【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代プリンテッドエレクトロニクス材料・プロセス基盤技術開発/(6)フレキシブル複合機能デバイス技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スイッチング手段は、3個以上の前記生体電位センサの各センサ電極からの各生体情報検出信号の中から、前記タッチセンサがタッチされた異なる2個の生体電位センサの前記センサ電極から出力される2つの生体情報検出信号を順次に選択して出力し、
前記増幅手段は、前記スイッチング手段から出力される前記2つの生体情報検出信号を差動増幅した増幅信号を前記生体情報信号として出力することを特徴とする請求項1または2記載の生体情報検出センサ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る生体情報検出センサの一実施形態の模式的正面図を示す。同図において、本実施形態の生体情報検出センサ10は、被検出者が着用する衣服(テキスタイル)の一例としてのTシャツ11の例えば前側に、アレイ状生体電位センサ12、信号処理部13、無線モジュール14及びバッテリ15が設けられている。アレイ状生体電位センサ12及び信号処理部13はフレキシブル配線16により電気的に接続されている。バッテリ15はフレキシブル配線16を介してアレイ状生体電位センサ12、信号処理部13及び無線モジュール14に電力を供給する。信号処理部13、無線モジュール14及びバッテリ15は、Tシャツ11に対して取外し可能なように、例えばマジックテープ(登録商標)で取り付けられている。
【0017】
アレイ状生体電位センサ12は、
図1では7行6列のアレイ状(あるいはマトリクス状)の42ヶ所の位置に配置された同じ構成の41個の生体電位センサ120と1個の基準電圧用センサ129とからなり、互いにフレキシブル配線16(具体的には後述する161又は162)により電気的に接続された構成である。
図2(A)は、1個の生体電位センサ120の平面図、同図(B)は同図(A)のA-A’線に沿う縦断側面図を示す。同図(A)、(B)中、
図1と同一構成部分には同一符号を付してある。
図2(A)、(B)において、生体電位センサ120は、主として生体電位センサ電極(以下、単にセンサ電極ともいう)121及びタッチセンサ122により構成されている。
【0018】
タッチセンサ122は極薄の扁平な円柱状(円盤状)で、フレキシブル配線162を介して信号処理部13に電気的に接続されており、人間の指でタッチした時にオン情報を出力する。タッチセンサ122の構成自体は本発明の要旨ではなく、また周知であるため、その構成説明は省略する。タッチセンサ122はその上面及び側面が透明の保護膜123により保護されている。保護膜123は、タッチセンサ122及びその周囲を被覆して保護する機能を備え、直径10mm〜20mm程度の底面の概略円柱状の形状を有する。保護膜123は透明であるため、
図2(A)に示すようにタッチセンサ122及びフレキシブル配線162が保護膜123の上から透かして見え、タッチセンサ122の位置が分かるようになされている。タッチセンサ122、保護膜123及びフレキシブル配線162は
図2(B)に示すようにTシャツ11の前側表面に公知の方法で設けられている。
【0019】
Tシャツ11の前側裏面の、保護膜123に対応した位置には、
図2(B)に示すように、所望の平面形状で比較的大なる面積のセンサ電極121が公知の印刷技術を適用して形成されている。センサ電極121は他の生体電位センサのセンサ電極(図示せず)及び信号処理部13にフレキシブル配線161により電気的に接続されている。フレキシブル配線161及び162は、
図1のフレキシブル配線16を構成している。
図2(B)に示したTシャツ11に取り付けられた状態のセンサ電極121及びタッチセンサ122からなるタッチセンサ付きセンサ電極の厚さは、例えば2〜3mm程度である。
【0020】
センサ電極121は、被検出者の前側体表面である胸に直接的に接触するため、その材質は柔軟性を必要とし、導電性繊維等の導電性部材により構成されている。センサ電極121を構成する柔軟性を備えた導電性部材は被検出者の胸に沿って容易に変形するため、センサ電極121は被検出者に違和感なく装着される。導電性部材としては、白金、金、銀等の金属製の薄板、カーボン繊維、金属繊維、合成樹脂繊維などが用いられる。フレキシブル配線161及び162もセンサ電極121と同様の柔軟性を有し、波状の金属配線や伸縮性を持つ金属ペーストを印刷した導電パターンや導電性の被覆を施した繊維状材料などを用いることができる。なお、基準電圧用センサ129はタッチセンサ及びセンサ電極が設けられておらず、基準電圧を出力する構成とされている。
【0021】
Tシャツ11で代表される本発明で用いられるテキスタイルの基材は、柔軟性のある素材であればどのようなものも用いることができるが、ナイロンやポリエステルを用いたテキスタイルが好適に用いられる。Tシャツ11上にセンサ電極121、タッチセンサ122、保護膜123、フレキシブル配線161及び162などを形成するためには、層間に粘着材や接着材を用いて貼付する必要がある。粘着材や接着材としてはTシャツ11上に塗布・硬化後に柔軟性を持ち、十分な粘着性・耐久性を持つ材料であればどのようなものも用いることができるが、好適にはウレタン系弾性接着材、ブチルゴム系接着材、シリコン系接着材などが用いられる。
【0022】
フレキシブル配線161及162やセンサ電極121、タッチセンサ122、保護膜123のパターニング法としては、Tシャツ11として用いるテキスタイル基材に公知の方法で織り込んだり、編み込んだりすることもできるし、テキスタイル基材上に直接、印刷等の手法によりパターニングすることもできる。好適には、印刷によりパターニングした粘着材上に導電性短繊維を貼着する公知の手法が用いられる。
【0023】
フレキシブル配線161によるセンサ電極121と信号処理部13内の電子部品との接合、及びフレキシブル配線162によるタッチセンサ122と信号処理部13内の電子部品との接合には、十分な接合強度・低接触抵抗・耐久性・低プロセス温度が求められる。この接合には導電性と接着性とを持つ材料であればどのような接合材を用いることもできるが、好適には硬化型接着材に金属微粒子を添加した導電性接着材、若しくは異方導電性フィルム/ペースト、硬化型接着材にスズ・ビスマス系の低融点合金微粒子を添加したソルダーペースト等が用いられる。
【0024】
次に、本発明に係る生体情報測定システムの一実施形態について説明する。
図3は、本発明に係る生体情報測定システムの一実施形態のブロック図を示す。同図中、
図1、
図2と同一構成部分には同一符号を付してある。
図3に示すように、本発明の一実施形態の生体情報測定システム20は、アレイ状生体電位センサ12、信号処理部13、無線モジュール14、及びモニタシステム30からなる構成である(バッテリ15は図示せず)。すなわち、本実施形態の生体情報測定システム20は、
図1に示したアレイ状生体電位センサ12、信号処理部13、無線モジュール14及びバッテリ15からなるTシャツ11上の生体情報検出センサの構成と、モニタシステム30とが無線回線を介して接続された構成である。
【0025】
アレイ状生体電位センサ12は、各々
図2(A)及び(B)に示した構成の生体電位センサ120がTシャツ上に複数個(
図1の例では41個)アレイ状に配置されている場合の、各生体電位センサ電極121及び1個の基準電圧用センサ129からなる生体電位センサ電極群(以下、単にセンサ電極群ともいう)1210と、生体電位センサ電極121に1対1に対応してアレイ状に配置された複数個の生体電位センサの各タッチセンサ122からなるタッチセンサ群1220とを備える。
【0026】
信号処理部13は、タッチセンサ用の第1のマイクロ・コントロール・ユニット(MCU:Micro Control Unit)131、アナログスイッチング回路132、差動増幅器133、及び心電信号用の第2のマイクロ・コントロール・ユニット(MCU)134から構成されている。第1のMCU131はタッチセンサ群1220の各タッチセンサ122にフレキシブル配線162を別々に介して電気的に接続されており、タッチセンサ群1220の複数個のタッチセンサのスイッチング状態を検出したスイッチング検出信号をアナログスイッチング回路132にスイッチ制御信号として出力する。また、第1のMCU131は、スイッチング検出信号を後述する無線モジュール14に出力する。
【0027】
アナログスイッチング回路132は、センサ電極群1210の各センサ電極121にフレキシブル配線161を別々に介して電気的に接続されており、センサ電極群1210により得られた心臓の生体情報検出信号である複数の心電信号の差動増幅器133への出力経路を、第1のMCU131からのスイッチ制御信号によりスイッチング制御する。差動増幅器133は、1個の非反転入力端子(+)と1個の反転入力端子(-)とを一組としたとき、全部でn組(nはPC32の画面上に同時に表示可能な心電波形の最大数(チャンネル数)と同じ自然数)の入力端子と一つの基準電圧入力端子とを有する。なお、nの最大値はタッチセンサ群1220を構成するタッチセンサの総数(あるいはセンサ電極群1210を構成するセンサ電極の総数)の1/2の値であるが、差動増幅器133の入力端子組数はこの値未満であってもよい。
【0028】
差動増幅器133は、タッチされた或るタッチセンサに対応して設けられたセンサ電極群1210の中の一つのセンサ電極から一組の非反転入力端子に供給される第1の生体情報検出信号と、タッチされた別のタッチセンサに対応して設けられたセンサ電極群1210の中の別の一つのセンサ電極から同じ組の反転入力端子に供給される第2の生体情報検出信号との差動増幅を行い、センサ電極群1210の中の基準電圧用センサ129からの基準電圧(通常はグラウンド電圧)を基準とした差動増幅信号を一つのチャンネルの心電信号として生成して第2のMCU134へ出力する。同様にして、差動増幅器133は、全部でnチャンネルの心電信号を生成して第2のMCU134へ出力することができる。ただし、後述するように、差動増幅器133は、診断者により設定された任意の取得チャンネル数m(ただし、m≦n)の心電信号を出力する。第2のMCU134は、差動増幅器133からの心電信号をAD変換して心電信号データとし、それを無線モジュール14へ出力する。無線モジュール14はモニタシステム30との間で無線通信する。
【0029】
モニタシステム30は、無線モジュール31とパーソナルコンピュータ(PC;Personal Computer)32とからなる。無線モジュール31は、無線モジュール14との間で微弱無線あるいは小電力無線により通信する。PC32は
図6のブロック図に示すように、演算部321、記憶部322、表示部323及び入力部324が双方向バス325を介して接続され、記憶部322に記憶されたプログラムに従う演算部321による演算処理により所定のソフトウェア動作を行う公知の構成とされている。入力部324は生体情報測定システム20のモードを電極選択モード又は記録モードに設定する。また、表示部323はアレイ状生体電位センサ12や無線モジュール31で受信した心電信号などを表示する。演算部321は、記憶部322に対し心電信号データの書き込み及び読み出しを行う。PC32と無線モジュール31とは双方向バス325により接続されている。
【0030】
図4は、本発明に係る生体情報測定システムの一実施形態の概略システム構成図を示す。同図中、
図1〜
図3と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
図4に示すように、本実施形態の生体情報測定システム20においては、被検出者50がTシャツ11を着用した状態で、電極選択モードのときにTシャツ11の前側表面に設けられたアレイ状生体電位センサ12のタッチセンサ群1220のうちの所定のタッチセンサを選択して、医師等の診断者がa、b、c、dで示す如く指で順番にタッチする。なお、タッチセンサ群1220の中のタッチされるタッチセンサは、被検出者50の体形に合わせて心電波形を最適に取得できる位置のタッチセンサを診断者が選択して決定する。したがって、被検出者50の体形が変われば、それに応じて心電波形を取得できる最適なタッチセンサが診断者により適宜変更されて選択されるので、選択されるタッチセンサの位置は
図4の位置に限定されない。
【0031】
タッチされたタッチセンサに対応して設けられているセンサ電極により検出された生体情報検出信号は、後述する動作により信号処理部13及び無線モジュール14を経由してモニタシステム30の無線モジュール31へ心電信号として無線送信される。モニタシステム30は無線モジュール31及びPC32からなり、PC32は筐体330及び表示部323を有する。PC32の筐体330内には
図6に示した演算部321.記憶部322が収納されており、入力部324は筐体330の外部にキーボード(図示せず)として設けられている。PC32は無線モジュール31で受信した心電信号を筐体330内の演算部321にて表示に適した信号形態に処理し、表示部323に42及び43で示すように表示する。表示波形42はa,bで示した2ヶ所の位置のタッチセンサからの2つの生体情報検出信号を差動増幅して得られた第1チャンネルの心電信号波形であり、表示波形43はc,dで示した2ヶ所の位置のタッチセンサからの2つの生体情報検出信号を差動増幅して得られた第2チャンネルの心電信号波形である。なお、表示部323の表示領域41にはアレイ状生体電位センサ12のタッチセンサ群1220が表示されるとともに、その中のタッチされた位置のタッチセンサが周囲のタッチされていないタッチセンサの色とは異なる所定の色相で表示される。
【0032】
すなわち、表示部323中のタッチセンサ群の表示領域41において、A、B、C、Dは、それぞれ診断者がタッチしたa、b、c、dで示したタッチセンサの位置に対応したタッチセンサを示しており、それぞれ互いに異なる色相で、かつ、タッチされていないタッチセンサとも異なる色相で表示される。なお、表示領域41内の7行1列目のタッチセンサは黒色で表示されており、共通グラウンドの基準電圧センサであることを示している。なお、タッチされたタッチセンサの位置が少なくともタッチされていないタッチセンサの位置と識別できればよいので、タッチされたタッチセンサの位置をタッチされていないタッチセンサの位置と異なる色相で、かつ、同じ色相で表示してもよい。
【0033】
次に、
図3及び
図4に示した本実施形態の生体情報測定システム20の動作について、
図5のフローチャートを併せ参照して説明する。
図5は、本発明に係る生体情報測定システムの一実施形態の動作説明用フローチャートを示す。
まず、PC32の入力部324により電極選択モードに設定する(ステップS1)。電極選択モード設定時には、PC32から無線モジュール31を経由して無線モジュール14へ電極選択モード信号が送信されると共に、
図4に示したように表示部323の表示領域41にタッチセンサ群1220が表示される。無線モジュール14は受信電極選択モード信号をタッチセンサ用のMCU131に供給する。MCU131は受信電極選択モード信号が供給されると、タッチセンサ群1220からフレキシブル配線を介して供給されるセンサ位置信号の入力許可状態に制御されると共に、アナログスイッチング回路132をセンサ電極群1210からフレキシブル配線を介して供給される検出信号の選択可能状態とする。
【0034】
続いて、PC32は表示部323に例えば「心電波形取得数を入力してください。」というメッセージ(
図4では図示省略)を表示し(ステップS2)、その後入力部324から入力された任意の心電波形取得数を取得チャンネル数mとして設定する(ステップS3)。取得チャンネル数mは、診断者が被検出者の体形に合わせて選択した心電波形取得数であり、例えば記憶部322に記憶される。心電信号波形は2つのセンサ電極(+電極と−電極)からの生体情報検出信号の電位差からなり、これを1チャンネルの心電信号とする。続いて、PC32の演算部321は内部の変数xを初期値の「1」に設定する(ステップS4)。
【0035】
その後、タッチセンサ群1220の中の一つのタッチセンサがタッチされると、MCU131はその最初にタッチされたタッチセンサの位置を示すセンサ位置信号をアナログスイッチング回路132にスイッチ制御信号として供給して、センサ電極群1210の中から上記最初にタッチされたタッチセンサに対応したセンサ電極からの生体情報検出信号を、差動増幅器133のチャンネル番号x=1の非反転入力端子に供給する(ステップS5)。このとき生体情報検出信号を供給するセンサ電極は+電極となり、これを本明細書では「ch1+電極設定」というものとする。
【0036】
また、上記の最初にタッチされたタッチセンサの位置を示すセンサ位置信号は、MCU131から無線モジュール14を経由して無線モジュール31に送信され、更にこれよりPC32に供給される。PC32の演算部321は入力されたセンサ位置信号に基づいて、表示部323に表示されているタッチセンサ群1220の中から最初にタッチされた位置のタッチセンサをそれ以外のタッチされていないタッチセンサとは異なる色相で表示させる(ステップS6)。例えば、最初にタッチされたタッチセンサが
図4にaで示した2行2列目の位置のタッチセンサであるものとすると、表示部323中のタッチセンサ群の表示領域41において、Aで示したタッチセンサが他のタッチセンサと異なる所定の色相に変化する。
【0037】
続いて、診断者がタッチセンサ群1220の中の別のタッチセンサをタッチすると、MCU131はその2番目にタッチされたタッチセンサの位置を示すセンサ位置信号をアナログスイッチング回路134にスイッチ制御信号として供給して、センサ電極群1210の中から上記2番目にタッチされたタッチセンサに対応したセンサ電極からの生体情報検出信号を、差動増幅器133のチャンネル番号x=1の反転入力端子に供給する(ステップS7)。このとき生体情報検出信号を供給するセンサ電極は−電極となり、これを本明細書では「ch1-電極設定」というものとする。
【0038】
また、上記の2番目にタッチされたタッチセンサの位置を示すセンサ位置信号は、MCU131から無線モジュール14を経由して無線モジュール31に送信され、更にこれよりPC32に供給される。PC32の演算部321は入力されたセンサ位置信号に基づいて、表示部323に表示されているタッチセンサ群1220の中から2番目にタッチされた位置のタッチセンサをそれ以外のタッチされていないタッチセンサ及び1番目にタッチされたタッチセンサとはそれぞれ異なる色相で表示させる(ステップS8)。例えば、2番目にタッチされたタッチセンサが
図4にbで示した1行4列目の位置のタッチセンサであるものとすると、表示部323中のタッチセンサ群の表示領域41において、Bで示したタッチセンサが他のタッチセンサと異なる所定の色相に変化する。
【0039】
差動増幅器133はチャンネル番号x=1の非反転入力端子及び反転入力端子にそれぞれ入力された2つのセンサ電極(+電極及び−電極)からの生体情報検出信号を差動増幅して基準電圧を基準とした差動増幅信号を生成し、それをMCU134へ第1チャンネルの心電信号として供給する。MCU134は、供給された第1チャンネルの心電信号をAD変換した後無線モジュール14に供給し、これより無線モジュール31へ無線送信させる。PC32の演算部321は無線モジュール31で受信された第1チャンネルの心電信号データを表示に適した演算処理を行い、表示部323に1番目と2番目にそれぞれタッチされたタッチセンサ間の第1チャンネルの心電信号波形を表示する(以上、ステップS9)。これにより、例えば上記の例では
図4に42で示すように、1番目と2番目にそれぞれタッチされたタッチセンサA,B間の第1チャンネルの心電信号波形の表示が表示部323において行われる。
【0040】
続いて、PC32は変数xが任意に設定した取得チャンネル数mと等しいかどうかを判定する(ステップS10)。取得チャンネル数mを一例として「4」であるものとすると、この時点ではx=1であるので、演算部321はステップS10でx≠mと判定し、変数xを現在の値から「1」だけ加算して「2」とした後(ステップS11)、再びステップS5の処理に戻る。ステップS5では、MCU131はセンサ電極群1210の中から3番目にタッチされたタッチセンサに対応したセンサ電極からの生体情報検出信号を、差動増幅器133のチャンネル番号2の非反転入力端子に供給する(ch2+電極設定)と共に、3番目にタッチされたタッチセンサの位置を示すセンサ位置信号を無線モジュール14及び無線モジュール31を経由してPC32に供給する。これにより、PC32の演算部321は入力されたセンサ位置信号に基づいて、表示部323に表示されているタッチセンサ群1220の中から3番目にタッチされた位置のタッチセンサをそれ以外のタッチされていないタッチセンサ及び既にタッチされたタッチセンサとはそれぞれ異なる色相で表示させる(ステップS6)。
【0041】
続いて、MCU131はセンサ電極群1210の中から4番目にタッチされたタッチセンサに対応したセンサ電極からの生体情報検出信号を、差動増幅器133のチャンネル番号2の反転入力端子に供給し(ch2-電極設定)(ステップS7)、これと同時に4番目にタッチされたタッチセンサの位置を示すセンサ位置信号を無線モジュール14及び無線モジュール31を経由してPC32に供給する。これにより、PC32の演算部321は入力されたセンサ位置信号に基づいて、表示部323に表示されているタッチセンサ群1220の中から4番目にタッチされた位置のタッチセンサをそれ以外のタッチされていないタッチセンサ及び既にタッチされたタッチセンサとはそれぞれ異なる色相で表示させる(ステップS8)。
【0042】
差動増幅器133はチャンネル番号2の非反転入力端子及び反転入力端子にそれぞれ入力された2つのセンサ電極(+電極及び−電極)からの生体情報検出信号を差動増幅して基準電圧を基準とした差動増幅信号を生成し、それをMCU134へ第2チャンネルの心電信号として供給する。MCU134は、供給された第2チャンネルの心電信号をAD変換した後無線モジュール14に供給し、これより無線モジュール31へ無線送信させる。PC32の演算部321は無線モジュール31で受信された第2チャンネルの心電信号データを表示に適した演算処理を行い、表示部323に3番目と4番目にそれぞれタッチされたタッチセンサ間の第2チャンネルの心電信号波形を表示する(以上、ステップS9)。これにより、例えば上記の例では
図4に43で示すように、3番目と4番目にそれぞれタッチされたタッチセンサC,D間の第2チャンネルの心電信号波形の表示が表示部323において行われる。
【0043】
以下、同様にしてステップS10、S11、S5〜S9の動作が2回繰り返されて、5番目と6番目にそれぞれタッチされた2つのタッチセンサ間の第3チャンネルの心電信号波形の表示と、7番目と8番目にそれぞれタッチされた2つのタッチセンサ間の第4チャンネルの心電信号波形の表示が順次に行われる。この時点でx=4となっているので、次のステップS10で演算部321は変数xと取得チャンネル数mとがそれぞれ「4」で等しいと判定する。これにより、演算部321は取得チャンネル数mだけ心電信号が取得されて表示されたと判断し、表示部323に例えば「電極選択は以上でよろしいですか。」というメッセージ(
図4では図示省略)を表示する(ステップS12)。
【0044】
この表示に従い診断者が入力部329により「はい」を示す入力をすると、PC32は
生体情報測定システム20のモードを記録モードに切替設定する(ステップS13)。一方、診断者が入力部329により「いいえ」を示す入力をすると、PC32はステップS4の処理に戻り、再びステップS4の変数xの設定以降の処理を行う。これは、心電信号波形が取得チャンネル数mだけ得られたとしても、タッチセンサのタッチ操作にミスがあってやり直したい場合や、より最適な心電信号波形を得るためにタッチ操作をやり直したい場合を考慮したものである。なお、「はい」、「いいえ」の入力は入力部329を用いるのではなく、表示部323の画面の一部に判定のための入力ボタンを表示させて、それを選択させるようにしてもよい。
【0045】
ステップS13で記録モードに切替設定することにより、生体情報測定システム20の1チャンネル当たり2つのセンサ電極(+電極及び−電極)間の心電信号を任意のチャンネル数取得する電極選択モード設定の処理が終了する。生体情報測定システム20は、記録モードではPC32から無線モジュール31を経由して無線モジュール14へ記録モード信号が送信される。無線モジュール14は受信記録モード信号をタッチセンサ用のMCU131に供給する。MCU131は受信記録モード信号が供給されると、アナログスイッチング回路132をセンサ電極群1210からフレキシブル配線を介して供給される生体情報検出信号の選択不可状態(出力禁止状態)とする。これにより、記録モードでは、タッチセンサ群1220のタッチセンサのタッチの有無に関係なく、直前の電極選択モードで取得されて記憶部332に記憶されたチャンネル数mの心電信号データは変化せず保持される。
【0046】
このように、本実施形態によれば、Tシャツ11上のアレイ状生体電位センサ12のタッチセンサ群1220を構成する複数のタッチセンサの中から、診断者が被検出者の体形に合わせてタッチするタッチセンサを選択するだけで、選択したタッチセンサの位置に対応して設けられているセンサ電極からの生体情報検出信号に基づく心電信号を無線通信で得ることができるので、被検出者毎の体形の相違によるセンサ電極の位置合わせを気にすることなく、局所的な被検出位置から所望の心電信号を簡便に、かつ、正確に検出して測定することができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、タッチセンサ群1220を構成する複数のタッチセンサの中から選択したタッチセンサに対応して設けられたセンサ電極からの生体情報検出信号のみに基づいた心電信号データを無線通信するようにしたため、無駄な心電信号データを通信することがなくなり、心電信号データを保持するメモリとして小容量の安価なメモリを使用でき、またバッテリも小容量のものを使用でき、更に消費電力を低減できる。
【0048】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含する。例えば、実施形態ではTシャツ11の前側にのみアレイ状生体電位センサ12を設けるように説明したが、Tシャツ11の後側にのみ、あるいは前側と後側の両方にアレイ状生体電位センサを設けるようにしてもよい。特にTシャツ11の前側と後側の両方にアレイ状生体電位センサを設けた場合は、3次元の検出範囲の心電信号波形が得られるので、より精度の高い心電測定ができて好ましい。
【0049】
また、実施形態ではアレイ状生体電位センサ12は、41個の生体電位センサ120と1個の基準電圧用センサ129とからなるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、生体電位センサ120のようなタッチセンサ付きのセンサ電極は3個以上あればよい。2個のセンサ電極を+電極と−電極として1チャンネルの心電信号を取得する構成であり、センサ電極が3個の場合はそのうちの2個を選択できるからである。なお、基準電極用センサは常に1つである。また、タッチセンサの平面形状は円形に限定されるものではない。
【0050】
また、本実施形態ではタッチセンサ群1220の中のタッチされたタッチセンサはタッチされていないタッチセンサと色相を変えて表示部323で表示するようにしたため、タッチされたタッチセンサの位置は色相から識別可能であるが、タッチセンサ及びセンサ電極と1対1に対応させて発光ダイオード(LED)を設けて、タッチされたタッチセンサに対応して設けられたLEDのみを発光する構成を実施形態の構成に代えてあるいは追加するようにしてもよい。また、実施形態では心電信号を取得するように説明したが、本発明は筋電、呼吸数、体温などの他の生体情報の検出も可能である。更に、信号処理部とモニタシステムとの間の通信は有線通信により行うことも原理的には可能である。