特許第6800362号(P6800362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧
特許6800362電力ケーブル及び電力ケーブルの製造方法
<>
  • 特許6800362-電力ケーブル及び電力ケーブルの製造方法 図000004
  • 特許6800362-電力ケーブル及び電力ケーブルの製造方法 図000005
  • 特許6800362-電力ケーブル及び電力ケーブルの製造方法 図000006
  • 特許6800362-電力ケーブル及び電力ケーブルの製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6800362
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】電力ケーブル及び電力ケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 9/02 20060101AFI20201207BHJP
   H01B 13/14 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   H01B9/02 A
   H01B13/14 C
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-60117(P2020-60117)
(22)【出願日】2020年3月30日
【審査請求日】2020年8月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115842
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 正則
(72)【発明者】
【氏名】三枝 哲也
(72)【発明者】
【氏名】秋月 一能
(72)【発明者】
【氏名】三ツ木 伸悟
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−9009(JP,A)
【文献】 特表2014−500335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 9/02
H01B 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属導体の外周に内部半導電層、絶縁層、外部半導電層をこの順で積層した構造を含む電力ケーブルであって、
前記絶縁層が、融点が110℃以上のプロピレン系樹脂を全体に対して15質量%以上含有し、
前記絶縁層における前記内部半導電層との界面部分の製造時の冷却速度X[℃/分]と、前記絶縁層の中央部分の製造時の冷却速度Y[℃/分]の関係が、下記式(Z):
X≧Y×0.8 …… (Z)
で表されることを特徴とする電力ケーブル。
【請求項2】
前記プロピレン系樹脂が多段気相重合により得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の電力ケーブル。
【請求項3】
前記プロピレン系樹脂がオレフィン系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力ケーブル。
【請求項4】
前記絶縁層が、融点が110℃未満の熱可塑性樹脂を、前記絶縁層全体に対して0を超えて75質量%以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電力ケーブル。
【請求項5】
前記冷却速度X及び前記冷却速度Yが、該当部分から採取した対象サンプルを、DSC(示差走査熱量測定)を用いて、昇温過程で観測される融解ピークにおける低温側で測定されるショルダーピーク温度[℃]と、前記昇温過程後に冷却する際の冷却速度[℃/分]より前記冷却速度と前記ショルダーピーク温度の関係を求め、当該関係より確認されたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電力ケーブル。
【請求項6】
前記冷却速度Yが0.1〜30℃/分であることを特徴とする請求項1ないし請求項
5のいずれかに記載の電力ケーブル。
【請求項7】
前記絶縁層の厚さが5mm以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の電力ケーブル。
【請求項8】
金属導体の外周に内部半導電層、絶縁層、外部半導電層をこの順で押出成形により被覆して積層する構造を含む電力ケーブルの製造方法であって、
前記絶縁層が、融点が110℃以上のプロピレン系樹脂を全体に対して15質量%以上含み、
前記絶縁層における前記内部半導電層との界面部分の製造時の冷却速度X[℃/分]と、前記絶縁層の中央部分の製造時の冷却速度Y[℃/分]の関係が、下記式(Z):
X≧Y×0.8 …… (Z)
で表されるように絶縁層を形成することを特徴とする電力ケーブルの製造方法。
【請求項9】
前記冷却速度X及び前記冷却速度Yが、該当部分から採取した対象サンプルを、DSC(示差走査熱量測定)を用いて、昇温過程で観測される融解ピークにおける低温側で測定されるショルダーピーク温度[℃]と、前記昇温過程後に冷却する際の冷却速度[℃/分]より前記冷却速度と前記ショルダーピーク温度の関係を求め、当該関係より確認されたものであることを特徴とする請求項8に記載の電力ケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル及び電力ケーブルの製造方法に関する。さらに詳しくは、金属導体の外周に内部半導電層、絶縁層、外部半導電層をこの順で押出成形により被覆して積層する構造を含む電力ケーブル及び電力ケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電力ケーブルは金属導体の外周に内部半導電層、絶縁層、外部半導電層をこの順で押出成形で被覆して得られる。かかる電力ケーブルの絶縁層としては、従来、架橋ポリエチレンが用いられていた。
【0003】
しかし、架橋ポリエチレンは110℃前後が融点(T)となるため、大電流を導通させると発熱により絶縁層の変形が生じ、絶縁層の電気的破壊(絶縁破壊)を引き起こす場合があった。かかる電気的破壊を防止するため、通電量を一定値以下に抑えるか、あるいは電力ケーブルの金属導体の断面積を大きく設計する必要があった。
【0004】
このような問題に対応すべく、絶縁層を構成する樹脂組成物の検討がなされている。例えば、プロピレンホモポリマー、またはエチレンとプロピレンとのコポリマー、またはプロピレンを除くα−オレフィンとプロピレンとのコポリマーと誘電性液体との樹脂組成物が、ポリエチレン系絶縁体の動作温度である70℃よりも高い90℃以上の動作温度を可能とする絶縁性樹脂組成物として検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
また、他の例としては、ポリプロピレンとプロピレン−α−オレフィン性共重合体の制御−冷却加熱混合系からなるポリマー組成物の製造方法において、絶縁体の非制御冷却と制御冷却を組み合わせることで、高い絶縁耐力が得られる製造方法の検討がされている(例えば、特許文献2等を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4875282号公報
【特許文献2】特許第6189927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、プロピレン系樹脂を含む樹脂組成物を用いた絶縁層は、樹脂組成物を溶融させて金属導体上に押出し、押し出した樹脂組成物を空冷や水冷(液冷)により結晶化温度以下に冷却することで形成されるものである。
【0008】
一方、高圧電力ケーブルの絶縁層は数十ミリメートルの厚さとなるため、絶縁層表面(外部半導電層側の面)と絶縁層内部の温度差が数十℃になる場合もある。よって、ケーブルの外側から冷却する外部冷却により各層の冷却固化を実施する場合、絶縁層表面が固化していても絶縁層の内部は固化されず柔らかいため、自重により金属導体がケーブル中心からずれてしまい、偏肉と呼ばれる不良が発生するという問題があった。
【0009】
金属導体がケーブル中心からずれて偏肉が発生した場合、絶縁層が薄くなる部分が生じるため絶縁破壊強度が低下する。また、ケーブル表面からの冷却収縮で生じる、引けによるボイドや剥離が発生することも絶縁破壊強度の低下につながり、これらは最後に固化する導体近傍や異種材料間の界面で生じていた。しかしながら、前記した技術では、これ
らの問題を十分に解決できるものではなかった。
【0010】
本発明の目的は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、絶縁層の偏肉や、引けによるボイドや剥離の発生を低減し、絶縁破壊強度が良好な電力ケーブル及び電力ケーブルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するために、本発明の電力ケーブルは、
金属導体の外周に内部半導電層、絶縁層、外部半導電層をこの順で積層した構造を含む電力ケーブルであって、
前記絶縁層が、融点が110℃以上のプロピレン系樹脂を全体に対して15質量%以上含有し、
前記絶縁層における前記内部半導電層との界面部分の製造時の冷却速度X[℃/分]と、前記絶縁層の中央部分の製造時の冷却速度Y[℃/分]の関係が、下記式(Z):
X≧Y×0.8 …… (Z)
で表されることを特徴とする。
【0012】
本発明の電力ケーブルは、前記した本発明において、前記プロピレン系樹脂が多段気相重合により得られたものであることを特徴とする。
【0013】
本発明の電力ケーブルは、前記した本発明において、前記プロピレン系樹脂がオレフィン系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする。
【0014】
本発明の電力ケーブルは、前記した本発明において、前記絶縁層が、融点が110℃未満の熱可塑性樹脂を、前記絶縁層全体に対して0を超えて75質量%以下の範囲で含有することを特徴とする。
【0015】
本発明の電力ケーブルは、前記した本発明において、前記冷却速度X及び前記冷却速度Yが、該当部分から採取した対象サンプルを、DSC(示差走査熱量測定)を用いて、昇温過程で観測される融解ピークにおける低温側で測定されるショルダーピーク温度[℃]と、前記昇温過程後に冷却する際の冷却速度[℃/分]より前記冷却速度と前記ショルダーピーク温度の関係を求め、当該関係より確認されたものであることを特徴とする。
【0016】
本発明の電力ケーブルは、前記した本発明において、前記冷却速度Yが0.1〜30℃/分であることを特徴とする。
【0017】
本発明の電力ケーブルは、前記した本発明において、前記絶縁層の厚さが5mm以上であることを特徴とする。
【0018】
本発明の電力ケーブルの製造方法は、
金属導体の外周に内部半導電層、絶縁層、外部半導電層をこの順で押出成形により被覆して積層する構造を含む電力ケーブルの製造方法であって、
前記絶縁層が、融点が110℃以上のプロピレン系樹脂を全体に対して15質量%以上含み、
前記絶縁層における前記内部半導電層との界面部分の製造時の冷却速度X[℃/分]と、前記絶縁層の中央部分の製造時の冷却速度Y[℃/分]の関係が、下記式(Z):
X≧Y×0.8 …… (Z)
で表されるように前記絶縁層を形成することを特徴とする電力ケーブルの製造方法。
【0019】
本発明の電力ケーブルの製造方法は、前記した本発明において、前記冷却速度X及び前記冷却速度Yが、該当部分から採取した対象サンプルを、DSC(示差走査熱量測定)を用いて、昇温過程で観測される融解ピークにおける低温側で測定されるショルダーピーク温度[℃]と、前記昇温過程後に冷却する際の冷却速度[℃/分]より前記冷却速度と前記ショルダーピーク温度の関係を求め、当該関係より確認されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る電力ケーブルは、絶縁層として特定範囲のプロピレン系樹脂を含有し、絶縁層における内部半導電層との界面部分の製造時の冷却速度Xと、絶縁層の中央部分の製造時の冷却速度Yとの関係を特定なものとしているので、絶縁層における表面だけでなく、絶縁層内部、絶縁層における内部半導電層との界面部分及びその内部も確実に冷却されて硬化されることになる。よって、自重により金属導体が電力ケーブルの中心からずれることもなく、偏肉が発生しにくくなり、加えて、冷却収縮のひずみが分散されることにより、引けによるボイドの発生が抑えられ、絶縁破壊強度が良好な電力ケーブルとなる。
【0021】
また、本発明に係る電力ケーブルの製造方法は、前記の効果を奏する電力ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る電力ケーブルの一例を示した断面図である。
図2】絶縁層における内部半導電層との界面部分及び絶縁層の中央部分を示した説明図である。
図3】ショルダーピーク温度の測定の一例を示した図である。
図4】冷却速度とショルダーピーク温度との関係の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(I)電力ケーブル1の構造:
以下、本発明の一態様を説明する。図1は本発明に係る電力ケーブル1の一例を示した断面図である。なお、図1において、1は電力ケーブル、11は金属導体、12は内部半導電層、13は絶縁層、14は外部半導電層、をそれぞれ示す。また、金属導体11は断面が円形状の単線を載せているが、これは一例であり、後記するように金属導体11には撚線により構成されるもの等を含むものである。
【0024】
図1に示すように、本発明に係る電力ケーブル1は、金属導体11の外周に内部半導電層12、絶縁層13、外部半導電層14をこの順で積層した構造を含むものである。以下、各層等について説明する。
【0025】
(金属導体11)
金属導体11は、構成材料として銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属材料を使用することができる。金属導体11の断面形状は、円形状、矩形状等が使用される。一般的には、金属導体11の構成材料として銅やアルミニウム、形状としては円形状のものを使用することが好ましい。
【0026】
なお、前記した金属材料で構成された金属導体11の表面にスズ(錫)や銀等のめっきを施したものを金属導体11として用いてもよい。また、金属導体11としては、単線、撚線のいずれを用いることができる。
【0027】
金属導体11の断面積や形状は、特に制限はなく、電力ケーブル1の電圧階級や敷設条件等によって適宜決定することができるが、金属導体11の断面積は、60〜5000mmが好ましく、100〜3500mmが特に好ましい。断面が円形状の単線の場合は、外径が、10〜40mmであることが好ましい。
【0028】
金属導体11の構成は、撚線の場合、通常の電力ケーブル1で使用される構成または形状が好ましく、素線数/素線径として、例えば、7本/0.6mm、7本/0.8mm、7本/1.0mm、7本/1.2mm、19本/2.6mm等の構成を用いてもよい。また、JIS C3105の硬銅より線、JIS C3102の軟銅より線等に記載される構成の素線数/素線径等を使用してもよい。
【0029】
(絶縁層13)
絶縁層13を構成する樹脂としては、本発明では、融点が110℃以上のプロピレン系樹脂(以下、単に「プロピレン系樹脂」とする場合もある。)を含む。プロピレン系樹脂としては、プロピレン成分を含む樹脂ないしは樹脂組成物を指し、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン等が挙げられる。また、プロピレン系樹脂には、プロピレン重合体(前記したポリプロピレンや、プロピレンと例えば5質量%以下のプロピレン以外のα−オレフィンとのランダム共重合体等。)を含むものである。
【0030】
ランダムポリプロピレンとしては、α−オレフィン(炭素数2〜4のオレフィンが好ましい。)とプロピレンとのランダム共重合体からなる樹脂が挙げられ、ブロックポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレンとエチレン−α−オレフィン(例えば、エチレン−プロピレン)共重合体とを含む組成物等が挙げられる。プロピレン系樹脂にはプロピレン重合体(例えば、プロピレン−α−オレフィン共重合体、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等。)も含まれる。
【0031】
また、本発明において、融点が110℃以上のプロピレン系樹脂としては、一般的にオレフィン系熱可塑性エラストマーとも呼ばれる、多段気相重合により得られた樹脂を用いることが好ましい。多段気相重合により得られた樹脂は、ポリプロピレンの有する、剛性および耐熱性を維持しつつ、耐衝撃強度(特に低温における衝撃強度等。)を改良する樹脂材料として知られており、電力ケーブル1の絶縁層13の構成材料にも適する。
【0032】
多段気相重合により得られた(プロピレン系)樹脂は、一般に、異相共重合体(Heterophasic Copolymers)、またはインパクトコポリマー、またはリアクターメイドアロイ、またはリアクターメイド熱可塑性エラストマー、リアクターTPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)と呼ばれており、リアクターTPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)が一般的である。
【0033】
このような樹脂は、結晶性プロピレン重合体(ポリプロピレンや、プロピレンと例えば5質量%以下のプロピレン以外のα−オレフィンとの結晶性ランダム共重合体等。)とエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム(あるいはプロピレン−α−オレフィン共重合体ゴム。以下、エチレン−α−オレフィン共重合体を例として挙げて説明しているところもある。)とを含む樹脂組成物であって、一般に、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムの含有率が高いものをいう。
【0034】
プロピレン重合体とエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムの含有率は、耐熱性と柔軟性の点からは、プロピレン重合体20〜70質量%、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム30〜80質量%とすることがそれぞれ好ましい。多段気相重合により得られたプロピレン系樹脂(リアクターTPO、オレフィン系熱可塑性エラストマー)に含有されるエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムとしては、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−ブテン共重合体ゴム、エチレン−ヘキセン共重合体ゴム、エチレン−オクテン共重合体ゴム等が挙げられる。プロピレン−α−オレフィン共重合体ゴムとしては、前記したエチレン−プロピレン共重合体ゴムのほか、プロピレン−ブテン共重合体ゴム、プロピレン−ヘキセン共重合体ゴム、プロピレン−オクテン共重合体ゴム等が挙げられる。
【0035】
一般に、多段気相重合による異相共重合体の製造には、少なくとも2基のリアクターが必要であり、例えば、1段目のプロピレンの単独重合体(ポリプロピレン)、あるいはプロピレンと5質量%以下のプロピレン以外のα−オレフィンとの結晶性ランダム共重合体(以上、プロピレン重合体)を製造する工程と、2段目以降の、エチレン、ブテン等に代表されるエチレン−α−オレフィン(あるいはプロピレン−α−オレフィン共重合体)とのランダム共重合体エラストマー(共重合体ゴム、ゴム状共重合体等。)を製造する工程とを含む重合工程からなる。第1工程で比較的結晶性の高いプロピレン重合体を製造し、引き続き第2工程でエチレン−α−オレフィン(あるいはプロピレン−α−オレフィン共重合体)との重合体ゴムを製造することによって得られる。
【0036】
多段気相重合を実施する際に用いる反応触媒としては、例えば、従来公知のチーグラー−ナッタ(Ziegler−Natta)触媒やメタロセン触媒等が挙げられる。また、
多段気相重合を実施する際に用いるモノマーとしては、プロピレンとエチレン、ブテン等のα−オレフィンのモノマー等が挙げられる。
【0037】
多段気相重合により得られる樹脂は、各段階で生成する微粉状の樹脂成分が重合時のリアクター中でブレンドされる。これを溶融混練することにより、従来のポリプロピレンとエラストマーのペレットをブレンドして溶融混練する方法に比べ、より微細なポリプロピレン等のプロピレン重合体成分の海と、エラストマー成分(共重合体ゴム成分)の島を持つミクロ相分離構造を持つ樹脂が得られる。本発明に用いられるエラストマー成分の平均粒子径としては、5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることが特に好ましい。
【0038】
かかる多段気相重合により得られたプロピレン系樹脂の市販品としては、キャタロイプロセス樹脂と呼ばれる一連の樹脂、例えば、Adflex、Hifax、Softell、Adsyl(以上、登録商標)(以上、ライオンデルバセル社製)の製品群が挙げられる。また、タフマー(登録商標)PN(三井化学(株)製)、タフセレン(登録商標)(住友化学(株)製)、ニューコン(登録商標)(日本ポリプロ(株)製)、プライムTPO(登録商標)(プライムポリマー(株)製)等の製品群も好適に用いられる。
【0039】
また、融点が110℃以上のプロピレン系樹脂には、プロピレン重合体(前記したポリプロピレンや、プロピレンと例えば5質量%以下のプロピレン以外のα−オレフィンとのランダム共重合体等。)と、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1つを混合し、例えば、直径が5μm以下の島が形成されるまで溶融混練して、プロピレン重合体の海成分にエチレン−α−オレフィン共重合体等の島成分が形成されるよう、微細分散させた樹脂組成物も含む。
【0040】
絶縁層13に用いられるプロピレン系樹脂は適度の溶融流動性を持つことが好ましく、その流動性はISO 1133(JIS K7210)で規定されるメルトフローレート(Melt Flow Rate:MFR) (230℃/2.16kgf)として表すことができる。押出成形の生産性の観点からは、MFRは0.1g/10分以上が好ましく、0.5g/10分以上がより好ましい。また、偏肉を抑える観点からは、10g/10分以下が好ましく、5g/10分以下がより好ましい。
【0041】
絶縁層13を構成する融点が110℃以上のプロピレン系樹脂は、絶縁層13全体に対して15質量%以上含有する。かかるプロピレン系樹脂を絶縁層13全体に対して15質量%以上含有とすることにより、大電流による発熱にも耐えることができる樹脂となる。プロピレン系樹脂は、絶縁層13全体に対して15〜100質量%であることが好ましく、20〜100質量%であることが特に好ましい。
【0042】
なお、絶縁層13に、後記する、融点が110℃未満の熱可塑性樹脂等、他の樹脂等を添加する場合は、プロピレン系樹脂の含有量は、絶縁層13全体に対して20〜99質量%であることが好ましく、25〜99質量%であることが特に好ましい。
【0043】
また、絶縁層13の厚さは、絶縁特性からは、2mm以上とすることが好ましく、5mm以上とすることがさらに好ましく、10mm以上とすることが特に好ましい。また、敷設作業性からは、50mm以下とすることが好ましく、40mm以下とすることが特に好ましい。
【0044】
絶縁層13を構成する樹脂として、前記したプロピレン系樹脂以外に用いることができる樹脂としては、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂等、電力ケーブル1の絶縁層13として使用される従来公知の熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0045】
絶縁層13の低弾性化及び低温脆化耐性の向上等を図るため、融点が110℃未満の熱可塑性樹脂を任意成分として配合することもできる。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン可塑性エラストマーや多段気相重合以外で製造されたエチレン−α−オレフィン共重合系熱体(例えば、エチレン−ブテン共重合体等。)やプロピレン−α−オレフィン共重合体等を添加することができ、これらの樹脂の添加により、低弾性化及び低温脆化耐性が向上する。
【0046】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、水添(水素添加を指す。以下同じ。)スチレン系熱可塑性エラストマーも含め、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)や、ブタジエン重合体ブロック及びイソプレン重合体ブロックをそれぞれ水素添加して得られる、(水添)スチレン−ブタジエンゴム(HSBR)、(水添)スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、(水添)スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン−ブロック共重合体(SEPS)及び(水添)スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン−エチレンブチレン−オレフィン結晶ブロック共重合体(SEBC)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR)、等のスチレン系熱可塑性エラストマーを使用することができる。これらのスチレン系熱可塑性エラストマーは、その1種を単独で使用してもよく、また、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0047】
これらの樹脂は、添加する場合は、絶縁層13全体に対して、0を超えて80質量%以下の範囲で含有することが好ましく、0を超えて75質量%以下の範囲で含有することが特に好ましい。
【0048】
なお、低弾性化のための任意成分として、絶縁層13には、例えば、ポリイソブテン、直鎖型アルキルベンゼンなどのアルキル化芳香族、またはシリコーン油を、絶縁層13全体に対して0〜10質量%の範囲で添加することができる。また、耐熱性向上のための任意成分として、例えば、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド(日油社製パーヘキシルD)、ジクミルパーオキサイド(日油社製パークミルD)、2, 5−ジメチル−2, 5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日油社製パーヘキサ25B)、α, α' −ジ(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日油社製パーブチルP)、t−ブチルクミルパーオキサイド(日油社製パーブチルC)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(日油社製パーブチルD)等の有機過酸化物を絶縁層13全体に対して0〜5質量%の範囲で添加することができる。
【0049】
(内部半導電層12及び外部半導電層14)
内部半導電層12及び外部半導電層14(以下、本欄では「内部半導電層12等」とする場合もある。)を構成する材料としては、特に限定はされず、一般に電力ケーブル1で内部半導電層12等として使用される材料を用いることができ、例えば、ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂をベース材料として、導電性材料等を添加した樹脂組成物等が挙げられる。また、これらからなる樹脂組成物を架橋するようにしてもよい。樹脂組成物における各成分の配合量は、選択した成分や配合する目的等により適宜決定すればよい。
【0050】
内部半導電層12等を構成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、本発明にあっては、例えば、前記した絶縁層13を構成する材料として挙げたプロピレン系樹脂や、導電性カーボンの分散性に優れたエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル(エチルアクリレート)共重合体(EEA)等のエチレン系重合体、それ以外のポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、その1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いるようにしてもよい。これらの熱可塑性樹脂の中でも、プロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
【0051】
導電性材料としては、従来公知の材料を用いればよく、特に限定されないが、一般に、導電性カーボンを用いることが好ましい。導電性カーボンとしては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック、グラファイト等が挙げられる。これらの材料はその1種類を単独で用いてもよく、または2種以上を組み合わせて用いることができる。導電性材料は、熱可塑性樹脂100質量部に対して20〜100質量部の範囲で、内部半導電層12等に配合されることが好ましい。
【0052】
内部半導電層12及び外部半導電層14の厚さは、電力ケーブル1の電圧階級や敷設条件等によって適宜決定することができ、特に限定するものではないが、絶縁特性からは0.1mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましい。また、導電特性からは、5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、2mm以下がさらに好ましい。
【0053】
なお、内部半導電層12、絶縁層13、外部半導電層14を構成する材料としては、本発明の目的と奏する効果を阻害しない範囲で、必要により、例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭化珪素、マイカ等の無機充填剤、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸またはその金属塩等の可塑剤、鉱物油、ワックス、パラフィン類等の軟化剤、エステル、アミド類、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)等の老化防止剤、ヒンダートフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、安定剤、架橋剤等、及びその他の電力ケーブル1を構成する材料に添加される従来公知の添加剤を添加してもよい。
【0054】
なお、図1には図示しないが、前記の構造の電力ケーブル1をケーブルコアとして、その周囲に下記の遮蔽層、シース(外皮)を形成するのが一般的である。
【0055】
(遮蔽層)
遮蔽層はテープ状または押出した金属が挙げられる。例えば、銅テープ、アルミテープやアルミ、鉛、ステンレス鋼材(SUS)をケーブルコアの外周に押し出して形成したもの等が挙げられ、遮蔽層としては、銅テープを使用することが好ましい。なお、遮蔽層の内側や外側に、ゴム引き布等を素材としたテープ等が巻回されていてもよい。
【0056】
遮水層の厚さは、電力ケーブル1の電圧階級や敷設条件によって異なり、限定するものではないが、遮水層の厚さは、例えば、テープ状であれば1mm以下が好ましく、0.05〜0.5mmがより好ましい。
【0057】
(シース(外皮))
シースは、絶縁層を含むケーブルコアの保護、水分からの隔離を主な目的とする。本発明では、単なるシース以外に、防食層や遮水層等の機能性層を含む。シースを構成する材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリエチレン樹脂等が挙げられる。
【0058】
シースの厚さは、特に限定はなく、電力ケーブル1の電圧階級や敷設条件等によって適宜決定することができるが、シースの厚さは、0.1〜3mmが好ましく、0.5〜2mmが特に好ましい。
【0059】
(II)電力ケーブル1の製造:
電力ケーブル1は、金属導体11の外周に内部半導電層12と絶縁層13と外部半導電層14が、この順に押出成形により積層されて製造され、絶縁層13における内部半導電層12との界面部分の製造時の冷却速度X[℃/分]と、絶縁層13の中央部分の製造時の冷却速度Y[℃/分]の関係が、後記する式(Z)で表されるように形成される。なお、さらにこれらの外周に、図1には図示しない前記した遮蔽層とシースが積層されている構成が一般的である。
【0060】
押出成形による電力ケーブル1の製造方法の一例を示すと、金属導体11を巻いた図示しないドラムより、金属導体11を図示しない樹脂押出し口に連続的に供給し、かかる樹脂押出し口で内部半導電層12、絶縁層13及び外部半導電層14を被覆する。これら3層12,13,14は、同時に押し出して被覆、積層してもよいし、順次被覆して積層してもよい。
【0061】
なお、被覆時の金属導体11が先に被覆した樹脂(樹脂組成物を含む。以下同じ)からの伝熱により加熱されている場合、金属導体11近傍の樹脂の冷却速度が遅くなることを考慮して、金属導体11の温度を好ましくは1〜100℃(より好ましくは5〜100℃)に冷却した状態で、樹脂押出し口に供給するのが好ましい。
【0062】
内部半導電層12、絶縁層13及び外部半導電層14を構成する樹脂(樹脂組成物)の積層は、樹脂押出し機から該当する樹脂を金属導体11の周囲に押し出して行われる。積層押出し時の樹脂温度は、樹脂融点以上であることが好ましく、具体的には110℃以上であり、140℃以上が好ましい。また、各樹脂層間の密着性を高めるには160℃以上であり、180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。さらに、押出し時の樹脂垂れを防ぐには270℃以下が好ましく、樹脂の熱劣化を防ぐためには240℃以下が好ましい。
【0063】
本発明の製造で用いられる樹脂(樹脂組成物)を用いることのできる製造ラインとしては、垂直下法に導体を供給し、これに樹脂を被覆させて硬化冷却させる縦型押出しライン(VCV)や、樹脂を水平に押出してケーブルを水平に保ったまま硬化冷却させる横型押出しライン、樹脂を斜め下法に押出して懸垂曲線様に硬化冷却させるカテナリー型押出しライン(CCV)などのいずれのケーブル製造ラインでも用いることができる。本発明の製造で用いられる樹脂を偏肉が重力の影響を受けやすい横型押出しラインやカテナリー型押出しラインに用いた場合、偏肉の発生を低減させることができるので特に有用である。
【0064】
(III)冷却速度X、Y及びその確認方法:
本発明の電力ケーブル1は、絶縁層13における内部半導電層12との界面部分の製造時の冷却速度X[℃/分]と、絶縁層13の中央部分の製造時の冷却速度Y[℃/分]の関係が、下記式(Z)で表される。
X≧Y×0.8 …… (Z)
【0065】
図2は、絶縁層13における内部半導電層12との界面部分及び絶縁層13の中央部分を示した説明図である。電力ケーブル1の断面から見て、「絶縁層13における内部半導電層12との界面部分」は、図2において太線で示した、内部半導電層12と絶縁層13との界面21より絶縁層13側の部分であって、概ね1mm以内の部分を指す。
【0066】
また、「絶縁層13の中央部分」とは、図2において点線で示した、絶縁層の厚さを1/2に分ける中央線22周辺で、概ね±1mmの範囲内の部分を指す。なお、図2において、矢印a1と矢印a2の長さは等しいものである。
【0067】
式(Z)は、絶縁層13における内部半導電層12との界面部分(絶縁層13中央部分より内側で、金属導体11寄り。)の製造時の冷却速度Xが、絶縁層13中央部分の製造時の冷却速度Yの80%以上であることを示している。これにより、電力ケーブル1の外側から冷却する外部冷却により各層の冷却固化を実施する場合であっても、絶縁層13における内部半導電層12との界面部分も確実に冷却され、絶縁層13における表面(外部半導電層14との界面となる。)だけでなく、その内側(金属導体11に近い側となる。)の部分も確実に冷却固化されることになる。
【0068】
よって、自重により金属導体11が電力ケーブル1の中心からずれることもなく、偏肉が発生しにくくなり、加えて、冷却収縮のひずみが分散されることにより、引けによるボイドの発生が抑えられると考えられる、絶縁破壊強度が良好な電力ケーブル1となる。
【0069】
なお、絶縁層13における内部半導電層12との界面部分の製造時の冷却速度X[℃/分]と、絶縁層の中央部分の製造時の冷却速度Y[℃/分]との関係が、下記式(Z’)の関係となることが好ましい。
Y×3≧X≧Y×0.8 …… (Z’)
【0070】
また、絶縁層13における内部半導電層12との界面部分の製造時の冷却速度X[℃/分]は、絶縁層13中央部分の製造時の冷却速度Y[℃/分]の0.9倍以上であることが特に好ましい。
【0071】
パラメータとなる冷却速度X、Y[℃/分]については、熱電対を絶縁層13内に挿入して等の実測が困難な場合、該当部分(絶縁層13における内部半導電層12との界面部分、絶縁層13の中央部分。)から採取した対象サンプルを、DSC(示差走査熱量測定)を用いて、昇温過程で観測される融解ピークにおける低温側で測定されるショルダーピーク温度[℃]と、昇温過程後に冷却する際の冷却速度[℃/分]より冷却速度とショルダーピーク温度の関係を求め、かかる関係より確認するようにしてもよい。具体的な確認方法を以下に示す。
【0072】
本発明の電力ケーブル1における絶縁層13を構成する樹脂ないし樹脂組成物は、DSCにより昇温により融点を測定すると、例えば、120〜200℃の範囲内で観測される融解ピークの低温側で測定されるショルダーピークの位置(ショルダーピーク温度となる。)は、測定直前の融解から冷却固化する際の冷却速度と相関があると考えられる。樹脂等の測定対象の冷却固化による再結晶化時の冷却速度が十分に遅い場合、結晶化可能な高分子鎖は安定な結晶へと変化するが、冷却速度が速い場合は、高分子鎖が完全に折りたたまれて結晶化するよりも早く固化が進み、安定な結晶にならなかった部分が生じる。DSCで昇温により融点を測定した場合、この不完全な部分がショルダーピークとなって融解ピークの低温側に現れる。
【0073】
そのため、冷却速度[℃/分]の対数を横軸に、ショルダーピーク温度[℃]を縦軸に取ることにより得られた検量線から、電力ケーブル1を製造時の絶縁層13を構成する樹脂等が結晶化温度で冷却固化した際の冷却速度を求めることができる。
【0074】
まず、電力ケーブル1における前記した図2に示した部分(界面部分、中央部分)に対応する部分のサンプルを採取する(対象サンプル)。
【0075】
(1)かかる対象サンプルについて、DSCにより、例えば、120〜200℃の昇温過程(以下、単に「昇温過程」とする。かかる昇温過程により融点が確認できる。)におけるショルダーピーク温度を確認する。
【0076】
(2)昇温過程の後、所定の冷却速度(例えば、1℃/分。)で冷却し、対象サンプルを冷却固化させる。冷却固化された対象サンプルに対して、2回目の融点測定を行い、かかる融点測定の際の昇温過程におけるショルダーピーク温度を確認する。本操作により、冷却速度が1℃/分の場合のショルダーピーク温度が確認される。
【0077】
(3)冷却速度を変更して(例えば、1℃/分から3℃/分に変更。)冷却し、3回目の融点測定を行い、かかる融点測定の際の昇温過程におけるショルダーピーク温度を確認する。本操作により、冷却速度が3℃/分の場合のショルダーピーク温度が確認できる。
【0078】
(4)(3)の操作を繰り返し、所定の冷却速度(例えば、10℃/分、20℃/分等。)とその後の融点測定の際の昇温過程におけるショルダーピーク温度を確認する(1℃/分、3℃/分、10℃/分及び20℃/分の場合のショルダーピーク温度が確認されることになる。)。なお、昇温過程における昇温速度(例えば、10℃/分等。)は、(1)〜(4)の操作においては変更せず、一定にする。
【0079】
図3は、ショルダーピーク温度の確認方法の一例を示した図である。図3は、前記(2)〜(4)の操作に倣い、冷却速度が1℃/分、3℃/分、10℃/分及び20℃/分で測定した融解曲線を載せている。
【0080】
ショルダーピーク温度の求め方は、JIS K7121(プラスチックの転移温度測定方法)を参考に、下記(i)、(ii)のように行うことが好ましい。
(i)ショルダーピーク温度(Ts)[℃]は、ショルダーピークの頂点の温度とする。
(ii)ショルダーピーク温度(Ts)[℃]がなだらかで頂点を決定しにくい場合は、ショルダーピーク低温側の曲線に勾配が最大になる点で引いた接線と、ショルダーピーク高温側の曲線に勾配が最小になる点で引いた接線の交点の温度とする。
【0081】
図3は、このようにして接線を引いた例を載せている。例えば、冷却速度が1℃/分の融解曲線において、ショルダーピークの低温側の曲線に勾配が最大になる点で引いた接線L1と、ショルダーピークの高温側の曲線に勾配が最小になる点で引いた接線L2の交点(矢印で指した点)の温度(約150.9℃)が、ショルダーピーク温度となる。冷却速度が3℃/分、10℃/分及び20℃/分のものについても同様である。
【0082】
(5)(2)〜(4)により求められた冷却速度とショルダーピーク温度との関係を、冷却速度[℃/分]の対数(横軸)に対するショルダーピーク温度[℃](縦軸)としてプロットし、検量線(一般に一次関数(直線)となる。)を作成する。図4は、冷却速度とショルダーピーク温度との関係の一例を示した図である。
【0083】
(6)そして、(1)で確認したショルダーピーク温度を、作成した検量線に当てはめて、対応する冷却速度を求める。求められた冷却速度が、対象サンプルの製造時の冷却速度と推定される。
【0084】
なお、昇温過程の温度範囲は、特に限定はなく、0〜200℃の範囲から広く用いることができるが、例えば、前記したような120〜200℃から融解ピークを読み取ることで、プロピレン系樹脂の融点を確実にカバーすることができるとともに、融点が110℃未満の樹脂が添加された場合のピークを排除することができるため好ましい。
【0085】
また、絶縁層13の中央部分の製造時の冷却速度Yは、0.05〜40℃/分程度であることが好ましく、0.1〜30℃/分であることがさらに好ましい。冷却速度Yがかかる範囲であれば、絶縁破壊強度(絶縁性能)が確実に良好となる一方、冷却速度Yが0.1℃/分を下回ると、冷却効率が悪く、若干の偏肉につながる場合があり、30℃/分を超えると、冷却固化が過度に速く進行し、応力ひずみによる微小ボイドが部分的に発生してしまう場合がある。冷却速度Yは、0.1〜15℃/分であることが特に好ましい。
【0086】
これに対して、絶縁層13における内部半導電層12との界面部分の製造時の冷却速度Xは、0.04〜40℃/分程度であることが好ましく、0.1〜30℃/分であることが特に好ましい。
【0087】
(IV)発明の効果:
本発明に係る電力ケーブル1は、絶縁層13として特定範囲のプロピレン系樹脂を含有し、絶縁層13における内部半導電層12との界面部分の製造時の冷却速度Xと、絶縁層13の中央部分の製造時の冷却速度Yとの関係を特定なものとしているので、絶縁層13における表面だけでなく、絶縁層13内部、絶縁層13における内部半導電層12との界面部分及びその内部も確実に冷却されて硬化されることになる。よって、自重により金属導体11が電力ケーブル1の中心からずれることもなく、偏肉が発生しにくくなり、加えて、冷却収縮のひずみが分散されることにより、引けによるボイドの発生が抑えられ、絶縁破壊強度が良好な電力ケーブル1となる。
【0088】
また、本発明に係る電力ケーブル1の製造方法は、前記の効果を奏する電力ケーブル1を提供することができる。
【0089】
(V)実施形態の変形:
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
【0090】
例えば、前記した(III)において、DSCの冷却速度として、1℃/分、3℃/分、10℃/分及び20℃/分の4条件を用いた例を挙げて説明しているが、DSCの冷却速度は、あくまでも図4に一例を示すような関係を求めるために便宜的に選択したものであるから、DSCの測定で用いる冷却速度の条件及びその条件数は任意に決定することができる。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
[実施例1]
電力ケーブルの製造:
下記の材料および方法を用いて、金属導体の外周に内部半導電層、絶縁層、外部半導電層をこの順で積層した、図1に示した構造の電力ケーブルを製造した。
【0093】
金属導体としてJIS C3105の硬銅より線(素線数/素線径:19本/2.6mm、断面積:100mm)の銅導体を用いて、絶縁層の構成材料として後記する樹脂A(Hifax CA10A)を単軸押出し機(L/D=24、200℃、フルフライトスクリュー)で押出し、別の単軸押出し機(L/D=24、200℃、フルフライトスクリュー)で押出した、表1に示した内部半導電層及び外部半導電層を構成する樹脂とともに、3層ヘッド(200℃)にて銅導体の外周に被覆を行った。被覆後、加圧冷却管を通過させて冷却し(空冷)、次いで冷却水槽に送り冷却(冷却)することにより、実施例1の電力ケーブルを製造した。
【0094】
製造された電力ケーブルは銅導体の断面積100mm、内部半導電層の厚さを0.5mm、絶縁層の厚さを10mm、外部半導電層の厚さを0.5mmとしてそれぞれ構成された。内部半導電層、外部半導電層(以下、「半導電層」とする場合もある。)の構成材料を表1に示す。
【0095】
(半導電層の組成)
【表1】
【0096】
半導電層(内部半導電層、外部半導電層)は、表1に示した組成の樹脂組成物をヘンシェルミキサーによりドライブレンドを行った後、市販の単軸押出し機(L/D=24、200℃)で混練押出し、ペレット化したものを用いた。具体的には、下記の樹脂等を用いた。
【0097】
(半導電層を構成する樹脂)
EV450(エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、三井・ダウポリケミカル社製)
Adflex Q200F(多段気相重合により得られた樹脂であるプロピレン−α−オレフィン共重合体とポリプロピレンからなる熱可塑性エラストマー(オレフィン系熱可塑性エラストマー)、サンアロマー社製、MFR 0.8g/10分(230℃)、融点 162℃)
デンカブラック(カーボンブラック、デンカ(株)製)
ノクラック300(老化防止剤、大内新興化学工業(株)製)
【0098】
[実施例2ないし実施例8]
実施例1において、絶縁層を構成する樹脂として樹脂Aから表2に示した樹脂あるいは樹脂組成物に変更(実施例2、実施例3は実施例1と共通。)し、各実施例について金属導体である銅導体の供給速度、水冷を行う冷却水槽の水温を調整して、冷却速度を変化させるようにした以外は、実施例1に記載した内容と同様にして、実施例2ないし実施例8の電力ケーブルを製造した。なお、実施例2及び実施例4は、水冷を行わず空冷のみとした。
【0099】
[比較例1]
実施例1において、金属導体である銅導体の供給速度、冷却水槽の水温を調製して冷却速度を変化させた以外は、実施例1に記載した内容と同様にして、比較例1の電力ケーブルを製造した。
【0100】
また、絶縁層は、下記の樹脂、あるいは下記の樹脂を混合してなる樹脂組成物を構成材料とした。なお、樹脂A、樹脂Bはプロピレン系樹脂に相当する。
【0101】
(樹脂A)
Hifax CA10A(多段気相重合により得られた樹脂である65質量%のエチレン−プロピレン共重合体とポリプロピレンからなる熱可塑性エラストマー(オレフィン系熱可塑性エラストマー):ライオンデルバセル社製、MFR 0.6g/10分(230℃)、融点 145℃)
【0102】
(樹脂B)
Adflex Q200F(多段気相重合により得られた樹脂であるプロピレン−α−オレフィン共重合体とポリプロピレンからなる熱可塑性エラストマー(オレフィン系熱可塑性エラストマー)、サンアロマー社製、MFR 0.8g/10分(230℃)、融点 162℃)
【0103】
(樹脂C)
タフテック H1041(水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)、旭化成(株)製、MFR 5.0g/10分(230℃)、融点 86℃)
【0104】
(樹脂D)
タフマーBL3110M(エチレン−ブテン共重合体、三井化学(株)製、MFR 3g/10分(190℃)、融点 108℃)
【0105】
[試験例1]
雷インパルス試験:
前記のようにして製造した電力ケーブルについて、JIS C3005に準じて試験温度を90℃として雷インパルス試験を行った。なお、雷インパルス試験は、170kV/mm以上であれば合格として、170kV/mmを下回った場合を不合格とした。
【0106】
なお、雷インパルス試験の測定は、絶縁層の電気的破壊レベル(絶縁破壊強度)を確認する試験(絶縁破壊試験)であるが、雷インパルス試験が良好であれば、絶縁層における偏肉も無く、引けによるボイドや剥離等の発生もないものと考えられる。
【0107】
(冷却速度の測定、製造時の冷却速度の確認)
冷却速度を測定におけるサンプリングに関し、実施例1ないし実施例8、比較例1の電力ケーブルについて、図2に示す部分に対応する、「絶縁層における前記内部半導電層との界面部分」及び「絶縁層の中央部分」から、約100mgの対象サンプルをそれぞれ採取した。
【0108】
測定は市販のDSC装置(DSC7020AS−3D:(株)日立ハイテクサイエンス製)を用いて行った。昇温時の速度は10℃/分、温度サイクル範囲は0〜200℃とした。
【0109】
そして、「(III)冷却速度X、Y及びその確認方法:」に記載した確認方法に準じ、対象サンプルのDSC測定後、引き続きこの試料を用いて検量線を作成した。DSCの冷却速度[℃/分]は、(III)にある1、3、10、20℃/分に対して、3、5、10、20℃/分として昇温と冷却を繰り返して、それぞれの冷却速度の対数に対する、融解ピークの低温側に現れるショルダーピーク温度[℃/分]を確認し、図4に示すような関係を求め、検量線を作成した。なお、ショルダーピーク温度は、(III)(特に(4)(i)、(ii)。)及び図3に示すように、ショルダーに対する2本の接線の交点から求めた。
【0110】
そして、1回目の融点測定で確認したショルダーピーク温度を、作成した検量線に当てはめて、対応する冷却速度を求め、かかる冷却速度を、対象サンプルの製造時の冷却速度とした。絶縁層等を構成する樹脂(ないしは樹脂組成物)とあわせて結果を表2に示す。
【0111】
(構成材料及び結果)
【表2】
【0112】
表2に示すように、絶縁層における内部半導電層との界面部分の製造時の冷却速度X[℃/分]と、絶縁層の中央部分の製造時の冷却速度Y[℃/分]との関係が、下記式(Z)の関係を具備する実施例1ないし実施例8については、雷インパルス試験の結果もすべて合格であり、絶縁破壊特性が良好であることが確認できた。
【0113】
なお、実施例4及び実施例5は、絶縁層における中央部分の製造時の冷却速度Yが0.1〜30℃/分の範囲外であり、実施例1ないし実施例3の結果より悪かった。また、実施例8は樹脂C(水添スチレン系熱可塑性エラストマー)の含有量が、類似する構成の実施例6より多く、その分、プロピレン系樹脂(樹脂B)が少ないためか、実施例6より結果が悪かった。
【0114】
一方、比較例1は、界面部分の製造時の冷却速度Xが中央部分の製造時の冷却速度Yに対して低いため、式(Z)の関係を具備しない。その結果、雷インパルス試験の結果が170kV/mmを下回り不合格であった。冷却速度が比較例1のような関係の場合、絶縁層に「引け」が生じて、絶縁破壊特性(絶縁特性)が低下するものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、絶縁破壊強度(絶縁特性)が良好な電力ケーブル及び電力ケーブルの製造方法を簡便に提供する手段として利用することができ、産業上の利用可能性は高いものである。
【符号の説明】
【0116】
1 …… 電力ケーブル
11 …… 金属導体
12 …… 内部半導電層
13 …… 絶縁層
14 …… 外部半導電層
21 …… 界面
22 …… 中央線
a1,a2 …… 矢印
L1,L2 …… 接線
【要約】
【課題】絶縁層の偏肉や、引けによるボイドや剥離の発生を低減し、絶縁破壊強度が良好な電力ケーブル及び電力ケーブルの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る電力ケーブル1は、絶縁層13として特定範囲のプロピレン系樹脂を含有し、絶縁層13における内部半導電層12との界面部分の製造時の冷却速度Xと、絶縁層13の中央部分の製造時の冷却速度Yとの関係を特定なものとしているので、絶縁層13における表面だけでなく、絶縁層13内部、絶縁層13における内部半導電層12との界面部分及びその内部も確実に冷却されて硬化されることになる。よって、自重により金属導体11が電力ケーブル1の中心からずれることもなく、偏肉が発生しにくくなり、加えて、冷却収縮のひずみが分散されることにより、引けによるボイドの発生が抑えられ、絶縁破壊強度が良好な電力ケーブル1となる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4