特許第6801506号(P6801506)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6801506
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】ラテックス組成物および膜成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/04 20060101AFI20201207BHJP
   C08K 3/10 20180101ALI20201207BHJP
   C08K 3/105 20180101ALI20201207BHJP
   C08F 236/06 20060101ALI20201207BHJP
   B29C 41/14 20060101ALI20201207BHJP
   A41D 19/00 20060101ALN20201207BHJP
【FI】
   C08L9/04
   C08K3/10
   C08K3/105
   C08F236/06
   B29C41/14
   !A41D19/00 P
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-33897(P2017-33897)
(22)【出願日】2017年2月24日
(65)【公開番号】特開2017-149949(P2017-149949A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2019年10月15日
(31)【優先権主張番号】特願2016-34267(P2016-34267)
(32)【優先日】2016年2月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】伊賀利 直広
(72)【発明者】
【氏名】山本 実紗
(72)【発明者】
【氏名】北川 昌
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎二
【審査官】 岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/001764(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/147010(WO,A1)
【文献】 国際公開第00/073367(WO,A1)
【文献】 特開2009−138194(JP,A)
【文献】 特開2009−155634(JP,A)
【文献】 特開2010−209163(JP,A)
【文献】 特表2013−508528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
C08K 3/00−13/08
C08F 236/06
B29C 41/14
A41D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン単量体単位56〜78重量%、エチレン性不飽和ニトリル単量体単位20〜40重量%、およびエチレン性不飽和酸単量体単位2〜6.5重量%を含有する共重合体のラテックスと、3価以上の金属を含む金属化合物とを含有してなるラテックス組成物であって、
前記金属化合物が、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硝酸アルミウム、硫酸アルミニウム、アルミニウム金属、硫酸アルミニウムアンモニウム、臭化アルミニウム、フッ化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アルミニウム・イソプロポキシド、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、および亜硫酸アルミウムナトリウムから選択される少なくとも1つのアルミニウム化合物であり、
前記金属化合物の含有割合が、前記共重合体100重量部に対して、0.1〜1重量部であるラテックス組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のラテックス組成物をディップ成形する工程を備えるディップ成形体の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のラテックス組成物からなる膜成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラテックス組成物に関し、即時型アレルギー(Type I)に加えて遅延型アレルギー(Type IV)の発生を抑制可能であり、しかも、引張強度、伸びおよび耐久性に優れ、柔軟な風合いおよび良好な触感性を備えるディップ成形体などの膜成形体を与えることのできるラテックス組成物、ならびに、このようなラテックス組成物を用いて得られるディップ成形体および膜成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天然ゴムのラテックスに代表される天然ラテックスを含有するラテックス組成物をディップ成形して、乳首、風船、手袋、バルーン、サック等の人体と接触して使用されるディップ成形体が知られている。しかしながら、天然ゴムのラテックスは、人体にアレルギー症状を引き起こすような蛋白質を含有するため、人体に即時型アレルギー(Type I)の症状を引き起こすような蛋白質を含有するため、生体粘膜又は臓器と直接接触するディップ成形体としては問題がある場合があった。そこで、合成のニトリルゴムのラテックスを用いる検討がされている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、アクリロニトリル、カルボン酸、及びブタジエンのカルボキシル化ニトリルブタジエンランダム三元重合体を含み、全固形分量が15〜25重量%のエマルジョンに、酸化亜鉛、硫黄および加硫促進剤を配合してなるラテックス組成物が開示されている。しかしながら、この特許文献1の技術では、即時型アレルギー(Type I)の発生を防止できる一方で、ディップ成形体とした場合に、ディップ成形体に含まれる硫黄や加硫促進剤が原因で、人体に触れた際に、遅延型アレルギー(Type IV)のアレルギー症状を発生させることがあった。
【0004】
これに対し、たとえば、特許文献2では、アクリロニトリル残基25〜30重量%、ブタジエン残基62〜71重量%、および不飽和カルボン酸残基4〜8重量%を含み、酸化亜鉛を含み、架橋剤である硫黄および加硫促進剤である硫黄化合物を含まないラテックス組成物が開示されている。この特許文献2の技術によれば、硫黄および加硫促進剤である硫黄化合物を含まないため、即時型アレルギー(Type I)だけでなく、遅延型アレルギー(Type IV)の発生をも抑制できるものであるが、得られるディップ成形体は、伸びが低く、さらには、風合いおよび触感性にも劣るものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5697578号公報
【特許文献2】特許第5184720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、即時型アレルギー(Type I)に加えて遅延型アレルギー(Type IV)の発生を抑制可能であり、しかも、引張強度、伸びおよび耐久性に優れ、柔軟な風合いおよび良好な触感性を備えるディップ成形体などの膜成形体を与えることのできるラテックス組成物、ならびに、このようなラテックス組成物を用いて得られるディップ成形体および膜成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、共役ジエン単量体単位56〜78重量%、エチレン性不飽和ニトリル単量体単位20〜40重量%、およびエチレン性不飽和酸単量体単位2〜6.5重量%を含有する共重合体のラテックスに、3価以上の金属を含む金属化合物を所定量配合することにより得られるラテックス組成物により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、共役ジエン単量体単位56〜78重量%、エチレン性不飽和ニトリル単量体単位20〜40重量%、およびエチレン性不飽和酸単量体単位2〜6.5重量%を含有する共重合体のラテックスと、3価以上の金属を含む金属化合物とを含有してなるラテックス組成物であって、前記金属化合物の含有割合が、前記共重合体100重量部に対して、0.1〜1重量部であるラテックス組成物が提供される。
好ましくは、前記金属化合物が、アルミニウム化合物である。
【0009】
また、本発明によれば、上記本発明のラテックス組成物をディップ成形する工程を備えるディップ成形体の製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、上記本発明のラテックス組成物からなる膜成形体が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、即時型アレルギー(Type I)に加えて遅延型アレルギー(Type IV)の発生を抑制可能であり、しかも、引張強度、伸びおよび耐久性に優れ、柔軟な風合いおよび良好な触感性を備えるディップ成形体などの膜成形体を与えることのできるラテックス組成物、ならびに、このようなラテックス組成物を用いて得られるディップ成形体および膜成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のラテックス組成物は、共役ジエン単量体単位56〜78重量%、エチレン性不飽和ニトリル単量体単位20〜40重量%、およびエチレン性不飽和酸単量体単位2〜6.5重量%を含有する共重合体のラテックスと、3価以上の金属を含む金属化合物とを含有してなり、前記金属化合物の含有割合が、前記共重合体100重量部に対して、0.1〜1重量部であるラテックス組成物である。
【0012】
共重合体のラテックス
本発明で用いる共重合体のラテックスは、共役ジエン単量体単位56〜78重量%、エチレン性不飽和ニトリル単量体単位20〜40重量%、およびエチレン性不飽和酸単量体単位2〜6.5重量%を含有するものであり、通常、共役ジエン単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、およびエチレン性不飽和酸単量体、ならびに、必要に応じて用いられる、これらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体を共重合してなる共重合体のラテックスである。
【0013】
共役ジエン単量体としては、たとえば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンおよびクロロプレンなどが挙げられる。これらのなかでも、1,3−ブタジエンおよびイソプレンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。これらの共役ジエン単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。ラテックスに含まれる共重合体中における、共役ジエン単量体により形成される共役ジエン単量体単位の含有割合は、56〜78重量%であり、好ましくは56〜73重量%、より好ましくは56〜70重量%である。共役ジエン単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるディップ成形体などの膜成形体は風合い、触感性および伸びに劣るものとなってしまい、一方、多すぎると、引張強度に劣るものとなってしまう。
【0014】
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シアノエチルアクリロニトリルなどが挙げられる。なかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。これらのエチレン性不飽和ニトリル単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。ラテックスに含まれる共重合体中における、エチレン性不飽和ニトリル単量体により形成されるエチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、20〜40重量%であり、好ましくは25〜40重量%、より好ましくは30〜40重量%である。エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるディップ成形体などの膜成形体は引張強度に劣るものとなってしまい、一方、多すぎると、風合い、触感性および伸びに劣るものとなってしまう。
【0015】
エチレン性不飽和酸単量体としては、カルボキシル基、スルホン酸基、酸無水物基等の酸性基を含有するエチレン性不飽和単量体であれば特に限定されず、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸単量体;無水マレイン酸、無水シトラコン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸無水物;スチレンスルホン酸等のエチレン性不飽和スルホン酸単量体;フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ−2−ヒドロキシプロピル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸部分エステル単量体;などが挙げられる。これらのなかでも、エチレン性不飽和カルボン酸が好ましく、エチレン性不飽和モノカルボン酸がより好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。これらのエチレン性不飽和酸単量体はアルカリ金属塩またはアンモニウム塩として用いることもできる。また、エチレン性不飽和酸単量体は単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。ラテックスに含まれる共重合体中における、エチレン性不飽和酸単量体により形成されるエチレン性不飽和酸単量体単位の含有割合は、2〜6.5重量%であり、好ましくは2〜6重量%、より好ましくは2〜5重量%、さらに好ましくは2〜4.5重量%、特に好ましくは2.5〜4.5重量%である。エチレン性不飽和酸単量体単位の含有量が少なすぎると、得られディップ成形体などの膜成形体は引張強度に劣るものとなってしまい、一方、多すぎると、風合い、触感性および伸びに劣るものとなってしまう。
【0016】
共役ジエン単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体およびエチレン性不飽和酸単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、スチレン、アルキルスチレン、ビニルナフタレン等のビニル芳香族単量体;フルオロエチルビニルエーテル等のフルオロアルキルビニルエーテル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミド単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸−2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸−1−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸−2−エチル−6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸−3−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート等の架橋性単量体;などを挙げることができる。これらのエチレン性不飽和単量体は単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
ラテックスに含まれる共重合体中における、その他のエチレン性不飽和単量体により形成されるその他の単量体単位の含有割合は、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。
【0018】
本発明で用いる共重合体のラテックスは、上述した単量体を含有してなる単量体混合物を共重合することにより得られるが、乳化重合により共重合する方法が好ましい。乳化重合方法としては、従来公知の方法を採用することができる。
【0019】
上述した単量体を含有してなる単量体混合物を乳化重合する際には、通常用いられる、乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤等の重合副資材を使用することができる。これら重合副資材の添加方法は特に限定されず、初期一括添加法、分割添加法、連続添加法などいずれの方法でもよい。
【0020】
乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤;ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤;α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性乳化剤などを挙げることができる。なかでも、アニオン性乳化剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩がより好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウムおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。これらの乳化剤は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。乳化剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0021】
重合開始剤としては、特に限定されないが、たとえば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.01〜2重量部である。
また、過酸化物開始剤は還元剤との組み合わせで、レドックス系重合開始剤として使用することができる。この還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;などが挙げられる。これらの還元剤は単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、過酸化物100重量部に対して3〜1000重量部であることが好ましい。
【0022】
乳化重合する際に使用する水の量は、使用する全単量体100重量部に対して、80〜600重量部が好ましく、100〜200重量部が特に好ましい。
【0023】
単量体の添加方法としては、たとえば、反応容器に使用する単量体を一括して添加する方法、重合の進行に従って連続的または断続的に添加する方法、単量体の一部を添加して特定の転化率まで反応させ、その後、残りの単量体を連続的または断続的に添加して重合する方法等が挙げられ、いずれの方法を採用してもよい。単量体を混合して連続的または断続的に添加する場合、混合物の組成は、一定としても、あるいは変化させてもよい。また、各単量体は、使用する各種単量体を予め混合してから反応容器に添加しても、あるいは別々に反応容器に添加してもよい。
【0024】
さらに、必要に応じて、キレート剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤等の重合副資材を用いることができ、これらは種類、使用量とも特に限定されない。
【0025】
乳化重合を行う際の重合温度は、特に限定されないが、通常、3〜95℃、好ましくは5〜60℃である。重合時間は5〜40時間程度である。
【0026】
以上のように単量体混合物を乳化重合し、所定の重合転化率に達した時点で、重合系を冷却したり、重合停止剤を添加したりして、重合反応を停止する。重合反応を停止する際の重合転化率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは93重量%以上である。
【0027】
重合停止剤としては、特に限定されないが、たとえば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノン誘導体、カテコール誘導体、ならびに、ヒドロキシジメチルベンゼンチオカルボン酸、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸などの芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸およびこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。重合停止剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.05〜2重量部である。
【0028】
重合反応を停止した後、所望により、未反応の単量体を除去し、固形分濃度やpHを調整することで、共重合体のラテックスを得ることができる。
【0029】
また、本発明で用いる共重合体のラテックスには、必要に応じて、老化防止剤、防腐剤、抗菌剤、分散剤などを適宜添加してもよい。
【0030】
本発明で用いる共重合体のラテックスの数平均粒子径は、好ましくは60〜300nm、より好ましくは80〜150nmである。粒子径は、乳化剤および重合開始剤の使用量を調節するなどの方法により、所望の値に調整することができる。
【0031】
3価以上の金属を含む金属化合物
本発明のラテックス組成物は、上述した共重合体のラテックスに、3価以上の金属を含む金属化合物を配合してなるものであり、ラテックス中に含まれる共重合体100重量部に対する、3価以上の金属を含む金属化合物の含有割合を、0.1〜1重量部の範囲とするものである。本発明のラテックス組成物において、3価以上の金属を含む金属化合物は、架橋剤として作用する。
【0032】
本発明によれば、架橋剤として通常用いられる硫黄の代わりに、3価以上の金属を含む金属化合物を架橋剤として用いるものであり、さらには、架橋に際しては、硫黄を含有する加硫促進剤をも必要としないものであるため、即時型アレルギー(Type I)に加えて、硫黄や、硫黄を含有する加硫促進剤に起因する、遅延型アレルギー(Type IV)の発生をも有効に抑制できるものである。
【0033】
加えて、本発明によれば、上述した共重合体のラテックスに、3価以上の金属を含む金属化合物を上記特定量含有させることにより、ディップ成形体などの膜成形体とした場合に、得られるディップ成形体などの膜成形体を、引張強度、伸びおよび耐久性に優れることに加え、柔軟な風合いおよび良好な触感性を備えるものとすることができるものである。特に、ディップ成形体などの膜成形体を手袋用途に用いる場合には、引張強度、伸びおよび耐久性に優れていることに加え、これを装着し、作業を行った際における使用感が重要となってくるものである。そして、本発明者等は、このような使用感について検討を行ったところ、風合い(500%伸長時の応力)に加えて、弾性率(特に、1Hzにおける弾性率)が低いことにも優れていることが望ましいことを見出したものである。なお、本発明者等の知見によれば、弾性率(特に、1Hzにおける弾性率)が低いことにより、触感性を良好にできるものである。そして、このような知見の下、鋭意検討を行ったところ、上述した共重合体のラテックスに、3価以上の金属を含む金属化合物を上記特定量含有させることにより、得られるディップ成形体などの膜成形体が、引張強度、伸び、耐久性、および500%伸長時の応力(風合い)に優れていることに加え、弾性率も低く、そのため、触感性にも優れていることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0034】
3価以上の金属を含む金属化合物としては、3価以上の金属を含む化合物であればよく、特に限定されないが、アルミニウム化合物、コバルト化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物などが挙げられるが、これらのなかでも、ラテックス中に含まれる共重合体をより良好に架橋させることができるという点より、アルミニウム化合物が好ましい。
【0035】
アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、たとえば、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硝酸アルミウム、硫酸アルミニウム、アルミニウム金属、硫酸アルミニウムアンモニウム、臭化アルミニウム、フッ化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アルミニウム・イソプロポキシド、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、亜硫酸アルミウムナトリウムなどが挙げられる。なお、これらアルミニウム化合物は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。これらの中でも、本発明の作用効果をより顕著なものとすることができるという点より、アルミン酸ナトリウムが好ましい。
【0036】
本発明のラテックス組成物中における、3価以上の金属を含む金属化合物の含有割合は、ラテックス中に含まれる共重合体100重量部に対して、0.1〜1重量部であり、好ましくは0.1〜0.8重量部、より好ましくは0.1〜0.6重量部である。3価以上の金属を含む金属化合物の含有割合が少なすぎると、架橋が不十分となり、得られるディップ成形体などの膜成形体は、引張強度および耐久性に劣るものとなってしまい、一方、多すぎると、ディップ成形体などの膜成形体とした場合に、得られるディップ成形体などの膜成形体が、伸び、風合いおよび触感性に劣るものとなってしまう。
【0037】
また、本発明において、上述した共重合体のラテックスに、3価以上の金属を含む金属化合物を配合し、ラテックス組成物中を得る方法としては、特に限定されないが、得られるラテックス組成物中に、3価以上の金属を含む金属化合物を良好に分散させることができるという点より、3価以上の金属を含む金属化合物を水またはアルコールに溶解し、水溶液またはアルコール溶液の状態で添加することが好ましい。また、溶解させる際には溶液の安定性をあげる為、キレート剤や緩衝剤などといった安定化剤を加えることが好ましい。また、少量の凝集物等が発生した場合には、濾過等により凝集物を除去する操作を行ってもよい。
【0038】
また、本発明のラテックス組成物には、上述した共重合体のラテックス、および3価以上の金属を含む金属化合物に加えて、所望により、充填剤、pH調整剤、増粘剤、老化防止剤、分散剤、顔料、充填剤、軟化剤等を配合してもよい。
【0039】
本発明のラテックス組成物の固形分濃度は、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜35重量%である。また、本発明のラテックス組成物のpHは、好ましくは7.5〜12.0、より好ましくは7.5〜11.0、さらに好ましくは7.5〜9.4、特に好ましくは7.5〜9.2である。
【0040】
ディップ成形体
本発明のディップ成形体は、上述した本発明のラテックス組成物を、ディップ成形することにより得られる。
ディップ成形法としては、通常の方法を採用すればよく、たとえば、直接浸漬法、アノード凝着浸漬法、ティーグ凝着浸漬法等が挙げられる。なかでも、均一な厚みを有するディップ成形体が得られやすい点で、アノード凝着浸漬法が好ましい。
【0041】
アノード凝着浸漬法の場合、たとえば、ディップ成形用型を凝固剤溶液に浸漬して、該型表面に凝固剤を付着させた後、それをラテックス組成物に浸漬して、該型表面にディップ成形層を形成する。
【0042】
凝固剤としては、たとえば、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等のハロゲン化金属;硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛等の硝酸塩;酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛等の酢酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩;等が挙げられる。なかでも、塩化カルシウムおよび硝酸カルシウムが好ましい。
凝固剤は、通常、水、アルコール、またはそれらの混合物の溶液として使用する。凝固剤濃度は、通常、5〜50重量%、好ましくは10〜35重量%である。
【0043】
得られたディップ成形層は、通常、加熱処理を施し架橋する。加熱処理を施す前に、水、好ましくは30〜70℃の温水に、1〜60分程度浸漬し、水溶性不純物(たとえば、余剰の乳化剤や凝固剤等)を除去してもよい。水溶性不純物の除去操作は、ディップ成形層を加熱処理した後に行なってもよいが、より効率的に水溶性不純物を除去できる点から、加熱処理前に行なうことが好ましい。
【0044】
ディップ成形層の架橋は、通常、80〜150℃の温度で、好ましくは10〜130分の加熱処理を施すことにより行われる。加熱の方法としては、赤外線や加熱空気による外部加熱または高周波による内部加熱による方法が採用できる。なかでも、加熱空気による外部加熱が好ましい。
【0045】
そして、架橋したディップ成形層をディップ成形用型から脱着することによって、ディップ成形体が、膜状の膜成形体として得られる。脱着方法としては、手で成形用型から剥したり、水圧や圧縮空気の圧力により剥したりする方法を採用することができる。なお、脱着後、更に60〜120℃の温度で、10〜120分の加熱処理を行なってもよい。
膜成形体の膜厚は、好ましくは0.03〜0.50mm、より好ましくは0.05〜0.40mm、特に好ましくは0.08〜0.30mmである。なお、本発明の膜成形体は、上述した本発明のラテックス組成物を、ディップ成形する方法以外にも、上述した本発明のラテックス組成物を、膜状に成形できる方法(たとえば、塗布法等)であれば、いずれの方法で得られるものであってもよい。
【0046】
本発明のディップ成形体を含む本発明の膜成形体は、上述した本発明のラテックス組成物を用いて得られるものであるため、即時型アレルギー(Type I)に加えて遅延型アレルギー(Type IV)の発生をも抑制され、しかも、引張強度、伸びおよび耐久性に優れ、柔軟な風合いおよび良好な触感性を備えるものであり、そのため、手袋用途、とりわけ、手術用手袋に好適である。あるいは、本発明のディップ成形体は、手袋の他にも、哺乳瓶用乳首、スポイト、チューブ、水枕、バルーンサック、カテーテル、コンドームなどの医療用品;風船、人形、ボールなどの玩具;加圧成形用バック、ガス貯蔵用バックなどの工業用品;指サックなどにも用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験、評価は下記によった。
【0048】
引張強度、破断時伸び、500%伸長時の応力
実施例および比較例において得られたディップ成形体としてのゴム手袋から、ASTM D−412に準じてダンベル(Die−C:ダンベル社製)を用いて、ダンベル形状の試験片を作製した。次いで、得られた試験片を、引張速度500mm/分で引っ張り、破断時の引張強度、破断時の伸び、および500%伸長時の応力を測定した。また、引張強度および破断時伸びは高いほど好ましい。また、500%伸長時の応力が小さいほど、柔軟な風合いとなるため、好ましい。
【0049】
1Hzにおける弾性率
実施例および比較例において得られたディップ成形体としてのゴム手袋を3枚積層し、これを真空プレス機を用いて圧着させて約0.5〜0.7mmの厚みとし、次いで打ち抜くことで評価用サンプルを得た。なお、真空プレスを用いて、評価用サンプルを得る際には、特性が変化しないように室温にて、10MPaの圧力にて圧着を行った。そして、得られた評価用サンプルについて、動的粘弾性測定装置(製品名「DMS6100」、セイコーインスツル株式会社製)を用いて、周波数1Hzの条件にて、弾性率の測定を行った。周波数1Hzにおける弾性率が低いほど、手袋として使用した際における触感性に優れたものとなるため、好ましい。
【0050】
装着耐久性
実施例および比較例で得られたディップ成形体としてのゴム手袋を、同一の人物が実際に装着し、同様の作業(検査、評価等)を4時間実施する装着耐久性試験を行った。装着耐久性試験は、1つのサンプルに対して5回行い、該試験中において、ゴム手袋が破れた時間を計測し、5回の試験の中央値(ゴム手袋が破れた時間の中央値)を装着耐久時間とした。なお、装着耐久時間については、時間単位のみで評価し、分単位については切り捨てた(たとえば、2時間35分であった場合には、2時間とした。)。装着耐久時間が長いほど、耐久性に優れているため、好ましい。
【0051】
製造例1
カルボキシル基含有ニトリルゴム(A−1)のラテックスの製造
重合反応器に、アクリロニトリル34部、1,3−ブタジエン62.5部、メタクリル酸3.5部、t−ドデシルメルカプタン0.4部、イオン交換水132部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部、β−ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩0.5部、過硫酸カリウム0.3部およびエチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.05部を仕込み、重合温度を37℃に保持して重合を開始した。そして、重合転化率が70%になった時点で、重合温度を44℃に昇温し、継続して重合転化率が95%になるまで反応させ、その後、重合停止剤としてジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.1部を添加して重合反応を停止した。そして、得られた共重合体ラテックスから、未反応単量体を減圧にして留去した後、固形分濃度とpHを調整し、固形分濃度40%、pH7.5のカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−1)のラテックスを得た。得られたラテックス中に含まれるカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−1)の組成は、アクリロニトリル単位34.0重量%、1,3−ブタジエン単位62.5重量%、メタクリル酸単位3.5重量%であった。
【0052】
製造例2
カルボキシル基含有ニトリルゴム(A−2)のラテックスの製造
アクリロニトリルの使用量を34部から36部に、1,3−ブタジエンの使用量62.5部から61部に、メタクリル酸の使用量を3.5部から3部に、それぞれ変更した以外は、製造例1と同様にして、固形分濃度40%、pH7.5のカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−2)のラテックスを得た。得られたラテックス中に含まれるカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−2)の組成は、アクリロニトリル単位36.0重量%、1,3−ブタジエン単位61.0重量%、メタクリル酸単位3.0重量%であった。
【0053】
製造例3
カルボキシル基含有ニトリルゴム(A−3)のラテックスの製造
アクリロニトリルの使用量を34部から28.0部に、1,3−ブタジエンの使用量62.5部から68.5部に、それぞれ変更した以外は、製造例1と同様にして、固形分濃度40%、pH7.5のカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−3)のラテックスを得た。得られたラテックス中に含まれるカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−3)の組成は、アクリロニトリル単位28.0重量%、1,3−ブタジエン単位68.5重量%、メタクリル酸単位3.5重量%であった。
【0054】
製造例4
カルボキシル基含有ニトリルゴム(A−4)のラテックスの製造
アクリロニトリルの使用量を34部から30.5部に、1,3−ブタジエンの使用量62.5部から63.5部に、メタクリル酸の使用量を3.5部から6部にそれぞれ変更するとともに、得られた共重合体ラテックスから、未反応単量体を減圧にして留去した後における、pHを7.5から7.0に変更した以外は、製造例1と同様にして、固形分濃度40%、pH7.0のカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−4)のラテックスを得た。得られたラテックス中に含まれるカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−4)の組成は、アクリロニトリル単位30.5重量%、1,3−ブタジエン単位63.5重量%、メタクリル酸単位6.0重量%であった。
【0055】
製造例5
カルボキシル基含有ニトリルゴム(A−5)のラテックスの製造
アクリロニトリルの使用量を34部から32部に、1,3−ブタジエンの使用量62.5部から61部に、メタクリル酸の使用量を3.5部から7部に、それぞれ変更した以外は、製造例1と同様にして、固形分濃度40%、pH7.5のカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−5)のラテックスを得た。得られたラテックス中に含まれるカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−5)の組成は、アクリロニトリル単位32.0重量%、1,3−ブタジエン単位61.0重量%、メタクリル酸単位7.0重量%であった。
【0056】
実施例1
ラテックス組成物の調製
製造例1で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−1)のラテックス250部(カルボキシル基含有ニトリルゴム(A−1)換算で100部)に、脱イオン水を加えて固形分濃度35重量%に調整し、次いで、アルミン酸ナトリウム水溶液を、アルミン酸ナトリウム換算で0.4部加えた。そして、水酸化カリウムを用いて前記組成物のpHを8.3に調整した後、脱イオン水をさらに加えることで、固形分濃度を30重量%に調整することで、ラテックス組成物を得た。なお、得られたラテックス組成物について、必要に応じて、濾過によりラテックス組成物中の凝集物等を除去する操作を行った(後述する、実施例2〜6、比較例1〜5においても、必要に応じて、同様にして凝集物等を除去する操作を行った。)。
【0057】
ディップ成形体の製造
硝酸カルシウム13部、ノニオン性乳化剤であるポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル0.05部および水87部を混合することにより、凝固剤水溶液を調製した。次いで、この凝固剤水溶液に、予め70℃に加温したセラミック製手袋型を5秒間浸漬し、引上げた後、温度70℃、10分間の条件で乾燥して、凝固剤を手袋型に付着させた。そして、凝固剤を付着させた手袋型を、上記にて得られたラテックス組成物に10秒間浸漬し、引上げた後、50℃の温水に90秒間浸漬して、水溶性不純物を溶出させて、手袋型にディップ成形層を形成した。
次いで、ディップ成形層を形成した手袋型を、温度125℃、25分間の条件で加熱処理してディップ成形層を架橋させ、架橋したディップ成形層を手袋型から剥し、ディップ成形体(ゴム手袋)を得た。そして、得られたディップ成形体(ゴム手袋)について、引張強度、破断時伸び、500%伸長時の応力、弾性率、および装着耐久性の各測定を行った。結果を表1に示す。
【0058】
実施例2
ラテックス組成物を調製する際に、アルミン酸ナトリウム水溶液の添加量を、アルミン酸ナトリウム換算で0.2部に変更し、組成物のpHを8.5に調整した以外は、実施例1と同様にラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0059】
実施例3
ラテックス組成物を調製する際に、製造例1で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−1)のラテックスに代えて、製造例2で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−2)のラテックス(カルボキシル基含有ニトリルゴム(A−2)換算で100部)を使用するとともに、アルミン酸ナトリウム水溶液の添加量を、アルミン酸ナトリウム換算で0.3部にし、組成物のpHを8.5に調整した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
実施例4
ラテックス組成物を調製する際に、製造例1で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−1)のラテックスに代えて、製造例3で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−3)のラテックス(カルボキシル基含有ニトリルゴム(A−3)換算で100部)を使用し、組成物のpHを8.3に調整した以外は、実施例2と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
実施例5
ラテックス組成物を調製する際に、組成物のpHを9.4に調整した以外は、実施例2と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
実施例6
ラテックス組成物を調製する際に、製造例1で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−1)のラテックスに代えて、製造例4で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−4)のラテックス(カルボキシル基含有ニトリルゴム(A−4)換算で100部)を使用するとともに、組成物のpHを7.5に調整した以外は、実施例2と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
比較例1
ラテックス組成物を調製する際に、アルミン酸ナトリウム水溶液を添加せず、pHを8.4に調整した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
比較例2
ラテックス組成物を調製する際に、アルミン酸ナトリウム水溶液に代えて、硫黄(架橋剤)1部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(加硫促進剤)0.5部、および酸化亜鉛1.2部を使用し、pHを8.5に調整した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
比較例3
ラテックス組成物を調製する際に、アルミン酸ナトリウム水溶液に代えて、酸化亜鉛1.5部を使用した以外は、実施例1と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
比較例4
ラテックス組成物を調製する際に、製造例1で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−1)のラテックスに代えて、製造例5で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−5)のラテックス(カルボキシル基含有ニトリルゴム(A−5)換算で100部)を使用した以外は、実施例2と同様にして、ラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
比較例5
ラテックス組成物を調製する際に、アルミン酸ナトリウム水溶液の添加量を、アルミン酸ナトリウム換算で2.0部に変更した以外は、実施例1と同様にラテックス組成物およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
表1中、ディップ成形体の装着耐久時間「4<」とは、装着耐久時間が4時間以上であった(4時間の試験の結果、破れが発生しなかった)ことを示す。
【0069】
表1に示すように、共役ジエン単量体単位56〜78重量%、エチレン性不飽和ニトリル単量体単位20〜40重量%、およびエチレン性不飽和酸単量体単位2〜6.5重量%を含有する共重合体のラテックスと、3価以上の金属を含む金属化合物とを含有し、3価以上の金属を含む金属化合物の含有割合が、共重合体100重量部に対して、0.1〜1重量部であるラテックス組成物を用いて得られたディップ成形体(ゴム手袋)は、引張強度および伸びが大きく、耐久性に優れ(装着耐久時間が長く)、柔軟な風合い(500%伸長時の応力が小さい)および良好な触感性(1Hzにおける弾性率が低い)を備えるものであった(実施例1〜6)。
【0070】
一方、3価以上の金属を含む金属化合物を配合しなかった場合には、ディップ成形体(ゴム手袋)は、引張強度および耐久性に劣るものであった(比較例1)。
3価以上の金属を含む金属化合物の代わりに、硫黄を加硫促進剤と酸化亜鉛と組み合わせて用いた場合には、伸び、500%伸長時の応力、および1Hzにおける弾性率に劣るものであった(比較例)。なお、比較例2においては、硫黄および加硫促進剤を含むため、遅延型アレルギー(Type IV)の発生も抑制できないものと考えられる。
また、3価以上の金属を含む金属化合物の代わりに、酸化亜鉛を単独で用いた場合には、伸び、耐久性、500%伸長時の応力、および1Hzにおける弾性率に劣るものであった(比較例3)。
さらに、共重合体中のエチレン性不飽和酸単量体単位(メタクリル酸単位)量が多すぎる場合や、3価以上の金属を含む金属化合物の配合量が多すぎる場合には、伸び、500%伸長時の応力、および1Hzにおける弾性率に劣るものであった(比較例4,5)。