特許第6800206号(P6800206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6800206グリセロールのアリルアルコールへの直接脱酸素脱水素反応のためのレニウム含有担持不均一系触媒の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800206
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】グリセロールのアリルアルコールへの直接脱酸素脱水素反応のためのレニウム含有担持不均一系触媒の使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/60 20060101AFI20201207BHJP
   B01J 23/36 20060101ALI20201207BHJP
   C07C 33/03 20060101ALI20201207BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20201207BHJP
【FI】
   C07C29/60
   B01J23/36 Z
   C07C33/03
   !C07B61/00 300
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-502250(P2018-502250)
(86)(22)【出願日】2016年7月27日
(65)【公表番号】特表2018-522889(P2018-522889A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】EP2016067858
(87)【国際公開番号】WO2017017122
(87)【国際公開日】20170202
【審査請求日】2019年6月27日
(31)【優先権主張番号】15306244.3
(32)【優先日】2015年7月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514255523
【氏名又は名称】サントレ ナティオナル ド ラ ルシェルシェ シアンティフィク
(73)【特許権者】
【識別番号】515251621
【氏名又は名称】エコール サントラル ド リール
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】518012401
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ リール 1 シヨンス エ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今 喜裕
(72)【発明者】
【氏名】カトリニオ,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】デュメイニル,フランク
(72)【発明者】
【氏名】アラク,マルシア
(72)【発明者】
【氏名】ポール,セバスティアン
【審査官】 阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/108509(WO,A1)
【文献】 特開2008−162907(JP,A)
【文献】 特開2011−84513(JP,A)
【文献】 特開2009−275029(JP,A)
【文献】 特開2008−143798(JP,A)
【文献】 特表2009−530376(JP,A)
【文献】 Catalysis Science & Technology,2014年,Vol. 4, No. 10,pp. 3697-3704
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 23/36
C07C 29/60
C07C 33/03
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセロールのアリルアルコールへの脱酸素脱水素反応を触媒するための、式ReO/Al(I)のアルミナ担持酸化レニウム触媒の使用であって、前記反応が、少なくとも1種の、モノヒドロキシル化アルコールである脂肪族アルコールの存在下で不均一状態で実施される、使用。
【請求項2】
前記の少なくとも1種の脂肪族アルコールが溶媒として使用される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記の式(I)の触媒が、ReOの量が、式(I)の触媒の総質量に対して5〜15重量%の範囲であるものの中から選択される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
触媒の存在下でグリセロールからアリルアルコールを製造するための方法であって、前記方法が、グリセロールの脱酸素脱水素反応の1ステップのみを含み、前記反応が、i)式ReO/Al(I)のアルミナ担持酸化レニウム触媒の、およびii)少なくとも1種の、モノヒドロキシル化アルコールである脂肪族アルコールの存在下で不均一状態で実施される、方法。
【請求項5】
式(I)の触媒が、ReOの量が、式(I)の触媒の総量に対して5〜15重量%の範囲である触媒の中から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
脂肪族アルコールが、6〜10個の炭素原子を有するモノヒドロキシル化アルコールである、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
脂肪族アルコールが、6〜8個の炭素原子を有するモノヒドロキシル化アルコールである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
モノヒドロキシル化アルコールが、第2級アルコールである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第2級アルコールが、2−ヘキサノールまたは3−オクタノールである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
脱酸素脱水素反応が、140℃以上の温度で実施される、請求項3から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
脱酸素脱水素反応が、140〜150℃の範囲の温度で実施される、請求項3から10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセロールのアリルアルコールへの直接脱酸素脱水素反応のためのレニウム含有担持不均一系触媒の使用ならびにこのような不均一系触媒の存在下でグリセロールからアリルアルコールを製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
アリルアルコールは、化学工業において貴重な材料として知られている。そのようなものとして、またアクロレイン、アクリル酸またはアクリロニトリルなどの種々の高トン数化学物質を製造するための原材料としても使用され得る。現代有機化学においてはアリル化剤としても使用される(非特許文献1)。
【0003】
現在、アリルアルコールは、最も従来的にはプロピレン選択的酸化プロセスから生じたアクロレイン自体の選択的水素化によって得られる。したがって、アリルアルコール合成は、今日、化石資源から、特に、石油精製から生じた産物であるプロピレンに依存しており、その供給は、不均衡な提供/需要の問題によってさらに脅かされている。
【0004】
プロピレンの使用を含まない代替プロセスが調査されてきた。
【0005】
グリセロールは、バイオディーゼル製造のためのエステル交換プロセスの副産物であるので、最も重要な再生可能プラットフォーム分子の1種である(1トンのバイオディーゼルあたり約100kgのグリセロールが製造される)。バイオディーゼルの最近の市場拡大は、グリセロールの供給過剰をもたらし、それによって、より貴重な化学物質の合成のための基質として極めて魅力的なものになった。
【0006】
したがって、グリセロールから有用な化学物質への有効な変換プロセスは、世界中で集中的に研究されている。これらの反応は、一般に、触媒を必要とする。例えば、グリセロールからアクロレインを得るために、適当な酸度を有する触媒が必要であり、集中的な研究活動は、例えば、その酸性特性が周知であるので、ゼオライト、ヘテロポリ酸、混合金属酸化物および(オキソ)−ピロリン酸の使用に焦点が合わせられてきた(非特許文献2)。
【0007】
グリセロールに由来する種々の分子の中でも、アリルアルコールは、樹脂、塗料、被膜、カップリング剤などを製造するための重要な化学的中間体として知られている。アリルアルコールはまた、中でも、アクロレイン、アクリロニトリルおよびアクリル酸に触媒によって変換され得る出発材料として貴重である。アリルアルコールのアクロレインおよび/またはアクリル酸への変換のプロセスは十分に確立されているが、グリセロールからの(一般的に言えば、生物学的起源からの)アリルアルコールの効率的な持続可能な作製は、実際的な方法ではいまだ実施されていない。
【0008】
最近、レニウムベースの触媒を使用して、グリセロールからアリルアルコールを合成するための種々のプロセスが報告された。例えば、(非特許文献3)は、グリセロールのアリルアルコールへの脱酸素脱水素反応(DODH)が、空気雰囲気下で、または水素バブリング下で、ニートグリセロール中で、または溶媒(特に、アルコール)の存在下のいずれかで、レニウム誘導体によって触媒されることを報告している。特に、溶媒として1−ヘキサノールまたは2,4−ジメチル−3−ペンタノール(DMP)を使用して、空気中で140℃で実施される反応は、触媒としてメチルトリオキソレニウム(MTO)を使用して、それぞれ、28%および61%の収率でアリルアルコールにつながり、触媒としてReOを使用して、それぞれ、20%および64%の収率でアリルアルコールにつながった。しかし、これらの触媒は、1回のみの実施後に相当な非活性化を示す。さらに、MTOは、液相中に溶解されるので(均一触媒)、使用後に回収することは容易ではない。
【0009】
グリセロールのアリルアルコールへの変換を実施するために担持不均一系触媒を使用することについて、いくつかの試みが実施されてきた。特に、ガス相において担持酸化鉄ベースの固体触媒を使用するグリセロールからのアリルアルコールの合成について多数の報告がある(例えば、(非特許文献4)を参照のこと)。しかし、これらのプロセスによれば、アリルアルコールの収率は、32%に制限される(非特許文献5)。
【0010】
したがって、グリセロールのアリルアルコールへの脱酸素脱水素の反応を実際的な規模で、良好な収率で適用するために、再利用可能な触媒が依然として必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Sundararajuら、Chem.Soc.Rev.、2012年、第41巻、4467〜4483頁
【非特許文献2】Katryniokら、Green Chem.、2010年、第12巻、2079頁
【非特許文献3】Canale V.ら(Catal.Sci.Technol.、2014年、第4巻、3697〜3704頁
【非特許文献4】Sanchezら、Appl.Catal.B:Environmental2014年、第152−153巻、117〜128頁
【非特許文献5】Wangら、Chem.J.Chin.Univ.2013年、第34巻、650〜655頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の第1の主題は、グリセロールのアリルアルコールへの脱酸素脱水素反応を触媒するための、式ReO/Al(I)のアルミナ担持酸化レニウム触媒の使用であり、前記反応は、少なくとも1種の脂肪族アルコールの存在下で不均一状態で実施される。
【0013】
上記の式(I)の触媒は、グリセロールのアリルアルコールへの脱酸素脱水素反応を実際的な規模で、最大約90%、すなわち、先行技術において同一反応についてこれまでに報告された担持酸化鉄触媒を用いた場合よりもかなり高い収率で実施することを可能にする。さらに、式(I)の触媒は、再使用可能であり、反応培地から容易に回収可能である。
【0014】
上記の式(I)の触媒の中でも、ReOの量が、式(I)の触媒の総質量に対して約5〜15重量%の範囲であるもの、より詳しくは、ReOの量が約8〜12重量%の範囲であるものが好ましい。
【0015】
例として、上記の式(I)触媒は、特に、過レニウム酸(HReO)の水溶液を用いるアルミナ(Al)のインシピエントウェットネス含浸(incipient−wetness impregnaton)によって調製され得る。含浸後、得られた式(I)の触媒は、好ましくは、約100〜150℃の範囲の温度で数時間乾燥され、次いで、か焼される。
【0016】
本発明の別の主題は、触媒の存在下でグリセロールからアリルアルコールを製造するためのプロセスであり、前記プロセスは、グリセロールの脱酸素脱水素反応の1ステップのみを含み、前記反応は、i)式ReO/Al(I)のアルミナ担持酸化レニウム触媒の、およびii)少なくとも1種の脂肪族アルコールの存在下、不均一条件で実施される。
【0017】
本発明に一致するプロセスは、化石資源由来原材料を使用することなくアリルアルコールを製造することを可能にする。実施することが簡単であり(1段階のみ)、極めて選択的である。アリルアルコールをもたらし、最大約90%の収率である。
【0018】
本発明のプロセスの好ましい実施形態によれば、式(I)の触媒は、ReOの量が、式(I)の触媒の総質量に対して約5〜15重量%の範囲である触媒の中から、より詳しくは、ReOの量が、約8〜12重量%の範囲であるものの中から選択される。
【0019】
本発明の好ましい実施形態によれば、ReOを担持するために使用されるアルミナの比表面積は、約100m2/g〜300m2/gの範囲であり、より好ましくは、さらに150m2/g〜250m2/gである(B.E.T.法)。
【0020】
脂肪族アルコールが溶媒として使用される。脂肪族アルコールはまた、グリセロールのアリルアルコールへの変換の際に犠牲的還元剤の役割を果たす。
【0021】
本発明の特定の好ましい実施形態によれば、脂肪族アルコールは、6〜10個の炭素原子、好ましくは、6〜8個の炭素原子を有するモノヒドロキシル化アルコールである。
【0022】
6〜8個の炭素原子を有するモノヒドロキシル化アルコールの中でも、第2級アルコールが好ましい。
【0023】
このような第2級アルコールの中でも、2−ヘキサノールおよび3−オクタノールが挙げられ得る。
【0024】
本発明の特定の好ましい実施形態によれば、脂肪族アルコールは、2−ヘキサノールである。
【0025】
脱酸素脱水素反応は、約140℃以上の温度で、より好ましくは、約140〜150℃の範囲の温度で実施されることが好ましい。約145℃の温度は、本発明によればさらにより特に好ましい。
【0026】
本発明に一致するプロセスの好ましい実施形態によれば、脱酸素脱水素反応は、少なくとも95%の純度を有するグリセロールを使用して実施される。実際、本発明者らによって実施された研究は、95%より低い純度を有する、すなわち、グリセロールの総重量に対して、5重量%を超える不純物、特に、5重量%を超える水を含有するグリセロールの使用は、好ましくないことに、アリルアルコールの収率に影響を及ぼすことを示した。
【0027】
反応後、反応の副産物(co−products)および副生成物(by−products)の分離が、当業者に公知の任意の適当な技術によって、例えば、蒸留によって実施され得る。
【0028】
触媒の回収は、例えば、濾過によって容易に行われ得、次いで、乾燥される。新規使用の前に、強制的ではない場合であっても、触媒は、か焼され得る。
【0029】
本発明を以下の実施例によって例示するが、それに制限されない。
【実施例】
【0030】
次の実施例では、以下の出発材料を使用した:
−グリセロール、水中の純度>99%(Aldrich)
−198.7m2/g(B.E.T.)の表面積を有するアルミナ(γ−Al)(Puralox)、
−105.5m2/g(B.E.T.)の表面積を有する二酸化ケイ素(SiO)(Fuji Silysia)、
−名称P25の下で商品化された62.5m2/g(B.E.T.)の表面積を有する二酸化チタン(TiO)(Aldrich、99%純度)、
−75重量%の過レニウム酸(HReO)水溶液(Aldrich)、
−1−ヘキサノール(Aldrich)、
−2−ヘキサノール(Aldrich)、
−1−オクタノール(Aldrich)、
−3−オクタノール(Aldrich、
−2−ブタノール(Aldrich)、
−シクロヘキサノール(Aldrich)、
−1−フェニルエタノール(Aldrich)、
−ベンジルアルコール(Aldrich)。
【0031】
すべてのこれらの材料を、供給業者から受け取ったままで、すなわち、何らかのさらなる精製を行わずに使用した。
【0032】
[本発明に従う式(I)のアルミナ担持酸化レニウム触媒の調製]
式(I)の種々の触媒を、インシピエントウェットネス含浸(incipient−wetness impregnaton)法によって調製した。
【0033】
触媒の総量に対してそれぞれ、5、10または15重量%のReOを含有する式(I)の触媒を調製した。これらの触媒をそれぞれ、5重量%−ReO/Al、10重量%−ReO/Alおよび15重量%−ReO/Alと表した。
【0034】
5重量%−ReO/Alを調製するために、1mLの水中の136mgの75重量%過レニウム酸水溶液(Aldrich)の添加から得られたHReOの希釈水溶液に1.81gのγ−Alを添加した。
【0035】
10重量%−ReO/Alを調製するために、1mLの水中の286mgの75重量%過レニウム酸水溶液(Aldrich)の添加から得られたHReOの希釈水溶液に1.81gのγ−Alを添加した。
【0036】
15重量%−ReO/Alを調製するために、1mLの水中の456mgの75重量%過レニウム酸水溶液(Aldrich)の添加から得られたHReOの希釈水溶液に1.81gのγ−Alを添加した。
【0037】
1時間後、含浸された触媒を、触媒試験におけるその使用の前に、110℃で24時間乾燥させ、静止空気下、500℃で3時間、か焼した。
【0038】
[本発明の一部を形成しない、TiO担持酸化レニウム比較触媒の調製]
比較触媒を調製するために、Alの代わりにTiO(1.81g)を使用した点を除いて、式(I)の触媒の調製について上記のものと同一の手順を使用した。
【0039】
1時間後、得られたままの含浸された触媒(5重量%−ReO/TiOと表された)を、触媒試験におけるその使用の前に、110℃で24時間乾燥させ、静止空気下、500℃で3時間、か焼した。
【実施例1】
【0040】
[10重量% ReO/Alを使用するグリセロールのアリルアルコールへの変換(触媒の第1/第2および第3の使用)]
第1の使用:
磁性撹拌子を備えた耐圧ガラスチューブに、グリセロール(92mg、1mmol)、10重量%ReO/Al(100mg)および2−ヘキサノール(3.3mL)を入れた。容器をスクリューキャップによって密閉し、反応培地が148℃の反応温度で維持されるように170℃で維持された油浴中で混合物を2.5時間撹拌した(500rpm)。反応後、溶液を室温に冷却し、次いで、15mLのメタノールを用いて希釈した。ガスクロマトグラフィー(GC)解析のための内部標準として溶液にビフェニル(20mg、0.13mmol)を添加した。溶液を超音波照射下に10分間おいて、混合物の良好な均一性を保証した。GCによる混合物の解析に基づいて変換および収率を決定した。
【0041】
アリルアルコールの収率は91%であり、グリセロールの変換は、>99%であり、アリルアルコールへの選択性(収率/変換x100)は、91%であった(第1の使用)。
【0042】
第2の使用:
反応は、実験1から回収された使用済みの10重量%−ReO/Al触媒(82mg)およびグリセロール/触媒比を実験1(第1の使用)の条件と比較して反応の開始時に一定に維持するための新規量のグリセロール(75mg)を使用して、第1の使用について上記のように進行した。
【0043】
第2の反応の前に、使用された10重量%−ReO/Alを、500℃で3時間再か焼した。アリルアルコールの収率は、93%であり、グリセロールの変換は、>99%であり、アリルアルコールへの選択性は、93%であった。
【0044】
実験1(第1の使用)から得た使用済みの10重量%−ReO/Al触媒(82mg)および新規量のグリセロール(75mg)を使用してであるが、第2の使用の前にか焼を実施する代わりに、110℃での乾燥のみを2時間実施して、別の試験も実施した。アリルアルコールの収率は、90%であり、グリセロールの変換は、>99%であり、アリルアルコールへの選択性は、90%であった。このさらなる結果は、触媒の再利用の前に、か焼ステップが実施されることが好ましい場合でさえ、このようなか焼ステップは良好な性能を得るために全く強制的ではないことを実証する。
【0045】
第3の使用:
反応は、実験2(か焼をともなう)から回収された使用済みの10重量%−ReO/Al触媒(62mg)およびグリセロール/触媒比を実験1の条件と比較して反応の開始時に一定として維持するための新規量のグリセロール(62mg)を使用して、第2の使用について上記のように進行した。
【0046】
使用された10重量%−ReO/Alを再度、第3の反応の前に500℃で3時間再か焼した。
【0047】
アリルアルコールの収率は、92%であり、グリセロールの変換は、>99%であり、アリルアルコールへの選択性は、92%であった。
【0048】
これらの結果は、式(I)の触媒は、アリルアルコールを得るために容易に再利用され得、第2および第3の使用について、それぞれ、93%または92%の収率であることを実証する。生成物のH NMR解析において、アクロレインまたはアクリル酸に割り当てられたピークは観察されなかった。
【実施例2】
【0049】
[5重量%−ReO/AlO、10重量%−ReO/Alおよび15重量%−ReO/Alを使用するグリセロールのアリルアルコールへの変換]
グリセロールのアリルアルコールへの変換を、上記の実施例1(第1の使用)において記載されるものと同一条件で実施した。
【0050】
式(I)の触媒にわたって得られた結果が、以下の表1に示されている:
【0051】
【表1】
【実施例3】
【0052】
[5重量%−ReO/Alを使用するグリセロールのアリルアルコールへの変換−5重量%−ReO/TiOとの比較]
この実施例では、本発明に従う式(I)の5重量%−ReO/Alの変換性能を、本発明の一部ではない触媒、すなわち、5重量%−ReO/TiOのものと比較した。
【0053】
グリセロールのアリルアルコールへの変換を、特に断りのない限り、実施例1、第1の使用において使用したものと同一の条件で実施した。
【0054】
結果は以下の表2に示されている:
【0055】
【表2】
【0056】
表2に示されるように、TiOおよびAl支持体は、高い反応性を示した(それぞれ、TiOおよびAlのアリルアルコールへの82%および77%の収率)。TiOは、Alよりも高い反応性を示したが、TiO支持体からのレニウム浸出のためにReO/TiO触媒を再利用することは可能ではなかった。
【実施例4】
【0057】
[種々の温度で10重量%−ReO/Alを使用するグリセロールのアリルアルコールへの変換]
この実施例では、グリセロールのアリルアルコールへの変換を、上記の実施例1、第1の使用におけるものと同一の条件を使用するが、油浴の温度を変更して実施し、その結果、反応培地の温度も変わった。
【0058】
結果は、以下の表3に示されている:
【0059】
【表3】
【0060】
2−ヘキサノールは、大気圧で、139℃の沸点(b.p.)を有するが、好ましい反応温度は、139℃より高い。
【0061】
150℃の油浴(観察された内部反応温度:140℃)の温度で同一触媒を用いる反応によって、アリルアルコールが75%の収率で得られた。油浴の温度が170℃(観察された内部反応温度:148℃)であった場合には、アリルアルコールは優れた収率(91%)で得られた。
【実施例5】
【0062】
[脂肪族アルコール溶媒中で10重量%−ReO/Alを使用するグリセロールのアリルアルコールへの変換−環状アルコール溶媒との比較]
この実施例では、グリセロールのアリルアルコールへの変換を、実施例1(第1の使用)のものと同一の条件であるが、本発明のプロセスに従う種々の脂肪族アルコールを使用し、本発明の一部を形成しないプロセスに従ういくつかの環状アルコールと比較して実施した。
【0063】
結果は、以下の表4で表にされている:
【0064】
【表4】
【0065】
これらの結果は、本発明のプロセスに従う溶媒として使用したすべての脂肪族アルコールは、アリルアルコールにつながり、少なくとも40%の収率であることを示す。しかし、これらのアルコールの中でも、同数の炭素原子について、第2級アルコールが第1級アルコールよりも高い収率を示した。対照的に、シクロヘキサノールの使用は、40%より低い収率を引き起こし、高変換にもかかわらず収率は極めて低かったので(それぞれ、1−フェニルエタノールおよびベンジルアルコールを使用した場合に0%および8%の収率)、アリールアルコール(1−フェニルエタノールおよびベンジルアルコール)は、式(I)の触媒の存在下でのグリセロールのアリルアルコールへの脱酸素脱水素反応の許容される溶媒ではない。
【実施例6】
【0066】
[種々の割合の水を示すグリセロールを使用する、10重量%−ReO/Alを使用するグリセロールのアリルアルコールへの変換]
この実施例では、グリセロールのアリルアルコールへの変換を、種々の割合の水を含有する、すなわち、1重量%未満〜20重量%の水を含有するグリセロールを使用して、10重量%−ReO/Alを用いて2−ヘキサノール中で実施した。
【0067】
>99%の純度を有する購入したグリセロール中に必要な量の水を添加することによって、水中の種々の程度の純度のグリセロール溶液を簡単に調製した。
【0068】
対応する結果は、以下の表5で表にされている:
【0069】
【表5】
【0070】
これらの結果は、本発明に従うグリセロールの脱酸素脱水素反応のプロセスは、グリセロールが、わずか80重量%の水中の純度を示す場合でさえ、実施され得、アリルアルコールの極めて良好な収率が得られることを示す。