(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1接合部は、前記第1延線クランプの側面に設けられた第1接合面と、前記延線クランプ用連結板材の側面に設けられた第1被接合面との接合によって形成されており、
前記第2接合部は、第2延線クランプの側面に設けられた第2接合面と、前記延線クランプ用連結板材の側面に設けられた第2被接合面との接合によって形成されている、請求項3記載の延線クランプ接続構造体。
前記移動機構は、前記支持部に支持された前記延線クランプと前記回転軸部材との間に延線クランプ用連結板材を介在させた状態で、前記支持部を前記回転軸部材に近接するように移動して、前記回転軸部材を前記延線クランプ用連結板材に押圧させる、請求項5記載の可動型フリクションスポット接合装置。
【背景技術】
【0002】
従来、送電線を建設するには、敷設される線路の下に様々な建設物や使用中の用地があるため、それらを避けて、電線を空中に位置しながら鉄塔間に敷設する必要がある。このため、鉄塔間への敷設の際、地上とのクリアランスを確保しながら電線に張力をかけるために、延線作業の仮接続時に、電線の端部に延線クランプが取り付けられる。
【0003】
従来の延線クランプとしては、例えば、電線の端部をくさびによって固定するくさび型延線クランプや、電線の端部のうち鋼線の部分を鋼線圧縮部に挿入して加締めると共に、アルミニウム線の部分をアルミニウム線圧縮部に挿入して加締める圧縮型延線クランプが知られている(特許文献1)。くさび型延線クランプや圧縮型延線クランプはいずれも、延線作業の本接続において碍子連に電線を引き留めた後は不要となり、電線の端部から取り外される。また、これらクランプのいずれも、通常、鉄塔間への施設の際に電線に張力をかけるのに十分な機械的特性を有するように設計され、クランプ内に電気を流すように設計されていない。
【0004】
そこで、延線クランプの機能を持ちつつ、碍子連に電線を引き留めた後に電線端部から取り外す必要が無く、加えてクランプ内に電気を流すことも可能にした金車通過型引留クランプ(圧縮型引留クランプ)がある。この金車通過型引留クランプを用いると、新たに敷設される電線(本線)の端部と引留クランプとの圧縮を地上で行うことができるため、鉄搭上での上記圧縮作業を省略することができる。また、例えば耐張鉄塔に用いられる金車通過型引留クランプには、ジャンパソケットが取り付けられる接続部が設けられており、金車通過型引留クランプを碍子連に引き留めて連結した後、所定長さのジャンパ線の端部にジャンパソケットを圧縮し、ジャンパソケットを金車通過型引留クランプの接続部に接合することで、電線(本線)とジャンパ線との電気的な接続が可能となっている(特許文献2)。
【0005】
また、上記のような引留クランプとジャンパソケットとの接合方法において、フリクションスポット接合(以下、「FSJ」ともいう)が用いられることがある。FSJとは、一般に電車などの車両製作で用いられる接合方法の一つであり、機械的に回転する工具で金属同士を接合する技術である。このような接合方法としては、例えば、引留クランプとジャンパソケットとの接続部において、クランプ本体の側面とジャンパソケットの側面との間に金属体を配置し、クランプ本体と金属体、及びジャンパソケットと金属体とを、それぞれFSJにより点接合することで、引留クランプとジャンパソケットとの電気的な接続を可能とする方法が提案されている(特許文献3)。
【0006】
また、鉄塔の碍子連に引留クランプを介して引留められた電線同士をジャンパ線で接続する際には、ジャンパ装置が用いられる。ジャンパ装置としては、例えば、鉄塔両側の送電線本線を電気的に接続するジャンパ導体の全てを電線(撚線)で構成する方式、すなわちジャンパ導体がジャンパ線のみからなる撚線式ジャンパ装置や、ジャンパ線全体の中間部を水平吊架材により水平に吊架した吊架式ジャンパ装置、あるいは、ジャンパ線の中央部をジャンパパイプに置き換えたパイプ式ジャンパ装置がある(特許文献4)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術では、上述のように、碍子連に電線を引留めた後は延線クランプが不要となるため、これを取り除くことが必要であり、鉄塔上で延線クランプの除去作業が必要となる。また、除去作業の際に切断された電線は、隣接する電線(例えば、ジャンパ線)との電気的接続が必要となる。このとき、圧縮型引留クランプや圧縮型ジャンパスリーブ等を用いて、鉄塔上或いは空中で重さ50kg程度の工具を用いて圧縮作業を行うため、当該作業が困難であると共に、重労働且つ長い作業時間を要する。また、当該作業時における作業者の安全性を確保しなければならず、作業時間や手間がより一層増大することとなる。
【0009】
また、一般に、金車通過型引留クランプは、碍子連の先端で電線を引留める構成であるため、電線が一延線区間の電線実長に合致する長さとなるように事前に精度の高い電線計尺を行う必要があり、その作業が煩雑である。また、特許文献2の技術では、圧縮型引留クランプとジャンパソケットとを座標変換金具を介してジャンパボルトで締結しているため、上記クランプとソケットとの界面の劣化により、接続部での電気抵抗の上昇や発熱の恐れが懸念されることから、定期的な保守管理が必要である。
【0010】
また、特許文献3の技術では、FSJによって引留クランプとジャンパソケットとの電気的な接続が可能としているが、一般的なFSJ装置はいわゆる据え置き型が多く、持ち運び型ではないため、鉄塔上或いは空中でFSJを行うことは事実上困難である。よって、引留クランプとジャンパソケットとのFSJを、鉄塔上或いは空中で容易に且つ安全に作業することが可能なFSJ装置が求められている。
【0011】
更に、特許文献4の技術では、ジャンパ線と鉄塔との間、或いはジャンパ線同士で絶縁間隔を確保しなければならず、風の発生時においても上記絶縁間隔が確保されるように電線計尺を行う必要があり、ジャンパ装置の設計が煩雑である。
【0012】
本発明の目的は、隣接する電線との容易な電気的接続を実現すると共に、塔上或いは空中でも作業者の安全性を確保しつつ接続作業を容易に且つ短時間で行うことができ、また、電気的或いは機械的な接続信頼性を向上することができ、更には延線時の電線計尺を容易とすることができる延線クランプ、延線クランプ接続板材、延線クランプ接続構造体及びフリクションスポット接合装置、並びに延線クランプ接続工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の延線クランプは、長手方向一端部側から電線を挿入した状態で圧縮することで前記電線と接続可能な長尺状の筒状部と、前記筒状部の長手方向他端部側に設けられ、外部と係合して前記電線を引留め可能な係合部と、前記筒状部の側面に設けられ、自己の延線クランプと他の延線クランプとを連結する延線クランプ用連結板材をフリクションスポット接合によって接合可能な接合面とを有することを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の延線クランプ用連結板材は、第1延線クランプと第2延線クランプとを連結する延線クランプ用連結板材であって、長尺状の板材本体と、前記板材本体の長手方向一端部側に設けられ、前記第1延線クランプとのフリクションスポット接合時に回転軸部材が挿入可能な少なくとも1つの第1の穴と、前記板材本体の長手方向他端部側に設けられ、前記第2延線クランプとのフリクションスポット接合時に回転軸部材が挿入可能な少なくとも1つの第2の穴と、前記板材本体の側面に設けられ、前記板材本体の厚み方向に関して、前記少なくとも1つの第1の穴の少なくとも直下に位置する第1被接合面と、前記板材本体の前記側面に設けられ、前記板材本体の厚み方向に関して、前記少なくとも1つの第2の穴の少なくとも直下に位置する第2被接合面とを有することを特徴とする。
【0015】
また、上記目的を達成するために、本発明の延線クランプ接続構造体は、第1延線クランプと、第2延線クランプと、前記第1延線クランプと前記第2延線クランプとを連結する延線クランプ用連結板材と、前記第1延線クランプと前記延線クランプ用連結板材とがフリクションスポット接合によって接合されている第1接合部と、前記第2延線クランプと前記延線クランプ用連結板材とがフリクションスポット接合によって接合されている第2接合部とを備えることを特徴とする。
【0016】
前記第1接合部は、前記第1延線クランプの側面に設けられた第1接合面と、前記延線クランプ用連結板材の側面に設けられた第1被接合面との接合によって形成されており、前記第2接合部は、第2延線クランプの側面に設けられた第2接合面と、前記延線クランプ用連結板材の側面に設けられた第2被接合面との接合によって形成されているのが好ましい。
【0017】
また、上記目的を達成するために、本発明の可動型フリクションスポット接合装置は、延線クランプと延線クランプ用連結板材とを接合する可動型フリクションスポット接合装置であって、回転可能に設けられた回転軸部材と、前記回転軸部材の軸方向に対して前記延線クランプの長手方向が垂直となる状態で当該延線クランプを支持可能な支持部と、前記支持部と前記回転軸部材とを相対的に移動して、前記支持部に支持された前記延線クランプに前記回転軸部材を押圧可能な移動機構とを備えることを特徴とする。
【0018】
前記移動機構は、前記支持部に支持された前記延線クランプと前記回転軸部材との間に延線クランプ用連結板材を介在させた状態で、前記支持部を前記回転軸部材に近接するように移動して、前記回転軸部材を前記延線クランプ用連結板材に押圧させることが好ましい。
【0019】
また、上記目的を達成するために、本発明の延線クランプ接続工法は、第1延線クランプの第1筒状部に第1電線を挿入した状態で当該第1筒状部を圧縮して、前記第1延線クランプと前記第1電線とを接続する第1電線圧縮工程と、第2延線クランプの第2筒状部に第2電線を挿入した状態で当該第2筒状部を圧縮して、前記第2延線クランプと前記第2電線とを接続する第2電線圧縮工程と、前記第1延線クランプと延線クランプ用連結板材とをフリクションスポット接合にて接合する第1接合工程と、前記第2延線クランプと前記延線クランプ用連結板材とをフリクションスポット接合にて接合する第2接合工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、隣接する電線との容易な電気的接続を実現すると共に、塔上或いは空中で作業者の安全性を確保しつつ接続作業を容易に且つ短時間で行うことができ、また、電気的或いは機械的な接続信頼性を向上することができ、更には延線時の電線計尺を容易とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1(a)は、本発明の実施形態に係る延線クランプの構成の一例を概略的に示す斜視図であり、
図1(b)は、
図1(a)の延線クランプに電線が接続された状態を示す斜視図である。
【0024】
図1(a)に示すように、延線クランプ1は、長手方向一端部11A側から電線12を挿入した状態で圧縮することで電線12と接続可能な長尺状の筒状部11と、筒状部11の長手方向他端部11B側に設けられ、外部と係合して電線12を引留め可能な係合部13と、筒状部11の側面11aに設けられ、自己の延線クランプ1(以下、「第1延線クランプ」ともいう)と他の延線クランプ(以下、「第2延線クランプ」ともいう)とを連結する延線クランプ用連結板材3をフリクションスポット接合(以下、「FSJ」ともいう)によって接合可能な接合面14とを有する。
【0025】
筒状部11は、電線12の先端部12Aのうちの外周部の金属線を圧縮可能な第1圧縮部111と、その内部の他の金属線を圧縮可能な第2圧縮部112とを有する。電線12の構成は、特に制限はないが、例えば外周部にアルミニウム線が配置され、その内部に鋼線が配置された構成が挙げられる。この場合、第1圧縮部111は、電線12の先端部のうちの外周部のアルミニウム線を圧縮可能に構成され、第2圧縮部112は、内部の鋼線を圧縮可能に構成される。
【0026】
筒状部11は、例えば、その外周面の径方向断面において六角形状等の多角形状を有し、内周面の径方向断面において円形状を有している。第1筒状部11の外周面の径方向断面及び内周面の径方向断面における形状は、特に制限はなく、上記形状以外の形状であってもよい。
【0027】
係合部13は、筒状部11の一端部11Aに取り付けられた基部131と、基部131から筒状部11の長手方向外方に向かって延出した延出部132とを有している。基部131は、例えば延出部132とは反対側に設けられた断面略六角形状の凸部を有しており、当該凸部が筒状部11の他端部11Bと圧縮接合されることで、係合部13が筒状部11に固定される。第1延出部132には貫通孔133が設けられており、例えば碍子連の端部に設けられた金具(不図示)が貫通孔133と係合する。
【0028】
延線クランプ1は、金属で構成されており、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されている。アルミニウムとしては、例えばA1050、A1070などのいわゆる純アルミニウム(純度99%以上)が挙げられる。筒状部11と係合部13は、異なる金属材料で構成されていてもよく、例えば筒状部11がアルミニウム又はアルミニウム合金で構成され、係合部13は鋼(Fe)で構成されている。
【0029】
上記のように構成される延線クランプ1において、電線12の先端部12Aを筒状部11に挿入した状態で当該筒状部11を圧縮することで、延線クランプ1が電線12の先端部12Aに機械的且つ電気的に接続される(
図1(b))。延線クランプ1は、クランプ内に電気を流すことが可能であり、延線クランプ1自体を外部と接続することで、電線12を外部と電気的に接続することが可能となっている。また、延線クランプ1は金車通過型のクランプであり、電線12の先端部12Aと延線クランプ1との圧縮を地上で行うことが可能となっている。
【0030】
次に、上記延線クランプ1を備える延線クランプ接続構造体を、
図2を用いて説明する。
図2(a)は、本実施形態に係る延線クランプ接続構造体を構成の一例を概略的に示す平面図であり、
図2(b)は側面図、
図2(c)は、
図2(b)の線I−Iに沿う断面図である。
図2の延線クランプ接続構造体は、上記延線クランプ1と同様の構成を有する延線クランプを2つ備えている。
【0031】
図2(a)〜
図2(c)に示すように、延線クランプ接続構造体2は、第1延線クランプ1−1と、第2延線クランプ1−2と、第1延線クランプ1−1と第2延線クランプ1−2とを連結する延線クランプ用連結板材3と、第1延線クランプ1−1と延線クランプ用連結板材3とがFSJによって接合されている第1接合部4−1,4−1と、第2延線クランプ1−2と延線クランプ用連結板材3とがFSJによって接合されている第2接合部4−2,4−2とを備える。
【0032】
第1延線クランプ1−1は、長手方向一端部11A−1側から第1電線12−1を挿入した状態で圧縮することで第1電線12−1と接続された長尺状の第1筒状部11−1と、第1筒状部11−1の長手方向他端部11B−1側に設けられ、外部と係合して第1電線12−1を引留め可能な係合部13−1とを有する。
【0033】
第2延線クランプ1−2は、長手方向一端部11A−2側から第2電線12−2を挿入した状態で圧縮することで第2電線12−2と接続された長尺状の第2筒状部11−2と、第2筒状部11−2の長手方向他端部11B−2側に設けられ、外部と係合して第1電線12−2を引留め可能な係合部13−2とを有する。
【0034】
図3は、
図2(b)の破線部分における第1接合部4−1及び第2接合部4−2の部分拡大断面図である。
第1接合部4−1は、第1延線クランプ1−1の側面11a−1に設けられた第1接合面14−1と、延線クランプ用連結板材3の側面3aに設けられた第1被接合面3a−1との接合によって形成されている。また、第2接合部4−2は、第2延線クランプ1−2の側面11a−2に設けられた第2接合面14−2と、延線クランプ用連結板材3の側面3aに設けられた第2被接合面3a−2との接合によって形成されている。
【0035】
第1接合部4−1には、FSJ時に使用される後述する回転軸部材の先端部形状に対応する凹部5−1が形成されている。凹部5−1は、段付き形状を有する円筒型の穴であり、第1延線クランプ1−1の幅方向内方に向かって設けられている。また、第2接合部4−2には、FSJ時に使用された後述する回転軸部材の先端部形状に対応する凹部5−2が形成されている。凹部5−2は、凹部5−1と同様、段付き形状を有する円筒型の穴であり、第2延線クランプ1−2の径方向内方に向かって設けられている。本実施形態では、凹部5−2の形状及び寸法は、凹部5−1の形状及び寸法と同じであるが、これに限らず、凹部5−1の形状及び寸法と異なっていてもよい。
【0036】
FSJによって第1接合部4−1を形成する際、延線クランプ用連結板材3の金属と第1延線クランプ1−1の金属との塑性流動が生じてこれらが混ざり合うことにより、延線クランプ用連結板材3の一部と第1延線クランプ1−1の一部とが金属的に一体化される。よって、第1接合部4−1では、第1延線クランプ1−1と延線クランプ用連結板材3との金属的な結合によってこれらの間に界面が無い状態となっている。また、FSJによって第2接合部4−2を形成する際にも、延線クランプ用連結板材3の金属と第2延線クランプ1−2の金属との塑性流動が生じ、延線クランプ用連結板材3の一部と第2延線クランプ1−2の一部とが金属的に一体化される。よって、第2接合部4−2でも、第2延線クランプ1−2と延線クランプ用連結板材3との金属的な結合によってこれらの間に界面が無い状態となっている。これにより、第1延線クランプ1−1と第2延線クランプ1−2とが、延線クランプ用連結板材3を介して電気的或いは機械的に接続される。
【0037】
次に、接合前の延線クランプ用連結板材3の構成を、
図4を用いて説明する。
図4(a)は、本実施形態に係る延線クランプ用連結板材の構成を示す平面図であり、
図4(b)は、側面図、
図4(c)は、
図4(b)の線II−IIに沿う断面図である。
【0038】
図4(a)〜
図4(c)に示すように、延線クランプ用連結板材3は、長尺状の板材本体31と、板材本体31の長手方向一端部31A側に設けられ、第1延線クランプ1−1とのFSJ時に後述の回転軸部材が挿入可能な第1の穴32−1,32−1と、板材本体31の長手方向他端部31B側に設けられ、第2延線クランプ1−2とのFSJ時に回転軸部材が挿入可能な第2の穴32−2、32−2と、板材本体31の側面3aに設けられ、板材本体31の厚み方向に関して、第1の穴32−1,32−1の少なくとも直下に位置する第1被接合面3a−1,3a−1と、延線クランプ用連結板材3の側面3aに設けられ、板材本体31の厚み方向に関して、第2の穴32−2,32−2の少なくとも直下に位置する第2被接合面3a−2,3a−2とを有する。延線クランプ用連結板材3は、第1及び第2延線クランプと同様、金属で構成されており、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されている。アルミニウムとしては、例えばA1050、A1070などのいわゆる純アルミニウム(純度99%以上)が挙げられる。
【0039】
本実施形態では、延線クランプ用連結板材3に2つの第1の穴32−1,32−1が設けられているが、これに限らず、少なくとも1つの第1の穴が設けられていてもよい。また、延線クランプ用連結板材3に2つの第2の穴32−2,32−2が設けられているが、これに限らず、少なくとも1つの第2の穴が設けられていてもよい。
【0040】
第1の穴32−1は、円筒状の穴部32−1aと、該穴部32−1aと連通した円錐状の穴部32−1bとで構成されており、延線クランプ用連結板材3の厚さ方向断面視において五角形状を有している(
図4(b),
図4(c))。穴部32−1aは、FSJ時に後述の回転軸部材の軸部材本体が収容可能に設けられており、穴部32−1bは、軸部材本体の端面に設けられた突起が収容可能に設けられている。穴部32−1bの最奥部から側面3aまでの距離は、特に制限はないが、FSJで強固な接合を実現する観点から、例えば5mmである。
【0041】
第2の穴32−2は、第1の穴32−1と同様、円筒状の穴部32−2aと、該穴部32−2aと連通した円錐状の穴部32−2bとで構成されており、延線クランプ用連結板材3の厚さ方向断面視において五角形状を有している(
図4(b))。本実施形態では第2の穴32−2の形状及び寸法は第1の穴32−1と同じであるが、これに限らず、FSJが可能であれば、第1の穴32−1の形状及び寸法と異なってもよい。
【0042】
上記のように構成される延線クランプ用連結板材3を、第1延線クランプ1−1及び第2延線クランプ1−2の双方とFSJにて接合することで、
図3に示すような延線クランプ接続構造体2が形成される。
【0043】
次に、延線クランプ1と延線クランプ用連結板材3とを接合する可動型フリクションスポット接合装置(以下、「可動型FSJ装置」ともいう)を説明する。
図5(a)は、本実施形態に係る可動型FSJ装置の構成を示す平面図であり、
図5(b)は、側面図である。
【0044】
図5(a)〜
図5(b)に示すように、可動型FSJ装置4は、回転可能に設けられた回転軸部材41と、回転軸部材41の軸方向に対して延線クランプ1の長手方向が垂直となる状態で当該延線クランプ1を支持可能な支持部42と、支持部42と回転軸部材41とを相対的に移動して、支持部42に支持された延線クランプ1に回転軸部材41を押圧可能な移動機構43とを備える。可動型FSJ装置4は、例えば、作業者が持ち運ぶことができるウェアラブルFSJ装置であり、また、塔上或いは空中で作業可能なように、小型且つ軽量な構成となっている。
【0045】
回転軸部材41は、円柱状の回転軸本体41aと、回転軸本体41aの端面に設けられた突起41bとを有している(
図5(a))。回転軸部材41には、遊星ギア44を介してモータ45が連結されており、モータ45の動力が回転軸部材41に伝達されることで、回転軸部材41が回転する。回転軸部材41は、例えば移動機構43によって延線クランプ用連結板材3に押圧された状態で回転することが可能であり、例えば押圧状態において所定回転数、例えば1500rpmで回転する。
【0046】
モータ45は、小型且つ軽量であって出力3kW以上であるのが好ましく、例えばブラシ付きモータである。これにより、回転軸部材41が延線クランプ用連結板材3に押圧されながら回転しているときに、金属による摺動抵抗や粘性抵抗が生じたときにも、FSJを行うのに十分な動力で回転軸部材41を回転させることができる。
【0047】
支持部42は、断面略U字型の溝部42aを有しており、溝部42aに延線クランプ1の少なくとも一部が収容されることで、延線クランプ1が支持される(
図5(b))。本実施形態では、支持部42は溝部42aに底壁42bを有しており、底壁42bは、延線クランプ1の側面11bと当接可能に形成されている。延線クランプ1の側面11bは、延線クランプ用連結板材3と当接する側面11aと対向して配置されている。
【0048】
移動機構43は、回転軸部材41の軸方向に関して支持部42を移動することで、当該回転軸部材41に対して延線クランプ1を位置決めする。この移動機構43は、支持部42に支持された延線クランプ1と回転軸部材41との間に延線クランプ用連結板材3を介在させた状態で、支持部42を回転軸部材41に近接するように移動して(
図5(a),(b)中の矢印方向)、延線クランプ用連結板材3を回転軸部材41に押圧することが可能に構成される。回転軸部材41の出力は、例えば5kNである。また、移動機構43は、支持部42を回転軸部材41から離間するように移動することが可能に構成される。移動機構43は、例えば伸び方向及び縮み方向の双方に移動可能なシリンダであり、例えば油圧シリンダである。この場合、シリンダのピストンのストロークが最大となったときに、回転軸部材41の突起41bの一部が、支持部42に支持された延線クランプ1の筒状体11に食い込むように、支持部42を位置決めするのが好ましい(
図5(a))。
【0049】
次に、延線クランプ1−1,1−2と延線クランプ用連結板材3とを接続する延線クランプ接続工法を説明する。本実施形態に係る延線クランプ接続工法では、例えば、
図5に示す可動型FSJ装置4が用いられる。
【0050】
図6(a)〜
図6(e)は、本実施形態に係る延線クランプ接続工法を説明する図である。
図6(a)に示すように、先ず、第1延線クランプ1−1の第1筒状部11−1に第1電線12−1を挿入した状態で当該第1筒状部11−1を圧縮して、第1延線クランプ1−1と第1電線12−1とを接続する(第1電線圧縮工程)。同様に、第2延線クランプ1−2の第2筒状部11−2に第2電線12−2を挿入した状態で当該第2筒状部11−2を圧縮して、第2延線クランプと前記第2電線とを接続する(第2電線圧縮工程)。
【0051】
第1延線クランプ1−1及び第2延線クランプ1−2はいずれも金車通過型であり、第1延線クランプ1−1と第1電線12−1とを接続する工程、及び第2延線クランプ1−2と第2電線12−2とを接続する工程のいずれも、地上で行うことができる。
【0052】
次に、第1延線クランプ1−1と延線クランプ用連結板材3とをFSJにて接合する(第1接合工程)(
図6(b))。第1延線クランプ1−1と延線クランプ用連結板材3とを接合する工程は、例えば可動型FSJ装置4を用いて、塔上或いは空中で行うことができる。
具体的には、先ず、可動型FSJ装置4の支持部42で第1延線クランプ1−1を支持し、可動型FSJ装置4の支持部42に支持された第1延線クランプ1−1と回転軸部材41との間に延線クランプ用連結板材3を介在させた状態で、支持部42を回転軸部材41に近接するように移動して、回転軸部材41を延線クランプ用連結板材3に押圧させる。
第1延線クランプ1−1と延線クランプ用連結板材3との接合時には、第1延線クランプ1−1に対して延線クランプ用連結板材3を固定する必要があるため、回転軸部材41を延線クランプ用連結板材3に押圧することで、第1延線クランプ1−1に対して延線クランプ用連結板材3を固定する。
またこのとき、延線クランプ用連結板材3の板材本体31の長手方向一端部31A側に設けられた第1の穴32−1に回転軸部材41を挿入する。これにより、接合位置の位置決めを容易とし、特に塔上或いは空中でFSJを行う場合に、溶接などの他の接合方法と比較して接合位置の位置決めが極めて容易となり、作業性が向上する。
そして、回転軸部材41を延線クランプ用連結板材3に押圧させた状態で、回転軸部材41を所定回転数で数秒間回転させて、第1延線クランプ1−1と延線クランプ用連結板材3とをFSJにて接合する。FSJによって形成された部分は金属的に一体化しているため、その後に経年劣化が生じ難く、電気的或いは機械的な接続信頼性が高い。また、一箇所の接合が数秒で行われるので、従来の接続作業と比較して、容易に且つ短時間で接続作業が完了する。
上記接合を2箇所で行うことにより、第1延線クランプ1−1と延線クランプ用連結板材3との境界部に第1接合部4−1,4−1が形成される(
図6(c))。
【0053】
次いで、第2延線クランプ1−2と延線クランプ用連結板材3とをフリクションスポット接合して第2接合部4−2を形成する(第2接合工程)(
図6(d))。第2延線クランプ1−2と延線クランプ用連結板材3とを接合する工程も、上記と同様、可動型FSJ装置4を用いて、塔上或いは空中で行うことができる。
【0054】
第2延線クランプ1−2と延線クランプ用連結板材3との接合時にも、可動型FSJ装置4の支持部42で第2延線クランプ1−2を支持し、可動型FSJ装置4の支持部42に支持された第2延線クランプ1−2と回転軸部材41との間に延線クランプ用連結板材3を介在させた状態で、支持部42を回転軸部材41に近接するように移動して、回転軸部材41を延線クランプ用連結板材3に押圧させる。これにより、第2延線クランプ1−2に対して延線クランプ用連結板材3が固定される。
また、延線クランプ用連結板材3の板材本体31の長手方向他端部31B側に設けられた第2の穴32−2に回転軸部材41を挿入し、且つ回転軸部材41を延線クランプ用連結板材3に押圧させた状態で、回転軸部材41を所定回転数で数秒間回転させて、第2延線クランプ1−2と延線クランプ用連結板材3とをFSJにて接合する。
上記接合を2箇所で行うことにより、第2延線クランプ1−2と延線クランプ用連結板材3との境界部に第2接合部4−2,4−2が形成される(
図6(e))。これにより、第1延線クランプ1−1と第2延線クランプ1−2が延線クランプ用連結板材3を介して電気的、機械的に接続される。
【0055】
図7は、
図2の延線クランプ接続構造体2を適用したジャンパ装置の構成の一例を概略的に示す図である。
図7のジャンパ装置5は、3相に対応するジャンパ線51A,51B,51C(第1電線)と、ジャンパ線51A,51B,51Cのそれぞれに接続された3つの延線クランプ接続構造体2A,2B,2Cと、3つの延線クランプ接続構造体2A,2B,2Cのそれぞれに接続されたジャンパ線52A,52B,52C(第2電線)とを備える。3つの延線クランプ接続構造体2A,2B,2Cはそれぞれ剛体を構成しており、ジャンパ装置5の中央部に配置されている。このため、ジャンパ線51A,5B,51C或いはジャンパ線52A,52B,52Cが弛み難くなり、相間のクリアランスを確保し易くなっている。碍子連56の本線54側にはライン側ホーン57が、碍子連58の本線55側には、ライン側ホーン59がそれぞれ設けられている。
【0056】
また、ジャンパ装置5は、ジャンパ線51A,51B,51Cと本線54とを接続するジャンパ線支持部60と、ジャンパ線52A,52B,52Cと本線55とを接続するジャンパ線支持部61とを備えている。ジャンパ装置5を設ける際には、例えば、本線54及び本線55をくさび型延線クランプや圧縮型延線クランプ(不図示)で鉄塔53に引き寄せ、その後、本線54及び本線55を圧縮クランプ(不図示)等で鉄塔53に固定する。すなわち、本線54及び本線55は鉄塔53に支持されているため、3つの延線クランプ接続構造体2A,2B,2Cに接続されたジャンパ線51A,51B,51C及びジャンパ線52A,52B,52Cのいずれにも、引張荷重がほぼ掛かっていない。よって、各延線クランプ接続構造体の第1接合部及び第2接合部に応力が生じ難く、第1接合部及び第2接合部での電気的な接続を長期に亘って維持することができる。
【0057】
上述したように、本実施形態によれば、延線クランプ1が、長手方向一端部11A側から電線12を挿入した状態で圧縮することで電線12と接続可能な長尺状の筒状部11と、筒状部11の長手方向他端部11B側に設けられ、外部と係合して電線12を引留め可能な係合部13と、筒状部11の側面11aに設けられ、自己の延線クランプと他の延線クランプとを連結する延線クランプ用連結板材3をFSJによって接合可能な接合面14を有するので、金車通過型である延線クランプ1と電線12とを接続するための圧縮作業を地上で行うことができ、また、塔上或いは空中で延線クランプ用連結板材3を介して他の延線クランプとFSJによって接合が可能であるので、塔上或いは空中で作業者の安全性を確保しつつ接続作業を容易に且つ短時間で行うことができ、隣接する電線との容易な電気的接続を実現することができると共に、電気的或いは機械的な接続信頼性を向上することができる。
【0058】
また、延線クランプ用連結板材3が、第1延線クランプ1とのFSJ時に回転軸部材41が挿入可能な少なくとも1つの第1の穴32−1と、第2延線クランプ1−2とのFSJ時に回転軸部材41が挿入可能な第2の穴32−2,32−2と、板材本体31の側面3aに設けられ、板材本体31の厚み方向に関して、第1の穴32−1,32−1の少なくとも直下に位置する第1被接合面3a−1,3a−1と、板材本体31の側面3aに設けられ、板材本体31の厚み方向に関して、第2の穴32−2,32−2の少なくとも直下に位置する第2被接合面3a−2,3a−2とを有しているので、塔上或いは空中で、第1延線クランプ1−1及び第2延線クランプ1−2と延線クランプ用連結板材3とをFSJによって容易に接合することができ、各延線クランプと延線クランプ用連結板材3との容易な電気的接続を実現することができる。
【0059】
また、延線クランプ接続構造体2が、第1延線クランプ1−1と延線クランプ用連結板材3とがFSJによって接合されている第1接合部4−1,4−1と、第2延線クランプ1−2と延線クランプ用連結板材3とがFSJによって接合されている第2接合部4−2,4−2とを備えているので、溶接などの他の従来の接合方法と比較して、第1接合部4−1における第1延線クランプ1−1と延線クランプ用連結板材3との界面、及び第2接合部4−2における第2延線クランプ1−2と延線クランプ用連結板材3との界面の双方を無くすことができ、電気的或いは機械的な接続信頼性を向上することができる。また、当該界面での電気抵抗の上昇や発熱を防止することができ、メンテナンスなどの保守管理を不要とすることが可能となる。更に、ボルト/ナットなどの他の従来の接合方法と比較して、別途の部材を用いずに接合を行うので、接合部の軽量化を実現できる。
【0060】
可動型FSJ装置4が、回転可能に設けられた回転軸部材41と、回転軸部材41の軸方向に対して延線クランプ1の長手方向が垂直となる状態で当該延線クランプ1を支持可能な支持部42と、支持部42と回転軸部材41とを相対的に移動して、支持部42に支持された延線クランプ1に回転軸部材41を押圧可能な移動機構43とを備えるので、装置構成の小型化、軽量化を実現することができ、塔上或いは空中での延線クランプ1と延線クランプ用連結板材3との接合作業時に、作業者が可動型FSJ装置4を容易に持ち運ぶことができ、該接合作業を容易に且つ短時間で行うことができる。また、当該作業時における作業者の安全性の確保が簡便となり、作業時間や手間の増大を防止することできる。
【0061】
また、本実施形態によれば、延線クランプ接続工法において、第1延線クランプ1−1と延線クランプ用連結板材3とをFSJにて接合し(第1接合工程)、第2延線クランプ1−2と延線クランプ用連結板材3とをFSJにて接合するので(第2接合工程)、隣接する第1電線12−1及び第2電線12−2との容易な電気的接続を実現することができ、接続作業を容易に且つ短時間で行うことができる。また、第1延線クランプ1−1及び第2延線クランプ1−2を、それぞれ第1電線12−1及び第2電線12−2から除去せずに、延線クランプ用連結板材3を介して2つの第1延線クランプ1−1及び第2延線クランプ1−2をそのままFSJにて接合するので、従来の接続工法と比較して、延線クランプの除去作業や廃棄作業が不要となり、また、廃棄材を削減して環境負荷を低減することができる。更に、例えば、重たい圧縮工具を用いてジャンパスリーブ等と2つのジャンパ線とを圧縮して接続する従来方法と比較して、圧縮工具を塔上或いは空中まで持ち上げる準備作業や、圧縮作業後に当該装置や廃棄材を降ろす撤収作業が不要となり、作業時間や手間を低減することができる。
【0062】
また、延線クランプ接続構造体2をジャンパ装置5に適用することで、ジャンパ線51A,51B,51Cとジャンパ線52A,52B,52Cとの容易な電気的接続を実現することができ、接続作業を容易に且つ短時間で行うことができる。また、電線長さに比較的自由度があるジャンパ装置5内でジャンパ線同士を接続するため、事前の地上での電線計尺を容易に行うことができる。更に、第1延線クランプ1−1、第2延線クランプ1−2及び延線クランプ用連結板材3が一体化して剛性を有するため、ジャンパ線51A,51B,51C及びジャンパ線52A,52B,52Cが弛み難くなり、相間のクリアランスを容易に確保することができ、ジャンパ装置5を容易に設計することができる。
【0063】
以上、本実施形態に係る延線クランプ、延線クランプ連結板材、延線クランプ接続構造体及びフリクションスポット接合装置、並びに延線クランプ接続工法について述べたが、本発明は記述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。