(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態の半導体パッケージの製造方法について説明する。
図1は、本実施の形態の半導体パッケージの断面模式図である。
図2は、比較例の半導体パッケージの製造方法の説明図である。なお、以下の実施の形態はあくまでも一例を示すものであり、各工程間に他の工程を備えてもよいし、工程の順序を適宜入れ換えてもよい。
【0013】
図1に示すように、半導体パッケージ10は、いわゆるEMI(Electro-Magnetic Interference)で遮断を要する全てのパッケージの半導体装置であり、外面の電磁波シールド層16によって周囲への電磁ノイズの漏洩を抑制するように構成されている。電磁波シールド層16の内側では、配線基板(インターポーザ基板)11の上面に実装された半導体チップ12が樹脂層(封止剤)13で封止され、配線基板11の下面にバンプ14が配設されている。配線基板11には、半導体チップ12に接続される電極やグランドライン17を含む各種配線が形成されている。
【0014】
半導体チップ12は、シリコン、ガリウム砒素等の半導体基板上のデバイス毎に半導体ウエーハを個片化して形成され、配線基板11上にボンディングされている。また、半導体パッケージ10の側面23は上面22から下方に向かって外側に広がるように傾斜しており、半導体パッケージ10の傾斜した側面23に対してスパッタ法等によって上方から電磁波シールド層16が成膜されている。一般的な半導体パッケージの鉛直な側面とは異なり、半導体パッケージ10の側面23は電磁波シールド層16の成膜方向に対して斜めに交差して電磁波シールド層16を形成し易くしている。
【0015】
ところで通常は、
図2Aに示す比較例のように、配線基板11上の半導体チップ12を樹脂層13で封止した封止基板15を、先端がV字形状の切削ブレード(以下、Vブレードと称する)39を用いてフルカットすることで半導体パッケージ10(
図1参照)の側面23が傾斜される。この方法では、半導体パッケージ10の製造方法を簡略化できるが、分割時に半導体パッケージ10を支える保持治具111にバンプ14を逃がすための凹部112を設けなければならず、新たに保持治具111を設計する必要があった。封止基板15を個片化した後にバンプ14を配設する構成も考えられるが、パッケージに対するバンプ14の位置ズレが生じる。
【0016】
また、上記したように配線基板11には様々な配線(メタル)が含まれているため、配線基板11の切削時にVブレード39の消耗が激しく、Vブレード39の先端のV字形状が崩れ易くなっている。このため、
図2Bに示す比較例のように、Vブレード39と通常の切削ブレード49を用いたステップカットで封止基板15を分割する構成が考えられる。これにより、Vブレード39による配線基板11に対する切り込み量を抑えて、Vブレード39の先端のV字形状の消耗を減少させることができる。しかしながら、このような構成でも、新たに保持治具111を設計しなければならない。
【0017】
そこで、第1の実施の形態の半導体パッケージの製造方法では、封止基板15に対するバンプ14の配設前にVブレード39で封止基板15をハーフカットするようにしている。これにより、保持治具36(
図3C参照)にバンプ14を避けるための凹部を形成する必要がないため、既存の保持治具36を用いて封止基板15を保持することができる。また、Vブレード39で封止基板15をフルカットしないため、封止基板15に対してバンプ14を位置ズレすることなく配設することができ、配線基板11に対する切り込み量を抑えてVブレード39の先端のV字形状の消耗を減少させることができる。
【0018】
以下、
図3及び
図4を参照して、第1の実施の形態の半導体パッケージの製造方法について説明する。
図3及び
図4は、第1の実施の形態の半導体パッケージの製造方法の説明図である。なお、
図3Aはチップボンディング工程、
図3Bは封止基板作成工程、
図3CはV溝形成工程、
図3Dは変形例の切削ブレードのそれぞれ一例を示す図である。また、
図4Aはバンプ形成工程、
図4Bは個片化工程、
図4Cはシールド層形成工程のそれぞれ一例を示す図である。
【0019】
図3Aに示すように、先ずチップボンディング工程が実施される。チップボンディング工程では、配線基板11の表面が交差する分割予定ラインによって格子状に区画されており、区画された複数の領域に複数の半導体チップ12がボンディングされる。この場合、半導体チップ12の上面の電極にワイヤ19の一端が接続され、配線基板11の表面の電極18にワイヤ19の他端が接続される。なお、チップボンディング工程では、ワイヤボンディングに限らず、半導体チップ12の下面の電極を配線基板11の表面の電極に直接接続するフリップチップボンディングが実施されてもよい。
【0020】
図3Bに示すように、チップボンディング工程が実施された後に封止基板作成工程が実施される。封止基板作成工程では、複数の半導体チップ12がボンディングされた配線基板11の表面側に封止剤24が供給され、各半導体チップ12が封止剤24で封止されて封止基板15(
図3C参照)が作成される。この場合、半導体チップ12が実装された配線基板11の下面が封止用の保持治具31に保持されており、配線基板11の上面を覆うように枠型32が配置されている。枠型32の上壁には注入口33が開口しており、注入口33の上方には封止剤24の供給ノズル34が位置付けられている。
【0021】
そして、供給ノズル34から注入口33を通じて配線基板11の上面に封止剤24が供給されて半導体チップ12が封止される。この状態で、封止剤24が加熱又は乾燥されることで硬化されて、配線基板11の上面に樹脂層13(
図3C参照)を形成した封止基板15が作成される。なお、封止剤24は、硬化性を有するものが用いられ、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、又はポリイミド樹脂等から選択することができる。また、封止剤24は液状に限らず、シート状、パウダー状の樹脂を使用することもできる。このようにして、配線基板11上の複数の半導体チップ12が一括で封止される。
【0022】
なお、封止基板15(樹脂層13(
図3C参照))の表面を研削によって平坦化してもよい。封止基板15を研削装置(不図示)にて研削することにより、半導体チップ12を被覆する樹脂層13を所望の厚みに調整することができる。このように、封止基板作成工程の後に平坦化工程が実施されてもよい。
【0023】
図3Cに示すように、封止基板作成工程が実施された後にV溝形成工程が実施される。V溝形成工程では、封止基板15の配線基板11側がV溝形成用の保持治具36に保持され、先端がV字形状に形成されたVブレード39(加工工具)で樹脂層(封止剤)13側から配線基板11(封止基板15)の厚み方向途中まで切り込まれて、分割予定ラインに対応する領域に沿ってV溝25が形成される。この場合、保持治具36の保持面37には分割予定ラインに対応して格子状の逃げ溝38が形成されており、逃げ溝38で区画された各領域に吸引口(不図示)が形成されている。各吸引口は吸引路を通じて吸引源に接続され、吸引口に生じた負圧によって保持治具36の保持面37に封止基板15が吸引保持される。
【0024】
また、Vブレード39は、封止基板15の外側で封止基板15の分割予定ラインに位置合わせされている。Vブレード39は、ダイヤモンド砥粒等を結合剤で固めて、先端がV字形状の円板状に成形されており、スピンドル(不図示)の先端に装着されている。封止基板15の外側で配線基板11の厚み方向途中までの深さまでVブレード39が降ろされ、このVブレード39に対して封止基板15が水平方向に切削送りされる。これにより、分割予定ラインに沿って封止基板15がハーフカットされて、樹脂層13上面から加工溝底26に向かって傾斜した側面23を備えるようにV溝25が形成される。
【0025】
一本の分割予定ラインに沿って封止基板15がハーフカットされると、隣の分割予定ラインにVブレード39が位置合わせされて封止基板15がハーフカットされる。このハーフカットが繰り返されることで、封止基板15の表面に分割予定ラインに沿って複数のV溝25が形成される。このように、バンプ14(
図4A参照)を配設する前に封止基板15がハーフカットされてV溝25が形成されるため、V溝形成時に既存の保持治具36を用いて封止基板15を保持することができる。よって、比較例のようにバンプ14を逃がすための凹部が不要になり、新たに保持治具を設計する必要がない。
【0026】
なお、本実施の形態では、Vブレード39の先端が尖ったV字形状に形成されたが、この構成に限定されない。Vブレード39の先端は、封止基板15に対してV溝25を形成可能な形状であればよい。例えば、
図3Dに示すように、切削ブレード40の先端が平坦なV字形状に形成されていてもよい。すなわち、切削ブレードの先端がV字形状とは、切削ブレードの先端まで尖った完全なV字形状に限らず、切削ブレードの先端が平坦な略V字形状を含む形状である。また、Vブレードの先端のV字面は直線的に傾斜している必要はなく、僅かに丸みを帯びていてもよい。
【0027】
図4Aに示すように、V溝形成工程が実施された後にバンプ形成工程が実施される。バンプ形成工程では、配線基板11の裏面側にバンプ14が形成される。この場合、封止基板15が表裏反転されて、封止基板15の樹脂層(封止剤)13側がバンプ形成用の保持治具41で吸引保持される。そして、封止基板15の配線基板11の裏面側が上方に露出され、配線基板11の裏面にバンプ14が配設される。バンプ14は、半導体パッケージ10(
図4C参照)を各種基板に実装する際の端子や電極になり、配線基板11の配線パターンに応じた所定位置に形成される。封止基板15の個片化前にバンプ14が形成されるため、封止基板15に対するバンプ14の位置ズレが防止される。
【0028】
図4Bに示すように、バンプ形成工程が実施された後に個片化工程が実施される。個片化工程では、V溝25に沿って配線基板11を分割して分割予定ラインに沿った個々のパッケージ21に個片化される。この場合、バンプ14を上側に向けた状態で封止基板15の樹脂層13側が個片化用の保持治具46の保持面47に吸引保持され、封止基板15の外側で切削ブレード49が封止基板15の分割予定ラインに位置合わせされている。保持治具46はV溝形成用の保持治具36と同様に構成され、切削ブレード49はダイヤモンド砥粒等を結合剤で固めて円板状に成形されてスピンドル(不図示)の先端に装着されている。
【0029】
封止基板15の外側で配線基板11を切断な深さまで切削ブレード49が降ろされ、この切削ブレード49に対して封止基板15が水平方向に切削送りされることでフルカットされる。一本の分割予定ラインに沿って封止基板15がフルカットされると、隣の分割予定ラインに切削ブレード49が位置合わせされて封止基板15がフルカットされる。この切断動作が繰り返されることで、封止基板15が分割予定ラインに沿って個々のパッケージ21に分割される。なお、切削中に切削ブレード49が消耗するが、切削ブレード49の側面形状の変化が少ないため切断面を鉛直に形成することができる。
【0030】
図4Cに示すように、個片化工程が実施された後にシールド層形成工程が実施される。シールド層形成工程では、複数のパッケージ21の樹脂層13の上面22及び傾斜している側面23に電磁波シールド層16が形成される。この場合、保持治具46(
図4B参照)からパッケージ21がピックアップされて、シールド用の保持治具51に状に並べて配置される。保持治具51の保持面52には多数の凹部53が並んで形成されており、各凹部53に各パッケージ21のバンプ14が収容されている。なお、保持治具51は凹部53毎にパッケージ21を吸引保持する吸引口(不図示)が形成されていてもよい。
【0031】
そして、パッケージ21に対して上方から導電性材料が成膜されて、パッケージ21の上面22及び側面23に電磁波シールド層16が形成される。電磁波シールド層16は、銅、チタン、ニッケル、金等のうち一つ以上の金属によって成膜された厚さ数μm以上の多層膜であり、例えば、スパッタ法、イオンプレーディング法、スプレー塗布法、CVD(chemical Vapor Deposition)法、インクジェット法、スクリーン印刷法によって形成される。なお、電磁波シールド層16は、真空雰囲気下で上記の多層膜を有する金属フィルムをパッケージ21の上面22及び側面23に接着する真空ラミネートによって形成してもよい。
【0032】
このとき、パッケージ21の側面23が上面22から下方に向かって外側に広がるように傾斜しており、パッケージ21の側面23の斜面が電磁波シールド層16の成膜方向(鉛直方向)に対して斜めに交差している。よって、パッケージ21に電磁波シールド層16を上方から成膜する際に、パッケージ21の上面22だけでなく側面23にも、十分なシールド効果を発揮できる程度の厚みで電磁波シールド層16を容易に成膜することが可能になっている。このようにして、パッケージ21の上面22及び側面23が電磁波シールド層16でカバーされた半導体パッケージ10が製造される。
【0033】
電磁波シールド層16がグランドライン17に接続されているため、半導体パッケージ10で生じた電磁ノイズはグランドライン17を通じて半導体パッケージ10外に逃がされる。なお、パッケージ21の側面23の下端側は鉛直に形成されているため、斜面と同様に成膜することはできない。しかしながら、配線基板11に設けられた多数の配線によって電磁ノイズがカットされるため、パッケージ21の側面23の鉛直部分の電磁波シールド層16が薄く形成されても電磁ノイズを十分に遮蔽することができる。したがって、半導体パッケージ10の周囲の電子部品への電磁ノイズの漏洩が効果的に防止される。
【0034】
なお、第1の実施の形態の半導体パッケージの製造方法では、V溝形成工程、個片化工程は、同一の切削装置に実施されてもよい。また、バンプ14無しの半導体パッケージを製造する場合にはバンプ形成工程を省略してもよい。また、封止基板15が予め用意されている場合には、チップボンディング工程、封止基板作成工程を省略してもよい。
【0035】
以上のように、第1の実施の形態の半導体パッケージの製造方法によれば、Vブレード39で樹脂層13側から封止基板15が切削されることで、個片化されたパッケージ21の側面23が樹脂層13側から下方に向かって外側に広がるように傾斜する。上面視においてパッケージ21の側面23が投影面積を有するため、パッケージ21の上面22に垂直な方向からパッケージ21の側面23に対して電磁波シールド層16を容易に形成することができる。よって、半導体パッケージ10の上面22及び側面23に、十分なシールド効果を発揮できる所定の厚みで電磁波シールド層16を効率的に形成することができる。
【0036】
ここで、封止基板15は、Vブレード39の消耗が激しい配線基板11上にVブレード39の消耗が少ない樹脂層13が積層されて形成されている。このため、第1の実施の形態の半導体パッケージの製造方法では、V溝形成工程で配線基板11と樹脂層13の異種材料が同時に切削されるため、Vブレード39の消耗量や先端のV字形状の角度管理が難しい。そこで、第2の実施の形態では、封止基板15の作成前に配線基板11とVブレード39の接触を避ける逃げ溝を形成して樹脂で埋めることで、V溝形成時にVブレード39で樹脂だけを切削するようにしている。
【0037】
以下、
図5及び
図6を参照して、第2の実施の形態の半導体パッケージの製造方法について説明する。
図5及び
図6は、第2の実施の形態の半導体パッケージの製造方法の説明図である。
図5Aは配線基板溝形成工程、
図5Bはチップボンディング工程、
図5Cは封止基板作成工程、
図5Dはバンプ形成工程のそれぞれ一例を示す図である。
図6AはV溝形成工程、
図6Bは個片化工程、
図6Cはシールド層形成工程のそれぞれ一例を示す図である。なお、第1の実施の形態の半導体パッケージの製造方法と同様な構成については簡略化して説明する。
【0038】
図5Aに示すように、先ず配線基板溝形成工程が実施される。配線基板溝形成工程では、配線基板11の厚み方向途中までの深さ、例えばグランドライン17を切断する深さの溝27が分割予定ラインに沿って形成される。この場合、配線基板11の裏面側が溝形成用の保持治具56に吸引保持され、配線基板11の外側で切削ブレード59が配線基板11の分割予定ラインに位置合わせされている。切削ブレード59は、ダイヤモンド砥粒等を結合剤で固めて円板状に成形され、スピンドル(不図示)の先端に装着されている。なお、配線基板11を切削することで切削ブレード59が消耗するが、Vブレード39とは異なり切削ブレード59の側面形状の変化が少ないため一定の溝幅に形成することができる。
【0039】
配線基板11の外側で、配線基板11の厚み方向途中までの深さまで切削ブレード59が降ろされ、この切削ブレード59に対して配線基板11が水平方向に切削送りされる。一本の分割予定ラインに沿って配線基板11がハーフカットされると、隣の分割予定ラインに切削ブレード59が位置合わせされて配線基板11がハーフカットされる。この切断動作が繰り返されることで、配線基板11に分割予定ラインに沿った溝27が形成される。これにより、後段のV溝形成工程で配線基板11とVブレード39(
図6A参照)の接触を避けるための逃げ溝が分割予定ラインに沿って形成される。
【0040】
図5Bに示すように、配線基板溝形成工程が実施された後にチップボンディング工程が実施される。チップボンディング工程では、分割予定ラインに沿った溝27で区画された各領域に半導体チップ12が配置される。そして、半導体チップ12の上面の電極にワイヤ19の一端が接続され、配線基板11の表面の電極18にワイヤ19の他端が接続されて、配線基板11に複数の半導体チップ12がワイヤボンディングされる。なお、チップボンディング工程では、ワイヤボンディングに限らず、半導体チップ12の下面の電極を配線基板11の表面の電極に直接接続するフリップチップボンディングが実施されてもよい。
【0041】
図5Cに示すように、チップボンディング工程が実施された後に封止基板作成工程が実施される。封止基板作成工程では、封止用の保持治具31上の配線基板11に対して枠型32の注入口33を通じて供給ノズル34から封止剤24が供給され、半導体チップ12が封止剤24で封止されると共に配線基板11の溝27内に封止剤24が充填される。この状態で、封止剤24が加熱又は乾燥によって硬化されて、配線基板11の上面に樹脂層13(
図5D参照)が形成された封止基板15が作成される。なお、封止基板作成工程の後には、樹脂層を研削で平坦化する平坦化工程が実施されてもよい。
【0042】
図5Dに示すように、封止基板作成工程が実施された後にバンプ形成工程が実施される。バンプ形成工程では、封止基板15が表裏反転されて、封止基板15の樹脂層13側がバンプ形成用の保持治具41で吸引保持される。そして、封止基板15の配線基板11の裏面側が上方に露出され、配線基板11の裏面にバンプ14が配設される。バンプ14は、半導体パッケージ10を各種基板に実装する際の端子や電極になり、配線基板11の配線パターンに応じた所定位置に形成される。封止基板15の個片化前にバンプ14が形成されるため、封止基板15に対するバンプ14の位置ズレが防止される。
【0043】
図6Aに示すように、バンプ形成工程が実施された後にV溝形成工程が実施される。V溝形成工程では、封止基板15の配線基板11側がV溝形成用の保持治具61に保持されており、Vブレード39で樹脂層13側から配線基板11(封止基板15)の厚み方向途中まで切り込まれて、分割予定ライン(溝27)に沿ってV溝25が形成される。この場合、保持治具61の保持面62には、バンプ14を収容する凹部63が形成され、隣り合う凹部63の間に分割予定ラインに対応した逃げ溝64が形成されている。凹部63内は吸引路を通じて吸引源に接続され、凹部63に生じた負圧によって保持治具61の保持面62に封止基板15が吸引保持される。
【0044】
また、Vブレード39が封止基板15の外側で分割予定ラインに位置合わせされ、Vブレード39に対して封止基板15が水平方向に切削送りされる。このとき、Vブレード39の先端が配線基板11の溝27内に入り込み、Vブレード39と配線基板11の接触が避けられている。Vブレード39によって樹脂層13だけが切削されるため、Vブレード39の消耗が抑えられて、成形ドレスタイミングを遅らせてブレードライフを長くすることができる。なお、Vブレード39の先端は、封止基板15に対してV溝25を形成可能な形状であればよく、
図3Dに示すように、切削ブレード40の先端が平坦なV字形状に形成されていてもよい。
【0045】
図6Bに示すように、V溝形成工程が実施された後に個片化工程が実施される。個片化工程では、封止基板15の配線基板11側が保持治具61に保持された状態で、切削ブレード49で封止基板15がフルカットされて、封止基板15が分割予定ラインに沿って個々のパッケージ21に分割される。このとき、切削ブレード49の先端が保持治具61の逃げ溝64に入り込むため、切削ブレード49と保持治具61の干渉が防止されている。なお、配線基板11を切削することで切削ブレード49が消耗するが、Vブレード39とは異なり切削ブレード49の側面形状の変化が少ないため切断面を鉛直に形成することができる。
【0046】
図6Cに示すように、個片化工程が実施された後にシールド層形成工程が実施される。シールド層形成工程では、シールド用の保持治具51の凹部53毎にパッケージ21が配置され、パッケージ21に対して上方から導電性材料が成膜されて、パッケージ21の上面22及び側面23に電磁波シールド層16が形成される。電磁波シールド層16は、銅、チタン、ニッケル、金等のうち一つ以上の金属によって成膜された厚さ数μm以上の多層膜であり、例えば、スパッタ法、イオンプレーディング法、スプレー塗布法、CVD(chemical Vapor Deposition)法、インクジェット法、スクリーン印刷法、真空ラミネート法によって形成されてもよい。
【0047】
このとき、パッケージ21の側面23が上面22から下方に向かって外側に広がるように傾斜しているため、パッケージ21の上面22だけでなく側面23にも電磁波シールド層16が所望の厚みで容易に成膜される。このようにして、パッケージ21の上面22及び側面23が電磁波シールド層16でカバーされた半導体パッケージ10が製造される。電磁波シールド層16がグランドライン17に接続されているため、半導体パッケージ10で生じた電磁ノイズはグランドライン17を通じて半導体パッケージ10外に逃がされる。よって、半導体パッケージ10の周囲の電子部品への電磁ノイズの漏洩が効果的に防止される。
【0048】
なお、第2の実施の形態では、チップボンディング工程前に配線基板溝形成工程が実施される構成にしたが、この構成に限定されない。配線基板溝形成工程は、封止基板作成工程の前に実施されていればよく、チップボンディング工程と封止基板作成工程の間に実施されてもよい。さらに、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、V溝形成工程と個片化工程の間にバンプ形成工程が実施されてもよい。V溝形成後にバンプ14を形成することで、V溝形成工程及び個片化工程の保持治具61にバンプ14を逃がすための凹部63が不要になり、既存の保持治具を使用することができる。
【0049】
以上のように、第2の実施の形態の半導体パッケージの製造方法によれば、第1の実施の形態と同様に、半導体パッケージ10の上面22及び側面23に、十分なシールド効果を発揮できる所定の厚みで電磁波シールド層16を効率的に形成することができる。また、Vブレード39によって樹脂層13だけが切削されるため、Vブレード39の消耗を抑えてブレードライフを長くすることができる。
【0050】
続いて、半導体パッケージの側面の傾斜角度と電磁波シールド層との関係について説明する。
図7は、試験体に設けた電磁波シールド層の厚みを示す図である。
図8は、試験体の側面の傾斜角と電磁波シールド層の厚みとの関係を示す図である。
【0051】
図7に示すように、側面82の傾斜角度θを変えた複数の試験体80を用意し、180℃、8×10
−4Paの条件下でイオンプレーティング法によってシールド層を形成した。側面82の傾斜角度θは、90°、82°、68°、60°、45°とした。また、上面81に形成された上部シールド層83、側面82に形成された側部シールド層84に分けて、走査型電子顕微鏡の観察画像に基づいて上部シールド層83、側部シールド層84の厚みt1、t2を測定した。上部シールド層83及び側部シールド層84の厚みt1、t2は、次式(1)に示すステップカバレッジ(step coverage)の値として算出し、この値と傾斜角度θの関係を
図8にまとめた。
(1)
step coverage=(t2/t1)×100
【0052】
この結果、傾斜角度θが90°から小さくなるにつれてステップカバレッジの値が徐々に大きくなり、傾斜角度θが45°になるとステップカバレッジの値が100%になった。具体的には、傾斜角度θが45°になるように設定した場合、上部シールド層83の厚みt1と側部シールド層84の厚みt2が一致し、試験体80の上面22及び側面23に均一な厚みの電磁波シールド層16が確認された。また、発明者の実験によれば、ステップカバレッジの値が50%を下回ると、側部シールド層84の成膜に時間を要し、プロセスコストが増大するため、ステップカバレッジの値が50%以上となる範囲が好ましい。したがって、半導体パッケージの側面の傾斜角度θは45°以上かつ82°以下であることが好ましく、Vブレード39の先端の角度は90°以上かつ36°以下であることが好ましい。
【0053】
なお、第1、第2の実施の形態においては、配線基板に1つの半導体チップを実装した半導体パッケージを例示したが、この構成に限定されない。配線基板に複数の半導体チップを実装した半導体パッケージを製造してもよい。例えば、
図9Aに示すように、配線基板91に複数(例えば、3つ)の半導体チップ92a、92b、92cを実装し、半導体チップ92a、92b、92cをまとめてシールドした半導体パッケージ90を製造するようにしてもよい。この場合、V溝形成工程においてパッケージ単位で封止基板95にV溝が形成され、個片化工程においてパッケージ単位で封止基板95が分割される。なお、半導体チップ92a、92b、92cは同一機能を有してもよいし、異なる機能を有してもよい。
【0054】
また、
図9Bに示すように、配線基板101に複数(例えば、2つ)の半導体チップ102a、102bを実装し、半導体チップ102a、102bを個別にシールドした半導体パッケージ(SIP)100を製造するようにしてもよい。この場合、V溝形成工程において半導体チップ単位で封止基板105にV溝106が形成され、個片化工程においてパッケージ単位で封止基板105が分割される。これにより、半導体チップ102a、102bの間に電磁波シールド層107が形成され、半導体チップ102a、102bの相互間で電磁ノイズの影響を防止することができる。なお、半導体チップ102a、102bは同一機能を有してもよいし、異なる機能を有してもよい。
【0055】
また、上記の第1、第2の実施の形態においては、V溝形成工程が加工工具としてVブレードを用いて実施されたが、この構成に限定されない。V溝形成工程は、封止基板に対して樹脂層側から溝底に向かってV溝が形成される構成であればよい。例えば、
図10Aに示すように、加工工具として通常の切削ブレード108を用いて封止基板15にV溝を形成するようにしてもよい。この場合、封止基板15の分割予定ライン上の鉛直面Pに対して切削ブレード108を所定角度だけ一方側に傾けて切削した後に、鉛直面Pに対して切削ブレード108を所定角度だけ他方側に傾けて切削する。これにより、切削ブレード108によって封止基板15の上面がV状に切り取られて、分割予定ラインに沿ってV溝が形成される。
【0056】
また、
図10Bに示すように、加工工具としてレーザアブレーション用の加工ヘッド109を用いて封止基板15にV溝25を形成するようにしてもよい。この場合、封止基板15の分割予定ライン上の鉛直面Pに対して加工ヘッド109を所定角度だけ一方向に傾けてアブレーション加工を実施した後に、鉛直面Pに対して加工ヘッド109を所定角度だけ他方側に傾けてアブレーション加工を実施する。封止基板15に対して吸収性を有するレーザ光線によって、封止基板15の上面がV字状に切り取られて、分割予定ラインに沿ってV溝が形成される。なお、レーザアブレーションとは、レーザ光線の照射強度が所定の加工閾値以上になると、固体表面で電子、熱的、光科学的及び力学的エネルギーに変換され、その結果、中性原子、分子、正負のイオン、ラジカル、クラスタ、電子、光が爆発的に放出され、固体表面がエッチングされる現象をいう。
【0057】
また、
図10Cに示すように、加工工具としてプロファイラ115を用いて封止基板16にV溝25を形成するようにしてもよい。プロファイラ115はアルミ基台116の略V字状の加工面にダイヤモンド砥粒から成る砥粒層117を電着して構成されている。プロファイラ115は、Vブレード39と比較して消耗し難く、V字形状を長く維持し続けることができる。
【0058】
また、上記の第1、第2の実施の形態においては、個片化工程が切削ブレードを用いて実施されたが、この構成に限定されない。個片化工程は、封止基板を個々のパッケージを分割する構成であればよく、例えば、アブレーション加工によって封止基板を個々のパッケージに分割してもよい。
【0059】
また、上記の第1、第2の実施の形態では、配線基板が各保持治具に保持されて各工程が実施される構成にしたが、この構成に限定されない。例えば、配線基板の裏面に保護テープが貼着され、テープを介して配線基板を基台等上に載置した状態で各工程が実施されてもよい。また、保持治具は、基板を保持可能であればよく、例えば、ポーラス製の保持面を有するチャックテーブルが適宜使用されてもよい。
【0060】
また、半導体パッケージは、携帯電話等の携帯通信機器に用いられる構成に限らず、カメラ等の他の電子機器に用いられてもよい。
【0061】
また、上記の第1、第2の実施の形態及び変形例においては、半導体チップがワイヤを介して配線基板の電極にワイヤボンディングされた半導体パッケージを製造する構成について説明したが、この構成に限定されない。
図11に示すように、半導体パッケージ10は、半導体チップ12が配線基板11の電極に直接接続されてフリップチップボンディングされていてもよい。
【0062】
また、本実施の形態及び変形例を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記各実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0063】
また、本発明の実施の形態は上記の各実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。
【0064】
また、本実施の形態では、本発明を半導体パッケージの製造方法に適用した構成について説明したが、所定の膜厚のシールド層が形成される他のパッケージ部品の製造方法に適用することも可能である。