(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステップf)における還元が、100から400℃未満、好ましくは120から300℃、特に好ましくは150から250℃、特に180から220℃で実行される、請求項1に記載の方法。
触媒活性成分が、その塩化物、硝酸塩、ニトロシル硝酸塩、酢酸塩、酸化物、水酸化物又はアセチルアセトネートの形態で使用される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0003】
触媒を生成する様々な方法が、先行技術から知られている。方法は、使用する活性成分の前駆体という点で、又は炭素担体上の活性成分の沈着/処理の様式において、本質的に異なる。
【0004】
EP 0 071 787は、ルテニウム-鉄-炭素水素化触媒、及びまたその生成、並びに不飽和カルボニル化合物の選択的水素化のためのその触媒の使用を開示している。使用するRu-Fe-炭素触媒は、塩化ルテニウム溶液で活性炭粉末を含浸し、乾燥させ、その後、酸化鉄と混合することによって生成される。触媒は、500℃で水素を用いて還元される。
【0005】
しかし、塩化物は、腐食性が高いので、塩化物の使用には技術的問題がある。したがって、活性成分の含浸及び乾燥は、高価な耐食器具で実行されなければならない。還元は、還元炉を損傷し得るHClを生成し、塩化物は、触媒上に残り、触媒が水素化に使用される場合、生成反応器中の腐食を引き起こし得る。
【0006】
ルテニウムの硝酸塩が、塩化物の代わりに使用される場合、硝酸塩/炭素混合物は爆発性であり得るので、安全上の問題を引き起こし得る。記載の方法のさらに不都合な点は、Fe
2O
3での逐次ドーピングであり、これは、追加のプロセスステップを必要とする。
【0007】
アルファ、ベータ-不飽和カルボニル化合物(α,β-不飽和カルボニル化合物)のための様々な水素化方法は、先行技術から、同様に知られている。しかし、記載の方法及び使用触媒が使われる場合、対応するアルコールの高い選択性を得ることは困難である。例えば、シトラールの水素化において、アルデヒド基ばかりでなくオレフィン二重結合も水素化されるか、又はアルデヒド基と共役した二重結合のみが水素化される可能性があり、その結果、シトロネロール又はシトロネラールなどの副産物が、不飽和アルコール、ゲラニオール及びネロールに加えて、形成され得る。
【0008】
EP 1 317 959は、触媒が、400から600℃で、水素流中で還元される、ルテニウム-鉄-炭素担体触媒を生成する方法を開示している。良好な結果が、この方法又はこの様に生成された触媒を使用して、達成される。
【0009】
経済的及び環境保護的理由の両方のために、さらにもっと、環境適合性及び経済性において一層の改良を達成するために、触媒及びその生成方法を改良することが望ましい。これは、特に、産業上の利用にとって、重要な側面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
本発明は、最初に、
a)水に担体を導入し、
b)触媒活性成分をその金属塩の溶液の形態で同時に添加し、
c)塩基の添加により担体上に触媒活性成分を共沈させ、
d)担体懸濁液の水相から触媒を分離し、
e)触媒を乾燥させ、
f)触媒を水素流下、100から400℃未満、好ましくは120から300℃、特に好ましくは150から250℃、特に180から220℃で還元し、
g)比較的不燃性の液体下で還元反応器から触媒を取り出す、
又は
触媒上に希酸素流を通すことにより、触媒を不動態化する、
又は
触媒上に希酸素流を通すことにより、触媒を不動態化し、比較的不燃性の液体下で還元反応器から触媒を取り出す
ことによって、炭素担体上に、0.1から10重量%のルテニウムに加えて、0.1から5重量%の鉄を含むルテニウム-炭素担体触媒を生成する方法を提供する。
【0024】
本発明の一改変形態において、ステップf)は、190から210℃、特に200℃で実行される。
【0025】
本発明の方法におけるステップ(b)及び(c)は、連続又は同時のいずれかで実行できる。
【0027】
【化1】
(式中、
R
1、R
2はそれぞれ、互いに独立して、同じ又は異なり、それぞれ、水素、又は飽和若しくは一価不飽和若しくは多価不飽和の、直鎖若しくは分枝の、場合によって置換されているC
1〜C
20-アルキル基、場合によって置換されているアリール基、又は場合によって置換されている複素環基である)
のカルボニル化合物から
一般式II
【0028】
【化2】
(式中、R
1、R
2は、上に定義されている通りである)
の対応するアルコールへの選択的液相水素化のための、本発明の方法によって生成されたルテニウム-鉄-炭素担体触媒の使用を提供する。
【0029】
カルボニル化合物として、飽和及びオレフィン不飽和カルボニル化合物の両方を使用することが可能である。
【0030】
本発明では、飽和又は一価不飽和又は多価不飽和の、直鎖又は分枝の、C
1〜C
20-アルキル基は、別段の指示がない限り、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプテニル、オクチル、ノニル、デシル、1-プロペニル、2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、イソプロペニル、1-ブテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル若しくはデセニル基又はさらに以下に示されている通り使用される化合物に対応する基である。
【0031】
本発明では、アリール基は、ベンジル、フェニル又はナフチル基である。
【0032】
本発明では、複素環基は、例えば、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピペラジン、イミダゾール、フラン、オキサゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、1,2,3-トリアゾール若しくは1,2,4-トリアゾール、チアゾール、チオフェン又はインドール環である。
【0033】
置換基は、メチル、エチル、プロピル、i-プロピル、ブチル、t-ブチル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ニトロ又はアミノ基であり得る。
【0034】
飽和カルボニル化合物として、例えば、3,7-ジメチルオクタン-1-アール及びその異性体、テトラヒドロゲラニルアセトン、ヘキサヒドロファルネシルアセトン、6-メチルヘプタノン又はイソバレルアルデヒドが使用される。
【0035】
オレフィン不飽和カルボニル化合物として、例えば、シトロネラール、H-ゲラニルアセトン、H-ネロリドール、メチルビニルケトン、メシチルオキシド、プソイドイオノン、ジヒドロファルネシルアセトン、リスメラール、メチルヘキセノン、特に好ましくはシトロネラール、さもなければα,β-不飽和カルボニル化合物、例えば、アクロレイン、メタクロレイン、クロトンアルデヒド、プレナール、ファルネサール又はシトラール、特に好ましくはシトラールを使用することが可能である。
【0036】
本発明の方法のステップg)で言及される比較的不燃性の液体は、80℃を超える、好ましくは100℃を超える引火点を有する液体、例えば、水、ゲラニオール、ペンタンジオール、エチレングリコール若しくはネロール、又はそれらの混合物、特に好ましくはゲラニオール若しくはネロール、又はそれらの混合物である。
【0037】
本発明の一改変形態において、水が、ステップg)において、比較的不燃性の液体として使用される。
【0038】
驚くべきことに、活性成分のルテニウム及び鉄の金属塩の同時沈殿が、触媒活性、選択性及び耐用寿命の改良をもたらす。水酸化物の形態での金属の沈殿は、先行技術において示された、腐食及び爆発の危険性の問題を回避する。
【0039】
活性成分のルテニウム及び鉄の金属塩として、塩化物、硝酸塩、ニトロシル硝酸塩、酢酸塩、酸化物、水酸化物、アセチルアセトネート、好ましくは、塩化物及び硝酸塩を使用することが可能である。
【0040】
触媒は、本発明の方法を用いて、固定床触媒又は懸濁触媒のいずれかとして、生成できる。
【0041】
本発明では、炭素担体材料は、例えば、グラファイト、カーボンブラック又は活性炭であるが、好ましくは活性炭、例えば、NORIT SX Plus(登録商標)である。触媒が、懸濁触媒として生産されることになるか、固定床触媒として生産されることになるかに応じて、炭素担体材料は、粉末形態で、又は押出成形物、球体、破砕材料等の形態で、使用される。炭素担体は、例えば、ドーピングの前に、硝酸、酸素、過酸化水素、塩酸等を用いる酸化によって、前処理できる。
【0042】
詳しくは、本発明による触媒の生成は、以下の通り実行される。
【0043】
懸濁触媒を生成するために、炭素担体を、水中に懸濁し(ステップa))、結果として生じた担体懸濁液を、さらなる前処理なしに、すなわち、特定のpHを設定しないで、又はさらなる工程のために、酸、例えばHNO
3を用いて6未満のpHを設定するか、若しくは塩基、例えばNaOHを用いて8を超えるpHを設定するか、のいずれかで使用する。
【0044】
ステップb)において、活性成分のルテニウム及び鉄を、その金属塩の溶液の形態で、同時に添加する。添加は、好ましくは、高温、特に好ましくは50から95℃の範囲の温度、特に好ましくは70から90℃の温度の懸濁液で実行される。その後、担体上に触媒活性成分を沈殿させるために、塩基、例えば、Na
2CO
3、NaHCO
3、(NH
4)
2CO
3、NH
3、尿素、NaOH、KOH又はLiOH、好ましくはNaOHを、ゆっくり添加し、pHを、6から14、好ましくは8から12の範囲、特に好ましくは9の値まで上昇させる(ステップc))。塩基の添加は、好ましくは、高温で、特に好ましくは50から95℃の範囲の温度で、好ましくは、70から90℃の温度で実行される。塩基の添加はまた、例えば、懸濁液のpHを一定に、好ましくは8から14、特に好ましくは9のpHに維持するために、金属塩溶液の添加と同時に、実行できる。ルテニウム及び鉄は、沈殿後、水酸化物として主に存在しているので、沈殿に続く、洗浄及び水相からの触媒の分離(ステップd))において、塩素アニオン又は硝酸アニオンを、問題とならないほどの低含有量まで洗い落とす。
【0045】
その後、濾過ケーキを、減圧又は不活性ガス下で乾燥させ(e))、次に、触媒を、場合により窒素などの不活性ガスで希釈された水素流中、100℃未満、主に100から400℃未満、好ましくは120から300℃、特に好ましくは150から250℃、特に180から220℃で還元する(f))。水素流中の水素含有量は、5から100体積%、好ましくは5から50体積%の範囲であり、一改変形態において、含有量は、10体積%であり得る。
【0046】
最終的に、触媒を次に、40℃より低い温度まで冷却し、その後、例えば、水又は比較的不燃性の液体下で還元反応器から取り出す(g))。
【0047】
還元反応器からのこの取り出しの代わりに、又はこの取り出しに加えて、不動態化を、実行できる。
【0048】
本発明の一改変形態において、不動態化は、触媒上に希酸素流を通すことによって実行される(g))。
【0049】
本発明の一改変形態において、不動態化は、最初に、触媒上に純窒素を通し、次に、ゆっくり、例えば、1時間かけて、空気によって、純粋な空気が触媒上を通るようになるまで窒素を置き換えることによって、室温で実行される。
【0050】
希酸素流として、優勢とならない量(すなわち、50体積%未満)の酸素を含む、任意のガス流を使用することが、原理上、可能である。例としては、<50体積%の酸素含有量を有する不活性ガス/酸素混合物である。
【0051】
不活性ガスとして、特に、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、CO
2が言及されてよく、窒素が、特に好都合である。
【0052】
10体積%未満、好ましくは5体積%未満の割合の酸素が存在する混合物、特に、不活性ガス中1体積%の酸素の混合物が、特に好都合であり、好ましい実施形態において、不活性ガスは、窒素である。
【0053】
場合によって、追加の窒素によって希釈された、希酸素流としての空気を使用することが、同様に可能である。
【0054】
本発明の一改変形態において、還元(f)は、190から210℃、特に200℃で実行される。
【0055】
固定床触媒の生成は、ステップ(a)において、粉末担体材料の代わりに、押出成形物、球体、破砕材料等を使用して、懸濁触媒について記載されたプロセスに類似の様式で実行される。これらの成形体の代表長さ(直径、長さ等)は、一般的に、1mmを超える。水中で押出成形物を分散させる場合、磨耗を最小化するために、その機械的ストレスを、可能な限り低く維持することを確実にするよう、注意しなければならない。触媒の合成において使用する前に、弱く付着している微細な炭素粒子を除去するために、押出成形物を、水で洗浄することは、好都合である。
【0056】
本発明による触媒は、一般的に、炭素担体、好ましくは、活性炭上に、0.1から10重量%のルテニウムを含む。
【0057】
触媒のBET表面積は、生成方法のために使用される炭素担体に応じて、約100から1500m
2/g、好ましくは約800から1200m
2/gである。ルテニウム微結晶の粒径は、CO吸着法を用いて測定され、大部分は10nm未満であり、したがって、ルテニウム-炭素触媒についての文献から知られている値に一致する。
【0058】
触媒中に含まれるルテニウム及び鉄の重量%について示された値は、常に、本特許出願における触媒の乾燥質量に対するものである。
【0059】
本発明の方法を用いて生成された懸濁触媒の粒子は、触媒作用のための粒子が、懸濁液中に残り、沈降しないので、水素化が実行される混合物の濃度(density)と、(ほとんど)等しい又はそれ未満である濃度を有する。
【0060】
本発明によって生成された触媒は、カルボニル化合物の選択的水素化にとって、好ましくは、不飽和カルボニル化合物の選択的水素化にとって、特に好ましくは、シトラールからゲラニオール若しくはネロールへの水素化又はシトロネラールからシトロネロールへの水素化にとって、特に重要である。
【0061】
本発明によって生成された触媒は、驚くほど高い選択性で、カルボニル化合物のアルデヒド基を水素化する。
【0062】
水素化方法は、懸濁液又は固定床において、連続的又はバッチ式のいずれかで実行できる。操作の連続方式は、特に好都合である。
【0063】
従来の反応器の概念は、例えば、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6版、2000 Electronic Releaseに記載されている通り、懸濁液の改変形態又は固定床の改変形態にとって、可能である。
【0064】
連続的又はバッチ式の懸濁液方法は、例えば、EP 0 947 493又はUS 5,939,589に記載されている通り、実行できる。操作のバッチ式懸濁液方式及び操作の連続的懸濁液方式の両方において、触媒は、微粉化形態で使用され、粒径は、レーザー光散乱法を用いて測定されたそれぞれの場合において、1mm未満、好ましくは1から100μm、特に好ましくは10から50μmの範囲である。本発明の一改変形態において、粒径分布は、15から25μmの範囲内のd50を有する。この目的のための適切な装置は、例えば、Mastersizer 2000又はMastersizer 3000であり、両者とも、Malvern company製である。
【0065】
固定床の改変形態の場合において、触媒は、固定床触媒にとって通例の形、例えば、押出成形物、破砕材料、ペレット又は球体の形態で、使用される。典型的な押出成形物の直径は、1から5mmの範囲内であり、押出成形物の長さは、1から20mmの範囲内である。反応器は、下向流方式又は上向流方式で操作できる。
【0066】
反応は、懸濁液方式又は固定床改変形態の両方において、大気圧で又は1から200bar、好ましくは10から100bar、特に好ましくは20から50barの圧力下で、実行される。温度は、25から200℃、好ましくは60から100℃の範囲内である。反応は、溶媒を用いる又は溶媒を用いない、のいずれかで実行できる。溶媒として、低級アルコール、例えば、メタノール、エタノール又はイソプロピルアルコールを使用することが可能である。さらに、トリメチルアミンなどの有機塩基を、必要であれば、添加することができる。
【0067】
本発明によって生成された触媒によるカルボニル化合物の水素化は、好ましくは、第三級アミンの存在下で実行される。
【0068】
原理上、任意の第三級アミンが、適切であり、したがって、その化学的性質は、任意の第三級アミンがその官能基の結果として反応パートナーと別法で反応し得ない限り、重要ではない。
【0069】
可能なアミンは、例えば、EP 0 071 787において言及されているアミンである。
【0070】
アミンの量は、非常に広い範囲内で、多様であり得る。
【0071】
本発明の一改変形態において、アミンの量は、使用されるカルボニル化合物の量の1から5重量%である。
【0072】
本発明の/本発明により生成された触媒は、EP 1 317 959に記載されている触媒と比較して、長期安定性及び活性の上昇を示す。EP 1 317 959において記載されている通り触媒を使用する場合より、本発明の/本発明により生成された触媒を使用する場合のほうが、より高い変換が、より急速に達成され、連続した使用での変換は、EP 1 317 959より高い(
図3参照)。
【0073】
鉄化合物の還元が、100から400℃未満、好ましくは120から300℃、特に好ましくは150から250℃、特に180から220℃の還元温度で起こるので、これらの結果は、驚きであった。鉄は、これらの温度、特に180から220℃で還元できないが、それにもかかわらず、ルテニウムと組み合わせると、これらの温度ですら還元が引き起こされ、これは、今まで知られていなかったし、したがって、より高い温度が、先行技術においては使用されていた。還元された形態で存在する触媒は、X線光電子分光法(XPS)及びまた昇温還元法(TPR)によって、確認し得る。
【0074】
本発明の/本発明により生成された触媒の活性及び長期安定性が上昇したことに起因して、生成プラントの能力及び操業時間が、上昇し得るし、これによって、特に産業用プラントの場合、多大な環境保護的及び経済的に好都合な点が実現する。
【0075】
本発明のさらに好都合な点は、より低い還元温度に起因して、還元された触媒が、不動態化しなくてさえも、水中へ直接導入できることであり、これは、時間及び金銭を節約し、したがって、かなりプロセス工学上好都合であり、環境保護的/経済的に好都合である。さらに、同じ量の生成物のために必要とされる触媒の量が、より少ない。
【0076】
本発明の様々な実施形態は、例えば、様々な従属請求項の実施形態に限らず、任意の所望の方法において互いに組み合わせることができる。
【0077】
本発明を、以下の非限定的実施例を参照して、ここに説明する。
【実施例】
【0078】
[実施例1]
(EP 1 317 959の実施例1Aから1Cに類似)
A)活性炭100gを、濃HNO
3500mlと混合し、1リットルのフラスコ内で6時間、80℃で撹拌した。冷却後、混合物を、濾過し、濾過ケーキを、蒸留水10リットルで洗浄した。
【0079】
湿った炭素を、撹拌容器に戻し、水2.5リットル中に懸濁し、還流下で80℃まで加熱した。次に、水375ml中の塩化ルテニウム13.11g及び塩化鉄5.15gの溶液を、撹拌しながら120分かけて滴下添加した。金属塩溶液の添加後、懸濁液のpHは、1.4であった。次に、pHを、1Mの水酸化ナトリウム溶液をゆっくり滴下添加することによって、9まで上昇させ、NaOH約400mlを、ここで消費した。その後、混合物を、さらに1時間、撹拌し、次に冷却した。触媒を、ガラス吸込みフィルターに移し、合計40リットルの水で洗浄し、真空乾燥オーブン中で、6時間、80℃で乾燥させた。次に、乾燥粉末を、3時間、ロータリーバルブオーブン中で、200℃、H
270%及びN
230%の気流中で還元した。還元が完了した後、粉末を、窒素下で冷却し、窒素中に酸素1%からなるガス混合物を用いて不動態化した。完成した触媒は、0.05重量%未満の塩化物(chloride)含有量を有した。さらに、以下の含有量(重量%)が測定された。Na:2.8、Ru:5.2、Fe:1.1。
【0080】
B)塩化ルテニウム及び塩化鉄の代わりに、ニトロシル硝酸ルテニウム及び硝酸鉄(III)を使用して、Aに記載した手順を繰り返した。完成した触媒は、ルテニウム含有量5.1重量%、鉄含有量1.1重量%、硝酸塩(nitrate)含有量<0.01重量%及びNa含有量2.1重量%を有した。
【0081】
C)Aに記載した手順を繰り返したが、より少ないルテニウム及び鉄含有量を、活性炭に適用した。完成した触媒は、ルテニウム含有量2.8重量%、鉄含有量0.54重量%、塩化物含有量0.02重量%及びNa含有量3.8重量%を有した。
【0082】
D)活性炭Norit SX Plus(登録商標)110gを、さらに前処理しないで、水2リットルが入った撹拌フラスコ中に導入し、懸濁し、還流下で80℃まで加熱した。次に、pHを、NaOH水溶液(1mol/l)を添加することによって、9まで上昇させた。次に、ニトロシル硝酸ルテニウム及び硝酸鉄の溶液300ml(Ru5.85g、及びFe1.17gに対応する濃度)を、1時間かけて80℃で滴下添加し、pHは、NaOH水溶液の同時添加によって、同時に約9に維持した。混合物を、さらに1時間、80℃で撹拌し、次に、冷却した。低温の懸濁液を、濾過し、固体を、水40リットルで洗浄し、次に、真空乾燥オーブン中で、16時間、80℃で乾燥させ、Aに記載された通り、還元し、不動態化した。触媒は、Ru含有量5.0重量%、Fe含有量1.0重量%及びNa含有量0.036重量%を有した。
【0083】
[実施例2]
(EP 1 317 959の実施例2に類似)
活性炭押出成形物(LurgiのSupersorbon SX30、直径3mm、表面積約1000m
2/g)62gを、撹拌容器中に脱イオン水400mlと一緒に入れて、穏やかに撹拌しながら、還流下で、80℃まで加熱した。塩化ルテニウム8.13g及び塩化鉄3.19gの溶液を、60分かけて80℃で滴下添加した。次に、pHを、1Mの水酸化ナトリウム溶液を添加することによって、9まで上昇させ、混合物を、さらに1時間、撹拌した。触媒を、ガラス吸込みフィルターに移し、脱イオン水10リットルで洗浄し、その後、真空乾燥オーブン中で、6時間、80℃で乾燥させた。次に、触媒を、還元オーブン中で、3時間、200℃で、水素及び窒素(4/50)のガス混合物中で還元し、室温まで冷却し、窒素中に酸素1%からなるガス混合物を用いて不動態化した。
【0084】
[実施例3]
(EP 1 317 959の実施例1Dに類似)
Norit炭素SX Plus 50gを、蒸留水300ml中で撹拌し、80℃まで加熱した。次に、水中の硝酸鉄及びニトロシル硝酸ルテニウムを、約70分かけてpH9.0(1.5モル濃度(molar)のNaOHの添加によって維持)で導入した。さらに1時間、撹拌した後、炭素を、濾過して取り出し、水、約16リットルで洗浄した。次に、触媒を、真空乾燥オーブン中で、10時間、100℃で乾燥させた。還元を、触媒が最初に導入されたロータリーチューブオーブン中で実行し、その後、オーブンを、N
2流中で180℃まで加熱し、2時間、N
2流(35スタンダードl/h)中で180℃に維持し、次に、N
2、30スタンダードl/h、及びH
2、4スタンダードl/h下で200℃まで加熱し、この温度を2時間維持し、N
2/H
2、30/4スタンダードl/h下で同様に冷却した。不動態化を、室温で、同じ器具で実行した。純N
2流(30スタンダードl/h)を、最初に触媒上を通過させ、温度に注意しながら、この気流を、0までゆっくり減少させ、その一方で、これと並行して、空気を、最後に、空気10スタンダードl/hを、60分間、室温で供給するまで、ゆっくり供給した。次に、触媒を、水中で還元反応器から取り出した。
【0085】
[実施例4]
実施例3の手順を繰り返したが、不動態化を、200℃での還元後に、実行せず、代わりに、触媒を、直接水中に導入した。結果として生じた触媒は、実施例3と比較して、等しく良好な特性を示した。
【0086】
比較例1
(EP 1 317 959の実施例2による触媒)
触媒を、実施例2に記載の通り生成したが、還元は、500℃で実行した。
【0087】
比較例2
(EP 1 317 959の実施例1Dによる触媒)
還元を、500℃で、先行技術に従って実行した、すなわち、触媒を、窒素流中で180℃まで加熱し、2時間、保持し(35スタンダードl/h)、次に、N
2、30スタンダードl/h、及びH
2、4スタンダードl/h下で、500℃まで加熱し、2時間保持し、冷却した(N
2/H
2、30/4スタンダードl/h下で同様に)ことを除いて、実施例3の手順を繰り返した。
【0088】
試験
触媒を比較するために、シトラールの反応を、以下の方法に従って、実施例3又は比較例2による触媒を使用して、それぞれの場合において、実行した。
【0089】
本発明による(
図1-200℃での還元)又は先行技術による(
図2-500℃での還元)水で湿った触媒約3g(乾燥触媒約1.5gに相当)を、圧力定格オートクレーブ(体積300ml)中に入れた。そこに、シトラール-N、105ml、並びにメタノール37.4ml及びトリメチルアミン7.5mlの混合物を、それぞれの場合において、加えた。オートクレーブを閉じて、不活性にし、H
2、30barで加圧して、撹拌機を回転させて、80℃まで加熱した。試料を、最初の1時間の間は15分毎に、その後は1時間毎に、フリットによって取り出した。約6時間後、実験を停止し、オートクレーブを減圧し、冷却し、開ける前に窒素を流した。試料を、ガスクロマトグラフで分析した。
【0090】
結果
本発明に従って200℃で還元した触媒は、4回目のサイクルでさえ360分後に完全な変換を達成するのに十分な活性がある。1回目のサイクルにおいて、完全な変換が、100分後にすでに達成された。
【0091】
比較すると、完全な変換は、比較例の(すなわち、EP 1 317 959による)触媒を使用した場合、4回目のサイクルにおいて360分後に達成できなかった。1回目のサイクルにおいてさえ、完全な変換は、120分後にやっと達成された。
【0092】
副産物の形成は、両方の触媒についておよそ同じである。選択性は、実験の間に上昇し、4回目のサイクルでは、シトロネロールもシトロネラールも、いずれも形成されない。
【0093】
要約すると、本発明による触媒は、EP 1 317 959による触媒より、高い安定性及び活性を示し、その他の点では、等しく良好な特性を有すると言うことができる。