(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シランカップリング剤の使用量が、組成物中のエポキシ基を持つエポキシ化合物の総量100質量部に対して、7〜20質量部である、請求項11に記載された繊維強化プラスチック用樹脂組成物。
請求項1〜12の何れかに記載された繊維強化プラスチック用樹脂組成物及び強化繊維を均一に含有する組成物を硬化させてなることを特徴とする、高強度繊維強化プラスチック。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明で使用するエポキシ樹脂(A)は、下記一般式(1)で表されるエポキシ化合物を、少なくとも20質量%含有することが必要である。
但し、上記式(1)におけるa及びbは、それぞれ独立して2〜10の整数を、cは0〜3の整数を表し、R
1、R
2はそれぞれ独立して、炭素数が2〜5の2価の炭化水素基を表し、R
3は単結合、メチレン基、又は−C(CH
3)
2−を表す。
【0016】
上記式(1)で表される化合物の使用量は、エポキシ樹脂(A)の20〜100質量%であるが、硬化物の引張応力をさらに向上させるためには30〜80質量%とすることが好ましく、40〜60質量%とすることがより好ましい。20質量%よりも少ない場合には、硬化物の強度に悪影響はないものの、伸び変位が大きくならないため、硬化物の靱性が著しく低下する。
【0017】
前記式(1)で表される化合物又は前記式(1)で表される化合物を含むエポキシ樹脂を、硬化剤等を使用して反応させて得られる硬化物は、ビスフェノール型エポキシ樹脂のみを硬化させて得られる硬化物と比べて、伸び変位が大きく柔軟性に富んだ物性を有するので、繊維材料と組み合わせて使用した場合でも、繊維の伸びに追従することができ、これによって、強度が高い繊維強化プラスチックを得ることができる。
【0018】
本発明の樹脂組成物を繊維材料と組み合わせて使用する場合には、繊維の伸びに追従させるという観点から、特に前記式(1)で表される化合物の配合量を、エポキシ樹脂(A)の40〜95質量%とすることが好ましく、60〜90質量%とすることがより好ましい。20質量%よりも少ない場合には、繊維材料の伸びに対して硬化物が追従することができず、繊維材料から剥がれるので、得られる繊維強化プラスチックの引張強度が著しく低下する。
【0019】
前記式(1)中のa及びbは、それぞれ独立して、2〜10の整数を表す。aの平均値、及びbの平均値は、硬化物の架橋密度の観点から、それぞれ独立して3〜7の数であることが好ましく、4〜6の数であることがより好ましい。a、及びbの平均値が、それぞれ独立して2より小さい場合には、硬化物の架橋密度が上がりすぎるので、柔軟性が著しく低下する。また、a、bの平均値が、いずれも10よりも大きい場合には、硬化物の架橋密度が下がるため、硬化物の強度が著しく低下する。
【0020】
前記式(1)中のcは0〜3の整数を表す。cの平均値は、使用する際の作業性の観点から、0〜2の数であることが好ましく、0〜1の数であることがより好ましい。cの平均値が3より大きい場合には、樹脂の粘度が上がるので作業性が低下する。
また、式(1)中のR
1及びR
2は、原料の入手が容易であるという観点から、それぞれ独立して、炭素数が2〜4の2価の炭化水素基であることが好ましく、プロピレン基であることが特に好ましい。
【0021】
本発明で使用する、前記式(1)で表される化合物の製造方法は特に制限されるものではない。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、又はビフェノール等の、2つのフェノール性水酸基(芳香環に直接結合している水酸基)を持つ化合物に対し、該化合物が有するフェノール性水酸基1当量に対し、少なくとも2当量のアルキレンオキシドを、必要に応じて触媒を用いて付加させる。次いで、得られたアルキレンオキシド付加体に対し、必要に応じて触媒及び/又は溶媒を用い、エピクロルヒドリンを反応させて、前記式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0022】
前記アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,2−ペンチレンオキシド等が挙げられる。これらのうち、1,2−プロピレンオキシドを使用した場合には、前記式(1)のR
1及びR
2はプロピレン基となる。
アルキレンオキシドの使用量を、例えば、フェノール性水酸基1当量に対して、アルキレンオキシドが2当量となるようにした場合、前記式(1)で表されるa及びbの平均値は、それぞれ理論値で2となる。
【0023】
前記したアルキレンオキシドを付加させるために使用する触媒としては、酸触媒又はアルカリ触媒が挙げられる。酸触媒としては、硫酸、リン酸等のブレンステッド酸、塩化第ニスズ、三フッ化ホウ素等のルイス酸が挙げられる。アルカリ触媒としては、三級アミンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、又は4級アンモニウムの水酸化物、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩等が挙げられる。これらのうち、反応終了後の精製工程が簡便であるという観点から、アルカリ触媒を用いることが好ましく、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属の水酸化物を使用することがより好ましく、アルカリ金属の水酸化物を使用することが最も好ましい。これらの触媒は、それぞれ単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記エピクロルヒドリンを反応させるために使用される触媒としては、前記アルキレンオキシドを付加させる場合に使用されるものの他、テトラブチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム塩等の相間移動触媒が挙げられる。これらのうち、反応終了後の精製工程が簡便であるという観点から、本発明ではアルカリ触媒を用いることが好ましく、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属の水酸化物を使用することがより好ましく、アルカリ金属の水酸化物を使用することが最も好ましい。これらの触媒は、それぞれ単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記エピクロルヒドリンを反応させるために使用される溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記アルキレンオキシド付加物にエピクロルヒドリンを反応させる場合に必要なエピクロルヒドリンの使用量は、アルキレンオキシド付加物が有する水酸基1当量に対して、1〜10当量であり、反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを留去することにより、前記式(1)で表されるエポキシ化合物を得ることができる。この場合、使用するエピクロルヒドリンが10当量に近いほど、前記式(1)で表されるcの平均値が0に近くなる傾向があり、使用するエピクロルヒドリンが1当量に近いほどcの平均値が3まで上昇する傾向となる。
【0027】
本発明においては、エポキシ樹脂(A)として、前記式(1)で表されエポキシ化合物以外の、他のエポキシ化合物を適宜併用することができる。この場合に使用する他のエポキシ化合物の分子構造や分子量等は特に制限されず、分子中にエポキシ基を少なくとも2個有する公知のエポキシ樹脂の中から適宜選択することができる。本発明においては、繊維材料への浸透性の観点から、25℃で液状のものを使用することが好ましい。
【0028】
上記他のエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;シクロヘキサンジメタノールや水添ビスフェノールA等から得られる脂環式エポキシ樹脂;N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物等が挙げられる。
【0029】
本発明においては、これらの材料の中でも、安価に入手が可能である点で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物を繊維材料と組み合わせて使用する場合には、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を使用することが、繊維に対する硬化物の密着性が向上するので好ましい。その場合のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の使用量は、(A)成分のエポキシ樹脂中、0.1〜30質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることがより好ましい。
【0030】
本発明で使用するエポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は、70〜3000であることが好ましく、100〜2000であることがより好ましい。エポキシ当量が70より少ないものは入手が困難であり、使用することが困難である。エポキシ当量が3000より大きいものは、樹脂組成物の架橋密度が下がるため、物性が低下する傾向が顕著となる。
【0031】
本発明においては、所望の粘度に調整して使用するために、反応性希釈剤を併用してもよい。このような反応性希釈剤としては、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させた時の、硬化物の耐熱性やガラス転移温度の低下を抑制する観点から、エポキシ基を少なくとも1つ有する反応性希釈剤を使用することが好ましい。
【0032】
エポキシ基の数が1個の反応性希釈剤としては、例えば、n−ブチルグリシジルエーテル、C
12〜C
14のアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、及び3級カルボン酸グリシジルエステル等が挙げられる。
【0033】
エポキシ基の数が2個の反応性希釈剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、及びネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
また、エポキシ基の数が3個の反応性希釈剤としては、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、及びグリセリントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0034】
本発明で使用するシアネート樹脂(B)の分子構造及び分子量等は、特に制限されることはなく、公知のシアネート樹脂の中から適宜選択することができる。本発明においては、特に分子中にシアネート基(OCN)を少なくとも2個有するものが好ましく、例えば、下記一般式(2−1)〜(2−2)で表される化合物、並びに、これらのプレポリマーが挙げられる。
但し、上記式(2−1)におけるR
aは2価の炭化水素基を表し、R
b及びR
cはそれぞれ独立に、非置換、又は1〜4個のアルキル基で置換されたフェニレン基を表す。
但し、上記式(2−2)におけるnは1〜10の整数を表し、R
dは水素原子、又は炭素数が1〜4のアルキル基である。
【0035】
上記に挙げた化合物の中では、一般式(2−1)に示される化合物を使用することが作業性の観点からより好ましく、下記一般式(2−3)に示される化合物であることが更に好ましい。
但し、R
eは、単結合、メチレン基、−CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2−、又は下記一般式(3−1)〜(3−8)で表される何れかの官能基を表し、R
f、R
g、R
h、R
iは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数が1〜4のアルキル基を表す。
【0036】
但し、上記式(3−3)におけるmは4〜12の整数を表す。
【0037】
本発明におけるシアネート樹脂(B)の使用量は、本発明で使用するエポキシ基を含有するエポキシ化合物の総量100質量部に対し、10〜200質量部であることが好ましく、30〜150質量部であることがより好ましく、50〜120質量部であることが最も好ましい。10質量部よりも少ない場合には、樹脂組成物の強度が向上せず、200質量部よりも多い場合は、樹脂組成物の基材に対する密着性が低下する傾向が顕著となる。
【0038】
本発明で使用する液状の芳香族アミン系硬化剤(C)は、繊維材料に容易に浸透できるように25℃で液状であることが必要であり、特に、芳香環に直接アミノ基が備わっている化合物である。そのような化合物としては、例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジメチルジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジアミノジエチルトルエン、1−メチル−3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−ベンゼンジアミン、1−メチル−3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−ベンゼンジアミン等が挙げられる。
【0039】
本発明においては、これらの硬化剤の中でも、硬化物の耐熱性が向上するという観点から、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、又はジアミノジエチルトルエンが好ましく、ジアミノジエチルジフェニルメタンがより好ましい。
本発明における芳香族アミン系硬化剤(C)の配合量は、エポキシ基を持つ化合物の総量100質量部に対して20〜100質量部であることが好ましく、40〜90質量部であることがより好ましい。20質量部より少ない場合、又は90質量部よりも多い場合には、エポキシ樹脂組成物が完全には硬化し難くなる。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、加熱により硬化させることもできるが、活性エネルギー線吸収性成分(D)を含有する
ので、活性エネルギー線を照射することにより硬化時間をより短くすることができる。硬化時間が短くなることにより、作業時間が短くなり、また、加熱硬化する場合と比べて少ないエネルギーで硬化するため経済的であるだけでなく、環境の面でも有利である。
【0041】
前記活性エネルギー線には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。この活性エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線、赤外線、レーザー光線、可視光線、電離放射線(X線、α線、β線、γ線等)、マイクロ波、高周波等が挙げられる。
本発明では、これらの活性エネルギー線の中でも、より硬化速度を向上させられるという観点から、レーザー光線及び/又は赤外線を使用することが好ましく、赤外線を使用することがより好ましい。
【0042】
前記レーザー光線としては、ルビー、ガラス、YAG(イットリウム、アルミニウム、ガーネットに微量のレアアースが添加された結晶体)を媒体とした固体レーザー;色素を、水やアルコールなどの溶媒に溶解させたものを媒体とした液体レーザー;CO
2、アルゴン、又は、He−Ne混合気体などを媒体とした気体レーザー;半導体の再結合発光を利用した半導体レーザーが挙げられる。本発明においては、安価である上、出力のコントロールが容易な半導体レーザーを使用することが好ましい。
【0043】
本発明で使用するレーザー光線の波長には特に制限はなく、例えば、近赤外線領域(波長がおよそ0.7〜2.5μm)であれば、樹脂組成物を硬化させることができる。
レーザー光線の出力も特に制限されず、例えば、1W〜4kWの範囲で、樹脂組成物を硬化させることができる。
【0044】
レーザーを照射させる時間も特に制限されることはないが、照射面積や出力によりさまざまな範囲となり、例えば、0.2W/mm
2〜10W/mm
2の範囲で樹脂組成物を硬化させることができる。
本発明の樹脂組成物を硬化させる赤外線の波長も、特に制限されることはない。例えば、近赤外線領域(波長がおよそ0.7〜2.5μm)、中赤外線領域(波長がおよそ2.5〜4μm)、及び遠赤外線領域(波長がおよそ4〜1000μm)など、どの領域の波長でも、樹脂組成物を硬化させることができる。
【0045】
本発明の樹脂組成物を硬化させる赤外線を照射する方法としては、赤外線ヒーターを用いて照射する方法が挙げられる。赤外線ヒーターとしては、例えば、ハロゲンヒーター、石英ヒーター、シーズヒーター、及びセラミックヒーターなどが挙げられる。ハロゲンヒーターは、近赤外線領域から中赤外線領域までの波長をもつ赤外線を照射することができ、石英ヒーター、シーズヒーター、及びセラミックヒーターは、中赤外領域から遠赤外領域の波長をもつ赤外線を照射することもできる。これらの中では、電源を入れてから熱源が加熱されるまでの時間が短く、迅速に加熱できるという理由で、ハロゲンヒーターを使用することが好ましい。
【0046】
本発明の樹脂組成物を硬化させる赤外線の波長は、特に制限されるものではないが、使用する活性エネルギー線吸収性成分の吸収領域により、様々な波長領域を使用することができる。例えば、ニグロシン系化合物を使用した場合には、近赤外線領域(波長がおよそ0.7〜2.5μm)において、短時間で本発明の樹脂硬化物を硬化させることができる。
【0047】
本発明の樹脂組成物に含まれる活性エネルギー線吸収性成分(D)は、前記活性エネルギー線を吸収し、熱エネルギーを放出することができる成分であり、放出された熱エネルギーにより樹脂組成物を硬化させることができる。このような活性エネルギー線吸収性成分としては、繊維と繊維の間に樹脂組成物を浸透させるという観点から、25℃で液状のもの、若しくは、他の材料と混合した時に相溶化して液状となるものが好ましい。そのような化合物としては、アニリンブラック、金属錯体、スクエア酸誘導体、インモニウム染料、ポリメチン、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ペリレン系化合物、クオテリレン系化合物、ニグロシン系化合物等が挙げられる。本発明においては、これらの化合物の中でも、容易に入手が可能であるという点から、ニグロシン系化合物を使用することがより好ましい。
【0048】
市販されているニグロシン系化合物としては、オリエント化学工業(株)製の、BONASORBシリーズ、eBIND ACWシリーズ、eBIND LTWシリーズ、eBIND LAWシリーズ、ORIENT NIGROSINEシリーズ、NUBIAN BLACKシリーズ等が挙げられる。本発明においては、これらのニグロシン系化合物の中でも、安価で入手が容易であるという点で、NUBIAN BLACKシリーズを使用することが好ましい。これらのニグロシン系化合物は1種類を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0049】
本発明の樹脂組成物に含有させる活性エネルギー線吸収性成分(D)の配合量は、組成物の総量に対し、0.001〜1質量%の範囲であれば良い。樹脂組成物の硬化速度と発熱(組成物の焦げ付き)のバランスの観点を加味すると、0.01〜0.5質量%であることが好ましく、0.05〜0.2質量%であることが更に好ましい。0.001質量%より少ないと、活性エネルギー線照射だけでは発熱不足となり、樹脂組成物が完全に硬化することが困難になる。また、1質量%よりも多い場合には、樹脂組成物の表面で活性エネルギー線が殆ど吸収され、樹脂組成物の表面のみが炭化して内部まで活性エネルギーが通らないので、樹脂組成物の内部まで完全に硬化させることが困難となる。
【0050】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、更に添加剤を併用してもよい。上記添加剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ベンジルアルコール、コールタール等の非反応性の希釈剤(可塑剤);顔料;γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−N’−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤;
【0051】
イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ−n−ドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリロイルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラキス(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラステアリルチタネート、テトラメチルチタネート、ジエトキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジイソプロピルビス(アセチルアセトナト)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、イソプロポキシ(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、ジ(2−エチルヘキソキシ)ビス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、テトラアセチルアセトネートチタン、ヒドロキシビス(ラクタト)チタン、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等のチタンカップリング剤;
【0052】
ジルコニウムトリブトキシステアレート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル)ブチルジ(ジトリデシル)ホスフィトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリネオデカノイルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(ドデシル)ベンゼン−スルホニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(ジオクチル)ホスファトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(ジオクチル)ピロ−ホスファトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(N−エチレンジアミノ)エチルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(m−アミノ)フェニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリメタクリルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシトリアクリルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシジパラアミノベンゾイルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシジ(3−メルカプト)プロピルジルコネート、テトラノルマルプロポキシジルコニウム、テトラノルマルブトキシジルコニウム、ジルコニウム2,2−ビス(2−プロペノラトメチル)ブチラート,ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等のジルコニウム系カップリング剤;
【0053】
キャンデリラワックス、カルナウバワックス、木ろう、イボタロウ、みつろう、ラノリン、鯨ろう、モンタンワックス、石油ワックス、脂肪酸ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル、芳香族エステル、芳香族エーテル等の潤滑剤;増粘剤;チキソトロピック剤;酸化防止剤;光安定剤;紫外線吸収剤;難燃剤;消泡剤;防錆剤等の常用の添加剤を挙げることができる。
【0054】
上記した添加剤の中では、繊維への密着性が向上するという点で、本発明においてはシランカップリング剤を添加することが好ましく、入手が容易で安価であるという点で、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、及び/又はγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを添加することがより好ましく、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを添加することが最も好ましい。
上記したシランカップリング剤の配合量は、エポキシ基を持つ化合物の総量100質量部に対し、0.1〜50質量部であることが好ましい。樹脂との混和性が良好であり、繊維との密着性が向上するという観点から、7〜20質量部配合させることが特に好ましい。
【0055】
本発明の樹脂組成物は、炭素繊維、ガラス繊維等を強化繊維とする繊維強化プラスチックのマトリックス樹脂として好適である。上記強化繊維の種類は特に限定されず、例えば炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、シリコーンカーバイド繊維等を単独で用いてもよいし、2種類以上のハイブリッド繊維として用いてもよい。
【0056】
上記した強化繊維の形態としては、高強度・高弾性率繊維を一方向に配列させたいわゆるトウシートや、前記繊維糸状を一方向又は二方向に配列させた一方向性織物や二方向性織物、三方向に配列させた三軸織物、多方向に配列させた多軸織物等が挙げられる。トウシートにおいては、基材への樹脂含浸性を向上させるために、ストランド間に適度の隙間を確保するように前記繊維を配列することが好ましい。
【0057】
本発明の樹脂組成物を使用した繊維強化プラスチックを成形するための方法は、特に限定されるものではない。例えば、押し出し成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、真空成形法、射出成形法、RTM(Resin Transfer Molding)成形、VaRTM(Vaccum assist Resin Transfer Molding)成形、積層成形、ハンドレイアップ成形、フィラメントワインディング成形法等が挙げられる。
【0058】
本発明の樹脂組成物を用いて得られる繊維強化プラスチックは、各種の用途に利用することができる。例えば、自動車、船舶及び鉄道車両等の移動体の構造材、ドライブシャフト、板バネ、風車ブレード、圧力容器、フライホイール、製紙用ローラー、屋根材、ケーブル、及び補修補強材料等の一般産業用途;胴体、主翼、尾翼、動翼、フェアリング、カウル、ドア、座席、内装材、モーターケース、アンテナ等の航空宇宙用途;ゴルフシャフト、釣り竿、テニスやバドミントンのラケット用途、ホッケー等のスティック用途、及びスキーポール用途等のスポーツ用途が挙げられる。
【実施例】
【0059】
以下本発明を、実施例及び比較例に基づいて更に具体的に説明する。尚、以下の実施例等における「%」は、特に記載が無い限り「質量%」である。
【0060】
[
参考例1]
500mLディスポカップに、エポキシ樹脂(A)として、アデカレジンEP−4901E(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、(株)ADEKA製、エポキシ当量:170g/eq.)を80g、アデカレジンEP−4005(ビスフェノールAにプロピレンオキシドが平均5当量付加した付加物のエポキシ化物(一般式(1)の構造式におけるa及びbの平均値がそれぞれ5に相当する化合物)、(株)ADEKA製、エポキシ当量:510g/eq.)を60g、シアネート樹脂(B)として、LECy(1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン;ロンザ社製)を60g、25℃で液状の芳香族アミン系硬化物(C)として、カヤハードAA(ジアミノジエチルジフェニルメタン、日本化薬(株)製)を70g加え、25℃にて5分間スパチュラで撹拌した。その後、遊星式攪拌機を使用して更に撹拌し、配合物を得た。
【0061】
<可使時間測定方法>
上記配合物100gを500mLのガラス瓶に保存し、23℃で55時間静置した後、前記ガラス瓶を横転させて配合物の流動性の有無を確認し、「良」、又は「不良」の評価を行った。
良:流動性があり、使用可能
不良:横転させてから10秒後も、初期の位置から動かず、流動性がないため使用不可能
上記配合物を80℃で5時間加熱し、その後更に150℃で2時間加熱して硬化させ、硬化物の、曲げ試験、引張試験及び圧縮試験を行って硬化物を評価した。それぞれの試験方法を以下に示す。
【0062】
<曲げ試験方法>
硬化物を用いて、JIS K 7171に準拠した方法に従って試験片を作製し、最大点応力、最大応力時ひずみ、破断時応力、破断時ひずみ及び弾性率を測定した。また、最大点応力に対する破断点応力の割合((破断点応力/最大点応力)×100(%))を計算した。
【0063】
<引張試験方法>
硬化物を用いて、JIS K 7161−1に準拠した方法に従って試験片を作製し、最大点応力、最大点伸び、破断時応力、破断時伸び及び弾性率を測定した。
【0064】
<圧縮試験方法>
硬化物を用いて、JIS K 7181に準拠した方法に従って試験片を作製し、最大点応力、最大点ひずみ及び弾性率を測定した。
【0065】
[
参考例2〜7、比較例1〜4]
表1に示す通りに配合したこと以外は、
参考例1と同様の操作を行い、それぞれの配合物を得た。得られた各配合物を評価した結果を表1に示す。
【0066】
*1 EP−4000:ビスフェノールAプロピレンオキシド平均1当量付加物のエポキシ化物(一般式(1)の構造式において、a及びbの平均値がそれぞれ1に相当する化合物)、(株)ADEKA製、エポキシ当量:320g/eq.
*2 EPU−11F:ウレタン変性エポキシ樹脂、(株)ADEKA製、エポキシ当量:320g/eq.
*3:JEFFAMINE T−403:ポリエーテル骨格含有脂肪族ポリアミン、Huntsman社製
【0067】
表1からわかるように、本発明の樹脂組成物
から(D)成分を除いた場合でも、可使時間が良好で
あると共に加熱硬化が可能であり、樹脂組成物の硬化物は、曲げ試験、引張試験及び圧縮試験の項目全てにおいて、良好であることが確認された。比較例1〜3の樹脂組成物を硬化させた硬化物は、曲げ試験及び圧縮試験の項目においては良好であるものの、引張試験の項目においては、最大点応力及び最大応力時の伸びが本発明より低く、満足な結果が得られなかった。比較例4では、可使時間が短く、作業性において著しく悪いものとなったため、その後の試験を実施しなかった。
【0068】
[
参考例8]
500mLのディスポカップに、エポキシ樹脂(A)として、アデカレジンEP−4901Eを25g及びアデカレジンEP−4005を75g、シアネート樹脂(B)としてLECyを100g、25℃で液状の芳香族アミン系硬化物(C)としてカヤハードAAを70g加え、25℃にて5分間スパチュラで撹拌した。その後、遊星式攪拌機を使用して更に撹拌し、配合物を得た。
【0069】
ガラス繊維(UDR S14EU970−01190−00100−100000、SAERTEX社製)100gに対し、得られた配合物33gを、ローラーを用いて含浸させた。樹脂を含浸させたガラス繊維の硬化性及び繊維表面の状態を、以下に示す方法で測定した。評価した結果を表2に示す。
【0070】
<硬化性>
樹脂を含浸させたガラス繊維を150℃の恒温槽に入れ、触感により、タックフリーになるまでにかかる硬化時間を測定した。
【0071】
<繊維表面状態>
上記の硬化性を確認する際に得られた、樹脂硬化後の樹脂繊維複合物(繊維強化プラスチック)について、JIS K 7017準拠の方法に従い、曲げ試験を行った。曲げ試験によって破断した繊維強化プラスチックの断面を、走査型電子顕微鏡(DSC6220、SII社製)により、以下のように確認した。
A:繊維表面の全体に樹脂が付着している
B:繊維表面の一部に樹脂が付着している
C:繊維表面には樹脂がほとんど付着していない
A又はBの状態の場合、曲げ試験による破断時に、樹脂硬化物が凝集破壊しており、硬化物と繊維が密着していることが確認できる。Cの状態の場合、曲げ試験による破断時に、樹脂硬化物が繊維と界面剥離をしており、硬化物と繊維が密着していないことが確認できる。A又はBの評価状態を合格と判断した。A〜Cの状態を、それぞれ
図1〜
図3に示す。
【0072】
[
参考例9〜16、比較例5〜8]
表2又は表3に示すような配合量にしたこと以外は、
参考例8の場合と同様の操作を行い、樹脂を含浸させたガラス繊維の硬化性及び繊維表面の状態を測定した。評価結果をそれぞれ表2及び表3に示す。
【0073】
*4 EP−4088S:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、(株)ADEKA製
*5 KBM−403:γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業(株)製
【0074】
【表3】
*6 EH−3636AS:粉末状ジシアンジアミド型潜在性硬化剤、(株)ADEKA製
【0075】
表2の結果から分かるように、本発明の樹脂組成物
から(D)成分を除いた参考樹脂組成物を使用した繊維強化プラスチックは、何れも150℃、3時間で硬化すること、及び、曲げ試験後の繊維表面の状態を確認すると、樹脂硬化物が繊維に密着していることが確認された。このことは、曲げ試験により繊維が延伸した際に、樹脂硬化物が繊維の延伸に追従していることを証明している。
更に、樹脂組成物中に、添加剤として、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を添加した
参考例11〜13、及びシランカップリング剤を添加した
参考例14〜16では、添加剤の量を増やすことにより、密着性がより向上することが確認された。
【0076】
表3から分かるように、一般式(1)で表される化合物を使用しない樹脂組成物を用いた比較例5〜7の場合には、硬化時間については、本発明の樹脂組成物を使用した時と同等であった。しかしながら、曲げ試験後に評価した繊維表面には、何れも繊維表面に樹脂硬化物が密着しておらず、樹脂硬化物が繊維表面から界面剥離をしていることが確認された。また、比較例8の場合には、樹脂組成物が硬化しなかったため、その後の試験を実施できなかった。硬化しなかった原因としては、粉末の潜在性硬化剤が繊維内部まで入り込めず、繊維表面に留まって硬化不良を起こしたものと考えられる。
【0077】
[実施例
1]
500mLのディスポカップに、エポキシ樹脂(A)として、アデカレジンEP−4901Eを25g及びアデカレジンEP−4005を75g、シアネート樹脂(B)としてLECyを100g、25℃で液状の芳香族アミン系硬化剤(C)としてカヤハードAAを70g、並びに、光吸収性成分(D)として、NUBIAN BLACK TN−870(ニグロシン系黒色染料、オリエント化学工業(株)製)0.27gを加え、25℃で5分間、スパチュラで撹拌した。その後、遊星式攪拌機を使用して更に撹拌し、配合物を得た。
【0078】
ガラス繊維(UDR S14EU970−01190−00100−100000、SAERTEX社製)100gに対し、得られた配合物33gを、ローラーを用いて含浸させた。樹脂組成物を含浸させたガラス繊維に、レーザー光(出力が10W、光の波長が915nm)を照射し、触感により、タックフリーになるまでにかかるレーザー光の照射時間を測定し、評価結果を表4に示した。
樹脂組成物を硬化させた後のガラス繊維(繊維強化プラスチック)の繊維表面状態を、
参考例8〜16の場合と同様にして評価した。
【0079】
[実施例
2]
レーザー光の代わりに、ハロゲンヒーター(QIR200V2000W/444、岩崎電気(株)製)を用いて赤外線を照射すること以外は、実施例
1の場合と同じ操作により、赤外線の照射時間を測定し、硬化させて得られた繊維強化プラスチックについて、ガラス繊維の繊維表面状態を確認した。
【0080】
[実施例
3]
レーザー光の代わりに、セラミックヒーター(FFE−1000、日本ヒーター(株)製)を用いて赤外線を照射すること以外は、実施例
1の場合と同じ操作により、赤外線の照射時間を測定し、硬化させて得られた繊維強化プラスチックについて、ガラス繊維の繊維表面状態を確認した。
【0081】
[実施例
4]
レーザー光の代わりに、石英ヒーター(FQE−650、日本ヒーター(株)製)を用いて赤外線を照射すること以外は、実施例
1の場合と同じ操作により、赤外線の照射時間を測定し、硬化させて得られた繊維強化プラスチックについて、ガラス繊維の繊維表面状態を確認した。
【0082】
[実施例
5及び6]
表4に示す配合としたこと以外は、実施例
1の場合と同様の操作を行い、レーザー光の照射時間を測定し、硬化させて得られた繊維強化プラスチックについて、ガラス繊維の繊維表面状態を確認した。
【0083】
[実施例
7及び8]
表4に示す配合で行ったこと以外は、実施例
2の場合と同様の操作を行い、赤外線の照射時間を測定し、硬化させて得られた繊維強化プラスチックについて、ガラス繊維の繊維表面状態を確認した。
【0084】
[実施例
9]
レーザー光の代わりに、150℃に設定した恒温槽内で硬化させたこと以外は、実施例
1の場合と同じ操作を行い、触感によりタックフリーになるまでにかかる硬化時間を測定し、硬化させて得られた繊維強化プラスチックについて、ガラス繊維の繊維表面状態を確認した。
[実施例
10〜12]
表4に示す配合で行ったこと以外は、実施例
1の場合と同様に操作を行い、レーザー光の照射時間を測定し、硬化させたガラス繊維の繊維表面状態を確認した。
【0085】
[比較例9]
NUBIAN BLACK TN−870を入れないで配合したこと以外は、実施例
1の場合と同様の操作を行ったが、レーザー光を3時間照射しても樹脂が硬化しなかったため、その後の評価は実施しなかった。
【0086】
*1 EP−4088S:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、(株)ADEKA製
*2 KBM−403:γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業(株)製
【0087】
表4の結果からわかる通り、活性エネルギー線吸収性成分(D)を含有する本発明の樹脂組成物を使用した繊維強化プラスチックについても、樹脂硬化物が繊維に密着していることが確認された。このことは、曲げ試験により繊維が延伸した際に、樹脂硬化物が繊維の延伸に追従していることを証明している。また、活性エネルギー線によって硬化させた本発明の実施例では、熱によって硬化させた場合と比べ、極めて短時間で樹脂を硬化させることができることが確認された。更に、樹脂組成物中に、添加剤として、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を添加した実施例
7及びシランカップリング剤を添加した実施例
8の場合には、密着性がより向上することが確認された。