特許第6800535号(P6800535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800535
(24)【登録日】2020年11月27日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】ブロックゲージ用治具及び押し出し器具
(51)【国際特許分類】
   G01B 3/32 20060101AFI20201207BHJP
【FI】
   G01B3/32
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-55910(P2017-55910)
(22)【出願日】2017年3月22日
(65)【公開番号】特開2018-159579(P2018-159579A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2020年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(72)【発明者】
【氏名】片山 靖教
(72)【発明者】
【氏名】蔦永 裕行
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭49−103457(JP,U)
【文献】 特開2001−012940(JP,A)
【文献】 米国特許第06014886(US,A)
【文献】 実開昭56−92801(JP,U)
【文献】 特開2016−138860(JP,A)
【文献】 特開2010−85303(JP,A)
【文献】 特開2014−174111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測長器具の校正に用いられるブロックゲージの被測定箇所を規定するブロックゲージ用治具であって、
該ブロックゲージ用治具は、ブロックゲージを収容する筐体と、該筐体に設けられ該筐体に対してブロックゲージを出し入れ可能にする開口部と、該筐体に収容された該ブロックゲージの被測定箇所を規定するように該筐体の一部が切り欠かれて形成された一対の切り欠き部と、を備え、
該測長器具の校正に用いられる該ブロックゲージの一対の面が該一対の切り欠き部からそれぞれ露出することを特徴とするブロックゲージ用治具。
【請求項2】
該ブロックゲージに印字されている長さ表示文字を露出する窓部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のブロックゲージ用治具。
【請求項3】
請求項1及び請求項2に記載された該ブロックゲージ用治具に収容されたブロックゲージを押し出す押し出し器具であって、
基台と、該基台から突出した突起と、を備え、
該突起は、該ブロックゲージ用治具の該開口部に対向する面に形成された挿通穴に突き通されることで該ブロックゲージ用治具に収容された該ブロックゲージを該ブロックゲージ用治具から押し出す機能を有することを特徴とする押し出し器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルマイクロメータ等の測長器具を校正する際に用いられるブロックゲージの被測定箇所を規定する治具及び該治具に収容されたブロックゲージを押し出す押し出し器具に関する。
【背景技術】
【0002】
機械加工された部品等の寸法を測定する測長器具として、製造現場では広くデジタルマイクロメータ(特許文献1参照)が使用される。該デジタルマイクロメータは、使用される場所の温度等の測定環境、経時変化によって誤差が生じる場合がある。そのため、測定作業の前に該デジタルマイクロメータの校正を実施する必要がある。
【0003】
ここで、校正とは、該デジタルマイクロメータの表示する寸法と、長さの標準となる物の長さと、の差を測定することをいう。該デジタルマイクロメータの校正には、長さの標準となるブロックゲージが用いられる。高い精度で長さが規定された該ブロックゲージを該デジタルマイクロメータで測定することで該デジタルマイクロメータを校正し、必要に応じてデジタルマイクロメータが真の値を表示するようにデジタルマイクロメータを調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭55−174101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブロックゲージをデジタルマイクロメータで測定して該デジタルマイクロメータを校正する作業は、一般的に該デジタルマイクロメータを使用する作業者や校正担当者等の特定の校正作業者により日常的に実施される。該校正作業者は、校正を毎回同様に実施しようとするため、ブロックゲージの特定の箇所にはマイクロゲージのアンビル及びスピンドルが繰り返し当てられやすい。すると、ブロックゲージの該特定の部分が偏って摩耗してしまう。
【0006】
摩耗が大きくなると摩耗が生じた部分はもはや校正に用いるには不向きとなる。しかし、該ブロックゲージの他の部分を使用すれば十分に校正は可能である。それにも関わらず、該校正作業者は校正の条件を維持しようとして摩耗が生じた部分を使用してしまう。そのため、該校正作業者に正しく校正作業を実施させるためには新しいブロックゲージを使用させなければならず、不経済である。
【0007】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ブロックゲージを用いた校正時にブロックゲージの被測定箇所を規定し、ブロックゲージの寿命を向上させることができるブロックゲージ用治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、測長器具の校正に用いられるブロックゲージの被測定箇所を規定するブロックゲージ用治具であって、該ブロックゲージ用治具は、ブロックゲージを収容する筐体と、該筐体に設けられ該筐体に対してブロックゲージを出し入れ可能にする開口部と、該筐体に収容された該ブロックゲージの被測定箇所を規定するように該筐体の一部が切り欠かれて形成された一対の切り欠き部と、を備え、該測長器具の校正に用いられる該ブロックゲージの一対の面が該一対の切り欠き部からそれぞれ露出することを特徴とするブロックゲージ用治具が提供される。
【0009】
本発明の一態様において、該ブロックゲージ用治具は、該ブロックゲージに印字されている長さ表示文字を露出する窓部をさらに備えていてもよい。また、該ブロックゲージ用治具に収容されたブロックゲージを押し出す押し出し器具であって、基台と、該基台から突出した突起と、を備え、該突起は、該ブロックゲージ用治具の該開口部に対向する面に形成された挿通穴に突き通されることで該ブロックゲージ用治具に収容された該ブロックゲージを該ブロックゲージ用治具から押し出す機能を有することを特徴とする押し出し器具もまた本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係るブロックゲージ用治具は、ブロックゲージを収容できる筐体を有する。該筐体には該ブロックゲージを出し入れできる開口部と、該ブロックゲージの測定箇所を規定する一対の切り欠き部と、が形成されている。該開口部を通じて該ブロックゲージ用治具に収容された該ブロックゲージは、一部が該一対の切り欠き部から露出する。
【0011】
デジタルマイクロメータ等の測長器具を校正する際は、ブロックゲージの該一対の切り欠き部に露出した部分にアンビル及びスピンドルを当てて測定する。このとき、該ブロックゲージの露出しない部分はデジタルマイクロメータの校正には使用できない。すなわち、該ブロックゲージ用治具は、デジタルマイクロメータの校正のためのブロックゲージの測定において、測定箇所を規定する。そのため、校正作業者の意思に依らずに測定箇所が制御される。
【0012】
該ブロックゲージ用治具に収容されたブロックゲージを用いたデジタルマイクロメータの校正を所定の回数行った後は、例えば、該ブロックゲージを該ブロックゲージ用治具から取り出し、他のブロックゲージ用治具に収容する。ここで、該他のブロックゲージ用治具の切り欠き部を、元のブロックゲージ用治具の切り欠き部の形成位置とは異なる位置に形成する。すると、該ブロックゲージのデジタルマイクロメータの校正に使用される箇所を変えることができる。
【0013】
このように、該ブロックゲージ用治具を用いると、校正作業者の意図に依らず該ブロックゲージのデジタルマイクロメータの校正に使用される箇所を規定できるため、ブロックゲージの摩耗していない部分を校正に使用させることができる。そのため、ブロックゲージの特定の箇所のみが摩耗したこと理由にブロックゲージを取り換える必要がなくなるため、ブロックゲージの寿命を延ばすことができる。
【0014】
したがって、本発明の一態様により、ブロックゲージを用いた校正時にブロックゲージの測定箇所を規定し、ブロックゲージの寿命を向上させることができるブロックゲージ用治具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ブロックゲージ用治具及びブロックゲージを模式的に示す斜視図である。
図2】ブロックゲージを収容したブロックゲージ用治具を模式的に示す斜視図である。
図3】ブロックゲージ用治具に収容されたブロックゲージを用いたデジタルマイクロメータの校正作業を説明する上面図である。
図4】ブロックゲージ用治具の一例を模式的に示す斜視図である。
図5図5(A)は、ブロックゲージを収容したブロックゲージ用治具を底部を上方に向けた状態で模式的に示す斜視図であり、図5(B)は、押し出し器具を模式的に示す斜視図である。
図6】押し出し器具を用いたブロックゲージ用治具からのブロックゲージの取り出しを模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る実施形態について説明する。まず、本実施形態に係るブロックゲージ用治具に収容されるブロックゲージについて図1を用いて説明する。図1には、該ブロックゲージ1が模式的に示されている。
【0017】
該ブロックゲージ1は、デジタルマイクロメータ等の測長器具の校正のために用いられる。該ブロックゲージ1は略直方体状に形成されており、該直方体を構成する1組の向かい合う平行な面が測長器具の校正に使用される。該1組の向かい合う平行な面間は極めて高い精度で互いに特定の距離となるように仕上げられており、該平行な面間の距離が長さの基準となる。ブロックゲージ1の側面には、該ブロックゲージ1が提供する基準の長さの値を示す長さ表示3が印字されている。
【0018】
ブロックゲージ1は長さの基準となるため、セラミック等の硬質で温度変化に対して体積変化の小さい材料が用いられる。しかし、該ブロックゲージ1を用いてデジタルマイクロメータを繰り返し校正していくと、該デジタルマイクロメータのアンビルまたはスピンドルが当たることでブロックゲージ1が摩耗して、該平行な面間の距離が変化してしまう。そのため、ある程度ブロックゲージ1が摩耗したときは該ブロックゲージ1の使用を終了して新しいブロックゲージ1を使用する必要がある。
【0019】
なお、ブロックゲージ1を用いた校正作業は、一般的には、デジタルマイクロメータを使用する作業者、または、校正担当者等の校正作業者が、該デジタルマイクロメータを用いた計測作業の前または途中に実施する。校正作業者は、計測を安定的に実施したいため、該校正作業を毎回同様に実施しようとする。すると、ブロックゲージ1の特定の箇所が校正作業に繰り返し使用されやすく、その箇所に偏って摩耗しやすくなる。
【0020】
摩耗の生じていない部分はその後の校正作業に使用可能であるにも関わらず、校正作業者は引き続き摩耗した部分を使用してしまうため、ブロックゲージ1の交換をする必要がある。校正に使用できる部分を残しながらブロックゲージ1を交換するのはブロックゲージの寿命を早めることになり不経済である。
【0021】
そこで、ブロックゲージ1を本実施形態に係るブロックゲージ用治具に収容して校正作業に使用する。次に、該ブロックゲージ用治具について説明する。図1には、該ブロックゲージ用治具2が模式的に示されている。
【0022】
ブロックゲージ用治具2の筐体は、略直方体状の中空構造となっており、該筐体の大きさは、該ブロックゲージ1の大きさに合わせて形成される。すなわち、該筐体は、該ブロックゲージ1を収容できる形状及び大きさに形成される。ブロックゲージ1の出し入れ時にブロックゲージ1に傷や摩耗等の損傷を生じさせないように、該筐体には、例えば、アクリル樹脂やフッ素樹脂等の材料が用いられる。そして、例えば、射出成形や3Dプリント等の方法で形成される。
【0023】
該ブロックゲージ用治具2の筐体には、ブロックゲージ1を出し入れ可能にする該筐体の一面にわたって形成される開口部4が形成されている。該開口部4は、例えば、該ブロックゲージ用治具2の筐体の上面に形成され、上方から該開口部4を通じてブロックゲージを該ブロックゲージ用治具2に収容できる。
【0024】
また、該ブロックゲージ用治具2の筐体には、該ブロックゲージ1の測定箇所を規定する一対の切り欠き部6が形成されている。該一対の切り欠き部6は、該切り欠き部を通してデジタルマイクロメータのアンビルまたはスピンドルを該ブロックゲージ用治具に収容されたブロックゲージ1に当てることができる大きさに形成される。
【0025】
図2に、ブロックゲージ1を収容したブロックゲージ用治具2を模式的に示す斜視図を示す。図2に示す通り、該ブロックゲージ用治具2の側面には、ブロックゲージ1の長さ表示3に対応する位置に窓8が設けられており、該窓8を通して長さ表示3が外部から視認可能となる。
【0026】
なお、収容したブロックゲージ1が校正作業者の独自の判断で容易に取り出されないようにするためには、収容されたブロックゲージ1が該開口部4からはみ出さない大きさに該筐体が形成されるのが好ましい。または、作業性を向上のためにブロックゲージ1の取り出しが容易となるよう、ブロックゲージ1が該開口部4からはみ出す大きさに該筐体が形成されてもよい。
【0027】
また、図2に示される通り、収容されたブロックゲージ1は、該一対の切り欠き部6から外部に露出する。校正作業者は、ブロックゲージ1の露出した部分を用いてデジタルマイクロメータの校正を実施する。デジタルマイクロメータの校正について、図3を用いて説明する。図3は、ブロックゲージ用治具2に収容されたブロックゲージ1を用いたデジタルマイクロメータの校正作業を説明する上面図である。
【0028】
図3に示すデジタルマイクロメータ5は、上方から見てU字状の部分と、該U字状の部分の一端から突出する突出部分と、を備えるフレーム13を有する。該U字状の部分の内側の空間を挟んでフレーム13の一方側にアンビル7と、他方側にスピンドル9と、が軸上に並ぶように配設されている。スピンドル9は、該軸方向に移動可能にフレーム13に支持されている。
【0029】
該フレーム13の突出部分には、該突出部分の周方向に回転可能なシンブル15が設けられている。該シンブル15は、機械的にスピンドル9に接続されており、該シンブル15を回転させるとスピンドル9が該軸方向に移動する。該スピンドルと、該シンブル15と、の間の位置の該フレーム13の突出部には表示部11が設けられている。表示部11は、スピンドル9の位置に応じて該スピンドル9と、アンビル7と、の間の距離の値を表示する。
【0030】
デジタルマイクロメータ5による測長は、スピンドル9と、アンビル7と、の間に被測長物を挟み込ませることで実施される。このとき、スピンドル9と、アンビル7と、が被測長物を挟み込む力に応じて被測長物が変形する場合があるため、精度の高い測長のためには、一定の力で被測長物を挟み込むようにする必要がある。そこで、フレーム13の突出部の先端には、該フレームの周方向に回転可能なラチェットストップ17が設けられている。ラチェットストップ17を回転させると、シンブル15を回転できる。
【0031】
スピンドル9を軸方向に移動させるとき、作業者がラチェットストップ17を持ってシンブル15を回転させると、被測長物が挟み込まれたときに、挟み込む力が所定の大きさになるとラチェットストップ17が空回りするようになっている。そのため、ラチェットストップ17を持ってシンブル15を回転させると、一定の力で被測長物が挟み込まれるようになる。
【0032】
ここで、表示部11に表示される値には誤差が生じる場合がある。そこで、正確な測定を実施するためには、ブロックゲージ1を用いてデジタルマイクロメータ5を校正する必要がある。図3に示す通り、ブロックゲージ1はブロックゲージ用治具2の一対の切り欠き部6で露出するため、スピンドル9と、アンビル7と、をそれぞれブロックゲージ1の露出した箇所に当てることで校正を実施できる。
【0033】
なお、ブロックゲージ1の露出していない部分は該ブロックゲージ用治具2により校正には使用されない。すなわち、該ブロックゲージ用治具2を使用すると、ブロックゲージ1の校正に使用される測定箇所を規定できる。ブロックゲージ1の露出した箇所を繰り返し校正作業に使用すると、該露出した箇所が徐々に摩耗していくため、長さの標準としての機能が失われていく。そのため、所定の回数校正作業を実施した後は、ブロックゲージ1の他の箇所を使用して校正作業を実施する必要がある。
【0034】
ここで、図4を用いて、ブロックゲージ用治具2の他の構成例であるブロックゲージ用治具2aについて説明する。図4は、ブロックゲージ用治具2aを模式的に示す斜視図である。図4に示すブロックゲージ用治具2aの一対の切り欠き部6aは、図1等に示すブロックゲージ用治具2の一対の切り欠き部6とは異なる高さに形成される。
【0035】
例えば、図1等に示すブロックゲージ用治具2の一対の切り欠き部6がブロックゲージ用治具2の中央付近の高さに形成される場合、図4に示すブロックゲージ用治具2aの一対の切り欠き部6aを該中央付近以外の高さに形成する。より詳細には、上面の開口4に近い高さに形成する。
【0036】
すると、ブロックゲージ用治具2aにブロックゲージ1を収容すると、該一対の切り欠き部6aからブロックゲージ1が露出するが、露出する箇所はブロックゲージ用治具2が使用されたときに露出する箇所とは異なる。
【0037】
そのため、ブロックゲージ用治具2を使用して校正を所定の回数実施した後は、ブロックゲージ1をブロックゲージ用治具2から取り出して、該ブロックゲージ1をブロックゲージ用治具2aに収容すれば、ブロックゲージ1の摩耗していない箇所を使用して校正を実施できる。校正作業者はブロックゲージ1の露出した箇所を使用して校正を実施せざるを得ないため、摩耗した箇所を使用して校正を実施するおそれがない。そのためブロックゲージ1を交換せずに該ブロックゲージ1を引き続き校正に使用できる。
【0038】
さらに、ブロックゲージ用治具2aを使用して校正を繰り返し実施して一対の切り欠き部6aから露出した箇所が摩耗した後は、ブロックゲージ1を一度取り出して、上下を逆転させてブロックゲージ1を再びブロックゲージ用治具2aに収容する。該一対の切り欠き部6aはブロックゲージ用治具2aの中央付近の高さには形成されていないため、上下を逆転する前に露出されていた箇所とは異なる箇所が一対の切り欠き部6aから露出する。そのため、さらに引き続きブロックゲージ1を校正に使用することができる。
【0039】
なお、ブロックゲージ用治具2aの筐体の側面側には、窓8aと、窓8bと、が設けられている。該窓8a及び該窓8bは、ブロックゲージ1の長さ表示3に対応する高さに形成されており、ブロックゲージ1をブロックゲージ用治具2aに収容したときに、ブロックゲージ1の長さ表示3がいずれかの窓を通して外部から視認可能となる。
【0040】
このように、ブロックゲージ用治具を用いることで、デジタルマイクロメータの校正に用いられるブロックゲージの部分を規定できる。そのため、ブロックゲージの特定の箇所のみが摩耗したことを理由にブロックゲージを交換する必要がなくなる。したがって、ブロックゲージの寿命を延ばすことができて経済的である。
【0041】
次に、ブロックゲージ用治具2からのブロックゲージ1の取り出しについて、図5(A)、図5(B)及び図6を用いて説明する。ブロックゲージ1の取り出しは、図5(B)に示す押し出し器具12を用いると容易となる。
【0042】
図5(A)は、ブロックゲージ用治具2の底部10側を模式的に示す斜視図である。図5(A)に示す通り、ブロックゲージ用治具2の該底部10には、挿通穴10aが形成される。図5(B)に示す押し出し器具12は、平板状の基台14から上方に突出する棒状の突起16と、平板状の基台14の両側方から立設された一対のガイド壁18と、が配設される。
【0043】
ブロックゲージ用治具2の挿通穴10aと、押し出し器具12の突起16と、はそれぞれ同じ数だけ互いに対応する位置に対応した形状で形成される。例えば、該挿通穴10aは円形状または多角形状に形成され、該突起16は該挿通穴10aの形状に対応するように円柱状または多角柱状に形成される。このとき、該挿通穴10aは、該突起16の断面形状よりも大きく形成される。
【0044】
該一対のガイド壁18は、その間の距離がブロックゲージ用治具2の幅(両側面の間の距離)に対応するように形成される。該一対のガイド壁18は、それぞれ、該押し出し器具12を側方から見たときに各突起16がガイド壁18により隠れる大きさに形成される。
【0045】
該押し出し器具12には、例えば、アクリル樹脂やフッ素樹脂等の材料が用いられる。基台14、突起16、及び、一対のガイド壁18は、例えば、射出成形や3Dプリント等により一体的に形成される。ただし、突起16には大きな力が加わるため、突起16を金属等の強度の高い材料を用いて作製し、該突起16を基台14に組み込んで押し出し器具12を作製してもよい。
【0046】
図6は、押し出し器具12を用いたブロックゲージ用治具2からのブロックゲージ1の取り出しを模式的に示す斜視図である。ブロックゲージ用治具2は、底部10を押し出し器具12の基台14に向けた状態で押し出し器具12の上方に位置付けられる。このとき、押し出し器具12の突起16の上方に挿通穴10aが位置付けられる。なお、一対のガイド壁18がブロックゲージ用治具2の該幅方向における位置合わせを補助する。
【0047】
次に、ブロックゲージ用治具2を押し出し器具12に向けて下降させる。すると、挿通穴10aに突起16が挿通されて、該突起16がブロックゲージ用治具2に収容されたブロックゲージ1に当たり該ブロックゲージ1を支えるようになる。すると、ブロックゲージ用治具2が下降する一方でブロックゲージ1が下降しないため、ブロックゲージ1が相対的に押し上げられてブロックゲージ用治具2からはみ出して摘み出すことがきできる。
【0048】
ここで、例えば、押し出し器具12が該ガイド壁18を有していない場合、ブロックゲージ用治具2と、押し出し器具12と、の位置がずれていた場合に、突起16には押し出し器具12の幅方向に向いた力が加わり、突起16が破損するおそれがある。これに対して、該ガイド壁18を有する押し出し器具12では、該ガイド壁18が該幅方向においてブロックゲージ用治具2と、押し出し器具12と、の位置を合わせるため、該突起16に該幅方向に向いた力がかからず、突起16の破損を抑制できる。
【0049】
このように、押し出し器具12を用いると、ブロックゲージ用治具2からブロックゲージ1を容易に取り出すことができる。
【0050】
なお、押し出し器具12は、異なる大きさのブロックゲージを収容する多種のブロックゲージ用治具2に対して使用できる。例えば、図6に示す通り、押し出し器具呼び寸法(校正に使用される面間の距離)が50mmのブロックゲージを収容するブロックゲージ用治具2に対しては、3本の突起16を用いて該ブロックゲージを押し出す。また、例えば、呼び寸法が10mmのブロックゲージを収容するブロックゲージ用治具に対しては、該3本の突起16のうち1本を用いて該ブロックゲージを押し出す。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記の実施形態では、ブロックゲージ用治具2の窓部8を通してブロックゲージ1の長さ表示3を外部から視認可能としていだが、本発明はこれに限定されない。例えば、ブロックゲージ用治具2に収容するブロックゲージの種別が予め決定されているのであれば、ブロックゲージ用治具2に窓部8を設けなくてもよく、その場合、ブロックゲージ用治具2の筐体に長さ表示を印字してもよい。
【0052】
また、上記の実施形態では、切り欠き部の形成位置の異なる2つのブロックゲージ用治具を用いて、校正に使用されるブロックゲージの面を3つの領域に分けて、各領域が順に露出されるようにブロックゲージ用治具を使用する例について説明した。本発明はこれに限定されず、例えば、ブロックゲージの該面を5つの領域に分けて、各領域が順に露出されるようにブロックゲージ用治具を使用してもよい。
【0053】
この場合、切り欠き部の形成位置の異なる3つのブロックゲージ用治具を用意する。すなわち、該5つの領域のうち中央の領域を露出する切り欠き部を有するブロックゲージ用治具と、該中央の領域に隣接する一方の領域を露出する切り欠き部を有するブロックゲージ用治具と、最外領域を露出する切り欠き部を有するブロックゲージ用治具と、を用意する。3つのブロックゲージ用治具を用いて、該5つの領域が順に露出させる。
【0054】
同様に、4つのブロックゲージ用治具を用意し、ブロックゲージの該面を7つの領域に分け、各領域が順に露出されるようにブロックゲージ用治具を使用してもよい。このように、マイクロメータのアンビル及びスピンドルがブロックゲージの該面にアクセス可能である範囲で、切り欠き部の形成位置の異なる複数のブロックゲージ用治具を組み合わせて使用できる。
【0055】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0056】
1 ブロックゲージ
3 長さ表示
5 デジタルマイクロメータ
7 アンビル
9 スピンドル
11 表示部
13 フレーム
15 回転部
17 ラチェットストップ
2,2a ブロックゲージ用治具
4 開口部
6,6a 切り欠き部
8,8a,8b 窓部
10 底部
10a 挿通穴
12 押し出し器具
14 基台
16 突起
18 ガイド壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6