特許第6801512号(P6801512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6801512変性炭化水素樹脂およびホットメルト粘接着剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6801512
(24)【登録日】2020年11月30日
(45)【発行日】2020年12月16日
(54)【発明の名称】変性炭化水素樹脂およびホットメルト粘接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/04 20060101AFI20201207BHJP
   C08F 240/00 20060101ALI20201207BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20201207BHJP
   C09J 109/00 20060101ALI20201207BHJP
【FI】
   C08F8/04
   C08F240/00
   C09J153/02
   C09J109/00
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-35082(P2017-35082)
(22)【出願日】2017年2月27日
(65)【公開番号】特開2018-141045(P2018-141045A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2019年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】原田 健司
(72)【発明者】
【氏名】橋本 貞治
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−328524(JP,A)
【文献】 特開昭64−033105(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/003057(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/04
C08F 240/00
C09J 109/00
C09J 153/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素樹脂に水添して得られた変性炭化水素樹脂であり、
前記炭化水素樹脂が、
1,3−ペンタジエン単量体単位20質量%〜70質量%、
炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン単量体単位10質量%〜35質量%、
炭素数4〜8の非環式モノオレフィン単量体単位5質量%〜30質量%、
脂環式ジオレフィン単量体単位0質量%〜1質量%、及び
芳香族モノオレフィン単量体単位0質量%〜40質量%を含む炭化水素樹脂であり、
重量平均分子量(Mw)が1,000〜4,000の範囲内であり
160℃3時間加熱時の分解生成物を蒸留水に吹き込んだ際の電気伝導度が2.5μS/cm以上15.0μS/cm以下であり、
軟化点が50℃〜120℃の範囲内であり、
オレフィンの水添率が30%〜80%の範囲内であることを特徴とする変性炭化水素樹脂。
【請求項2】
請求項に記載の変性炭化水素樹脂と、
熱可塑性高分子化合物と、
を有することを特徴とするホットメルト粘接着剤組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性高分子化合物が、スチレン系ブロック共重合体であることを特徴とする請求項に記載のホットメルト粘接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与える変性炭化水素樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト粘接着剤は、短時間で固化することから、種々の製品を効率的に接着させることが可能であり、しかも、溶剤を必要としないことから、人体への安全性が高い粘接着剤であるため、様々な分野で用いられている。例えば、食品、衣料、電子機器、化粧品などの紙、段ボール、フィルムの包装用の封緘用接着剤、紙おむつや生理用品などの衛生用品を製造する際には、それらを構成するための部材を接着させるための接着剤として、また、粘着テープやラベルの粘着層を構成する粘着剤として、ホットメルト粘接着剤が賞用されている。
【0003】
ホットメルト粘接着剤は、通常、ベースポリマーに粘着付与樹脂などを配合して製造される。近年、ホットメルト粘接着剤の色相、臭気の改善の観点から、粘着付与樹脂として、炭化水素樹脂を水素添加することが試みられている。
例えば、特許文献1〜2では、炭化水素樹脂を水添することにより、色相を改善することが記載されている。
また、このような炭化水素樹脂水素化物は、炭化水素樹脂に元来含まれる不飽和結合が水素添加反応(水添)により飽和化されていることで、熱劣化等による色相の変化が少なく、さらに、臭気も改善されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3971468号公報
【特許文献2】特許3987587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜2に記載の変性炭化水素樹脂は、上述のように色相等の改善は認められるが、ベースポリマーとの相溶性が悪く、十分な接着力が得られないといった問題がある。
また、ホットメルト粘接着剤は、配合物とした後、使用するまでの間、アプリケータのタンクなどで加熱状態で保持されることが通常であるが、熱劣化を起こしやすく、配合物とした直後に比べ、加熱状態で保持した後の粘着性能が低下することが課題となっている。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与える変性炭化水素樹脂を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与える変性炭化水素樹脂について鋭意検討を進めた結果、変性炭化水素樹脂の重量平均分子量が所定の範囲内であり、かつ、160℃3時間加熱時の分解生成物を蒸留水に吹き込んだ際の電気伝導度を所定の範囲内とすることで、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与えることを見出して、本発明を完成させるに至ったものである。
【0008】
かくして、本発明によれば、炭化水素樹脂に水添して得られた変性炭化水素樹脂であり、重量平均分子量(Mw)が1,000〜4,000の範囲内であり、かつ、160℃3時間加熱時の分解生成物を蒸留水に吹き込んだ際の電気伝導度が2.5μS/cm以上15.0μS/cm以下であることを特徴とする変性炭化水素樹脂が提供される。
【0009】
上記炭化水素樹脂が、炭素数5の単量体単位を主成分として含む炭化水素樹脂であり、上記炭素数5の単量体単位を主成分として含む炭化水素樹脂が、1,3−ペンタジエン単量体単位20質量%〜70質量%、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン単量体単位10質量%〜35質量%、炭素数4〜8の非環式モノオレフィン単量体単位5質量%〜30質量%、脂環式ジオレフィン単量体単位0質量%〜1質量%、及び芳香族モノオレフィン単量体単位0質量%〜40質量%を含む炭化水素樹脂であり、上記変性炭化水素樹脂は、軟化点が50℃〜120℃の範囲内であることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、上述の変性炭化水素樹脂と、熱可塑性高分子化合物と、を有することを特徴とするホットメルト粘接着剤組成物が提供される。
【0011】
上記熱可塑性高分子化合物が、スチレン系ブロック共重合体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与える変性炭化水素樹脂を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、変性炭化水素樹脂およびそれを用いたホットメルト粘接着剤組成物に関するものである。
以下、本発明の変性炭化水素樹脂およびホットメルト粘接着剤組成物について詳細に説明する。
【0014】
A.変性炭化水素樹脂
本発明の変性炭化水素樹脂は、炭化水素樹脂に水添して得られた変性炭化水素樹脂であり、重量平均分子量(Mw)が1,000〜4,000の範囲内であり、かつ、160℃3時間加熱時の分解生成物を蒸留水に吹き込んだ際の電気伝導度が2.5μS/cm以上15.0μS/cm以下であることを特徴とするものである。
【0015】
本発明によれば、上記変性炭化水素樹脂が、炭化水素樹脂に水添して得られたものであって、さらに重量平均分子量(Mw)および上記電気伝導度が上記所定の範囲内であることにより、上記変性炭化水素樹脂は、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与えることが可能となる。
ここで、上記重量平均分子量および電気伝導度が上記所定の範囲内であることにより、変性炭化水素樹脂が、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与えることができる理由については、明確ではないが、以下のように推察される。
すなわち、変性炭化水素樹脂は、炭化水素樹脂に水添して得られたものであることで、炭化水素樹脂の酸化安定性を向上させることができる。それにより、ホットメルト粘接着剤組成物を加熱状態で保持したときの劣化を防止することができ、加熱状態で保持した後も粘着性能を維持することが可能となる。
また、変性炭化水素樹脂の上記電気伝導度は、変性炭化水素樹脂の酸化安定性を示すものであり、電気伝導度が高いほど酸化安定性が低いことを意味する。このため、電気伝導度の上限が上記の値であることで、上記変性炭化水素樹脂は、熱劣化しにくい優れた樹脂となる。その結果、上記変性炭化水素樹脂は、ホットメルト粘接着剤組成物の製造時および加熱時に良好な耐熱安定性を示し、加熱状態で保持した後の接着力に優れたホットメルト粘接着剤組成物を与えることができる。
一方、電気伝導度が低いと酸化安定性が良好となるが、電気伝導度が低すぎるとベースポリマーとの相溶性が悪くなる。このため、電気伝導度の下限が上記の値であることで、変性炭化水素樹脂は、ホットメルト粘接着剤組成物の製造時において溶融混合等によりベースポリマーと良好に混合することができる。さらに、上記変性炭化水素樹脂は、重量平均分子量の値が上述の範囲内であることで、ホットメルト粘接着剤組成物の製造時において溶融混合等によりベースポリマーと良好に混合することが容易である。したがって、優れた接着力を示すホットメルト粘接着剤組成物を与えることができる。
このようなことから、上記変性炭化水素樹脂は、水添により得られたものであり、さらに、重量平均分子量および電気伝導度が上記所定の範囲内であることで、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与えることができるのである。
【0016】
本発明の変性炭化水素樹脂は、炭化水素樹脂を水添して得られたものである。
以下、水添により変性する前の炭化水素樹脂(以下、単に、変性前樹脂と称する場合がある。)、これを水添により変性した炭化水素樹脂水素化物である変性炭化水素樹脂について詳細に説明する。
【0017】
1.炭化水素樹脂
上記炭化水素樹脂は、水添により変性される前の原料樹脂である。
このような炭化水素樹脂としては、水添により変性されることで、加熱状態で保持した後においても優れた粘着性能を持つホットメルト粘接着剤組成物を与えることができるものであればよい。
本発明においては、なかでも、上記炭化水素樹脂が、炭素数5の単量体単位を主成分として含む炭化水素樹脂であることが好ましい。上記所定の単量体単位を主成分として含む炭化水素樹脂は、水添により変性されることで、加熱状態で保持した後においても優れた粘着性能を持つホットメルト粘接着剤組成物を与えることができるからである。
【0018】
ここで、炭素数5の単量体単位を主成分として含むとは、ナフサを熱分解して得られるC留分に含まれる単量体の少なくとも1種類を含む単量体組成物を重合して得られる炭化水素樹脂をいうものである。
留分に含まれる単量体としては、例えば、1,3−ペンタジエン、イソプレン、シクロペンタジエンなどの炭素数4〜5の共役ジエン単量体を挙げることができ、なかでも本発明においては、上記単量体組成物がC留分として1,3−ペンタジエンを含むものであること、すなわち、上記炭化水素樹脂が1,3−ペンタジエン単量体単位を含むものであることが好ましい。
なお、C留分に含まれる単量体は、ナフサを熱分解した際にC留分として含まれ得る単量体であればよい。例えば、上記C留分に含まれる単量体としては、ナフサを熱分解してC留分として得られた単量体に限定されるものではなく、他の合成方法等により得られた単量体であってもよい。
【0019】
このような炭素数5の単量体単位を主成分として含む炭化水素樹脂としては、より具体的には、1,3−ペンタジエン単量体単位、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン単量体単位、炭素数4〜8の非環式モノオレフィン単量体単位、脂環式ジオレフィン単量体単位、及び芳香族モノオレフィン単量体単位を含む炭化水素樹脂とすることができ、なかでも、1,3−ペンタジエン単量体単位20質量%〜70質量%、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン単量体単位10質量%〜35質量%、炭素数4〜8の非環式モノオレフィン単量体単位5質量%〜30質量%、脂環式ジオレフィン単量体単位0質量%〜1質量%、及び芳香族モノオレフィン単量体単位0質量%〜40質量%を含む炭化水素樹脂であることが好ましい。上記炭素数5の単量体単位を主成分として含む炭化水素樹脂が上述の炭化水素樹脂であること、すなわち、上記変性前樹脂として、上記所定の単量体単位および割合の炭化水素樹脂を用いることにより、上記変性炭化水素樹脂は、上述のような重量平均分子量および電気伝導度等の特性を有するものとすることが容易となり、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与えることができるからである。
なお、上記単量体単位の含有割合は、変性炭化水素樹脂においても同様であり、当該含有割合の好適範囲も変性前樹脂と同様である。
【0020】
1,3−ペンタジエン単量体単位の変性前樹脂中の含有量としては、20質量%〜70質量%の範囲内とすることができ、25質量%〜65質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、30質量%〜60質量%の範囲内であることが好ましく、特に、35質量%〜55質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、本発明の変性炭化水素樹脂は、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与えることができるからである。
なお、1,3−ペンタジエンにおけるシス/トランス異性体比は任意の比でよく、特に限定されない。
【0021】
炭素数4〜6の脂環式モノオレフィンは、その分子構造中にエチレン性不飽和結合を1つと非芳香族性の環構造とを有する炭素数が4〜6の炭化水素化合物である。炭素数4〜6の脂環式モノオレフィンの具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロブテン、メチルシクロペンテンを挙げることができる。
炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン単量体単位の変性前樹脂中の含有量としては、10質量%〜35質量%の範囲内とすることができ、15質量%〜33質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも19質量%〜32質量%の範囲内であることが好ましく、特に、23質量%〜31質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、本発明の変性炭化水素樹脂は、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与えることができるからである。
なお、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィンにおいて、これに該当する各化合物の割合は任意の割合でよく、特に限定されないが、少なくともシクロペンテンが含まれることが好ましく、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン中にシクロペンテンの占める割合が50質量%以上であることがより好ましい。
【0022】
炭素数4〜8の非環式モノオレフィンは、その分子構造中にエチレン性不飽和結合1つを有し、環構造を有さない炭素数が4〜8の鎖状炭化水素化合物である。炭素数4〜8の非環式モノオレフィンの具体例としては、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン(2−メチルプロペン)などのブテン類;1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテンなどのペンテン類;1−ヘキセン、2−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテンなどのヘキセン類;1−ヘプテン、2−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセンなどのヘプテン類;1−オクテン、2−オクテン、2−メチル−1−ヘプテン、ジイソブチレン(2,4,4−トリメチル−1−ペンテン及び2,4,4−トリメチル−1−ペンテン)などのオクテン類を挙げることができる。
炭素数4〜8の非環式モノオレフィン単量体単位の変性前樹脂中の含有量としては、5質量%〜30質量%の範囲内とすることができ、6質量%〜28質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも7量%〜26質量%の範囲内であることが好ましく、特に、8質量%〜24質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、本発明の変性炭化水素樹脂は、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与えることができるからである。
なお、炭素数4〜8の非環式モノオレフィンにおいて、これに該当する各化合物(異性体を含む)の割合は任意の割合でよく、特に限定されないが、少なくとも2−メチル−2−ブテン、イソブチレン及びジイソブチレンからなる群から選択される少なくとも一種が含まれることが好ましく、炭素数4〜8の非環式モノオレフィン中に2−メチル−2−ブテン、イソブチレン及びジイソブチレンの合計量が占める割合が50質量%以上であることがより好ましい。
【0023】
変性前樹脂は、脂環式ジオレフィンをその原料に含んでいてもよい。
脂環式ジオレフィンは、その分子構造中にエチレン性不飽和結合を2つ以上と非芳香族性の環構造とを有する炭化水素化合物である。脂環式ジオレフィンの具体例としては、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどのシクロペンタジエンの多量体、メチルシクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンの多量体を挙げることができる。
脂環式ジオレフィン単量体単位の変性前樹脂中の含有量としては、0質量%〜1質量%の範囲内とすることができ、0質量%〜0.8質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも0質量%〜0.6質量%の範囲内であることが好ましく、特に、0質量%〜0.4質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、本発明の変性炭化水素樹脂は、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与えることができるからである。
【0024】
変性前樹脂は、芳香族モノオレフィンをその原料に含んでいてもよい。
芳香族モノオレフィンは、その分子構造中にエチレン性不飽和結合1つを有する芳香族化合物である。芳香族モノオレフィンの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、クマロンなどが挙げられる。
芳香族モノオレフィン単量体単位の変性前樹脂中の含有量としては、0質量%〜40質量%の範囲内とすることができ、0質量%〜38質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも0質量%〜36質量%の範囲内であることが好ましく、特に、0質量%〜34質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、本発明の変性炭化水素樹脂は、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与えることができるからである。
【0025】
変性前樹脂は、1,3−ペンタジエン単量体単位、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン単量体単位、炭素数4〜8の非環式モノオレフィン単量体単位、脂環式ジオレフィン単量体単位、及び芳香族モノオレフィン単量体単位以外に、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与えることができる変性炭化水素樹脂を得ることができる範囲内で、その他の単量体単位を含んでいてもよい。
このようなその他の単量体単位を構成するために用いられるその他の単量体は、前述した単量体以外で1,3−ペンタジエンなどと付加共重合され得る付加重合性を有する化合物であれば、特に限定されない。上記その他の単量体には、例えば、1,3−ブタジエン、1,2−ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ペンタジエンなどの1,3−ペンタジエン以外の炭素数4〜6の不飽和炭化水素;シクロヘプテンなどの炭素数7以上の脂環式モノオレフィン;エチレン、プロピレン、ノネンなどの炭素数4〜8以外の非環式モノオレフィン等が包含される。
但し、上記その他の単量体単位の変性前樹脂中の含有量としては、上記所定の特性を有する変性炭化水素樹脂を得ることができるものであればよく、具体的には、通常、0質量%〜30質量%の範囲内であり、0質量%〜25質量%の範囲内であることが好ましく、0質量%〜20質量%の範囲内であることがより好ましい。本発明の変性炭化水素樹脂は、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与えることができるからである。
【0026】
変性前樹脂を製造する方法は、上記した単量体単位を構成可能な単量体を有する重合性成分(単量体混合物A)を、好適には付加重合する限りにおいて、特に限定されるものではない。上記方法としては、例えば、フリーデルクラフツ型のカチオン重合触媒を用いた付加重合によって、変性前樹脂を得る方法を用いることができる。
変性前樹脂を製造するために好適に用いられる方法としては、次に述べる、ハロゲン化アルミニウム(A)と、3級炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素(B1)及び炭素−炭素不飽和結合に隣接する炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素(B2)からなる群より選ばれるハロゲン化炭化水素(B)とを組み合わせて、重合触媒とし、上述の単量体混合物Aを重合する重合工程を有する方法を挙げることができる。
また、上記単量体混合物Aに含まれる各単量体の添加量は、炭化水素樹脂における各単量体単位の含有量と同様とすることができる。
したがって、変性前樹脂として、1,3−ペンタジエン単量体単位20質量%〜70質量%、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン単量体単位10質量%〜35質量%、炭素数4〜8の非環式モノオレフィン単量体単位5質量%〜30質量%、脂環式ジオレフィン単量体単位0質量%〜1質量%、及び芳香族モノオレフィン単量体単位0質量%〜40質量%を含む炭化水素樹脂を製造する場合、上記製造方法は、より具体的には、1,3−ペンタジエン20質量%〜70質量%、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン10質量%〜35質量%、炭素数4〜8の非環式モノオレフィン5質量%〜30質量%、脂環式ジオレフィン0質量%〜1質量%、及び芳香族モノオレフィン0質量%〜40質量%を含む単量体混合物Aを重合する重合工程を有する方法を挙げることができる。
【0027】
ハロゲン化アルミニウム(A)の具体例としては、塩化アルミニウム(AlCl)、臭化アルミニウム(AlBr)などを挙げることができる。ハロゲン化アルミニウム(A)としては、なかでも汎用性などの観点から、塩化アルミニウムが好適に用いられる。
ハロゲン化アルミニウム(A)の使用量は、特に限定されないが、重合性成分(単量体混合物A)100質量部に対し、好ましくは0.05質量部〜10質量部の範囲内、より好ましくは0.1質量部〜5質量部の範囲内である。
【0028】
ハロゲン化炭化水素(B)を、ハロゲン化アルミニウム(A)と併用することにより、重合触媒の活性が極めて良好なものとなる。
3級炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素(B1)の具体例としては、t−ブチルクロライド、t−ブチルブロマイド、2−クロロ−2−メチルブタン、トリフェニルメチルクロライドを挙げることができる。これらのなかでも、活性と取り扱いやすさとのバランスに優れる点で、t−ブチルクロライドが特に好適に用いられる。
炭素−炭素不飽和結合に隣接する炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素(B2)における不飽和結合としては、炭素−炭素二重結合および炭素−炭素三重結合が挙げられ、芳香族環などにおける炭素−炭素共役二重結合も含むものである。このような化合物の具体例としては、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、(1−クロロエチル)ベンゼン、アリルクロライド、3−クロロ−1−プロピン、3−クロロ−1−ブテン、3−クロロ−1−ブチン、ケイ皮クロライドが挙げられる。これらの化合物のなかでも、活性と取り扱いやすさとのバランスに優れる点で、ベンジルクロライドが好適に用いられる。なお、ハロゲン化炭化水素(B)は、1種類で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ハロゲン化炭化水素(B)の使用量は、ハロゲン化アルミニウム(A)に対するモル比で、好ましくは0.05〜50の範囲内、より好ましくは0.1〜10の範囲内である。
【0029】
重合反応を行うに当たり、単量体混合物や重合触媒のそれぞれの成分を重合反応器に添加する順序は特に限定されず、任意の順で添加すればよいが、重合反応を良好に制御して、より色相に優れる変性炭化水素樹脂を得る観点からは、単量体混合物と重合触媒の成分の一部とを重合反応器に添加して、重合反応を開始した後に、重合触媒の残部を重合反応器に添加することが好ましい。
【0030】
変性前樹脂の製造に当たっては、まず、ハロゲン化アルミニウム(A)と脂環式モノオレフィンとを混合することが好ましい。ハロゲン化アルミニウム(A)と脂環式モノオレフィンとを接触処理することによって、ゲルの生成を防止でき、かつ色相の優れた変性前樹脂が得られるためである。
【0031】
ハロゲン化アルミニウム(A)と混合する脂環式モノオレフィンの量は、ハロゲン化アルミニウム(A)の量の少なくとも5倍(質量比)が好ましい。脂環式モノオレフィンの量が過少であるとゲル生成防止、色相改良の効果が不十分となるおそれがある。脂環式モノオレフィンとハロゲン化アルミニウム(A)との質量比は好ましくは5:1〜120:1、より好ましくは10:1〜100:1、さらに好ましくは15:1〜80:1である。この割合より脂環式モノオレフィンを過度に多く使用すると触媒活性が低下し、重合が十分に進行しなくなるおそれがある。
【0032】
ハロゲン化アルミニウム(A)と脂環式モノオレフィンとを混合するに際し、投入順序は特に制限されず、脂環式モノオレフィン中にハロゲン化アルミニウム(A)を投入してもよいし、逆に、ハロゲン化アルミニウム(A)中に脂環式モノオレフィンを投入してもよい。混合は通常、発熱をともなうので、適当な希釈剤を用いることもできる。希釈剤としては後述する溶媒を用いることができる。
【0033】
上記のようにして、ハロゲン化アルミニウム(A)と脂環式モノオレフィンとの混合物Mを調製した後、少なくとも1,3−ペンタジエンおよび非環式モノオレフィンを含む混合物aと、混合物Mとを混合することが好ましい。前記混合物aには脂環式ジオレフィンが含まれていてもよい。
混合物aの調製方法は特に限定されず、それぞれ純粋な化合物を混合して目的の混合物aを得てもよいし、例えばナフサ分解物の留分などに由来する、目的の単量体を含む混合物を用いて、目的の混合物aを得てもよい。例えば、混合物aに1,3−ペンタジエンなどを配合するためには、イソプレンおよびシクロペンタジエン(その多量体を含む)を抽出した後のC留分を好適に用いることができる。
混合物aと混合物Mと共に、ハロゲン化炭化水素(B)をさらに混合することが好ましい。これら3者の投入順序は特に制限されない。
【0034】
重合反応をより良好に制御する観点からは、重合反応系に溶媒を添加して、重合反応を行うことが好ましい。溶媒の種類は、重合反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、飽和脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素が好適である。溶媒として用いられる飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、2,2,4−トリメチルペンタンなどの炭素数5〜10の鎖状飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの炭素数5〜10の範囲内の環状飽和脂肪族炭化水素が挙げられる。溶媒として用いられる芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素数6〜10の範囲内の芳香族炭化水素が挙げられる。溶媒は1種を単独で使用してもよいし、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。溶媒の使用量は、特に限定されないが、重合性成分(単量体混合物A)100質量部に対して、10質量部〜1,000質量部の範囲内であることが好ましく、50質量部〜500質量部の範囲内であることがより好ましい。なお、例えば、C留分に由来するシクロペンタンとシクロペンテンとの混合物のような、付加重合性成分と非付加重合性成分との混合物を重合反応系に添加して、付加重合性成分は単量体混合物の成分として用い、非付加重合性成分は溶媒として用いるようにすることもできる。
【0035】
重合反応を行う際の重合温度は、特に限定されないが、−20℃〜100℃の範囲内であることが好ましく、10℃〜70℃の範囲内であることが好ましい。重合温度が低すぎると重合活性が低下して生産性が劣る可能性があり、重合温度が高すぎると得られる変性前樹脂の色相に劣るおそれがある。重合反応を行う際の圧力は、大気圧下でも加圧下でもよい。重合反応時間は、適宜選択できるが、通常10分間〜12時間、好ましくは30分間〜6時間の範囲内で選択される。
【0036】
重合反応は、所望の重合転化率が得られた時点で、メタノール、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液などの重合停止剤を重合反応系に添加することにより停止することができる。
【0037】
上記変性前樹脂の製造方法は、上記重合工程を少なくとも有するものであるが、必要に応じて、その他の工程を有するものであってもよい。
上記その他の工程としては、例えば、重合工程後に、重合工程において重合停止剤を添加して、重合触媒を不活性化した際に生成する、溶媒に不溶な触媒残渣を濾過などにより除去する触媒残渣除去工程、重合工程による重合反応停止後、未反応の単量体と溶媒を除去し、さらに水蒸気蒸留などにより低分子量のオリゴマー成分を除去し、冷却することにより、固体状の変性前樹脂を得る回収工程等を有することができる。
また、上記その他の工程は、触媒残渣除去工程後、かつ、回収工程前に溶媒に不溶な触媒残渣を除去した後の触媒残渣除去混合物を吸着剤と接触させて、吸着剤処理混合物を得る接触処理工程を有するものであってもよい。上記接触処理工程を有することにより、変性前樹脂およびこれを水添して得られた変性炭化水素樹脂は、低臭気なものとすることができるからである。
なお、上記その他の工程については、後述する変性炭化水素樹脂の製造方法における水添工程後に行うものであってもよい。
【0038】
2.変性炭化水素樹脂
上記変性炭化水素樹脂は、炭化水素樹脂である変性前樹脂を水添して得られた炭化水素樹脂水素化物である。
【0039】
上記変性炭化水素樹脂の電気伝導度としては、2.5μS/cm以上15.0μS/cm以下の範囲内であれば特に限定されるものではないが、なかでも、2.5μS/cm以上10.0μS/cm以下の範囲内であることが好ましい。電気伝導度(μS/cm)が上述の範囲内であることで、上記変性炭化水素樹脂は、ベースポリマーとの相溶性に優れるものとなり、さらに、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与えることができるからである。
【0040】
なお、上記変性炭化水素樹脂の電気伝導度とは、160℃3時間加熱時の分解生成物を蒸留水に吹き込んだ際の電気伝導度をいうものである。ここで、電気伝導度の測定条件である加熱温度および加熱時間は、ホットメルト粘接着剤組成物を加熱状態で保持する際の条件を想定し、160℃3時間とした。
また、160℃3時間加熱時の分解生成物を蒸留水に吹き込んだ際の電気伝導度とは、ISO6886に準拠したランシマット法による酸化安定性試験により測定される値である。ランシマット法(ISO6886)は通常、種々の油脂の酸化に対する耐性を測定することで、これら油脂の安定性を評価する試験法である。測定原理は、次の通りである。すなわち、試験管内の測定試料に対して空気を吹き込み、試料を加熱して熱分解させることにより加速的に経時変化させる。試料の酸化に伴って揮発性二次生成物質が生じてくる。試験管に吹き込まれた空気により二次生成物質が移送され、蒸留水を充填した測定セルに収集され、電気伝導度を測定する。これにより、一定時間加熱した際に発生する有機酸の総量が電気伝導度として測定される。酸化安定性試験には、自動油脂安定性試験装置(商品名:892プロフェッショナルランシマット、スイス・メトローム社製)を使用することができる。
【0041】
上記変性炭化水素樹脂のオレフィンの水添率(以下、単に水添率と称する場合がある。)としては、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与えることができるものであればよい。
ここで、オレフィンの水添率とは、変性前樹脂の全非芳香族性炭素−炭素二重結合のうち、水素化された割合をいうものである。
本発明において、上記水添率は、30%〜80%の範囲内とすることができ、35%〜75%の範囲内であることが好ましく、なかでも40%〜70%の範囲内であることが好ましい。水添率が上述の範囲内であることにより、本発明の変性炭化水素樹脂は、ベースポリマーとの相溶性に優れ、さらに、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与えることができる。
なお、上記変性前樹脂中の炭素−炭素二重結合としては、非芳香族性炭素−炭素二重結合(主に主鎖の炭素−炭素二重結合)の他、芳香族性炭素−炭素二重結合(芳香環内の炭素−炭素二重結合)が存在するが、芳香族性炭素−炭素二重結合は出来るだけ水素化されていないのが好ましく、全芳香族性炭素−炭素二重結合のうち、水素化された割合としては、通常、10%以下、好ましくは7%以下、より好ましくは1%である。
また、オレフィンの水添率は、変性前樹脂および変性炭化水素樹脂が有するオレフィン量の差から求めることができる。ここで、各樹脂が有するオレフィン量については、H−NMRスペクトル測定により求めることができる。H−NMRスペクトル測定は、溶媒に重クロロホルムを用い、NMR測定装置としては、JMN−AL seriesAL400、JEOL社製を用いて行うことができる。
【0042】
上記変性炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜4,000の範囲内であれば特に限定されるものではないが、なかでも、1,500〜3,800の範囲内であることが好ましく、特に、1,800〜3,600の範囲内であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw)が上述の範囲内であることにより、本発明の変性炭化水素樹脂は、ホットメルト粘接着剤組成物の製造時において溶融混合等によりベースポリマーと良好に混合することが容易である。ベースポリマーとの相溶性に優れることで、粘着性能に優れたホットメルト粘接着剤組成物を与えることができる。
【0043】
上記変性炭化水素樹脂のZ平均分子量(Mz)は、2,500〜10,000の範囲内とすることができ、なかでも、3,200〜9,000の範囲内であることが好ましく、特に、3,900〜8,000の範囲内であることが好ましい。Z平均分子量(Mz)が上述の範囲内であることにより、本発明の変性炭化水素樹脂は、ホットメルト粘接着剤組成物の製造時において溶融混合等によりベースポリマーと良好に混合することが容易である。ベースポリマーとの相溶性に優れることで、加熱状態で保持した後においても粘着性能の低下が少ないホットメルト粘接着剤組成物を与えることができる。
【0044】
なお、本発明において、変性炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)およびZ平均分子量(Mz)は、高速液体クロマトグラフィの測定による、ポリスチレン換算の値として求めるものとする。
重量平均分子量およびZ平均分子量の測定は、より具体的には、測定装置として、東ソー社製「HLC−8320GPC」を使用し、カラムは東ソー社製「TSKgel SuperMultiporeHZ」を3本連結したものを用い、テトラヒドロフランを溶媒として、40℃、1.0mL/minの流量で測定することができる。
【0045】
上記変性炭化水素樹脂の重量平均分子量に対するZ平均分子量の比(Mz/Mw)は、1.5〜2.5の範囲内とすることができ、なかでも、1.6〜2.4の範囲内であることが好ましく、特に、1.65〜2.35の範囲内であることがより好ましい。上記比が上述の範囲内であることにより、本発明の変性炭化水素樹脂は、ベースポリマーとの相溶性に優れたものとなることで、加熱状態で保持した後も優れた粘着性能を持つホットメルト粘接着剤組成物を与えることができるからである。
【0046】
上記変性炭化水素樹脂の軟化点は、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与えることができるものであればよく、例えば、50℃〜120℃の範囲内とすることができ、60℃〜115℃の範囲内であることが好ましい。上記軟化点が上述の範囲内であることにより、ホットメルト粘接着剤として優れた剥離接着力を与えるからである。
本発明における軟化点は、例えば、変性炭化水素樹脂についてJIS K 6863に従い測定する値とすることができる。
【0047】
上記変性炭化水素樹脂の製造方法としては、炭化水素樹脂である変性前樹脂を水添する水添工程を有する方法を用いることができる。
【0048】
変性前樹脂の水添は、水素化触媒の存在下に、変性前樹脂を水素と接触させることにより行うことができる。
【0049】
用いる水素化触媒としては、特開昭58−43412号公報、特開昭60−26024号公報、特開昭64−24826号公報、特開平1−138257号公報、特開平7−41550号公報等に記載されているものを使用することができ、均一系触媒でも不均一系触媒でもよい。
【0050】
均一系触媒としては、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の組み合わせ等の遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなる触媒系;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の貴金属錯体触媒;等が挙げられる。
【0051】
不均一系触媒としては、Ni、Pd等の水素添加触媒金属を担体に担持させたもの等が挙げられる。担体としては、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、ケイソウ土等が挙げられる。中でも、シリカに担持したNi触媒が好ましい。
【0052】
水素化反応は、変性前樹脂に対し直接行っても、又は、変性前樹脂を有機溶媒に溶解し、有機溶媒中で行ってもよい。操作容易性の観点から、変性前樹脂に対し直接行うのが好ましい。変性前樹脂の溶解に用いる有機溶媒としては、触媒に不活性なものであれば格別な限定はないが、生成する水素添加物の溶解性に優れていることから、通常は炭化水素系溶媒が用いられる。
【0053】
炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;n−ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、デカリン等の脂環族炭化水素類;等を挙げることができ、これらの中でも、環状の芳香族炭化水素類や脂環族炭化水素類が好ましい。これらの有機溶媒は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、有機溶媒については、変性前樹脂の重合に用いた溶媒を用いてもよい。
【0054】
水素化触媒の存在下に、変性前樹脂を水素と接触させる方法は、特に限定されない。例えば、適宜選択される容器に変性前樹脂と水素化触媒とを共存させて、必要に応じて撹拌して、水素と接触させるバッチ処理法や、予め充填塔中に水素化触媒を充填しておき、これに変性前樹脂を流通しながら、水素と接触させる連続処理法が挙げられる。
【0055】
水素化反応は、常法に従って行うことができる。水素化触媒の種類や反応温度等の反応条件を適宜調整することにより、変性前樹脂の水素化の割合を調整することができる。
水素化触媒として均一系触媒を用いると変性前樹脂の水素化の割合を高めることができ、当該均一系触媒としてはルテニウム均一系触媒が好ましい。反応温度は、100℃〜200℃の範囲内が好ましく、130℃〜195℃の範囲内がより好ましい。
水素化触媒として不均一系触媒を用いると変性前樹脂の水素化の割合を抑えることができ、当該不均一系触媒としてはニッケル不均一系触媒が好ましい。反応温度は、150℃〜300℃の範囲内が好ましく、180℃〜260℃の範囲内がより好ましい。
水素圧は、絶対圧力で、通常0.01MPa〜10MPaの範囲内、好ましくは0.05MPa〜6MPaの範囲内、さらに好ましくは0.1MPa〜5MPaの範囲内である。
【0056】
水素化反応終了後においては、必要に応じて反応液から、遠心分離やろ過等により水素化触媒を除去する。遠心方法やろ過方法は、用いた触媒が除去できる条件であれば、特に限定されない。ろ過による除去は、簡便かつ効率的であるので好ましい。ろ過する場合、加圧ろ過しても、吸引ろ過してもよく、また、効率の点から、ケイソウ土、パーライト等のろ過助剤を用いることが好ましい。また、必要に応じて、水やアルコール等の触媒不活性化剤を利用したり、活性白土やアルミナ等の吸着剤を添加することができる。
【0057】
なお、上記変性炭化水素樹脂にかかるオレフィンの水添率、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、重量平均分子量に対するZ平均分子量の比(Mz/Mw)、軟化点、電気伝導度等は、前記の通りの配合及び製造方法に従って上記変性炭化水素樹脂を調製することで容易に所望の範囲に調整することができる。
【0058】
以上のようにして得られる本発明の変性炭化水素樹脂は、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与えることができるものであることから、その特性を活かして、従来の変性炭化水素樹脂を適用しうる各種の用途に適用することができる。なかでも、本発明の変性炭化水素樹脂は、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与えることができるものであるから、粘接着剤の粘着付与樹脂として好適に用いられ、ホットメルト粘接着剤組成物の粘着付与樹脂として特に好適に用いられる。
【0059】
上記変性炭化水素樹脂は、通常、変性炭化水素樹脂のみを含むものであるが、酸化防止剤等の添加剤を含むものであってもよい。
なお、上記添加剤の含有量としては、上記変性炭化水素樹脂100質量部に対して、通常、1質量部以下とすることができる。
【0060】
B.ホットメルト粘接着剤組成物
次に、本発明のホットメルト粘接着剤組成物について説明する。
本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、上述の変性炭化水素樹脂と、熱可塑性高分子化合物と、を有することを特徴とするものである。
【0061】
本発明によれば、上述の変性炭化水素樹脂を用いることにより、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるものとなる。
【0062】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、変性炭化水素樹脂および熱可塑性高分子化合物を有するものである。
以下、本発明のホットメルト粘接着剤組成物の各成分について詳細に説明する。
【0063】
1.変性炭化水素樹脂
上記変性炭化水素樹脂の含有量としては、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を得ることができるものであればよい。
上記含有量は、例えば、熱可塑性高分子化合物100質量部に対する割合で、50質量部〜500質量部の範囲内とすることができ、なかでも80質量部〜400質量部の範囲内であることが好ましく、特に、100質量部〜300質量部の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、ホットメルト粘接着剤組成物は、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるものとなるからである。
【0064】
なお、上記変性炭化水素樹脂については、上記「A.変性炭化水素樹脂」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0065】
2.熱可塑性高分子化合物
上記熱可塑性高分子化合物としては、ホットメルト粘接着剤組成物にベースポリマーとして使用される公知の熱可塑性高分子化合物を使用できる。
このような熱可塑性高分子化合物としては、具体的には、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレンなどのゴム;低密度ポリエチレン、エチレン− 酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリアミド、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂;芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性エラストマー;などを用いることができる。
本発明においては、なかでも、上記熱可塑性高分子化合物が、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体およびその水素添加物であることが好ましく、特に、芳香族ビニルがスチレンであるスチレン系ブロック共重合体およびその水素添加物であることが好ましく、なかでも特にスチレン系ブロック共重合体であることが好ましい。上記熱可塑性高分子化合物が上記共重合体であることにより、上記熱可塑性高分子化合物は、変性炭化水素樹脂との相溶性に優れたものとなる結果、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与えることができるからである。
スチレン系ブロック共重合体としては、芳香族ビニルとしてスチレンを有するものであればよく、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が挙げられ、重量平均分子量が50,000〜350,000の範囲内で、スチレン単位含有量が5質量%〜50質量%の範囲内であるものが好ましく使用できる。
スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の場合、スチレン単位含有量が25質量%〜50質量%の範囲内のものが好ましく、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の場合は、スチレン単位含有量が10質量%〜30質量%の範囲内のものが好ましく使用できる。
なお、上記熱可塑性高分子化合物は、少なくとも1種を含むものであればよく、1種類のみを含むものであってもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0066】
3.その他の成分
上記ホットメルト粘接着剤組成物は、変性炭化水素樹脂および熱可塑性高分子化合物のみからなるものであってよいが、さらに、他の成分を含有するものであってもよい。
本発明のホットメルト粘接着剤組成物に含有され得る他の成分としては、抗酸化剤、香料、吸着剤等を挙げることができる。
また、他の成分として、可塑剤、ワックス、酸化防止剤、本発明の変性炭化水素樹脂以外の粘着付与樹脂、熱安定剤、紫外線吸収剤、充填剤など、その他の配合剤を添加することができる。
なお、本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、溶剤を含まない、無溶剤の組成物であることが好ましい。
【0067】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物に配合され得る可塑剤としては、特に限定されないが、室温(23℃)で液状の有機化合物が好適に用いられる。可塑剤の種類は、熱可塑性高分子化合物に対して相溶性を示すものである限りにおいて特に限定されず、具体的には、通常のホットメルト粘接着剤組成物に添加される、芳香族系、パラフィン系またはナフテン系のプロセスオイル;ポリブテン、ポリイソブチレンなどの液状重合体などを使用することができ、これらのなかでも、パラフィン系プロセスオイル又はナフテン系プロセスオイルが特に好適である。なお、可塑剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物に配合され得るワックスは、特に限定されず、例えば、ポリエチレンワックス、エチレン酢酸ビニル共重合体ワックス、酸化ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、Fischer−Tropshワックス、酸化Fischer−Tropshワックス、水素添加ひまし油ワックス、ポリプロピレンワックス、副産ポリエチレンワックス、水酸化ステアラミドワックスなどを用いることができる。ワックスは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ホットメルト粘接着剤組成物におけるワックスの含有量は、特に限定されないが、熱可塑性高分子化合物100質量部当り、10質量部〜200質量部の範囲内であることが好ましく、20質量部〜100質量部の範囲内であることがより好ましい。ワックスの含有量がこの範囲であることにより、得られるホットメルト粘接着剤組成物が、塗工容易性に特に優れたものとなる。
【0069】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物に配合され得る酸化防止剤は、特に限定されず、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどのヒンダードフェノール系化合物;ジラウリルチオプロピオネートなどのチオジカルボキシレートエステル類;トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどの亜燐酸塩類;を使用することができる。酸化防止剤の使用量は、特に限定されないが、熱可塑性高分子化合物100質量部当り、通常10質量部以下であり、好ましくは0.5質量部〜5質量部の範囲内である。なお、酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物に配合され得る軟化剤は、特に限定されず、例えば、芳香族系、パラフィン系またはナフテン系のプロセスオイル;ポリブテン、ポリイソブチレンなどの液状重合体などを使用することができる。軟化剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物に配合され得る上記変性炭化水素樹脂以外の粘着付与樹脂としては従来公知の粘着付与樹脂が使用できる。具体的には、ロジン;不均化ロジン、二量化ロジンなどの変性ロジン類;グリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールとロジンまたは変性ロジン類とのエステル化物;テルペン系樹脂;脂肪族系、芳香族系、脂環族系または脂肪族−芳香族共重合系の炭化水素樹脂またはこれらの水素化物;フェノール樹脂;クマロン−インデン樹脂などが挙げられる。これらの粘着付与樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物を得るにあたり、上記変性炭化水素樹脂および熱可塑性高分子化合物、及びさらに必要に応じて添加されるその他の成分を混合する方法は特に限定されず、例えば、それぞれの成分を溶剤に溶解し均一に混合した後、溶剤を加熱などにより除去する方法、各成分をニーダーなどで溶融混合する方法を挙げることができる。混合をより効率的に行う観点からは、これらの方法のなかでも溶融混合が好適である。なお、溶融混合を行う際の温度は、特に限定されるものではないが、通常100℃〜200℃の範囲である。
【0073】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、上記変性炭化水素樹脂を粘着付与樹脂として含有していることから、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるものである。
したがって、本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、種々の部材の接着に適用することが可能であり、しかも、省エネルギーで、生産性よく、保持力の高い接着を行うことができる。
【0074】
本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、種々の用途に適用することが可能であり、その用途は限定されるものではないが、塗布量が少なくても十分な接着強度を発揮し、また、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるものであるという特性を有し、ホットメルトで使用される、包装封函用接着剤、紙おむつやナプキンなどの組み立て時に使用される衛生材料用接着剤やホットメルト型粘着剤を塗布した粘着テープで好適に使用できる。これらは、使用中は長時間の加熱を行っており、使用初期と後期で粘接着物性が大きく損なってはならないことから、加熱状態で保持した後にも優れた粘着性能を有する本発明のホットメルト粘接着剤組成物は、好適に使用することが出来る。
【0075】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0076】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0077】
各種の測定については、以下の方法に従って行った。
【0078】
〔重量平均分子量、Z平均分子量および分子量分布〕
試料となる変性炭化水素樹脂について、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー分析し、標準ポリスチレン換算値の重量平均分子量(Mw)およびZ平均分子量(Mz)を求め、分子量分布はMz/Mwの比で示した。なお、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー分析は、測定装置として、東ソー社製「HLC−8320GPC」を使用し、カラムは東ソー社製「TSKgel SuperMultiporeHZ」を3本連結したものを用い、テトラヒドロフランを溶媒として、40℃、1.0mL/minの流量で測定した。
【0079】
〔軟化点(℃)〕
試料となる変性炭化水素樹脂について、JIS K 6863に従い測定した。
【0080】
〔オレフィン水添率(%)〕
試料となる変性前樹脂および変性炭化水素樹脂について、H−NMRスペクトル測定により各々のオレフィン量を求め、変性前後のオレフィン量の差に基づいてオレフィン水添率(%)を算出した。
なお、H−NMRスペクトル測定では、溶媒に重クロロホルムを用い、NMR測定装置としてJMN−AL seriesAL400(JEOL社製)を用いた。
【0081】
〔電気伝導度(μS/cm)〕
試料となる変性炭化水素樹脂について、ISO6886に準拠したランシマット法による酸化安定性試験により、電気伝導度を測定した。酸化安定性試験には、自動油脂安定性試験装置(商品名:892プロフェッショナルランシマット、スイス・メトローム社製)を使用した。測定条件を下記に示す。
測定条件
サンプル量:3.0g
空気流量:5.0L/h
蒸留水:60cc
加熱温度:160℃
加熱時間:3時間
電気伝導度が低いほうが酸化安定性が優れていることを意味する。
【0082】
〔ループタック力(N)〕
試料となる変性炭化水素樹脂を含むホットメルト粘接着剤組成物を用いて作製した粘接着剤シートについて、FINAT−1991 FTM−9(Quick−stick tack measurement)に準じて、23℃の雰囲気下でのループタックを測定し、タック性を評価した。値が高いほど良好である。
【0083】
〔剥離接着力(N/25mm)〕
試料となる変性炭化水素樹脂を含むホットメルト粘接着剤組成物を用いて作製した粘接着剤シートについて、23℃で、被着体としてステンレス基材を使用してPSTC−1(粘着テープ委員会(米)による180°剥離接着試験)に準じて測定した。値が高いほど良好である。
【0084】
〔色相〕
試料となる変性炭化水素樹脂を含むホットメルト粘接着剤組成物について、目視にてホットメルト粘接着剤組成物の色相を観察した。透明性が高い色相であるほど、ホットメルト粘接着剤組成物調製時の熱劣化の程度が少なく、熱安定性に優れると判断できる。
【0085】
〔実施例1〕
重合反応器にシクロペンタン57.9部及びシクロペンテン25.4部の混合物を重合反応器に仕込み、60℃に昇温した後、塩化アルミニウム0.6部を添加した(混合物M)。引き続き、1,3−ペンタジエン42.7部、イソブチレン8.7部、スチレン22.7部、C4−C6不飽和炭化水素0.5部、及びC4−C6飽和炭化水素7.4部からなる混合物aと、t−ブチルクロライド0.2部とを、それぞれ、別のラインを通して、60分間に亘り温度(60℃)を維持して、前記混合物Mを含む重合反応器に連続的に添加しながら重合を行った。その後、水酸化ナトリウム水溶液を重合反応器に添加して、重合反応を停止した。なお、重合反応時の重合反応器中の成分の種類及び量を表1にまとめて示した。重合停止により生成した沈殿物をろ過により除去し、変性前樹脂および未反応単量体等を含む重合体溶液を得た。
また、重合体溶液の一部を取り出し、これを蒸留釜に仕込み、窒素雰囲気下で加熱し、重合溶媒と未反応単量体を除去し、変性前樹脂とした。
【0086】
また、多管式熱交換型水素添加反応装置に、原料として重合体溶液を供給し、変性前樹脂を水素添加して変性炭化水素樹脂を製造した。水素添加反応は、水素化触媒としてニッケルシリカ触媒(日揮触媒化成株式会社製、N108F)を使用し、水素圧2MPa、反応温度200℃、反応管内の滞留時間30分間の条件で行った。
変性前樹脂が水添された変性炭化水素樹脂を含む重合体溶液を蒸留釜に仕込み、窒素雰囲気下で加熱し、重合溶媒と未反応単量体を除去した。次いで、200℃以上で、飽和水蒸気を吹き込みながら、低分子量のオリゴマー成分を留去した。
その後、酸化防止剤(BHT)を0.2部添加して、蒸留釜から溶融樹脂を取り出し、室温まで放冷して、実施例1の変性炭化水素樹脂を得た。
【0087】
得られた実施例1の変性炭化水素樹脂について重量平均分子量、Z平均分子量、分子量分布、軟化点及びオレフィン水添率を求め、さらに、電気伝導度測定を行った。これらの測定結果は、下記表1にまとめて示した。
【0088】
また、熱可塑性高分子化合物としてスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS、旭化成ケミカルズ株式会社社製、アサプレン(登録商標)T−439)100質量部、実施例1の変性炭化水素樹脂120部、可塑剤(日本サン石油社製、SUNPURE N−90)10部及び酸化防止剤(BASF社製、イルガノックス1010(商品名))1.0部を、180℃で、1時間混練して、実施例1の変性炭化水素樹脂を含むホットメルト粘接着剤組成物を得た。
この実施例1の変性炭化水素樹脂を含むホットメルト粘接着剤組成物を、目視による色相評価に供した。試験結果は、表1に示した。
【0089】
また、実施例1の変性炭化水素樹脂を含むホットメルト粘接着剤組成物を、厚み25μmのPETフィルムに厚み20μmとなるように溶融塗布し、粘接着剤シートを作製した。
この粘接着剤シートについて、ループタック力及び剥離接着力を測定した。これらの測定結果は、表1にまとめて示した。
【0090】
また、実施例1の変性炭化水素樹脂を含むホットメルト粘接着剤組成物を160℃で3時間加熱した後、上記と同様にして粘接着剤シートを作製した。
この粘接着剤シートについて、剥離接着力を測定した。この剥離接着力は、加熱状態で保持した後の剥離接着力とした。測定結果は、表1に示した。
【0091】
〔実施例2〜4,比較例1〜4〕
重合反応器に添加する成分の種類及び量、重合温度および水添条件を下記表1に示すとおりにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜4及び比較例1〜4の変性炭化水素樹脂をそれぞれ得た。なお、実施例1に記載のないジイソブチレン、ジシクロペンタジエン、トルエン、及びベンジルクロライドは、1,3−ペンタジエン等と共にt−ブチルクロライドと混合し、重合に供した。
得られた実施例2〜4及び比較例1〜4の変性炭化水素樹脂については、実施例1と同様の測定を行った。これらの測定結果は、下記表1にまとめて示した。
【0092】
また、得られた実施例2〜4及び比較例1〜4の変性炭化水素樹脂について、それぞれ、実施例1と同様にして、ホットメルト粘接着剤組成物を調製し、さらに粘接着剤シートを作製した。なお、実施例2〜4及び比較例2〜3では下記表1に示すように、熱可塑性高分子化合物としてSBSの替わりに、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS、日本ゼオン株式会社製Quintac(登録商標)3620)を使用した。
ホットメルト粘接着剤組成物を目視による色相評価に供し、粘接着剤シートについてループタック力及び剥離接着力を測定した。
【0093】
【表1】
【0094】
表1より、実施例1〜4で得られた変性炭化水素樹脂は、重量平均分子量及び電気伝導度の全てを満たすこと、そして、優れた粘着性能を持ち、熱安定性に優れるホットメルト粘接着剤組成物を与えることができることが確認できた。