(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0016】
〔測定装置の全体構成〕
図1は、本実施形態に係る測定装置、より具体的には画像測定装置の全体構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る画像測定装置1は、対象物Wの形状を測定する装置本体10と、装置本体10を制御するとともに、必要なデータ処理を実行するコンピュータシステム20と、を備える。なお、画像測定装置1は、これらのほかに、測定結果等をプリントアウトするプリンタ等を適宜備えていてもよい。本実施形態に係る画像測定装置1は、例えばシリンダの内壁のような、湾曲形状を有する対象物Wの測定に適している。
【0017】
装置本体10は、架台11、ステージ12、X軸ガイド14および撮像ユニット15を含む。本実施形態において、X軸方向(X軸に沿った方向)とは、ステージ12の面に沿った一方向である。Y軸方向(Y軸に沿った方向)とは、ステージ12の面に沿った方向でX軸方向と直交する方向である。Z軸方向(Z軸に沿った方向)とは、X軸方向およびY軸方向と直交する方向である。Z軸方向は上下方向とも言う。また、X軸方向およびY軸方向は水平方向とも言う。
【0018】
架台11は、例えば除振台3の上に配置され、外部の震動が架台11の上のステージ12や撮像ユニット15へ伝わることを抑制している。ステージ12は、架台11の上に配置される。ステージ12は、測定の対象物Wを載置する台である。ステージ12は、図示しないY軸駆動機構により架台11に対してY軸方向に移動可能に設けられる。
【0019】
架台11の両側部には支持部13aおよび13bが設けられる。支持部13aおよび13bのそれぞれは架台11の側部から上方に延びるよう設けられる。X軸ガイド14はこの支持部13aおよび13bの上に、これらを跨ぐように設けられる。X軸ガイド14には撮像ユニット15が取り付けられる。
【0020】
撮像ユニット15は、図示しないX軸駆動機構によりX軸ガイド14に沿いX軸方向に移動可能に設けられ、Z軸駆動機構によってZ軸方向に移動可能に設けられる。このような駆動機構により、ステージ12上の対象物Wと、撮像ユニット15とのX軸、Y軸およびZ軸のそれぞれに沿った相対的な位置関係が設定可能になる。すなわち、この位置関係を調整することで、撮像ユニット15による撮像領域を対象物Wの測定領域に合わせることができる。
【0021】
撮像ユニット15は、対象物Wの二次元画像を撮像する画像光学ヘッド151および光干渉測定により対象物Wの三次元形状を測定する光干渉光学ヘッド152を着脱可能に備え、いずれかのヘッドを用いて、コンピュータシステム20が設定する測定位置で対象物Wを測定する。
【0022】
画像光学ヘッド151の測定視野は光干渉光学ヘッド152の測定視野よりも通常広く設定し、コンピュータシステム20による制御により、両ヘッドを切り替えて使用できる。画像光学ヘッド151と光干渉光学ヘッド152は、一定の位置関係を保つよう、共通の支持板により支持され、切り替えの前後で測定の座標軸が変化しないよう予めキャリブレーションされる。
【0023】
画像光学ヘッド151は、撮像素子(CCDカメラ、CMOSカメラなど)、照明装置、フォーカシング機構等を備え、対象物Wの二次元画像を撮影する。撮影された二次元画像のデータはコンピュータシステム20に取り込まれる。
【0024】
光干渉光学ヘッド152は、例えば白色光干渉法によって対象物Wの形状測定を行う。本実施形態において光干渉光学ヘッド152は測定ヘッドの一例である。光干渉光学ヘッド152の詳細については後述する。
【0025】
コンピュータシステム20は、コンピュータ本体201、キーボード202、マウス204およびディスプレイ205を備える。コンピュータ本体201は、装置本体10の動作等を制御する。コンピュータ本体201は、制御ボード等の回路(ハードウェア)およびCPUで実行されるプログラム(ソフトウェア)によって装置本体10の動作を制御する。また、コンピュータ本体201は、装置本体10から出力される信号に基づき対象物Wの情報を演算し、演算結果をディスプレイ205に表示する。
【0026】
ジョイスティック203は、対象物Wを撮像する位置を設定する際に用いられる。すなわち、ユーザがジョイスティック203を操作することで、対象物Wと撮像ユニット15との相対的な位置関係が変化して、ディスプレイ205に表示される撮像領域の位置を調整することができる。
【0027】
図2は、光干渉光学ヘッドの構成を例示する模式図である。
図2に示すように、光干渉光学ヘッド152は、光出射部200と、光干渉光学ヘッド部21と、対物レンズ部22と、参照ミラー部23と、結像レンズ24と、撮像部25と、駆動機構部26とを備える。
【0028】
光出射部200は、広帯域にわたる多数の波長成分を有しコヒーレンシーの低い広帯域光を出力する光源を備え、例えば、ハロゲンやLED(Light Emitting Diode)などの白色光源が用いられる。
【0029】
光干渉光学ヘッド部21は、ビームスプリッタ211と、コリメータレンズ212とを備えている。光出射部200から出射した光は、対物レンズ部22の光軸と直角の方向から、コリメータレンズ212を介してビームスプリッタ211に平行に照射され、ビームスプリッタ211からは光軸に沿った光が出射されて、対物レンズ部22に対して上方から平行ビームが照射される。
【0030】
対物レンズ部22は、対物レンズ221、ビームスプリッタ222等を備えて構成される。対物レンズ部22においては、上方から平行ビームが対物レンズ221に入射した場合、入射光は対物レンズ221で収束光となり、ビームスプリッタ222の内部の反射面222aに入射する。ここで、入射光は、参照ミラー231を有する参照光路(図中破線)を進む透過光(参照光)と、対象物Wを配置した測定光路(図中実線)を進む反射光(測定光)とに分割される。透過光は、収束して参照ミラー231で反射され、更にビームスプリッタ222の反射面222aを透過する。一方、反射光は、収束して対象物Wで反射され、ビームスプリッタ222の反射面222aにより反射される。参照ミラー231からの反射光と対象物Wからの反射光とはビームスプリッタ222の反射面222aにより合成されて合成波となる。
【0031】
ビームスプリッタ222の反射面222aの位置で合成された合成波は、対物レンズ221で平行ビームになり上方へ進み、光干渉光学ヘッド部21を通過して、結像レンズ24に入射する(
図2中一点鎖線)。結像レンズ24は合成波を収束させ撮像部25上に干渉画像を結像させる。
【0032】
参照ミラー部23は、上述のビームスプリッタ222により分岐された参照光路を進む透過光(参照光)を反射する参照ミラー231を保持する。対象物Wがシリンダの内壁の場合、内壁面はステージ12に対してほぼ垂直に配置される。このため、対物レンズ221による収束光をビームスプリッタ222で直角に(水平方向に)反射して、垂直に配置されるシリンダの内壁面に測定光を照射する。
【0033】
撮像部25は、撮像手段を構成するための2次元の撮像素子からなるCCDカメラ等であり、対物レンズ部22から出力された合成波(対象物Wからの反射光と参照ミラー231からの反射光)の干渉画像を撮像する。撮像された画像のデータはコンピュータシステム20に取り込まれる。
【0034】
駆動機構部26は、コンピュータシステム20からの移動指令によって、光干渉光学ヘッド152を光軸方向に移動させる。ここで、
図3に示した対物レンズ部22の要部拡大図において、参照光路(光路1+光路2)と、測定光路(光路3+光路4)の光路長が等しいときに光路長差が0となる。したがって、駆動機構部26は、測定に際しては、光路長差0となるように、光干渉光学ヘッド152をビームスプリッタ222で反射された光線の光軸方向に水平に移動させることで測定光路の長さを調整する。なお、上記では光干渉光学ヘッド152を移動させる場合を例示して説明したが、ステージ12を移動させることで測定光路の長さを調整する構成としてもよい。このように、光干渉光学ヘッド152において、参照光路または測定光路の何れか一方の光路長が可変とされる。なお、対象物Wの測定面が水平方向に配置されている場合には、ビームスプリッタ222による参照光および測定光の透過および反射を逆にして、測定光を垂直方向に透過させるような光学系を適用してもよい。
【0035】
光干渉光学ヘッド152は、コンピュータシステム20による制御の下、駆動機構部26により光軸方向の位置を移動走査されながら撮像部25による撮像を繰り返す。撮像部25により撮像された各移動走査位置での干渉画像の画像データはコンピュータシステム20に取り込まれ、測定視野内の各位置について、干渉縞のピークが生じる移動走査位置を検出し、対象物Wの測定面の各位置における高さが求められる。
【0036】
図4(a)〜(c)は、対象物および測定領域について説明する模式図である。
図4(a)は、湾曲形状を有する対象物Wの例を示す模式斜視図、
図4(b)は、測定領域を例示する模式図、
図4(c)は、3次元データと断面の例を示す模式図である。
本実施形態では、
図4(a)に示すシリンダ内壁のような湾曲形状を有する対象物Wの形状測定を行う。光干渉光学ヘッド152は、内壁面Sの所定の領域を測定領域Rとして、内壁面Sに対して垂直な方向の距離を測定する。
図4(b)には測定領域Rの1つが模式的に表される。
【0037】
図4(c)に示すように、内壁面Sの3次元データには、測定領域Rに対応した撮像部25の各画素ごとに、内壁面Sに対して垂直な方向(深さ方向)の距離のデータが含まれる。内壁面Sに例えばピット(凹み)があると、基準面に対して低い値のデータとなる。このデータが閾値よりも低い場合にはピットであると判断される。
【0038】
〔測定方法および測定プログラム〕
本実施形態に係る測定方法は、例えば上記のような画像測定装置1を用いて、
図4(a)に示すような対象物Wについて表面の測定を行う方法である。
測定方法は、次のような工程を有する。
(1)対象物Wの第1領域の測定に適した測定条件を設定する工程
(2)対象物Wの表面について第1スキャン範囲および第1スキャンピッチで測定を行い、第1測定結果を得る工程
(3)対象物Wの第2領域を算出する工程
(4)第2領域の測定に適した測定条件を設定する工程
(5)第2スキャン範囲および第2スキャンピッチで測定を行い、第2測定結果を得る工程
(6)データを合成する工程
【0039】
上記(1)〜(6)の各工程は、例えば、画像測定装置1のコンピュータシステム20や、装置本体10で取得した3次元データを読み込んだコンピュータによって実行されるプログラム(測定プログラム)によって実行される。コンピュータは、コンピュータシステム20に含まれていてもよい。
【0040】
図5は、コンピュータの構成を例示するブロック図である。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)311、インタフェース312、出力部313、入力部314、主記憶部315及び副記憶部316を備える。
【0041】
CPU311は、各種プログラムの実行によって各部を制御する。インタフェース312は、外部機器との情報入出力を行う部分である。本実施形態では、装置本体10から送られる情報をインタフェース312を介してコンピュータに取り込む。また、コンピュータからインタフェース312を介して情報を装置本体10へ送る。インタフェース312は、コンピュータをLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)に接続する部分でもある。
【0042】
出力部313は、コンピュータで処理した結果を出力する部分である。出力部313には、例えば、
図1に示すディスプレイ205や、プリンタなどが用いられる。入力部314は、ユーザから情報を受け付ける部分である。入力部314には、キーボードやマウスなどが用いられる。また、入力部314は、記録媒体MMに記録された情報を読み取る機能を含む。
【0043】
主記憶部315には、例えばRAM(Random Access Memory)が用いられる。主記憶部315の一部として、副記憶部316の一部が用いられてもよい。副記憶部316には、例えばHDD(Hard disk drive)やSSD(Solid State Drive)が用いられる。副記憶部316は、ネットワークを介して接続された外部記憶装置であってもよい。
【0044】
図6は、本実施形態に係る測定プログラムの流れを例示するフローチャートである。
本実施形態に係る測定プログラムは、コンピュータを上記(1)〜(6)の工程に対応した手段として機能させる。
図6に示すステップS101〜S106の処理は、上記(1)〜(6)の工程に対応している。
【0045】
先ず、ステップS101に示すように、対象物Wの第1領域の測定に適した測定条件の設定を行う。
図7(a)には、円筒内壁の測定領域Rが模式的に示される。円筒内壁の測定領域Rとしては、円筒軸の角度および円筒軸方向の深さの位置を指定することで設定される。円筒内壁のうち凹部(ピット)を含む領域が第1領域R1、それ以外の領域が第2領域R2である。ステップS101では、第1領域R1の測定に適した測定条件、すなわち凹部(ピット)の測定に適した測定条件(例えば、光量)を設定する。また、円筒内壁の凹凸における閾値の設定として、例えばピットの深さの閾値を設定する。
【0046】
なお、測定領域Rが、測定ヘッド(例えば光干渉光学ヘッド152)による1回のスキャンで測定可能な範囲を超える場合、測定領域Rの全域をカバーするために複数の局所データの測定位置を算出しておく。
図7(b)には、円筒内壁における測定領域Rと複数の局所データとの対応が模式的に示される。
【0047】
次に、ステップS102に示すように、第1測定結果の取得を行う。すなわち、先に設定した第1領域R1の測定に適した条件によって、対象物Wの表面について第1スキャン範囲および第1スキャンピッチでの測定を行う。対象物Wが円筒内壁の場合、測定領域Rについて測定ヘッド(例えば光干渉光学ヘッド152)によるスキャンを行い、第1測定結果を得る。このスキャンを「ファーストスキャン」と言う。
【0048】
ここで、ファーストスキャンのスキャン範囲は、測定の際の対象物Wと測定ヘッドとの距離(光軸に沿った距離:深さとも言う)の移動範囲のことである。ファーストスキャンのスキャンピッチは、測定の際の対象物Wと測定ヘッドとの距離の変化の間隔のことである。例えば、
図8(a)に示すように、対象物Wが円筒内壁であった場合、第1スキャン範囲W1として、測定範囲内での湾曲している円筒内壁の全体の深さよりも僅かに広い範囲を設定する。また、第1スキャンピッチP1として、少なくとも凹部の形状を取得できる程度のピッチを設定する。ファーストスキャンにおいては、撮像部25のシャッターを開放したまま撮像を行うと、高速スキャンのために画像の鈍りが生じやすい。そこで、シャッター速度および光量を上げて撮影を行うことが望ましい。ファーストスキャンの際には、プログラム処理によってシャッター速度および光量が自動的に設定される。そして、この設定された測定条件で、第1スキャン範囲W1および第1スキャンピッチP1での測定を行い、第1測定結果を得る。
【0049】
次に、ステップS103に示すように、第2領域の算出を行う。第2領域R2を算出するには、第1測定結果を用いて第1領域R1を求め、第1領域R1以外の領域を第2領域R2として求める。第1領域R1が凹部(ピット)を含む場合、
図8(b)に示すように、第1測定結果から閾値(ステップS101で設定した凹凸の閾値)を超えるデータを凹部(ピット)のある領域(第1領域R1)とする。
【0050】
具体的には、第1測定結果の平均値から閾値を超えるデータを有する点(図中黒丸)のうち、面方向に閉じられる範囲(閾値を超える点が面方向に連続する範囲)をピットとして判定する。そして、ピットであると判定された領域を第1領域R1、第1領域R1以外の領域を第2領域R2とする。
【0051】
ここで、第2領域R2を求める際、第1測定結果の円筒軸方向(
図7(a)参照)の平均値から閾値を超えるデータを除外し、残りのデータを円筒軸方向(
図7(a)参照)に平均した値を表面基準位置として想定し、この表面基準位置から閾値を超えるデータの領域を第1領域R1、それ以外の領域を第2領域R2としてもよい。
図9(a)には、表面基準位置LVと、表面基準位置LVを用いて求めた第1領域R1および第2領域R2の例が示される。表面基準位置LVは、内壁面の表面として想定される基準となる深さであり、円筒軸方向では直線、円筒周方向では曲線、測定領域Rにおいては曲面として表される。表面基準位置LVは、多項式による曲線(曲面)にフィッティングされてもよい。また、表面基準位置LVは、円筒の径の設計値から計算によって求められてもよい。また、対象物Wの測定範囲における湾曲形状が十分になだらかな(円筒の径が十分に大きい)場合は、測定領域Rを平面に近似してもよい。
【0052】
次に、ステップS104に示すように、第2領域R2の測定に適した測定条件の設定を行う。対象物Wが凹部(ピット)を含む円筒内壁の場合、円筒内壁の表面部が第2領域R2となる。したがって、円筒内壁の表面部の測定に適した測定条件(例えば、光量)を設定する。
次に、ステップS105に示すように、第2測定結果の取得を行う。すなわち、先に設定した第2領域R2の測定に適した条件によって、対象物Wの表面について第2スキャン範囲および第2スキャンピッチでの測定を行う。このスキャンを「セカンドスキャン」と言う。
【0053】
図9(b)には、セカンドスキャンにおける第2スキャン範囲W2および第2スキャンピッチP2の例が示される。セカンドスキャンの第2スキャン範囲W2は、ファーストスキャンの第1スキャン範囲W1よりも狭い。また、セカンドスキャンの第2スキャンピッチP2は、ファーストスキャンの第1スキャンピッチP1よりも細かい。
【0054】
本実施形態では、第2スキャン範囲W2として、表面基準位置LVを含み、表面基準位置LVの最も低い位置よりも凹んだ凹部の少なくとも底を含まない範囲を設定する。言い換えると、第2スキャン範囲W2は、測定範囲内での湾曲している表面基準位置LVの全体の深さよりも僅かに広い範囲を設定する。これにより、第2スキャン範囲W2として、表面基準位置LVは含むものの、少なくとも表面基準位置LVの最も深い(低い)位置よりも凹んだ凹部については測定範囲から除外されることになる。
【0055】
また、第2スキャンピッチP2として、第2領域R2である円筒内壁の表面部の形状を第1スキャンピッチP1よりも細かく設定して、詳細なデータを取得する。これにより、詳細なデータが必要な範囲を効果的に設定することができる。なお、セカンドスキャンにおいては、撮像部25のシャッターを開放したまま撮像を行うことができる。セカンドスキャンの際には、プログラム処理によってシャッター速度および光量が自動的に設定される。
【0056】
次に、ステップS106に示すように、データの合成を行う。ここでは、第1測定結果のうちの第1領域R1のデータと、第2測定結果のうちの第2領域R2のデータとの合成を行う。この合成によって、測定領域Rについての測定結果として、第1領域R1については第1領域R1の測定に適した条件で取得したデータが反映され、第2領域R2については第2領域R2の測定に適した条件で取得したデータが反映される。
【0057】
このような測定方向および測定プログラムにおいて、第1領域R1の測定に適した第1測定結果の取得については、広い範囲を粗くスキャンして短時間で行うことができ、第2領域R2の測定に適した第2測定結果の取得では、狭い範囲を詳細にスキャンして高精度なデータの取得について必要以上の時間をかけないようにすることができる。したがって、最適な測定条件の異なる領域を含む対象物Wの表面を測定する場合、2回のスキャンであっても、短時間で形状測定することができるようになる。
【0058】
例えば、「エンジンボア」のような対象物Wでは、凹部(ピット)の間口の幅、深さに対してはμmオーダーの測定精度が要求され、一方、表面性状に対する粗さではnmオーダーの測定精度が要求される。このような対象物Wについて、従来のマルチスキャン測定を適用する場合は、全ての測定に対して最も分解能の高い要求精度にあわせた測定ピッチで、全形状がカバーできる測定幅の範囲(実際は全体の形状より少し大きなレンジ)を設定し、かつ、表面に適した光量および凹部(ピット)の内部の測定に適した光量の、それぞれの光量で合成した3次元形状を生成する必要がある。このように広い範囲を高分解能で測定する場合、多大な時間を要することになる。
【0059】
一方、本実施形態のように、測定要求精度の違いに着目し、マルチスキャンの最初のスキャン(ファーストスキャン)を、測定対象領域全体において、粗いピッチで高速に測定し(ラフスキャン)、その結果から、細密な測定が必要な位置と、その測定レンジを推定する。そして、次のスキャン(セカンドスキャン)では、細密なスキャン(ファインスキャン)を行い、その3次元形状を合成することで、測定領域Rの全体の測定における高速化を図ることができる。
【0060】
エンジンボアを対象物Wとした場合、第1スキャン範囲W1は約100μm程度であり、第1スキャンピッチP1は約80nm〜100nm程度である。また、第2スキャン範囲W2は約10μm〜20μm程度であり、第2スキャンピッチP2は約60nm程度である。本実施形態を適用することで、従来のマルチスキャン測定に比べて数日単位での測定時間の短縮化を達成することができる。
【0061】
ここで、上記説明した本実施形態に係る測定プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体MMに記録されていてもよい。すなわち、
図6に示すステップS101〜ステップS106の一部または全部を、コンピュータに読み取り可能な形式で記録媒体MMに記録してもよい。また、本実施形態に係る測定プログラムは、ネットワークを介して配信されてもよい。
【0062】
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、測定ヘッドとして白色光干渉法による光干渉光学ヘッド152を用いているが、画像プローブやレーザプローブであっても適用可能である。また、測定ヘッドとして、画像光学ヘッド151を対象物Wに照射する光の光軸方向に走査し連続的に取得した画像からCCDの各ピクセルにおけるコントラストのピークを検出することにより対象物Wの3次元形状を得るPFF(Points From Focus)も適用可能である。
【0063】
また、測定の対象物Wについて、凹部(ピット)を有する円筒内壁の例を示したが、例えば、段差を有する表面について、段差の低い部分と高い部分とで測定条件が異なるような対象物Wであっても本実施形態は有効である。また、例えば、ホーニング加工によりクロスハッチ(網状の溝)が形成されたシリンダの内壁面を対象物Wにする場合にも本実施形態は有効である。
【0064】
さらに、上記実施形態では、(6)データを合成する工程(
図6のステップS106の処理)を行って第1領域R1のデータと第2領域R2のデータとを合成しているが、第1領域のデータおよび第2領域R2のデータのいずれか一方のみ必要な場合には、合成を行わずに一方のデータのみを出力するようにしてもよい。
【0065】
また、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。