本発明において、未硬化樹脂層形成用組成物に用いられる(D)成分は、無機充填材である。この(D)成分は、未硬化樹脂層の硬化後の強度を高めるために配合される。このような(D)成分としては、通常エポキシ樹脂組成物やシリコーン樹脂組成物に配合されるものを使用することができ、例えば、球状シリカ、溶融シリカ及び結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、ガラス繊維及びガラス粒子等が挙げられるが、シリカ類が好ましい。
【0056】
(D)成分の平均粒径及び形状は特に限定されないが、平均粒径は0.5〜40μmが好ましく、より好ましくは3〜40μmである。(D)成分としては、平均粒径が0.5〜40μmの球状シリカが好適に用いられる。なお、本発明において平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(又はメジアン径)として求めた値である。
【0057】
また、未硬化樹脂層形成用組成物の高流動化の観点から、(D)成分として複数の粒径範囲の無機充填材を組み合わせたものを使用してもよく、このような場合では、0.1〜3μmの微細領域、3〜7μmの中粒径領域、及び10〜40μmの粗領域の球状シリカを組み合わせて使用することが好ましい。さらなる高流動化のためには、平均粒径がさらに大きい球状シリカを用いることが好ましい。
【0058】
一方、本発明の繊維含有樹脂基板はコンプレッション成形やラミネート成形での成形を主眼としており、これらの成形方法ではモールドアンダーフィル(MUF)性を求められることが多くなっている。MUF性を向上させる観点からは、球状シリカの平均粒径が0.5〜6μm、トップカットサイズが5〜20μmのものを用いることが好ましい。
【0059】
また、(D)成分としては、上述の(A)、(B)及び(C)成分の樹脂成分との結合強度を強くするため、後述する(I)成分のカップリング剤で予め表面処理したものを用いてもよい。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などが挙げられる。
【0060】
(D)成分の含有量は、(A)、(B)、及び(C)成分の総和100質量部に対し、400〜1,300質量部、特に500〜1,200質量部であることが好ましい。400質量部以上であれば、未硬化樹脂層に十分な強度を与えることができ、1,300質量部以下であれば、増粘による充填不良や柔軟性が失われることによる半導体装置内での剥離等の不良が発生するおそれがない。なお、(D)成分の含有量は、組成物100質量部に対して80〜93質量部であることが好ましく、83〜92質量部であることがより好ましい。80質量部以上であれば未硬化樹脂層に十分な強度を与えることができ、93質量部以下であれば、増粘による充填不良や柔軟性が失われることによる半導体装置内での剥離等の不良が発生するおそれがない。
【0061】
<(E)成分>
本発明において、未硬化樹脂層形成用組成物に用いられる(E)成分は、ウレア系硬化促進剤である。この(E)成分は、上述の(A)、(B)成分のエポキシ樹脂と(C)成分の硬化剤との硬化反応を促進するために配合される。このような(E)成分を用いることで、未硬化樹脂層の保存安定性を向上させながら、封止成形時は未硬化にはならずにしっかりと硬化させることができる。即ち、成形性に優れたものとすることができる。
【0062】
(E)成分としては、下記一般式(1)で表される構造を有するものを用いるのが好ましい。
NHCONR (1)
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基であり、R及びRは炭素数1〜6のアルキル基である。R〜Rは互いに同じでも異なっていてもよい。)
【0063】
式中、Rは水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基であり、R及びRは炭素数1〜6のアルキル基である。RからRは互いに同じでも異なっていてもよい。Rに関しては保存安定性の観点からシクロヘキシル基であることが好ましく、R及びRに関しては、保存安定性及び硬化性の観点からメチル基であることが好ましい。
【0064】
上記一般式(1)で表されるウレア系硬化促進剤の具体例としては、1,1−ジメチル尿素、1,1,3−トリメチル尿素、1,1−ジメチル−3−エチル尿素、1,1−ジメチル−3−フェニル尿素、1,1−ジエチル−3−メチル尿素、1,1−ジエチル−3−フェニル尿素、1,1−ジメチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)尿素、1,1−ジメチル3−(p−クロロフェニル)尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)などが挙げられる。
【0065】
(E)成分の含有量は、上述の(A)、(B)及び(C)成分の総和100質量部に対して0.05〜6質量部であることが好ましく、特に0.1〜5質量部であることがより好ましい。0.05〜6質量部であれば、未硬化樹脂層の硬化物の耐熱性及び耐湿性のバランスが悪くなったり、成形時の硬化速度が非常に遅く又は速くなったりするおそれがない。
【0066】
また、未硬化樹脂層形成用組成物には、上記の(A)〜(E)成分に加え、下記の任意の成分を配合することができる。
【0067】
<(F)成分>
未硬化樹脂層形成用組成物には、上述の(E)成分に加えて、(F)成分として、上述の(E)成分以外の(即ち、ウレア系以外の)硬化促進剤を配合することができる。このような(F)成分としては、通常エポキシ樹脂の硬化促進剤として用いられるいかなるものも使用することができ、具体的には、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等のアミン系化合物、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラボレート塩等の有機リン系化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられる。
【0068】
<(G)成分>
未硬化樹脂層形成用組成物には、(G)成分として離型剤を配合することができる。この(G)成分は、成形時の離型性を高めるために配合するものであるが、本発明では、溶融混練による製造時の過負荷による樹脂の不要な硬化などを防ぐために配合するものである。このような(G)成分としては、カルナバワックス、ライスワックスをはじめとする天然ワックス、酸ワックス、ポリエチレンワックス、脂肪酸エステルをはじめとする合成ワックスが挙げられるが、樹脂からの溶出性の点からカルナバワックスが好ましい。
【0069】
(G)成分の含有量は、上述の(A)、(B)及び(C)成分の総和100質量部に対して、0.05〜5.0質量部、特には0.4〜3.0質量部であることが好ましい。0.05質量部以上であれば、十分な離型性が得られなかったり、製造時の溶融混練時に過負荷が生じてしまったりするおそれがなく、5.0質量部以下であれば、沁み出し不良や接着性不良等が起こるおそれがない。
【0070】
<(H)成分>
未硬化樹脂層形成用組成物には、(H)成分として難燃剤を配合することができる。この(H)成分は、未硬化樹脂層の難燃性を高めるために配合するものである。このような(H)成分としては、特に制限されず公知のものを使用することができ、例えばホスファゼン化合物、シリコーン化合物、モリブデン酸亜鉛担持タルク、モリブデン酸亜鉛担持酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモンなどが挙げられ、これらを1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0071】
(H)成分の含有量は上述の(A)、(B)及び(C)成分の総和100質量部に対して2〜20質量部であることが好ましく、3〜10質量部であることがより好ましい。
【0072】
<(I)成分>
未硬化樹脂層形成用組成物には、(I)成分としてシランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤を配合することができる。この(I)成分は、上述の(A)、(B)及び(C)成分の樹脂成分と(D)成分である無機充填材との結合強度を強くしたり、シリコンウエハや有機基板との接着性を高くしたりするために配合するものである。このような(I)成分としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミン官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシランなどが挙げられる。
【0073】
表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではなく、常法に従って行えばよい。また、前述したように予めカップリング剤で無機充填材を処理してもよいし、上述の(A)、(B)及び(C)成分の樹脂成分と(D)成分の無機充填材とを混練する際に、カップリング剤を添加して表面処理しながら組成物を混練してもよい。
【0074】
(I)成分の含有量は、上述の(A)、(B)及び(C)成分の総和100質量部に対して、0.1〜8.0質量部とすることが好ましく、特に0.5〜6.0質量部とすることが好ましい。0.1質量部以上であれば、基材への接着効果が十分に得られ、8.0質量部以下であれば、粘度が極端に低下してボイドの原因になるおそれがない。
【0075】
<その他の添加剤>
未硬化樹脂層形成用組成物には、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、樹脂の性質を改善する目的でオルガノポリシロキサン、シリコーンオイル、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム、又は光安定剤等の添加剤、電気特性を改善する目的でイオントラップ材、着色の観点からカーボンブラックのような顔料などを添加配合することができる。
【0076】
<<繊維含有樹脂基板の作製方法>>
本発明の繊維含有樹脂基板を作製する方法としては、繊維基材に熱硬化性エポキシ樹脂を含浸させて該熱硬化性エポキシ樹脂を硬化又は半硬化させた熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材の片面上に、減圧又は真空下で、印刷やディスペンス等で未硬化樹脂層形成用の液状の組成物を塗布し、加熱することで、50℃以下で固形な未硬化樹脂層を形成し、繊維含有樹脂基板を作製する方法が挙げられる。また、繊維基材に熱硬化性エポキシ樹脂を含浸させて該熱硬化性エポキシ樹脂を硬化させた熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材の片面上に、未硬化樹脂層形成用組成物をプレス成形又は印刷する等、従来の熱硬化性エポキシ樹脂で用いられてきた各種の方法で未硬化樹脂層を形成することもできる。未硬化樹脂層の形成後、通常150〜180℃程度の温度で4〜8時間ポストキュアさせることが好ましい。また、未硬化樹脂層形成用の室温で固形の組成物を加熱しながら加圧する方法や未硬化樹脂層形成用の固形の組成物にアセトン等の極性溶剤を適量添加することで液状化し印刷などで薄膜を形成し、溶剤を減圧下で加熱するなどの方法で除去することで均一に熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材の片面上に未硬化樹脂層を形成することもできる。
【0077】
室温で固形の未硬化樹脂層形成用組成物としては、組成物をシート状に成形したものを用いることが好ましい。このシートの作製方法としては、上述の(A)、(B)成分のエポキシ樹脂、(C)成分のフェノール化合物、(D)成分の無機充填材、(E)成分のウレア系硬化促進剤、及びその他の添加物を所定の組成比で配合し、これをミキサー等によって十分均一に混合した後、先端にTダイを設置した二軸押し出し機を用いてシート状に成形するTダイ押し出し法が挙げられる。あるいは、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して得られた組成物の粉砕品を加圧部材間で70〜120℃で加熱溶融し圧縮してシート状に成形することによりシート状の未硬化樹脂形成用組成物を得ることもできる。
【0078】
このようにして得られるシート状の未硬化樹脂形成用組成物の厚さは、0.1〜5.0mmであることが好ましい。
【0079】
以上のように、本発明の繊維含有樹脂基板であれば、大径ウエハや金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り、基板からの半導体素子の剥離を抑制でき、半導体素子を搭載した基板やシートの半導体素子搭載面、又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面をウエハレベルで一括封止できるとともに、未硬化樹脂層の保存安定性や硬化前のハンドリング性、特に、未硬化樹脂層を形成後、ハンドリング時における未硬化樹脂層の耐クラック性に優れる繊維含有樹脂基板を提供することができる。
【0080】
<<封止後半導体素子搭載基板>>
本発明では、2個以上の半導体素子が搭載された基板の半導体素子搭載面が、上述の繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層によって一括封止されたものであることを特徴とする封止後半導体素子搭載基板を提供する。
【0081】
本発明の封止後半導体素子搭載基板の一例の断面図を図2に示す。図2の封止後半導体素子搭載基板11は、2個以上の半導体素子3が搭載された基板5の半導体素子搭載面が、図1の繊維含有樹脂基板10の未硬化樹脂層2の硬化物(即ち、硬化後の樹脂層2’)によって一括封止されたものである。
【0082】
このような本発明の繊維含有樹脂基板により一括封止された封止後半導体素子搭載基板であれば、基板の反りが生じたり、基板から半導体素子が剥離したりすることが抑制された封止後半導体素子搭載基板となる。
【0083】
[半導体素子を搭載した基板]
半導体素子が搭載された基板としては、例えば図2中の2個以上の半導体素子3が接着剤4で基板5(例えば無機、金属、あるいは有機基板)上に搭載された基板が挙げられる。なお、半導体素子が搭載された基板とは、半導体素子を搭載し配列等した半導体素子アレイを含むものである。
【0084】
<<封止後半導体素子形成ウエハ>>
本発明では、2個以上の半導体素子が形成されたウエハの半導体素子形成面が、上述の繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層によって一括封止されたものであることを特徴とする封止後半導体素子形成ウエハを提供する。
【0085】
本発明の封止後半導体素子形成ウエハの一例の断面図を図3に示す。図3の封止後半導体素子形成ウエハ12は、2個以上の半導体素子3が搭載されたウエハ6の半導体素子形成面が、図1の繊維含有樹脂基板10の未硬化樹脂層2の硬化物(即ち、硬化後の樹脂層2’)によって一括封止されたものである。
【0086】
このような本発明の繊維含有樹脂基板により一括封止された封止後半導体素子形成ウエハであれば、ウエハの反りが生じることが抑制された封止後半導体素子形成ウエハとなる。
【0087】
<<封止後半導体素子搭載シート>>
本発明では、2個以上の半導体素子が搭載されたシートの半導体素子搭載面が、上述の繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層によって一括封止されたものであることを特徴とする封止後半導体素子搭載シートを提供する。
【0088】
本発明の封止後半導体素子搭載シートの一例の断面図は、図2の封止後半導体素子搭載基板11の基板5のかわりにシートを用いたものとして示される。
【0089】
このような本発明の繊維含有樹脂基板により一括封止された封止後半導体素子搭載シートであれば、シートの反りが生じたり、シートから半導体素子が剥離したりすることが抑制された封止後半導体素子搭載シートとなる。
【0090】
<<半導体装置>>
本発明では、半導体装置であって、上述の封止後半導体素子搭載基板、封止後半導体素子形成ウエハ、又は封止後半導体素子搭載シートが個片化されたものである半導体装置を提供する。
【0091】
本発明の半導体装置の一例の断面図を図4,5に示す。図4の半導体装置13は図2の封止後半導体素子搭載基板11をダイシングして、個片化したものである。また図5の半導体装置13´は図3の封止後半導体素子形成ウエハ12をダイシングして、個片化したものである。このようにして作製された半導体装置13、13´は耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れる繊維含有樹脂基板により封止され、かつ基板やウエハ、シートの反り、基板やシートからの半導体素子の剥離が抑制された高品質な半導体装置となる。半導体装置13は基板5上に接着剤4を介して半導体素子3が搭載され、その上から硬化後の樹脂層2’と樹脂含浸繊維基材1により封止された半導体装置となる(図4)。また、半導体装置13´はウエハ6に半導体素子3が形成され、その上から硬化後の樹脂層2’と樹脂含浸繊維基材1により封止された半導体装置となる(図5)。
【0092】
<<半導体装置の製造方法>>
また、本発明では、半導体装置を製造する方法であって、上述の繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層により前記2個以上の半導体素子を搭載した基板又はシートの半導体素子搭載面あるいは前記2個以上の半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面を被覆する被覆工程、前記未硬化樹脂層を加熱、硬化することで、前記半導体素子搭載面又は前記半導体素子形成面を一括封止し、封止後半導体素子搭載基板、封止後半導体素子形成ウエハ、又は封止後半導体素子搭載シートとする封止工程、及び前記封止後半導体素子搭載基板、前記封止後半導体素子形成ウエハ又は前記封止後半導体素子搭載シートをダイシングし、個片化することで、半導体装置を製造する個片化工程を有する半導体装置の製造方法を提供する。以下、図6を用いて本発明の半導体装置の製造方法について説明する。
【0093】
<被覆工程>
本発明の半導体装置の製造方法の被覆工程は、熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材1と未硬化樹脂層2を有する繊維含有樹脂基板10の未硬化樹脂層2により、接着剤4を介して半導体素子3が搭載された基板5の半導体素子搭載面を被覆する工程である(図6(A))。
【0094】
<封止工程>
本発明の半導体装置の製造方法の封止工程は、繊維含有樹脂基板10の未硬化樹脂層2を加熱、硬化して硬化後の樹脂層2’とすることで、半導体素子3が搭載された基板5の半導体素子搭載面を一括封止し、封止後半導体素子搭載基板11とする工程である(図6(B))。
【0095】
<個片化工程>
本発明の半導体装置の製造方法の個片化工程は、封止後半導体素子搭載基板11をダイシングし、個片化することで、半導体装置13を製造する工程である(図6(C)及び(D))。
【0096】
なお、ここでは半導体素子が搭載された基板を用いて半導体装置を製造する方法について説明したが、半導体素子を形成したウエハ又は半導体素子を搭載したシートを用いる場合にも上記と同様にして半導体装置を製造することができる。
【0097】
以下、本発明の半導体装置の製造方法について、より具体的に説明する。前述の被覆工程、封止工程においては、ソルダーレジストフィルムや各種絶縁フィルム等のラミネーションに使用されている真空ラミネータ装置や真空プレス装置等を使用することで、ボイドも反りもない被覆、封止を行うことができる。ラミネーションの方式としてはロールラミネーションやダイアフラム式真空ラミネーション、エアー加圧式ラミネーション等いずれの方式も使用することができる。
【0098】
ここでは例として、ニチゴーモートン社製の真空ラミネーション装置を用いて、厚さ42μmのガラスクロス(繊維基材)に熱硬化性エポキシ樹脂を含浸した熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材とその片面に形成された厚み150μmの未硬化樹脂層を有する繊維含有樹脂基板で、厚さ250μm、60×220mmの有機基板に14×14mmのシリコンチップを搭載した基板を封止する場合について説明する。
【0099】
上下にヒーターが内蔵され150℃に設定されたプレートのうち、上側プレートにはダイアフラムラバーが減圧された状態でヒーターと密着している。下側プレート上に有機基板をセットし、その上に片面に繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層面を前述の有機基板の半導体素子搭載面に合わせてセットする。その後、下側プレートが上昇し、下側プレート上にセットされた有機基板を囲むように設置されたOリングにより上下のプレートが密着して真空チャンバーが形成され、該真空チャンバー内が減圧される。真空チャンバー内が十分に減圧されたら、上側プレートのダイアフラムラバーとヒーターの間から真空ポンプにつながる配管の弁を閉じ、圧縮空気を送り込む。それにより、上側のダイアフラムラバーが膨張し有機基板と繊維含有樹脂基板を上側のダイアフラムラバーと下側のプレートで挟み、真空ラミネーションを行うと同時に熱硬化性エポキシ樹脂の硬化が進行し、封止が完了する。硬化時間としては3〜20分程度あれば十分である。真空ラミネーションが完了したら真空チャンバー内を常圧に戻し、下側プレートを下降させ、封止した有機基板を取り出す。上記工程によりボイドや反りのない基板の封止を行うことができる。取り出した基板は通常、150〜180℃の温度で1〜4時間ポストキュアすることで電気特性や機械特性を安定化させることができる。
【0100】
このような半導体装置の製造方法であれば、被覆工程においては繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層により簡便に、充填不良なく半導体素子搭載面又は半導体素子形成面を被覆することができる。また、繊維含有樹脂基板を使用することで、熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材によって未硬化樹脂層の硬化時の収縮応力を抑制できるため、封止工程においては半導体素子搭載面又は半導体素子形成面を一括封止することができ、薄型の大径ウエハや金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板、ウエハやシートの反り、基板やシートからの半導体素子の剥離が抑制された封止後半導体素子搭載基板、シート又は封止後半導体素子形成ウエハを得ることができる。さらに、個片化工程においては耐熱性や耐湿性等の封止性能に優れる繊維含有樹脂基板により封止され、かつ反りが抑制された封止後半導体素子搭載基板やシート又は封止後半導体素子形成ウエハから半導体装置をダイシングし、個片化することができるため、高品質な半導体装置を容易に製造することができる半導体装置の製造方法となる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0102】
<熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材の作製>
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:EPICLON‐N695、DIC製)60質量部、フェノールノボラック樹脂(商品名:TD2090、DIC製)30質量部、粒径0.5μmのシリカ(商品名:SO−25R、(株)アドマテックス製)150質量部、黒色顔料としてカーボンブラック(商品名:3230B、三菱化学製)3質量部、トリフェニルホスフィン(TPP、北興化学(株)製)0.6質量部に、トルエン300質量部を加えて攪拌混合し、エポキシ樹脂組成物のトルエン分散液を調製した。このエポキシ樹脂組成物のトルエン分散液に繊維基材としてTガラスクロス(日東紡績製、厚さ:88μm)を浸漬することにより、エポキシ樹脂組成物のトルエン分散液をTガラスクロスに含浸させた。該ガラスクロスを120℃で15分間放置することによりトルエンを揮発させた。該ガラスクロスを175℃で5分間加熱成型して成型品を得、更にこれを180℃で4時間加熱(2次硬化)することで、含浸させたエポキシ樹脂組成物を硬化させ、繊維基材層の両面にエポキシ樹脂組成物の硬化物層が形成された、400mm×500mm、厚さ0.12mmの熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材X1を作製し、その後、直径300mm(12インチ)の円板状に切断した。この熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材X1の0℃から200℃における線膨張係数は5〜8ppm/℃であった。
【0103】
実施例、比較例で使用した原料を以下に示す。
(A)結晶性を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂
(A−1):結晶性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YL−6810:三菱化学(株)製商品名、エポキシ当量170)
【0104】
(B)(A)成分以外の25℃で非流動性のエポキシ樹脂
(B−1):固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER−1001:三菱化学(株)製、エポキシ当量475)
(B−2):クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(EPICLON N−670:(株)DIC製、エポキシ当量210)
(B−3):ビフェニル型エポキシ樹脂(YX−4000:三菱化学(株)製、エポキシ当量186)
(B−4):トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(EPPN−501:日本化薬(株)製、エポキシ当量166)
【0105】
(C)1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物
(C−1):トリスフェノールメタン型フェノール樹脂(MEH−7500:明和化成(株)製、水酸基当量97)
(C−2):フェノールノボラック型フェノール硬化剤(TD−2131:(株)DIC製、水酸基当量110)
【0106】
(D)無機充填材
(D−1):溶融球状シリカ(CS−6103 53C2、(株)龍森製、平均粒径10μm)
【0107】
(E)ウレア系硬化促進剤
(E−1):芳香族ジメチルウレア(U−CAT 3512T、サンアプロ(株)製)
(E−2):脂肪族ジメチルウレア(U−CAT 3513N、サンアプロ(株)製)
【0108】
(F)ウレア系以外の硬化促進剤
(F−1):2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成(株)製)
(F−2):トリフェニルホスフィン(TPP、北興化学(株)製)
【0109】
(G)離型剤
(G−1)カルナバワックス(TOWAX−131:東亜化成(株)製)
【0110】
(H)難燃材
(H−1):モリブデン酸亜鉛担持酸化亜鉛(KEMGARD 911C:シャーウィンウィリアムズ製)
【0111】
(I)カップリング剤
(I−1):シランカップリング剤:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803:信越化学工業(株)製)
【0112】
(J)着色剤
(J−1):カーボンブラック(三菱カーボンブラック#3230MJ、三菱化学(株)製)
【0113】
[実施例1〜5、比較例1〜8]
<未硬化樹脂層形成用組成物の調製>
表1及び表2に示す配合で、あらかじめヘンシェルミキサーでプレ混合して組成物を調製した後、Tダイを取り付けた2軸押し出し機を用いて各組成物を幅400mm、厚さ0.3mmに成形してシート状の未硬化樹脂層形成用組成物を得、その後直径280mmの円板状に切断した。
【0114】
<繊維含有樹脂基板の作製>
上記エポキシ樹脂含浸繊維基材X1上に、上記のようにして作製したそれぞれのシート状の未硬化樹脂層形成用組成物を載せ、ニッコーマテリアルズ社製の真空ラミネータを用いて、真空度50Pa、温度100℃、時間10秒の条件でラミネートすることにより繊維含有樹脂基板を作製した。このときのシート貼り合わせによる繊維含有樹脂基板の作製時のハンドリング性を評価した結果を表1及び表2に記載した。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
[実施例6〜10、比較例9〜12]
<半導体素子が搭載された基板の作製>
直径300mm(12インチ)で厚さ300μmのシリコンウエハ上に、接着剤(商品名:SFX−513S、信越化学工業製)を用いて、10mm×10mm、厚み200μmのシリコンチップを400個整列し、搭載した。
【0118】
<半導体素子が搭載されたウエハの被覆及び封止>
次に、ニチゴーモートン社製の真空ラミネーション装置を用いて、プレート温度を150℃に設定して、上述の基板を被覆及び封止した。まず、上述のようにして作製した繊維含有樹脂基板を上記シリコンウエハの半導体素子搭載面に合わせて被覆した。その後、プレートを閉じ5分間真空圧縮成形することで硬化封止した。硬化封止後、150℃で4時間ポストキュアして、封止後半導体素子搭載基板を得た。この際、表1及び表2に示す繊維含有樹脂基板の作製時ハンドリング性評価の結果において、問題なく貼りあわせ可能であったもののみを基板の封止に用いた。
【0119】
このようにして封止を行った封止後半導体素子搭載基板の反り、外観、樹脂と基板の接着状態を評価した。その結果を表3及び表4に示す。ここで、外観については未充填(ボイド)及びダイマークの有無を調べ、これらがなければ良好とした。また、接着状態については成形時に剥離がなければ良好とした。
【0120】
【表3】
【0121】
【表4】
【0122】
表1に示すように、繊維含有樹脂基板の未硬化樹脂層を(A)〜(E)成分を含有する組成物から形成した実施例1〜5では、繊維含有樹脂基板の作製におけるシート貼り合わせ時の未硬化樹脂層のハンドリング性が良好であった。また、表3に示すように、これらの未硬化樹脂層を用いた本発明の繊維含有樹脂基板であれば、基板の反り、外観及び樹脂と基板の接着状態が良好であった。さらに未硬化樹脂層の保存安定性も良好であった。
【0123】
一方、表2で示すように、比較例1では、(B)成分を用いなかったため、未硬化樹脂層にタックがあり良好なハンドリング性が得られなかった。また比較例5〜8では、(A)成分を用いなかったため、未硬化樹脂層に柔軟性を付与することができず、シートを貼り合わせる前にシートに割れが発生し、貼り合わせ後も容易に未硬化樹脂層にクラックや基板からの脱落が発生した。さらに表2及び表4で示すように、比較例2及び3では、(E)成分を用いず、ウレア系以外の硬化促進剤を用いたことから、未硬化樹脂層が保存安定性に欠けたものとなってしまい、充填性も不良となった。さらに表2及び表4の比較例4では(E)成分を用いず、ウレア系以外の硬化促進剤の配合量が少なかったため、所定の時間内に硬化しなかった。そして実施例1の未硬化樹脂層形成用組成物のみを用いて封止した場合には、熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材がないことから、基板の反りが大きくなった。
【0124】
以上のことから、本発明の繊維含有樹脂基板であれば、大径ウエハや金属等の大径基板を封止した場合であっても、基板やウエハの反り及び基板からの半導体素子の剥離を抑制でき、半導体素子を搭載した基板の半導体素子搭載面又は半導体素子を形成したウエハの半導体素子形成面をウエハレベルで一括封止できるとともに、未硬化樹脂層の保存安定性や硬化前のハンドリング性に優れる繊維含有樹脂基板となることが明らかとなった。
【0125】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0126】
1…熱硬化性エポキシ樹脂含浸繊維基材、 2…未硬化樹脂層、
2’…硬化後の樹脂層、 3…半導体素子、 4…接着剤、 5…基板、
6…ウエハ、 10…繊維含有樹脂基板、 11…封止後半導体素子搭載基板、
12…封止後半導体素子形成ウエハ、 13、13´…半導体装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6