特許第6801381号(P6801381)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6801381-凍結乾燥状態の検体前処理試薬 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6801381
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】凍結乾燥状態の検体前処理試薬
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/531 20060101AFI20201207BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   G01N33/531 Z
   G01N1/28 J
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-216861(P2016-216861)
(22)【出願日】2016年11月7日
(65)【公開番号】特開2018-77046(P2018-77046A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宗宮 孝安
【審査官】 三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−527753(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/036848(WO,A2)
【文献】 特開平09−020687(JP,A)
【文献】 特表平07−500417(JP,A)
【文献】 特表平05−500854(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/040815(WO,A1)
【文献】 特開2005−060377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結乾燥濃度90.0〜180.0mg/cmの糖アルコール、および凍結乾燥濃度90.0〜180.0mg/cmの二糖類を含有し、当該糖アルコールがマンニトールであり、かつ当該二糖類がスクロースであることを特徴とする、凍結乾燥状態の検体前処理試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外診断薬等に使用される凍結乾燥形態の検体前処理試薬であって、2種以上の糖を含有することにより測定再現性を向上させる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
体外診断薬に使用される検体前処理試薬は液状形態である検体前処理液として、臨床検査等の分野で広く利用されている。この液状形態である検体前処理液はそのまま使用できる点で測定者への負担は軽いものの、体積と重さの点で運送面においては不利である。また通常はバルク品として供給および使用されているので、環境温度や環境湿度の影響を受けやすい。つまり、開封された状態で使用されるので濃縮の影響を避けることができず、使用継続時間毎に検体前処理液中の有効成分濃度が変動し、使用継続時間毎に正確な測定値から変動していくことが危惧される。よってこれらの問題を解決するための方法が提案されている。
【0003】
特許文献1では、自動分析装置で使用する凍結乾燥形態の検体前処理試薬が報告されている。しかしながら特許文献1においては、検体前処理試薬の組成や製法に関しては、何ら記載されていない。凍結乾燥形態の各種試薬においては、賦形剤としての糖や蛋白質などが使用されている。糖や蛋白質などが少ない場合には形状を維持することが困難であり、輸送中に凍結乾燥物が剥離、破砕され容器の壁や蓋に付着することに起因して測定時の有効成分濃度が変動してしまい、正確な測定値から逸脱することが問題となっている。糖や蛋白質などが多い場合には形状を維持することが可能となるが、その成分や濃度が適切でない場合には再溶解した後の溶解性が悪く、その結果、測定再現性が悪くなり測定対象成分を高精度に測定することが妨げられることが問題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5811244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
臨床検査の分野において、試薬の測定時における再現性は種々の試薬で求められている。そこで本発明の目的は、測定再現性が良好な、体外診断薬等に使用される凍結乾燥形態の検体前処理試薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行なった結果、凍結乾燥形態の検体前処理試薬に存在する2種以上の糖を選定し、さらに各成分の濃度を最適化することにより、測定再現性が良好となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は以下のとおりである。
(1)凍結乾燥濃度90.0〜180.0mg/cmの糖アルコール、および凍結乾燥濃度90.0〜180.0mg/cmの二糖類を含有することを特徴とする、凍結乾燥状態の検体前処理試薬。
(2)糖アルコールがマンニトールである、(1)に記載の検体前処理試薬。
(3)二糖類がスクロースである、(1)又は(2)に記載の検体前処理試薬。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明の検体前処理試薬は、検体中の測定対象が他の分子等によって包接されている場合や過剰な妨害成分を含む場合に、検体を前処理して測定対象を測定可能な状態にするために使用される。使用にあたって、溶解液を加えて溶解させて検体前処理液として使用する。
【0010】
本発明において体外診断薬とは免疫測定法などで行われるものであり、サンドイッチ法や競合法などによって行われるものが含まれる。
【0011】
本発明の検体前処理試薬が用いられる測定対象としては、特に限定されるものではないが、例えば25−ヒドロキシビタミンD、ビタミンB12又は葉酸等があげられる。
【0012】
本発明において用いられる糖アルコールとしてはマンニトール、キシリトール、ソルビトール、ガラクチトール、リビトール等が好ましく、中でもマンニトールが好ましい。糖アルコールは、本発明の凍結乾燥状態の検体前処理試薬において、凍結乾燥濃度90.0〜180.0mg/cm含有されるものであり、好ましくは100.0〜170.0mg/cm、更に好ましくは105.0〜165.0mg/cmである。ここで凍結乾燥濃度とは、[凍結乾燥状態の検体前処理試薬に含有される糖アルコールの重量]/[凍結乾燥状態の検体前処理試薬の見かけ体積]で表わされる値である。なお、凍結乾燥状態の検体前処理試薬は、内部が緻密ではなく微小な空隙を有するが、その空隙を含めて1つの固体として見た場合の体積をここでは見かけ体積とした。
【0013】
一方、本発明に用いられる二糖類としては、例えばスクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース等を使用することができる。その中でもスクロースが好ましい。二糖類は、本発明の凍結乾燥状態の検体前処理試薬において、凍結乾燥濃度90.0〜180.0mg/cmで含有されるものであり、好ましくは100.0〜170.0mg/cm、更に好ましくは105.0〜165.0mg/cmである。ここで凍結乾燥濃度とは、[凍結乾燥状態の検体前処理試薬に含有される二糖類の重量]/[凍結乾燥状態の検体前処理試薬の見かけ体積]で表わされる値である。なお、見かけ体積とは前述のとおりである。
【0014】
本発明で検体前処理試薬とは、1つの試薬からなるものでもよく、また複数の試薬からなるものでもよい。検体前処理試薬が複数の試薬からなる場合、そのいずれもが前述の凍結乾燥濃度の糖アルコール及び二糖類を含有する凍結乾燥状態のものである。例えば検体前処理試薬として、アルカリ性試薬(前処理剤)と中和剤の組合せを例示することができる。前処理剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等を使用することができる。中和剤としては、例えばリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カルシウム等を使用することができる。
【0015】
本発明では、凍結乾燥時に蛋白質、界面活性剤、緩衝液や塩類を共有させてもよく、それらは特に限定されるものではないが、蛋白質であれば、例えばヒト血清、ヒト血清アルブミン、ウシ血清、ウシ血清アルブミン、コラーゲンペプチド、スキムミルク等を使用することができる。界面活性剤であればアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤を使用することができる。緩衝液としては、例えばTris、MOPSO、MOPSやMES等を使用することができ、塩類としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛等を使用することができる。なお、凍結乾燥時にはこれら以外にも、必要に応じて他の試薬成分等を共存させることもできる。
【0016】
本発明の凍結乾燥状態の検体前処理試薬は、必要な成分と共に糖アルコール及び二糖類を共存させた溶液を凍結乾燥することにより、製造することができる。このとき、目的とする凍結乾燥濃度となるよう、溶液中の糖アルコール及び二糖類の濃度や凍結乾燥条件を適宜設定すればよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の凍結乾燥状態の検体前処理試薬は、凍結乾燥した際の容器への適度な固着性を有し、また適当な硬さを有する凍結乾燥ケーキとして得られるため、溶解液を加えた際の溶解性に優れたものである。そのため、本発明の凍結乾燥状態の検体前処理試薬を体外診断薬等に用いれば、精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例及び比較例で、2穴容器を用いて凍結乾燥ケーキの見かけ体積を測定する方法を示す図である。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例により限定されるものではない。なお、免疫測定装置として全自動エンザイムイムノアッセイ装置AIA−CL2400、東ソー社製を用い、免疫測定用試薬として当該装置用の免疫反応試薬25−ヒドロキシビタミンDを用い、2ステップサンドイッチ法により各測定を行った。なお、各検体前処理試薬は後述したようにして調製した。
【0020】
(実施例1,2、比較例1)
前処理剤と中和剤を有する検体前処理試薬を以下のように調製した。即ち、前処理剤として、300mmol/L水酸化ナトリウム水溶液に、表1に記載の濃度となるようマンニトール及びスクロースを添加した溶液を調製し、表1に記載の量を、2穴を有する試薬容器の一方の穴に分注した。中和剤として、200mmol/Lリン酸二水素カリウム水溶液に、表1に記載の濃度となるようマンニトール及びスクロースを添加した溶液を調製し、表1に記載の量を、前述の2穴を有する試薬容器の他方の穴に分注した。なおこの試薬容器は、同等の2穴を有するものである。
【0021】
【表1】
この結果、各試薬容器の各穴に存在するマンニトールとスクロースの絶対量は、各試薬容器及び各穴で差がなく、同一である。これらについて凍結乾燥を行い、検体前処理試薬を得た。これを用いて次の測定再現性試験を行った。なお、検体前処理試薬の見かけ体積を以下のようにして測定した。即ち、前述と同様にして前処理剤と中和剤を調製し、但し中和剤は前処理剤とは異なる試薬容器の他方の穴に分注し、凍結乾燥を行った。このようにして得られた前処理剤又は中和剤を有する2穴試薬容器において、図1に示すように、空の1穴に純水を分注し、その水面が他方の穴に存在する前処理剤又は中和剤の凍結乾燥ケーキと同一の高さとなるよう分注・調整した。次に、その穴に分注された純水の重量から体積を求め、前処理剤又は中和剤の凍結乾燥ケーキの見かけ体積とした。なお、図1では左から順に比較例1、実施例1,2に相当する2穴試薬容器中の前処理試薬の凍結乾燥ケーキ及び純水を示す。このようにして測定した結果、凍結乾燥ケーキはそれぞれ表1に記載の見かけ体積を有し、それをもとにそれぞれのマンニトールとスクロースの凍結乾燥濃度を求め、表1に示した。
【0022】
(測定再現性試験)
25−ヒドロキシビタミンD濃度10.2ng/mLであるヒト血清を検体として、実施例1,2、比較例1にて調製した凍結乾燥状態の検体前処理試薬(前処理剤及び中和剤)に溶解液(アジ化ナトリウムを含む分注水)を75μL加えて溶解し、検体前処理液を調製した。それを用いて検体を前処理し、25−ヒドロキシビタミンD濃度を測定した。これら一連の操作は前記自動免疫測定装置で行った。前処理をした後に25−ヒドロキシビタミンD濃度を測定する一連の操作を10回繰り返して、25−ヒドロキシビタミンD測定値の平均値を求めた。さらにその測定値を基に、測定再現性を算出した。結果を表1に示す。表1中、VitDは25−ヒドロキシビタミンDを示す。
【0023】
表1から明らかなように、実施例1,2、比較例1は、含有されるマンニトールの絶対量及びスクロースの絶対量はそれぞれ同一である。しかしながら、得られた凍結乾燥ケーキの見かけ体積が異なるため、マンニトール凍結乾燥濃度やスクロース凍結乾燥濃度は異なっている。それを一定量の分注水で溶解したので、得られた検体前処理液の濃度は同一のはずだが、凍結乾燥濃度によって溶解のしやすさが異なり、比較例1では溶解液の液量よりも上部の検体前処理試薬が溶解しにくくなったり、溶解しても試薬容器内で均一にならず濃度勾配が生じたりして、測定の間差が大きくなり、CV21.4%と測定値に大きなばらつきを生じたと考えられる。これに対し、実施例1,2では、CV2.6%、3.4%と測定再現性が良く、これはマンニトールとスクロースとがそれぞれ適切な凍結乾燥濃度で凍結乾燥状態の検体前処理試薬に含有されていたため、溶解性に優れていたと考えられる。
図1