(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800174
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】容器入り小麦粉調味料
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20201207BHJP
A23L 7/10 20160101ALI20201207BHJP
A47J 43/22 20060101ALI20201207BHJP
A23L 7/157 20160101ALI20201207BHJP
【FI】
A23L27/00 D
A23L7/10 Z
A47J43/22
A23L7/157
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-565664(P2017-565664)
(86)(22)【出願日】2017年2月3日
(86)【国際出願番号】JP2017004069
(87)【国際公開番号】WO2017135439
(87)【国際公開日】20170810
【審査請求日】2019年7月12日
(31)【優先権主張番号】特願2016-19061(P2016-19061)
(32)【優先日】2016年2月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】日清フーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 雅人
(72)【発明者】
【氏名】榊原 通宏
【審査官】
茅根 文子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/119294(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/118697(WO,A1)
【文献】
特開2007−063217(JP,A)
【文献】
特開2004−123594(JP,A)
【文献】
特開2012−036140(JP,A)
【文献】
特許第6022114(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A47J
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器入り小麦粉調味料であって、
容器と、該容器に充填された小麦粉調味料とを含み、
該小麦粉調味料が小麦粉および粉末調味料を含む粉体混合物であり、該小麦粉調味料の安息角が33〜54度であり、かつ該容器が最大幅2〜20mmの振出し孔を1つ以上有する振出し容器であり、
該小麦粉調味料が、ショ糖脂肪酸エステルおよび二酸化ケイ素からなる群より選択される1種以上の流動化剤を0.02〜3質量%含有する、
容器入り小麦粉調味料。
【請求項2】
前記小麦粉調味料における前記小麦粉と前記粉末調味料との質量比が40:60〜85:15である、請求項1記載の容器入り小麦粉調味料。
【請求項3】
前記粉末調味料が粉末油脂を含む、請求項1又は2記載の容器入り小麦粉調味料。
【請求項4】
前記小麦粉が造粒小麦粉または分級小麦粉を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の容器入り小麦粉調味料。
【請求項5】
小麦粉調味料の適用方法であって、
容器に充填された小麦粉調味料を該容器から振り出して対象に適用することを含み、
該小麦粉調味料が小麦粉および粉末調味料を含む粉体混合物であり、該小麦粉調味料の安息角が33〜54度であり、かつ該容器が最大幅2〜20mmの振出し孔を1つ以上有する振出し容器であり、
該小麦粉調味料が、ショ糖脂肪酸エステルおよび二酸化ケイ素からなる群より選択される1種以上の流動化剤を0.02〜3質量%含有する、
方法。
【請求項6】
前記小麦粉調味料における前記小麦粉と前記粉末調味料との質量比が40:60〜85:15である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記粉末調味料が粉末油脂を含む、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
前記小麦粉が造粒小麦粉または分級小麦粉を含む、請求項5〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
容器入り小麦粉調味料の製造方法であって、
安息角33〜54度の小麦粉を調製すること、
該小麦粉と粉末調味料とを混合して安息角33〜54度の小麦粉調味料を調製すること、
該小麦粉調味料を容器に充填すること、
を含み、
該容器は最大幅2〜20mmの振出し孔を1つ以上有する振出し容器であり、
該小麦粉調味料は、ショ糖脂肪酸エステルおよび二酸化ケイ素からなる群より選択される1種以上の流動化剤を0.02〜3質量%含有する、
方法。
【請求項10】
前記小麦粉調味料における前記小麦粉と前記粉末調味料との質量比が40:60〜85:15である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記小麦粉調味料の調製が、前記小麦粉と前記粉末調味料とを混合して粉体混合物を得ることと、該粉体混合物に前記ショ糖脂肪酸エステルおよび二酸化ケイ素からなる群より選択される1種以上を添加して安息角33〜54度の小麦粉調味料を調製することとを含む、請求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
前記粉末調味料が粉末油脂を含む、請求項9〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記小麦粉が造粒小麦粉または分級小麦粉を含む、請求項9〜12のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器から振り出して用いることができる容器入り小麦粉調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
塩分、糖分、粉末香辛料、粉末エキス等の粉末調味料と小麦粉とを含む粉体混合物(以下、小麦粉調味料ということがある)は、例えばから揚げ粉ミックスやムニエルミックスのように、一般にプレミックス製品として市販されている。しかしながら、従来、小麦粉は流動性が低くダマになりやすく、また粉末調味料は凝集性や吸湿性が高い成分を含むため固結や凝集を起こしやすい。そのため、従来の小麦粉調味料は、一般に流動性が低く、さらにはダマや固結を生じやすいため、計量、包装および使用の際の操作性に劣るという問題があった。さらに、小麦粉調味料は、運搬や保存中に振動を与えられることにより、中身の小麦粉成分と調味料成分が分離して不均一な状態になることがあった。このような不均一な小麦粉調味料を調理に使用した場合、得られた調理食品の味や品質が損なわれる可能性がある。
【0003】
から揚げ粉ミックスなどの小麦粉調味料は、一般的には袋に包装され、使用時に必要量を取り出して使用される。しかしながら、使用する都度に袋を開けて必要量のミックス粉を取り出し、再度袋を何らかの手段で封する操作を調理中に行うことは煩雑な作業である。さらに、必要な量のミックス粉がうまく取り出せないことも少なくない。例えば、粉を取り出す量が足りず何度も取り出し操作を要したり、逆に多量に取り出し過ぎて粉を無駄にすることがあった。
【0004】
特許文献1〜4には、小麦粉を振出し容器に充填することが開示されている。しかし、これらは基本的に調理中の小麦粉の操作性の改善を目的とする。特許文献5〜6には、配合を調節することで固結を防止した調味料を容器に入れて使用することが開示され、また特許文献7には、粉末調味料を油脂で顆粒化した顆粒状調味料が、安息角37〜39度の範囲で流動性に優れていることが開示されているが、小麦粉と混合した調味料の性質の改善については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−266862号公報
【特許文献2】実用新案出願公開平4−48179号公報
【特許文献3】国際公開公報第2015/119294号
【特許文献4】国際公開公報第2015/119295号
【特許文献5】特開2005−270058号公報
【特許文献6】特開平5−84048号公報
【特許文献7】特開昭58−116652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討の結果、単に従来の小麦粉と粉末調味料とを混合して振出し容器に詰めても、適量の小麦粉調味料を振り出すことは難しく、さらには振出し操作による振動のために容器内で小麦粉成分と調味料成分が分離してしまい、最終的にはミックスとしての使用に適さなくなることが判明した。小麦粉と粉末調味料を混合した小麦粉調味料には性質が異なる複数種の粉体が混合されているため、それら性質の異なる紛体の各々が常に一定の割合で容器から振り出されることが、容器入り小麦粉調味料にとっては重要である。
【0007】
本発明者らは、容器から少量ずつ振り出すことができ、かつ容器内で小麦粉成分と調味料成分とが分離しにくく、両成分の配合比を常に一定の割合に保った状態で容器から振り出すことができる小麦粉調味料の提供を課題として、鋭意検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その結果、本発明者らは、特定の大きさの振出し孔を有する振出し容器に、特定の安息角を有する小麦粉調味料を充填すれば、小麦粉成分と粉末調味料成分の分離が起こらず、かつ少量かつ一定量の小麦粉調味料を振り出すことができることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、以下を提供する:
容器入り小麦粉調味料であって、
容器と、該容器に充填された小麦粉調味料とを含み、
該小麦粉調味料が小麦粉および粉末調味料を含む粉体混合物であり、該小麦粉調味料の安息角が33〜54度であり、かつ該容器が最大幅2〜20mmの振出し孔を1つ以上有する振出し容器である、
容器入り小麦粉調味料。
【0010】
また本発明は、以下を提供する:
小麦粉調味料の適用方法であって、
容器に充填された小麦粉調味料を該容器から振り出して対象に適用することを含み、
該小麦粉調味料が小麦粉および粉末調味料を含む粉体混合物であり、該小麦粉調味料の安息角が33〜54度であり、かつ該容器が最大幅2〜20mmの振出し孔を1つ以上有する振出し容器である、
方法。
【0011】
また本発明は、以下を提供する:
容器入り小麦粉調味料の製造方法であって、
安息角33〜54度の小麦粉を調製すること、
該小麦粉と粉末調味料とを混合して安息角33〜54度の小麦粉調味料を調製すること、
該小麦粉調味料を容器に充填すること、ここで該容器は最大幅2〜20mmの振出し孔を1つ以上有する振出し容器である、
を含む、方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の容器入り小麦粉調味料は、所要量の小麦粉調味料を容器から振り出して、食材等対象物の狙った部分に均等に振りかけることを可能にする。また本発明の容器入り小麦粉調味料は、小麦粉調味料が容器内で固結や凝集を起こしたり、振出し孔に詰まったりしにくいため、容器を何度もまたは強く振ったりしなくとも、軽度の操作で一定量の小麦粉調味料を振り出すことを可能にする。さらに本発明の容器入り小麦粉調味料は、容器内で小麦粉と粉末調味料等が分離しないので、小麦粉成分と調味料成分とが適正な割合で配合されたミックスを提供することを可能にする。本発明の容器入り小麦粉調味料により、各種の調理作業がより簡便かつ経済的になる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の容器入り小麦粉調味料は、特定の大きさの振出し孔を1つ以上有する振出し容器に充填されており、該容器の振出し孔から振り出すことによって対象に少量ずつ適用(例えば、ふりかけたりまぶしたり)するために使用される小麦粉調味料である。本発明において振出しとは、容器の開口部を下方に向けて振動を与える操作に限定されず、容器の開口部を真下にする操作や、容器を斜めにする操作、容器を逆さにしたり傾けて振動を与える操作なども包含する。本発明の容器入り小麦粉調味料を適用する対象としては、調理前もしくは調理中の食材や食品、および鍋、天板、まな板、皿等の調理器具などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
好適には、本発明の容器入り小麦粉調味料は、食品や食材の味付け、とろみ付け、被覆等のために使用され得る。本発明の容器入り小麦粉調味料は、例えば、ムニエル等の焼き物、もしくはから揚げやフライ等の揚げ物の衣材として、焼き調理や炒め調理の際の味付け材として、またはスープ等の液体料理のとろみ付け材として、少量の小麦粉調味料を食品や食材に適用するときに使用することができる。
【0015】
本発明の容器入り小麦粉調味料は、容器に充填された小麦粉調味料であり、容器と、該容器に充填された小麦粉調味料とを含む。本明細書における小麦粉調味料とは、小麦粉と粉末調味料とを含む粉体混合物を意味する。
【0016】
前記小麦粉調味料に含まれる小麦粉の原料となる小麦としては、硬質系小麦、軟質系小麦、中間質系小麦、普通系小麦、デュラム小麦などのいかなる系統に属する小麦であってもよく、またそれらに属する何れの品種の小麦であってもよい。例えば、カナダ産のウェスタンレッドスプリング(CW)、米国産のダークノーザンスプリング(DNS)、ハードレッドウィンター(HRW)、オーストラリア産のプライムハード(PH)等の硬質系小麦;日本産の普通系小麦;オーストラリア産のスタンダードホワイト(ASW)等の中間質系小麦;米国産ウエスタンホワイト(WW)等の軟質系小麦;デュラム小麦などを挙げることができるが、これらに限定されない。上記に挙げた小麦は、いずれかの品種もしくは系統を単独で使用してもよく、または2種以上の異なる品種もしくは系統を併用してもよい。該小麦粉調味料に含まれる小麦粉は、上記に挙げた小麦を製粉して得られる小麦粉であればよい。該小麦粉調味料に含まれる小麦粉の例としては、強力小麦粉、準強力小麦粉、中力小麦粉、薄力小麦粉およびデュラム小麦粉、ならびにそれらの混合物が挙げられ、好ましくは薄力小麦粉である。上記に挙げた小麦粉は、セモリナ粉を含んでいてもよい。
【0017】
前記小麦粉調味料に含まれる小麦粉は、上記小麦粉を造粒処理して得られた造粒小麦粉であってもよく、または製粉後に造粒処理されていない非造粒小麦粉であってもよく、またはそれらの混合物であってもよい。あるいは、該小麦粉調味料に含まれる小麦粉は、当該造粒小麦粉および/または非造粒小麦粉を分級して得られた分級小麦粉であってもよく、または非分級小麦粉であってもよく、またはそれらの混合物であってもよい。上記小麦粉調味料に含まれる小麦粉がセモリナ粉または造粒小麦粉であると、吸湿性の高い粉末調味料に起因する小麦粉調味料の固結や凝集を低減できるため好ましい。なお、以下の本明細書においては、特に区別して使用しない限り、「小麦粉」という語は、非造粒および造粒小麦粉、ならびに非分級および分級小麦粉を包含する。
【0018】
前記小麦粉調味料に含まれる粉末調味料としては、調理に使用される調味料の粉末であればよく、例えば、砂糖;塩;粉末醤油、粉末味噌、粉末中華ソース、みりん粉末等の粉末ソース;アミノ酸系うまみ調味料、核酸系うまみ調味料等の粉末だし;こしょう、しょうが、にんにく、クミン、ナツメグ、カレー粉等の粉末香辛料;畜肉エキス、魚介類エキス、野菜エキス等の粉末エキス;粉末油脂;およびそれらの混合物、などが挙げられ、さらに、魚介や肉の調味用の、または酢豚、八宝菜、チャーハン等のための調味料ミックス;パスタソース用ミックス;コーンスープ、クリームスープ、中華スープ等のスープ用のミックス、などの調味料プレミックス粉末も使用することができる。本発明で使用される粉末調味料の種類や組成は特に限定されず、該小麦粉調味料の用途に応じて適宜選択することができる。
【0019】
好ましくは、該粉末調味料は粉末油脂を含有する。前記小麦粉調味料中における粉末油脂の含有量は、好ましくは1〜8質量%、より好ましくは2〜5質量%である。前記小麦粉調味料が粉末油脂を含有することにより、該小麦粉調味料の味に深みが付与される。粉末油脂としては、澱粉、食物繊維、カゼイン等の担体に食用油脂を含浸させて乾燥して粉末化したものや、カプセル化したものが挙げられるが、食用油脂を粉末化したものであれば、その種類や形態は特に限定されない。
【0020】
好ましくは、前記小麦粉調味料中における前記小麦粉と前記粉末調味料との質量比(該小麦粉と粉末調味料の合計を100としたとき、以下同じ)は、40:60〜85:15である。当該比率外では、該小麦粉調味料の安息角を後述する範囲に調整することが困難な場合があり、また該小麦粉調味料中で該小麦粉と該粉末調味料とが分離しやすくなる。該小麦粉と該粉末調味料とのより好ましい質量比は、55:45〜80:20である。70:30〜80:20がさらに好ましい。
【0021】
本発明において、前記小麦粉調味料は、用途、目的に応じて、前記小麦粉および前記粉末調味料以外のその他の粉体を含有することができる。当該その他の粉体としては、ライ麦粉、米粉、コーンフラワー、大麦粉、豆粉等の小麦粉以外の穀粉類;タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉等の澱粉類、およびこれらのα化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、アセチル化澱粉、架橋処理澱粉等の加工澱粉類;蛋白質;デキストリンなどの糖類;増粘剤;乳化剤;膨張剤;活性グルテン;酵素、などが挙げられる。上記小麦粉調味料中における当該その他の粉体の含有量は、好ましくは20質量%未満、より好ましくは15質量%未満である。
【0022】
前記小麦粉調味料中における前記小麦粉と前記粉末調味料の含有量は、合計量として、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0023】
本発明において、前記小麦粉調味料に含まれる小麦粉は、好ましくは平均粒子径が40〜700μm、より好ましくは70〜450μmのものである。また前記小麦粉調味料に含まれる粉末調味料およびその他の紛体の平均粒子径は、好ましくは10〜500μmである。本明細書において、平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法により算出された粒径の体積平均径(MV)をいう。
【0024】
前記小麦粉調味料は、粉体全体として、33〜54度、好ましくは38〜53度、より好ましくは42〜52度の安息角を有する。該小麦粉調味料の安息角が33度未満であると、一度の振出し操作で容器から多量の小麦粉調味料が振り出されたり、容器内で小麦粉と粉末調味料の分離が起こりやすくなるなど、容器入り小麦粉調味料の操作性が低下する。一方、該小麦粉調味料の安息角が54度を超えると、容器からの振出し量が過少になり、また容器内で小麦粉調味料が固結したり凝集しやすくなるため、やはり容器入り小麦粉調味料の操作性が低下する。本明細書において、粉体の安息角とは、好ましくはパウダテスタPT−X(ホソカワミクロン製)を用いて以下の手順に従って測定された値である:(安息角の測定方法)試料粉体100gを、開口部の径5mmの漏斗を振動幅0.5mmで用いて、高さ7.5cmから直径8cmの円形テーブルの上に堆積させる。このとき、テーブルの端部から堆積物があふれる程度に堆積させる。テーブル上に堆積した堆積物の円錐の稜線と円形テーブル面との間に形成された角度をレーザー光で測定した値を、該紛体の安息角とする。なお参考として、上記手順に従って測定した一般的な小麦粉の安息角は、薄力粉および強力粉のいずれも55度〜56度程度である。
【0025】
小麦粉調味料の安息角を上記範囲に調整する手法としては、小麦粉調味料全体としての安息角が所望の範囲になるように、その中に含まれる粉体成分の表面性状や組成を調節する方法が挙げられる。例としては、小麦粉調味料の原料となる小麦粉を造粒や分級するなどしてその粒子径や粒度分布を調整し、上記範囲の安息角を有する小麦粉を調製した後、この小麦粉に粉末調味料等の他の成分を加えてベースとなる紛体混合物を製造し、次いで、この紛体混合物に後述するショ糖脂肪酸エステルまたは二酸化ケイ素などの流動化剤を適宜加えることによって安息角を調整して、上記範囲の安息角を有する小麦粉調味料を調製する方法が挙げられる。通常、ショ糖脂肪酸エステルまたは二酸化ケイ素などの流動化剤の添加は小麦粉調味料の安息角を低下させる方向に働く。
【0026】
したがって、前記小麦粉調味料は流動化剤をさらに含有していてもよい。流動化剤を含有することにより、小麦粉調味料の安息角を前述する範囲に調整し易くなり、また該小麦粉調味料中での小麦粉と粉末調味料の分離を低減することができる。流動化剤としては、ショ糖脂肪酸エステルまたは二酸化ケイ素からなる群より選択される1種以上が挙げられ、これらを単独もしくは組み合わせて使用することができる。ショ糖脂肪酸エステルとしては、食用に利用可能なものであればいずれの種類を使用してもよいが、HLB11以下、例えばHLB3〜11のものが好ましく、HLB3〜8のものがより好ましい。二酸化ケイ素も、食用に利用可能なものであればいずれの種類を使用してもよい。前記小麦粉調味料中における流動化剤の含有量は、好ましくは0.02〜3質量%、より好ましくは0.05〜2質量%、さらに好ましくは0.05〜1質量%である。3質量%を超えると、小麦粉調味料に苦味が出ることがある。
【0027】
上記小麦粉調味料の安息角を調整する観点において、該小麦粉調味料に含まれる小麦粉は造粒小麦粉または分級小麦粉を含むことが好ましい。例えば、該小麦粉調味料に含まれる小麦粉は、造粒小麦粉であるか、または造粒小麦粉と非造粒小麦粉との混合物であるか、または分級小麦粉であるか、または分級小麦粉と非分級小麦粉の混合物である。より好適には、該小麦粉調味料に含まれる小麦粉の80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%が造粒小麦粉または分級小麦粉であり、残りがそれ以外の小麦粉である。好適には、該小麦粉調味料に含まれる小麦粉は、全体で33〜54度、好ましくは38〜53度、より好ましくは42〜52度の安息角を有する。
【0028】
本発明で使用される造粒小麦粉は、上述した小麦粉調味料の原料となる小麦粉から公知の手段で製造することができる。さらに、該造粒小麦粉は、該小麦粉原料以外に、他の粉体原料、例えば小麦粉以外の穀粉、澱粉、デキストリン等の糖類、膨張剤、色素粉末などを含有していてもよい。ただし、該造粒小麦粉が小麦粉本来の性質を保つことができ、かつ従来の小麦粉と同様の用途に適用しやすいように、該造粒小麦粉における当該他の粉体原料の含有量はより少ないほうが好ましい。したがって好ましくは、該造粒小麦粉中における該他の粉体原料の含有量は、該小麦粉原料および該他の粉体原料を含めた原料粉全体の40質量%未満、より好ましくは30質量%未満である。言い換えると、該造粒小麦粉中における該小麦粉原料の含有量は、好ましくは60質量%超であり、より好ましくは70質量%超である。
【0029】
造粒小麦粉は、前記小麦粉原料を含む原料粉に水を加えて混合後に乾燥する方法、上記他の粉体原料の全てあるいは一部を含む水をバインダーとして、これを残りの他の粉体原料および小麦粉原料と混合し、乾燥する方法、または上記小麦粉原料を含む原料粉をそのまま圧縮後に破砕する方法などによって製造することができる。造粒小麦粉を造粒するための方法としては、特に限定されないが、転動造粒、流動層造粒、攪拌造粒、噴霧乾燥造粒などを用いることができる。造粒工程の例としては、該原料粉を縦型のミキサーで攪拌しながら徐々に加水して造粒する工程や、該原料粉をフィーダー型の横型ミキサーで攪拌移送しながら、移送途中に噴霧装置等で加水し、混合と移送を同時に行いながら造粒する工程などが挙げられるが、これらに限定されない。簡便性の点からは、攪拌造粒が好ましい。上記に挙げた各造粒方法は、いずれも市販の造粒装置を用いることで実施することができる。なお、造粒後に必要に応じ、造粒小麦粉を整粒処理や乾燥処理することもできる。
【0030】
本発明に使用される造粒小麦粉の好ましい例としては、例えば、特開2015−200207号公報、特開2015−200208号公報、または特許文献3に開示されるものを挙げることができる。
【0031】
本発明において、前記小麦粉調味料は、振出し孔を1つ以上有する振出し容器に充填された状態で提供される。当該振出し容器は、片手で持ち上げて内部の小麦粉調味料の振出し操作を行うことのできる大きさおよび形状の容器であればよく、例えば、一般的な調味料容器や香辛料容器のような大きさおよび形状の容器が好ましい。より詳細には、直径または一辺の長さが20〜100mm、高さ80〜200mm程度の円柱状、楕円柱状、角柱状、またはそれらを組み合わせた形状で、50〜500g程度の小麦粉調味料を充填できる大きさを有する自立型の容器であることが好ましい。容器の素材としては、小麦粉調味料を保存可能であって、かつ振出し操作の際に変形しない素材であれば特に限定されず、例えばプラスチック、金属、紙などが挙げられる。
【0032】
前記振出し容器の1つ以上の振出し孔の形状は、特に限定されないが、円形、三角形、四角形、多角形などが挙げられる。該1つ以上の振出し孔の各々の大きさは、最大幅として、好ましくは2〜20mm、より好ましくは3〜12mm、さらに好ましくは4〜12mmであり、さらに好ましくは4〜8mmであり、また該振出し孔の数は、好ましくは2〜9個、より好ましくは4〜7個である。該振出し孔の大きさが小さすぎる場合や孔の数が少ない場合、振出し量が過少になりやすいか、または孔が小麦粉調味料で詰まりやすくなり、逆に該振出し孔の大きさが多すぎる場合や孔の数が多い場合、小麦粉調味料が、一度の振出し操作で多量に振り出されて対象に過剰に振りかかるか、または必要以上に使用されて経済性が低下するだけでなく、舞い上がったり跳ねたりして周辺を汚損しやすくなる。本発明に使用される振出し容器は、好ましくは直径2〜20mmの円形の振出し孔を2〜9個有し、より好ましくは直径3〜12mmの円形の振出し孔を4〜7個有し、さらに好ましくは直径4〜12mmの円形の振出し孔を4〜7個有し、さらに好ましくは直径4〜8mmの円形の振出し孔を4〜7個有する。また好ましくは、本発明に使用される振出し容器は、対角線長さ2〜20mmの略四角形もしくは略多角形の振出し孔を2〜9個有し、より好ましくは対角線長さ3〜12mmの略四角形もしくは略多角形の振出し孔を4〜7個有し、さらに好ましくは対角線長さ4〜12mmの略四角形もしくは略多角形の振出し孔を4〜7個有し、さらに好ましくは対角線長さ4〜8mmの略四角形もしくは略多角形の振出し孔を4〜7個有する。
【0033】
さらに、前記振出し容器は、前記1つ以上の振出し孔とは別に、スプーン取出し部を備えていてもよい。当該スプーン取出し部は、該容器から計量スプーンや茶さじなどにより内部の小麦粉調味料を取り出す際に、あるいはまとまった量の小麦粉調味料を該容器から振り出す際の取り出し口として使用され得る。好ましくは、該振出し容器において、該スプーン取出し部は、該1つ以上の振出し孔とは離れた位置に配置される。例えば、振出し容器の天面上で、一端に振出し孔を配置し、そこから90〜180°ずれた側にスプーン取出し部を設けることができる。
【0034】
前記振出し容器の1つ以上の振出し孔およびスプーン取出し部は、好ましくは開閉可能である。好ましくは、該振出し孔およびスプーン取出し部は、開閉可能な蓋を備えている。当該蓋は、該振出し容器に充填された小麦粉調味料の吸湿を防止することができ、また昆虫などの異物が容器内に侵入することを防止することができる。当該蓋の種類は特に限定されないが、片手で簡便に開閉可能な蓋、例えば、スライド蓋やフラップ蓋が好ましい。また好ましくは、該振出し孔の蓋は、複数の振出し孔を一度に開閉することができる1つの蓋である。該1つ以上の振出し孔の蓋と該スプーン取出し部の蓋とは、共通の蓋であっても独立した別々の蓋であってもよいが、いずれの場合も、該1つ以上の振出し孔と該スプーン取出し部とが同時に開口しないようにできる構造であることが好ましい。例えば、該1つ以上の振出し孔の蓋と該スプーン取出し部の蓋とは、独立して開閉可能な2つのフラップ蓋である。またあるいは、該1つ以上の振出し孔の蓋と該スプーン取出し部の蓋は、該振出し孔と該スプーン取出し部の少なくとも一方が閉じるように動く1つの共通したスライド蓋である。
【0035】
好ましくは、本発明の容器入り小麦粉調味料を容器から振り出した場合、容器の開口部を真下に傾ける1回の振出し操作で、肉や魚等の具材にまぶす際に丁度よい量、例えば約0.1g〜2.4g、好ましくは約0.3〜1.8g、より好ましくは約0.6〜1.4gの小麦粉調味料を振り出すことができる。より多くの量の小麦粉調味料を容器から振り出す場合は、上記振出し操作を繰り返したり、より強く振出し操作を行えばよい。
【実施例】
【0036】
次に本発明をさらに具体的に説明するために実施例を掲げるが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例において、紛体の安息角はパウダテスタPT−X(ホソカワミクロン製)を用いて測定された値であり、平均粒子径はマイクロトラックMT3000II(日機装株式会社)を用いたレーザー回折・散乱法により算出された粒径の体積平均径(MV)である。
【0037】
(製造例1〜17:容器入り小麦粉調味料)
市販の小麦粉(薄力粉:日清製粉製「フラワー」;平均粒子径54μm;安息角56.8度)1kgを容器に入れ、ハンドミキサーで攪拌しながら霧吹きで加水し、その後恒温槽で乾燥し、平均粒子径約177μm、安息角が43.8度の造粒小麦粉を製造した。この造粒小麦粉と表1〜2記載の各原料を混合して、表1〜2記載の安息角を有する小麦粉調味料を得た。各小麦粉調味料を、それぞれ直径50mm、高さ120mmの円筒容器に100gずつ充填した後、該容器の天面に直径5mmの振出し孔を5個有する直径50mm、厚さ0.2mmの円形プラスチック板をはめ込み、振出し容器入り小麦粉調味料を製造した。
【0038】
(容器入り小麦粉調味料の評価)
下記試験例1〜3により、製造例1〜17の各容器入り小麦粉調味料を評価した。
【0039】
試験例1:振出し量の測定
製造例1〜17の各容器入り小麦粉調味料を、水平に設置した平滑な平面の上に振り出した。振出しは、平面中央に設けた目印の直上10cmから、目印に向けて、容器の開口部を真下に傾ける操作を1回行った。振り出された小麦粉調味料の量を測定して振出し量とした。振出し量を下記に従ってA〜Dの4段階で評価した。
A 0.6〜1.4g
B 0.3g以上0.6g未満又は1.4g超1.8g以下
C 0.1g以上0.3g未満又は1.8g超2.4g以下
D 0.1g未満又は2.4g超
【0040】
試験例2:粉体の分離試験
製造例1〜17の各容器入り小麦粉調味料を、振盪機に水平に固定し、80rpmで2分間浸透した。振盪終了後の容器内の小麦粉と粉末調味料の分布状態を、下記A〜Dの4段階で評価した。
A 小麦粉と粉末調味料がほぼ均一に混ざり、ムラがほとんどない
B 小麦粉と粉末調味料の混ざり具合にややムラがある
C 小麦粉と粉末調味料の混ざり具合にムラが多い
D 小麦粉と粉末調味料が層状に分離しており、振出しに不適
【0041】
試験例3:味覚試験
製造例1〜17の各容器入り小麦粉調味料を10名のパネラーに食してもらい、下記A〜Dの4段階で評価した。
A 味がちょうどよい
B 味がやや濃いまたはやや薄い
C 味が濃いまたは薄い
D 味が非常に濃いまたは非常に薄く不良
【0042】
試験例1〜3の結果を表1〜2に示す。なお表2には、製造例5の結果を再掲する。製造例1〜11の対比から、小麦粉調味料の安息角が33〜54度、好ましくは38〜53度、さらに好ましくは42〜52度であると、振出し量、分離試験、味覚試験のいずれもが良好な結果になることが分かった。また、製造例5と6の対比から、小麦粉と調味料が同じ配合比率であっても、澱粉を含まない方が良好であることが分かる。また、製造例12と製造例15の対比から、油脂を加えると特に味覚が良好になることが分かった。また、製造例5と製造例16〜17の対比から、安息角が同等であっても、小麦粉と調味料の質量比が40:60〜85:15の範囲であると結果が良好であることが分かる。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
試験例4:振出し容器の検討
振出し容器の振出し孔の寸法を表3のとおりに変更した以外は、製造例5と同様の手順で振出し容器入り小麦粉調味料を製造した(製造例18〜30)。各容器入り小麦粉調味料について、試験例1と同様の手順で振出し量を評価した。その結果を表3に示す。なお、表3には製造例5の結果を再掲する。
【0046】
【表3】
【0047】
試験例5
製造例1と同様の手順で、安息角が52.8度の造粒小麦粉を製造し、これに表4記載の各原料を混合して表4記載の安息角を有する小麦粉調味料を得、次いで容器に充填して振出し容器入り小麦粉調味料(製造例31〜42)を製造した。試験例1〜3と同様の手順で容器入り小麦粉調味料の振出し量の測定、分離試験及び味覚試験を行った。
結果を表4に示す。表1〜2の結果との対比より、小麦粉の安息角が異なっても、小麦粉調味料の安息角が33〜54度、好ましくは38〜53度、さらに好ましくは42〜52度の範囲で、又は小麦粉と調味料の質量比が40:60〜85:15の範囲で結果が向上することが示された。
【0048】
【表4】
【0049】
試験例6:振出し容器の検討
振出し容器の振出し孔の寸法を表5のとおりに変更した以外は、製造例35と同様の手順で振出し容器入り小麦粉調味料を製造した(製造例43〜55)。各容器入り小麦粉調味料について、試験例1と同様の手順で振出し量を評価した。その結果を表5に示す。なお、表5には製造例35の結果を再掲する。
【0050】
【表5】