(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ヒドロシリル基と、ヒドロシリル化反応可能な炭素−炭素不飽和結合を含む基(以下、「不飽和基(a)」という)とを有するポリシロキサン(以下、「ポリシロキサン原料」という)を熱分解して、シリコンオキシカーバイドを製造する方法である。
【0010】
上記ポリシロキサン原料は、ヒドロシリル基及び不飽和基(a)を含み、ヒドロシリル基及び不飽和基(a)の数は、特に限定されない。上記ポリシロキサン原料は、ヒドロシリル基及び不飽和基(a)以外に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基等の、他の置換基を含んでもよい。
【0011】
上記不飽和基(a)は、炭素−炭素不飽和結合を含む、炭素原子数が好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6の有機基であり、その具体例としては、ビニル基、オルトスチリル基、メタスチリル基、パラスチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、3−メチル−1−ブテニル基、フェニルエテニル基、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−ペンチニル基、3−メチル−1−ブチニル基、フェニルブチニル基等が挙げられる。これらのうち、シリコンオキシカーバイドの形成性の観点から、炭素原子数2〜10の不飽和基が好ましい。
上記ポリシロキサン原料に、2個以上の不飽和基(a)を有する場合、これらの不飽和基(a)は、互いに同一であってよいし、異なってもよい。また、2個以上の不飽和基(a)は、同一のケイ素原子に結合していてよいし、複数のケイ素原子に結合していてもよい。
【0012】
上記ポリシロキサン原料に含まれるヒドロシリル基は、例えば、下記の構造単位(11)、(12)又は(13)に由来するものとすることができる。上記ポリシロキサン原料は、構造単位(11)〜(13)の少なくとも1つを含むことが好ましく、少なくとも構造単位(11)を含むことが特に好ましい。
【化2】
【化3】
(式中、R
2は、水素原子又は炭素原子数1〜20の炭化水素基である)
【化4】
(式中、R
3は、互いに同一の若しくは異なる、水素原子又は炭素原子数1〜20の炭化水素基である)
【0013】
また、上記ポリシロキサン原料に含まれる不飽和基(a)は、下記の構造単位(21)、(22)又は(23)に由来するものとすることができる。上記ポリシロキサン原料は、構造単位(21)〜(23)の少なくとも1つを含むことが好ましく、少なくとも構造単位(21)を含むことが特に好ましい。
【化5】
(式中、Aは、不飽和基(a)である)
【化6】
(式中、Aは、不飽和基(a)であり、R
2は、水素原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基又はAと同一の若しくは異なる不飽和基(a)である)
【化7】
(式中、Aは、不飽和基(a)であり、R
3は、互いに同一の若しくは異なる、水素原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基或いはAと同一の又は異なる不飽和基(a)である)
【0014】
上記ポリシロキサン原料が、構造単位(21)、(22)又は(23)を含む場合、各構造単位に含まれるAについて、全てが同一又は異種であってよいし、部分的に同一であってもよい。
【0015】
上記ポリシロキサン原料は、ヒドロシリル基及び不飽和基(a)を含まない構造単位(31)、(32)、(33)等を含んでもよい。
【化8】
(式中、R
2は、互いに同一の又は異なる、炭素原子数1〜20の炭化水素基である)
【化9】
(式中、R
4は、炭素原子数1〜10の炭化水素基である)
【化10】
(式中、R
5は、炭素原子数1〜20の炭化水素基である)
【0016】
上記ポリシロキサン原料の好ましい構造は、下記一般式(1)で表され、このポリシロキサンは、通常、液状である。
【化11】
(式中、R
1は、ヒドロシリル化反応可能な炭素−炭素不飽和結合を含む基であり、R
2は、水素原子、炭素原子数1〜10の炭化水素基又はヒドロシリル化反応可能な炭素−炭素不飽和結合を含む基であり、R
3は、水素原子、炭素原子数1〜10の炭化水素基又はヒドロシリル化反応可能な炭素−炭素不飽和結合を含む基であり、R
4は、炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、v及びwは正の数であり、x、y及びzは0又は正の数である。)
【0017】
上記一般式(1)において、R
1は、好ましくは、ビニル基である。R
2は、好ましくは、水素原子、脂肪族炭化水素基及びビニル基である。R
3は、好ましくは、水素原子、脂肪族炭化水素基及びビニル基である。R
4は、好ましくは、脂肪族炭化水素基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0018】
上記一般式(1)におけるv、w、x、y及びzは、以下の通りである。
vは、正の数であり、好ましくは1〜100、より好ましくは3〜80、更に好ましくは5〜60である。
wは、正の数であり、好ましくは1〜40、より好ましくは2〜30、更に好ましくは3〜20である。
xは、0又は正の数であり、好ましくは0〜40、より好ましくは0〜30、更に好ましくは0〜20である。
yは、0又は正の数であり、好ましくは0〜50、より好ましくは0〜30、更に好ましくは0〜20である。
zは、0又は正の数であり、好ましくは0〜20、より好ましくは0〜10、更に好ましくは0〜8である。
【0019】
上記一般式(1)において、v、w及びxの間の関係は、好ましくは0≦x/(v+w)≦5であり、より好ましくは0≦x/(v+w)≦2、更に好ましくは0≦x/(v+w)≦1である。
v、w及びyの間の関係は、好ましくは0≦y/(v+w)≦5であり、より好ましくは0≦y/(v+w)≦2、更に好ましくは0≦y/(v+w)≦1である。
また、v、w、x、y及びzの間の関係は、好ましくは0≦z/(v+w+x+y)≦1であり、より好ましくは0≦z/(v+w+x+y)≦0.5、更に好ましくは0≦z/(v+w+x+y)≦0.1である。
【0020】
上記ポリシロキサン原料は、ケイ素(Si)1モルに対し、炭素(C)を0.1モル以上3.5モル以下の範囲で有することが好ましい。Siに対するCのモル比が3.5以下である場合、ポリシロキサン原料を加熱して得られるシリコンオキシカーバイドの耐熱性が向上し、炭化ケイ素結晶の生成が抑制される点で有利である。
Siに対するCのモル比は3.0以下であってもよく、2.5以下であってもよく、2.0以下であってもよく、1.0以下であってもよい。
また、上記ポリシロキサン原料中の酸素(O)は、シリコンオキシカーバイドにおける酸素の供給源となるとともに炭化ケイ素結晶の生成を抑制する観点からも効果を示す。
また、上記ポリシロキサン原料中の酸素(O)は、シリコンオキシカーバイド中の酸素の供給源ともなるとともに炭化ケイ素結晶の生成を抑制する観点からも効果を示す。ポリシロキサン原料は、酸素(O)を、Si1モルに対し、0モルを超えて2.5モル以下の範囲で有することが好ましい。Siに対するOのモル比は2.0以下であってもよく、1.8以下であってもよく、1.5以下であってもよい。また、Siに対するOのモル比は0.1以上であってもよく、0.5以上であってもよい。
【0021】
上記ポリシロキサン原料におけるSiの元素比率は、シリコンオキシカーバイドの形成性の観点から、25質量%以上70質量%以下の範囲であることが好ましい。Siの元素比率は30質量%以上であってもよく、35質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。また、Siの元素比率は65質量%以下であってもよい。
同様の観点から、ポリシロキサン原料におけるCの元素比率は、2.0質量%以上45質量%以下の範囲であることが好ましい。Cの元素比率は5.0質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよい。また、Cの元素比率は40質量%以下であってもよく、35質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよい。
更に、ポリシロキサン原料におけるOの元素比率は、10質量%以上45質量%以下の範囲であることが好ましい。Oの元素比率は15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。また、Oの元素比率は40質量%以下であってもよい。
【0022】
上記ポリシロキサン原料の数平均分子量は、シリコンオキシカーバイドが効率よく製造されることから、好ましくは100〜500,000、より好ましくは300〜100,000、更に好ましくは500〜50,000である。この数平均分子量は、トルエンを溶離液としたGPC測定により、標準ポリスチレン換算されたものである。
【0023】
上記ポリシロキサン原料を調製する方法は、後述される。
【0024】
本発明では、ポリシロキサン原料を熱分解することにより、シリコンオキシカーバイドが製造される。熱分解温度は、シリコンオキシカーバイドの形成性の観点から、好ましくは300℃〜1,600℃、より好ましくは600℃〜1,600℃である。そして、この熱分解温度における処理時間は、好ましくは1〜600分間、より好ましくは30〜300分間、更に好ましくは60〜120分間である。尚、加熱開始温度(常温)から熱分解温度までの昇温条件は、特に限定されず、昇温を一定速度とする方法、昇温と温度保持とを組み合わせる方法等とすることができる。また、熱分解の雰囲気は、シリコンオキシカーバイドの形成性の観点から、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス等)を主とすることが好ましい。
【0025】
本発明により、ケイ素原子、炭素原子及び酸素原子からなる、非晶質のシリコンオキシカーバイドを得ることができる。ケイ素原子、炭素原子及び酸素原子の質量比は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは10〜80質量%、5〜80質量%及び10〜80質量%、より好ましくは20〜60質量%、10〜60質量%及び20〜60質量%である。
本発明によって、1500℃を超える高温領域下(例えば、1600℃)においても化学的に安定なシリコンオキシカーバイドを、高収率で製造することができる。本発明において用いるポリシロキサン原料は、その分子中にヒドロシリル基及び不飽和基(a)を有するので、これを所定の熱分解温度にまで昇温させる場合には、まず、低温域においてヒドロシリル化反応が進行し、架橋構造を形成する。そして、昇温過程において、有機物の揮散が抑制され、目的とするシリコンオキシカーバイドを効率よく得ることができる。本発明におけるシリコンオキシカーバイドのポリシロキサン原料に対する収率は、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上である。
【0026】
ここで、上記ポリシロキサン原料として用いることができる、上記構造単位(11)〜(13)の少なくとも1つと、構造単位(21)〜(23)の少なくとも1つとを有するポリシロキサン(以下、「ポリシロキサン(P)」という)の調製方法について、説明する。
【0027】
上記ポリシロキサン(P)は、加水分解縮合反応により得られたものであることが好ましく、いずれも、加水分解縮合反応により、構造単位(11)〜(13)の少なくとも1つと、構造単位(21)〜(23)の少なくとも1つとを形成する原料化合物を用いて調製されたものとすることができる。上記ポリシロキサン(P)が、ヒドロシリル基及び不飽和基(a)を含まない構造単位を有する場合、上記構造単位(31)〜(33)等を形成する原料化合物を併用することができる。
【0028】
加水分解縮合反応により上記構造単位(11)を形成する化合物(以下、「ケイ素化合物(s1)」という)としては、下記一般式(41)で表される、アルコキシ基若しくはハロゲン原子からなる加水分解性基又はヒドロキシル基を合計3個有する化合物を用いることができる。
【化12】
(式中、X
1は、互いに同一の或いは異なる、アルコキシ基若しくはハロゲン原子、又は、ヒドロキシル基である)
上記ケイ素化合物(s1)としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリクロロシラン等が挙げられる。
【0029】
上記構造単位(12)を形成する化合物(以下、「ケイ素化合物(s2)」という)としては、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、ジプロポキシメチルシラン、ジクロロメチルシラン等が挙げられる。
【0030】
上記構造単位(13)を形成する化合物であって、2つのR
3が炭化水素基である構造単位を形成する化合物(以下、「ケイ素化合物(s3)」という)としては、1個の加水分解性基を有する化合物(以下、「ケイ素化合物(s31)」という)、又は、このケイ素化合物(s31)の2分子が加水分解縮合して1分子となった化合物(以下、「ケイ素化合物(s32)」という)を用いることができる。
上記ケイ素化合物(s31)としては、メトキシジメチルシラン、エトキシジメチルシラン、プロポキシジメチルシラン、クロロジメチルシラン等が挙げられる。また、上記ケイ素化合物(s32)としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0031】
上記構造単位(13)を形成する化合物であって、一方のR
3が水素原子であり、他方のR
3が炭化水素基である構造単位を形成する化合物(以下、「ケイ素化合物(s4)」という)としては、メトキシメチルシラン、メトキシエチルシラン、メトキシプロピルシラン、メトキシブチルシラン、エトキシメチルシラン、エトキシエチルシラン、エトキシプロピルシラン、エトキシブチルシラン等が挙げられる。
【0032】
上記構造単位(13)を形成する化合物であって、2つのR
3が水素原子である構造単位を形成する化合物(以下、「ケイ素化合物(s5)」という)としては、メトキシシラン、エトキシシラン、プロポキシシラン等が挙げられる。
【0033】
加水分解縮合反応により上記構造単位(21)を形成する化合物(以下、「ケイ素化合物(s6)」という)としては、下記一般式(42)で表される、アルコキシ基若しくはハロゲン原子加水分解性基を3個有する化合物を用いることができる。
【化13】
(式中、Aは、不飽和基(a)であり、X
2は、互いに同一の又は異なる、アルコキシ基、ハロゲン原子若しくはヒドロキシル基である)
上記ケイ素化合物(s6)としては、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリプロポキシビニルシラン、トリクロロビニルシラン、トリメトキシ(4−ビニルフェニル)シラン、トリエトキシ(4−ビニルフェニル)シラン、トリプロポキシ(4−ビニルフェニル)シラン、トリクロロ(4−ビニルフェニル)シラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0034】
上記構造単位(22)を形成する化合物(以下、「ケイ素化合物(s7)」という)としては、ジメトキシビニルシラン、ジエトキシビニルシラン、ジプロポキシビニルシラン、ジクロロビニルシラン、ジメトキシビニルメチルシラン、ジメトキシビニルエチルシラン、メトキシエトキシビニルメチルシラン、メトキシエトキシビニルエチルシラン、ジエトキシビニルメチルシラン、ジエトキシビニルエチルシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0035】
上記構造単位(23)を形成する化合物であって、2つのR
3が炭化水素基である構造単位を形成する化合物(以下、「ケイ素化合物(s8)」という)としては、メトキシビニルジメチルシラン、メトキシビニルメチルエチルシラン、エトキシビニルジメチルシラン、エトキシビニルメチルエチルシラン、プロポキシビニルジメチルシラン、プロポキシビニルメチルエチルシラン、クロロビニルジメチルシラン、クロロビニルメチルエチルシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメトキシジメチルシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルエトキシジメチルシラン等が挙げられる。
【0036】
上記構造単位(23)を形成する化合物であって、一方のR
3が不飽和基(a)である構造単位を形成する化合物(以下、「ケイ素化合物(s9」という)としては、メトキシジビニルシラン、エトキシジビニルシラン、メトキシジビニルメチルシラン、メトキシジビニルエチルシラン、エトキシジビニルメチルシラン、エトキシジビニルエチルシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルビニルメトキシシラン等が挙げられる。
【0037】
上記構造単位(31)を形成する化合物(以下、「ケイ素化合物(s11)」という)としては、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジメトキシジプロピルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジエトキシジプロピルシラン、ジプロポキシジメチルシラン、ジプロポキシジエチルシラン、ジプロポキシジプロピルシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジエチルシラン、ジクロロジプロピルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジプロポキシジフェニルシラン、ジクロロジフェニルシラン等が挙げられる。
【0038】
上記の各ケイ素化合物を用いて、ポリシロキサン(P)を製造する場合、はじめに、これらの化合物を、有機溶剤の存在下又は非存在下、加水分解縮合反応させ、その後、有機溶剤の存在下、水と、有機溶剤とを除去する方法とすることができる。
【0039】
加水分解縮合反応の際に有機溶剤を用いる場合、トルエン、キシレン、ベンゼン、メシチレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸2−メトキシ−1−メチルエチル等のエステル類等を用いることができる。これらのうち、沸点90℃以上の芳香族炭化水素を使用することにより、ポリシロキサン(P)を製造する工程、及び、その後、揮発性成分を留去する工程において、ゲルの発生を抑制することができる。
【0040】
また、上記有機溶媒として、トルエン、キシレン等の非極性溶媒を使用する場合には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール又はその他の極性溶媒を併用することができる。このような混合溶媒とすることにより、加水分解縮合反応が円滑に進行し、得られる反応液が均一となる。また、低級アルコールは、ケイ素原子に結合してアルコキシ基を形成する。例えば、イソプロピルアルコールを用いると、ポリシロキサンにイソプロポキシシリル基が導入され、安定性及び反応性のバランスが良好なポリシロキサン(P)を得ることができる。
【0041】
加水分解縮合反応で用いる水の量は、ケイ素化合物に含まれる加水分解性基に対して、好ましくは1〜10倍モル、より好ましくは1〜3倍モルである。
【0042】
加水分解縮合反応は、無触媒で行ってもよいし、触媒を用いて行ってもよい。触媒を用いる場合は、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸等の酸触媒、及び、アルカリ触媒のいずれを用いてもよい。これらのうち、酸触媒が好ましい。酸触媒を用いるか、又は、無触媒下で水を加えて室温で攪拌することにより、加水分解縮合反応は容易に進行するが、必要により加熱してもよい。
加水分解縮合反応の条件は、特に限定されないが、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気において、0℃〜80℃で行うことが好ましい。
【0043】
加水分解縮合反応の後、反応液から、減圧蒸留等を適用して、水を含む媒体を除去することにより、ポリシロキサン(P)を単離することができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0045】
1.ポリシロキサン原料の調製
メカニカルスターラー、温度計、滴下漏斗及び三方コックを取り付けた、容積2リットルの4つ口フラスコ内を窒素ガスでパージした。そして、このフラスコに、345グラム(210mmol)のトリエトキシシラン、103.8グラム(70mmol)のトリメトキシビニルシラン及び94グラム(70mmol)の1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンを入れ、更に、590ミリリットルのキシレン及び430ミリリットルの2−プロパノールを添加して、混合物の温度を20℃とした。この反応系を撹拌下、窒素ガスを流しながら、153ミリリットルの1.59%塩酸水溶液及び215ミリリットルの2−プロパノールの混合液を1時間かけて滴下した。この混合液の滴下完了後、25℃で更に12時間攪拌を続けた。そして、得られた反応液から、減圧条件下、水、2−プロパノール、キシレン等の媒体を留去することで、無色液状物質を得た。この無色液状物質は、下記式(2)で表されるポリシロキサン(以下、「ポリシロキサン(P)」という)である。
【化14】
【0046】
2.シリコンオキシカーバイドの製造
実施例1
1.2グラムのポリシロキサン(P)をアルミナ製角灰皿に入れ、これを石英管(内径42mm、長さ1000mm)の中に載置した。そして、この石英管を管状炉の中に載置して、毎分200ミリリットルの窒素気流下、25℃から2時間かけて800℃まで昇温し、その後、1時間に渡って800℃を保持した。この熱処理により、1.0グラムの濃褐色固体を得た。
次に、上記濃褐色固体を乳鉢で粉砕し、得られた粉末415ミリグラムを黒鉛製坩堝に入れ、これを更に黒鉛製の容器に収容した。そして、この黒鉛製容器を富士電波工業社製高温焼成炉「ハイマルチ」(商品名)内に設置し、熱分解を行った。はじめに、25℃から500℃までは真空状態で加熱した。そして、アルゴン雰囲気として、500℃から毎分10℃の速度で1600℃まで昇温し、その後、1時間に渡って1600℃を保持した。この熱分解により、311ミリグラムの黒色粉末を得た。ポリシロキサン(P)に対する収率は63%であった。
【0047】
得られた黒色粉末の元素分析を行ったところ、ケイ素原子、炭素原子及び酸素原子の質量比が、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、54.3質量%、15.1質量%及び30.6質量%であるシリコンオキシカーバイドであることが分かった。
また、フィリップス社製X線回折装置「X’pert Pro α1」(型式名)を用いて得られた回折像(
図1)により、黒色粉末は非晶質であることが分かった。更に、日本分光社製ラマン分光分析装置「NRS−3300」(型式名)を用いて得られたラマンスペクトル(
図2)により、炭化ケイ素に由来するピーク(750〜800cm
−1)が見られないため、結晶性物質が含まれていないことが分かった。
【0048】
比較例1
東亞合成社製ポリ[(3−メタクリロイルオキシプロピルシルセスキオキサン)]誘導体「MAC−SQ TM−100」(商品名)のTG/DTA分析を、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分として行った。この製品は、炭素−炭素不飽和結合を含む基を有するがヒドロシリル基を有さない化合物である。
図3は、得られたTG/DTA曲線であり、1,000℃における収率は約40%であることが分かる。これより実施例1と同等の収率は見込めず、シリコンオキシカーバイドを効率良く製造することはできないことが確認された。
【0049】
比較例2
東亞合成社製ポリ({3−[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]プロピル}シルセスキオキサン)誘導体「OX−SQ TX−100」(商品名)のTG/DTA分析を、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分として行った。この製品は、官能基としてオキセタニル基を有するが、ヒドロシリル基及び炭素−炭素不飽和結合を含む基のいずれも有さない化合物である。
図3は、得られたTG/DTA曲線であり、1,000℃における収率は約30%であることが分かる。これより実施例1と同等の収率は見込めず、シリコンオキシカーバイドを効率良く製造することはできないことが確認された。