(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と、水酸基末端硬化剤(B)とを含む熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物であって、下記の(1)〜(3)の条件を満たすことを特徴とする熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
(1)イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)が4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(A1)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(A2)、及びポリオール(A3)の反応生成物であり、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物に含まれるポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(A2)に基づく架橋点の量が、0.10〜0.40mmol/gであること
(2)水酸基末端硬化剤(B)が、平均官能基数2.2〜2.6のポリオール(B1)を含み、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物に含まれるポリオール(B1)に基づく架橋点の量が、0.10〜0.35mmol/gであること
(3)イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と水酸基末端硬化剤(B)との配合割合が、これらに含まれる水酸基に対しイソシアネート基を0.20〜0.60mmol/gの範囲で過剰となる割合であること。
請求項1に記載の熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物の硬化物であって、JIS−A硬度が75〜85度であり、かつ動的粘弾性10Hz下のtanδピーク温度で示されるガラス転移温度が10℃以下であることを特徴とする熱硬化性ポリウレタンエラストマー。
請求項1に記載の熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物を90〜150℃で熱硬化処理することを特徴とする、JIS−A硬度が75〜85度であり、かつ動的粘弾性10Hz下のtanδピーク温度で示されるガラス転移温度が10℃以下である熱硬化性ポリウレタンエラストマーの製造方法。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性ポリウレタンエラストマーは、高モジュラス、高破断強度、低摩耗、低歪であることから耐久性が非常に高く、産業機械部品の部材として好適に使用されている。
一般的に産業機械部品の部材に用いられる熱硬化性ポリウレタンエラストマーは、イソシアネート基含有成分からなる主剤と、活性水素基含有成分からなる硬化剤とを、注型機のミキシングヘッドで混合し、得られた混合液を型内に注入し、この型内で当該混合液を加熱硬化(ウレタン化反応)させることにより製造することができる。
【0003】
ここに、熱硬化性ポリウレタンエラストマーを成型するための形成性組成物をなす成分として、イソシアネートとポリオールから成るイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(以下「NCO基末端ウレタンプレポリマー」と略記)とポリオールやポリアミンからなる活性水素基末端硬化剤とを、混合し加熱硬化させる方法が一般的に用いられる。
【0004】
JIS−A硬度65から75度の熱硬化性ポリウレタンエラストマーを得る場合、例えば、イシアネート成分として、ジフェニルメタジイソジアネート(以下「MDI」と略記)とポリオールとして、ブチレンアジペート(以下「PBA」と略記)からなるNCO基末端ウレタンプレポリマーとポリオール成分として、1,4−ブタンジオール(以下「1,4−BG」と略記)、トリメチロールプロパン(以下「TMP」と略記)とPBAとを混合した水酸基を活性水素基として用いた水酸基末端硬化剤(以下「OH基末端硬化剤」と略記)が好適に用いられる。また、JIS−A硬度70〜98度の熱硬化性ポリウレタンエラストマーを得る場合、例えば、トリレンジイソシアネート(以下「TDI」と略記)とポリテトラメチレングリコール(以下「PTMG」と略記)からなるNCO基末端ウレタンプレポリマーと4,4’−ジアミノ−3,3’−ジクロロジフェニルメタン(以下「MOCA」と略記)等のアミノ基を活性水素基として用いたアミノ基末端硬化剤(以下「NH
2基末端硬化剤」と略記)が好適に用いられている。
【0005】
然るに、上記の様にして得られる熱硬化性ポリウレタンエラストマー成型物は、産業機械部品の部材として必要とされる硬度により、処方を使い分け用いられている。これまで、特にJIS−A硬度75度以上の硬度が必要とされる場合、例えば前述のMDIとPBAからなるNCO基末端ウレタンプレポリマーと1,4−BG、TMP、PBAとを混合したOH基末端硬化剤をベースとした高硬度化が試みられており、硬化させる際にイソシアネート基に対する水酸基のモル比(α値)を小さくすることでイソシアネート基を過剰に配合し、イソシアネート基をヌレート化、若しくはアロファネート化することで、JIS−A硬度75度以上を得る事が提案されている(特許文献1)。また、例えば後述のTDIとPTMGからなるNCO基末端ウレタンプレポリマーとMOCAからなるNH
2基末端硬化剤をベースとし、MOCAの代替としてジエチルトルエンジアミン、ジイソプロピルトルエンジアミン、及びジメチルチオトルエンジアミンなどの芳香族ジアミンをNH
2基末端硬化剤とした処方が提案されている(特許文献2、3)。
【0006】
しかしながら、前述のイソシアネート基に対する水酸基のモル比(α値)を小さくすることでイソシアネート基を過剰に配合し、イソシアネート基をヌレート化、若しくはアロファネート化する処方は、JIS−A硬度75度以上の硬度が容易に得る事が可能であるが、ガラス転移温度(動的粘弾性測定10Hz下のtanδピーク温度)が10℃以上となり、使用環境の温度の影響で特性値が変化し、産業機械部品として機能を十分に果たさなくなると言う問題を抱えている。また、後述の代替MOCAに用いられる芳香族ジアミンは、MOCAと比較し、高価であるばかりでなく、得られるエラストマーの特性値が十分ではない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と、水酸基末端硬化剤(B)とを含む熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物であって、下記の(1)〜(3)の条件をすべて満たすことをその特徴とする。
(1)イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)が4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(A1)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(A2)、及びポリオール(A3)の反応生成物であり、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物に含まれるポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(A2)に基づく架橋点の量が、0.10〜0.40mmol/gであること
(2)水酸基末端硬化剤(B)が、平均官能基数2.2〜2.6のポリオール(B1)を含み、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物に含まれるポリオール(B1)に基づく架橋点の量が、0.10〜0.35mmol/gであること
(3)イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)と水酸基末端硬化剤(B)とが、水酸基に対しイソシアネート基を0.20〜0.60mmol/g過剰に配合されていること。
【0017】
本発明に用いるNCO基末端ウレタンプレポリマー(A)は、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、4,4’−MDIと略記)(A1)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(以下、P−MDIと略記)(A2)、及びポリオール(A3)から調製できるものであれば、何ら制限はない。また、必要に応じて反応抑制剤等を添加してもよい。P−MDI(A2)の含有量は、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物に含まれるP−MDI(A2)に基づく架橋点として、0.10〜0.40mmol/gの範囲で導入する。P−MDI(A2)に基づく架橋点が0.10mmol/g未満の場合は、硬度を高める効果が小さく、0.40mmol/gを超える場合は、硬度を高める効果は大きいものの、ガラス転移温度が上昇し、目標10℃を超えてしまい産業用機械部品として適さないものとなってしまう。なお、本発明における熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物に含まれるP−MDI(A2)に基づく架橋点の量は、式1に従い求めることができる。
【0019】
NCO基末端ウレタンプレポリマー(A)のNCO含量は、5〜25重量%が好ましく、特に7〜12重量%がより好ましい。NCO含量が5重量%未満の場合には、主にプレポリマーの粘度が高くなり、注型時にウレタン樹脂の流れ性が著しく悪くなる恐れがある。25重量%を超える場合は、保存時および使用時の性状安定性が著しく悪くなり、安定した産業機械部品が得にくく、成型不良に繋がるなどの問題を抱える恐れがある。
【0020】
本発明に用いるNCO基末端ウレタンプレポリマー(A)の製造方法としては特に制限はないが、以下の製造方法が好ましい。
【0021】
窒素を満たした撹拌容器内に4,4’−MDI(A1)、および反応抑制剤、酸化防止剤を投入し撹拌を開始する。直ちに容器内の温度を40〜70℃に保ちながら各種ポリオール(A3)を投入し、その後、70〜90℃に保ちながら2〜5時間ほど反応させる。続いて、攪拌容器内にP−MDI(A2)、及び消泡剤を投入し、70〜90℃に保ちながら1〜2時間ほど混合撹拌し、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を得ることができる。
【0022】
本発明に用いるNCO基末端ウレタンプレポリマー(A)は、本発明の効果を奏すれば、特に限定されるものではない。4,4’−MDI(A1)、およびP−MDI(A2)以外のポリイソシアネートも本発明の効果を損なわない範囲で併用することができる。
【0023】
<ポリイソシアネート>
併用可能なポリイソシアネートの具体例として、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリメチルキシリレンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサヘチレン−1,6−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサヘチレン−1,6−ジイソシアネート等の脂肪族および脂環族ジイソシアネート。2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート。オルトキシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の難黄変ジイソシアネート。また、いずれかのイソシアネートのウレタン変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体、ウレトンイミン変性体、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体、アロファネート変性体等も使用できる。
【0024】
本発明に用いるポリオール(A3)は、本発明の効果を奏すれば、特に限定されるものではないが、機械物性やガラス転移温度の観点から、平均官能基数2.0〜2.2、数平均分子量250〜5000のポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールから少なくとも1種類選ばれることが好ましい。なお、必要に応じて、モノマーポリオールを併用することもできる。
【0025】
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールの具体例としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸またはこれらの無水物等の1種類と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の分子量500以下の低分子ポリオール類の1種類以上との縮重合反応から得られるものを挙げることができる。また、低分子ポリオールの一部をヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等の低分子ポリアミンや低分子アミノアルコールに代えて得られるポリエステル−アミドポリオールを使用することもできる。
【0026】
<ポリカプロラクトンポリオール>
ポリカプロラクトンポリオールの具体例としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の分子量500以下の低分子ポリオール類の1種類以上のポリオールを開始剤として、ε−カプロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトンなどの環状エステル類を開環付加させることにより得られるポリカプロラクトンポリオール等を挙げることができる。
【0027】
<ポリエーテルポリオール>
ポリエーテルポリオールの具体例としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類、またはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等の低分子ポリアミン類等のような活性水素基を2個以上、好ましくは2〜3個有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のようなアルキレンオキサイド類を付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオール、あるいはメチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマーを開環重合することで得られるポリエーテルポリオール等を挙げることができる。
【0028】
<ポリカーボネートポリオール>
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオールの一種類以上と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート、テトラヒドロナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート類との脱アルコール反応や脱フェノール反応から得られるものを挙げることができる。
【0029】
また、ポリオール(A3)には、性能の低下しない範囲で、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオール、モノマーポリオールを単独、または2種以上を併用することができる。
【0030】
<ポリオレフィンポリオール>
ポリオレフィンポリオールの具体例としては、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等を挙げることができる。
【0031】
<アクリルポリオール>
アクリルポリオールとしては、例えばアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル〔以下(メタ)アクリル酸エステルという〕と、反応点となりうる少なくとも分子内に1個以上の水酸基を有するアクリル酸ヒドロキシ化合物および/またはメタクリル酸ヒドロキシ化合物〔以下(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物という〕と、重合開始剤とを熱エネルギーや紫外線または電子線などの光エネルギー等を使用し、アクリルモノマーを共重合したものを挙げることができる。
【0032】
<シリコーンポリオール>
シリコーンポリオールの具体例としては、例えばγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを重合したビニル基含有シリコーン化合物、および分子中に少なくとも1個の末端水酸基を有する、α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、α,ω−ジヒドロキシポリジフェニルシロキサン等のポリシロキサンを挙げることができる。
【0033】
<ヒマシ油系ポリオール>
ヒマシ油系ポリオールの具体例としては、例えばヒマシ油脂肪酸とポリオールとの反応により得られる線状または分岐状ポリエステルポリオールが挙げられる。また、脱水ヒマシ油、一部分を脱水した部分脱水ヒマシ油、水素を付加させた水添ヒマシ油等も使用することができる。
【0034】
<フッ素系ポリオール>
フッ素系ポリオールの具体例としては、例えば含フッ素モノマーとヒドロキシ基を有するモノマーとを必須成分として共重合反応により得られる線状、または分岐状のポリオールである。ここで、含フッ素モノマーとしては、フルオロオレフィンであることが好ましく、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロメチルトリフルオロエチレン等が挙げられる。また、ヒドロキシル基を有するモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル、ヒドロキシアルキルクロトン酸ビニル等のヒドロキシル基含有カルボン酸ビニル、またはアリルエステル等のヒドロキシル基を有するモノマー等が挙げられる。
【0035】
<モノマーポリオール>
モノマーポリオールの具体例として、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0036】
本発明に用いる反応抑制剤は、本発明の効果を奏すれば、特に限定されるものでない。反応抑制剤の具体例としては、例えば亜リン酸エステル系、酸性リン酸エステル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸系等が挙げられる。亜リン酸エステル系としては、トリフェニルホスフェート、トリデシルホスフェート、ジブチルハイドロジエンホスフェート等である。酸性リン酸エステル系としては、ブチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート等である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸系としては、ジ(C12−15)パレス−2リン酸、ジ(C12−15)−パレス4リン酸、ジ(C12−15)−パレス6リン酸、ジ(C12−15)−パレス8リン酸、ジ(C12−15)−パレス10リン酸、リン酸(モノ,ジ)ポリエチレングルコール(3EO)C10−14アルコール、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル、リン酸(モノ,ジ)ポリエチレングリコール(4E0)4−ノニルフェニル等である。
【0037】
本発明に用いるOH基末端硬化剤(B)は、少なくとも平均官能基数2.2〜2.6のポリオール(B1)(以下単にポリオール(B1)とも言う)を含むものであれば何ら制限はない。なお、ポリオール(B1)は前述のポリオール(A3)を適宜選択し用いることができる。
【0038】
ポリオール(B1)の含有量は、熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物に含まれるポリオール(B1)に基づく架橋点として、0.1〜0.35mmol/gの範囲で導入する。ポリオール(B1)に基づく架橋点が0.1mmol/g未満の場合は、硬度を高める効果が小さく、0.35mmol/gを超える場合は、硬度を高める効果は大きいものの、ガラス転移温度が上昇し目標の10℃を超え、産業用機械部品として適さないものとなる。なお、本発明における熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物に含まれるポリオール(B1)に基づく架橋点の量は、式2に従い求めることができる。
【0040】
NCO基末端ウレタンプレポリマー(A)のNCO含量は5〜25重量%であることが好ましい。OH基末端硬化剤(B)の平均官能基数は、架橋点の濃度にも影響を及ぼすため、2.2〜2.6の範囲である。平均官能基数が2.2未満の場合は、硬度を高める効果が小さく、2.6を超える場合は、硬度を高める効果は大きいものの、ガラス転移温度が上昇し目標の10℃を超え、適さないものとなる恐れがある。
【0041】
本発明に用いるOH基末端硬化剤(B)は、必要に応じ触媒を添加することができる。触媒は、発明の効果を奏すれば、特に限定されるものでないが、硬度や機械物性を向上させる観点から、主にヌレート化反応を促進させる触媒が好ましい。ヌレート化反応触媒として、例えば公知の一般的なカリウム塩や4級アンモニュウム塩等を用いるこができる。なお、必要に応じて、にウレタン化反応を促進させる触媒やアロファネート化反応を促進させる触媒を併用、または単独使用することもできる。
【0042】
本発明に用いるOH基末端硬化剤(B)の製造方法として特に制限はないが、以下の製造方法が好ましい。窒素を満たした攪拌容器内に少なくとも各種ジオールとトリオールからなるポリオール(B1)を投入し撹拌を開始する。続いて、攪拌容器内に触媒と消泡剤を投入し、40〜70℃に保ちながら1〜3時間ほど混合攪拌し、各種OH基末端硬化剤(B)を得ることができる。
【0043】
<ポリウレタン用ヌレート化触媒>
ヌレート化反応で使用されるポリウレタン用ヌレート化触媒としては、公知の触媒から適宜選択して用いることができ、具体例としては、例えばトリエチルアミン、N−エチルピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−エチルモルフォリン、フェノール化合物のマンニッヒ塩基等の第三級アミン、テトラメチルアンモニウム炭酸水素塩、メチルトリエチルアンモニウム炭酸水素塩、エチルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、プロピルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ブチルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ペンチルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ヘキシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ヘプチルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、オクチルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ノニルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、デシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ウンデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ドデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、トリデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、テトラデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、(2−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム炭酸水素塩、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム炭酸水素塩、1−メチル−1−アザニア−4−アザビシクロ[2.2.2]オクタニウム炭酸水素塩、または1,1−ジメチル−4−メチルピペリジニウム炭酸水素塩等の第四級アンモニウム炭酸水素塩、テトラメチルアンモニウム炭酸塩、メチルトリエチルアンモニウム炭酸塩、エチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、プロピルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ブチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ペンチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ヘキシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ヘプチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、オクチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ノニルトリメチルアンモニウム炭酸塩、デシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ウンデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ドデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、トリデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、テトラデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、ヘプタデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム炭酸塩、(2−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウム炭酸塩、ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム炭酸塩、1−メチル−1−アザニア−4−アザビシクロ[2.2.2]オクタニウム炭酸塩、または1,1−ジメチル−4−メチルピペリジニウム炭酸塩等の第四級アンモニウム炭酸塩、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや有機弱酸塩、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリン酸、吉草酸、オクチル酸、ミリスチン酸、ナフテン酸等のカルボン酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0044】
<ポリウレタン用アロファネート化触媒>
アロファネート化反応で使用されるポリウレタン用アロファネート化触媒としては、公知の触媒から適宜選択して用いることができ、例えばカルボン酸の金属塩を用いることができる。
【0045】
カルボン酸の具体例としては、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸等の飽和脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸等の飽和単環カルボン酸、ビシクロ[4.4.0]デカン−2−カルボン酸等の飽和複環カルボン酸、ナフテン酸等の上述したカルボン酸の混合物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸等の不飽和脂肪族カルボン酸、ジフェニル酢酸等の芳香脂肪族カルボン酸、安息香酸、トルイル酸等の芳香族カルボン酸等のモノカルボン酸類;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、クルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸類等が挙げられる。
【0046】
カルボン酸の金属塩を構成する金属としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、スズ、鉛等のその他の典型金属、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム等の遷移金属などが挙げられる。これらのカルボン酸金属塩は、単独、または2種以上を組み合わせて用いることができる。この他、アルカノールアミンとしては、例えばN,N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール等が挙げられる。
【0047】
<ポリウレタン用ウレタン化触媒>
ウレタン化反応で使用されるポリウレタン用ウレタン化触媒としては、公知の触媒から適宜選択して用いることができ、アミン系触媒の具体例としては、例えばトリエチレンジアミン、2−メチルトリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルエタノールアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N−ジメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)アミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン等である。
【0048】
イミダソール系触媒の具体例としては、例えば1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ジメチルアミノプロピルイミダゾール、N,N−ジメチルヘキサノールアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、1−(2−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール等である。
【0049】
ジアザシクロアミン塩系の具体例としては、例えばジアザビシクロアミンが、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデセン−7又は1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−ノネン−5等が挙げられ、オクチル酸、オレイン酸、フタル酸、マレイン酸、蟻酸、酢酸、ホウ酸、p−トルエンスルホン酸、フェノール、トリアゾールとの塩等を用いることができる。
【0050】
金属触媒系の具体例としては、例えばスタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート等の有機スズ触媒や、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクチル酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等である。
【0051】
なお、アロファネート化触媒の使用量は、NCO基末端ウレタンプレポリマー(A)とOH基末端硬化剤(B)の総和重量に対して、0.001〜0.05重量%の範囲で用いられるのが好ましく、中でも、反応制御の容易さという観点から、0.005〜0.03重量%の範囲で用いられるのがより好ましい。
【0052】
本発明においては、さらに必要に応じて、添加剤として、酸化防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤等を形成性組成物に導入使用することができる。
【0053】
本発明において、NCO基末端ウレタンプレポリマー(A)とOH基末端硬化剤(B)との配合割合は、これらに含まれる水酸基に対しイソシアネート基が0.20〜0.60mmol/gの範囲で過剰になる比率とする。イソシアネート基の過剰量が0.20mmol/g未満の場合は、硬度を高める効果が小さく、0.60mmol/gを超える場合は、硬度を高める効果は大きいものの、ガラス転移温度が上昇し目標の10℃を超え、産業用機械部品として適さないものとなってしまう。
【0054】
本発明の熱硬化性ポリウレタンエラストマーは、上記した本発明の熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物の硬化物であって、JIS−A硬度が75〜85度であり、かつ動的粘弾性10Hz下のtanδピーク温度で示されるガラス転移温度が10℃以下であることを特徴とする。
【0055】
本発明の熱硬化性ポリウレタンエラストマーは、上記した本発明の熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物を90〜150℃で熱硬化処理することで得られる。
【0056】
本発明の熱硬化性ポリウレタンエラストマーは産業機械部品に好適に用いられる。
【0057】
本発明においては、これまでに述べた熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物を用いて、工程として成形型内において硬化処理(具体的には、加熱により硬化を促進する処理)を行い、ヌレート、アロファネート、及びウレタン結合を有する熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物(産業機械部品)を製造する。
【0058】
この場合、本発明における形成性組成物を用いて、熱硬化性ポリウレタンエラストマー成型物を製造する方法としては、以下のような工程を含む方法により製造されるのが好ましい。
【0059】
工程(1):
NCO基末端ウレタンプレポリマー(A)とOH基末端硬化剤(B)、ただし、予めOH基末端硬化剤(B)に触媒を含有させない場合は、触媒を別途添加し、均一に混合して形成性組成物を調製する。なお、空気を巻き込み気泡が見られる場合は、真空脱泡等で気泡を取り除く。これらの工程は、専用のポリウレタン注型機を用いることが好ましい。
【0060】
工程(2):
プレヒートした成形型に該形成性組成物を混合後直ちに成形型内に注入し(注型)、該形成性組成物を成形型内で熱硬化処理を行う(具体的には、加熱して硬化反応させる)。この場合、成形型の温度は硬化反応を容易に且つ確実に行わせる条件であるという観点から、80〜150℃の範囲であることが好ましい。
【0061】
工程(3):
形成性組成物が硬化した後、硬化物(即ち、熱硬化ポリウレタンエラストマー成型物)を成形型内から取り出す(脱型)。なお、本発明に於いては、前記の注型から脱型までに要する時間は、特に限定するものではないが、本発明の意図する熱硬化性ポリウレタンエラストマーの生産性という観点から触媒量や成形型のプレヒート温度を調整し、30〜600秒の範囲であることが好ましい。
【0062】
工程(4):
硬化後、熱硬化性ポリウレタンエラストマー成形物(産業機械部品)を脱型した後、室温で一週間エージング処理を行うことが好ましい。
【実施例】
【0063】
本発明について、実施例および比較例により、更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。実施例および比較例において、特に断りのない限り「%」は全て「重量%」を意味する。
【0064】
実施例1〜6、比較例1〜6
表1、および表2に示す重量比率に従い、窒素を満たした5Lの攪拌容器内に4,4’−MDI(A1)、および反応抑制剤、酸化防止剤を投入し撹拌を開始した。直ちに容器内の温度を40〜70℃に保ちながら各種ポリオール(A3)を投入し、その後、70〜90℃に保ちながら2から5時間ほど反応させた。続いて、攪拌容器内にP−MDI(A2)、及び消泡剤を投入し、70〜90℃に保ちながら1〜2時間ほど混合撹拌し、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(A)を得た。
【0065】
また、表1、および表2に示す重量比率に従い、窒素を満たした5Lの攪拌容器内に各種ポリオール(B1)を投入し撹拌を開始した。続いて、攪拌容器内に触媒と消泡剤を投入し、40〜70℃に保ちながら1〜3時間ほど混合攪拌し、各種OH基末端硬化剤(B)を得た。
【0066】
次に、表1、および表2に示す配合(重量比率)に従い、予め70〜90℃に保温したNCO基末端ウレタンプレポリマー(A)と、予め40〜60℃に保温した触媒の入ったOH基末端硬化剤(B)とを2液混合ウレタン注型機により混合することにより、本発明の熱硬化性ポリウレタンエラストマー形成性組成物を調製し、この組成物を、予めキュア温度に予熱された、縦180mm×横250mm×厚さ2mmサイズのシート成型用の金型、及び、直径29.0mm×厚さ12.5mmサイズの圧縮永久歪測定用の金型に注入した。この組成物を金型内で取り出し(脱型)が可能な最小限の時間で加熱硬化させ、速やかにこの成型物を脱型することにより、本発明のポリウレタンエラストマー成型物を得た。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
表1、および表2に用いられる原料の略記号は以下の通り。
【0070】
「4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(A1)」
ミリオネートMT;4,4’−MDI、NCO含有量=33.5%(東ソー社製)
「ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(A2)」
(2)ミリオネートMR−400;ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、平均官能基数=2.98、NCO含有量=30.0%、(東ソー社製)
「ポリオール(A3)、ポリオール(B1)」
(3) ニッポラン3027;ポリブチレンアジペート、平均官能基数=2.0、水酸基価=44.9 KOHmg/g(東ソー社製)
(4) PTMG−1000;ポリテトラメチレングリコール、平均官能基数=2.0、水酸基価=112.0 KOHmg/g(三菱化学社製)
(5)ニッポラン4002;ポリエチレンアジペート、平均官能基数=2.0、水酸基価=112.0 KOHmg/g(東ソー社製)
(6)ニッポラン4056;ポリブチレンアジペート、平均官能基数=2.0、水酸基価=150.0 KOHmg/g(東ソー社製)
(7)プラクセル312;ポリカプロラクトンポリオール、平均官能基数=3.0、水酸基価=134.7 KOHmg/g(ダイセル社製)
(8)1,4−ブタンジオール; 1,4−ブタンジオール、水酸基価=1,245 KOHmg/g(三菱化学社製)
(9)トリメチロールプロパン;トリメチロールプロパン、水酸基価=1,247 KOHmg/g(三菱ガス化学社製)。
【0071】
「触媒」
(10)DABCO TMR;四級アンモニウム塩触媒とエチレングリコールの混合物(エアプロダクツ社製)
(11)TOYOCAT TEDA−L33E;トリエチレンジアミンとエチレングリコールの混合物(東ソー社製)。
【0072】
「その他・添加剤」
(14)反応抑制剤;Phospholan PS−236(Akzo Nobel社製)、モノ・ジ(C10−12)パレス−5リン酸
(15)酸化防止剤;イルガノックス1010(BASFジャパン社製)ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(16) 消泡剤;BYK−052(ビックケミー・ジャパン社製)。
【0073】
得られたNCO基末端ウレタンプレポリマー、OH基末端硬化剤の一般性状値、および成形シートの特性値を表1、表2に示す。また、それぞれの特性評価方法は以下の通り。
【0074】
「一般性状値」
(1)NCO含量;JIS K1603−1 に準じ測定した。
(2)水酸基価;JIS K1557−1 に準じ測定した。
【0075】
「形成組成物(硬化物)の特性値」
(1)JIS−A硬度;12.5mm厚の円筒状の成型物を用い、JIS K7312に準じ、A型硬度計にて測定した。
(2)引張強度(TB)、伸長率(EB);2mm厚のシート状の成型物を用い、JIS K7312に準じ測定した。
(3)ガラス転移温度(動的粘弾性10Hz下でのtanδピーク温度);2mm厚のシート状の成型物から切り出したサンプルをSII社製のDMS6100にて測定した。
諸条件は以下の通り
サンプルサイズ;20mm×5mm×2mm
振幅;正弦波10Hz
温度勾配;3℃/min。
【0076】
実施例1〜6によれば、作業安全性を確保できる組成物で構成されながらも、十分な高硬度化を兼ね備え、また、常温よりもガラス転移温度が低く、使用環境温度に依存されることなく安定した特性値の熱硬化性ポリウレタンエラストマーを得ることができた。
【0077】
比較例1は、従来からあるP−MDI(A2)を全く用いない場合の例であり、得られる成型物の硬度は、JIS−A硬度は75度よりも低い値を示した。
【0078】
比較例2は、P−MDI(A2)から導入される架橋密度が、0.40mmol/gを上回った場合の例であり、得られる成型物のJIS−A硬度は非常に高いものの、ガラス転移温度は10度よりも高い値を示した。
【0079】
比較例3は、OH基末端硬化剤(B)のポリオールの平均官能基数が、2.6を上回り、かつポリオールから導入される架橋密度が、0.35mmol/gも上回る場合の例であり、得られる成型物のJIS−A硬度は非常に高いものの、ガラス転移温度は10度よりも高い値を示した。
【0080】
比較例4は、OH基末端硬化剤(B)のポリオールの平均官能基数が、2.2を下回り、かつポリオールから導入される架橋密度が、0.10mmol/gも下回った場合の例であり、得られる成型物のガラス転移温度は非常に低いものの、JIS−A硬度は75度よりも低い値を示した。
【0081】
比較例5は、NCO基末端ウレタンプレポリマー(A)とOH基末端硬化剤(B)とを配合する際に、水酸基に対するイソシアネート基の過剰量が0.60mmol/gを上回った場合の例であり、得られる成型物のJIS−A硬度は非常に高いものの、ガラス転移温度は10度よりも高い値を示した。
【0082】
比較例6は、NCO基末端ウレタンプレポリマー(A)とOH基末端硬化剤(B)とを配合する際に、水酸基に対するイソシアネート基の過剰量が0.20mmol/gを下回った場合の例であり、得られる成型物のガラス転移温度は非常に低いものの、JIS−A硬度は75度よりも低い値を示した。