【実施例】
【0024】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0025】
(実施例1)
Co原料とFe原料を別々にガスアトマイズ処理して、焼結用の原料粉末を作製し、この粉末を、Arフローのグローブボックス内にて粒径53〜300μmに調整した。その後、Co原料とFe原料を、ターゲットの組成が27Fe−73Co(at%)となるように秤量し、混合した。次に、この混合粉末をHIP法にて、650℃×3時間、1600kgf/cm
2の条件で焼結し、27Fe−73Coの焼結体を作製した。これを旋盤で切削加工及び平面研磨加工で仕上げて直径164mm、厚さ5mmの円盤状ターゲットを得た。
【0026】
このターゲット表面をアルミナ砥粒で研磨して鏡面にし、顕微鏡を用いてターゲットの中心部の組織(1000μm×800μmの範囲)を観察した。その結果を
図1に示す。
図1に示すように、直径50μm以上のCo粒子が多数存在することを確認した。また、直径50μm以上のCo粒子の中には、直径60μm以上のもの、さらには直径80μm以上のCo粒子も存在しているのを確認した。次に、焼結体の端材からサンプルを採取して長さ5mm、幅5mm、高さ12mmの試験片を作成し、透磁率を測定した。透磁率の測定にはB−Hカーブトレーサー(理研製)を用い、印加磁場を1KOeとした。その結果、最大透磁率は80であった。
【0027】
(実施例2)
Co原料とFe原料を別々にガスアトマイズ処理して、焼結用の原料粉末を作製し、この粉末を、Arフローのグローブボックス内にて粒径53〜300μmに調整した。その後、Co原料とFe原料を、ターゲットの組成が73Fe−27Co(at%)となるように秤量し、混合した。次に、この混合粉末をHIP法にて、650℃×3時間、1600kgf/cm
2の条件で焼結し、73Fe−27Coの焼結体を作製した。これを旋盤で切削加工及び平面研磨加工で仕上げて直径164mm、厚さ5mmの円盤状ターゲットを得た。
【0028】
このターゲット表面をアルミナ砥粒で研磨して鏡面にし、顕微鏡を用いてターゲットの中心部の組織(1000μm×800μmの範囲)を観察した。その結果、直径50μm以上のCo粒子が多数存在することを確認した。直径50μm以上のCo粒子の中には、直径70μm以上のもの、さらには直径80μm以上のCo粒子も存在しているのを確認した。次に焼結体の端材からサンプルを採取して長さ5mm、幅5mm、高さ12mmの試験片を作成し、透磁率を測定した。透磁率の測定にはB−Hカーブトレーサー(理研製)を用い、印加磁場を1KOeとした。その結果、最大透磁率は110であった。
【0029】
(実施例3)
Co原料をガスアトマイズ処理してCo原料粉末を、Fe原料とCo原料とをガスアトマイズ処理して90Fe−10Co(at%)の原料粉末を作製した。この粉末を、Arフローのグローブボックス内にて粒径53〜300μmに調整した。その後、Co原料とFe−10Co原料を、ターゲットの組成が50Fe−50Co(at%)となるように秤量し、混合した。次に、この混合粉末をHIP法にて、650℃×3時間、1600kgf/cm
2の条件で焼結し、50Fe−50Coの焼結体を作製した。これを旋盤で切削加工及び平面研磨加工で仕上げて直径164mm、厚さ5mmの円盤状ターゲットを得た。
【0030】
このターゲット表面をアルミナ砥粒で研磨して鏡面にし、顕微鏡を用いてターゲットの中心部の組織(1000μm×800μmの範囲)を観察した。その結果、直径50μm以上のCo粒子が多数存在することを確認した。直径50μm以上のCo粒子の中には、直径70μm以上のもの、さらには直径80μm以上のCo粒子も存在しているのを確認した。次に焼結体の端材からサンプルを採取して長さ5mm、幅5mm、高さ12mmの試験片を作成し、透磁率を測定した。透磁率の測定にはB−Hカーブトレーサー(理研製)を用い、印加磁場を1KOeとした。その結果、最大透磁率は95であった。
【0031】
(実施例4)
Co原料とFe原料を別々にガスアトマイズ処理して、焼結用の原料粉末を作製し、この粉末を、Arフローのグローブボックス内にて粒径53〜300μmに調整した。その後、Co原料とFe原料を、ターゲットの組成が27Fe−73Co(at%)となるように秤量し、混合した。次に、この混合粉末を放電プラズマ焼結法にて、950℃×1時間、1600kgf/cm
2の条件で焼結し、27Fe−73Coの焼結体を作製した。これを旋盤で切削加工及び平面研磨加工で仕上げて直径164mm、厚さ5mmの円盤状ターゲットを得た。
【0032】
このターゲット表面をアルミナ砥粒で研磨して鏡面にし、顕微鏡を用いてターゲットの中心部の組織(1000μm×800μmの範囲)を観察した。その結果、直径50μm以上のCo粒子が多数存在することを確認した。直径50μm以上のCo粒子の中には、直径70μm以上のCo粒子も存在しているのを確認した。次に焼結体の端材からサンプルを採取して長さ5mm、幅5mm、高さ12mmの試験片を作成し、透磁率を測定した。透磁率の測定にはB−Hカーブトレーサー(理研製)を用い、印加磁場を1KOeとした。その結果、最大透磁率は145であった。
【0033】
(実施例5)
Co原料とFe原料をアルミナルツボに充填し、真空溶解炉内にて、溶解、鋳造して73Fe−27Coインゴットを得た。次に、このインゴットを圧延、熱処理した後、その板材を旋盤で加工して、直径175mm、厚さ6mmのターゲット材を得た。その後、このターゲット材を、アルゴン雰囲気中で360℃、80時間熱処理した。その後、旋盤で切削加工及び平面研磨加工で仕上げて、直径164mm、厚さ5mmの円盤状ターゲットを得た。
【0034】
このターゲット表面をアルミナ砥粒で研磨して鏡面にし、顕微鏡を用いてターゲットの中心部の組織(1000μm×800μmの範囲)を観察した。その結果、直径50μm以上のCo粒子の存在を確認できなかった。また、SEM−EDSを用いて、構成元素状態を観察した結果、結晶粒はFe−Coとなっていることを確認した。
次に、このターゲットの端からサンプルを採取して、長さ5mm、幅5mm、高さ12mmの試験片を作製し、透磁率を測定した。透磁率の測定には、B−Hカーブトレーサー(理研製)を用い、印加磁場を1KOeとした。その結果、最大透磁率は、188であった。
なお、結晶粒はFe−Coであり、Co粒は観察されなかったが、所定の条件での熱処理により結晶組織の微小な変化が生じ、Co粒の効果ほどではないもののCo粒と類似の理由の透磁率低減効果が出たものと考えられる。
【0035】
(実施例6)
実施例5と同様の方法で、65Fe−35Coのインゴットを得た。次に、このインゴットを圧延、熱処理した後、その板材を旋盤で加工して、直径175mm、厚さ6mmのターゲット材を得た。その後、このターゲット材を、アルゴン雰囲気中で420℃、40時間熱処理した。その後、旋盤で切削加工及び平面研磨加工で仕上げて、直径164mm、厚さ5mmの円盤状ターゲットを得た。
このターゲット表面をアルミナ砥粒で研磨して鏡面にし、顕微鏡を用いてターゲットの中心部の組織(1000μm×800μmの範囲)を観察した。その結果、直径50μm以上のCo粒子の存在を確認できなかった。また、SEM−EDSを用いて、構成元素状態を観察した結果、結晶粒はFe−Coとなっていることを確認した。
次に、このターゲットの端からサンプルを採取して、長さ5mm、幅5mm、高さ12mmの試験片を作成し、透磁率を測定した。透磁率の測定には、B−Hカーブトレーサー(理研製)を用い、印加磁場を1KOeとした。その結果、最大透磁率は、155であった。
【0036】
(実施例7)
Co原料とFe原料とFe−25B(at.%)原料を、別々にガスアトマイズ処理して、焼結用の原料粉末を作製し、この粉末を、Arフローのグローブボックス内にて粒径53〜300μmに調整した。その後、Co原料とFe原料とFe−25B(at.%)原料を、ターゲットの組成が56Fe−24Co−20B(at%)となるように秤量し、混合した。次に、この混合粉末をHIP法にて、650℃×3時間、1600kgf/cm
2の条件で焼結し、56Fe−24Co−20B(at%)の焼結体を作製した。これを旋盤で切削加工及び平面研磨加工で仕上げて、直径164mm、厚さ5mmの円盤状ターゲットを得た。
【0037】
このターゲット表面をアルミナ砥粒で研磨して鏡面にし、顕微鏡を用いてターゲットの中心部の組織(1000μm×800μmの範囲)を観察した。その結果、直径50μm以上のCo粒子が多数存在することを確認した。直径50μm以上のCo粒子の中には、直径70μm以上のもの、さらには直径80μm以上のCo粒子も存在しているのを確認した。
次に、焼結体の端材からサンプルを採取して、長さ5mm、幅5mm、高さ12mmの試験片を作成し、透磁率を測定した。透磁率の測定には、B−Hカーブトレーサー(理研製)を用い、印加磁場を1KOeとした。その結果、最大透磁率は34であった。
なお、Fe−CoにB(硼素)を添加することにより、透磁率低減になることは自明であるが、本発明を適用することで、更なる透磁率低減が実現でき、最大透磁率を50未満に、さらには40未満にすることが可能となる。
【0038】
(実施例8)
Co原料、Fe原料、B原料をアルミナルツボに充填し、真空溶解炉内にて、溶解、鋳造して56Fe−24Co−20B(at%)インゴットを得た。次に、このインゴットを旋盤で加工し、直径175mm、厚さ7mmの円盤状ターゲット材を得た。その後、このターゲット材を、大気中で400℃、48時間熱処理した。その後、旋盤で切削加工及び平面研磨加工で仕上げて、直径164mm、厚さ5mmの円盤状ターゲットを得た。
【0039】
このターゲット表面をアルミナ砥粒で研磨して鏡面にし、顕微鏡を用いてターゲットの中心部の組織(1000μm×800μmの範囲)を観察した。その結果、直径50μm以上のCo粒子の存在を確認できなかった。また、SEM−EDSを用いて、構成元素状態を観察した結果、結晶粒は、Bが過剰なFe−Co−B相(Bリッチ相)と、Bが不足したFe−Co−B相(Bプア相)となっていることを確認した。
次に、このターゲットの端からサンプルを採取して、長さ5mm、幅5mm、高さ12mmの試験片を作成し、透磁率を測定した。透磁率の測定には、B−Hカーブトレーサー(理研製)を用い、印加磁場を1KOeとした。その結果、最大透磁率は、39であった。
なお、結晶粒はFe−Co−Bであり、Co粒は観察されなかったが、所定の条件での熱処理により結晶組織の微小な変化が生じ、Co粒の効果ほどではないものの、Co粒と類似の理由の透磁率低減効果が出たものと考えられる。
【0040】
(比較例1)
Co原料とFe原料をアルミナルツボに充填し、真空溶解炉内にて溶解、鋳造して27Fe−73Coインゴットを得た。次に、このインゴットを圧延した板材を旋盤で切削加工及び平面研磨加工で仕上げて直径164mm、厚さ5mmの円盤状ターゲットを得た。
このターゲット表面をアルミナ砥粒で研磨して鏡面にし、顕微鏡を用いてターゲットの中心部の組織(1000μm×800μmの範囲)を観察した。その結果、直径50μm以上のCo粒子の存在を確認できなかった。また、SEM−EDSを用いて、構成元素状態を観察した結果、結晶粒はFe−Coとなっていることを確認した。次に、圧延板の端材からサンプルを採取して長さ5mm、幅5mm、高さ12mmの試験片を作成し、透磁率を測定した。透磁率の測定にはB−Hカーブトレーサー(理研製)を用い、印加磁場を1KOeとした。その結果、最大透磁率は、320であった。
【0041】
(比較例2)
Co原料とFe原料を別々にガスアトマイズ処理して、焼結用の原料粉末を作製し、この粉末を、Arフローのグローブボックス内にて粒径20〜38μmに調整した。その後、Co原料とFe原料を、ターゲットの組成が73Fe−27Co(at%)となるように秤量し、混合した。次に、この混合粉末をHIP法にて、650℃×3時間、1600kgf/cm
2の条件で焼結し、73Fe−27Coの焼結体を作製した。これを旋盤で切削加工及び平面研磨加工で仕上げて直径164mm、厚さ5mmの円盤状ターゲットを得た。
【0042】
このターゲット表面をアルミナ砥粒で研磨して鏡面にし、顕微鏡を用いてターゲットの中心部の組織(1000μm×800μmの範囲)を観察した。その結果、Co粒子の直径は最大でも40μmであった。次に焼結体の端材からサンプルを採取して、長さ5mm、幅5mm、高さ12mmの試験片を作成し、透磁率を測定した。透磁率の測定にはB−Hカーブトレーサー(理研製)を用い、印加磁場を1KOeとした。その結果、最大透磁率は250であり、比較例1よりは透磁率の低下がみられたが、大きな効果では無かった。
【0043】
(比較例3)
Co原料とFe原料をアルミナルツボに充填し、真空溶解炉内にて、溶解、鋳造して50Fe−50Coインゴットを得た。次に、このインゴットを旋盤加工で仕上げて直径164mm、厚さ5mmの円盤状ターゲットを得た。
このターゲット表面をアルミナ砥粒で研磨して鏡面にし、顕微鏡を用いてターゲットの中心部の組織(1000μm×800μmの範囲)を観察した。その結果、直径50μm以上のCo粒子の存在を確認できなかった。また、SEM−EDSを用いて、構成元素状態を観察した結果、結晶粒はFe−Coとなっていることを確認した。次に、圧延板の端材からサンプルを採取して長さ5mm、幅5mm、高さ12mmの試験片を作成し、透磁率を測定した。透磁率の測定にはB−Hカーブトレーサー(理研製)を用い、印加磁場を1KOeとした。その結果、最大透磁率は、220であった。
【0044】
(比較例4)
比較例3と同様の方法で73Fe−27Coの円盤状ターゲットを得た。このターゲット表面をアルミナ砥粒で研磨して鏡面にし、顕微鏡を用いてターゲットの中心部の組織(1000μm×800μmの範囲)を観察した。その結果、直径50μm以上のCo粒子の存在を確認できなかった。また、SEM−EDSを用いて、構成元素状態を観察した結果、結晶粒はFe−Coとなっていることを確認した。
次に、圧延板の端材からサンプルを採取して、長さ5mm、幅5mm、高さ12mmの試験片を作成し、透磁率を測定した。透磁率の測定には、B−Hカーブトレーサー(理研製)を用い、印加磁場を1KOeとした。その結果、最大透磁率は、265であった。
【0045】
(比較例5)
比較例3と同様の方法で65Fe−35Coの円盤状ターゲットを得た。このターゲット表面をアルミナ砥粒で研磨して鏡面にし、顕微鏡を用いてターゲットの中心部の組織(1000μm×800μmの範囲)を観察した。その結果、直径50μm以上のCo粒子の存在を確認できなかった。また、SEM−EDSを用いて、構成元素状態を観察した結果、結晶粒はFe−Coとなっていることを確認した。
次に、圧延板の端材からサンプルを採取して、長さ5mm、幅5mm、高さ12mmの試験片を作成し、透磁率を測定した。透磁率の測定には、B−Hカーブトレーサー(理研製)を用い、印加磁場を1KOeとした。その結果、最大透磁率は、230であった。
【0046】
(比較例6)
Co原料、Fe原料、B原料をアルミナルツボに充填し、真空溶解炉内にて、溶解、鋳造して56Fe−24Co−20B(at%)インゴットを得た。次に、このインゴットを旋盤で切削加工及び平面研磨加工で仕上げて、直径164mm、厚さ5mmのターゲット材を得た。
このターゲット材の表面をアルミナ砥粒で研磨して鏡面にし、顕微鏡を用いてターゲットの中心部の組織(1000μm×800μmの範囲)を観察した。その結果、直径50μm以上のCo粒子の存在を確認できなかった。また、SEM−EDSを用いて、構成元素状態を観察した結果、結晶粒は、Bが過剰なFe−Co−B相(Bリッチ相)と、Bが不足したFe−Co−B相(Bプア相)となっていることを確認した。
次に、このターゲットの端からサンプルを採取して、長さ5mm、幅5mm、高さ12mmの試験片を作成し、透磁率を測定した。透磁率の測定には、B−Hカーブトレーサー(理研製)を用い、印加磁場を1KOeとした。その結果、最大透磁率は、61であった。
【0047】
以上の結果をまとめたものを表1に示す。
【表1】