特許第6800723号(P6800723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6800723
(24)【登録日】2020年11月27日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】エンコーダ及びエンコーダの光源
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20201207BHJP
   G01D 5/36 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   G01D5/347 110M
   G01D5/36 U
   G01D5/36 R
【請求項の数】16
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-235960(P2016-235960)
(22)【出願日】2016年12月5日
(65)【公開番号】特開2018-91747(P2018-91747A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小林 博和
(72)【発明者】
【氏名】川床 修
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−213963(JP,A)
【文献】 特開2010−130810(JP,A)
【文献】 特開2011−101751(JP,A)
【文献】 特開2014−207336(JP,A)
【文献】 特開2005−202139(JP,A)
【文献】 米国特許第5912568(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26−5/38
G01B 11/00−11/30
H05B 45/00−45/58、
47/00−47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの光を受けるスケールと、
前記スケールからの光を受光し、受光した光に応じた信号を出力する受光部と、
前記受光部からの前記信号に応じて、前記受光部と前記スケールとの間の位置関係を算出する信号処理部と、を備え、
前記光源は、
電池と、
電池が出力する電源電圧を昇圧し、昇圧された電圧を出力する昇圧回路と、
一端に前記昇圧された電圧が印加される発光素子と、
前記発光素子の他端とグランドとの間に挿入され、前記発光素子を流れる電流を制御するドライバ回路と、
前記発光素子と前記ドライバ回路との間の電圧を検出する電圧検出回路と、
前記電圧検出回路が検出した前記電圧が前記電源電圧よりも小さいときに前記昇圧回路に前記電源電圧を昇圧させ、前記電圧検出回路が検出した前記電圧が前記電源電圧と等しくなったときに前記昇圧回路での昇圧を停止させ、かつ、前記発光素子に印加される前記昇圧された電圧が所定の値に達した後に前記発光素子に電流が流れるように前記ドライバ回路を制御する制御回路と、を備える、
エンコーダ。
【請求項2】
前記電圧検出回路は、前記発光素子と前記ドライバ回路との間の前記電圧が入力され、前記入力された電圧をデジタル信号に変換し、変換した前記デジタル信号を前記制御回路へ出力するアナログ−デジタル変換器として構成され、
前記制御回路は、前記デジタル信号の値に応じて、前記昇圧回路での昇圧を制御する、
請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記電圧検出回路は、一方の入力端子に印加される前記電源電圧と、他方の入力端子に印加される前記発光素子と前記ドライバ回路との間の前記電圧と、を比較して、比較結果を前記制御回路に出力する比較器として構成され、
前記制御回路は、前記比較結果に応じて、前記昇圧回路での昇圧を制御する、
請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記昇圧回路は、
アノードに前記電源電圧が印加される第1のダイオードと、
一端が前記グランドと接続される第1のコンデンサと、
アノードが前記第1のダイオードのカソードと接続され、カソードが前記発光素子の高電位側端と前記第1のコンデンサの他端とに接続される第2のダイオードと、
一端が前記制御回路と接続され、他端が前記第1のダイオードのカソードと前記第2のダイオードのアノードとに接続される第2のコンデンサと、を備え、
前記昇圧回路に前記電源電圧を昇圧させるときには、前記制御回路が前記第2のコンデンサにパルス信号を入力する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記第1のコンデンサの容量値は、前記第2のコンデンサの容量値よりも大きい、
請求項4に記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記電池の両端間に挿入された第3のコンデンサを備え、
前記第3のコンデンサの容量値は、前記第1のコンデンサの容量値及び前記第2のコンデンサの容量値よりも大きい、
請求項5に記載のエンコーダ。
【請求項7】
前記ドライバ回路は、
前記電池と前記グランドとの間に縦続接続される、スイッチ、電流源及び第1のトランジスタと、
一端に前記発光素子と前記ドライバ回路との間の前記電圧が印加され、他端が前記グランドと接続され、前記第1のトランジスタとカレントミラーを構成する第2のトランジスタと、を備え、
前記スイッチの開閉は、前記制御回路によって制御される、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項8】
アノードに前記発光素子と前記ドライバ回路との間の前記電圧が印加され、カソードが前記電池と、前記スイッチ、電流源及び第1のトランジスタとの間に接続される第3のダイオードを備える、
請求項7に記載のエンコーダ。
【請求項9】
光を受けるスケールと、前記スケールからの光を受光し、受光した光に応じた信号を出力する受光部と、前記受光部からの前記信号に応じて、前記受光部と前記スケールとの間の位置関係を算出する信号処理部と、を有する、エンコーダの前記スケールに前記光を照射するエンコーダの光源であって、
電池と、
電池が出力する電源電圧を昇圧し、昇圧された電圧を出力する昇圧回路と、
一端に前記昇圧された電圧が印加される発光素子と、
前記発光素子の他端とグランドとの間に挿入され、前記発光素子を流れる電流を制御するドライバ回路と、
前記発光素子と前記ドライバ回路との間の電圧を検出する電圧検出回路と、
前記電圧検出回路が検出した前記電圧が前記電源電圧よりも小さいときに前記昇圧回路に前記電源電圧を昇圧させ、前記電圧検出回路が検出した前記電圧が前記電源電圧と等しくなったときに前記昇圧回路での昇圧を停止させ、かつ、前記発光素子に印加される前記昇圧された電圧が所定の値に達した後に前記発光素子に電流が流れるように前記ドライバ回路を制御する制御回路と、を備える、
エンコーダの光源。
【請求項10】
前記電圧検出回路は、前記発光素子と前記ドライバ回路との間の前記電圧が入力され、前記入力された電圧をデジタル信号に変換し、変換した前記デジタル信号を前記制御回路へ出力するアナログ−デジタル変換器として構成され、
前記制御回路は、前記デジタル信号の値に応じて、前記昇圧回路での昇圧を制御する、
請求項9に記載のエンコーダの光源。
【請求項11】
前記電圧検出回路は、一方の入力端子に印加される前記電源電圧と、他方の入力端子に印加される前記発光素子と前記ドライバ回路との間の前記電圧と、を比較して、比較結果を前記制御回路に出力する比較器として構成され、
前記制御回路は、前記比較結果に応じて、前記昇圧回路での昇圧を制御する、
請求項9に記載のエンコーダの光源。
【請求項12】
前記昇圧回路は、
アノードに前記電源電圧が印加される第1のダイオードと、
一端が前記グランドと接続される第1のコンデンサと、
アノードが前記第1のダイオードのカソードと接続され、カソードが前記発光素子の高電位側端と前記第1のコンデンサの他端とに接続される第2のダイオードと、
一端が前記制御回路と接続され、他端が前記第1のダイオードのカソードと前記第2のダイオードのアノードとに接続される第2のコンデンサと、を備え、
前記昇圧回路に前記電源電圧を昇圧させるときには、前記制御回路が前記第2のコンデンサにパルス信号を入力する、
請求項9乃至11のいずれか一項に記載のエンコーダの光源。
【請求項13】
前記第1のコンデンサの容量値は、前記第2のコンデンサの容量値よりも大きい、
請求項12に記載のエンコーダの光源。
【請求項14】
前記電池の両端間に挿入された第3のコンデンサを備え、
前記第3のコンデンサの容量値は、前記第1のコンデンサの容量値及び前記第2のコンデンサの容量値よりも大きい、
請求項13に記載のエンコーダの光源。
【請求項15】
前記ドライバ回路は、
前記電池と前記グランドとの間に縦続接続される、スイッチ、電流源及び第1のトランジスタと、
一端に前記発光素子と前記ドライバ回路との間の前記電圧が印加され、他端が前記グランドと接続され、前記第1のトランジスタとカレントミラーを構成する第2のトランジスタと、を備え、
前記スイッチの開閉は、前記制御回路によって制御される、
請求項9乃至14のいずれか一項に記載のエンコーダの光源。
【請求項16】
アノードに前記発光素子と前記ドライバ回路との間の前記電圧が印加され、カソードが前記電池と、前記スイッチ、電流源及び第1のトランジスタとの間に接続される第3のダイオードを備える、
請求項15に記載のエンコーダの光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダ及びエンコーダの光源に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤルゲージ、インジケータなどの変位測定装置においては、変位量を測定するためにエンコーダが内蔵されている。このようなエンコーダとしては、光の干渉を利用して変位量を測定する光学式エンコーダが知られている。また、エンコーダは、相対的な変位量を測定するインクリメント型のエンコーダと、絶対的な位置を検出するアブソリュート型のエンコーダとに大別される。アブソリュート型の光学式エンコーダについては、例えば特許文献1及び2にその構成が提案されている。
【0003】
ハンドツール型の変位測定装置では、光学式エンコーダの電源として、小型軽量のコイン型電池やボタン型電池が用いられる。このような変位測定装置では、電池の寿命を可能な限り延伸できることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7608813号明細書
【特許文献2】米国特許第8309906号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、インクリメント型のエンコーダにおいては、相対的な変位量しか測定できないため、変位量を継続的に測定し続けなければならない。そのため、光学式エンコーダの光源を常時点灯させなければならず、消費電流が大きいという欠点がある。これに対し、アブソリュート型のエンコーダでは、絶対的な位置を検出することができる。そのため、位置を検出するときにのみ光源を間欠的に点灯させればよいので、消費電力を抑制することができる。
【0006】
また、光学式エンコーダでは、光源として、例えば発光ダイオードなどの発光素子が用いられる。発光ダイオードを発光させるために要する順方向電圧は1.6〜4[V]程度である。これに対し、一般に、電池には公称電圧が設定されており、例えばコイン型電池の場合、公称電圧は典型的には3[V]である。しかしながら、電池は使用開始時の出力電圧が最も高く、消耗につれて出力電圧が低下する。一般に、このような電池は、出力電圧がある電圧レベルまで降下すると、その後は急峻に低下する放電特性を示す。例えば、コイン型リチウム電池を用いる場合、公称電圧が3[V]であるのに対し、出力電圧が2.5〜2.7[V]まで低下すると、その後は急峻に出力電圧が低下する。
【0007】
電池が出力する電源電圧を精度よく検出することができれば、電源電圧が2.7[V]に低下するまでは電源として利用することができる。しかし、これには高精度の電圧検出回路が必要となるので、こうした電圧検出回路を設けることができない場合には、電源電圧が2.5[V]に低下するまでエンコーダの動作の保証をする必要が有る。しかしながら、発光ダイオードの順方向電圧によっては、電源電圧が発光ダイオードの順方向電圧に達せず、発光ダイオードを駆動できない事態が生じ得る。
【0008】
そのため、電源電圧を昇圧した電圧を発光ダイオードに印加することが広く行われている。例えば、DC−DCコンバータを用いて昇圧を行うことが考え得るが、DC−DCコンバータは比較的消費電力が大きいため、電池の寿命を短縮してしまうという欠点がある。換言すれば、DC−DCコンバータの使用は、消費電力抑制の観点からは望ましくない。
【0009】
また、昇圧した電圧を用いる場合、電源電圧よりも電圧が高くなる部位が光源を含む回路内に生じ、昇圧された電圧が電池の周辺回路の耐圧を超えるおそれや、電池に電流が逆流するおそれがある。電池が一次電池である場合には、電流が電池に逆流して電池が故障するおそれもあり得る。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みて成されたものであり、本発明の目的は、エンコーダの光源において電源電圧よりも高い電圧を発光ダイオードに印加する場合でも、電池への電流の逆流を防止し、かつ、発光ダイオードのドライバ回路を保護することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様であるエンコーダは、
光源と、
前記光源からの光を受けるスケールと、
前記スケールからの光を受光し、受光した光に応じた信号を出力する受光部と、
前記受光部からの前記信号に応じて、前記受光部と前記スケールとの間の位置関係を算出する信号処理部と、を有し、
前記光源は、
電池と、
電池が出力する電源電圧を昇圧し、昇圧された電圧を出力する昇圧回路と、
一端に前記昇圧された電圧が印加される発光素子と、
前記発光素子の他端とグランドとの間に挿入され、前記発光素子を流れる電流を制御するドライバ回路と、
前記発光素子と前記ドライバ回路との間の電圧を検出する電圧検出回路と、
前記電圧検出回路が検出した前記電圧が前記電源電圧よりも小さいときに前記昇圧回路に前記電源電圧を昇圧させ、前記電圧検出回路が検出した前記電圧が前記電源電圧と等しくなったときに前記昇圧回路での昇圧を停止させ、かつ、前記発光素子に印加される前記昇圧された電圧が所定の値に達した後に前記発光素子に電流が流れるように前記ドライバ回路を制御する制御回路と、を有するものである。
これにより、発光素子で電圧降下した後の電圧が電源電圧に到達したときに、発光素子に印加される電圧の昇圧を停止する。これにより、発光素子で電圧降下した後の電圧は電源電圧を超えることはないので、ドライバ回路を過電圧から保護し、かつ、電池への電流の逆流を防止することができる。
【0012】
本発明の第2の態様であるエンコーダは、上記のエンコーダであって、
前記電圧検出回路は、前記発光素子と前記ドライバ回路との間の前記電圧が入力され、前記入力された電圧をデジタル信号に変換し、変換した前記デジタル信号を前記制御回路へ出力するアナログ−デジタル変換器として構成され、
前記制御回路は、前記デジタル信号の値に応じて、前記昇圧回路での昇圧を制御する、ことが望ましい。
これにより、制御回路は、アナログ−デジタル変換器の出力信号を参照することで、発光素子で電圧降下した後の電圧が電源電圧に到達したかを検出することができる。
【0013】
本発明の第3の態様であるエンコーダは、上記のエンコーダであって、
前記電圧検出回路は、一方の入力端子に印加される前記電源電圧と、他方の入力端子に印加される前記発光素子と前記ドライバ回路との間の前記電圧と、を比較して、比較結果を前記制御回路に出力する比較器として構成され、
前記制御回路は、前記比較結果に応じて、前記昇圧回路での昇圧を制御する、ことが望ましい。
これにより、制御回路は、比較器の出力信号が遷移することにより、発光素子で電圧降下した後の電圧が電源電圧に到達したことを検出することができる。
【0014】
本発明の第4の態様であるエンコーダは、上記のエンコーダであって、
前記昇圧回路は、
アノードに前記電源電圧が印加される第1のダイオードと、
一端が前記グランドと接続される第1のコンデンサと、
アノードが前記第1のダイオードのカソードと接続され、カソードが前記発光素子の高電位側端と前記第1のコンデンサの他端とに接続される第2のダイオードと、
一端が前記制御回路と接続され、他端が前記第1のダイオードのカソードと前記第2のダイオードのアノードとに接続される第2のコンデンサと、を備え、
前記昇圧回路に前記電源電圧を昇圧させるときには、前記制御回路が前記第2のコンデンサにパルス信号を入力する、ことが望ましい。
これにより、制御信号がパルス信号を入力して、発光素子に印加される電圧を段階的に昇圧することができる。
【0015】
本発明の第5の態様であるエンコーダは、上記のエンコーダであって、
前記第1のコンデンサの容量値は、前記第2のコンデンサの容量値よりも大きい、ことが望ましい。
これにより、発光素子に印加される電圧を、電源電圧に対して小さな増加量にて、段階的に昇圧することができる。
【0016】
本発明の第6の態様であるエンコーダは、上記のエンコーダであって、
前記電池の両端間に挿入された第3のコンデンサを備え、
前記第3のコンデンサの容量値は、前記第1のコンデンサの容量値及び前記第2のコンデンサの容量値よりも大きい、ことが望ましい。
これにより、発光素子に印加される電圧を昇圧しているときの電源電圧の変動を抑制することができる。
【0017】
本発明の第7の態様であるエンコーダは、上記のエンコーダであって、
前記ドライバ回路は、
前記電池と前記グランドとの間に縦続接続される、スイッチ、電流源及び第1のトランジスタと、
一端に前記発光素子と前記ドライバ回路との間の前記電圧が印加され、他端が前記グランドと接続され、前記第1のトランジスタとカレントミラーを構成する第2のトランジスタと、を備え、
前記スイッチの開閉は、前記制御回路によって制御される、ことが望ましい。
これにより、制御信号からスイッチに与えられる信号に応じて、発光素子に電流を流すタイミングを制御することができる。
【0018】
本発明の第8の態様であるエンコーダは、上記のエンコーダであって、
アノードに前記発光素子と前記ドライバ回路との間の前記電圧が印加され、カソードが前記電池と、前記スイッチ、電流源及び第1のトランジスタとの間に接続される第3のダイオードを備える、ことが望ましい。
これにより、発光素子で電圧降下した後の電圧が過度に大きくなった場合に、ドライバ回路に過電圧が印加されることを防止できる。
【0019】
本発明の第9の態様であるエンコーダの光源は、
光を受けるスケールと、前記スケールからの光を受光し、受光した光に応じた信号を出力する受光部と、前記受光部からの前記信号に応じて、前記受光部と前記スケールとの間の位置関係を算出する信号処理部と、を有するエンコーダの前記スケールに前記光を照射する、エンコーダの光源であって、
電池と、
電池が出力する電源電圧を昇圧し、昇圧された電圧を出力する昇圧回路と、
一端に前記昇圧された電圧が印加される発光素子と、
前記発光素子の他端とグランドとの間に挿入され、前記発光素子を流れる電流を制御するドライバ回路と、
前記発光素子と前記ドライバ回路との間の電圧を検出する電圧検出回路と、
前記電圧検出回路が検出した前記電圧が前記電源電圧よりも小さいときに前記昇圧回路に前記電源電圧を昇圧させ、前記電圧検出回路が検出した前記電圧が前記電源電圧と等しくなったときに前記昇圧回路での昇圧を停止させ、かつ、前記発光素子に印加される前記昇圧された電圧が所定の値に達した後に前記発光素子に電流が流れるように前記ドライバ回路を制御する制御回路と、を備える、ものである。
これにより、発光素子で電圧降下した後の電圧が電源電圧に到達したときに、発光素子に印加される電圧の昇圧を停止する。これにより、発光素子で電圧降下した後の電圧は電源電圧を超えることはないので、ドライバ回路を過電圧から保護し、かつ、電池への電流の逆流を防止することができる。
【0020】
本発明の第10の態様であるエンコーダの光源は、上記のエンコーダの光源であって、
前記電圧検出回路は、前記発光素子と前記ドライバ回路との間の前記電圧が入力され、前記入力された電圧をデジタル信号に変換し、変換した前記デジタル信号を前記制御回路へ出力するアナログ−デジタル変換器として構成され、
前記制御回路は、前記デジタル信号の値に応じて、前記昇圧回路での昇圧を制御する、ものである。
これにより、制御回路は、アナログ−デジタル変換器の出力信号を参照することで、発光素子で電圧降下した後の電圧が電源電圧に到達したかを検出することができる。
【0021】
本発明の第11の態様であるエンコーダの光源は、上記のエンコーダの光源であって、
前記電圧検出回路は、一方の入力端子に印加される前記電源電圧と、他方の入力端子に印加される前記発光素子と前記ドライバ回路との間の前記電圧と、を比較して、比較結果を前記制御回路に出力する比較器として構成され、
前記制御回路は、前記比較結果に応じて、前記昇圧回路での昇圧を制御する、ものである。
これにより、制御回路は、比較器の出力信号が遷移することにより、発光素子で電圧降下した後の電圧が電源電圧に到達したことを検出することができる。
【0022】
本発明の第12の態様であるエンコーダの光源は、上記のエンコーダの光源であって、
前記昇圧回路は、
アノードに前記電源電圧が印加される第1のダイオードと、
一端が前記グランドと接続される第1のコンデンサと、
アノードが前記第1のダイオードのカソードと接続され、カソードが前記発光素子の高電位側端と前記第1のコンデンサの他端とに接続される第2のダイオードと、
一端が前記制御回路と接続され、他端が前記第1のダイオードのカソードと前記第2のダイオードのアノードとに接続される第2のコンデンサと、を備え、
前記昇圧回路に前記電源電圧を昇圧させるときには、前記制御回路が前記第2のコンデンサにパルス信号を入力する、ものである。
これにより、制御信号がパルス信号を入力して、発光素子に印加される電圧を段階的に昇圧することができる。
【0023】
本発明の第13の態様であるエンコーダの光源は、上記のエンコーダの光源であって、
前記第1のコンデンサの容量値は、前記第2のコンデンサの容量値よりも大きい、ものである。
これにより、発光素子に印加される電圧を、電源電圧に対して小さな増加量にて、段階的に昇圧することができる。
【0024】
本発明の第14の態様であるエンコーダの光源は、上記のエンコーダの光源であって、
前記電池の両端間に挿入された第3のコンデンサを備え、
前記第3のコンデンサの容量値は、前記第1のコンデンサの容量値及び前記第2のコンデンサの容量値よりも大きい、ものである。
これにより、発光素子に印加される電圧を昇圧しているときの電源電圧の変動を抑制することができる。
【0025】
本発明の第15の態様であるエンコーダの光源は、上記のエンコーダの光源であって、
前記ドライバ回路は、
前記電池と前記グランドとの間に縦続接続される、スイッチ、電流源及び第1のトランジスタと、
一端に前記発光素子と前記ドライバ回路との間の前記電圧が印加され、他端が前記グランドと接続され、前記第1のトランジスタとカレントミラーを構成する第2のトランジスタと、を備え、
前記スイッチの開閉は、前記制御回路によって制御される、ものである。
これにより、制御信号からスイッチに与えられる信号に応じて、発光素子に電流を流すタイミングを制御することができる。
【0026】
本発明の第16の態様であるエンコーダの光源は、上記のエンコーダの光源であって、
アノードに前記発光素子と前記ドライバ回路との間の前記電圧が印加され、カソードが前記電池と、前記スイッチ、電流源及び第1のトランジスタとの間に接続される第3のダイオードを備える、ものである。
これにより、発光素子で電圧降下した後の電圧が過度に大きくなった場合に、ドライバ回路に過電圧が印加されることを防止できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、エンコーダの光源において電源電圧よりも高い電圧を発光ダイオードに印加する場合でも、電池への電流の逆流を防止し、かつ、発光ダイオードのドライバ回路を保護することができる。
【0028】
本発明の上述及び他の目的、特徴、及び長所は以下の詳細な説明及び付随する図面からより完全に理解されるだろう。付随する図面は図解のためだけに示されたものであり、本発明を制限するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施の形態1にかかる光学式エンコーダが組み込まれたダイヤルゲージの構成を模式的に示す正面図である。
図2】実施の形態に1かかる光学式エンコーダの概略構成を示す展開図である。
図3】アブソリュートスケールパターン及び信号検出部の構成を示す図である。
図4】実施の形態1にかかる光源の構成を模式的に示す図である。
図5】実施の形態1にかかる光源の構成の一例を示す図である。
図6】実施の形態1にかかる光源の構成の他の一例を示す図である。
図7】実施の形態1にかかる光源の動作を示すタイミングチャートである。
図8】実施の形態2にかかる光源の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0031】
実施の形態1
実施の形態1にかかる光学式エンコーダについて説明する。図1は、実施の形態1にかかる光学式エンコーダが組み込まれたダイヤルゲージ101の構成を模式的に示す正面図である。ダイヤルゲージ101は、本体部102、表示部103、操作ボタン104、ステム105、スピンドル106、測定子107、及び、出力ポート108を有する。
【0032】
本体部102は、図1の紙面垂直方向の高さが、図1の紙面水平方向の幅よりも小さな略円柱形状である。本体部102の一方の面には、測定値などを表示する表示部103が付設される。
【0033】
ステム105は、図1の紙面垂直方向に延在する略円筒形状であり、本体部102の外縁部から突き出すように設けられている。
【0034】
スピンドル106は、略円柱形状の部材であり、ステム105に挿通され、ステム105の長さ方向に摺動可能に支持されている。ステム105から突き出したスピンドル106の先端には、被測定物と接触する測定子107が接合されている。
【0035】
本体部102の内部には、スピンドル106の変位量を検出する変位量検出手段(不図示)が設けられている。この変位量検出手段には、変位量を検出するために、後述する光学式エンコーダ10を含んでおり、光学式エンコーダ10を用いてスピンドル106の変位量を一定の周期で検出し、表示部103に出力する。表示部103は、変位量検出手段から出力された測定結果を表示可能に構成される。
【0036】
操作ボタン104は、表示部103に表示された測定結果のリセットや表示レンジの切り替えなどに用いられる。この例では、操作ボタン104が3つ設けられているが、操作ボタン104の数はこれに限定されるものではない。
【0037】
出力ポート108は、外部機器が接続可能に構成され、例えば測定結果を外部に出力することができる。
【0038】
次に、実施の形態に1かかる光学式エンコーダ10について説明する。本実施の形態において、光学式エンコーダ10は、2重変調スケールトラックパターン(Dual-Modulation Scale Track Pattern、以下ではDMSTパターンと表記する)を用いるアブソリュート光学式エンコーダとして構成される。図2は、実施の形態に1かかる光学式エンコーダ10の概略構成を示す展開図である。図2に示すように、光学式エンコーダ10は、照明部20、スケール21、及び、信号検出部23を有する。
【0039】
照明部20と信号検出部23とは、相対的な位置が固定されるように配置される。信号検出部23及び照明部20と、スケール21とは、スケール21の長手方向である測定方向(図1のX軸方向)に沿って相対的に移動が可能なように構成される。スケール21には位置検出に用いるアブソリュートスケールパターン22が設けられ、照明部20がアブソリュートスケールパターン22に光を照射することで干渉光が生じる。信号検出部23は、干渉光の測定方向の変化を検出することで、スケール21と信号検出部23との間の位置関係を検出することができる。
【0040】
照明部20は、可視又は不可視波長によってスケール21を照明するものとして構成される。照明部20は、例えば、光源11、レンズ13、及び、光源格子14を有する。光源11は、可視又は不可視波長の光を放射可能に構成される。光源11は、後述する信号処理回路25に接続され、一定の周期で間欠的に光を放射する光源として振る舞う。光源11から放射された光30は、レンズ13によって、スケール21の所定の領域を照明するのに十分なビーム面積を有するように、部分的又は完全に平行光線化される。レンズ13からの平行光線は、光源格子14によって測定方向の照度が均一化された後、スケール21に到達する。なお、レンズ13からの平行光線の照度分布が十分に均一な場合には、光源格子14を有しない照明部を構成してもよい。
【0041】
スケール21には、アブソリュートスケールパターン22が設けられている。このアブソリュートスケールパターン22は、インクリメンタルトラックパターンTINC、アブソリュートトラックパターンTABS1、及び、アブソリュートトラックパターンTABS2により構成される。アブソリュートトラックパターンTABS1、及び、アブソリュートトラックパターンTABS2としては、いわゆるDMSTパターンを用いることができる。
【0042】
スケール21においてアブソリュートスケールパターン22が形成される面は、測定方向であるX方向と、X方向に垂直なY方向に平行な面である。図2では、測定方向を、符号MAを用いて表示している。また、図1では、スケール21においてアブソリュートスケールパターン22が形成される面、すなわちX−Y平面に垂直な方向をZ方向としている。
【0043】
信号検出部23は、検出器トラック部24及び信号処理回路25を有する。信号検出部23は、例えば、単一のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)集積回路として構成することができる。検出器トラック部24は、3つの検出器トラックDINC、DABS1及びDABS2を有する。検出器トラックDINC、DABS1及びDABS2は、それぞれ、インクリメンタルトラックパターンTINC、アブソリュートトラックパターンTABS1、及び、アブソリュートトラックパターンTABS2からのパターン光を受光するように配置される。信号処理回路25は、検出器トラック部24の検出結果を示す信号を処理する回路として構成される。
【0044】
上述の通り、光源11から放射された光30は、レンズ13によって平行光線化される。図1では、光30の3つの光路31、32及び33を模式的に示している。光路31は、インクリメンタルトラックパターンTINCを照明する光を含む代表的な中央光路である。光路32及び33は、それぞれ、アブソリュートトラックパターンTABS2及びTABS1を照明する光を含む代表的な光路である。
【0045】
光源格子14を用いる場合、光源格子14は、代表光路31の周りの光がインクリメンタルトラックパターンTINCのピッチ又は波長とほぼ適合するようなピッチで配列された開口を有する格子構造を有している。レンズ13からの平行光線は、光源格子14の格子構造を通過し、いわゆる自己像照明原理に従ってインクリメンタルトラックパターンTINCを照明する。
【0046】
インクリメンタルトラックパターンTINCが照明されると、信号検出部23の検出器トラックDINCへ向けて、空間的に変調された光パターン(例えば回折光同士の干渉縞光)が出力される。例えば、約8μm以下のトラック波長を持つ場合、複数の回折光(例えば±1次回折光)が検出器トラックDINC上に干渉縞を生成するように、インクリメンタルトラックパターンTINCが構成される。また、例えば約8−40μmのトラック波長を持つ場合、いくつかの回折光が相互作用して、検出器トラックDINCの面で自己像(例えばTalbot像又はFlesnel像)を生成するように、インクリメンタルトラックパターンTINCが構成される。
【0047】
アブソリュートトラックパターンTABS2及びTABS1は、それぞれ検出器トラックDABS2及びDABS1上に投影される影像(例えばボケた又はボケていない影像)を生成するように構成されている。アブソリュートトラックパターンTABS1が照明されると、信号検出部23の検出器トラックDTABS1へ向けて、空間的に変調された光パターン(例えばアブソリュートトラックパターンTABS1に対応するパターン光)が出力される。アブソリュートトラックパターンTABS2が照明されると、信号検出部23の検出器トラックDTABS2へ向けて、空間的に変調された光パターン(例えばアブソリュートトラックパターンTABS2に対応するパターン光)が出力される。
【0048】
空間的に変調された光パターンは、スケール21と共に移動する。検出器トラックDINC、DABS1及びDABS2のそれぞれでは、所望の検出信号を得るため、空間的に変調された光パターンを空間的にフィルタリングして検出できるように、例えば複数の光検出器領域が配列されている。複数の検出器領域は、複数の光検出器を測定方向に配列することで構成してもよいし、測定方向に複数の開口が設けられた空間フィルタマスクを介して大きな面積を有する光検出器に光を入射させることで実現してもよい。
【0049】
なお、図2に示したトラックパターンの構成は例示に過ぎず、検出器トラックでパターンを検出できる限り、他の構成及び配置を取りうることは言うまでもない。
【0050】
次いで、アブソリュートスケールパターン22及び信号検出部23について、より詳細に説明する。図3は、アブソリュートスケールパターン22及び信号検出部23の構成を示す図である。図3では、便宜上、Z方向に沿ってX−Y平面を見た場合の信号検出部23及びアブソリュートスケールパターン22を並べて表示している。
【0051】
図3では、アブソリュートトラックパターンTABS1の空間波長はL1、アブソリュートトラックパターンTABS2の空間波長はL2である。アブソリュートトラックパターンTABS1及びアブソリュートトラックパターンTABS2は、空間的に強度変調された光パターンを透過(又は反射)するパターンが設けられている。このパターンは、Y方向の幅(断面寸法)が、測定方向MA(X方向)に沿った位置の関数として変化するように構成される。
【0052】
検出器トラックDINC、DABS1及びDABS2のそれぞれは、例えば、直角位相型検出器を構成するように複数の光検出器が配列されている。この例では、各検出器トラックは、受光した空間変調光パターンの4つの空間位相(すなわち0°、90°、180°、270°)を検出する空間フィルターを与えるように、4つの近接する検出器要素が均等な間隔で配置される。このように配置された4つの近接する検出器要素のグループを複数設け、図3に示すように、複数のグループからの各空間位相にかかる信号を加算している。加算した信号は、4つの記号A(0°)、B(90°)、A−(180°)、B−(270°)を用いて示している。具体的には、検出器トラックDINCに対応する4つの直角位相信号を、信号Ainc、Binc、A−inc、B−incとして示している。同様に、検出器トラックDABS1の4つの直角位相信号を、信号Aabs1、Babs1、A−abs1及びB−abs1として示し、検出器トラックDABS2の4つの直角位相信号を、信号B−abs2、A−abs2、Babs2及びAabs2として示している。
【0053】
直角位相信号は、対応するスケールトラックの現在の局所的な波長内の各トラックの空間位相位置を決定するように処理される。特に、アブソリュートトラックパターンTABS1及びアブソリュートトラックパターンTABS2のいずれか又は両方が、強度変調成分を有する空間的に変調された光パターンを与える特徴を含むDMSTパターンであるとき、強度変調成分の4つの空間的な位相(すなわち、0°、90°、180°及び270°)に対応する信号が得られる。
【0054】
これらアブソリュートトラックパターンTABS1(波長L1)及びアブソリュートトラックパターンTABS2(波長L2)に由来する直角位相信号を、例えば特許文献2と同様に信号処理することで、合成波長Sで周期的に変動する合成波長位置信号を得ることができる。

S=L1×L2/|L1−L2|
【0055】
また、特許文献2と同様に、合成波長Sよりも長周期の、又は、より緩やかな変動を示す広範囲位置信号を得ることができる。以上より、広範囲位置信号と合成波長信号を組み合わせることで、精密に絶対的位置を測定することができる。
【0056】
一例においては、アブソリュートスケールパターン22の全幅は、約3.0mm以下とすることができる。アブソリュートトラックパターンTABS2の波長L2は、L2=720μm、アブソリュートトラックパターンTABS1の波長L1は、L1=700μmとすることができる。インクリメンタルトラックパターンTINCの波長は20μmとすることができる。特許文献2によれば、これにより約25.2mmの合成波長が得られる。なお、この例で挙げた構成及び寸法は例示に過ぎず、これらに限定されるものではない。
【0057】
次に、実施の形態1にかかる光源11について説明する。図4は、実施の形態1にかかる光源11の構成を模式的に示す図である。図4に示すように、実施の形態1にかかる光源11は、電池1、制御回路2、昇圧回路3、発光ダイオード4、ドライバ回路5及び電圧検出回路6を有する。
【0058】
電池1は、一次電池であり、例えば公称電圧が3[V]のコイン型電池又はボタン型電池を用いることができる。ここで、コイン型電池又はボタン型電池とは、円盤状の形状を有する一次電池を指し、例えばフッ化黒鉛リチウム電池、二酸化マンガンリチウム電池 、酸化銅リチウム電池、アルカリ電池、水銀電池、空気亜鉛電池及び酸化銀電池などを含むものとする。
【0059】
制御回路2は、電圧検出回路6での電圧検出結果に基づいて、昇圧回路3及びドライバ回路5の動作を制御する。ここでは、制御回路2は、制御信号S1によって昇圧回路3を制御し、制御信号S2によってドライバ回路5を制御する。
【0060】
昇圧回路3は、発光ダイオード4のアノードに印加される電圧VBを所定の電圧まで昇圧する。
【0061】
発光ダイオード4は、アノードが昇圧回路3の出力と接続され、カソードがドライバ回路5と接続される。なお、ここでは、発光素子として、発光ダイオードを用いる例について説明するが、これは例示に過ぎない。すなわち、発光素子としては、半導体レーザ、SLED(Self-Scanning Light Emitting Device:自己走査型発光素子)、OLED(Organic light-emitting diode:有機発光ダイオード)などの他の種類の素子を用いてもよい。
【0062】
ドライバ回路5は、発光ダイオード4に流れる電流を制御することで、発光ダイオード4を駆動する。
【0063】
電圧検出回路6は、発光ダイオード4のカソードの電圧VCを検出する。換言すれば、電圧検出回路6は、発光ダイオード4のカソードからドライバ回路5に入力される電圧VC、又は、発光ダイオード4のカソードとドライバ回路5との間のノードの電圧VCを検出する。そして、電圧検出回路6は、検出した電圧VCの検出結果を、検出信号DETとして、制御回路2に出力する。
【0064】
ここで、電圧検出回路6の具体的構成について説明する。図5は、実施の形態1にかかる光源11の構成の一例を示す図である。図5に示すように、電圧検出回路6は、電池1から電源供給を受けるアナログ−デジタル変換器であるアナログ−デジタルコンバータ(以下、ADC)7として構成される。この場合、ADC7は、入力されたアナログ信号である電圧VCを、デジタル信号である検出信号DETに変換して、制御回路2に出力する。制御回路2は、検出信号DETの値を参照することで、電圧VCが電源電圧VDDに到達したかを判定することができる。
【0065】
電圧検出回路6の具体的構成について更に説明する。図6は、実施の形態1にかかる光源11の構成の他の一例を示す図である。図6に示すように、電圧検出回路6は、電源電圧VDDと電圧VCとを比較する比較器8として構成してもよい。この例では、比較器8の非反転入力端子には電源電圧VDDが入力され、反転入力端子には電圧VCが入力される。この場合、電圧VCが電源電圧VDDに到達すると、コンパレータが出力する検出信号DETの電圧レベルがHIGHからLOWに遷移する。よって、制御回路2は、検出信号DETの電圧を参照することで、電圧VCが電源電圧VDDに到達したかを判定することができる。
【0066】
上記したように、例えばコイン型電池の場合、公称電圧は典型的には3[V]、実際の出力電圧が2.5〜2.7[V]であるのに対し、発光ダイオードの順方向電圧は1.6〜4[V]程度である。そこで、本構成では、昇圧回路3によって電源電圧VDDを昇圧して、発光ダイオード4の順方向電圧を確保している。しかしながら、昇圧後の電圧が大きすぎると、光源11を構成する回路要素、例えばドライバ回路5には、耐圧を超える電圧が印加され、回路の破損に繋がるおそれがある。また、電池1の出力電圧よりも大きな電圧が光源11で生じることとなるので、一次電池である電池1に電流が逆流するおそれも生じる。
【0067】
よって、本構成では、電圧検出回路6において電圧VCの比較対象となる基準電圧として、電源電圧VDDを用いている。これにより、電圧検出回路6によって電圧VCが電源電圧VDDに到達したことを検出したときに、制御回路2が昇圧回路3での昇圧を停止することで、電圧VCの上昇を制限し、ドライバ回路5に耐圧以上の電圧が印加されることを防止できる。かつ、ドライバ回路5には電源電圧VDDよりも大きな電圧が印加されることはないので、電池1への電流の逆流を防止し、電池1の破損を回避することができる。
【0068】
次いで、昇圧回路3について、より詳細に説明する。図5及び6に示すように、昇圧回路3は、インバータINV、ダイオードD1(第1のダイオードとも称する)、及びダイオードD2(第2のダイオードとも称する)、コンデンサC1(第1のコンデンサとも称する)及びコンデンサC2(第2のコンデンサとも称する)を有する。
【0069】
ダイオードD1のアノードは、電池1の高電位側端子と接続され、電源電圧VDDが印加される。ダイオードD1のカソードは、ダイオードD2のアノードと接続される。インバータINVは、制御回路2から出力された制御信号S1を反転させた信号を出力する。インバータINVの出力と、ダイオードD1のカソード及びダイオードD2のアノードとの間には、コンデンサC2が挿入される。ダイオードD2のカソードは、発光ダイオード4のアノードと接続される。また、ダイオードD2のカソードとグランドとの間には、コンデンサC1が挿入される。
【0070】
なお、昇圧回路3では、昇圧を精密に行うため、コンデンサC2の容量値はコンデンサC1の容量値よりも小さいことが望ましい。例えば、コンデンサC2の容量値はコンデンサC1の容量値の1/10程度であることが好ましい。この場合、例えば、コンデンサC1の容量値を1.0[μF]、コンデンサC2の容量値を0.1[μF]とすることが望ましい。
【0071】
次いで、ドライバ回路5についてより詳細に説明する。図5及び6に示すように、ドライバ回路5の一例の構成を模式的に示す回路図である。ドライバ回路5は、スイッチSW、電流源CS、NMOSトランジスタMN1及びMN2を有する。
【0072】
スイッチSW、電流源CS及びNMOSトランジスタMN1は、電源電圧VDDとグランドとの間に縦続接続される。具体的には、スイッチSWの一端には電源電圧VDDが印加される。スイッチSWの他端とNMOSトランジスタMN1のドレインとの間に、電流源CSが挿入される。NMOSトランジスタMN1のソースは、グランドと接続される。スイッチSWは、制御回路2からの制御信号S2によって開閉が制御される。
【0073】
NMOSトランジスタMN2のドレインは、発光ダイオード4のカソードと接続される。NMOSトランジスタMN2のソースは、グランドと接続される。
【0074】
この構成では、NMOSトランジスタMN1とNMOSトランジスタMN2とは、カレントミラーを構成している。具体的には、NMOSトランジスタMN1のゲートとNMOSトランジスタMN2のゲートは、NMOSトランジスタMN1のドレインと接続されている。これにより、電流は、NMOSトランジスタMN1に流れる電流を所定の比率で複製した電流がNMOSトランジスタMN2に流れることとなる。このとき、NMOSトランジスタMN1とNMOSトランジスタMN2とが同一の仕様のトランジスタである場合、NMOSトランジスタMN2に流れる電流は、NMOSトランジスタMN1に流れる電流と等しくなる。
【0075】
また、この例では、電圧検出回路6は、発光ダイオード4とNMOSトランジスタMN2のドレインとの間の電圧を検出する。
【0076】
次に、光源11の動作について説明する。図7は、実施の形態1にかかる光源11の動作を示すタイミングチャートである。まず、初期状態においては、制御信号S2がLOWであり、スイッチSWが開いている。よって、発光ダイオード4には電流Iが流れず、発光しない。この状態において、制御回路2は、制御信号S1として、パルス信号を出力する。このとき、コンデンサC2にインバータINVを介してHIGHが入力されるたびに、コンデンサC2は充電され、これに伴ってコンデンサC1に充電される電荷も増加する。制御信号S1はパルス信号であるため、コンデンサC2にパルスが入力されるたびに、コンデンサC1に充電される電荷は段階的に増加する。よって、これに伴い、発光ダイオード4のアノードの電圧VBも増加する。
【0077】
ここで、電源電圧VDDを2.5Vとし、昇圧回路3は電源電圧を約2倍まで昇圧でききるものとする。このとき、ダイオードD1及びD2による電圧降下を0.4[V]と見積もると、電圧VBを2×VDD−0.4=4.6[V]まで昇圧することが可能となる。ここで、上記したように、発光ダイオード4での電圧降下を1.6〜4.0[V] とすると、電圧VCは0.6〜3[V]の範囲となり得る。つまり、電圧VBの値と発光ダイオード4での電圧降下によっては、電圧VCが電源電圧VDD(2.5[V])を超え、ないしはドライバ回路5の耐圧まで上昇する事態が生じ得ることとなる。
【0078】
本構成においては、上記の動作において電圧検出回路6が発光ダイオード4のカソードの電圧VCを監視している。具体的には、電圧検出回路6は、発光ダイオード4のカソードの電圧VCが、電源電圧VDDを超えているか否かを検出する。電圧検出回路6は、電圧VCが電源電圧VDDに到達した場合に、検出信号DETを用いて制御回路2に通知する。制御回路2は、検出信号DETに応じて、電圧VCが電源電圧VDDに到達した時点で制御信号S1の出力を停止して、電圧VBの昇圧を停止する。
【0079】
このとき、電圧VBは電源電圧VDDよりも十分に大きくなっており、制御回路2は制御信号S2のレベルをLOWからHIGHに遷移させ、スイッチSWを閉じる。これにより、発光ダイオード4には電流が流れ、発光する。発光ダイオード4に電流が流れるにつれてコンデンサC1に充電された昇圧分の電荷が減少するので、発光ダイオード4のアノードの電圧VBが降下する。
【0080】
制御回路2は、所定の時間の経過後、制御信号S2のレベルをHIGHからLOWに遷移させ、スイッチSWを開く。これによって、発光ダイオード4に流れる電流が遮断され、発光ダイオード4の発光が停止する。
【0081】
以上、制御回路2は、制御信号S2のレベルを適宜切り替えて、電圧VBを所定の範囲内に収めつつ発光ダイオード4を駆動することで、発光ダイオード4を安定して発光させることができる。
【0082】
その後、パルス状の制御信号S1の出力、停止、及び、制御信号S2の遷移を繰り返すことで、制御回路2は、発光ダイオード4を間欠的に発光させることができる。
【0083】
以上、本構成によれば、電圧VCが電源電圧VDDよりも大きくなることを防止できることが理解できる。これにより、ドライバ回路に耐圧を超える電圧が印加されることを防止し、電池1への電流が逆流を防止することができる。
【0084】
また、電圧検出回路6は、上述の通り、通常のADCや比較器を用いて構成することができるので、ドライバ回路5などの他の回路が搭載される同一のチップ上に構成することができる。よって、電圧検出回路6を実装するために特別なチップ等を用意することもなく、低コストでの導入が可能である。また、同一チップへの混載が可能なので、エンコーダを小型化する点で有利である。
【0085】
実施の形態2
実施の形態2にかかる光源12について説明する。図8は、実施の形態2にかかる光源12の構成を模式的に示す図である。光源12は、実施の形態1にかかる光源11に、コンデンサC3(第3のコンデンサとも称する)とダイオードD3(第3のダイオードとも称する)とを追加した構成を有する。
【0086】
コンデンサC3は、電池1の高電位側端子と接続され、他端がグランドと接続される。ここで、コンデンサC3の容量値は、コンデンサC1の容量値及びコンデンサC2の容量値よりも高く設定されることが望ましい。例えば、コンデンサC1の容量値を1.0[μF]、コンデンサC2の容量値を0.1[μF]、コンデンサC3の容量値を10[μF]としてもよい。
【0087】
このようにコンデンサC3の容量値を大きくとることで、昇圧動作時における電源電圧VDDの変動を抑制することができる。これは、光源12の動作を安定化させることができる点で有利である。
【0088】
ダイオードD3のアノードは、発光ダイオード4のカソードと接続される。換言すれば、ダイオードD3のアノードは、ドライバ回路5のNMOSトランジスタMN2のドレイン、又は、発光ダイオード4のカソードとドライバ回路5のNMOSトランジスタMN2のドレインとの間のノードに接続されてもよい。ダイオードD3のカソードは、電池1(電源電圧VDD)とドライバ回路5のスイッチSWとの間のノードに接続される。
【0089】
本構成では、何らかの原因で電圧VCが大きくなった場合に、ダイオードD3を通じて電流を流すことで、電圧VCの上昇を抑制することができる。もっとも、光源12では電圧検出回路6が電圧VCを監視しているので、ダイオードD3はそのバックアップとして設けられる。また、ダイオードD3に電流が流れている場合でも、電圧検出回路6によって電圧VCを監視することで、ダイオードD3を介して電池1に電源電圧VDDよりも大きな電圧が印加されることを防止できる。これにより、1次電圧である電池1への電流の逆流を防止し、電池1を保護することができる。
【0090】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、ドライバ回路及び電圧検出回路6は、適宜他の構成としてもよい。
【0091】
上述の実施の形態では、NMOSトランジスタを用いてドライバ回路を構成したが、適宜PMOSトランジスタを用いて構成してもよい。更に、用いるトランジスタはMOSトランジスタに限られるものではなく、他の種類のトランジスタを用いてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 電池
2 制御回路
3 昇圧回路
4 発光ダイオード
5 ドライバ回路
6 電圧検出回路
7 アナログ−デジタルコンバータ(ADC)
8 比較器
10 光学式エンコーダ
11、12 光源
13 レンズ
14 光源格子
20 照明部
21 スケール
22 アブソリュートスケールパターン
23 信号検出部
24 検出器トラック部
25 信号処理回路
30 光
31〜33 光路
101 ダイヤルゲージ
102 本体部
103 表示部
104 操作ボタン
105 ステム
106 スピンドル
107 測定子
108 出力ポート
DINC、DTABS1、DTABS2 検出器トラック
TABS1、TABS2 アブソリュートトラックパターン
TINC インクリメンタルトラックパターン
C1〜C3 コンデンサ
CS 電流源
D1〜D3 ダイオード
DET 検出信号
INV インバータ
MN1、MN2 NMOSトランジスタ
Sref 原点検出信号
S1、S2 制御信号
Sinc 変位検出信号
SW スイッチ
VDD 電源電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8