特許第6800387号(P6800387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6800387銅合金条材およびその製造方法、それを用いた抵抗器用抵抗材料ならびに抵抗器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6800387
(24)【登録日】2020年11月26日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】銅合金条材およびその製造方法、それを用いた抵抗器用抵抗材料ならびに抵抗器
(51)【国際特許分類】
   C22C 9/05 20060101AFI20201207BHJP
   C22C 9/06 20060101ALI20201207BHJP
   C22C 9/02 20060101ALI20201207BHJP
   C22C 9/04 20060101ALI20201207BHJP
   H01C 7/00 20060101ALI20201207BHJP
   C22F 1/08 20060101ALI20201207BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20201207BHJP
【FI】
   C22C9/05
   C22C9/06
   C22C9/02
   C22C9/04
   H01C7/00 110
   C22F1/08 N
   !C22F1/00 661B
   !C22F1/00 682
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 685Z
   !C22F1/00 686A
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 691Z
   !C22F1/00 694A
   !C22F1/00 623
   !C22F1/00 630M
   !C22F1/00 691C
   !C22F1/00 694B
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-542680(P2020-542680)
(86)(22)【出願日】2020年3月26日
(86)【国際出願番号】JP2020013832
【審査請求日】2020年8月6日
(31)【優先権主張番号】特願2019-64302(P2019-64302)
(32)【優先日】2019年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】川田 紳悟
(72)【発明者】
【氏名】秋谷 俊太
(72)【発明者】
【氏名】樋口 優
【審査官】 小川 進
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/150705(WO,A1)
【文献】 特開2016−69724(JP,A)
【文献】 特開2012−20325(JP,A)
【文献】 特開2018−74137(JP,A)
【文献】 特開2000−256775(JP,A)
【文献】 国際公開第2019/244842(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 9/05
C22C 9/02
C22C 9/04
C22C 9/06
H01C 7/00
C22F 1/08
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3質量%以上20質量%以下のマンガン(Mn)を含有し、残部が銅(Cu)および不可避不純物からなる組成を有する銅合金条材であって、
オージェ電子分光法により、表面と、該表面から深さ方向に0.05μm位置とで区画される表層領域にて測定した、Mn含有量のCu含有量に対する比(表層[Mn/Cu]比)が、質量比に換算して、0.030未満であることを特徴とする、銅合金条材。
【請求項2】
オージェ電子分光法により、表面から深さ方向に5μm位置と10μm位置とで区画される内部領域にて測定したMn含有量に対する、前記表層領域にて測定したMn含有量の比(表層Mn含有量/内部Mn含有量比)が、質量比に換算して、0.50以下であることを特徴とする、請求項1に記載の銅合金条材。
【請求項3】
マンガンを5質量%以上20質量%以下含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の銅合金条材。
【請求項4】
0.01質量%以上5質量%以下のニッケル、
0.01質量%以上5質量%以下の錫、
0.01質量%以上5質量%以下の亜鉛、
0.01質量%以上0.5質量%以下の鉄、
0.01質量%以上0.5質量%以下のケイ素、
0.01質量%以上0.5質量%以下のクロム、
0.01質量%以上0.5質量%以下のジルコニウム、
0.01質量%以上0.5質量%以下のチタン、
0.01質量%以上0.5質量%以下の銀、
0.01質量%以上0.5質量%以下のマグネシウム、
0.01質量%以上0.5質量%以下のコバルト、および、
0.01質量%以上0.5質量%以下のリンからなる群より選択される1種以上の元素を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅合金条材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅合金条材の製造方法であって、
鋳造工程[工程1]、均質化処理工程[工程2]、熱間圧延工程[工程3]、面削工程[工程4]、第1冷間圧延工程[工程5]、第1酸化被膜形成工程[工程6]および第1酸化被膜除去工程[工程7]をこの順に有し、
前記第1酸化被膜形成工程では、第1冷間圧延工程で得られた第1冷延板を、0.01〜2.00体積%の酸素を含んだ中性ガス雰囲気下で、200℃以上800℃以下で加熱して、第1酸化被膜を形成し、
前記第1酸化被膜除去工程では、前記第1酸化被膜形成工程で形成された前記第1冷延板の前記第1酸化被膜を、硫酸水溶液で除去することを特徴とする、銅合金条材の製造方法。
【請求項6】
前記第1酸化被膜除去工程[工程7]後に、前記第2冷間圧延工程[工程8]をさらに有することを特徴とする、請求項5に記載の銅合金条材の製造方法。
【請求項7】
前記第2冷間圧延工程[工程8]後に、第2酸化被膜形成工程[工程9]および第2酸化被膜除去工程[工程10]をさらに有し、
前記第2酸化被膜形成工程では、第2冷間圧延工程で得られた第2冷延板を、0.01〜2.00体積%の酸素を含んだ中性ガス雰囲気下で、200℃以上800℃以下で加熱して、第2酸化被膜を形成し、
前記第2酸化被膜除去工程では、前記第2酸化被膜形成工程で形成された前記第2冷延板の前記第2酸化被膜を、硫酸水溶液で除去することを特徴とする、請求項6に記載の銅合金条材の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の銅合金条材を用いた抵抗器用抵抗材料。
【請求項9】
請求項8に記載の抵抗材料を有する抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅合金条材およびその製造方法、それを用いた抵抗器用抵抗材料ならびに抵抗器に関し、特に、環境温度が変化しても安定した抵抗を有する銅合金条材に関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗器に使用される抵抗材の金属材料には、環境温度が変化しても抵抗器の抵抗が安定するように、その指標である抵抗温度係数(TCR)が小さいことが要求される。抵抗温度係数とは、温度による抵抗値の変化の大きさを1℃当たりの百万分率(ppm)で表したものであり、TCR(×10−6/K)=(R−R)/R×1/(T−T)×10という式で表される。ここで、式中のTは試験温度(℃)、Tは基準温度(℃)、Rは試験温度Tにおける抵抗値(Ω)、Rは試験温度Tにおける抵抗値(Ω)を示す。
【0003】
抵抗材を構成する金属材料として、Cu−Mn−Ni合金やCu−Mn−Sn合金が提案されている(例えば、特許文献1参照)。これらの金属材料はTCRが非常に小さい。
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるようなマンガンを所定量含む銅系合金材料は、安定した抵抗温度係数を有するが、このような銅合金では、表面が酸化されて酸化膜が形成しやすく、このようにして形成されたマンガンの酸化物により、はんだ濡れ性の低下が生じ、はんだに対する密着性が低い。
【0005】
抵抗材に用いる銅合金材料の表面の酸化を防止して、銅合金材料の抵抗値の変化を抑制するため、例えば特許文献2には、アルミニウムと錫を添加した銅合金材料を熱処理して表面を酸化した材料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−69724号公報
【特許文献2】特開2006−270078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の銅合金材料では、添加するアルミニウムがはんだ等の実装に悪影響を及ぼすため、実装性になお改良の余地があった。
【0008】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、環境温度が変化しても安定した抵抗を有し、かつ良好なはんだの実装性を有する銅合金材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、銅合金条材が3質量%以上20質量%以下のマンガンを含有し、残部が銅および不可避不純物からなる組成を有し、オージェ電子分光法により、表面と、該表面から深さ方向に0.05μm位置とで区画される表層領域にて測定した、Mn含有量のCu含有量に対する比(表層[Mn/Cu]比)が、質量比に換算して、0.03未満であることによって、その銅合金条材は、環境温度が変化しても安定した抵抗を有し、かつ良好なはんだの実装性を有することを見出し、かかる知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1)3質量%以上20質量%以下のマンガン(Mn)を含有し、残部が銅(Cu)および不可避不純物からなる組成を有する銅合金条材であって、オージェ電子分光法により、表面と、該表面から深さ方向に0.05μm位置とで区画される表層領域にて測定した、Mn含有量のCu含有量に対する比(表層[Mn/Cu]比)が、質量比に換算して、0.030未満であることを特徴とする、銅合金条材。
(2)オージェ電子分光法により、表面から深さ方向に5μm位置と10μm位置とで区画される内部領域にて測定したMn含有量に対する、前記表層領域にて測定したMn含有量の比(表層Mn含有量/内部Mn含有量比)が、質量比に換算して、0.50以下であることを特徴とする、上記(1)に記載の銅合金条材。
(3)マンガンを5質量%以上20質量%以下含有することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の銅合金条材。
(4)0.01質量%以上5質量%以下のニッケル、0.01質量%以上5質量%以下の錫、0.01質量%以上5質量%以下の鉄、0.01質量%以上5質量%以下の亜鉛、0.01質量%以上0.5質量%以下のケイ素、0.01質量%以上0.5質量%以下のクロム、0.01質量%以上0.5質量%以下のジルコニウム、0.01質量%以上0.5質量%以下のチタン、0.01質量%以上0.5質量%以下の銀、0.01質量%以上0.5質量%以下のマグネシウム、0.01質量%以上0.5質量%以下のコバルト、および、0.01質量%以上0.5質量%以下のリンからなる群より選択される1種以上の元素を含有することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の銅合金条材。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の銅合金条材の製造方法であって、鋳造工程[工程1]、均質化処理工程[工程2]、熱間圧延工程[工程3]、面削工程[工程4]、第1冷間圧延工程[工程5]、第1酸化被膜形成工程[工程6]および第1酸化被膜除去工程[工程7]の各工程をこの順に有し、前記第1酸化被膜形成工程では、第1冷間圧延工程で得られた第1冷延板を、0.01〜2.00体積%の酸素を含んだ中性ガス雰囲気下で、200℃以上800℃以下で加熱して、第1酸化被膜を形成し、前記第1酸化被膜除去工程では、前記第1酸化被膜形成工程で形成された前記第1冷延板の前記第1酸化被膜を、硫酸水溶液で除去することを特徴とする、銅合金条材の製造方法。
(6)前記第1酸化被膜除去工程[工程7]後に、前記第2冷間圧延工程[工程8]をさらに有することを特徴とする、上記(5)に記載の銅合金条材の製造方法。
(7)前記第2冷間圧延工程[工程8]後に、第2酸化被膜形成工程[工程9]および第2酸化被膜除去工程[工程10]をさらに有し、前記第2酸化被膜形成工程では、第2冷間圧延工程で得られた第2冷延板を、0.01〜2.00体積%の酸素を含んだ中性ガス雰囲気下で、200℃以上800℃以下で加熱して、第2酸化被膜を形成し、前記第2酸化被膜除去工程では、前記第2酸化被膜形成工程で形成された前記第2冷延板の前記第2酸化被膜を、硫酸水溶液で除去することを特徴とする、上記(6)に記載の銅合金条材の製造方法。
(8)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の銅合金条材を用いた抵抗器用抵抗材料。
(9)上記(8)に記載の抵抗材料を有する抵抗器。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、銅合金条材が3質量%以上20質量%以下のマンガンを含有し、残部が銅および不可避不純物からなる組成を有し、オージェ電子分光法により、表面と、該表面から深さ方向に0.05μm位置とで区画される表層領域にて測定した、Mn含有量のCu含有量に対する比(表層[Mn/Cu]比)が、質量比に換算して、0.03未満であることによって、その銅合金条材は、環境温度が変化しても安定した抵抗を有し、かつ良好なはんだの実装性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)銅合金条材
以下、本発明の銅合金条材の好ましい実施形態について、詳細に説明する。本発明に従う銅合金条材は、3質量%以上20質量%以下のマンガンを含有し、残部が銅および不可避不純物からなる組成を有する銅合金条材であって、オージェ電子分光法により、表面と、該表面から深さ方向に0.05μm位置とで区画される表層領域にて測定した、Mn含有量のCu含有量に対する比(表層[Mn/Cu]比)が、質量比に換算して、0.030未満であることを特徴とするものである。
【0013】
このような銅合金条材において、その表面はMnが少なく、はんだに対し高い密着力を有するものとなる。一方、当該銅合金条材の内部では、Mnが全体で3質量%以上も潤沢に存在しているので、電気的特性を担う合金条材全体としては、より低い抵抗温度係数を有するものとなる。したがって、このような銅合金条材は、環境温度が変化しても安定した抵抗を有し、かつ良好なはんだの実装性を有する。
【0014】
<銅合金条材の組成>
〔マンガン:3質量%以上20質量%以下〕
本発明の銅合金条材は、3質量%以上20質量%以下のマンガン(Mn)を含有するものである。マンガンの含有量がこのような範囲にあることにより、当該銅合金材料の表面のはんだ濡れ性を低下させることなく、抵抗温度係数を低下させることができる。これに対し、マンガンの含有量が3質量%未満であると、抵抗温度係数の低下効果が十分に得られない。また、マンガンの含有量が20質量%より多い場合、表面特性を著しく低下させるおそれがある。抵抗温度係数の観点から、マンガンの含有量は、5質量%以上であることが好ましい。
【0015】
<銅合金条材の組成分布>
本発明の銅合金条材は、オージェ電子分光法により、表面と、該表面から深さ方向に0.05μm位置とで区画される表層領域にて測定した、Mn含有量のCu含有量に対する比(表層[Mn/Cu]比)が、質量比に換算して、0.030未満である。このように、表層[Mn/Cu]比が0.030未満であることにより、その表面においてMnが少なくなるため、その表面は高いはんだ濡れ性を有し良好なはんだ実装性を有するものとなる。表層[Mn/Cu]比は、例えば0.028以下であることが好ましく、0.025以下であることがより好ましく、0.022以下であることがより好ましい。
【0016】
また、本発明の合金条材は、オージェ電子分光法により、表面から深さ方向に5μm位置と10μm位置とで区画される内部領域にて測定したMn含有量に対する、前記表層領域にて測定したMn含有量の比(表層Mn含有量/内部Mn含有量比)が、質量比に換算して、0.50以下であることが好ましく、0.45以下であることがより好ましく、0.4以下であることがさらに好ましい。表層Mn含有量/内部Mn含有量比が0.50以下であることにより、当該合金条材の表層から内部に向けてマンガンの濃度が上昇するが、その濃度勾配がより急激になる。マンガンは表層に存在すると、その酸化によって銅合金条材の濡れ性を低下させる原因となることから、表層におけるマンガンの濃度を極力低減させる必要があるが、その一方で、材料全体としてはMnが多く含まれることで抵抗温度係数を低下させることができる。すなわち、表層Mn含有量/内部Mn含有量の比が小さいほど、マンガンの濃度勾配は大きくなり、表層ではマンガンが疎に分布し、内部ではマンガンが密に分布することになり、その結果、より良好なはんだ濡れ性を有しながらも、より低い抵抗温度係数を有するものとなる。
【0017】
<任意成分>
また、本発明の合金条材は、任意添加成分として、0.01質量%以上5質量%以下のニッケル、0.01質量%以上5質量%以下の錫、0.01質量%以上5質量%以下の亜鉛、0.01質量%以上0.5質量%以下の鉄、0.01質量%以上0.5質量%以下のケイ素、0.01質量%以上0.5質量%以下のクロム、0.01質量%以上0.5質量%以下のジルコニウム、0.01質量%以上0.5質量%以下のチタン、0.01質量%以上0.5質量%以下の銀、0.01質量%以上0.5質量%以下のマグネシウム、0.01質量%以上0.5質量%以下のコバルト、および、0.01質量%以上0.5質量%以下のリンからなる群より選択される1種以上の元素を含有することができる。これらの元素は、いずれも抵抗温度係数の改善、体積抵抗率の調整等を目的として添加するものであるが、それぞれの所定の範囲を超えて添加すると、はんだ濡れ性の低下や、原料コストの増加等が生じるおそれがある。以下、各金属元素についてそれぞれ説明する。
【0018】
〔ニッケル:0.01質量%以上5質量%以下〕
ニッケル(Ni)の含有量は、特に限定されないが、銅合金条材100質量%に対して0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましい。ニッケルの含有量が0.01%未満であると、抵抗温度係数の改善および体積抵抗率の調整の効果が十分に得られない可能性がある。一方で、ニッケルの含有量が5質量%超であると、はんだ濡れ性が低下するおそれがある。なお、ニッケルの含有量は、例えば0質量%以上(非含有の場合を含む)、0.001質量%以上、0.005質量%以上であってもよい。
【0019】
〔錫:0.01質量%以上5質量%以下〕
錫(Sn)の含有量は、特に限定されないが、銅合金条材100質量%に対して0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましい。錫の含有量が0.01%未満であると、抵抗温度係数の改善および体積抵抗率の調整の効果が十分に得られない可能性がある。一方で、錫の含有量が5質量%超であると、銅合金条材の製造性を著しく低下させるおそれがある。なお、錫の含有量は、例えば0質量%以上(非含有の場合を含む)、0.001質量%以上、0.005質量%以上であってもよい。
【0020】
〔鉄:0.01質量%以上0.5質量%以下〕
鉄(Fe)の含有量は、特に限定されないが、銅合金条材100質量%に対して0.01質量%以上0.5質量%以下であることが好ましい。鉄の含有量が0.01%未満であると、抵抗温度係数の改善および体積抵抗率の調整の効果が十分に得られない可能性がある。一方で、鉄の含有量が0.5質量%超であると、はんだ濡れ性が低下するおそれがある。なお、鉄の含有量は、例えば0質量%以上(非含有の場合を含む)、0.001質量%以上、0.005質量%以上であってもよい。
【0021】
〔亜鉛:0.01質量%以上5質量%以下〕
亜鉛(Zn)の含有量は、特に限定されないが、銅合金条材100質量%に対して0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましい。亜鉛の含有量が0.01%未満であると、抵抗温度係数の改善および体積抵抗率の調整の効果が十分に得られない可能性がある。一方で、亜鉛の含有量が5質量%超であると、脱亜鉛により性能の経時変化が生じるおそれがある。なお、亜鉛の含有量は、例えば0質量%以上(非含有の場合を含む)、0.001質量%以上、0.005質量%以上であってもよい。
【0022】
〔ケイ素:0.01質量%以上0.5質量%以下〕
ケイ素(Si)の含有量は、特に限定されないが、銅合金条材100質量%に対して0.01質量%以上0.5質量%以下であることが好ましい。ケイ素の含有量が0.01質量%未満であると、抵抗温度係数の改善および体積抵抗率の調整の効果が十分に得られない可能性がある。一方で、ケイ素の含有量が0.5質量%超であると、はんだ濡れ性が低下するおそれがある。なお、ケイ素の含有量は、例えば0質量%以上(非含有の場合を含む)、0.001質量%以上、0.005質量%以上であってもよい。
【0023】
〔クロム:0.01質量%以上0.5質量%以下〕
クロム(Cr)の含有量は、特に限定されないが、銅合金条材100質量%に対して0.01質量%以上0.5質量%以下であることが好ましい。クロムの含有量が0.01質量%未満であると、抵抗温度係数の改善および体積抵抗率の調整の効果が十分に得られない可能性がある。一方で、クロムの含有量が0.5質量%超であると、はんだ濡れ性が低下するおそれがある。なお、クロムの含有量は、例えば0質量%以上(非含有の場合を含む)、0.001質量%以上、0.005質量%以上であってもよい。
【0024】
〔ジルコニウム:0.01質量%以上0.5質量%以下〕
ジルコニウム(Zr)の含有量は、特に限定されないが、銅合金条材100質量%に対して0.01質量%以上0.5質量%以下であることが好ましい。ジルコニウムの含有量が0.01質量%未満であると、抵抗温度係数の改善および体積抵抗率の調整の効果が十分に得られない可能性がある。一方で、ジルコニウムの含有量が0.5質量%超であると、はんだ濡れ性が低下するおそれがある。なお、ジルコニウムの含有量は、例えば0質量%以上(非含有の場合を含む)、0.001質量%以上、0.005質量%以上であってもよい。
【0025】
〔チタン:0.01質量%以上0.5質量%以下〕
チタン(Ti)の含有量は、特に限定されないが、銅合金条材100質量%に対して0.01質量%以上0.5質量%以下であることが好ましい。チタンの含有量が0.01質量%未満であると、抵抗温度係数の改善および体積抵抗率の調整の効果が十分に得られない可能性がある。一方で、チタンの含有量が0.5質量%超であると、はんだ濡れ性が低下するおそれがある。なお、チタンの含有量は、例えば0質量%以上(非含有の場合を含む)、0.001質量%以上、0.005質量%以上であってもよい。
【0026】
〔銀:0.01質量%以上0.5質量%以下〕
銀(Ag)の含有量は、特に限定されないが、銅合金条材100質量%に対して0.01質量%以上0.5質量%以下であることが好ましい。銀の含有量が0.01%未満であると、抵抗温度係数の改善および体積抵抗率の調整の効果が十分に得られない可能性がある。一方で、銀の含有量が0.5質量%超であると、原料コストが高くなるが、それに見合った効果は得られない。なお、銀の含有量は、例えば0質量%以上(非含有の場合を含む)、0.001質量%以上、0.005質量%以上であってもよい。
【0027】
〔マグネシウム:0.01質量%以上0.5質量%以下〕
マグネシウム(Mg)の含有量は、特に限定されないが、銅合金条材100質量%に対して0.01質量%以上0.5質量%以下であることが好ましい。マグネシウムの含有量が0.01質量%未満であると、抵抗温度係数の改善および体積抵抗率の調整の効果が十分に得られない可能性がある。一方で、マグネシウムの含有量が0.5質量%超であると、はんだ濡れ性が低下するおそれがある。なお、マグネシウムの含有量は、例えば0質量%以上(非含有の場合を含む)、0.001質量%以上、0.005質量%以上であってもよい。
【0028】
〔コバルト:0.01質量%以上0.5質量%以下〕
コバルト(Co)の含有量は、特に限定されないが、銅合金条材100質量%に対して0.01質量%以上0.5質量%以下であることが好ましい。コバルトの含有量が0.01質量%未満であると、抵抗温度係数の改善および体積抵抗率の調整の効果が十分に得られない可能性がある。一方で、コバルトの含有量が0.5質量%超であると、はんだ濡れ性が低下するおそれがある。なお、コバルトの含有量は、例えば0質量%以上(非含有の場合を含む)、0.001質量%以上、0.005質量%以上であってもよい。
【0029】
〔リン:0.01質量%以上0.5質量%以下〕
リン(P)の含有量は、特に限定されないが、銅合金条材100質量%に対して0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましい。リンの含有量が0.01%未満であると、抵抗温度係数の改善および体積抵抗率の調整の効果が十分に得られない可能性がある。一方で、リンの含有量が0.5質量%超であると、銅合金条材の製造性を著しく低下させるおそれがある。なお、リンの含有量は、例えば0質量%以上(非含有の場合を含む)、0.001質量%以上、0.005質量%以上であってもよい。
【0030】
〔残部:銅および不可避不純物〕
上述した必須含有成分および任意添加成分以外は、残部がCu(銅)および不可避不純物からなる。なお、ここでいう「不可避不純物」とは、おおむね銅系製品において、原料中に存在するものや、製造工程において不可避的に混入するもので、本来は不要なものであるが、微量であり、銅系製品の特性に影響を及ぼさないため許容されている不純物である。不可避不純物として挙げられる成分としては、例えば、硫黄(S)、酸素(O)等の非金属元素やアルミニウム(Al)やアンチモン(Sb)等の金属元素が挙げられる。なお、これらの成分含有量の上限は、上記成分毎に0.05質量%、上記成分の総量で0.20質量%とすればよい。
【0031】
本発明の銅合金条材は、抵抗器、例えばシャント抵抗器やチップ抵抗器用の抵抗材料として極めて有用である。
【0032】
(2)銅合金条材の製造方法
以上のような本発明の一実施形態による銅合金条材の製造方法を詳しく説明する。この製造方法は、鋳造工程[工程1]、均質化処理工程[工程2]、熱間圧延工程[工程3]、面削工程[工程4]、第1冷間圧延工程[工程5]、第1酸化被膜形成工程[工程6]および第1酸化被膜除去工程[工程7]の各工程をこの順に有し、前記第1酸化被膜形成工程では、第1冷間圧延工程で得られた第1冷延板を、0.01〜2.00体積%の酸素を含んだ中性ガス雰囲気下で、200℃以上800℃以下で加熱して、第1酸化被膜を形成し、前記第1酸化被膜除去工程では、前記第1酸化被膜形成工程で形成された前記第1冷延板の前記第1酸化被膜を、硫酸水溶液で除去することを特徴としている。また、必要に応じて、第2冷間圧延工程[工程8]、または、第2酸化被膜形成工程[工程9]および第2酸化被膜除去工程[工程10]を追加してもよい。以下、各工程について説明する。
【0033】
<鋳造工程[工程1]>
鋳造工程[工程1]では、Cu、Si等の銅合金板材の原料(銅合金素材)を、鋳造機内部(内壁)が好ましくは炭素製の、例えば黒鉛坩堝にて、溶解し鋳造する。溶解するときの鋳造機内部の雰囲気は、酸化物の生成を防止するために、真空もしくは窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。鋳造方法には特に制限はなく、例えば横型連続鋳造機やアップキャスト法などを用いることができる。
【0034】
<均質化処理工程[工程2]>
鋳造[工程1]において鋳塊時に生じた凝固偏析や晶出物は、粗大なので、均質化処理工程[工程2]において、できるだけ母相に固溶させて小さくし、可能な限り無くす。具体的には、例えば、不活性ガス中等で、800〜1000℃に加熱して1〜24時間の均質化処理を行う。
【0035】
<熱間圧延工程[工程3]>
熱間圧延[工程3]では、例えば、均質化処理を施された鋳塊を処理温度800℃〜1000℃程度で、所望の板厚になるように圧延する。熱間加工については、圧延加工、もしくは押出加工のどちらでも特に制限は無い。
【0036】
<面削工程[工程4]>
面削工程[工程4]では、銅合金板材の表皮の酸化皮膜や変質層を除去する。通常公知の方法により行うことができ、例えば、機械研磨により行うことができる。面削の厚さとしては、例えば0.1〜3mm程度であってよい。
【0037】
<第1冷間圧延工程[工程5]>
第1冷間圧延工程[工程5]では、例えば加工度90%の冷間圧延を行う。
【0038】
<第1酸化被膜形成工程[工程6]>
第1酸化被膜形成工程[工程6]では、上述の第1冷間圧延工程で得られた第1冷延板を、0.01〜2.00体積%の酸素を含んだ中性ガス雰囲気下で、200℃以上800℃以下で加熱して、第1酸化被膜を形成する。加熱時間は、例えば10秒〜10時間であることが好ましい。第1酸化被膜を積極的に形成する理由は、Mn酸化物を主成分とする酸化被膜を形成させるためである。なお、「第1酸化被膜形成工程」等、「第1」と標記するのは、後述する「第2酸化被膜形成工程」等との区別のためである。ただし、「第2酸化被膜形成工程」等は必須の工程ではなく、「第1酸化被膜形成工程」のみを行ってもよい。
【0039】
<第1酸化被膜除去工程[工程7]>
第1酸化被膜除去工程[工程7]では、前記酸化被膜形成工程で形成された前記第1冷延板の前記第1酸化被膜を、硫酸水溶液で除去する工程である。硫酸水溶液の濃度は、例えば1〜50%であることが好ましく、5〜30%であることがより好ましい。このような第1酸化被膜除去工程により、表層のMn酸化物を化学的に溶解除去することができ、これにより表層においてマンガン濃度の少ない銅合金条材を得ることができる。
【0040】
<第2冷間圧延工程[工程8]>
第1酸化被膜除去工程[工程7]の後に、第2冷間圧延工程[工程8]をさらに設けてもよい。この第2冷間圧延工程[工程8]では、例えば加工度0〜75%の冷間圧延を行い、板厚を均一にする。第2冷間圧延後の板厚は用途等にもよるが、例えば0.01〜10mmとすることができる。これにより、上述した本発明の銅合金条材を得ることができる。
【0041】
<第2酸化被膜形成工程[工程9]>
第1酸化被膜除去工程[工程7]または第2冷間圧延工程[工程8]の後に、第2酸化被膜形成工程[工程9]をさらに設けてもよい。この第2酸化被膜形成工程は、第2冷間圧延工程で得られた第2冷延板を、0.01〜2.00体積%の酸素を含んだ中性ガス雰囲気下で、200℃以上800℃以下で加熱して、第2酸化被膜を形成する工程である。第1酸化被膜形成工程と具体的な操作は同様である。
【0042】
<第2酸化被膜除去工程[工程10]>
第2酸化被膜形成工程は、前記第2酸化被膜形成工程で形成された前記第2冷延板の前記第2酸化被膜を、硫酸水溶液で除去する工程である。第1酸化被膜除去工程と具体的な操作は同様である。
【0043】
Mn含有量のCu含有量に対する比(表層[Mn/Cu]比)を0.030未満にするには、酸素濃度が制御された中性ガス雰囲気下でMnを優先酸化させた後、湿式工程にて、前工程で形成された酸化被膜を除去することが必要である。その際、表層[Mn/Cu]比を小さくするには、Mnの優先酸化量を増やす必要があり、熱処理温度、時間、酸素濃度を適宜調整し、所望の酸化量を得る必要がある。その後、硫酸溶液で酸化膜を除去することで、表層[Mn/Cu]比の小さい表層を形成することができる。また、電気的特性、特に抵抗温度係数(TCR)については、Mn濃度が高い方が良く、これははんだ濡れ性と相反するものである。特に、電気的特性とはんだ濡れ性をより高いレベルで両立させるには、内部のMn濃度が高く、表層のMn濃度が低いことが求められる。これを得るには、内部の濃度を狙って、溶解鋳造した後、最終工程で上記の比の小さい表層を形成すること必要がある。冷間加工ままでも表層[Mn/Cu]比の小さい表層を得ることは可能だが、冷延加工により表層[Mn/Cu]比が小さい表層が薄くなってしまう恐れがあり、最後に酸化処理、除去処理をすることが好ましい。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例】
【0045】
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、本発明例および比較例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
(発明例1〜22、比較例1および3)
下記表1の「合金組成」欄に記載した合金組成を有する鋳塊を鋳造により製造した。次いでこの鋳塊に対し、加熱温度800℃以上1000℃以下、加熱時間10分以上10時間以下の条件で熱処理を施して合金成分を均質化した後に、熱間圧延により板状に成形し水冷し、板状物を得た。
【0047】
次に、熱間圧延により得た板状物に面削を施して表面の酸化皮膜を片面1mmずつ除去した後に、板状物を加工率90%以上の所定の加工率で冷間圧延をして、第1冷間圧延後の板厚を0.15mm、0.23mm、0.50mmにそれぞれ調整した。
【0048】
続けて、窒素ガスと空気の混合ガスからなる、酸素濃度0.01〜2.00体積%で制御された炉内で所定の条件(加熱温度および加熱時間)で表面の酸化処理を施した。酸化処理後、20%硫酸水溶液により表面の酸化被膜を除去した。
【0049】
その後、第1冷間圧延後の板厚が0.15mmである発明例1、4、7、10、13、16、19、22以外の発明例については、35%(第1冷間圧延後の板厚0.23mmの場合)又は70%(第1冷間圧延後の板厚0.50mmの場合)にて第2冷間圧延を施し、いずれの場合においても、板厚0.15mmの圧延板(銅合金条材)を得た。なお、本発明例1、4、7、10、13、16、19、22および比較例1〜3については、第2冷間圧延を施さなかったため、下記表1の「第2冷間圧延工程」の欄に「−」と示した。
【0050】
なお、本発明例5、6、8、9、12、14、15、17、18、20および21については、第2冷間圧延後、再度酸化処理(第2酸化被膜形成工程)を施した後、20%硫酸水溶液により表面の酸化被膜を除去して銅合金条材を得た。なお、本発明例1〜4、7、10、11、13、16、19、22および比較例1〜3については、第2酸化被膜形成工程および第2酸化被膜除去工程を行わなかったため、下記表1の「第2酸化被膜形成工程」の欄に「−」と示した。
【0051】
(比較例2)
第1冷間圧延後の板厚を0.35mmに変更し、酸化処理後に試料の表面を片面0.1mmずつ湿式研磨によって除去することで0.15mm厚の銅合金条材試料を得た。
【0052】
[銅合金条材の組成]
銅合金条材の化学組成は、ICP分析により測定し、下記表1に示した。また、表層[Mn/Cu]比および表層Mn含有量/内部Mn含有量の比は、オージェ電子分光装置PIH 680(アルバック・ファイ株式会社)によって測定を行った。具体的には、得られたCuとMnのスペクトルから、原子%を得た後、Cuの原子量を63.546、Mnの原子量を54.938として計算し、MnとCuの質量%換算でそれらの含有量を算出した。なお、測定時のスパッタ速度を2kV(SiO換算値で10nm/min)として、0分から5分までの時間、0.25分間隔で測定した(Mn含有量)/(Cu含有量)の比を、質量比換算で平均した値をさらに、表裏5点ずつ測定して平均した値を表層[Mn/Cu]比(表面と、表面から深さ方向に0.05μm位置とで区画される表層領域における平均[Mn/Cu]比)として下記表1に示した。このとき、この表層領域において、0.25分間隔でMn含有量を測定して平均し、さらに、表裏5点ずつ測定して平均した値を「表層領域にて測定したMn含有量」(表層Mn含有量)として求めた。また、表面から深さ方向に5μm位置と、表面から深さ方向に10μm位置とで区画される内部領域において、測定時のスパッタ速度を4kV(SiO換算値で100nm/min)として、50分から100分までの時間、0.25分間隔で測定したMnの含有量を平均した値をさらに、表裏5点ずつ測定して平均した値を「内部領域にて測定したMn含有量」(内部Mn含有量)として求めた。以上のようにして求めた表層Mn含有量と、内部Mn含有量の値より、表層Mn含有量/内部Mn含有量の比を表1に示した。
測定装置 :PIH 680(アルバック・ファイ株式会社)
分析面積 :10×10μm
スパッタ速度:2.4kV(SiO換算値で10又は100nm/min)
【0053】
[はんだ濡れ性]
ソルダーチェッカーによって、幅10mmに切断した試験片を、245℃に熱したSn−3Ag−0.5Cu合金に浸漬速度25mm/secで10mm浸漬させ、最大濡れ荷重(mN)を読み取った。なお、フラックスにRMAタイプ(RM615)を用い、濡れ荷重が5mN以上である場合を、はんだ濡れ性が優れているとして「◎」、4mN以上5mN未満である場合を、はんだ濡れ性が良好であるとして「○」、濡れ荷重が4mN未満である場合を、半田濡れ性が劣るとして「×」と評価し、表1に示した。
【0054】
[抵抗温度係数(TCR)]
JIS C2526(1994)に規定の方法に準拠して、板材の20℃以上50℃以下の範囲の平均抵抗温度係数(TCR)を測定した。20℃以上50℃以下の範囲の平均抵抗温度係数の絶対値が200ppm/K以下である場合を、電気的特性が優れているとして「◎」、200ppm/K超え400ppm/K以下である場合を、電気的特性が良好として「○」、400ppm/K超えの場合を電気的特性が劣るとして「×」と評価し、表1に示した。
【0055】
【表1】
【0056】
上記表1から分かるように、3質量%以上20質量%以下のマンガンを含有し、残部が銅および不可避不純物からなる組成を有し、オージェ電子分光法により、表面と、該表面から深さ方向に0.05μm位置とで区画される表層領域にて測定した、Mn含有量のCu含有量に対する比(表層[Mn/Cu]比)が、質量比に換算して、0.030未満である本発明例1〜22の銅合金条材は、低いTCRおよび良好なはんだ濡れを兼ね備えることが分かった。
【0057】
これに対し、マンガン含有量が2質量%と本発明の適正範囲よりも少ない比較例1の銅合金条材は、良好なはんだ濡れを備えるものの、TCRが高く、電気的特性が劣るものとなった。
【0058】
また、表層[Mn/Cu]比が0.111である比較例2の銅合金条材は、低いTCRを備えるものの、はんだ濡れが劣っていた。
【0059】
さらに、マンガン含有量が25質量%と本発明の適正範囲よりも多い比較例3の銅合金条材は、低いTCRを備えるものの、はんだ濡れが劣っていた。
【要約】
本発明の銅合金条材は、3質量%以上20質量%以下のマンガン(Mn)を含有し、残部が銅(Cu)および不可避不純物からなる組成を有する銅合金条材であって、オージェ電子分光法により、表面と、該表面から深さ方向に0.05μm位置とで区画される表層領域にて測定した、Mn含有量のCu含有量に対する比(表層[Mn/Cu]比)が、質量比に換算して、0.030未満であることを特徴とし、環境温度が変化しても安定した抵抗を有し、かつ良好なはんだの実装性を有する。