特許第6800129号(P6800129)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6800129フィルム状接着剤、フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800129
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】フィルム状接着剤、フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/30 20180101AFI20201207BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20201207BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20201207BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20201207BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20201207BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   C09J7/30
   C09J163/00
   C09J11/08
   C09J11/06
   C09J11/04
   H01L21/52 E
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-214389(P2017-214389)
(22)【出願日】2017年11月7日
(65)【公開番号】特開2019-85486(P2019-85486A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2019年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100122242
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 多香子
(72)【発明者】
【氏名】森田 稔
(72)【発明者】
【氏名】切替 徳之
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−174228(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/022574(WO,A1)
【文献】 特開2014−096531(JP,A)
【文献】 特開2014−123453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)、熱伝導性充填材(D)を含有しており、
前記熱伝導性充填剤(D)は、平均粒径が0.1〜10.0μmであり、微小圧縮試験における破壊時圧縮率が試料の平均粒径の5〜50%であり、微小圧縮試験における破壊強度が0.01〜2.0GPaであり、熱伝導率が30W/m・K以上であり、
前記熱伝導性充填材(D)の含有量は、前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記フェノキシ樹脂(C)及び前記熱伝導性充填材(D)の全量に対して10〜70体積%であり、
前記熱伝導性充填剤(D)は、コア材の表面に銀が被覆されてなり、前記銀の被覆量が前記熱伝導性充填剤(D)の全量に対して10〜95重量%であり、
前記コア材がシリコーン樹脂であり、
熱硬化後に熱伝導率1.0W/m・K以上であることを特徴とするフィルム状接着剤。
【請求項2】
室温から5℃/分の昇温速度で昇温したとき、80℃以上において200〜10000Pa・sの範囲の最低溶融粘度に達することを特徴とする請求項1に記載のフィルム状接着剤。
【請求項3】
厚みが1〜100μmであることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項4】
表面に少なくとも1つの半導体回路が形成されたウェハの裏面に、請求項1から請求項3に記載のフィルム状接着剤及びダイシングテープを熱圧着して、前記ウェハの裏面に接着剤層及びダイシングテープを設ける第1の工程と、
前記ウェハと前記接着剤層とを同時にダイシングすることにより前記ウェハ及び前記接着剤層を備える接着剤層付き半導体チップを得る第2の工程と、
前記接着剤層から前記ダイシングテープを脱離し、前記接着剤層付き半導体チップと配線基板とを前記接着剤層を介して熱圧着せしめる第3の工程と、
前記接着剤層を熱硬化せしめる第4の工程と、
を含むことを特徴とする半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム状接着剤、フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップを多段に積層したスタックドMCP(Multi Chip Package)が普及しており、携帯電話、携帯オーディオ機器用のメモリパッケージとして搭載されている。また、携帯電話等の多機能化に伴い、パッケージの高密度化・高集積化も推し進められている。これに伴い、チップの多段積層化が進行している。
【0003】
このようなメモリパッケージの製造過程における配線基板と半導体チップ、半導体チップ間との接着には、ペースト状、もしくはフィルム状接着剤(ダイアタッチフィルム)が使用されているが、樹脂流れや樹脂はい上がり等によって半導体チップやワイヤーパッド等の他部材への汚染を引き起こしにくいダイアタッチフィルムが通常使用されている。
【0004】
また、近年、半導体ウェハの配線ルールの微細化が進行しており、半導体素子や基板の温度が上昇しやすくなっている。このため、熱をパッケージ外部へ逃がしやくするために、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、鉄、アルミニウム、ステンレス等の導電性の粉体、酸化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素、硼酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ダイヤモンド等の非導電性の粉体などの熱伝導率の高いフィラーを含むダイアタッチフィルムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
このような高熱伝導性のダイアタッチフィルムは、半導体チップを配線基板にフリップチップ接続し、半導体チップの裏面にヒートシンクを貼合するための接着剤としても使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−120826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のダイアタッチフィルムにおいて使用されている高熱伝導率のフィラーは硬度の高いものであるため、半導体チップの基板上への熱圧着工程や、半導体チップ上へのヒートシンクの熱圧着工程において、半導体チップ裏面や、基板表面、ヒートシンク表面がフィラーによって部分的に破壊されてしまうおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は、半導体チップの基板上への熱圧着工程や、半導体チップ上へのヒートシンクの熱圧着工程において、半導体チップの裏面や、基板の表面、ヒートシンクの表面がフィラーによって部分的に破壊されるのを防止することができるフィルム状接着剤、フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本願発明によるフィルム状接着剤は、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)、熱伝導性充填材(D)を含有しており、前記熱伝導性充填剤(D)は、平均粒径が0.1〜10.0μmであり、微小圧縮試験における破壊時圧縮率が試料の平均粒径の5〜50%であり、微小圧縮試験における破壊強度が0.01〜2.0GPaであり、熱伝導率が30W/m・K以上であり、前記熱伝導性充填材(D)の含有量は、前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記フェノキシ樹脂(C)及び前記熱伝導性充填材(D)の全量に対して10〜70体積%であり、熱硬化後に熱伝導率1.0W/m・K以上であることを特徴とする。
【0010】
上記フィルム状接着剤は、室温から5℃/分の昇温速度で昇温したとき、80℃以上において200〜10000Pa・sの範囲の最低溶融粘度に達することが好ましい。
【0011】
上記フィルム状接着剤は、前記熱伝導性充填剤(D)が、コア材の表面に銀が被覆されてなり、前記銀の被覆量が前記熱伝導性充填剤(D)の全量に対して10〜95重量%であり、前記コア材がシリコーン樹脂であることが好ましい。
【0012】
上記フィルム状接着剤は、厚みが1〜100μmであることが好ましい。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本願発明による半導体パッケージの製造方法は、表面に少なくとも1つの半導体回路が形成されたウェハの裏面に、上述のフィルム状接着剤及びダイシングテープを熱圧着して、前記ウェハの裏面に接着剤層及びダイシングテープを設ける第1の工程と、前記ウェハと前記接着剤層とを同時にダイシングすることにより前記ウェハ及び前記接着剤層を備える接着剤層付き半導体チップを得る第2の工程と、前記接着剤層から前記ダイシングテープを脱離し、前記接着剤層付き半導体チップと配線基板とを前記接着剤層を介して熱圧着せしめる第3の工程と、前記接着剤層を熱硬化せしめる第4の工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるフィルム状接着剤、フィルム状接着剤を用いた半導体パッケージの製造方法は、半導体チップの基板上への熱圧着工程や、半導体チップ上へのヒートシンクの熱圧着工程において、半導体チップの裏面や、基板の表面、ヒートシンクの表面がフィラーによって部分的に破壊されるの防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る半導体パッケージの製造方法における第1の工程を説明する説明図である。
図2】本発明の実施の形態に係る半導体パッケージの製造方法における第2の工程を説明する説明図である。
図3】本発明の実施の形態に係る半導体パッケージの製造方法における第3の工程を説明する説明図である。
図4】本発明の実施の形態に係る半導体パッケージの製造方法における第5の工程を説明する説明図である。
図5】本発明の実施の形態に係るフィルム状接着剤を用いた半導体チップの実装構造を模式的に示す断面図である。
図6】本発明の実施の形態に係るフィルム状接着剤を用いた他の半導体チップの実装構造を模式的に示す断面図である。
図7】本発明の実施の形態に係る半導体パッケージの構造を模式的に示す断面図である。
図8】本発明の実施の形態に係るフィルム状接着剤を用いた他の半導体チップの実装構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
本発明の実施形態に係るフィルム状接着剤は、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)、熱伝導性充填材(D)を含有しており、前記熱伝導性充填剤(D)は、平均粒径が0.1〜10.0μmであり、微小圧縮試験における破壊時圧縮率が試料の平均粒径の5〜50%であり、微小圧縮試験における破壊強度が0.01〜2.0GPaであり、熱伝導率が30W/m・K以上であり、前記熱伝導性充填材(D)の含有量は、前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記フェノキシ樹脂(C)及び前記熱伝導性充填材(D)の全量に対して10〜70体積%であり、熱硬化後に熱伝導率1.0W/m・K以上である。また、本発明の実施形態に係るフィルム状接着剤は、室温から5℃/分の昇温速度で昇温したとき、80℃以上において200〜10000Pa・sの範囲の最低溶融粘度に達することが好ましい。
【0018】
本発明の実施形態に係るフィルム状接着剤は、熱硬化後に熱伝導率1.0W/m・K以上である。フィルム状接着剤の熱硬化後における熱伝導率1.0W/m・K未満であると、半導体パッケージの放熱の効果が十分に得られない。
【0019】
また、本発明の実施形態に係るフィルム状接着剤は、室温から5℃/分の昇温速度で昇温したとき、80℃以上において200〜10000Pa・sの範囲の最低溶融粘度に達することが好ましい。最低溶融粘度は、さらに、500〜10000Pa・sの範囲がより好ましい。溶融粘度が10000Pa・sよりも大きいと、本フィルム状接着剤を設けた半導体チップを配線基板上に熱圧着する際に配線基板凹凸間に空隙が残りやすく、半導体パッケージの信頼性試験において、リフロークラックが生じやすくなる。また、200Pa・sよりも小さいと、半導体チップの基板上への熱圧着工程やヒートシンクの熱圧着工程において半導体チップ表面やヒートシンク側面までフィルム状接着剤が這い上がり、もしくは流れ出し、汚染する問題が発生し易くなる。
【0020】
なお、本発明の実施形態において、最低溶融粘度は、レオメーターを用い、温度範囲20〜250℃、昇温速度5℃/minでの粘性抵抗の変化を測定し、得られた温度−粘性抵抗曲線から算出する。また、該温度−粘性抵抗曲線において最低溶融粘度到達したときの温度を最低溶融粘度到達温度とする。最低溶融粘度到達温度はフィルム状接着剤の硬化速度と相関し、より低温側だと硬化速度が速いことを示す。
【0021】
(エポキシ樹脂(A))
本発明に係る接着フィルムに含まれているエポキシ樹脂(A)は、エポキシ基を有するものであれば特に限定されない。
【0022】
エポキシ樹脂(A)の骨格は、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、ジシクロペンタジエン型、ビフェニル型、フルオレンビスフェノールA型、トリアジン型、ナフトール型、ナフタレンジオール型、トリフェニルメタン型、テトラフェニル型、ビスフェノールa型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、トリメチロールメタン型などが使用できる。
【0023】
エポキシ樹脂(A)は、硬化体の架橋密度を高くし、結果として、機械的強度と耐熱性を向上するため、エポキシ当量が500g/eq以下であることが好ましく、150〜450g/eqであることがより好ましい。なお、本発明において、エポキシ当量とは、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)をいう。
【0024】
エポキシ樹脂(A)としては、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いる場合には、例えば、組成物の粘度の調節がしやすく、フィルム状接着剤とウェハとを熱圧着せしめる工程(ウェハラミネート工程)を低温(好ましくは40〜80℃)で実施した場合においても、ウェハとフィルム状接着剤との密着性が十分に発揮される傾向にあるという観点から、軟化点が50〜100℃であるエポキシ樹脂(a1)と軟化点が50℃未満であるエポキシ樹脂(a2)とを組み合わせて用いることが好ましい。
【0025】
エポキシ樹脂(a1)としては、室温で固体又は半固体であり、軟化点が50〜100℃であることが好ましく、50〜80℃であることがより好ましい。軟化点が50℃未満であると、得られる接着剤の粘度が低下するため、常温においてフィルム形状を保持することが困難となる傾向にあり、他方、100℃を超えると、得られるフィルム状接着剤において、80℃以上の範囲において200〜10000Pa・sの範囲の最低溶融粘度に到達することが困難となる傾向にある。
【0026】
エポキシ樹脂(a1)としては、重量平均分子量が500を超えて2000以下であることが好ましく、600〜1200であることがより好ましい。重量平均分子量が500以下であると単量体や2量体が増えて結晶性が強くなるため、フィルム状接着剤が脆弱になる傾向にあり、他方、2000を超えるとフィルム状接着剤の溶融粘度が高くなるため、配線基板に圧着する際に基板上の凹凸を埋め込むことが十分にできず、配線基板との密着性が低下する傾向にある。
【0027】
このようなエポキシ樹脂(a1)の骨格としては、樹脂の結晶性が低く、良好な外観を有するフィルム状接着剤を得られるという観点から、トリフェニルメタン型、ビスフェノールA型、クレゾールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、ジシクロペンタジエン型であることが好ましく、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0028】
エポキシ樹脂(a2)としては、フィルム状接着剤とウェハとを熱圧着せしめる工程(ウェハラミネート工程)を低温(好ましくは40〜80℃)で実施した場合においてもウェハとフィルム状接着剤との密着性が十分に発揮されるように、軟化点が50℃未満であることが好ましく、軟化点が40℃以下であることがより好ましい。このようなエポキシ樹脂(a2)としては、重量平均分子量が300〜500であることが好ましく、350〜450であることがより好ましい。重量平均分子量が300未満であると単量体が増えて結晶性が強くなるため、フィルム状接着剤が脆弱になる傾向にあり、他方、500を超えると溶融粘度が高くなるため、ウェハラミネート工程の際にウェハとフィルム状接着剤との密着性が低下する傾向にある。
【0029】
このようなエポキシ樹脂(a2)の骨格としては、樹脂の結晶性が低く、良好な外観を有するフィルム状接着剤を得られるという観点から、オリゴマータイプの液状エポキシ樹脂であるビスフェノールA型、ビスフェノールA/F混合型、ビスフェノールF型、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型であることが好ましく、溶融粘度が低くより結晶性が低いという観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA/F混合型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0030】
前記エポキシ樹脂(a1)及び前記エポキシ樹脂(a2)の割合としては、質量比(a1:a2)が95:5〜30:70であることが好ましく、70:30〜40:60であることがより好ましい。エポキシ樹脂(a1)の含有量が前記下限未満であると、フィルム状接着剤のフィルムタック性が強くなりカバーフィルムやダイシングテープから剥離しにくくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると組成物の粘度が高くなり、得られるフィルム状接着剤の性状が脆くなる傾向にある。
【0031】
(エポキシ樹脂硬化剤(B))
本発明に使用するエポキシ樹脂硬化剤(B)としては、アミン類、酸無水物類、多価フェノール類等の公知の硬化剤を用いることができるが、好ましくは常温以上の所定の温度、例えばエポキシ樹脂(A)が必要な粘着性を示す温度以上で硬化性を発揮し、しかも速硬化性を発揮する潜在性硬化剤である。潜在性硬化剤には、ジシアンジアミド、イミダゾール類、ヒドラジド類、三弗化ホウ素−アミン錯体、アミンイミド、ポリアミン塩及びこれらの変性物、更にマイクロカプセル型のものも使用可能である。これらは、単独あるいは2種以上混ぜて使用できる。潜在性硬化剤を使用することで室温での長期保存も可能な保存安定性の高いフィルム状接着剤用組成物を提供できる。エポキシ樹脂硬化剤(B)の使用量は、通常、エポキシ樹脂(A)に対して0.5〜50質量%の範囲である。また、硬化剤としてジシアンジアミド等を用いる場合は触媒としてイミダゾールを用いることが好ましい。
【0032】
(フェノキシ樹脂(C))
本発明に使用するフェノキシ樹脂(C)としては、フィルム状接着剤に十分な接着性および造膜性(フィルム形成性)を付与するために用いる。フェノキシ樹脂は、エポキシ樹脂と構造が類似していることから相溶性がよく、樹脂溶融粘度も低く、接着性もよい。フェノキシ樹脂は、ビスフェノールAのようなビスフェノールとエピクロロヒドリンとから得られる通常、分子量が10000以上の熱可塑性樹脂である。フェノキシ樹脂を配合することにより、常温でのタック性、脆さなどを解消するのに効果がある。好ましいフェノキシ樹脂は、1256(ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、三菱化学株式会社製)、YP−70(ビスフェノールA/F型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造株式会社製)、FX−316(ビスフェノールF型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造株式会社製)、及び、FX−280S(カルド骨格型フェノキシ樹脂、新日化エポキシ製造株式会社製)等の市販のフェノキシ樹脂をフェノキシ樹脂(C)として用いてもよい。
【0033】
(熱伝導性充填材(D))
本発明に使用する熱伝導性充填材(D)は、平均粒径が0.1〜10.0μmである。 熱伝導性充填材の平均粒径が0.1μm未満であると、熱伝導性充填材の比表面積が大きくなるため、フィルム状接着剤内部の熱伝導性充填剤(D)による放熱ルートが長くなり、放熱効率が悪くなる。熱伝導性充填材の平均粒径が10.0μm超であると、ロールナイフコーター等の塗工機で薄型のフィルム状接着剤を作製する際に、フィラーがきっかけとなりフィルム状接着剤表面にスジを発生しやすくなる。
【0034】
なお、本発明において、熱伝導性充填材(D)の平均粒径とは、粒度分布において粒子の全体積を100%としたときに50%累積となるときの粒径をいい、レーザー回折・散乱法(測定条件:分散媒−ヘキサメタりん酸ナトリウム、レーザー波長:780nm、測定装置:マイクロトラックMT3300EX)により測定した粒径分布の粒径の体積分率の累積カーブから求めることができる。また、本発明において、球状とは、真球又は実質的に角のない丸味のある略真球であるものをいう。
【0035】
また、熱伝導性充填材(D)は、微小圧縮試験における破壊時圧縮率が試料の平均粒径の5〜50%である。破壊時圧縮率が試料の平均粒径の5%未満であると、熱伝導性充填材(D)が硬く変形しにくいため、半導体チップの基板上への熱圧着工程や、半導体チップ上へのヒートシンクの熱圧着工程において、半導体チップ裏面や、基板表面、ヒートシンク表面がフィラーによって部分的に破壊されてしまう。破壊時圧縮率が平均粒径の50%超であると、半導体チップの基板上への熱圧着工程や、半導体チップ上へのヒートシンクの熱圧着工程において、熱伝導性充填剤の形状が変形しやすくなり、フィルム状接着剤の厚みが本来の厚みより薄くなり、フィルム状接着剤が半導体チップ上部やヒートシンク側面に這い上がり、もしくは流れ出しやすくなる。
【0036】
また、熱伝導性充填材(D)は、微小圧縮試験における破壊強度が0.01〜2.0GPaである。微小圧縮試験における破壊強度が0.01GPa未満であると、フィルム状接着剤の製造工程においてプラネタリーミキサー等で熱伝導性充填剤をバインダー樹脂に分散する工程において、熱伝導性充填剤が破壊されやすくなり、フィルム状接着剤の熱伝導性が得られなくなる。微小圧縮試験における破壊強度が2.0GPa超であると、熱伝導性充填材(D)が硬く変形しにくいため、半導体チップの基板上への熱圧着工程や、半導体チップ上へのヒートシンクの熱圧着工程において、半導体チップ裏面や、基板表面、ヒートシンク表面がフィラーによって部分的に破壊されてしまう。
【0037】
熱伝導性充填材(D)の微小圧縮試験における破壊時圧縮率および破壊強度は、以下のようにして測定できる。熱伝導性充填材(D)の試料を微小圧縮試験機のステージ上に適量散布し、付属の光学顕微鏡にて粒子を観察しながら、試料の平均粒径を測定する。次に、室温大気中においてダイヤモンド製平面圧子(50μmφ)にて0.89mN/sの負荷速度にて圧縮する。得られた荷重‐押し込み変位線図において、急激に変位が増加する点を試料が破壊したと判定し、その時点での変位を破壊時変位とし、下記式(1)により破壊時圧縮率(%)を算出する。
破壊時圧縮率=破壊時変位量÷試料の平均粒径 (1)
【0038】
また、その際の破壊荷重から下記式(2)により破壊強度を算出する。
破壊強度=(2.8×破壊荷重)÷π(円周率)×試料の平均粒径2 (2)
【0039】
また、熱伝導性充填材(D)の熱伝導率は30W/m・K以上である。熱伝導性充填材(D)の熱伝導率が30W/m・K以上でなければ、フィルム状接着剤が半導体パッケージの放熱に十分寄与することができない。
【0040】
このような熱伝導性充填材(D)としては、コア材の表面を金属、もしくはセラミックで被覆した充填材を用いることができる。
【0041】
コア材としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリテトラフロロエチレン等のフッ素樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ベンゾグアナミンやメラミンとホルムアルデヒドとの架橋物等が挙げられる。
【0042】
被覆する金属としては、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、半田、インジウム、パラジウム等の中から1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。セラミックとしては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化硼素、水酸化アルミニウム、炭化珪素等の中から1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0043】
熱伝導性充填材(D)は、放熱性と柔軟性の観点から、シリコーン樹脂粒子を銀で被覆したものであることが好ましい。シリコーン樹脂粒子は、メチルクロロシラン、トリメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等のオルガノクロロシランを重合させることにより得られるオルガノポリシロキサンにより構成される粒子であってもよいし、このオルガノポリシロキサンをさらに三次元架橋した構造を基本骨格としたシリコーン樹脂により構成されるシリコーン樹脂粒子であってもよい。
【0044】
また、シリコーン樹脂粒子の構造中に各種官能基を導入することが可能であり、導入できる官能基としてはエポキシ基、アミノ基、メトキシ基、フェニル基、カルボキシル基、水酸基、アルキル基、ビニル基、メルカプト基等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
なお、本実施形態では、特性を損なわない範囲で他の低応力改質剤をこのシリコーン樹脂粒子に添加しても構わない。併用できる他の低応力改質剤としては、ブタジエンスチレンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリウレタンゴム、ポリイソプレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、液状オルガノポリシロキサン、液状ポリブタジエン等の液状合成ゴム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
銀の被覆量は熱伝導性充填剤(D)の全量に対して10〜95重量%であることが好ましい。銀の被覆量が10重量%未満であると放熱効果が得られにくい。また、銀の被覆量が95%超であると、微小圧縮試験における破壊時圧縮率を試料の平均粒径の5〜50%、微小圧縮試験における破壊強度を0.01〜2.0GPaとすることが困難であり、半導体チップの基板上への熱圧着工程や、半導体チップ上へのヒートシンクの熱圧着工程において、半導体チップ裏面や、基板表面、ヒートシンク表面がフィラーによって部分的に破壊されるおそれがある。
【0047】
ここでいう「被覆」とは、コア材の表面全体を覆ていてもよいし部分的に覆っていてもよい。
【0048】
また、被覆は、樹脂粒子の表面を金属薄膜でメッキすることにより行うことができる。メッキの方法としては無電解メッキ、真空蒸着、イオンスパッタ−リング等の方法が用いられる。
【0049】
熱伝導性充填材(D)の含有量は、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)及び熱伝導性充填材(D)の合計量に対して、10〜70体積%であり、40〜70体積%であることがより好ましい。これは、最低溶融粘度値は熱伝導性充填材(D)の配合量で制御されるからである。熱伝導性充填材(D)の配合量が70体積%より多いと、最低溶融粘度値は大きくなり、本フィルム状接着剤を設けた半導体チップを配線基板上に熱圧着する際に配線基板凹凸間に空隙が残りやすくなり、またフィルム脆弱性が強くなる。このため、半導体パッケージの信頼性試験において、リフロークラックが生じやすくなる。配合量が10質量%より少ないと、最低溶融粘度値は小さくなり、半導体チップの基板上への熱圧着工程やヒートシンクの熱圧着工程において半導体チップ表面やヒートシンク側面までフィルム状接着剤が這い上がり、もしくは流れ出し、汚染する問題が発生し易くなる。
【0050】
本発明のフィルム状接着剤用組成物としては、前記エポキシ樹脂(A)、前記エポキシ樹脂硬化剤(B)、前記フェノキシ樹脂(C)、及び熱伝導性充填材(D)の他に、本発明の効果を阻害しない範囲において、粘度調整剤、酸化防止剤、難燃剤、着色剤、ブタジエン系ゴムやシリコーンゴム等の応力緩和剤等の添加剤をさらに含有していてもよい。
【0051】
本発明のフィルム状接着剤の製造方法の好適な一実施形態としては、フィルム状接着剤用組成物を離型処理された基材フィルムの一方の面上に塗工し、加熱乾燥を施す方法が挙げられるが、この方法に特に制限されるものではない。離型処理した基材フィルムとしては、得られるフィルム状接着剤のカバーフィルムとして機能するものであればよく、公知のものを適宜採用することができ、例えば、離型処理されたポリプロピレン(PP)、離型処理されたポリエチレン(PE)、離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。前記塗工方法としては、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、ロールナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リバースコーター等を用いた方法が挙げられる。
【0052】
このように得られた本発明のフィルム状接着剤としては、厚さが1〜100μmであることが好ましい。厚さが1μm未満であると配線基板、半導体チップ表面の凹凸を十分に埋め込めず、十分な密着性が担保できなくなる傾向にあり、他方、100μmを超えると製造時において有機溶媒を除去することが困難になるため、残存溶媒量が多くなり、フィルムタック性が強くなる傾向にある。
【0053】
また、本発明の最低溶融粘度は、上述のような組成や配合比の組み合わせにより達成できる他、フィルム作製後に、意図的に事前熱処理を行うことにより、エポキシ樹脂の硬化反応を部分的に行い、溶融粘度を上昇させることで達成することができ、半導体組立プロセスにおける高温熱硬化時のボイド発生を抑制することができる。この時の事前熱処理温度としては好ましくは80〜150℃であり、より好ましくは100〜130℃であり、事前熱処理時間としては好ましくは5〜300分であり、より好ましくは30〜200分である。
【0054】
次いで、図面を参照しながら本発明の半導体パッケージの製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図1図7は、本発明の半導体パッケージの製造方法の各工程の好適な一実施形態を示す概略縦断面図である。
【0055】
本発明の半導体パッケージの製造方法においては、先ず、第1の工程として、図1に示すように、表面に少なくとも1つの半導体回路が形成されたウェハ1の裏面に、本発明のフィルム状接着剤を熱圧着して接着剤層2を設け、次いで、ウェハ1とダイシングテープ3とを接着剤層2を介して貼合する。この際、接着剤層2とダイシングテープ3を予め一体化した製品を一度に熱圧着してもよい。ダイシングテープ3としては特に制限されず、適宜公知のダイシングテープを用いることができる。ウェハ1としては、表面に少なくとも1つの半導体回路が形成されたウェハを適宜用いることができ、例えば、シリコンウェハ、SiCウェハ、GaAsウェハが挙げられる。接着剤層2としては、本発明のフィルム状接着剤を1層で単独で用いても2層以上を積層して用いてもよい。このような接着剤層2をウェハ1の裏面に設ける方法としては、フィルム状接着剤をウェハ1の裏面に積層させることが可能な方法を適宜採用することができ、ウェハ1の裏面にフィルム状接着剤を貼り合せた後、2層以上を積層する場合には所望の厚さとなるまで順次フィルム状接着剤を積層させる方法や、フィルム状接着剤を予め目的の厚さに積層した後にウェハ1の裏面に貼り合せる方法等を挙げることができる。また、このような接着剤層2をウェハ1の裏面に設ける際に用いる装置としては特に制限されず、例えば、ロールラミネーター、マニュアルラミネーターのような公知の装置を適宜用いることができる。
【0056】
次いで、本発明の半導体パッケージの製造方法においては、第2の工程として、図2に示すように、ウェハ1と接着剤層2とを同時にダイシングすることにより半導体チップ4と接着剤層2とを備える接着剤層付き半導体チップ5を得る。ダイシングに用いる装置も特に制限されず、適宜公知のダイシング装置を用いることができる。
【0057】
次いで、本発明の半導体パッケージの製造方法においては、第3の工程として、図3に示すように、接着剤層2からダイシングテープ3を脱離し、接着剤層付き半導体チップ5と配線基板6とを接着剤層2を介して熱圧着せしめ、配線基板6に半導体チップ4を実装する。配線基板6としては、表面に半導体回路が形成された基板を適宜用いることができ、例えば、プリント回路基板(PCB)、各種リードフレーム、及び、基板表面に抵抗素子やコンデンサー等の電子部品が搭載された基板が挙げられる。
【0058】
このように半導体チップ4を実装する方法としては、特に制限されず、接着剤層2を利用して接着剤層付き半導体チップ5を配線基板6又は配線基板6の表面上に搭載された電子部品に接着させることが可能な従来の方法を適宜採用することができる。このような実装方法としては、上部からの加熱機能を有するフリップチップボンダーを用いた実装技術を用いる方法、下部からのみの加熱機能を有するダイボンダーを用いる方法、ラミネーターを用いる方法等の従来公知の加熱、加圧方法を挙げることができる。このように、本発明のフィルム状接着剤からなる接着剤層2を介して半導体チップ4を配線基板6上に実装することで、電子部品により生じる配線基板6上の凹凸に接着剤層2(フィルム状接着剤)を追従させることができるため、ウェハ1と配線基板6とを密着させて固定することが可能となる。
【0059】
次いで、本発明の半導体パッケージの製造方法においては、第4の工程として、接着剤層2を熱硬化せしめる。熱硬化の温度としては、フィルム状接着剤(接着剤層2)の熱硬化開始温度以上であれば特に制限がなく、使用する樹脂の種類により異なるものであり、一概に言えるものではないが、例えば、120℃超180℃以下であることが好ましく、より高温にて硬化した方が短時間で硬化可能であるという観点から、140〜180℃であることがより好ましい。温度が熱硬化開始温度未満であると、熱硬化が十分に進まず、接着層2の強度が低下する傾向にあり、他方、180℃を超えると硬化過程中にフィルム状接着剤中のエポキシ樹脂、硬化剤や添加剤等が揮発して発泡しやすくなる傾向にある。また、硬化処理の時間としては、例えば、10〜120分間であることが好ましい。本発明においては、高温でフィルム状接着剤を熱硬化せしめることにより短時間で硬化させることができる上、高温温度で硬化してもボイドが発生することなく、配線基板6とウェハ1とが強固に接着された半導体パッケージを得ることができる。
【0060】
次いで、本発明の半導体パッケージの製造方法においては、第5の工程として、図4に示すように、配線基板6と半導体チップ4とをボンディングワイヤー7を介して接続することが好ましい。このような接続方法としては特に制限されず、従来公知の方法、例えば、ワイヤーボンディング方式の方法、TAB(Tape Automated Bonding)方式の方法等を適宜採用することができる。
【0061】
また、搭載された半導体チップ4の表面に、別の接着剤層付き半導体チップ5を熱圧着、熱硬化し、再度ワイヤーボンディング方式により配線基板7と接続することにより、複数個積層することもできる。例えば、図5に示すように半導体チップ4をずらして積層する方法、もしくは図6に示すように2層目以降の接着層2を厚くすることで、ボンディングワイヤー7を埋め込みながら積層する方法等がある。
【0062】
本発明の半導体パッケージの製造方法においては、図7に示すように、封止樹脂8により配線基板6と半導体チップ4とを封止することが好ましく、このようにして本発明の半導体パッケージ9を得ることができる。封止樹脂8としては特に制限されず、半導体パッケージの製造に用いることができる適宜公知の封止樹脂を用いることができる。また、封止樹脂8による封止方法としても特に制限されず、適宜公知の方法を採用することが可能である。
【0063】
このような本発明の半導体パッケージの製造方法によれば、半導体チップの基板上への熱圧着工程において、半導体チップ裏面や基板表面が熱伝導性充填材(D)によって部分的に破壊されるの防止することができる。
【0064】
また、本発明のフィルム状接着剤は、図8に示すように、半導体チップ10を基板11にフリップチップ接続し、半導体チップ10の裏面にヒートシンク14を貼合するための接着剤としても使用することができる。具体的には、半導体チップ10の回路面側に形成されている接続部としてのバンプ12を基板11の接続パッドに被着された接合用の導電材13(半田など)に接触させて押圧しながらバンプ12及び導電材13を溶融させることにより、半導体チップ10と基板11とをフリップチップ接続する。その後、フリップチップ接続された半導体チップ10の裏面に本発明のフィルム状接着剤15を貼合し、その上にヒートシンク14を貼り合わせ、フィルム状接着剤15を硬化させる。このとき、半導体チップ10上へのヒートシンク14の熱圧着工程において、半導体チップ10の裏面やヒートシンク14の表面が熱伝導性充填材(D)によって部分的に破壊されるの防止することができる。
【0065】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
先ず、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(商品名:EPPN−501H、重量平均分子量:1000、軟化点:55℃、固体、エポキシ当量:167、日本化薬株式会社製)58質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:YD−128、重量平均分子量:400、軟化点:25℃以下、液体、エポキシ当量:190、新日化エポキシ製造株式会社製)26質量部、及び、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(商品名:YP−50、重量平均分子量:70000、Tg:84℃、新日化エポキシ製造株式会社製)15質量部、80質量部のメチルエチルケトンを溶媒として500mlのセパラブルフラスコ中において温度110℃で2時間加熱攪拌し、樹脂ワニスを得た。
【0067】
次いで、この樹脂ワニス190質量部を800mlのプラネタリーミキサーに移し、熱伝導性充填材(D)として銀被覆シリコーン樹脂フィラー(商品名:SC0280−SF、平均粒径2.0μm、銀被覆量80質量%、比重4.3g/cm3、熱伝導率400W/m・K、破壊時変位0.8μm(破壊時圧縮率40%)、破壊強度0.24GPa、三菱マテリアル株式会社製)240質量部、イミダゾール型硬化剤(商品名:2PHZ−PW、四国化成株式会社製)2質量部を加えて室温において1時間攪拌混合後、真空脱泡して混合ワニスを得た。
【0068】
次いで、得られた混合ワニスを厚さ38μmの離型処理されたPETフィルム上に塗布して130℃で10分間加熱乾燥し、厚さが15μmである実施例1に係るフィルム状接着剤を得た。
【0069】
(実施例2)
銀被覆シリコーン樹脂フィラー(商品名:SC0280−SF、平均粒径2.0μm、銀被覆量80質量%、比重4.3g/cm3、熱伝導率400W/m・K、破壊時変位0.8μm(破壊時圧縮率40%)、破壊強度0.24GPa、三菱マテリアル株式会社製)362質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例2に係るフィルム状接着剤を得た。
【0070】
(実施例3)
銀被覆シリコーン樹脂フィラー(商品名:SC0280−SF、平均粒径2.0μm、銀被覆量80質量%、比重4.3g/cm3、熱伝導率400W/m・K、破壊時変位0.8μm(破壊時圧縮率40%)、破壊強度0.24GPa、三菱マテリアル株式会社製)550質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例3に係るフィルム状接着剤を得た。
【0071】
(実施例4)
熱伝導性充填材(D)として銀被覆シリコーン樹脂フィラー(商品名:SC0475-SF、平均粒径4.0μm、銀被覆量75質量%、比重4.1g/cm3、熱伝導率400W/m・K、破壊時変位1.4μm(破壊時圧縮率35%)、破壊強度0.26GPa、三菱マテリアル株式会社製)240質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例4に係るフィルム状接着剤を得た。
【0072】
(実施例5)
熱伝導性充填材(D)として銀被覆シリコーン樹脂フィラー(商品名:SC0475-SF、平均粒径4.0μm、銀被覆量75質量%、比重4.1g/cm3、熱伝導率400W/m・K、破壊時変位1.4μm(破壊時圧縮率35%)、破壊強度0.26GPa、三菱マテリアル株式会社製)240質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例5に係るフィルム状接着剤を得た。
【0073】
(実施例6)
熱伝導性充填材(D)として金-ニッケル被覆樹脂フィラー(商品名:AU203A、平均粒径3.0μm、比重6.0g/cm3、熱伝導率300W/m・K、破壊時変位1.5μm(破壊時圧縮率50%)、破壊強度0.35GPa、積水化学工業株式会社製)330質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例6に係るフィルム状接着剤を得た。
【0074】
(比較例1)
熱伝導性充填材(D)として銀被覆シリコーン樹脂フィラー(商品名:SC0475-SF、平均粒径4.0μm、銀被覆量75質量%、比重4.1g/cm3、熱伝導率400W/m・K、破壊時変位1.4μm(破壊時圧縮率35%)、破壊強度0.26GPa、三菱マテリアル株式会社製)1060質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較例1に係るフィルム状接着剤を得た。
【0075】
(比較例2)
熱伝導性充填材(D)として銀被覆シリコーン樹脂フィラー(商品名:SC0475-SF、平均粒径4.0μm、銀被覆量75質量%、比重4.1g/cm、熱伝導率400W/m・K、破壊時変位1.4μm(破壊時圧縮率35%)、破壊強度0.26GPa、三菱マテリアル株式会社製)30質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較例2に係るフィルム状接着剤を得た。
【0076】
(比較例3)
シリカフィラー(商品名:FB−3SDX、平均粒径3.0μm、比重2.2g/cm、熱伝導率1.0W/m・K、破壊時変位0.1μm(破壊時圧縮率3%)、破壊強度2.4GPa、デンカ株式会社製)185質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較例3に係るフィルム状接着剤を得た。
【0077】
(比較例4)
シリコーンフィラー(商品名:MSP−SN05、平均粒径0.5μm、比重1.2g/cm、熱伝導率0.2W/m・K、破壊時変位1.5μm(破壊時圧縮率38%)、破壊強度0.28GPa、日興リカ株式会社製)100質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較例4フィルム状接着剤を得た。
【0078】
(比較例5)
銀フィラー(商品名:Ag−4−8F、平均粒径2.0μm、比重10.5g/cm、熱伝導率429W/m・K、破壊時変位0.4μm(破壊時圧縮率20%)、破壊強度2.1GPa、三菱マテリアル株式会社製)600質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較例5に係るフィルム状接着剤を得た。
【0079】
(比較例6)
窒化アルミフィラー(商品名:HF−01、平均粒径1.0μm、比重3.3g/cm、熱伝導率200W/m・K、破壊時変位0.1μm(破壊時圧縮率10%)、破壊強度3.0GPa、株式会社トクヤマ製)280質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較例6フィルム状接着剤を得た。
【0080】
実施例・比較例に係るフィルム状接着剤に使用した上記各熱伝導性充填剤の破壊時変位、破壊時圧縮率および破壊強度は、以下のようにして測定した。各熱伝導性充填剤を微小圧縮試験機(商品名:MCTW−500、株式会社島津製作所製)のステージ上に試料として適量散布し、付属の光学顕微鏡にて粒子を観察しながら、試料の平均粒径を測定した。次に、室温大気中においてダイヤモンド製平面圧子(50μmφ)にて0.89mN/sの負荷速度にて圧縮した。得られた荷重‐押し込み変位線図において、急激に変位が増加する点をフィラー粒子破壊したと判定し、その時点での変位を破壊時変位とし、下記式(1)により破壊時圧縮率(%)を算出した。
破壊時圧縮率=破壊時変位量÷試料の平均粒径 (1)
【0081】
また、その際の破壊荷重から下記式(2)により破壊強度を算出した。
破壊強度=(2.8×破壊荷重)÷π(円周率)×試料の平均粒径2 (2)
【0082】
また、実施例・比較例に係るフィルム状接着剤について、下記の各種測定および評価を行った。その結果を表1,2に示す。
【0083】
(最低溶融粘度の測定)
各実施例及び比較例に係るフィルム状接着剤を5.0cm×5.0cmのサイズに切り取って積層し、ステージである70℃の熱板上で、ハンドローラーにて貼り合わせて、厚さが約1.0mmである試験片を得た。この試験片について、レオメーター(RS6000、Haake社製)を用い、温度範囲20〜250℃、昇温速度5℃/minでの粘性抵抗の変化を測定し、得られた温度−粘性抵抗曲線から最低溶融粘度到達温度と最低溶融粘度(Pa・s)を算出した。
【0084】
(熱伝導率)
各実施例及び比較例に係るフィルム状接着剤を一辺50mm以上の四角片に切り取り、厚みが5mm以上になるように切り取った試料を重ねあわせ、直径50mm、厚さ5mmの円盤状金型の上に置き、圧縮プレス成型機を用いて温度150℃、圧力2MPaにおいて10分間加熱して取り出した後、さらに乾燥機中において温度180℃で1時間加熱することによりフィルム状接着剤を熱硬化させ、直径50mm、厚さ5mmの円盤状試験片を得た。この試験片について、熱伝導率測定装置(商品名:HC−110、英弘精機株式会社製)を用いて、熱流計法(JIS−A1412に準拠)により熱伝導率(W/m・K)を測定した。
【0085】
(フィラーダメージ評価)
先ず、ダミーシリコンウェハ(8inchサイズ、厚さ625μm)にダイシングテープ(商品名:K−13、古河電気工業株式会社製)及びダイシングフレーム(商品名:DTF2−8−1H001、DISCO社製)を貼り合わせて、2軸のダイシングブレード(Z1:NBC−ZH2030−SE(DD)、DISCO社製/Z2:NBC−ZH127F−SE(BB)、DISCO社製)が設置されたダイシング装置(商品名:DFD−6340、DISCO社製)にて2.0×2.0mmサイズにダイシングを実施した。このダミーシリコンチップ表面を走査電子顕微鏡(日本電子製 JSM−7900F)にて観察し、表面に傷がないことを確認した。
【0086】
次に、実施例及び比較例に係るフィルム状接着剤をマニュアルラミネーター(商品名:FM−114、株式会社テクノビジョン製)を用いて温度70℃、圧力0.3MPaにおいてダミーシリコンウェハ(8inchサイズ、厚さ100μm)に貼り合わせ、次いで、同マニュアルラミネーターを用いて室温、圧力0.3MPaにおいてフィルム状接着剤のダミーシリコンウェハと反対の面側にダイシングテープ(商品名:K−13、古河電気工業製)及びダイシングフレーム(商品名:DTF2−8−1H001、DISCO社製)を貼り合わせて試験片とした。この試験片について、2軸のダイシングブレード(Z1:NBC−ZH2030−SE(DD)、DISCO社製/Z2:NBC−ZH127F−SE(BB)、DISCO社製)が設置されたダイシング装置(商品名:DFD−6340、DISCO社製)にて1.0×1.0mmサイズにダイシングを実施しフィルム状接着剤付き半導体チップを作製した。
【0087】
次いで、ダイボンダー(商品名:DB−800、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて常温、圧力1.0MPa(荷重4000gf)、時間1.0秒の条件において前記フィルム状接着剤付き半導体チップを先に準備した2.0×2.0mmサイズのダミーシリコンウェハ上に過剰圧力をかけて圧着した。圧着した半導体チップをメチルエチルケトン10mlが入ったガラス容器の中に入れ、超音波洗浄によりフィルム状接着剤組成物を溶解洗浄した。その後、2.0×2.0mmサイズのダミーシリコンウェハ表面を再度、走査電子顕微鏡(商品名:JSM−7900F、日本電子株式会社製)にて観察し、表面に傷が観察されないものを良品として「○」、表面に圧痕等の傷が観察されたものを不良品として「×」で評価した。その結果を、表1及び表2に示す。
【0088】
(吸湿リフロー評価)
実施例及び比較例に係るフィルム状接着剤をマニュアルラミネーター(商品名:FM−114、株式会社テクノビジョン社製)を用いて温度70℃、圧力0.3MPaにおいてダミーシリコンウェハ(8inchサイズ、厚さ100μm)に貼り合わせ、次いで、同マニュアルラミネーターを用いて室温、圧力0.3MPaにおいてフィルム状接着剤のダミーシリコンウェハと反対の面側にダイシングテープ(商品名:K−13、古河電気工業株式会社製)及びダイシングフレーム(商品名:DTF2−8−1H001、DISCO社製)を貼り合わせて試験片とした。この試験片について、2軸のダイシングブレード(Z1:NBC−ZH2030−SE(DD)、DISCO社製/Z2:NBC−ZH127F−SE(BB)、DISCO社製)が設置されたダイシング装置(商品名:DFD−6340、DISCO社製)にて5.0×5.0mmサイズにダイシングを実施しフィルム状接着剤付き半導体チップを作製した。
【0089】
次いで、ダイボンダー(商品名:DB−800、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて常温、圧力0.1MPa(荷重400gf)、時間1.0秒の条件において前記フィルム状接着剤付き半導体チップをリードフレーム基板(42Arroy系、凸版印刷株式会社製)に熱圧着し、モールド装置(商品名:V1R、TOWA株式会社製)を使用して、モールド剤(商品名:KE−3000F5−2、京セラ株式会社製)により封止し、175℃/5時間熱処理を行い熱硬化し、半導体パッケージを組立てた。封止後の半導体パッケージを恒温恒湿器(商品名:PR−1J、エスペック株式会社製)にて、85℃/85%/168時間の条件下で吸水させ、処理した後、IRリフロー炉で260℃、10秒加熱した。加熱後の半導体パッケージをダイヤモンドカッターで切断し、超音波探傷装置(SAT)(商品名:FS300III、株式会社日立パワーソリューションズ製)を用いて、フィルム状接着剤と半導体チップまたはリードフレーム基板との間に剥離が発生しているか否かを観察し、組み立てた半導体パッケージ24個について1つも剥離が発生しなかったのものを良品として「○」で評価し、組み立てた半導体パッケージ24個のうち1つでも剥離が発生したのものを不良品として「×」で評価した。その結果を表1及び表2に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
表1に示すように、実施例1〜6は、熱伝導性充填剤(D)の微小圧縮試験における破壊時圧縮率が試料の平均粒径の5〜50%であり、微小圧縮試験における破壊強度が0.01〜2.0GPaであり、熱伝導率が30W/m・K以上であり、熱伝導性充填材(D)の含有量は、エポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)及び熱伝導性充填材(D)の全量に対して10〜70体積%であり、室温から5℃/分の昇温速度で昇温したとき、80℃以上において200〜10000Pa・sの範囲の最低溶融粘度に達するため、フィルム状接着剤の硬化後の熱伝導率が1W/m・K以上と放熱性に優れ、フィラーダメージ評価、吸湿リフロー評価においても良好な結果となった。
【0093】
一方、表2に示すように、比較例1は、熱伝導性充填材(D)の含有量がエポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)及び熱伝導性充填材(D)の全量に対して75%と請求項1に規定の上限の70体積%超え、フィルム状接着剤が脆弱となり、吸湿リフロー評価において劣る結果となった。また、比較例2は、熱伝導性充填材(D)の含有量がエポキシ樹脂(A)、エポキシ樹脂硬化剤(B)、フェノキシ樹脂(C)及び熱伝導性充填材(D)の全量に対して8体積%と請求項1に規定の下限の10体積%を下回るため、フィルム状接着剤の硬化後の熱伝導率が0.5W/m・Kと放熱性に劣る結果となった。比較例3は、熱伝導性充填剤(D)の熱伝導率が1W/m・Kと請求項1に規定の下限の30W/m・Kを下回るため、フィルム状接着剤の硬化後の熱伝導率が0.6W/m・Kと放熱性に劣る結果となった。また、比較例3は、熱伝導性充填材(D)の微小圧縮試験における破壊強度が2.4GPaと請求項1に規定の上限の2.0GPaを超えるためフィラーダメージ評価においても劣る結果となった。比較例4は、熱伝導性充填剤(D)の熱伝導率が0.2W/m・Kと請求項1に規定の下限の30W/m・Kを下回るため、フィルム状接着剤の硬化後の熱伝導率が0.2W/m・Kと放熱性に劣る結果となった。比較例5及び比較例6は、熱伝導性充填材(D)の微小圧縮試験における破壊強度が2.1GPa、3.0GPaと請求項1に規定の上限の2.0GPaを超えるためフィラーダメージ評価において劣る結果となった。
【符号の説明】
【0094】
1:ウェハ
2:接着剤層
3:ダイシングテープ
4:半導体チップ
5:接着剤層付き半導体チップ
6:配線基板
7:ボンディングワイヤー
8:封止樹脂
9:半導体パッケージ
14:ヒートシンク
15:フィルム状接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8